JP6582879B2 - 電気化学素子用導電性組成物、電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体及び電気化学素子用電極 - Google Patents

電気化学素子用導電性組成物、電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体及び電気化学素子用電極 Download PDF

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Description

本発明は、濡れ性、及び塗工性に優れた電気化学素子用導電性組成物、この電気化学素子用導電性組成物を用いて得られる電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体及び電気化学素子用電極に関するものである。
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能な電気化学素子、特にリチウムイオン電池は、その特性を活かして急速に需要を拡大している。また、リチウムイオン電池に代表される電気化学素子は、エネルギー密度、出力密度が大きいことから、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータの小型用途から、車載などの大型用途での利用が期待されている。そのため、これらの電気化学素子には、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、高容量化、高耐電圧、機械的特性、サイクル寿命の向上など、よりいっそうの改善が求められている。
電気化学素子は、有機系電解液を用いることで作動電圧を高め、エネルギー密度を高めることができるが、一方では電解液の粘度が高いために、内部抵抗が大きいという問題点があった。
内部抵抗を低減させるために、電極組成物層と集電体との間に導電性接着剤層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1においては、導電性カーボン、水溶性高分子、粒子状結着剤、及び分散媒を含む電気化学素子用導電性組成物を用いて導電性接着剤層を形成している。
国際公開第2014/051043号
ところで、集電体への塗工性を考慮すると、導電性組成物の粘度を低くすることや、集電体への濡れ性を高めることが求められる。粘度を低くするためには、例えば、導電性カーボンの凝集を抑える必要がある。また、導電性カーボンが凝集すると、導電性組成物を用いて得られる導電性接着剤層は導電性に劣るため、得られる電池において出力特性に劣る虞がある。また、粘度が高い場合には、固形分濃度を高くすることができないため、電気化学素子用電極の量産性に劣る可能性がある。また、通常、導電性組成物は製造後、保管容器に所定期間保管され、その後、導電性接着剤層の形成に用いられるが、保管中に導電性組成物の成分が沈降する。従って、導電性組成物を再分散させる必要があり、導電性組成物には、沈降後の再分散性が良好であることが求められる。
したがって、本発明は、集電体に対する濡れ性及び塗工性に優れ、得られる電気化学素子の出力特性が良好である電気化学素子用導電性組成物、この電気化学素子用導電性組成物を含む電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体、及び電気化学素子用電極を提供することである。
本発明者は鋭意検討の結果、特定の導電材を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、
(1) 導電材として比表面積が25m/g以上かつ300m/g以下である単一または複数のカーボンブラックを、1質量%以上20質量%以下含み、[(容器に保管して30日間静置した後に容器を撹拌した後の液面近傍の固形分濃度)/(容器に保管した直後の液面近傍の固形分濃度)]×100の値が、60以上100以下である電気化学素子用導電性組成物、
(2) スラリー状であって、表面張力が65mN/m以下である(1)記載の電気化学素子用導電性組成物、
(3) スラリー状であって、B型粘度計で25℃、60rpmにおいて測定した粘度が200mPa・s以下である(1)又は(2)記載の電気化学素子用導電性組成物。
(4) 水溶性高分子として、セルロース誘導体、デンプン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、キチン、キトサン、または、アクリル酸・メタクリル酸・マレイン酸・無水マレイン酸・スルホン酸・アクリルアミド・エチレンオキサイドの単一重合体もしくは他のモノマーとの共重合体から選ばれる少なくとも1種を含む(1)〜(3)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物、
(5) 二塩基酸単量体単位を有する粒子状共重合体を含む(1)〜(4)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物、
(6) 濡れ材として、末端に水酸基を持つポリアミド重合体またはポリエステル重合体を含む(1)〜(5)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物、
(7) 前記導電材として、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバー、フラーレンから選ばれる少なくとも1種をさらに含む(1)〜(6)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物、
(8) (1)〜(7)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物を含んでなり、電極活物質を含有する、電気化学素子電極用組成物、
(9) 集電体上に、(1)〜(7)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物から得られる導電性接着剤層を有する、接着剤層付集電体、
(10) (9)に記載の接着剤層付集電体の前記導電性接着剤層上に、電極活物質を含む電極組成物層を有する、電気化学素子用電極
が提供される。
本発明によれば、集電体に対する濡れ性及び塗工性に優れ、得られる電気化学素子の出力特性が良好である電気化学素子用導電性組成物、この電気化学素子用導電性組成物を含む電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体、及び電気化学素子用電極が提供される。
以下、本発明について、実施形態を含めてさらに具体的に説明する。本発明の電気化学素子用導電性組成物は、導電材として比表面積が25m/g以上かつ300m/g以下である単一または複数のカーボンブラックを、1質量%以上20質量%以下含み、[(容器に保管して30日間静置した後に容器を撹拌した後の液面近傍の固形分濃度)/(容器に保管した直後の液面近傍の固形分濃度)]×100の値が、60以上100以下であることを特徴とする。
(導電材)
本発明に係る電気化学素子用導電性組成物(以下、単に「導電性組成物」と記載することがある)に用いる導電材としては、カーボンブラックを必須成分として含む。カーボンブラックは、黒鉛質の炭素微結晶が数層集まって乱層構造を形成した球状集合体であり、具体的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、その他のファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラックなどを例示することができる。
ここで、本発明に用いるカーボンブラックの比表面積は、良好な導電性を保つ観点から、25m/g以上かつ300m/g以下、好ましくは30m/g以上かつ200m/g以下、さらに好ましくは40m/g以上かつ150m/g以下である。比表面積が大きすぎると、高粘度となり高速塗工に適したスラリーの製造が困難となる。逆に、比表面積が小さすぎると、導電性が低下する。また、スラリーの分散性が悪化する。
