JP2015153530A - リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明は、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用正極、そして出力特性およびサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
このように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とアミド基含有単量体単位を含み、アミド基含有単量体単位の含有割合が上記特定の範囲内である共重合体をフッ素含有重合体と併用した結着材を含むスラリー組成物を用いて作製した正極を使用すれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることができる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用正極、そして出力特性およびサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池の正極を形成する際に用いられる。そして、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて作製することができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を用いたことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、有機溶媒を分散媒とした組成物であり、その有機溶媒中に結着材、正極活物質および導電材を含む。そして、結着材として、少なくとも以下の(1)、(2)の重合体、
(1)アミド基含有単量体単位を10〜60質量%含み、さらに(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む共重合体(P1)
(2)フッ素含有重合体(P2)
を含むことを特徴とする。
なお、本発明において「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
また、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
ここで、共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)を併用することによるリチウムイオン二次電池の電気的特性の向上は、フッ素含有重合体(P2)の有する諸特性(結着性、機械的強度、スラリー特性など)と、共重合体(P1)の有する以下の2つの特性とに因るものであると考えられる。
第2に、共重合体(P1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、そしてアミド基含有単量体単位を所定の割合以下で含むため、電解液中で適度に膨潤する。そして、共重合体(P1)が電解液中で過度に膨潤せず(即ち溶解したような状態とならず)に正極中でその形状が維持されているため、共重合体(P1)の結着力、正極活物質の劣化抑制効果および集電体の腐食抑制効果が確保され、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができると推察される。一方で、共重合体(P1)は電解液中である程度は膨潤しているため、電解液の拡散性およびアミド基によるハロゲンイオンのトラップ容易性が好適に確保されて、リチウムイオン二次電池の出力特性及びサイクル特性を向上させることができると推察される。
以下、上記リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物に含まれる各成分について説明する。
結着材は、本発明のスラリー組成物を用いて集電体上に正極合材層を形成することにより製造した正極において、正極合材層に含まれる成分が正極合材層から脱離しないように保持しうる成分である。一般的に、正極合材層における結着材は、電解液に浸漬された際に、電解液を吸収して膨潤しながらも正極活物質同士、正極活物質と導電材、或いは、導電材同士を結着させ、正極活物質等が集電体から脱落するのを防ぐ。
共重合体(P1)のアミド基含有単量体単位を形成し得るアミド基含有単量体は、アミド基と、他の単量体と共重合可能な基(例えば、ビニル基などの炭素−炭素不飽和結合を有する基)とを有する化合物であれば特に限定されないが、アミド基および炭素−炭素二重結合を有する化合物(アミド基含有ビニル化合物)が好ましい。アミド基含有ビニル化合物としては、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。そして、これらの中でも、スラリー組成物中で共重合体(P1)の有機溶媒への溶解性を確保し、出力特性およびサイクル特性を向上させる観点から、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミドが好ましい。そして、リチウムイオン二次電池の出力特性を向上させる観点から、N−ビニルアセトアミドがより好ましい。即ち、共重合体(P1)は、アミド基含有単量体単位として、N−ビニルアセトアミド単量体単位およびアクリルアミド単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、N−ビニルアセトアミド単量体単位を含むことがより好ましい。
なお、これらのアミド基含有単量体は単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、2−エチルヘキシルアクリレート(非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が8)が特に好ましい。
なお、共重合体(P1)が(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリロトリルなどの極性が高い単量体由来の単量体単位を含むことで、共重合体(P1)の接着性が向上し接触抵抗が低減され、リチウムイオン二次電池の出力特性を向上させることができる。
