JP2018006333A - リチウムイオン電池正極用バインダー水溶液、リチウムイオン電池正極用粉体状バインダー、リチウムイオン電池正極用スラリー、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池 - Google Patents
リチウムイオン電池正極用バインダー水溶液、リチウムイオン電池正極用粉体状バインダー、リチウムイオン電池正極用スラリー、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池 Download PDFInfo
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Abstract
Description
(項目1)
(メタ)アクリルアミド骨格含有モノマー(a)及びスルホン酸基置換不飽和炭化水素基含有モノマー(b)を含むモノマー群のラジカル共重合物であるポリ(メタ)アクリルアミド(A)を含み、かつ、25℃、固形分15質量%でのB型粘度が10,000〜70,000mPa・sである、リチウムイオン電池正極用バインダー水溶液。
(項目2)
前記モノマー群における(b)成分の含有量が0.01〜1モル%である、上記項目のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用バインダー水溶液。
(項目3)
上記項目のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用バインダー水溶液をスプレードライして得られる、リチウムイオン電池正極用粉体状バインダー。
(項目4)
上記項目のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用バインダー水溶液、及び正極活物質(B)を含む、リチウムイオン電池正極用スラリー。
(項目5)
上記項目のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用粉体状バインダー、水、及び正極活物質(B)を含む、リチウムイオン電池正極用スラリー。
(項目6)
前記正極活物質(B)100質量%に対し、前記ポリ(メタ)アクリルアミド(A)の含有量が1〜8質量%である、上記項目のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用スラリー。
(項目7)
上記項目のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用スラリーを集電体に塗布、乾燥して得られる、リチウムイオン電池用正極。
(項目8)
上記項目のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極を含む、リチウムイオン電池。
本発明のリチウムイオン電池正極用バインダー水溶液(以下、単にバインダー水溶液ともいう。)は、(メタ)アクリルアミド骨格含有モノマー(a)(以下、(a)成分ともいう)及びスルホン酸基置換不飽和炭化水素基含有モノマー(b)(以下、(b)成分ともいう)を含むモノマー群のラジカル共重合物であるポリ(メタ)アクリルアミド(A)(以下、(A)成分ともいう)と水とを含む組成物である。本開示において「(メタ)アクリル」とは「アクリル及びメタクリルからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。また「ラジカル共重合物」とはラジカル重合により得られる共重合物を意味する。
本開示において「(メタ)アクリルアミド骨格含有モノマー」とは、(メタ)アクリルアミド骨格
を有する化合物を意味する。1つの実施形態において、(メタ)アクリルアミド骨格含有モノマーは下記構造式
により表現される。
N−無置換(メタ)アクリルアミド骨格含有モノマーの例としては、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド等が挙げられる。
N−一置換(メタ)アクリルアミド骨格含有モノマーの例としては、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド(メタ)アクリルアミドt−ブチルスルホン酸等が挙げられる。
N−二置換(メタ)アクリルアミド骨格含有モノマーの例としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらの中でも(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドを用いると、(A)成分の耐酸化性が高くなる。
本開示において「スルホン酸基置換不飽和炭化水素基含有モノマー」とは、不飽和炭化水素基の水素がスルホン酸基に置換された化合物又はその塩を意味する。1つの実施形態において、スルホン酸基置換不飽和炭化水素基含有モノマーは下記構造式
R−SO3H
(式中、Rは不飽和炭化水素基である。不飽和炭化水素基の例としては、ビニル基、アリル基、2−メチルプロペニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基等が挙げられる。)
により表される化合物又はその塩(例えば有機アミン塩等の有機塩、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩を含む金属塩、アンモニウム塩等を含む無機塩)である。