電気化学素子用導電性組成物中におけるカーボンブラックの含有割合は、良好な導電性を保ち、高速塗工に適した粘度のスラリーを得る観点から、1質量%以上20質量%以下、好ましくは2質量%以上18質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上16質量%以下である。カーボンブラックの含有割合が多すぎると、高粘度となりスラリーの製造が困難となる。逆に、カーボンブラックの含有割合が少なすぎると、導電性が低下する。導電材としては、単一のカーボンブラックのみを単独で、または種類の異なるカーボンブラックを複数組み合わせて使用することができる。
なお、導電材としては、上記カーボンブラックに加え、さらに、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバー、フラーレン等を含むことが好ましく、グラファイト、カーボンナノチューブを含むことがさらに好ましく、グラファイトを含むことが特に好ましい。導電材として、上記カーボンブラックにグラファイトを混合することにより、導電性が向上する。これらのカーボンブラック以外の導電材は、それぞれ単独でまたは二種類以上を組み合わせて、カーボンブラックと混合して使用することができる。
(水溶性高分子)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、水溶性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子とは、25℃において、その重合体0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0.5質量%未満の重合体をいう。
本発明の電気化学素子用導電性組成物に用いる水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体、デンプン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、キチン、キトサンもしくはアクリル酸・メタクリル酸・マレイン酸・無水マレイン酸・スルホン酸・アクリルアミド・エチレンオキサイドの単一重合体もしくは他のモノマーとの共重合体などが挙げられ、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、キチン、キトサンもしくはアクリル酸・メタクリル酸・マレイン酸・無水マレイン酸・スルホン酸・アクリルアミド・エチレンオキサイドの単一重合体もしくは他のモノマーとの共重合体が好ましく、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体がより好ましい。これらの水溶性高分子は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
電気化学素子用導電性組成物中における水溶性高分子の含有割合は、スラリーの調製が容易となる観点、および、得られるスラリーの導電性および再分散性が良好となる観点から、好ましくは2質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上40質量%以下、特に好ましくは4質量%以上30質量%以下である。水溶性高分子の含有割合が多すぎると、抵抗上昇のため導電性が悪化する。また、粘度上昇のため塗工性が悪化する。逆に、水溶性高分子の含有割合が少なすぎると、スラリーの調製が困難となり、得られるスラリーの導電性および再分散性が悪化する。
(粒子状共重合体)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、粒子状共重合体を含むことが好ましい。本発明に用いられる粒子状共重合体としては、二塩基酸単量体単位を含む粒子状共重合体が挙げられる。さらに、本発明に用いられる粒子状共重合体としては、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体を含む単量体混合物に二塩基酸単量体を加え、重合して得られる粒子状共重合体(以下、「粒子状共重合体1」という。)、または、ジエン系単量体を含む単量体混合物に二塩基酸単量体を加え、重合して得られる粒子状共重合体(以下、「粒子状共重合体2」という。)が好ましく、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体を含む単量体混合物に二塩基酸単量体を加え、重合して得られる粒子状共重合体1がより好ましい。
(二塩基酸単量体)
ここで、上記粒子状共重合体1、または上記粒子状共重合体2を重合するために用いられる単量体混合物中における二塩基酸単量体としては、イタコン酸、及びマレイン酸が挙げる。また、単量体混合物中における二塩基酸単量体の含有割合は、集電体と導電性接着剤層との間の結着性が高まる観点から、好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜4.5質量%、特に好ましくは1〜4質量%である。二塩基酸単量体の含有割合が多すぎても少なすぎても、集電体と導電性接着剤層との間の結着性が低下する。
(粒子状共重合体1)
粒子状共重合体1としては、カーボンブラックの分散を均一にできる観点、カーボンブラック間における密着性を向上させる観点、カーボンブラックと集電体との間の密着性を向上させる観点、及び導電性接着剤層の塗膜表面の平滑化に寄与する観点から、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体60〜90質量%、二塩基酸単量体0.1〜5質量%、及びこれらと共重合可能なモノオレフィン性単量体39.9〜9.9質量%を含む単量体混合物を乳化重合して得られる粒子状共重合体が挙げられ、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体65〜85質量%、二塩基酸単量体0.5〜4.5質量%、及びこれらと共重合可能なモノオレフィン性単量体34.5〜10.5質量%を含む単量体混合物を乳化重合して得られる粒子状共重合体が好ましく、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体68〜82質量%、二塩基酸単量体1〜4質量%、及びこれらと共重合可能なモノオレフィン性単量体30〜15質量%を含む単量体混合物を乳化重合して得られる粒子状共重合体がさらに好ましい。単量体混合物中における二塩基酸単量体の含有割合が、多すぎても少なすぎても集電体と導電性接着剤層との間の結着性が低下する。
ここで、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル(以下、「2エチルヘキシルアクリレート」ということがある)等が挙げられる。また、これらと共重合可能なモノオレフィン性単量体としては、スチレン等が挙げられる。
(粒子状共重合体2)
粒子状共重合体2としては、カーボンブラックの分散を均一にできる観点、カーボンブラック間、及びカーボンブラックと集電体との間の密着性を向上させる観点、及び導電性接着剤層からなる塗膜表面の平滑化に寄与する観点から、ジエン系単量体20〜50質量%、二塩基酸単量体0.1〜5質量%、及びこれらと共重合可能なモノオレフィン性単量体79.9〜49.9質量%を含む単量体混合物を乳化重合して得られる粒子状共重合体が挙げられ、ジエン系単量体25〜45質量%、二塩基酸単量体0.5〜4.5質量%、及びこれらと共重合可能なモノオレフィン性単量体74.5〜52質量%を含む単量体混合物を乳化重合して得られる粒子状共重合体が好ましく、ジエン系単量体30〜40質量%、二塩基酸単量体1〜4質量%、及びこれらと共重合可能なモノオレフィン性単量体69〜56質量%を含む単量体混合物を乳化重合して得られる粒子状共重合体がより好ましい。単量体混合物中における二塩基酸単量体の含有割合が、多すぎても少なすぎても集電体と導電性接着剤層との間の結着性が低下する。
