JP2016058185A - 蓄電デバイス電極用バインダー組成物、蓄電デバイス電極用スラリー、蓄電デバイス電極、および蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
Description
本発明に係る蓄電デバイス電極用バインダー組成物の一態様は、
重合体(A)と、液状媒体(B)と、を含有し、
前記重合体(A)中に含まれる繰り返し単位の合計を100質量部としたときに、不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位(A1)を20質量部以上70質量部以下含有し、
不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(A4)を0質量部以上30質量部以下含有し、
pHが3以上6以下であることを特徴とする。
本発明に係る蓄電デバイス電極用スラリーの一態様は、
請求項1に記載の蓄電デバイス電極用バインダー組成物と、活物質と、を含有することを特徴とする。
適用例2の蓄電デバイス電極用スラリーにおいて、
前記活物質としてケイ素材料を含有することができる。
本発明に係る蓄電デバイス電極の一態様は、
集電体と、前記集電体の表面上に適用例2または適用例3の蓄電デバイス電極用スラリーが塗布および乾燥されて形成された活物質層と、を備えることを特徴とする。
適用例4の蓄電デバイス電極において、
前記活物質層100質量部中にシリコン元素を2質量部以上30質量部以下含有することができる。
本発明に係る蓄電デバイスの一態様は、
適用例4または適用例5の蓄電デバイス電極を備えることを特徴とする。
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用バインダー組成物(以下、単に「バインダー組成物」ともいう。)は、蓄電デバイスに使用される電極を作製するためのバインダー組成物であって、重合体(A)と、液状媒体(B)と、を含有する。以下、本実施の形態に係るバインダー組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
1.1.1.重合体(A)の組成
重合体(A)の組成としては、重合体(A)中に含まれる繰り返し単位の合計を100質量部としたときに、不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位(A1)を20質量部以上70質量部以下含有することを特徴とする。これにより、重合体表面にカルボキシル基等の酸性官能基が存在するようになる。また、重合体(A)の組成としては、重合体(A)中に含まれる繰り返し単位の合計を100質量部としたときに、任意成分である不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(A4)を0質量部以上30質量部以下とすることができる。重合体(A)をこのような組成とすることにより、重合体表面にはカルボキシル基等の酸性官能基が存在するようになり、特に非水系媒体である電解液中では膨潤しづらい状態となる。これにより、電解液を過大に吸収することによる密着性の低下を防ぐことができ、充放電耐久特性に優れた蓄電デバイス電極となる。バインダー成分である重合体(A)が電解液中で膨潤してしまうと、蓄電デバイスの内部で重合体(A)が常に膨潤した状態となるため、活物質層の剥離や活物質の滑落等の不具合を引き起こす場合がある。一方、水を含有するようなスラリー中では、重合体(A)の表面に存在するカルボキシル基等の酸性官能基によって適度に膨潤したような状態となり、活物質を良好に分散させることができるので、密着性に優れた蓄電デバイス電極を作製することができる。
重合体(A)が不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位(A1)(以下、「繰り返し単位(A1)」ともいう。)を有することにより、後述するスラリーを作製する際に、活物質を凝集させることなく、活物質が良好に分散したスラリーを作製することができる。これにより、スラリーを塗布・乾燥して作製された活物質層が均一に近い分布となるので、結着欠陥が非常に少ない蓄電デバイス電極を作製することができる。すなわち、活物質同士の結着能力および活物質層と集電体との密着能力を飛躍的に向上できる。また、活物
質の分散安定性が良好となるため、スラリーの貯蔵安定性も向上する。
重合体(A)が共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位(A2)(以下、「繰り返し単位(A2)」ともいう。)を有する場合には、粘弾性および強度に優れた重合体を製造することが容易となる。すなわち、重合体(A)が共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を有すると、得られる重合体に強い結着力を付与することができる。共役ジエン化合物に由来するゴム弾性が重合体に付与されるため、グラファイトのような炭素材料やケイ素材料を含有する活物質の体積収縮や体積膨張等の変化に追従することが可能となる。これにより、さらに密着性を向上させて、さらには長期に亘り充放電耐久特性を向上できると考えられる。