前記モノマー群には、(a)成分及び(b)成分と共重合可能な他の共重合成分(c)(以下、(c)成分ともいう)を含めてよい。(c)成分の例としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、α,β−不飽和ニトリル化合物、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物等が挙げられ、二種以上を併用できる。(c)成分の使用量は特に限定されないが、1つの実施形態において、(A)成分を与えるモノマー群100モル%のうち(c)成分の使用量が50モル%未満(例えば40、30、20、20、10、9、5、1、0.1モル%未満、0モル%)であることが好ましい。また別の実施形態において、(A)成分を与えるモノマー群100質量%のうち(c)成分の使用量が50質量%未満(例えば40、30、20、20、15、10、9、5、1、0.1質量%未満、0質量%)であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の分岐(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂環(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレン等の置換(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは二種以上を併用できる。不飽和カルボン酸エステルの使用量は特に限定されないが、(A)成分を与えるモノマー群100モル%のうち10モル%未満(例えば9、5、1、0.1モル%未満、0モル%)であるのが好ましく、(A)成分を与えるモノマー群100質量%のうち10質量%未満(例えば9、5、1、0.1質量%未満、0質量%)であることが好ましい。そうすることで、(A)成分の耐酸化性が高まり、高電位の活物質を組み合わせることができるようになる。
(A)成分は、各種公知の方法でラジカル重合法で合成できる。好ましくは水溶液ラジカル重合法である。具体的には、前記(a)成分及び(b)成分並びに必要に応じて(c)成分を含むモノマー混合液にラジカル重合開始剤及び必要に応じて他の重合試薬を加え、撹拌しながら、反応温度50〜100℃程度で重合反応を行えばよい。反応時間は特に限定されず、好ましくは1〜10時間程度である。こうして得られる(A)成分を含む水溶液は、そのまま本発明のバインダー水溶液として使用できる。
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)の上限の例としては、600万、550万、500万、450万、400万、350万、300万、250万、200万、150万、100万、95万、90万、85万、80万、75万、70万、65万、60万、55万、50万、45万、40万等が挙げられ、下限の例としては、550万、500万、450万、400万、350万、300万、290万、250万、200万、150万、100万、95万、90万、85万、80万、75万、70万、65万、60万、55万、50万、45万、40万、35万、30万等が挙げられる。重量平均分子量(Mw)の上限及び下限は、上記値に限定されない。上記重量平均分子量(Mw)の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、電極スラリーの分散安定性の観点から、30万〜600万が好ましい。
リチウムイオン電池用バインダー水溶液には、(a)成分、(b)成分、(A)成分、水以外の剤を添加剤として含めることができる。添加剤の例としては、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、増粘剤、分散体(エマルジョン)等が挙げられる。添加剤の含有量の例としては、(A)成分100質量%に対し、0〜10質量%、5質量%未満、1質量%未満、0.1質量%未満、0.01質量%未満、0質量%等が挙げられ、また水溶液100質量%に対し、0〜5質量%、1質量%未満、0.1質量%未満、0.01質量%未満、0質量%等が挙げられる。
本発明のリチウムイオン電池正極用粉体状バインダー(以下、粉体状バインダーともいう)は、本発明のバインダー水溶液をスプレードライによって粉体化したものである。そうすることによって、長期保管が可能になり、輸送コスト上も優位となる。
本発明のリチウムイオン電池正極用スラリー(以下、スラリーともいう)の第一態様は、本発明に係るバインダー水溶液及び正極活物質(B)(以下、(B)成分ともいう)を含む組成物であり、第二態様は、本発明に係る粉体状バインダー、水、及び正極活物質(B)を含む組成物である。本開示において「スラリー」とは、液体と固体粒子の懸濁液を意味する。