また、共重合体(P1)は、電解液膨潤度が1倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。電解液膨潤度が1倍以上であれば、電解液の拡散性が確保され、共重合体(P1)を含むスラリー組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池の出力特性を確保することができる。ここで、電解液膨潤度は、共重合体(P1)の調製条件(例えば、使用する単量体、重合条件など)を変更することにより適宜調整することができる。
なお、本発明において、「電解液膨潤度」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
フッ素含有重合体(P2)は、フッ素含有単量体単位を含む重合体である。具体的には、フッ素含有重合体(P2)としては、1種類以上のフッ素含有単量体の単独重合体または共重合体や、1種類以上のフッ素含有単量体とフッ素を含有しない単量体(以下、「フッ素非含有単量体」と称する。)との共重合体が挙げられる。
なお、フッ素含有重合体(P2)におけるフッ素含有単量体単位の含有割合は、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上である。また、フッ素含有重合体(P2)におけるフッ素非含有単量体単位の含有割合は、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。そして、フッ素含有重合体(P2)のアミド基含有単量体単位の含有割合は、10質量%未満である。
具体的には、フッ素含有重合体(P2)としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体およびポリフッ化ビニルが好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。
なお、上述したフッ素含有重合体(P2)は、一種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい
そして、共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)は、例えば、それぞれ上述した単量体を含む単量体組成物を水系溶媒中で重合することにより製造される。本発明において単量体組成物中の各単量体の含有割合は、共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)における単量体単位(繰り返し単位)の含有割合に準じて定めることができる。
ここで、上述した共重合体(P1)およびフッ素含有重合体(P2)の製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。
また、重合方法としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。また、重合開始剤としては、既知の重合開始剤を用いることができる。
ここで、本発明のスラリー組成物中において、共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)の含有量の比(P1:P2)は、質量基準で5:95〜50:50であることが好ましく、5:95〜30:70であることがより好ましく、115:85〜30:70であることが更により好ましく、20:80〜30:70であることが特に好ましい。P1:P2=5:95より共重合体(P1)が多いことで、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を十分に向上させることができる。またP1:P2=50:50よりフッ素含有重合体(P2)が多いことで、スラリー組成物中の導電材や正極活物質の凝集が抑制され、当該スラリー組成物を用いて作製した正極を備えるリチウムイオン二次電池の出力特性を更に向上させることができる。
スラリー組成物に配合する正極活物質としては、特に限定されることなく、例えば、特開2013−152955号公報に記載された正極活物質などの既知の正極活物質を用いることができる。中でも、正極活物質としては、Mg、Ca、Ti、Zr、B、Alからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を表面に有するコバルト酸リチウム(LiCoO2)粒子が好ましい。粒子表面の少なくとも一部に、Mg、Ca、Ti、Zr、B、Alからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物が存在するコバルト酸リチウム粒子を使用することで、正極活物質表面での電解液の分解を抑制することができ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる。この効果は、特にリチウムイオン二次電池が高電圧で使用される際に顕著に現れる。
導電材は、正極活物質同士の電気的接触を確保するためのものである。そして、導電材としては、特に限定されることなく、既知の導電材を用いることができる。具体的には、導電材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンフレーク、炭素超短繊維(例えば、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維など)等の導電性炭素材料;各種金属のファイバー、箔などを用いることができる。これらの中でも、正極活物質同士の電気的接触を向上させ、スラリー組成物を用いて形成した正極を使用したリチウムイオン二次電池の電気的特性を向上させる観点からは、導電材として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラックを用いることが好ましく、アセチレンブラックを用いることが特に好ましい。
なお、これら導電材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のスラリー組成物中に含まれる有機溶媒としては、結着材を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、有機溶媒としては、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、アセチルピリジン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルホルムアミド、メチルエチルケトン、フルフラール、エチレンジアミンなどを用いることができる。これらの中でも、取扱い易さ、安全性、合成の容易さなどの観点から、有機溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
