JP6024896B2 - 電極用バインダー組成物、電極用スラリー、電極、および蓄電デバイス - Google Patents
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Description
の実施例などに開示されているような金属石鹸系消泡剤を添加する方法が一般的となっている。
本発明に係る電極用バインダー組成物の一態様は、
蓄電デバイスに使用される電極を作製するためのバインダー組成物であって、
重合体(A)と、シリコーン系化合物(B)と、液状媒体(C)と、を含有し、
前記重合体(A)が、含フッ素エチレン系単量体に由来する繰り返し単位(Ma)と、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(Mb)と、を有する含フッ素系重合体粒子であることを特徴とする。
適用例1の電極用バインダー組成物において、
前記含フッ素系重合体粒子についてJIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、−50〜+250℃の温度範囲における吸熱ピークが1つのみ観測されることができる。
適用例2の電極用バインダー組成物において、
前記吸熱ピークが−30〜+30℃の温度範囲に観測されることができる。
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の電極用バインダー組成物において、
前記バインダー組成物中におけるケイ素濃度が5〜20,000ppmであることができる。
適用例1ないし適用例4のいずれか一例の電極用バインダー組成物において、
前記シリコーン系化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物を含むことができる。
適用例1ないし適用例5のいずれか一例の電極用バインダー組成物において、
前記含フッ素系重合体粒子の平均粒子径が50〜400nmであることができる。
本発明に係る電極用スラリーの一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか一例の電極用バインダー組成物と、電極活物質と、を含有することを特徴とする。
本発明に係る電極の一態様は、
集電体と、前記集電体の表面上に適用例7の電極用スラリーが塗布および乾燥されて形成された層と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る蓄電デバイスの一態様は、
適用例8の電極を備えることを特徴とする。
いて実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜」および「メタクリル酸〜」の双方を包括する概念である。また、「〜(メタ)アクリレート」とは、「〜アクリレート」および「〜メタクリレート」の双方を包括する概念である。
本実施の形態に係る電極用バインダー組成物は、蓄電デバイスに使用される電極を作製するためのバインダー組成物であって、重合体(A)と、シリコーン系化合物(B)と、液状媒体(C)と、を含有する。以下、本実施の形態に係る電極用バインダー組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
本実施の形態に係る電極用バインダー組成物に含まれる重合体(A)は、液状媒体(C)中に粒子として分散されたラテックス状であることが好ましい。電極用バインダー組成物がラテックス状であると、電極活物質と混合して作製される電極用スラリーの安定性が良好となり、また電極用スラリーの集電体への塗布性が良好となるため好ましい。以下、液状媒体(C)中に粒子として分散された重合体(A)のことを「重合体粒子(A)」という。
することにより、耐酸化性と密着性とを同時に発現することができ、より良好な充放電特性を示す正極を製造することができる。なお、ポリマーアロイ粒子が重合体(Aa)と重合体(Ab)とを有する場合、耐酸化性を一層向上させることもできる。
上述したように、本実施の形態で使用する含フッ素系重合体粒子は、含フッ素エチレン系単量体に由来する繰り返し単位(Ma)を有する。含フッ素エチレン系単量体としては、例えばフッ素原子を有するオレフィン化合物、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。フッ素原子を有するオレフィン化合物としては、例えばフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば下記一般式(2)で表される化合物、(メタ)アクリル酸3[4〔1−トリフルオロメチル−2,2−ビス〔ビス(トリフルオロメチル)フルオロメチル〕エチニルオキシ〕ベンゾオキシ]2−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
目的を達成することは困難であった。
的に集中することによる電極劣化を効果的に抑制することができる点で好ましい。