重合体(A)が芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位(A3)(以下、「繰り返し単位(A3)」ともいう。)を有する場合には、重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が好適となるため、得られる活物質層の柔軟性が適度となり、集電体と活物質層との密着能力が良好となる。
重合体(A)が不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(A4)(以下、「繰り返し単位(A4)」ともいう。)を有する場合には、電解液を過大に吸収することによる密着性の低下を防ぐことができる。
て電極構造を十分に保持できず充放電特性が劣化する場合がある。しかしながら、重合体(A)が繰り返し単位(A4)と繰り返し単位(A5)とを併有することで、それらの相乗効果により電解液に対する膨潤度が大きくなり電極抵抗を低下させると共に、活物質同士および活物質層と集電体との密着性を高めて電極構造をより良好に保持することが可能となる。
重合体(A)がα,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位(A5)を有する場合には、重合体(A)は後述する電解液によって適度に膨潤することができる。すなわち、ニトリル基の存在によって重合体鎖からなる網目構造に電解液が侵入し、網目間隔が広がるため、溶媒和したリチウムイオンがこの網目構造をすり抜けて移動し易くなる。その結果、リチウムイオンの拡散性が向上すると考えられる。これにより、電極抵抗を低減させることができるので、電極のより良好な充放電特性が実現される。
本実施の形態に係るバインダー組成物に含まれる重合体(A)は、上記繰り返し単位以外に、これらと共重合可能な単量体に由来する繰り返し単位を含有することができる。
重合体(A)の合成方法については特に限定されないが、例えば公知の乳化剤(界面活性剤)、連鎖移動剤、重合開始剤などの存在下で行う乳化重合法によることができる。
%、二段目重合に供することが好ましい。
・一段目重合;好ましくは40〜80℃の温度;好ましくは2〜24時間の重合時間;好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上の重合転化率。
・二段目重合;好ましくは40〜80℃の温度;好ましくは2〜6時間の重合時間。
1.1.3.1.重合体粒子の平均粒子径
本実施の形態に係るバインダー組成物に含まれる重合体(A)は、液状媒体(B)中に粒子として分散されたラテックス、すなわち重合体粒子であることが好ましい。重合体(A)が粒子であると、活物質と混合して作製される蓄電デバイス電極用スラリー(以下、本明細書においては単に「スラリー」ともいう。)の安定性が良好となり、またスラリーの集電体への塗布性が良好となる。
重合体(A)のTHF不溶分は、75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。このTHF不溶分は、蓄電デバイスにおいて使用される電解液に対する不溶分量とほぼ比例することが経験的に確認されている。このため、THF不溶分が前記範囲である重合体(A)を用いて蓄電デバイスを製造すれば、長期間にわたって充放電を繰り返した場合でも電解液への重合体(A)の溶出を抑制できるため好ましい。
重合体(A)は、JIS K7121に準拠する示差走査熱量測定(DSC)によって測定したときに、−40〜+30℃の温度範囲において吸熱ピークを1つしか有さないものであることが好ましい。この吸熱ピークの温度(すなわちガラス転移温度(Tg))は、−30〜+25℃の範囲にあることがより好ましく、−25〜+20℃であることがより好ましい。DSC分析における重合体(A)の吸熱ピークが1つのみであり、かつ該ピーク温度が上記範囲にある場合、該重合体は良好な密着性を示すとともに、活物質層に対してより良好な柔軟性と粘着性とを付与することができ好ましい。
本実施の形態に係るバインダー組成物は、液状媒体(B)を含有する。液状媒体(B)としては、水を含有する水系媒体であることが好ましい。上記水系媒体には、水以外の非水系媒体を含有させることができる。この非水系媒体としては、例えばアミド化合物、炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、アミン化合物、ラクトン、スルホキシド、スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される一種以上を使用することができる。本実施の形態に係るバインダー組成物は、液状媒体(B)として水系媒体を使用することにより、環境に対して悪影響を及ぼす程度が低くなり、取扱作業者に対する安全性も高くなる。
本実施の形態に係るバインダー組成物は、必要に応じて前述した重合体(A)、液状媒体(B)以外の添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば重合体(A)以外の重合体、防腐剤、増粘剤等が挙げられる。
重合体(A)以外の重合体は、スラリー中に含まれる活物質の種類に応じて、該活物質との密着性を向上させる目的などで選択することができ、例えばポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリルエマルジョン、スチレンブタジエン共重合ラテックス等が挙げられる。本実施の形態に係るバインダー組成物に重合体(A)以外の重合体を添加する場合、重合体(A)以外の重合体の含有割合は、質量基準で、重合体(A):重合体(A)以外の重合体=1:99〜80:20とすること