ここで、ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、これらと共重合可能なモノオレフィン性単量体としては、スチレン等が挙げられる。
ここで、本発明の電気化学素子用導電性組成物中における粒子状共重合体の含有割合は、カーボンブラックの分散を均一にできる観点、カーボンブラック間の密着性を向上させる観点、カーボンブラックと集電体との間の密着性を向上させる観点、及び導電性接着剤層の塗膜表面の平滑化に寄与する観点から、好ましくは4〜8質量%、さらに好ましくは4.5〜7.5質量%、特に好ましくは5〜7質量%である。粒子状共重合体の含有割合が多すぎると、導電性接着剤層からなる塗膜の抵抗値が増加する。逆に、粒子状共重合体の含有割合が少なすぎると、集電体と導電性接着剤層との間の結着性が低下する。
(粒子状共重合体の製造)
粒子状共重合体の製法は特に限定はされないが、上述したように、高分子化合物を構成する単量体を含む単量体混合物を乳化重合して得ることができる。乳化重合の方法としては、特に限定されず、従来公知の乳化重合法を採用すれば良い。
乳化重合に使用する重合開始剤としては、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等が挙げられる。
これらのなかでも、無機過酸化物が好ましく使用できる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、過酸化物開始剤は、重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。なお、重合開始剤の使用量は、重合に使用する単量体混合物の全量100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。
乳化重合時に、さらにアニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。アニオン性界面活性剤を使用することにより、重合安定性を向上させることができる。
アニオン性界面活性剤としては、乳化重合において従来公知のものが使用できる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ナトリウムラウリルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムオクチルサルフェート、ナトリウムデシルサルフェート、ナトリウムテトラデシルサルフェート、ナトリウムヘキサデシルサルフェート、ナトリウムオクタデシルサルフェートなどの高級アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどの脂肪族スルホン酸塩;などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。この使用量が少ないと、得られる粒子の粒径が大きくなり、使用量が多いと粒径が小さくなる傾向がある。また、アニオン性界面活性剤に加えて、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを併用することもできる。
さらに乳化重合の際に、水酸化ナトリウム、アンモニアなどのpH調整剤;分散剤、キレート剤、酸素捕捉剤、ビルダー、粒子径調節のためのシードラテックスなどの各種添加剤を適宜使用することができる。特にシードラテックスを用いた乳化重合が好ましい。シードラテックスとは、乳化重合の際に反応の核となる微小粒子の分散液をいう。微小粒子は粒径が100nm以下であることが多い。微小粒子は特に限定はされず、アクリル系重合体などの汎用の重合体が用いられる。シード重合法によれば、比較的粒径の揃った粒子状共重合体が得られる。
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは40〜80℃とする。このような温度範囲で乳化重合し、所定の重合転化率で、重合停止剤を添加したり、重合系を冷却したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する重合転化率は、好ましくは93質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
重合反応を停止した後、所望により、未反応単量体を除去し、pHや固形分濃度を調整して、粒子状共重合体が分散媒に分散された形態(ラテックス)で得られる。その後、必要に応じ、分散媒を置換してもよく、また分散媒を蒸発し、粒子状結着剤を粉末形状で得ても良い。
得られる粒子状共重合体の分散液には、公知の分散剤、増粘剤、老化防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、ブリスター防止剤、pH調整剤などを必要に応じて添加することができる。
(濡れ材)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、濡れ材を含むことが好ましい。濡れ材としては、集電体に対する導電性組成物の濡れ性を高める観点、及び集電体に均一に塗工できる観点から、末端に水酸基を持つポリアミド重合体、末端に水酸基を持つポリエステル重合体等を用いることが好ましい。
(ポリアミド重合体)
末端に水酸基を持つポリアミド重合体としては、下記一般式(1)で表されるものを用いることが好ましい。
Figure 0006582879

(上記一般式(1)中、Rは、2、4、6あるいは8個のカルボン酸アミド基によって割りこまれた炭素数6〜150の脂肪族あるいは脂肪族と芳香族との両者を含む炭化水素基、炭素数2〜60の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、または2〜75個の酸素原子(−O−)によって割りこまれた炭素数4〜150の脂肪族炭化水素基、R’は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または−Z’−(Q)y−(OH)x、xは1〜3、yは0または1、Zは炭素数2〜6のアルキレン基、Z’は炭素数2〜6のZと同じまたは異なるアルキレン基、QはZおよび(または)Z′に−O−またはカルボキシル基を介して連結されており、0〜99個の酸素原子および(または)カルボン酸エステル基によって割りこまれている炭素数2〜200の脂肪族炭化水素基、nは2〜3である。)
(ポリエステル重合体)
末端に水酸基を持つポリエステル重合体としては、下記一般式(2)で表されるものを用いることが好ましい。
Figure 0006582879

(上記一般式(2)中、Rが、分子当たり1〜3個のヒドロキシル基を有する化合物の有機ラジカル、又はシリコン原子に結合しない1〜3個のヒドロキシル基を有するポリシロキサンのラジカルであり、Rが、二価の直鎖又は分枝脂肪酸又はシクロ脂肪酸ラジカルであり、xが2〜8、nが10〜500、且つmが1〜3である。)
電気化学素子用導電性組成物中における濡れ材の含有割合は、集電体に対する導電性組成物の濡れ性を高める観点、及び集電体に均一に塗工できる観点から、好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.2〜2質量%、特に好ましくは0.3〜1質量%である。濡れ材の含有割合が多すぎると、導電性接着剤層からなる塗膜の抵抗値が増加する。逆に、濡れ材の含有割合が少なすぎると、濡れ性が低下し、均一な塗工が困難となる。