(B)成分は、無機化合物を含む活物質と有機化合物を含む活物質とに大別される。正極活物質に含まれる無機化合物の例としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物等が挙げられる。上記の遷移金属の例としては、Fe、Co、Ni、Mn、Al等が挙げられる。正極活物質に使用される無機化合物の例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFePO4、LiNi1/2Mn3/2O4、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、Li[Li0.1Al0.1Mn1.9]O4、LiFeVO4等のリチウム含有複合金属酸化物;TiS2、TiS3、非晶質MoS2等の遷移金属硫化物;Cu2V2O3、非晶質V2O−P2O5、MoO3、V2O5、V6O13等の遷移金属酸化物等が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。正極活物質に含まれる有機化合物の例としては、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性重合体等が挙げられる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。これらの中でも実用性、電気特性、長寿命の点で、好ましくは、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFePO4、LiNi1/2Mn3/2O4、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、Li[Li0.1Al0.1Mn1.9]O4が正極活物質として使用される。
本発明のスラリーには、目的に応じて導電助剤を含めてよい。導電助剤の例としては、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素、黒鉛粒子、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、平均粒径10μm以下のCu、Ni、Al、Si又はこれらの合金からなる微粉末等が挙げられる。導電助剤の使用量は特に限定されないが、好ましくは(B)成分に対して好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.5〜6質量%である。
本発明のスラリーには、塗布作業性を改善する目的で、80〜350℃の標準沸点を有する非水系媒体を含めてもよい。80〜350℃の標準沸点を有する非水系媒体の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド媒体;トルエン、キシレン、n−ドデカン、テトラリン等の炭化水素媒体;2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、ラウリルアルコール等のアルコール媒体;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトフェノン、イソホロン等のケトン媒体;酢酸ベンジル、酪酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル媒体;o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン等のアミン媒体;γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトン等のラクトン媒体;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド・スルホン媒体等を挙げることができる。これらの中でも、塗布作業性の点より、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましい。上記非水系媒体の使用量は特に限定されないが、好ましくは、本発明のスラリーに対し0〜10質量%程度である。
本発明のリチウムイオン電池用正極(以下、正極ともいう)は、本発明のスラリーを、集電体に塗布、乾燥して得られる硬化物、すなわち本発明に係るスラリーの硬化物である。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の正極を含む物品である。上記電池における他の部材、即ち、電解質溶液、負極、セパレータ、及び包装材料は特に限定されない。
電解質溶液としては、非水系溶媒に支持電解質を溶解した非水系電解液が用いられる。また、上記非水系電解液には、被膜形成剤を含めてもよい。
負極としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。例えば、負極活物質、導電助剤、バインダーを有機溶媒と混合することによってスラリーを調製し、調製したスラリーを集電体に塗布、乾燥、プレスすることによって得られる。
セパレータは、正極と負極との間に介在する物品であって、電極間の短絡を防止するために使用する。具体的には、多孔膜や不織布等の多孔性のセパレータを好ましく使用でき、それらには前記非水系電解液を含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエーテルスルホン等が用いられ、好ましくはポリオレフィンが用いられる。
各バインダー水溶液の粘度は、B型粘度計(東機産業株式会社製 製品名「B型粘度計モデルBM」)を用い、25℃にて、以下の条件で測定した。
粘度100,000〜20,000mPa・sの場合:No.4ローター使用、回転数6rpm
粘度20,000mPa・s未満の場合:No.3ローター使用、回転数6rpm
