JP2020053289A - 非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池用負極、及び、非水系二次電池 - Google Patents

非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池用負極、及び、非水系二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を形成可能な非水系二次電池負極用スラリー組成物を提供する。【解決手段】粒子状重合体を含む結着材と、負極活物質と、を含む非水系二次電池負極用スラリー組成物である。結着材は、濃度1mol/LのLiPF6及びエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が3:7である混合溶媒を含む電解液との接触角が50°以下である。また、結着材は、上記電解液に対する膨潤度が110%以上300%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池用負極及び非水系二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、近年では、非水系二次電池の更なる高性能化を目的として、電極などの電池部材の改良が検討されている。
ここで、リチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられる電極は、通常、集電体と、集電体上に形成された電極合材層(正極合材層又は負極合材層)とを備えている。そして、この電極合材層は、例えば、電極活物質と、結着材を含むバインダー組成物などとを含むスラリー組成物を集電体上に塗布し、塗布したスラリー組成物を乾燥させることにより形成される。
そこで、近年では、二次電池の更なる性能の向上を達成すべく、電極合材層の形成に用いられるスラリー組成物及びバインダー組成物の改良が試みられている。
具体的には、例えば特許文献1では、所定割合の芳香族ビニル単量体単位と、所定割合のエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位とを含む粒子状重合体を含む結着剤と、負極活物質と、水溶性重合体とを含むリチウムイオン二次電池負極用スラリーが開示されている。かかる粒子状重合体は、表面酸量が所定値以上であるとともに、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2)との接触角が、50°以下であることを特徴とする。また、例えば特許文献2では、水溶性重合体及び水を含み、前記水溶性重合体の水との接触角が、40°以上80°以下であり、前記水溶性重合体の電解液に対する膨潤度が、1.0倍超3.0倍以下である、非水系二次電池機能層用バインダー組成物が開示されている。
国際公開第2013/191239号 国際公開第2017/183641号
ここで、出力特性等の電池特性を高める観点からは、二次電池の電極には、電解液の注液性(以下、電解液注液性、とも称することがある)に優れていることが求められている。また、近年の二次電池の用途拡大に伴い、二次電池には、低温環境で充電操作を行った場合でも、充分な充電容量を確保できる、即ち、低温充電受入性に優れることが求められている。
しかし、上記従来の負極用スラリー又はバインダー組成物では、電解液注液性が充分に高く、且つ、得られる二次電池の低温充電受入性を充分に高め得る負極を形成することができなかった。
そこで、本発明は、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を形成可能な非水系二次電池負極用スラリー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、電解液注液性に優れるとともに、得られる二次電池の低温充電受入性を高めることができる、非水系二次電池用負極を提供することを目的とする。
そして、本発明は、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を備え、低温充電受入性に優れる非水系二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、電解液との接触角及び電解液に対する膨潤度がそれぞれ所定範囲内である結着材と、負極活物質とを含む負極用スラリー組成物を用いれば、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を形成可能であることを見出した。また、本発明者は、かかる非水系二次電池用負極を備える非水系二次電池が、低温充電受入性に優れることを見出した。これらの新たな知見に基づいて、本発明者は本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池負極用スラリー組成物は、結着材及び負極活物質を含む非水系二次電池負極用スラリー組成物であって、前記結着材が、粒子状重合体を含み、前記結着材の、濃度1mol/LのLiPF及びエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が3:7である混合溶媒を含む電解液との接触角が50°以下であるとともに、前記結着材の、前記電解液に対する膨潤度が110%以上300%以下である、ことを特徴とする。このように、粒子状重合体を含んでなる結着材であって、電解液に対する接触角及び膨潤度が、それぞれ所定の範囲内である結着材と、負極活物質とを含む非水系二次電池負極用スラリー組成物を用いれば、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を形成することができる。