上述したように、本実施の形態で使用する含フッ素系重合体粒子は、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(Mb)を有する。一般的に、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(Mb)を有する重合体は、密着性は良好であるが、耐酸化性が不良であると考えられており、従来から正極には使用されなかった。しかしながら、本願発明は、含フッ素エチレン系単量体に由来する繰り返し単位(Ma)と、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(Mb)と、を有する含フッ素系重合体粒子を使用することにより、良好な密着性を維持しつつ、十分な耐酸化性を発現することに成功したものである。
好ましくは75質量%以上である。
含フッ素系重合体粒子は、上記のような構成を採るものである限り、その合成方法は特に限定されないが、例えば公知の乳化重合工程またはこれを適宜に組み合わせることによって容易に合成することができる。
1.1.4.1.テトラヒドロフラン(THF)不溶分
重合体粒子(A)のTHF不溶分は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。THF不溶分は、蓄電デバイスで使用する電解液への不溶分量とほぼ比例すると推測される。このため、THF不溶分が前記範囲であれば、蓄電デバイスを作製して、長期間にわたり充放電を繰り返した場合でも電解液への重合体(A)の溶出を抑制できるため良好であると推測できる。
重合体粒子(A)が含フッ素系重合体粒子である場合、JIS K7121に準拠する示差走査熱量測定(DSC)によって測定したときに、−50〜250℃の温度範囲において吸熱ピークを1つしか有さないものであることが好ましい。この吸熱ピークの温度は
、−30〜+30℃の範囲にあることがより好ましい。含フッ素系重合体粒子の有する1つのみの吸熱ピークの温度が−30〜+30℃の範囲にある場合には、該粒子は電極活物質層に対してより良好な柔軟性と粘着性とを付与することができ、従って密着性をより向上させることができる点で好ましい。
重合体粒子(A)の平均粒子径は、50〜400nmの範囲にあることが好ましく、100〜250nmの範囲にあることがより好ましい。重合体粒子(A)の平均粒子径が前記範囲にあると、電極活物質の表面に重合体粒子(A)が十分に吸着することができるため、電極活物質の移動に伴って重合体粒子(A)も追従して移動することができる。その結果、両者の粒子のうちのどちらかのみが単独でマイグレーションすることを抑制することができるので、電気的特性の劣化を抑制することができる。
本実施の形態に係る電極用バインダー組成物は、シリコーン系化合物(B)を含有する。電極用バインダー組成物中にシリコーン系化合物(B)を添加することにより、シリコーン系化合物(B)が消泡剤として作用して、電極用バインダー組成物と電極活物質とを混合攪拌して電極用スラリーを作製する際に、電極用スラリー中に気泡が混入することを大幅に低減することができる。また、得られた電極用スラリーを集電体表面に塗工する際にも気泡の発生を低減できるので、電極活物質層の表面が良好な状態の電極を得ることができる。したがって、当該電極を備える蓄電デバイスは、充放電レート特性およびサイクル特性が極めて良好となる。
ppmであることが特に好ましい。電極用バインダー組成物中のケイ素濃度が前記範囲であると、該電極用バインダー組成物を使用して作製された電極用スラリーを集電体表面に塗布して作製された電極を備える蓄電デバイスは、充放電レート特性およびサイクル特性が極めて良好となる。
本実施の形態に係る電極用バインダー組成物は、液状媒体(C)を含有する。液状媒体(C)としては、水を含有する水系媒体であることが好ましい。上記水系媒体には、水以外の非水系媒体を含有させることができる。この非水系媒体としては、例えばアミド化合物、炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、アミン化合物、ラクトン、スルホキシド、スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。液状媒体(C)が水と、水以外の非水系媒体を含有する場合、液状媒体(C)の全量100質量%中、90質量%以上が水であることが好ましく、98質量%以上が水であることがさらに好ましい。本実施の形態に係る電極用バインダー組成物は、液状媒体(C)として水系媒体を使用することにより、環境に対して悪影響を及ぼす程度が低くなり、取扱作業者に対する安全性も高くなる。
本実施の形態に係る電極用バインダー組成物は、必要に応じて前述した成分(A)、成分(B)、成分(C)以外の添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば増粘剤が挙げられる。本実施の形態に係る電極用バインダー組成物は、増粘剤を含有することにより、その塗布性や得られる蓄電デバイスの充放電特性等をさらに向上させることができる。