(分散剤)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては、アニオン系の界面活性剤、カチオン系の界面活性剤、両性界面活性剤、及び高分子系界面活性剤を例示することができる。具体的には、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(例えば、デモールNL:花王株式会社製)、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(例えば、サニゾールC:花王株式会社製)、ラウリルジメチルアミンオキサイド(例えば、アンヒトール20N:花王株式会社製)、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、エマルゲンA−60:花王株式会社製)等が挙げられ、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、およびポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルが好ましく、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩がより好ましい。
電気化学素子用導電性組成物中における分散剤の含有割合は、カーボンブラックが水に分散し易くなる観点から、好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%、特に好ましくは1.1〜2質量%である。分散剤の含有割合が多すぎると、導電性接着剤層からなる塗膜の抵抗値が増加する。逆に、分散剤の含有割合が少なすぎると、カーボンブラックが水に分散し難くなる。
(分散媒およびその他の成分)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、上記した導電材、水溶性高分子、粒子状共重合体、濡れ材、及び分散剤が、分散媒に分散されたスラリー状の組成物である。ここで分散媒は、上記各成分を均一に分散でき、安定的に分散状態を保ちうる限り、水や、NMP、トルエン、キシレン、アセトン等の各種有機溶媒が特に制限されることなく使用できる。中でも、水、又はNMPを用いることが好ましく、水を用いることがさらに好ましい。
電気化学素子用導電性組成物中における分散媒の含有割合は、塗工に適した粘度となる観点から好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは65〜85質量%、特に好ましくは68〜85質量%である。分散媒の含有割合が多すぎると、導電性が悪化する。また、集電体に対する濡れ性が悪化する。逆に分散媒の含有割合が少なすぎると、粘度が増加し、塗工に適さない。
本発明の電気化学素子用導電性組成物には、さらに防腐剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
防腐剤の具体例としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下において「MIT」と表すことがある。)、1,2−ベンズ−4−イソチアゾリン−3−オン(以下において「BIT」と表すことがある。)等のイソチアゾリン系化合物が挙げられる。これらイソチアゾリン系化合物は、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、イソチアゾリン系化合物としては、MIT、及びBITを組み合わせて用いることがより好ましい。
(電気化学素子用導電性組成物)
本発明に係る電気化学素子用導電性組成物はスラリー状であり、「容器に保管した直後の液面近傍の固形分濃度」を(A)とし、「容器に保管して30日間静置した後に容器を撹拌した後の液面近傍の固形分濃度」を(B)として、次式(I)にて表される値が、再分散性が良好となる観点から、60以上100以下であり、好ましくは80以上100以下であり、さらに好ましくは95以上100以下である。この値が低すぎると、再分散性に劣る。
(B/A)×100・・・(I)
尚、前記の「液面近傍」とは、容器内における液最上部、即ち、スラリー状の導電性組成物の、液面から深さ方向で全深さの10%以内の最上部分のことを意味する。
導電性組成物の表面張力は、良好な濡れ性と塗工性が得られる観点から、好ましくは65mN/m以下、さらに好ましくは60mN/m以下、特に好ましくは55mN/m以下であり、導電性組成物の集電体に対する接触角は、好ましくは100°以下である。表面張力または接触角が大きすぎると、濡れ性および塗工性に劣るものとなる。ここで、上記表面張力および接触角は、容器に保管して30日間静置した後に容器を撹拌した後(以下、「再分散後」ということがある。)の導電性組成物について測定したものである。
導電性組成物の粘度は、良好な塗工性が得られる観点から、好ましくは200mPa・s以下、さらに好ましくは150mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下である。導電性組成物の粘度が高すぎると、塗工性に劣る。なお、上記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。また、上記粘度は、再分散後の導電性組成物について測定したものである。
また、本発明の電気化学素子用導電性組成物のpHは、集電体を腐食させることなく、低抵抗な電極が得られる観点から、6〜10、好ましくは6.5〜9.7、より好ましくは7〜9.5である。
また、電気化学素子用導電性組成物を保管するための容器としては、特に制限はなく、ドラム缶、一斗缶、ペール缶、ポリタンク、パウチ型容器等を用いることができる。 保管容器の容量としては、特に制限はないが、10〜200Lの容器を用いるのが好ましい。また、保管の際には、電気化学素子用導電性組成物を所定量容器に入れ、密封した容器を5〜40℃の環境下において保管することが好ましい。
また、保管後、電気化学素子用導電性組成物を再分散させる際には、容器ごと撹拌することが好ましい。撹拌方法としては、例えば、容器を、当該容器を貫通する水平軸回りに回転運動させて撹拌混合する方法が挙げられる。回転運動させる場合には、例えば、軸回りに5〜20回転させ、その後、反対回りに5〜20回転させる工程を1パスとして、このパスを複数回繰り返すことができる。撹拌に用いる装置としては、まぜまぜマン(有限会社ミスギ製)が挙げられ、また、容器がドラム缶の場合には、ドラムシェーカーを用いることもできる。また、容器ごと撹拌する場合には、再分散させる際に容器に所定の空間体積が形成されていてもよい。
(電気化学素子用導電性組成物の製造方法)
導電性組成物の製造方法は、特に限定はされず、カーボンブラックの凝集をほぐすことができ、上記したその他の分散媒に分散させることができればいかなる手段であってもよい。たとえば、まず、分散媒に分散剤、濡れ材、水溶性高分子、粒子状共重合体の分散液、および必要に応じ添加される任意の成分を一括添加し、均一に撹拌した後、導電材を添加し、撹拌することにより予備的な分散を行い原料組成物を得てから、次に、原料組成物に対し、高圧分散機を用いて高圧分散処理を行うことが好ましい。
ここで、予備分散を行う際の回転数は、良好な分散性を得る観点から、通常500〜3000rmp、好ましくは700〜1800rpm、さらに好ましくは1000〜1500rpmである。回転数が高すぎると、得られるスラリーの泡立ちが激しくなる。逆に、回転数が低すぎると分散性に劣る。
また、高圧分散機は、原料組成物を高圧にしてノズル等の細い間隙から噴出させる装置であって、カーボンブラックの凝集をほぐすことができれば特に限定されないが、ナノヴェイタ(C−ES008、吉田機械興業株式会社製)を用いることが好ましい。高圧分散処理を行う際の圧力としては、良好な分散性が得られる観点から、通常20〜150MPa、好ましくは30〜110MPa、さらに好ましくは40〜70MPaである。処理圧力が高すぎると、カーボンブラックが過度に分散される虞がある。また、グラファイトが破壊する。さらには、高圧分散機のノズルが削れる。逆に、処理圧力が低すぎると、得られるスラリーの分散性に劣る。