なお、結着材の「電解液との接触角」及び、結着材の「電解液に対する膨潤度」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
ここで、本発明の非水系二次電池負極用スラリー組成物は、前記粒子状重合体が、芳香族ビニル単量体単位からなる芳香族ビニルブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域と、を含有する共重合体であることが好ましい。粒子状重合体が、芳香族ビニル単量体単位からなる芳香族ビニルブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域と、を含有していれば、スラリー組成物を用いて得られる負極の電解液注液性を一層高めることができる。
なお、重合体の「単量体単位」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に含まれる、当該単量体由来の繰り返し単位」を意味する。また、重合体が「単量体単位からなるブロック領域を有する」とは、「その重合体中に、繰り返し単位として、その単量体単位のみが連なって結合した部分が存在する」ことを意味する。
また、本発明の非水系二次電池負極用スラリー組成物は、前記粒子状重合体が、カップリング部位を更に含んでいても良い。
なお、本発明において、重合体中の「カップリング部位」とは、「カップリング剤を用いたカップリング反応を経て得られる重合体中に含まれる、当該カップリング剤由来の部位」を意味する。
また、本発明の非水系二次電池負極用スラリー組成物は、前記負極活物質のタップ密度が、0.70g/cm以上1.10g/cm以下であることが好ましい。負極活物質のタップ密度が、0.70g/cm以上1.10g/cm以下であれば、得られる負極の電解液注液性及び密度を高めることができる。
なお、「負極活物質のタップ密度」は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用負極は、上述した何れかの非水系二次電池負極用スラリー組成物を用いて形成した、密度が1.60g/cm以上の負極合材層を備えることを特徴とする。このように、非水系二次電池用負極が、上述した非水系二次電池負極用スラリー組成物の何れかを用いて形成した、密度が1.60g/cm以上の負極合材層を備えていれば、かかる負極を用いて二次電池を形成した場合に、得られた二次電池のエネルギー密度が高く、高容量である。なお、負極合材層の密度は、単位面積当たりの負極合材層の質量と厚みとを用いて算出することができる。
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液を有し、前記負極が上述した非水系二次電池用負極であることを特徴とする。上述した非水系二次電池用負極を使用すれば、電解液注液性及び低温充電受入性に優れる非水系二次電池を効率良く製造することができる。
本発明によれば、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を形成可能な非水系二次電池負極用スラリー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、電解液注液性に優れるとともに、得られる二次電池の低温充電受入性を高めることができる、非水系二次電池用負極を提供することができる。
そして、本発明によれば、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を備えるとともに、低温充電受入性に優れる非水系二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池負極用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池の負極を製造する際に用いることができる。更に、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池負極用スラリー組成物を用いて形成した本発明の非水系二次電池用負極を用いたことを特徴とする。
(非水系二次電池負極用スラリー組成物)
本発明の非水系二次電池負極用スラリー組成物は、粒子状重合体を含有し、任意に、水溶性重合体等の増粘性成分、及び、スラリー組成物に配合され得るその他の成分を更に含有する。また、本発明の非水系二次電池負極用スラリー組成物は、通常、水などの分散媒を更に含有する。粒子状重合体を含んでなる結着材であって、電解液に対する接触角及び膨潤度が、それぞれ所定の範囲内である結着材と、負極活物質とを含む非水系二次電池負極用スラリー組成物を用いれば、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を形成することができる。