前記の如き、前述の電極用バインダー組成物を用いて、本実施の形態に係る電極用スラリーを製造することができる。電極用スラリーとは、これを集電体の表面に塗布した後、乾燥して、集電体表面上に電極活物質層を形成するために用いられる分散液のことをいう。本実施の形態に係る電極用スラリーは、上述の電極用バインダー組成物と、電極活物質と、水と、を含有する。以下、本実施の形態に係る電極用スラリーに含まれる成分についてそれぞれ詳細に説明する。ただし、電極用バインダー組成物については、前述した通りであるから説明を省略する。
本実施の形態に係る電極用スラリーに含まれる電極活物質を構成する材料としては特に制限はなく、目的とする蓄電デバイスの種類により適宜適当な材料を選択することができる。
Li1+xM1 yM2 zO2 ・・・・・(4a)
Li1+xM1 yM2 zO4 ・・・・・(4b)
(式(4a)および(4b)中、M1はCo、NiおよびMnよりなる群から選択される少なくとも1種の金属原子であり;M2はAlおよびSnよりなる群から選択される少なくとも1種の金属原子であり;Oは酸素原子であり;x、yおよびzは、それぞれ、0.10≧x≧0、4.00≧y≧0.85および2.00≧z≧0の範囲の数である。)
Li1−xM3 x(XO4) ・・・・・(5)
(式(5)中、M3は、Mg、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、
Cu、Zn、Al、Ga、GeおよびSnよりなる群から選択される金属のイオンの少なくとも1種であり;Xは、Si、S、PおよびVよりなる群から選択される少なくとも1種であり;xは数であり、0<x<1の関係を満たす。)
なお、上記一般式(5)におけるxの値は、M3およびXの価数に応じて、それぞれ上記一般式(5)全体の価数が0価となるように選択される。
)等などを挙げることができる。この粒度分布測定装置は、電極活物質の一次粒子だけを評価対象とするものではなく、一次粒子が凝集して形成された二次粒子をも評価対象とする。従って、この粒度分布測定装置によって得られた平均粒子径(Db)は、電極用スラリー中に含まれる電極活物質の分散状態の指標とすることができる。なお、電極活物質の平均粒子径(Db)は、電極用スラリーを遠心分離して電極活物質を沈降させた後、その上澄み液を除去し、沈降した電極活物質を上記の方法により測定することによっても測定することができる。
上記電極用スラリーは、必要に応じて前述した成分以外の成分を含有することができる。このような成分としては、例えば導電付与剤、非水系媒体、増粘剤等が挙げられる。
上記導電付与剤の具体例としては、リチウムイオン二次電池においてはカーボンなどが;ニッケル水素二次電池においては、正極では酸化コバルトが:負極ではニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどが、それぞれ用いられる。上記両電池において、カーボンとしては、グラファイト、活性炭、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレンなどを挙げることができる。これらの中でも、アセチレンブラックまたはファーネスブラックを好ましく使用することができる。導電付与剤の使用割合は、電極活物質100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1〜15質量部であり、特に好ましくは2〜10質量部である。
上記電極用スラリーは、その塗布性を改善する観点から、80〜350℃の標準沸点を有する非水系媒体を含有することができる。このような非水系媒体の具体例としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;トルエン、キシレン、n−ドデカン、テトラリンなどの炭化水素;2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、ラウリルアルコールなどのアルコール;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン;酢酸ベンジル、酪酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル;o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジンなどのアミン化合物;γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトンなどのラクトン;ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルホキシド・スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。これらの中でも、重合体粒子の安定性、電極用スラリーを塗布する際の作業性などの点から、N−メチルピロリドンを使用することが好ましい。
上記電極用スラリーは、その塗工性を改善する観点から、増粘剤を含有することができる。増粘剤の具体例としては、上記「1.4.その他の添加剤」に記載した各種化合物が挙げられる。