が好ましい。
本実施の形態に係るバインダー組成物は、防腐剤を含有することにより、バインダー組成物を貯蔵した際に、細菌や黴などが増殖して異物が発生することを抑制することができる。
本実施の形態に係るバインダー組成物は、増粘剤を含有することにより、その塗布性や得られる蓄電デバイスの充放電特性等をさらに向上させることができる。
1.4.1.pH
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用バインダー組成物のpHは、3〜6であることが必要であり、3.5〜5.5であることが好ましく、3.5〜5であることがより好ましい。pHが前記範囲未満であると、蓄電デバイス電極用バインダー組成物を用いて作製されたスラリーを集電体上へ塗布する際、レベリング性が不足するため、電極厚みの均一性が損なわれる場合がある。厚みが不均一な電極を使用すると、充放電反応の面内分布が発生するため、安定した電池性能の発現が困難となる。一方、pHが前記範囲を超えると
、スラリーを集電体上に塗布する際、液ダレが起き易くなり、安定した品質の電極が得られにくい。そこで、pHが前記範囲にあれば、これらの問題の発生を抑制することができ、良好な電気的特性と密着性とを両立させた電極を製造することが容易となるのである。
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用バインダー組成物の電解液膨潤率は、130%以下であることが好ましく、100〜130%であることがより好ましく、105〜125%であることがさらに好ましく、110〜120%であることが特に好ましい。電解液膨潤率が前記範囲にあると、重合体(A)は電解液に対して適度に膨潤することができる。その結果、溶媒和したリチウムイオンが容易に活物質へ到達することができ、効果的に電極抵抗を低下させて、より良好な充放電特性を実現できる。また、前記範囲内の電解液膨潤率であれば、大きな体積変化が発生しないため結着性にも優れる。一方、電解液膨潤率が前記範囲未満の場合、結着性は良好であるものの、リチウムイオンが活物質へ到達することを阻害され、電極抵抗が増大してしまうため好ましくない。電解液膨潤率が前記範囲を超えると、電極抵抗は低下するものの、結着性が劣化してしまうため好ましくない。
従い算出することができる。
電解液膨潤率(%)=(W1/W0)×100 ・・・・・(2)
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用スラリーは、上記で説明したバインダー組成物を用いることにより作製することができる。「蓄電デバイス電極用スラリー」とは、集電体の表面上に活物質層を形成するために用いられる分散液のことをいう。本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用スラリーは、上述のバインダー組成物と、活物質と、を含有する。以下、本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用スラリーに含まれる各材料について説明するが、バインダー組成物については上述の通りであるので説明を省略する。
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用スラリーに使用される活物質としては、例えば炭素材料、ケイ素材料、リチウム原子を含む酸化物、鉛化合物、錫化合物、砒素化合物、アンチモン化合物、アルミニウム化合物などを挙げることができる。
>0.85、5.00>Z>1.5の範囲の数である。)で表される複合金属酸化物や、その他の金属酸化物等が挙げられる。
イ素材料の体積膨張に対する炭素材料の体積膨張が小さいため、これらの活物質を含有する活物質層の充放電に伴う体積変化を低減させることができ、集電体と活物質層との密着性をより向上させることができる。
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用スラリーには、前述した成分以外に、必要に応じてその他の成分を添加してもよい。このような成分としては、例えば導電付与剤、増粘剤、液状媒体(ただし、バインダー組成物からの持ち込み分を除く。)などが挙げられる。
導電付与剤の具体例としては、リチウムイオン二次電池においてはカーボンなどを挙げることができる。カーボンとしては、活性炭、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレンなどを挙げることができる。これらの中でも、アセチレンブラック、ファーネスブラックを好ましく使用することができる。導電付与剤の使用割合は、活物質100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましく、2〜10質量部であることが特に好ましい。