上記のようにして得られる電気化学素子用導電性組成物は、容器に保管することが好ましい。
(接着剤層付集電体)
本発明の接着剤層付集電体は、集電体上に上記の電気化学素子用導電性組成物から得られる導電性接着剤層を有する。ここで、電気化学素子用導電性組成物として、所定期間容器に保管後、再分散させたものを用いることが好ましい。
集電体の材料は、例えば、金属、炭素、導電性高分子などであり、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましい。
集電体の厚みは、5〜100μmで、好ましくは8〜70μm、特に好ましくは10〜50μmである。
導電性接着剤層の形成方法は、特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ダイコート法、ハケ塗りなどによって、集電体上に形成される。また、剥離紙上に、導電性接着剤層を形成した後に、これを集電体に転写してもよい。
導電性接着剤層の乾燥方法としては、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。中でも、熱風による乾燥法、遠赤外線の照射による乾燥法が好ましい。乾燥温度と乾燥時間は、集電体上に塗布した導電性組成物中の溶媒を完全に除去できる温度と時間が好ましく、乾燥温度は通常50〜300℃、好ましくは80〜250℃である。乾燥時間は、通常2時間以下、好ましくは5秒〜30分である。
導電性接着剤層の厚みは、後述する電極組成物層との密着性が良好で、かつ、低抵抗である電極が得られる観点から、0.5〜5μm、好ましくは0.5〜4μm、特に好ましくは0.5〜3μmである。
導電性接着剤層は、電気化学素子用導電性組成物の固形分組成に応じた組成を有し、カーボンブラックを含有する導電材、水溶性高分子、粒子状共重合体、濡れ材、分散剤を含む。
(電気化学素子用電極)
本発明の電気化学素子用電極は、上記接着剤層付集電体の導電性接着剤層上に電極活物質を含む電極組成物層を有する。電極組成物層は、電極活物質、電極用バインダー、および必要に応じて用いられる電極用導電材等からなり、これら成分を含む電極用スラリー(以下、「スラリー」ということがある。)から調製される。
(電極活物質)
電極活物質は負極活物質であってもよく、また正極活物質であってもよい。電極活物質は、電池内で電子の受け渡しをする物質である。以下、本発明の電気化学素子用電極をリチウムイオン二次電池に用いる場合について説明する。
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な化合物である。正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVOなどのリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13などの遷移金属酸化物が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩などが挙げられる。なお、正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素の同素体が挙げられる。前記炭素の同素体からなる負極活物質は、金属、金属塩、酸化物などとの混合体や被覆体の形態で利用することも出来る。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコーン等を使用できる。
電極活物質の体積平均粒子径は、正極活物質、負極活物質ともに通常0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜20μmである。これらの電極活物質は、それぞれ単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
(電極用バインダー)
電極用バインダーは、電極活物質、電極用導電材を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。
電極用バインダーの量は、得られる電極組成物層と導電性接着剤層との密着性が充分に確保でき、リチウムイオン電池の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる観点から、電極活物質100質量部に対して、通常は0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
(電極用導電材)
必要に応じて用いられる電極用導電材は、導電性を有し、電気二重層を形成し得る細孔を有さない、粒子状の炭素の同素体からなり、具体的には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベルケミカルズベスローテンフェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびファーネスブラックが好ましい。
(電極組成物層)
電極組成物層は、導電性接着剤層上に設けられるが、その形成方法は制限されない。電極用スラリーは、電極活物質、電極用バインダーを必須成分として、必要に応じて電極用導電材、分散剤およびその他の添加剤を配合することができる。分散剤の具体例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの分散剤の量は、格別な限定はないが、電極活物質100質量部に対して、通常は0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは0.8〜2質量部の範囲である。
電極組成物層を形成する場合、ペースト状の電極用スラリー(正極用スラリーまたは負極用スラリー)は、電極活物質および電極用バインダーの必須成分、並びに必要に応じて用いられる電極用導電材、分散剤および添加剤を、水またはN−メチル−2−ピロリドンやテトラヒドロフランなどの有機溶媒中で混練することにより製造することができる。
電極用スラリーを得るために用いる溶媒は、特に限定されないが、上記の分散剤を用いる場合には、分散剤を溶解可能な溶媒が好適に用いられる。具体的には、通常水が用いられるが、有機溶媒を用いることもできるし、水と有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキサイド、スルホラン等のイオウ系溶剤;等が挙げられる。この中でも有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。電極用スラリーは、電極組成物層の乾燥の容易さと環境への負荷に優れる点から水を分散媒とした水系スラリーが好ましい。水と、水よりも沸点の低い有機溶媒とを併用すると、乾燥時に、乾燥速度を速くすることができる。また、水と併用する有機溶媒の量または種類によって、電極用バインダーの分散性または分散剤の溶解性が変わる。これにより、電極用スラリーの粘度や流動性を調整することができ、生産効率を向上させることができる。
電極用スラリーを調製するときに使用する溶媒の量は、各成分を均一に分散させる観点から、スラリーの固形分濃度が、通常1〜90質量%、好ましくは5〜85質量%、より好ましくは10〜80質量%の範囲となる量である。
電極活物質、および電極用バインダー、並びに必要に応じて用いられる電極用導電材、分散剤および添加剤を溶媒に分散または溶解する方法または手順は特に限定されず、例えば、溶媒に電極活物質、電極用バインダー、電極用導電材、分散剤および添加剤を添加し混合する方法;溶媒に分散剤を溶解した後、溶媒に分散させた電極用バインダーを添加して混合し、最後に電極活物質および電極用導電材を添加して混合する方法;溶媒に分散させた電極用バインダーに電極活物質および電極用導電材を添加して混合し、この混合物に溶媒に溶解させた分散剤を添加して混合する方法等が挙げられる。混合の手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機器が挙げられる。混合は、通常、室温〜80℃の範囲で、10分〜数時間行う。