本実施の形態に係る電極用スラリーは、前述の電極用バインダー組成物と、電極活物質と、水と、必要に応じて用いられる添加剤と、を混合することにより製造することができる。これらの混合には公知の手法による攪拌によって行うことができ、例えば攪拌機、脱
泡機、ビーズミル、高圧ホモジナイザーなどを利用することができる。
前述の電極用バインダー組成物に含まれる重合体粒子(A)の平均粒子径(Da)と電極活物質の数平均粒子径(Db)との比(Da/Db)は、正極では0.01〜1.0の範囲にあることが好ましく、0.05〜0.5の範囲にあることがより好ましい。負極では、0.002〜0.13の範囲にあることが好ましく、0.003〜0.1の範囲にあることがより好ましい。このことの技術的な意味は、以下の通りである。
が困難となる。一方、曳糸性が前記範囲を超えると、電極用スラリーを集電体上に塗布する際、液ダレが起き易くなり、安定した品質の電極が得られにくい。そこで、曳糸性が前記範囲にあれば、これらの問題の発生を抑制することができ、良好な電気的特性と密着性とを両立させた電極を製造することが容易となるのである。
まず、底部に直径5.2mmの開口部を有するザーンカップ(太佑機材株式会社製、ザーンビスコシティーカップNo.5)を準備する。この開口部を閉じた状態で、ザーンカップに電極用スラリー40gを流し込む。その後、開口部を開放すると、開口部から電極用スラリーが流れ出す。ここで、開口部を開放した時をT0、電極用スラリーの曳糸が終了した時をTA、電極用スラリーの流出が終了した時をTBとした場合に、本明細書における「曳糸性」は下記式(6)から求めることができる。
曳糸性(%)=((TA−T0)/(TB−T0))×100 ・・・・・(6)
本実施の形態に係る電極は、集電体と、前記集電体の表面上に前述の電極用スラリーが塗布および乾燥されて形成された層と、を備えるものである。かかる電極は、金属箔などの適宜の集電体の表面に、上述の電極用スラリーを塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜を乾燥して電極活物質層を形成することにより製造することができる。このようにして製造された電極は、集電体上に、前述の重合体(A)および電極活物質、さらに必要に応じて添加した任意成分を含有する電極活物質層が結着されてなるものである。かかる電極は、集電体と電極活物質層との密着能力に優れるとともに、電気的特性の一つである充放電レート特性が良好である。したがって、このような電極は蓄電デバイスの電極として好適である。
、電子線などの照射による乾燥などによることができる。乾燥速度としては、応力集中によって電極活物質層に亀裂が入ったり、電極活物質層が集電体から剥離したりしない程度の速度範囲の中で、できるだけ速く液状媒体が除去できるように適宜に設定することができる。
電極活物質層の密度(g/cm3)=(B(g)−A(g))/(C(cm2)×D(μm)×10−4) ・・・・・(7)
された細孔容積がV(cm3/g)である場合、下記式(8)によって定義される値である。
電極活物質層の空孔率(%)=((V[cm3/g]×B[g])/(C[cm2]×D[μm]×10−4))×100 ・・・・・(8)
細孔容積は、例えば水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法などにより測定することができる。水銀ポロシメーターとしては、例えばQuantachrome社製の品名「PoreMaster」、株式会社島津製作所製の品名「オートポアIV」などを用いることができる。
本実施の形態に係る蓄電デバイスは、上述の電極を備えるものであり、さらに電解液を含有し、セパレータなどの部品を用いて、常法に従って製造することができる。具体的な製造方法としては、例えば、負極と正極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、適宜の形状であることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
5.1.1.重合体粒子(A)の作製
電磁式撹拌機を備えた内容積約6Lのオートクレーブの内部を十分に窒素置換した後、脱酸素した純水2.5Lおよび乳化剤としてパーフルオロデカン酸アンモニウム25gを仕込み、350rpmで撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、単量体であるフッ化ビニリデン(VDF)70%および六フッ化プロピレン(HFP)30%からなる混合ガ
スを、内圧が20kg/cm2に達するまで仕込んだ。重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネートを20%含有するフロン113溶液25gを窒素ガスを使用して圧入し、重合を開始した。重合中は内圧が20kg/cm2に維持されるようVDF60.2%およびHFP39.8%からなる混合ガスを逐次圧入して、圧力を20kg/cm2に維持した。また、重合が進行するに従って重合速度が低下するため、3時間経過後に、先と同じ重合開始剤溶液の同量を窒素ガスを使用して圧入し、さらに3時間反応を継続した。その後、反応液を冷却すると同時に撹拌を停止し、未反応の単量体を放出した後に反応を停止することにより、重合体(Aa)の微粒子を40%含有する水系分散体を得た。得られた重合体(Aa)につき、19F−NMRにより分析した結果、各単量体の質量組成比はVDF/HFP=21/4であった。