蓄電デバイス電極用スラリーの塗工性を改善する観点から、増粘剤を添加してもよい。増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;上記セルロース誘導体のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸、変性ポリ(メタ)アクリル酸などのポリカルボン酸;上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系(共)重合体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和カルボン酸とビニルエステルとの共重合体の鹸化物などの水溶性ポリマーなどが挙げられる。増粘剤の使用割合は、活物質100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ま
しく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用スラリーは、上述のバインダー組成物を含有するから、バインダー組成物に含まれていた液状媒体(B)を含有することとなる。本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用スラリーには、バインダー組成物から持ち込まれた液状媒体(B)に加えて、必要に応じてさらに液状媒体(B)以外の液状媒体を添加してもよい。
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極用スラリーは、上述のバインダー組成物と活物質とを含有するものである限り、どのような方法によって製造されたものであってもよい。
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極は、集電体と、前記集電体の表面上に上述の蓄電デバイス電極用スラリーが塗布および乾燥されて形成された層と、を備えるものである。かかる蓄電デバイス電極は、金属箔などの集電体の表面に、上述の蓄電デバイス電極用スラリーを塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜を乾燥して活物質層を形成することにより製造することができる。このようにして製造された蓄電デバイス電極は、集電体上に、上述の重合体(A)および活物質、さらに必要に応じて添加した任意成分を含有する活物質
層が結着されてなるものである。かかる蓄電デバイス電極は、密着性に優れると共に、良好な充放電耐久特性を示す。
12時間とすることが好ましく、4〜8時間とすることがより好ましい。
(1)蛍光X線分析装置(スペクトリス社製、製品名「パナリティカルMagixPRO」)にて、あらかじめ準備しておいたシリコン元素の含有量既知のサンプルを複数点測定し、検量線を作成する。
(2)蓄電デバイス電極から活物質層の全体(深さ方向の一部のみを採取しないようにする)をスパチュラなどで3g掻き取り、全体が均一になるように乳鉢などで混合した後に直径3cmの円盤状のプレートにプレスする。活物質層単独では成形できない場合は、元素組成既知の凝着剤を適宜使用してもよい。このような凝着剤としては、例えばスチレン・マレイン酸樹脂、ホウ酸粉末、セルロース粉などを使用できる。また、シリコン含有量が高く検量線のリニアリティが確保できない場合も、上記凝着剤を用いてサンプルを希釈して測定することができる。なお、上記凝着剤を使用する際は、マトリックス効果による検量線のズレを回避するため、検量線作成サンプルも同様に凝着剤を使用することが好ましい。
(3)得られたプレートを蛍光X線分析装置にセットして分析し、上記検量線からシリコン元素含有量を算出する。上記凝着剤を使用した場合は、凝着剤の重量を差し引いた上でシリコン元素含有量を算出する。
本実施の形態に係る蓄電デバイスは、上述の蓄電デバイス電極を備えるものであり、さらに電解液を含有し、セパレーターなどの部品を用いて、常法に従って製造することができる。具体的な製造方法としては、例えば、負極と正極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に収納し、該電池容器に電解液を注入して封口する方法などを挙げることができる。電池の形状は、コイン型、円筒型、角形、ラミネート型など、適宜の形状であることができる。
iPF6、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどを例示することができる。ニッケル水素二次電池では、例えば従来公知の濃度が5モル/リットル以上の水酸化カリウム水溶液を使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
5.1.1.バインダー組成物の調製および評価
(1)バインダー組成物の調製
以下に示すような二段重合により、重合体(A)の粒子を含有するバインダー組成物を得た。一段目の重合では、反応器に水211質量部と、1,3−ブタジエン32質量部、スチレン42質量部、メタクリル酸2質量部およびアクリル酸3質量部からなる単量体混合物79質量部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.1質量部と、乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1質量部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.2質量部とを仕込み、攪拌しながら60℃で18時間重合し、重合転化率96%で反応を終了した。続いて、二段目の重合では、この反応器に水189質量部と、メタクリル酸21質量部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.05質量部と、炭酸ナトリウム0.1質量部とを添加して80℃にて2時間重合反応を継続した後、反応を終了させた。このときの重合転化率は98%であった。得られた重合体(A)のラテックス(重合体(A)の粒子分散液)から未反応単量体を除去し、濃縮後10%水酸化ナトリウム水溶液および水を添加して、重合体(A)の粒子分散液の固形分濃度およびpHを調整し、重合体(A)の粒子を20%含有するpH4.4のバインダー組成物を得た。