本発明のスラリー組成物は、上記成分の他に、例えば、粘度調整剤、補強材、酸化防止剤、電解液の分解を抑制する機能を有する電解液添加剤などの成分を含有していてもよい。これらの他の成分は、公知のものを使用することができる。
本発明のスラリー組成物は、各成分を有機溶媒中に溶解及び/又は分散させることにより調製することができる。具体的には、スラリー組成物は、例えば、結着材としての共重合体(P1)と有機溶媒とを含む共重合体(P1)含有組成物を予め調製し(共重合体(P1)含有組成物調製工程)、その後、共重合体(P1)含有組成物と、結着材としてのフッ素含有重合体(P2)と、正極活物質と、導電材と、任意に、その他の成分および追加の有機溶媒とを混合することにより(混合工程)、調製することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、本発明のスラリー組成物を用いて得られる正極合材層を有する。より具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と、集電体上に形成された正極合材層とを備え、正極合材層には、少なくとも、正極活物質と、導電材と、結着材とが含まれている。なお、正極中に含まれている、正極活物質、導電材および結着材は、本発明のスラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、本発明のスラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
上記リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる正極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に正極合材層を形成し、集電体と正極合材層とを備えるリチウムイオン二次電池用正極を得ることができる。
さらに、正極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、正極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、正極として、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を用いたものである。そして、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を用いているので、出力特性およびサイクル特性に優れている。
リチウムイオン二次電池の負極としては、リチウムイオン二次電池用負極として用いられる既知の負極を用いることができる。具体的には、負極としては、例えば、金属リチウムの薄板よりなる負極や、負極合材層を集電体上に形成してなる負極を用いることができる。
なお、集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料からなるものを用いることができる。また、負極合材層としては、負極活物質とバインダーとを含む層を用いることができる。
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましく、LiPF6が特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができ、例えば0.5〜15質量%することが好ましく、2〜13質量%とすることがより好ましく、5〜10質量%とすることが更に好ましい。また、電解液には、既知の添加剤、例えばフルオロエチレンカーボネートやエチルメチルスルホンなどを添加してもよい。
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。リチウムイオン二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
共重合体(P1)の電解液膨潤度、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
調製した共重合体(P1)の濃度8%のN−メチル−2−ピロリドン溶液(共重合体(P1)含有組成物)を、乾燥後の厚みが100μmになるようにテフロン(登録商標)シャーレに流しこみ乾燥して、重合体フィルムを作成した。得られた重合体フィルムから直径16mmの円形試料を打ち抜き、重量を測定した(重量を「A」とする)。次に、非水電解液(組成:濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(重量比)の混合溶媒)を準備した。そして、非水電解液20gに、円形試料を60℃で72時間浸漬させた。その後、膨潤した円形試料を取り出し、表面の非水電解液を軽く拭き取ってから重量を測定した(重量を「B」とする)。これらの値より電解液膨潤度(=B/A)を求めた。値が大きい程、電解液中で膨潤し易く、変形量が大きいことを示す。
<出力特性>
作製したパウチ型リチウムイオン二次電池を、25℃環境下、電流140mAで電圧が4.4Vになるまで定電流充電し、電圧4.4Vで充電電流が14mAになるまで定電圧充電を行った。続いて、電流140mAで電池電圧が3Vになるまで定電流放電を行い、初期容量とした。
初期容量を測定したパウチ型リチウムイオン二次電池を、25℃環境下、140mAで電池電圧が4.4Vになるまで定電流充電し、電圧4.4Vで充電電流が14mAになるまで定電圧充電を行った。続いて、電流1400mAで電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、2C容量とした。(2C容量)/(初期容量)×100(%)の値を出力特性とし、下記の基準に従い評価を行った。この値が高いほど、初期出力特性に優れ、すなわち内部抵抗が小さいことを意味する。
A:出力特性が90%以上である。
B:出力特性が87%以上90%未満である。
C:出力特性が84%以上87%未満である。
D:出力特性が84%未満である。
<サイクル特性>