実施例1−1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応装置に、イオン交換水2300g、アクリルアミド400g(5.63mol)、メタリルスルホン酸ナトリウム9.0g(0.057mol)を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、50℃まで昇温した。そこに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン 二塩酸塩(日宝化学株式会社製 製品名「NC−32」)4.0g、イオン交換水30gを投入し、80℃まで昇温し1.5時間反応を行った。次いで、NC−32 4.0g、イオン交換水30gを投入し80℃にて1.5時間反応し、ポリ(メタ)アクリルアミド(A)を含み、25℃、固形分15.0質量%でのB型粘度が35,000mPa・sであるバインダー水溶液を得た。
上記実施例1−1において、モノマー組成と開始剤の量を表1で示すもの及び数値に変更した他は実施例1−1と同様にして、ポリ(メタ)アクリルアミド(A)を含む水溶液を調製した。
・NMAM:N−メチロールアクリルアミド
・ATBS:アクリルアミドt−ブチルスルホン酸
・SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
・MAS:メタリルスルホン酸
・VS:ビニルスルホン酸
・AA:アクリル酸
・EA:アクリル酸エチル
・HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
・AN:アクリロニトリル
・MPA:3−メルカプトプロピオン酸
実施例1−7
実施例1−1のポリ(メタ)アクリルアミド(A)の水溶液をスプレードライヤー機(ヤマト科学株式会社製PulvisGB22)を用いて微粉化した。乾燥条件は、乾燥空気流量:0.45m3/分、入口温度:180℃、出口温度:80℃、噴霧圧:1.0kgf/cm2、溶液供給量:500mL/時間であった。得られた粉末を、イオン交換水を入れた円柱型ガラス容器に、平バネで攪拌しながら、15質量%となるよう加え、溶解させた。
実施例2−1
市販の自転公転ミキサー(製品名「あわとり練太郎」、シンキー(株)製)を用い、上記ミキサー専用の容器に、実施例1のバインダー水溶液を固形分換算で3部と、電極活物質としてニッケルマンガン酸リチウム(Li[Ni1/2Mn3/2]O4、メジアン径D50:3.7μm)91部と、アセチレンブラック6部とを混合した。そこにイオン交換水を固形分濃度50%となるように加えて、当該容器を前記ミキサーにセットした。次いで、2000rpmで10分間混練後、1分間脱泡を行い、正極用スラリーを得た。
実施例2−1において、バインダー水溶液を表2に記載の通り変更した他は同様にして、正極用スラリーを得た。
<スラリー分散性評価>
スラリー調製直後の分散性を以下の基準で目視評価した。
◎:全体が均質なペースト状であり、液状分離がなく、かつ、凝集物も認められない。
○:全体は略均質なペースト状であり、僅かな液状分離が認められるが、凝集物は認められない。
△:容器底部に少量の凝集物と、やや多くの液状分離とが認められる。
×:容器底部に粘土状の凝集物が多数認められ、液状分離も多く認められる。
実施例3−1 リチウムイオン電池用正極の作製
アルミニウム箔からなる集電体の表面に、上記実施例2−1で調製した正極用スラリーを、乾燥後の膜厚が110μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、60℃で30分乾燥後、150℃/真空で120分間加熱処理して電極を得た。その後、膜(活物質層)の密度が3.0g/cm3になるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、正極を得た。電極の柔軟性を評価し、その結果を表2に併せて示した。
電極を幅10mm×長さ70mmに切り、直径6mmφのテフロン(登録商標)棒に活物質層を外側にして捲き付け、活物質層の表面の様子を観察し、以下の基準で評価した。
◎:集電体上に結着している活物質層にひび割れ又は剥がれが全く生じていない。
○:集電体上に結着している活物質層にひび割れが見られるが、剥がれは認められない。
△:集電体上に結着している活物質層にひび割れが見られ、剥がれも一部認められる。
×:集電体上に結着している活物質層にひび割れ、△よりも多く剥がれが生じた。
上記実施例3−1において、リチウムイオン電池正極用スラリーを表2に記載の通り変更したほかは実施例3−1と同様にして、リチウムイオン電池正極を得た。電極の柔軟性を評価し、その結果を表2に併せて示した。
実施例4−1 リチウムイオン電池の作製
(1)リチウムイオン電池セルの組立て
アルゴン置換されたグローブボックス内で、上記で製造した正極を直径16mmに打ち抜き成形したものを、2極式コインセル(宝泉株式会社製、商品名「HSフラットセル」)上に載置した。次いで、直径24mmに打ち抜いたポリプロピレン製多孔膜からなるセパレータ(CS TECH CO., LTD製、商品名「Selion P2010」)を載置し、さらに、空気が入らないように電解液を500μL注入した後、市販の金属リチウム負極を16mmに打ち抜き成形したものを載置し、前記2極式コインセルの外装ボディーをネジで閉めて封止することにより、リチウムイオン電池セルを組み立てた。ここで使用した電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1(質量比)の溶媒に、LiPF6を1モル/Lの濃度で溶解した溶液である。