動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(大塚電子株式会社製、型式「FPAR−1000」)を用いて、上記で得られたバインダー組成物の粒度分布を測定し、その粒度分布から平均粒子径D50(DA)を求めたところ500nmであった。
上記で得られたバインダー組成物をコロジオン支持膜に0.1wt%に希釈したラテックスをピペットで1滴滴下し、さらに0.02wt%の四酸化オスミウム溶液をピペットで1滴滴下し、12h風乾させ試料を準備した。このようにして準備した試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式H−7650)を用いて、倍率を10K(倍率)で観察し、HITACH EMIPのプログラムにより画像解析を実施し、ランダムに選択した50個の粒子の平均粒子径(DB)を算出したところ12
0nmであった。
上記で得られたバインダー組成物を直径8cmのペトリ皿に得られた分散液を固形分換算で5g流しこみ、40℃にて1日間乾燥させて乾燥フィルムを得た。その後、乾燥フィルムをペトリ皿から取り出し、さらに160℃で0.5時間乾燥させて試験用フィルムを得た。次に、得られた試験用フィルムを2cm×2cmの大きさに複数枚切り出し、初期質量(W0(g))を測定した。その後、標準電解液が入ったスクリュー瓶に試験用フィルムを70℃にて24時間浸漬した。その後、試験用フィルムを標準電解液から取り出し、フィルム表面に付着した電解液を拭き取った後に試験後の浸漬後質量(W1(g))を測定した。得られた初期質量(W0(g))および浸漬後質量(W1(g))から、下記式(2)に従い電解液膨潤率を算出した。
電解液膨潤率(%)=(W1/W0)×100 ・・・・・(2)
(1)ケイ素材料(活物質)の合成
粉砕した二酸化ケイ素粉末(平均粒子径10μm)と炭素粉末(平均粒子径35μm)との混合物を、温度を1100〜1600℃の範囲に調整した電気炉中で、窒素気流下(0.5NL/分)、10時間の加熱処理を行い、組成式SiOx(x=0.5〜1.1)で表される酸化ケイ素の粉末(平均粒子径8μm)を得た。この酸化ケイ素の粉末300gをバッチ式加熱炉内に仕込み、真空ポンプにより絶対圧100Paの減圧を維持しながら、300℃/hの昇温速度にて室温(25℃)から1100℃まで昇温した。次いで、加熱炉内の圧力を2000Paに維持しつつ、メタンガスを0.5NL/分の流速にて導入しながら、1100℃、5時間の加熱処理(黒鉛被膜処理)を行った。黒鉛被膜処理終了後、50℃/hの降温速度で室温まで冷却することにより、黒鉛被膜酸化ケイ素の粉末約330gを得た。この黒鉛被膜酸化ケイ素は、酸化ケイ素の表面が黒鉛で被覆された導電性の粉末(活物質)であり、その平均粒子径は10.5μmであり、得られた黒鉛被膜酸化ケイ素の全体を100質量%とした場合の黒鉛被膜の割合は2質量%であった。
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)に増粘剤(商品名「CMC2200」、株式会社ダイセル製)を1質量部(固形分換算値、濃度2質量%の水溶液として添加)、負極活物質として結晶性の高いグラファイトである人造黒鉛(日立化成工業株式会社製、商品名「MAG」)94質量部(固形分換算値)、上記で得られた黒鉛被覆膜酸化ケイ素の粉末を6質量部(固形分換算値)、および水68質量部を投入し、60rpmで1時間攪拌を行った。その後、上記で得られたバインダー組成物を、これに含有される重合体(A)2質量部に相当する量だけ加え、さらに1時間攪拌しペーストを得た。得られたペーストに水を投入し、固形分濃度を50質量%に調整した後、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、商品名「泡とり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、1800rpmで5分間、さらに減圧下(約2.5×104Pa)において1800rpmで1.5分間攪拌混合することにより、負極活物質中にSiを5質量%含有する蓄電デバイス電極用スラリー(C/Si(5%))を調製した。
(1)蓄電デバイス電極(負極)の製造
厚み20μmの銅箔よりなる集電体の表面に、上記で得られた蓄電デバイス電極用スラリー(C/Si(5%))を、乾燥後の膜厚が80μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、60℃で10分乾燥し、次いで120℃で10分間乾燥処理した。その後、活物質層の密度が表1に記載の値になるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、蓄電デバイス電極(負極)を得た。