電極用スラリーの粘度は、生産性を上げることができる観点から、室温において、通常10〜100,000mPa・s、好ましくは30〜50,000mPa・s、より好ましくは50〜20,000mPa・sの範囲である。
電極用スラリーの導電性接着剤層上への塗布方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。スラリーの塗布厚は、目的とする電極組成物層の厚みに応じて適宜に設定される。
乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。中でも、遠赤外線の照射による乾燥法が好ましい。乾燥温度と乾燥時間は、集電体に塗布したスラリー中の溶媒を完全に除去できる温度と時間が好ましく、乾燥温度としては100〜300℃、好ましくは120〜250℃である。乾燥時間としては、通常5分〜100時間、好ましくは10分〜20時間である。
電極組成物層の密度は、特に制限されないが、通常は0.30〜10g/cm、好ましくは0.35〜8.0g/cm、より好ましくは0.40〜6.0g/cmである。また、電極組成物層の厚みは、特に制限されないが、通常は5〜1000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは30〜300μmである。
(電気化学素子)
電気化学素子用電極の使用態様としては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウム電池、マグネシウム電池などが挙げられるが、上記電極を用いたリチウムイオン二次電池が好適である。たとえばリチウムイオン二次電池は、上記電気化学素子用電極、セパレータおよび電解液で構成される。
(セパレータ)
セパレータは、電気化学素子用電極の間を絶縁でき、陽イオンおよび陰イオンを通過させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、(a)気孔部を有する多孔性セパレータ、(b)片面または両面に高分子コート層が形成された多孔性セパレータ、または(c)無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート層が形成された多孔性セパレータが挙げられる。これらの非制限的な例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリオレフィン系、またはアラミド系多孔性セパレータ、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルまたはポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体などの固体高分子電解質用またはゲル状高分子電解質用の高分子フィルム、ゲル化高分子コート層がコートされたセパレータ、または無機フィラー、無機フィラー用分散剤からなる多孔膜層がコートされたセパレータなどを用いることができる。セパレータは、上記一対の電極組成物層が対向するように、電気化学素子用電極の間に配置され、素子が得られる。セパレータの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は1〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは15〜60μmである。
(電解液)
電解液は、特に限定されないが、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiは好適に用いられる。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。支持電解質の量は、電解液に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、また通常は30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。支持電解質の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下し電池の充電特性、放電特性が低下する。
電解液に使用する溶媒としては、支持電解質を溶解させるものであれば特に限定されないが、通常、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびメチルエチルカーボネート(MEC)などのアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類、1,2−ジメトキシエタン、およびテトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、およびジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。また、電解液には添加剤を含有させて用いることも可能である。また、添加剤としてはビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましい。
上記以外の電解液としては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、硫化リチウム、LiI、LiN、LiS−Pガラスセラミックなどの無機固体電解質を挙げることができる。
二次電池は、負極と正極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口して得られる。さらに必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をすることもできる。電池の形状は、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
本発明の電気化学素子用導電性組成物によれば、集電体に対する濡れ性及び塗工性に優れ、得られる電気化学素子の出力特性が良好である。
また、本発明の電気化学素子用導電性組成物により集電体上に導電性接着剤層を形成し、さらに電極組成物層を形成することにより得られる電極を用いた電池の内部抵抗は低減されるため、放電レート試験を行った場合の容量維持率を増加させることが可能となると考えられる。
なお、上述の実施形態においては、本発明の電気化学素子用導電性組成物を用いて導電性接着剤層を形成する構成について説明したが、本発明の電気化学素子用導電性組成物と電極活物質(好ましくは正極活物質)とを含む電気化学素子電極用組成物(カーボンペースト)を作製してもよい。この場合には、この電気化学素子電極用組成物を集電体上に塗布・乾燥することにより電極が得られる。また、この電極、セパレータおよび電解液を含んでなる電気化学素子を作製することができる。ここで、電気化学素子としてのリチウムイオン二次電池を作製する場合、上記した電極活物質、集電体、セパレータ、および電解液を用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。各特性は、以下の方法により評価する。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」および「質量%」である。
(導電性組成物の濡れ性)
再分散後のスラリー状の導電性組成物1.0μLをアルミニウム集電箔上に滴下し、接触角計(DM−501、協和界面科学社製)を使用して、θ/2法により接触角を測定した。得られた接触角を下記基準により評価し、結果を表1に示した。接触角が小さいほど、濡れ性に優れる。
A:接触角が70°未満
B:接触角が70°以上80°未満
C:接触角が80°以上90°未満
D:接触角が90°以上
(導電性組成物の塗工性)