なお、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を形成することができる非水系二次電池負極用スラリー組成物が得られる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。即ち、本発明のスラリー組成物は、電解液に対する接触角及び膨潤度が所定の範囲内である結着材を含有するため、かかるスラリー組成物を用いて形成した負極が電解液との親和性に富むために、電解液注液性に優れる。さらに、かかる負極を備える二次電池は、低温環境でも電池内部にて電解液が良好に移動可能であり、低温充電受入性に富む。更に、結着材が電解液に対して過度に膨潤しないことによっても、二次電池内部における電解液の移動性を高めることができ、結果的に、二次電池の充電受入性を高めることができる。さらに、結着材が粒子状重合体を含むことによっても、負極中にて粒子状重合体間に適度な間隙が維持されることとなり、負極の電解液注液性を高めることができる。
<結着材>
本発明のスラリー組成物に含まれる結着材は、粒子状重合体を含み、任意で、当該粒子状重合体とは組成及び性状の異なるその他の重合体である、「粒子状結着材」を含みうる。本発明の結着材は、粒子状重合体を含み、濃度1mol/LのLiPF及びエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が3:7である混合溶媒を含む電解液との接触角が50°以下であり、さらに、かかる電解液に対する膨潤度が110%以上300%以下である限りにおいて、あらゆる組成の粒子状重合体、及び任意の粒子状結着材を含みうる。
本発明のスラリー組成物に含まれる「結着材」は、スラリー組成物を使用して形成した負極合材層において、負極活物質などの成分が負極合材層から脱離しないように保持すると共に、負極合材層を介した負極とセパレータとの接着を可能にする一種又は複数種の成分よりなる。より詳細には、「結着材」は、非水溶性である、一種又は複数種の粒子状の重合体を含みうる。具体的には、かかる粒子状の重合体としては、以下に詳述する<<粒子状重合体>>及び<<粒子状結着材>>が挙げられる。これらは、組成及び/又は性状等において相異なる。上述した接触角及び膨潤度の条件を満たす限りにおいて、特に限定されることなく、「結着材」として、「粒子状重合体」のみを含んでいても良いし、「結着材」として「粒子状重合体」及び「粒子状結着材」を含んでも良い。なお、重合体が「非水溶性」であるとは、温度25℃において重合体0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90質量%以上となることをいう。
以下、本発明の結着材の性状、粒子状重合体の組成、及び、粒子状結着材の組成等について詳述する。
<<電解液に対する接触角>>
結着材は、二次電池の電解液として用いられうる、濃度1mol/LのLiPF及びエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が3:7である混合溶媒を含む電解液(以下、単に「電解液」とも称する)に対する接触角が50°以下であることが必要である。結着材の電解液に対する接触角が上記上限値以下であれば、形成した負極合材層中にて電解液が移動し易く、電解液の注液性に優れる負極を得ることができる。さらに、かかる電解液注液性向上効果を一層高める観点から、結着材の電解液に対する接触角が48°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましい。なお、結着材の電解液に対する接触角は、特に限定されることなく、例えば、20°以上であり得る。
<<電解液に対する膨潤度>>
結着材は、濃度1mol/LのLiPF及びエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が3:7である混合溶媒を含む電解液に対する膨潤度が110%以上300%以下である必要がある。電解液に対する膨潤度が上記下限値以上であれば、電解液に対して結着材が適度に膨潤することで、二次電池内部にて電池反応に寄与するイオンが移動し易くなり、二次電池の内部抵抗が過度に高くなることを抑制することができる。また、電解液に対する膨潤度が上記上限値以下であれば、負極合材層中にて、電解液が移動し易く、電池反応に寄与するイオンの一部(例えば、リチウムイオン二次電池におけるリチウムイオン)が負極中又は負極表面にて金属として析出することを抑制することができる。また、負極合材層中にて電解液が移動し易いことに起因して、かかる負極合材層を含む二次電池の低温充電受入性を高めることができる。さらに、上記のような種々の効果を一層高める観点から、電解液に対する結着材の膨潤度が、120%以上であることがより好ましく、250%以下であることがより好ましく、200%以下であることが更に好ましい。
<<粒子状重合体>>
[重合体]
粒子状重合体を形成する重合体は、芳香族ビニル単量体単位からなる芳香族ビニルブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域(以下、単に「その他の領域」とも称することがある)と、を含有する共重合体であることが好ましい。粒子状重合体が、かかる共重合体であれば、スラリー組成物を用いて得られる負極の電解液注液性を一層高めることができる。