出力特性を評価したパウチ型リチウムイオン二次電池について、60℃環境下、700mAで電池電圧が4.4Vになるまで充電し、700mAで電池電圧が3.0Vになるまで放電する操作を100回(100サイクル)繰り返し、放電容量を測定した。100サイクル終了時の放電容量に対する1サイクル終了時の放電容量の割合を百分率で算出したもの(=(100サイクル終了時の放電容量)/(1サイクル終了時の放電容量)×100%)を充放電容量保持率とし、下記の基準でサイクル特性を評価した。充放電容量保持率の値が高いほど高温サイクル特性に優れることを示す。
A:充放電容量保持率が80%以上である。
B:充放電容量保持率が77%以上80%未満である。
C:充放電容量保持率が74%以上77%未満である。
D:充放電容量保持率が70%以上74%未満である。
D:充放電容量保持率が70%未満である。
<共重合体(P1)の調製>
攪拌機付きのフラスコ中にイオン交換水90質量部、乳化剤としてドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.7質量部を入れた後、アミド基含有単量体としてN−ビニルアセトアミド25質量部、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート75質量部を入れ十分に撹拌した。その後70℃に昇温させ、該温度で保持した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れた後、70℃で3時間、80℃で2時間加温して重合を行い、共重合体P1の水分散液を得た。
続いて、得られた共重合体P1の水分散液にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を共重合体固形分が7%になるよう添加した。そして、90℃にて減圧蒸留を実施して水および過剰なNMPを除去し、固形分濃度8%の共重合体(P1)のNMP溶液(共重合体(P1)含有組成物)を得た。
そして、得られた共重合体(P1)含有組成物を用いて、共重合体(P1)の電解液膨潤度を測定した。結果を表1に示す。
正極活物質としてその粒子表面にZrの酸化物(ZrO2)を有するコバルト酸リチウム粒子(体積平均粒子径:20μm)100部と、導電材としてアセチレンブラック(AcB,電気化学工業社製、デンカブラック(登録商標)粉状品:個数平均粒子径35nm、比表面積68m2/g)2.0部と、上述のように調製した共重合体(P1)含有組成物を固形分相当で0.4部と、フッ素含有重合体(P2)としてPVDF(フッ化ビニリデン由来の単量体単位の含有割合が100%)を固形分相当で1.6部と、NMPとをプラネタリーミキサーに固形分濃度が78%となるように添加し、60分固練りした。この固練り時のシェアは680W/kgであった。その後、さらにNMPを添加しプラネタリーミキサーを用いて混練し、正極用スラリー組成物を調製した。この正極用スラリー組成物は、温度25℃、せん断速度20s−1の条件で二重円筒型回転粘度計を用いて測定した粘度が約4000mPa・sであった。
集電体として厚さ15μmのアルミ箔を準備した。そして、上記正極用スラリー組成物をアルミ箔の両面に乾燥後の塗布量が20mg/cm2になるように塗布し、60℃で20分、120℃で20分間乾燥して正極原反を得た。この正極原反をロールプレスで圧延し、密度が3.7g/cm3の正極合材層とアルミ箔とからなるシート状正極を作製した。そして、シート状正極を幅4.8mm、長さ50cmに切断し、二次電池用正極とした。
負極活物質として球状人造黒鉛(体積平均粒子径:12μm)100部、結着材としてスチレンブタジエン重合体(個数平均粒子径:180nm、ガラス転移温度:−40℃)1部、粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロース1部、および、適量の水をプラネタリーミキサーにて攪拌し、負極用スラリー組成物を調製した。
次に、集電体として厚さ15μmの銅箔を準備した。そして、上記負極用スラリー組成物を銅箔の両面に乾燥後の塗布量が12mg/cm2になるように塗布し、50℃で20分、120℃で20分間乾燥後、150℃で2時間加熱処理して負極原反を得た。この負極原反をロールプレスで圧延し、密度が1.8g/cm3の負極合材層と銅箔とからなるシート状負極を作製した。そして、シート状負極を幅5.0mm、長さ52cmに切断し、二次電池用負極とした。
作製したリチウムイオン二次電池用正極とリチウムイオン二次電池用負極とを、セパレータ(厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔膜)を介在させて直径20mmの芯を用いて捲回し、捲回体を得た。得られた捲回体は、10mm/秒の速度で厚さ4.5mmになるまで一方向から圧縮した。なお、圧縮後の捲回体は平面視楕円形をしており、その長径と短径との比(長径/短径)は7.7であった。
また、非水電解液(組成:濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(重量比)の混合溶媒)を準備した。
そして、圧縮した捲回体を所定のアルミラミネート製ケース内に3.2gの非水電解液とともに収容した。そして、負極に接続したニッケルリード線および正極に接続したアルミニウムリード線を所定の箇所に接続したのち、ケースの開口部を熱で封口し、リチウムイオン二次電池とした。このリチウムイオン二次電池は、幅35mm、高さ48mm、厚さ5mmのパウチ形であり、電池の公称容量は700mAhである。得られたリチウムイオン二次電池について、出力特性およびサイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
共重合体P1調製時にN−ビニルアセトアミドと2−エチルヘキシルアクリレートの配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
共重合体P1調製時にアミド基含有単量体としてのN−ビニルアセトアミドをアクリルアミドに変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
共重合体P1調製時に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としての2−エチルヘキシルアクリレートをn−ブチルアクリレートに変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