グラビアコーター(μCoater350TM、廉井精機製)を使用して、アルミニウム集電箔上に、再分散後のスラリー状の導電性組成物を5m/分の速度で塗布した。アルミニウム集電箔上に形成された導電性接着剤層の表面を観察し、アルミニウム集電箔上の未塗工部発生率を求めた。未塗工部発生率を下記の基準により評価し、結果を表1に示した。未塗工部発生率が少ないほど塗工性に優れることを示す。
A:未塗工部が0%以上1%未満
B:未塗工部が1%以上5%未満
C:未塗工部が5%以上10%未満
D:未塗工部が10%以上
(リチウムイオン二次電池の出力特性)
実施例および比較例で作製したラミネート型セルを用い、25℃で0.1Cの定電流で充電深度(SOC)50%まで充電し、電圧V1を測定した。その後、25℃で5Cの定電流で10秒間放電し、電圧V2を測定した。これらの測定結果から、電圧降下△V=V1−V2を算出した。算出された電圧降下△Vを、下記基準により評価し、結果を表1に示した。電圧降下△Vの値が小さいほど、出力特性に優れることを示す。
A:電圧降下△Vが100mV以上150mV未満
B:電圧降下△Vが150mV以上200mV未満
C:電圧降下△Vが200mV以上250mV未満
D:電圧降下△Vが250mV以上300mV未満
(導電性組成物の再分散性測定)
スラリー状の導電性組成物を18L缶に満たし、直後の液最上部(深さ方向で全深さの10%以内の最上部)の固形分濃度(A)を測定した。これを30日間静置した後、まぜまぜマン(有限会社ミスギ製)を使用して、左方向に8回転、右方向に8回転を加えて撹拌した。撹拌後の液最上部の固形分濃度(B)を測定した。
再分散性を示す値である[(容器に保管して30日間静置した後に容器を撹拌した後の液面近傍の固形分濃度)/(容器に保管した直後の液面近傍の固形分濃度)]×100の値は、(B/A)×100の計算式により算出した。
(導電性組成物の表面張力測定)
表面張力は、表面張力計(DY−300、協和界面科学社製)を使用して測定した。測定値は単位をmN/mとして示した。測定は25℃で実施した。なお、表面張力は再分散後の導電性組成物について測定した。
(導電性組成物の粘度測定)
粘度は、ブルックフィールドデジタル粘度計(以下、「B型粘度計」ということがある。)LVDV−IIProを使用して測定した。測定値は単位をmPa・sとして示した。測定条件は温度25℃、回転数60rpmとした。なお、粘度は再分散後の導電性組成物について測定した。
(実施例1)
(粒子状共重合体の製造)
撹拌装置を備えたステンレス製耐圧反応器に、2エチルヘキシルアクリレート70部、イタコン酸2.5部、スチレン27部、アンモニウムラウリルサルフェート(アニオン性界面活性剤)2部、およびイオン交換水108部を添加し、撹拌した。次いで、反応器内の温度を60℃に昇温した後、4%過硫酸カリウム水溶液10部を投入して重合反応を開始させた。そして、重合反応を進行させ、重合転化率が70%に達したとき、反応温度を70℃に昇温した。反応温度を70℃に維持しながら、重合転化率が97%に達するまで、重合反応を継続した。反応系を室温まで冷却して、重合反応を停止し、減圧して未反応単量体を除去した。イオン交換水を添加し、固形分濃度を45%、分散液のpHを7.5に調整することにより、粒子状共重合体の分散液を得た。なお、分散液のpHの調整は、10%アンモニア水溶液を添加することにより行った。得られた粒子状共重合体の体積平均粒子径は約300nmであった。
(導電性組成物の製造)
イオン交換水に分散剤としてアニオン系の界面活性剤(デモールNL、花王製)1.5部、濡れ材としてポリエステル重合体(DISPERBYK−2010、BYK製)0.5部、水溶性高分子としてイソブチレン/無水マレイン酸共重合体(イソバン304SC−20、クラレ製)5部、上記にて得られた粒子状共重合体(スチレン/アクリル酸系ポリマー)を固形分相当で6部、及び防腐剤としてインチアゾリン化合物水溶液(ACTICIDE(登録商標)、MBS(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)/1,2−ベンズ−4−イソチアゾリン−3−オン(BIT)=50/50の5%水溶液)、ソー・ジャパン製)を固形分相当で0.1部添加し、1000rpmで10分間撹拌した。均一に撹拌されたことを確認した後、導電材として炭素材料(カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業社製):比表面積50m/gを5部(5質量%)、及びグラファイトを6.9部)を添加し、予備的な分散のため、ディスパーを使用して1200rpmで10分間撹拌した。その後、原料組成物の温度を20℃まで冷却し、高圧分散機としてナノヴェイタ(C−ES008、吉田機械興業株式会社製)を使用して、ノズル径が400μmのクロス型ノズルを用い、50MPaの条件で2回高圧分散処理を実施し、導電性組成物を作製した。得られた導電性組成物の固形分濃度は25質量%であった。得られた導電性組成物を18L缶に保管し、30日間静置した。その後、まぜまぜマン(有限会社ミスギ製)を使用して、保管後の導電性組成物を容器ごと左方向に8回転、右方向に8回転を加えて撹拌し、再分散を実施した。導電性組成物の[(容器に保管して30日間静置した後に容器を撹拌した後の液面近傍の固形分濃度)/(容器に保管した直後の液面近傍の固形分濃度)]×100の値(以下、単に「再分散性を示す値」ということがある。)は、98であり、表面張力は50mN/mであり、粘度は70mPa・sであった。
(導電性接着剤層の形成)
再分散後の導電性組成物を、グラビアコーター(μCoater350TM、廉井精機製)を使用して5m/分の速度でアルミニウム集電箔の片面に塗布した。乾燥温度を100℃として、厚さ約1μmの導電性接着剤層を形成した。
(電極の作製)
正極の電極活物質として、体積平均粒子径が20μmのリチウム含有ニッケルマンガンコバルト複合酸化物を94部、正極用バインダーとしてポリフッ化ビニリデンの9.0%水溶液(HSV900、Kynar社製)を固形分相当で3部、電極用導電材としてアセチレンブラック(デンカブラック粉状、電気化学工業社製)を3部、及び溶媒としてN−メチルピロリドンを加えてスラリーを作製した。N−メチルピロリドンを徐々に加えて固形分濃度を落としつつ、混練機(練太郎、シンキー社製)を使用して混練を繰り返した。最終的には全固形分濃度を55%まで落とし、塗工に適する粘度とし、正極用スラリーを得た。前記にて導電性接着剤層を形成したアルミニウム集電体に前記正極用スラリーを20m/分の電極成形速度で集電体の表面に塗布し、80℃で20分間、さらに120℃で20分間乾燥した後、4.0cm×3.8cmとなるように切り出して、片面厚さ100μmの正極組成物層を形成した。次いで、ロールプレスで圧延して厚さ50μmの正極用極板を得た。
一方、負極の電極活物質として、体積平均粒子径が3.7μmであるグラファイト(KS−6、ティムカル社製)を100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1.5%水溶液(MAC350HC、日本製紙ケミカル株式会社製)を固形分相当で1部、負極用バインダーとしてガラス転移温度が−48℃で、数平均粒子径が0.18μmのジエン重合体の40%水分散体を固形分相当で1部、およびイオン交換水を全固形分濃度が50%となるようにプラネタリーミキサーを使用して混合し、塗工に適した粘度として、負極用スラリーを調製した。この負極用スラリーを、アプリケーターを用いて、厚さ18μmの銅箔の片面に乾燥後の膜厚が100μm程度になるように塗布し、50℃で20分乾燥後、110℃で20分間加熱処理して負極組成物層を形成した。次いで、ロールプレスで圧延して厚さ50μmの負極用極板を得た。
(電池の製造)
前記正極、負極及びセパレータを用いて、積層型ラミネートセル形状のリチウムイオン電池を作製した。電解液としてはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートを体積比1:2で混合したものに、ビニレンカーボネートを質量比で2.0%加え混合した溶媒に、LiPFを1.0mol/リットルの濃度で溶解させたものを用いた。