重合体において、芳香族ビニルブロック領域とその他の領域とは互いに隣接して存在する。また、重合体は、芳香族ビニルブロック領域を1つのみ有していてもよく、複数有していてもよい。同様に、重合体は、その他の領域を1つのみ有していてもよく、複数有していてもよい。
−芳香族ビニルブロック領域−
芳香族ビニルブロック領域は、上述したように、繰り返し単位として、芳香族ビニル単量体単位のみを含む領域である。
ここで、1つの芳香族ビニルブロック領域は、1種の芳香族ビニル単量体単位のみで構成されていてもよいし、複数種の芳香族ビニル単量体単位で構成されていてもよいが、1種の芳香族ビニル単量体単位のみで構成されていることが好ましい。
また、1つの芳香族ビニルブロック領域には、カップリング部位が含まれていてもよい(すなわち、1つの芳香族ビニルブロック領域を構成する芳香族ビニル単量体単位は、カップリング部位が介在して連なっていてもよい)。
そして、重合体が複数の芳香族ビニルブロック領域を有する場合、それら複数の芳香族ビニルブロック領域を構成する芳香族ビニル単量体単位の種類及び割合は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
重合体の芳香族ビニルブロック領域を構成する芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、スチレンスルホン酸及びその塩、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、並びに、ビニルナフタレンなどの芳香族モノビニル化合物が挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。これらは1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができるが、1種を単独で用いることが好ましい。
そして、重合体中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、重合体中の全繰り返し単位(単量体単位及び構造単位)の量を100質量%とした場合に、2質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。重合体中に占める芳香族ビニル単量体単位の割合が2質量%以上であれば、重合体のタック性発現を十分に抑制することができる。従って、負極の負極合材層の高密度化等を目的としてロールプレスにより負極に加圧処理を施した場合であっても、負極合材層がロールに付着することによる不良の発生及び生産性の低下が生じるのを抑制することができる。一方、重合体中に占める芳香族ビニル単量体単位の割合が50質量%以下であれば、重合体の柔軟性が確保され、負極をプレスした際に容易に高密度化することができる。
なお、芳香族ビニル単量体単位が重合体中に占める割合は、通常、芳香族ビニルブロック領域が重合体中に占める割合と一致する。
−その他の領域−
その他の領域は、繰り返し単位として、脂肪族共役ジエン単量体単位を含み、任意で、脂肪族共役ジエン単量体単位及び芳香族ビニル単量体単位以外の繰り返し単位(以下、「その他の繰り返し単位」と略記する場合がある。)を含みうる領域である。
ここで、1つのその他の領域は、1種のその他の繰り返し単位で構成されていてもよいし、複数種のその他の繰り返し単位で構成されていてもよい。
また、1つのその他の領域には、カップリング部位が含まれていてもよい(すなわち、1つのその他の領域を構成するその他の繰り返し単位は、カップリング部位が介在して連なっていてもよい)。
更に、その他の領域は、グラフト部分及び/又は架橋構造を有していてもよい。
そして、重合体が複数のその他の領域を有する場合、それら複数のその他の領域を構成するその他の繰り返し単位の種類及び割合は、互いに同一でも異なっていてもよい。
重合体のその他の領域を構成する、脂肪族共役ジエン単量体単位以外のその他の繰り返し単位としては、特に限定されないが、例えば、アルキレン構造単位が挙げられる。
ここで、脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数4以上の共役ジエン化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。そしてこれらの中でも、負極の接着性を更に向上させる観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
また、アルキレン構造単位は、一般式:−C2n−[但し、nは2以上の整数]で表わされるアルキレン構造のみで構成される繰り返し単位である。
ここで、アルキレン構造単位は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、アルキレン構造単位は直鎖状、すなわち直鎖アルキレン構造単位であることが好ましい。また、アルキレン構造単位の炭素数は4以上である(即ち、上記一般式のnが4以上の整数である)ことが好ましい。
なお、重合体へのアルキレン構造単位の導入方法は、特に限定はされない。例えば、芳香族ビニル単量体単位からなるブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域とを含むブロック重合体に水素添加することで、脂肪族共役ジエン単量体単位をアルキレン構造単位に変換して重合体を得る方法が挙げられる。