THF不溶分(%)=((1−Y)/1)×100 ・・・・・(9)
さらに、得られた微粒子を示差走査熱量計(DSC)によって測定したところ、単一のガラス転移温度Tgが−5℃に一つだけ観測された。2種類の重合体を用いているにもかかわらず、得られた重合体粒子(A)は一つのTgしか示さないため、得られた重合体粒子(A)はポリマーアロイ粒子であると推測できる。
上記で得られた重合体粒子(A)を含有する水系分散体1,000gに、シリコーン系化合物(B)としてSNデフォーマー381(サンノプコ株式会社製)を0.8g仕込み、300rpmで撹拌することにより、電極用バインダー組成物の調製を行った。なお、以下の実施例、比較例において、シリコーン系化合物(B)が水不溶性の場合、超音波により水溶液に分散させた状態の分散液を添加して電極用バインダー組成物の調製を行った。
xPRO」)を用いて蛍光X線強度を測定し、あらかじめ作成しておいたケイ素濃度と蛍光X線強度との関係を示す検量線からケイ素濃度を求めたところ、ケイ素濃度は200ppmであった。なお、この分析においてケイ素濃度が2,500ppm以上である場合には、電極用バインダー組成物を水で希釈して測定することにより正確なケイ素濃度を求めることができる。
電極用バインダー組成物の貯蔵環境は、コストの観点から温度管理を厳密に行うことができず、このため気温の変化により0℃近くの環境に晒される場合も多い。このため、下記の凍結温度の評価において、0℃で凍結することは許容できず、凍結温度が−0.5℃以下であることが要求される。したがって、凍結温度が−0.5℃以下である場合、電極用バインダー組成物の安定性が高く、良好であると判断できる。
上記で調製した電極用バインダー組成物をポリビンに1000g充填し、その後−10℃の冷凍庫に保管し、凍結が開始する温度(凍結温度)を測定した。その結果、電極用バインダー組成物の凍結温度は−0.6℃であった。凍結温度評価の結果を表1に併せて示した。
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)に増粘剤(商品名「CMC1120」、株式会社ダイセル製)1質量部(固形分換算)、市販のリン酸鉄リチウム(LiFePO4)をめのう乳鉢で粉砕し、ふるいを用いて分級することにより得られた粒子径(D50値)が0.5μmである電極活物質100質量部、アセチレンブラック5質量部および水68質量部を投入し、60rpmで1時間攪拌を行った。次いで、上記「5.1.2.電極用バインダー組成物の調製」で得られた電極用バインダー組成物を、該組成物中に含有される重合体粒子が1質量部となるように加え、さらに1時間攪拌してペーストを得た。得られたペーストに水を加えて固形分濃度を50%に調整した後、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、1,800rpmで5分間、さらに真空下(約5.0×103Pa)において1,800rpmで1.5分間攪拌混合することにより、電極用スラリーを調製した。
得られた電極用スラリーの曳糸性を、以下のようにして測定した。
先ず、容器の底辺に直径5.2mmの開口部が存在するザーンカップ(太佑機材株式会社製、ザーンビスコシティーカップNo.5)を準備した。このザーンカップの開口部を閉じた状態で、上記で調製した電極用スラリーを40g流し込んだ。開口部を開放するとスラリーが流れ出した。このとき、開口部を開放した瞬間の時間をT0とし、スラリーが流れ出る際に糸を曳くようにして流出し続けた時間を目視で測定し、この時間をTAとした。さらに、糸を曳かなくなってからも測定を継続し、電極用スラリーが流れ出なくなるまでの時間TBを測定した。測定した各値T0、TAおよびTBを下記式(6)に代入して曳糸性を求めた。
曳糸性(%)=((TA−T0)/(TB−T0))×100 ・・・・・(6)
電極用スラリーの曳糸性が30〜80%である場合に良好と判断できる。曳糸性の測定結果を表1に併せて示した。
厚み30μmのアルミニウム箔からなる集電体の表面に、上記で調製した電極用スラリーを、乾燥後の膜厚が100μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し
、120℃で20分間乾燥した。その後、膜(電極活物質層)の密度が表1に記載の値になるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、電極(正極)を得た。