(実施例2)
カーボンブラックの量を10部(9.5質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。導電性組成物の再分散性を示す値は85であり、表面張力は50mN/mであり、粘度は70mPa・sであった。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
(実施例3)
カーボンブラックの量を16部(14.4質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。導電性組成物の再分散性を示す値は70であり、表面張力は50mN/mであり、粘度は70mPa・sであった。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
(実施例4)
濡れ材の量を0.4部としたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。導電性組成物の再分散性を示す値は98であり、表面張力は55mN/mであり、粘度は70mPa・sであった。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
(実施例5)
濡れ材の量を0.3部としたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。導電性組成物の再分散性を示す値は98であり、表面張力は60mN/mであり、粘度は70mPa・sであった。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
(実施例6)
濡れ材の量を0.2部としたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。導電性組成物の再分散性を示す値は98であり、表面張力は65mN/mであり、粘度は70mPa・sであった。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
(実施例7)
イソブチレン/無水マレイン酸共重合体の量を10部に変更したこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。導電性組成物の再分散性を示す値は98であり、表面張力は50mN/mであり、粘度は150mPa・sであった。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
(実施例8)
イソブチレン/無水マレイン酸共重合体の量を15部に変更したこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。導電性組成物の再分散性を示す値は98であり、表面張力は50mN/mであり、粘度は200mPa・sであった。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
(実施例9)
カーボンブラックの種類を比表面積が150m/gのものに変更したこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。なお、導電性組成物の再分散性を示す値は80であり、表面張力は60mN/mであり、粘度は150mPa・sであった。
(実施例10)
カーボンブラックの種類を比表面積が300m/gのものに変更したこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。なお、導電性組成物の再分散性を示す値は70であり、表面張力は65mN/mであり、粘度は200mPa・sであった。
(比較例1)
高圧分散機に代えてディスパーを使用し、高圧分散処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。なお、導電性組成物の再分散性を示す値は40であり、表面張力は60mN/mであり、粘度は600mPa・sであった。
(比較例2)
高圧分散機に代えてビーズミルを使用し、高圧分散処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。なお、導電性組成物の再分散性を示す値は55であり、表面張力は60mN/mであり、粘度は300mPa・sであった。
(比較例3)
予備分散の回転数を400rpmとしたこと、及び高圧分散処理の圧力を10MPaにしたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。なお、導電性組成物の再分散性を示す値は55であり、表面張力は60mN/mであり、粘度は300mPa・sであった。
Figure 0006582879
表1に示すように、導電材として比表面積が25m/g以上かつ300m/g以下である単一または複数のカーボンブラックを、1質量%以上20質量%以下含み、再分散性を示す値が、60以上100以下である電気化学素子用導電性組成物は、濡れ性および塗工性に優れる。またこの電気化学素子用導電性組成物を用いて導電性接着剤層を形成すると、得られる電池は出力特性に優れる。

Claims (10)

  1. 導電材として比表面積が25m/g以上かつ300m/g以下である単一または複数のカーボンブラックを、1質量%以上20質量%以下含み、
    [(容器に保管して30日間静置した後に容器を撹拌した後の液面近傍の固形分濃度)/(容器に保管した直後の液面近傍の固形分濃度)]×100の値が、60以上100以下である電気化学素子用導電性組成物。
  2. スラリー状であって、表面張力が65mN/m以下である請求項1記載の電気化学素子用導電性組成物。
  3. スラリー状であって、B型粘度計で25℃、60rpmにおいて測定した粘度が200mPa・s以下である請求項1又は2記載の電気化学素子用導電性組成物。
  4. 水溶性高分子として、
    セルロース誘導体、デンプン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、キチン、キトサン、または、アクリル酸・メタクリル酸・マレイン酸・無水マレイン酸・スルホン酸・アクリルアミド・エチレンオキサイドの単一重合体もしくは他のモノマーとの共重合体
    から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物。
  5. 二塩基酸単量体単位を有する粒子状共重合体を含む請求項1〜4の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物。
  6. 濡れ材として、末端に水酸基を持つポリアミド重合体またはポリエステル重合体を含む請求項1〜5の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物。
  7. 前記導電材として、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバー、フラーレンから選ばれる少なくとも1種をさらに含む請求項1〜6の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物を含んでなり、電極活物質を含有する、電気化学素子電極用組成物。
  9. 集電体上に、請求項1〜7の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物から得られる導電性接着剤層を有する、接着剤層付集電体。
  10. 請求項9に記載の接着剤層付集電体の前記導電性接着剤層上に、電極活物質を含む電極組成物層を有する、電気化学素子用電極。
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