更に、その他の領域を構成するその他の繰り返し単位としては、特に限定されないが、例えば、負極への電解液の注液性を一層向上させて、低温充電受入性の高い二次電池を形成可能とする観点からは、脂肪族共役ジエン単量体単位を架橋してなる構造単位を含むことが好ましい。即ち、粒子状重合体を形成する重合体は、芳香族ビニル単量体単位からなるブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域とを含むブロック重合体を架橋してなる重合体であることが好ましい。
そして、脂肪族共役ジエン単量体単位を架橋してなる構造単位は、芳香族ビニル単量体単位からなるブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域とを含むブロック重合体を架橋することにより、重合体に導入することができる。
ここで、架橋は、特に限定されることなく、例えば酸化剤と還元剤とを組み合わせてなるレドックス開始剤などのラジカル開始剤を用いて行うことができる。そして、酸化剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物を用いることができる。また、還元剤としては、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などを用いることができる。これらの有機過酸化物及び還元剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、架橋は、ジビニルベンゼン等のポリビニル化合物;ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のポリアリル化合物;エチレングリコールジアクリレート等の各種グリコール;などの架橋剤の存在下で行ってもよい。また、架橋は、γ線などの活性エネルギー線の照射を用いて行うこともできる。
ここで、粒子状重合体を形成する重合体中における脂肪族共役ジエン単量体単位、脂肪族共役ジエン単量体単位を架橋してなる構造単位及びアルキレン構造単位の合計量は、重合体中の全繰り返し単位の量を100質量%とした場合に、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。そして、芳香族ビニル単量体単位からなるブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域とを含むブロック重合体(水素添加及び/又は架橋されるブロック重合体)中における脂肪族共役ジエン単量体単位の割合は、ブロック重合体中の全繰り返し単位の量を100質量%とした場合に、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
重合体中に占める脂肪族共役ジエン単量体単位、脂肪族共役ジエン単量体単位を架橋してなる構造単位及びアルキレン構造単位の割合が50質量%以上であれば、負極の接着性を向上させることができる。一方、重合体中に占める脂肪族共役ジエン単量体単位、脂肪族共役ジエン単量体単位を架橋してなる構造単位及びアルキレン構造単位の割合が98質量%以下であれば、重合体の柔軟性を確保して負極のプレス性を更に向上させることができると共に、重合体のタック性発現を十分に抑制することができる。
また、重合体のその他の領域は、脂肪族共役ジエン単量体単位、脂肪族共役ジエン単量体単位を架橋してなる構造単位及びアルキレン構造単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。具体的には、重合体のその他の領域は、カルボキシル基含有単量体単位、スルホン酸基含有単量体単位及びリン酸基含有単量体単位等の酸性基含有単量体単位;アクリロニトリル単位及びメタクリロニトリル単位等のニトリル基含有単量体単位;並びに、アクリル酸アルキルエステル単位及びメタクリル酸アルキルエステル単位等の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位;などの他の単量体単位を含んでいてもよい。ここで、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
中でも、粒子状重合体の表面酸量を適度な大きさとしてスラリー組成物の粘度安定性を向上させる観点からは、重合体のその他の領域は、酸性基含有単量体単位を含むことが好ましい。
なお、酸性基含有単量体単位が有する酸性基は、アルカリ金属やアンモニア等と塩を形成していてもよい。
ここで、カルボキシル基含有単量体単位を形成し得るカルボキシル基含有単量体としては、モノカルボン酸及びその誘導体や、ジカルボン酸及びその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸誘導体としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸や、マレイン酸ブチル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸モノエステルが挙げられる。
ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