得られた電極から、幅2cm×長さ12cmの試験片を切り出し、この試験片の電極活物質層側の表面を、両面テープを用いてアルミ板に貼り付けた。一方、試験片の集電体の表面に、幅18mmテープ(ニチバン株式会社製、商品名「セロテープ(登録商標)」、JIS Z1522に規定)を貼り付けた。この幅18mmテープを90°方向に50mm/minの速度で2cm剥離したときの力(mN/2cm)を6回測定し、その平均値を密着強度(ピール強度、mN/2cm)として算出した。なお、ピール強度の値が大きいほど、集電体と電極活物質層との密着強度が高く、集電体から電極活物質層が剥離し難いと評価することができるが、ピール強度の値が20mN/2cm以上である場合には良好であると判断できる。ピール強度の測定結果を表1に併せて示した。
得られた電極を、幅2cm×長さ10cmの極板に切り出し、幅方向に直径2mmの丸棒に沿って正極板を折り曲げ回数100回にて繰り返し折り曲げ試験を行った。丸棒に沿った部分のクラックの大きさを目視により観察し計測し、クラック率を測定した。クラック率は、下記式(10)によって定義した。
クラック率(%)=(クラックの入った長さ[mm]÷極板全体の長さ[mm])×100 ・・・・・(10)
ここで、柔軟性や密着性に優れた電極板はクラック率が低い。クラック率は0%であることが望ましいが、セパレータを介して渦巻き状に捲回して極板群を製造する場合には、クラック率が20%までなら許容される。しかしながら、クラック率が20%より大きくなると、電極が切れ易くなり極板群の製造が不可能となり、極板群の生産性が低下する。このことから、クラック率の閾値として20%までが良好な範囲であると考えられる。クラック率の測定結果を表1に併せて示した。
<対極(負極)の製造>
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部(固形分換算)、負極活物質としてグラファイト100質量部(固形分換算)、N−メチルピロリドン(NMP)80質量部を投入し、60rpmで1時間撹拌を行った。その後、さらにNMP20質量部を投入した後、撹拌脱泡機(株式会社シンキー製、製品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、次いで1,800rpmで5分間、さらに真空下において1,800rpmで1.5分間撹拌・混合することにより、対極(負極)用スラリーを調製した。
露点が−80℃以下となるようAr置換されたグローブボックス内で、上記で製造した電極(負極)を直径15.95mmに打ち抜き成型したものを、2極式コインセル(宝泉株式会社製、商品名「HSフラットセル」)上に載置した。次いで、直径24mmに打ち抜いたポリプロピレン製多孔膜からなるセパレータ(セルガード株式会社製、商品名「セルガード#2400」)を載置し、さらに、空気が入らないように電解液を500μL注
入した後、上記で製造した正極を直径16.16mmに打ち抜き成型したものを載置し、前記2極式コインセルの外装ボディーをネジで閉めて封止することにより、リチウムイオン電池セル(蓄電デバイス)を組み立てた。ここで使用した電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1(質量比)の溶媒に、LiPF6を1モル/Lの濃度で溶解した溶液である。
上記で製造した蓄電デバイスにつき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として、0.2Cでの充電容量を測定した。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.2Cでの放電容量を測定した。
上記で充放電レートを評価した蓄電デバイスにつき、定電流(0.5C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として、0.5Cでの充電容量を測定した。次いで、定電流(0.5C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.5Cでの放電容量を測定した。この充放電を1サイクルとして、100サイクルまで充放電を繰り返した。
上記実施例1の「5.1.1.重合体粒子(A)の作製」において、単量体の組成と乳化剤量を適宜に変更したほかは実施例1と同様にして、表1に示す組成の重合体粒子(A)を含有する水系分散体を調製し、該水系分散体の固形分濃度に応じて水を減圧除去または追加することにより、固形分濃度40%の水系分散体を得た。なお、実施例2〜7および比較例1で得られた微粒子を示差走査熱量計(DSC)によって測定したところ、単一のガラス転移温度Tgが表1に記載の温度で一つだけ観測された。2種類の重合体を用い
ているにもかかわらず、得られた重合体粒子(A)は一つのTgしか示さないため、重合体粒子(A)はポリマーアロイ粒子であると推測できる。
5.3.1.重合体粒子(A)の作製