共重合体P1調製時に2−エチルヘキシルアクリレートの配合量を45質量部に変更し、その他の単量体として、それぞれ、メタクリル酸30質量部、アクリロニトリル30質量部を加えた以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
スラリー組成物調製時に共重合体P1とフッ素含有重合体P2の配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
正極活物質としてそれぞれ、その粒子表面にAlの酸化物(Al2O3)を有するコバルト酸リチウム粒子、その粒子表面にMgの酸化物(MgO)を有するコバルト酸リチウム粒子を使用した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
共重合体P1調製時にN−ビニルアセトアミドと2−エチルヘキシルアクリレートの配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
共重合体P1調製時にN−ビニルアセトアミドと2−エチルヘキシルアクリレートの配合量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体P1の水分散液を調製したが、共重合体P1がNMPに溶解せず、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を調製することができなかった。
共重合体P1を使用せず、結着材としてフッ素含有重合体(P2)としてのPVDFを固形分相当で2.0部使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を製造し、評価を行なった。結果を表1に示す。
一方、アミド基含有単量体単位の含有割合が所定の範囲を超える共重合体(P1)を用いた比較例1では、サイクル特性はある程度確保できてはいるが、出力特性が極端に悪く、サイクル特性と出力特性をバランスよく向上させることができていないことが分かる。また、アミド基含有単量体単位の含有割合が所定の範囲に満たない共重合体(P1)を用いた比較例2では、上述のように、共重合体P1がNMPに溶解せず、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を調製することができなかった。
また、表1の実施例1、2、4〜7より、共重合体(P1)中アミド基含有単量体の割合を変更することにより、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させ得ることが分かる。
更に、表1の実施例1および8より、共重合体(P1)中(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類を変更することにより、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させ得ることが分かる。
加えて、表1の実施例1、11〜13より、共重合体(P1)とフッ素含有重合体(P2)の含有量の比を変更することで、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を更に向上させ得ることが分かる。
また、表1の実施例1、14および15より、正極活物質としてのコバルト酸リチウム粒子の表面に存在する酸化物の種類を変更することで、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させ得ることが分かる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を十分に向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用正極、そして出力特性およびサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
Claims (9)
- 結着材、正極活物質、導電材および有機溶媒を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物であって、前記結着材が、
アミド基含有単量体単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、前記アミド基含有単量体単位の含有割合が10〜60質量%である共重合体(P1)と、
フッ素含有重合体(P2)と
を含む、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。 - 前記共重合体(P1)と前記フッ素含有重合体(P2)の含有量の比(P1:P2)が、質量基準で5:95〜50:50である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
- 前記共重合体(P1)の電解液膨潤度が5倍以下である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
- 前記アミド基含有単量体単位が、N−ビニルアセトアミド単量体単位およびアクリルアミド単量体単位の少なくとも一方を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
- 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基が、炭素数4以上の直鎖または分岐アルキル基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
- 前記フッ素含有重合体(P2)がフッ化ビニリデン単量体単位を75質量%以上含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
- 前記正極活物質が、Mg、Ca、Ti、Zr、B、Alからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を表面に有するコバルト酸リチウム粒子を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて得られる正極合材層を有する、リチウムイオン二次電池用正極。
- 請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備えるリチウムイオン二次電池。
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