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)に、電気化学デバイス電極用バインダー(株式会社クレハ製、商品名「KFポリマー#1120」)4.0質量部(固形分換算値)、導電助剤(電気化学工業株式会社製、商品名「デンカブラック50%プレス品」)3.0質量部、正極活物質として平均粒子径5μmのLiCoO2(ハヤシ化成株式会社製)100質量部(固形分換算値)およびN−メチルピロリドン(NMP)36質量部を投入し、60rpmで2時間攪拌を行った。得られたペーストにNMPを追加し、固形分濃度を65質量%に調製した後、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、商品名「泡とり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、1,800rpmで5分間、さらに減圧下(約2.5×104Pa)において1,800rpmで1.5分間攪拌混合することにより、正極用スラリーを調製した。アルミニウム箔よりなる集電体の表面に、この正極用スラリーを、溶媒除去後の膜厚が80μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で20分間加熱して溶媒を除去した。その後、活物質層の密度が3.0g/cm3となるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、対極(正極)を得た。
露点が−80℃以下となるようAr置換されたグローブボックス内で、上記で製造した負極を直径15.95mmに打ち抜き成型したものを、2極式コインセル(宝泉株式会社製、商品名「HSフラットセル」)上に載置した。次いで、直径24mmに打ち抜いたポリプロピレン製多孔膜からなるセパレーター(セルガード株式会社製、商品名「セルガード#2400」)を載置し、さらに、空気が入らないように電解液を500μL注入した後、上記で製造した正極を直径16.16mmに打ち抜き成型したものを載置し、前記2極式コインセルの外装ボディーをネジで閉めて封止することにより、リチウムイオン電池セル(蓄電デバイス)を組み立てた。ここで使用した電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1(質量比)の溶媒に、LiPF6を1モル/Lの濃度で溶解した溶液である。
上記で製造した蓄電デバイスにつき、25℃に調温された恒温槽にて、定電流(1.0C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)とした。その後、定電流(1.0C)にて放電を開始し、電圧が3.0Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、1サイクル目の放電容量を算出した。このようにして100回充放電を繰り返し、100サイクル目の放電容量を算出した。このようにして測定した100サイクル目の放電容量を、1サイクル目の放電容量で割った値を100サイクル放電維持率(%)とした。全ての活物質に対して100サイクル目の放電容量維持率が80%以上であ
る場合、充放電サイクルで起こる電極の劣化が抑制されており良好と判断できる。
上記実施例1の「5.1.1.バインダー組成物の調製および評価」において、各単量体の種類および量を、それぞれ表1に記載の通りとした以外は同様にして重合体成分を20%含有するバインダー組成物を得た。
下表1に、実施例1〜8および比較例1〜6で使用した重合体組成、各物性および各種評価結果をまとめた。
・BD:1,3−ブタジエン
・ST:スチレン
・MMA:メタクリル酸メチル
・HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・TA:イタコン酸
・AN:アクリロニトリル
Claims (6)
- 蓄電デバイスに使用される電極を作製するためのバインダー組成物であって、
重合体(A)と、液状媒体(B)と、を含有し、
前記重合体(A)中に含まれる繰り返し単位の合計を100質量部としたときに、不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位(A1)を20質量部以上70質量部以下含有し、
不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(A4)を0質量部以上30質量部以下含有し、
pHが3以上6以下である、蓄電デバイス電極用バインダー組成物。 - 請求項1に記載の蓄電デバイス電極用バインダー組成物と、活物質と、を含有する、蓄電デバイス電極用スラリー。
- 前記活物質としてケイ素材料を含有する、請求項2に記載の蓄電デバイス電極用スラリー。
- 集電体と、前記集電体の表面上に請求項2または請求項3に記載の蓄電デバイス電極用スラリーが塗布および乾燥されて形成された活物質層と、を備える蓄電デバイス電極。
- 前記活物質層100質量部中にシリコン元素を2質量部以上30質量部以下含有する、請求項4に記載の蓄電デバイス電極。
- 請求項4または請求項5に記載の蓄電デバイス電極を備える蓄電デバイス。
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