容量7リットルのセパラブルフラスコに、水150質量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を仕込み、セパラブルフラスコの内部を十分に窒素置換した。一方、別の容器に、水60質量部、乳化剤としてエーテルサルフェート型乳化剤(商品名「アデカリアソープSR1025」、株式会社ADEKA製)を固形分換算で0.8質量部ならびに単量体として2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)20質量部、アクリロニトリル(AN)10質量部、メチルメタクリレート(MMA)25質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)40質量部およびアクリル酸(AA)5質量部を加え、十分に攪拌して上記単量体の混合物を含有する単量体乳化液を調製した。その後、上記セパラブルフラスコの内部の昇温を開始し、当該セパラブルフラスコの内部の温度が60℃に到達した時点で、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5質量部を加えた。そして、セパラブルフラスコの内部の温度が70℃に到達した時点で、上記で調製した単量体乳化液の添加を開始し、セパラブルフラスコの内部の温度を70℃に維持したまま単量体乳化液を3時間かけてゆっくりと添加した。その後、セパラブルフラスコの内部の温度を85℃に昇温し、この温度を3時間維持して重合反応を行った。3時間後、セパラブルフラスコを冷却して反応を停止した後、アンモニウム水を加えてpHを7.6に調整することにより、重合体粒子(A)を30%含有する水系分散体を得た。
各単量体の種類および仕込み量(部)をそれぞれ表1に記載の通りとした以外は上記実施例8と同様にして、表1に記載の平均粒子径の重合体粒子(A)を含有する水系分散体をそれぞれ得た。このようにして得られた水系分散体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして電極用バインダー組成物、電極用スラリー、電極および蓄電デバイスを作製して評価した。
実施例1〜10および比較例1に係る電極用バインダー組成、ならびに上記の評価結果を表1に併せて示した。
<重合体(A)組成>
・VDF:フッ化ビニリデン
・HFP:六フッ化プロピレン
・TFEMA:メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル
・TFEA:アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル
・HFIPA:アクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル
・MMA:メタクリル酸メチル
・EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
・MAA:メタクリル酸
・AA :アクリル酸
・DVB:ジビニルベンゼン
・TMPTMA:トリメタクリル酸トリメチロールプロパン
・AN :アクリロニトリル
<シリコーン系化合物(B)>
・B−1:サンノプコ株式会社製、商品名「SNデフォーマー381」
・B−2:サンノプコ株式会社製、商品名「SNデフォーマー113」
・B−3:信越化学工業株式会社製、商品名「KM−73M」
・B−4:ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−1615」
Claims (9)
- 蓄電デバイスに使用される電極を作製するためのバインダー組成物であって、
重合体(A)と、シリコーン系化合物(B)と、液状媒体(C)と、を含有し、
前記重合体(A)が、含フッ素エチレン系単量体に由来する繰り返し単位(Ma)と、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位(Mb)と、を有する含フッ素系重合体粒子であり、
前記含フッ素系重合体粒子についてJIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、−50〜+250℃の温度範囲における吸熱ピークが1つのみ観測されることを特徴とする、電極用バインダー組成物。 - 前記吸熱ピークが−30〜+30℃の温度範囲に観測される、請求項1に記載の電極用バインダー組成物。
- 前記含フッ素系重合体粒子がポリマーアロイ粒子である、請求項1または請求項2に記載の電極用バインダー組成物。
- 前記バインダー組成物中におけるケイ素濃度が5〜20,000ppmである、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電極用バインダー組成物。
- 前記含フッ素系重合体粒子の平均粒子径が50〜400nmである、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電極用バインダー組成物。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電極用バインダー組成物と、電極活物質と、を含有する、電極用スラリー。
- 集電体と、前記集電体の表面上に請求項7に記載の電極用スラリーを用いて形成された層と、を備える電極。
- 請求項8に記載の電極を備える蓄電デバイス。
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