上記で製造したリチウムイオン電池セルを25℃の恒温槽に入れ、定電流(0.5C)にて充電を開始し、電圧が5.0Vになった時点で充電完了(カットオフ)とした。次いで、定電流(0.5C)にて放電を開始し、電圧が3.0Vになった時点を放電完了(カットオフ)とする充放電を50回繰り返し1サイクル目の電池容量、及び50サイクル目の電池容量を測定した。1サイクル目の電池容量を初期容量とした。また、1サイクル目の電池容量に対する50サイクル目の電池容量の割合を百分率で表し、これを容量維持率とした。その結果を表2に併せて示した。
上記実施例4−1において、リチウムイオン電池正極を表2に記載の通り変更したほかは実施例4−1と同様にして、リチウムイオン電池セルを得た。初期放電容量及び残存容量率の測定を測定し、その結果を表2に併せて示した。
実施例2−1のスラリーを用いてラミネート型リチウムイオン電池を次のようにして作製した。
(1)正極の作製
アルミニウム箔からなる集電体の表面に、上記、実施例2−1で調製した正極用スラリーを、乾燥後の膜厚が110μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、60℃で30分乾燥後、150℃/真空で120分間加熱処理して電極を得た。その後、膜(活物質層)の密度が3.0g/cm3になるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、正極を得た。
負極活物質として天然黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製 製品名「Z−5F」)88質量部と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(アルケマ株式会社 製品名「HSV900」)6質量部とを混合し、この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、リチウムイオン電池負極用スラリーを作製した。次いで、負極の集電体として銅箔を用意し、銅箔にリチウムイオン電池負極用スラリーをのせ、ドクターブレードを用いて膜状になるように塗布した。リチウムイオン電池正極用スラリーを塗布後のアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥してNMPを揮発させて除去した後、ロ−ルプレス機により、密着接合させた。この時、負極活物質層の密度は1.5g/cm2となるようにした。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(25mm×30mmの矩形状)に切り取り、負極活物質層の厚さが45μm程度の負極とした。
上記の正極及び負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を製作した。詳しくは、正極及び負極の間に、ポリプロピレン製多孔膜からなるセパレータ(CS TECH CO., LTD製、商品名「Selion P2010」)の矩形状シート(27×32mm、厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液としてエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1(質量比)の溶媒に、LiPF6を1モル/Lの濃度で溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群及び電解液が密閉されたラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極及び負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。以上の工程で作製したラミネート型リチウムイオン電池を通電したところ、動作上の問題は生じなかった。
Claims (8)
- (メタ)アクリルアミド骨格含有モノマー(a)及びスルホン酸基置換不飽和炭化水素基含有モノマー(b)を含むモノマー群のラジカル共重合物であるポリ(メタ)アクリルアミド(A)を含み、かつ、25℃、固形分15質量%でのB型粘度が10,000〜70,000mPa・sである、リチウムイオン電池正極用バインダー水溶液。
- 前記モノマー群における(b)成分の含有量が0.01〜1モル%である、請求項1に記載のリチウムイオン電池正極用バインダー水溶液。
- 請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池正極用バインダー水溶液をスプレードライして得られる、リチウムイオン電池正極用粉体状バインダー。
- 請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池正極用バインダー水溶液、及び正極活物質(B)を含む、リチウムイオン電池正極用スラリー。
- 請求項3に記載のリチウムイオン電池正極用粉体状バインダー、水、及び正極活物質(B)を含む、リチウムイオン電池正極用スラリー。
- 前記正極活物質(B)100質量%に対し、前記ポリ(メタ)アクリルアミド(A)の含有量が1〜8質量%である、請求項4又は5に記載のリチウムイオン電池正極用スラリー。
- 請求項4〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用スラリーを集電体に塗布、乾燥して得られる、リチウムイオン電池用正極。
- 請求項7に記載のリチウムイオン電池正極を含む、リチウムイオン電池。
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