また、カルボキシル基含有単量体としては、加水分解によりカルボキシル基を生成する酸無水物も使用できる。
更に、カルボキシル基含有単量体としては、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸や、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノ2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステルなども用いることができる。
また、スルホン酸基含有単量体単位を形成し得るスルホン酸基含有単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸(エチレンスルホン酸)、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アリル」とは、アリル及び/又はメタリルを意味する。
更に、リン酸基含有単量体単位を形成し得るリン酸基含有単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルが挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。
ここで、上述した単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そして、酸性基含有単量体単位を形成し得る酸性基含有単量体としては、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
なお、重合体が酸性基含有単量体単位を有する場合、重合体中の酸性基含有単量体単位の割合は、重合体中の全繰り返し単位の量を100質量%とした場合に、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
そして、上述した、酸性基含有単量体単位、ニトリル基含有単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位などの他の単量体単位は、特に限定されることなく、グラフト重合などの任意の重合方法を用いて重合体に導入することができる。なお、グラフト重合により他の単量体単位を導入した場合、重合体は、グラフト部分を含むこととなり、幹部分となる重合体に対してグラフト部分となる重合体が結合した構造を有することになる。
ここで、グラフト重合は、特に限定されることなく、既知のグラフト重合方法を用いて行うことができる。具体的には、グラフト重合は、例えば酸化剤と還元剤とを組み合わせてなるレドックス開始剤などのラジカル開始剤を用いて行うことができる。そして、酸化剤及び還元剤としては、芳香族ビニル単量体単位からなるブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域とを含むブロック重合体の架橋に使用し得るものとして上述した酸化剤及び還元剤と同様のものを用いることができる。
そして、芳香族ビニル単量体単位からなるブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域とを含むブロック重合体に対してレドックス開始剤を用いてグラフト重合を行う場合には、グラフト重合による他の単量体単位の導入と、脂肪族共役ジエン単量体単位の架橋とを同時に進行させることができる。なお、グラフト重合と架橋は同時に進行させなくてもよく、ラジカル開始剤の種類や反応条件を調整してグラフト重合のみを進行させてもよい。
上述した重合体よりなる粒子状重合体は、例えば、有機溶媒中で上述した芳香族ビニル単量体や脂肪族共役ジエン単量体などの単量体をブロック重合して芳香族ビニルブロック領域を有するブロック重合体の溶液を得る工程(ブロック重合体溶液調製工程)と、得られたブロック重合体の溶液に水を添加して乳化することでブロック重合体を粒子化する工程(乳化工程)と、粒子化したブロック重合体に対してグラフト重合を行って所定の重合体よりなる粒子状重合体の水分散液を得る工程(グラフト工程)と、を経て調製することができる。なお、粒子状重合体の調製において、グラフト工程は、乳化工程の前に行ってもよい。
−ブロック重合体溶液調製工程−
ブロック重合体溶液調製工程におけるブロック重合の方法は、特に限定されない。例えば、第一の単量体成分を重合させた溶液に、第一の単量体成分とは異なる第二の単量体成分を加えて重合を行い、必要に応じて、単量体成分の添加と重合とを更に繰り返すことより、ブロック重合体を調製することができる。なお、反応溶媒として使用される有機溶媒も特に限定されず、単量体の種類等に応じて適宜選択することができる。
ここで、上記のようにブロック重合して得られたブロック重合体を、後述する乳化工程に先んじて、カップリング剤を用いたカップリング反応に供することが好ましい。カップリング反応を行えば、例えば、ブロック重合体中に含まれるジブロック構造体同士の末端をカップリング剤により結合させて、トリブロック構造体に変換することができる(すなわち、ジブロック量を低減することができる)。
上記カップリング反応に使用し得るカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、2官能のカップリング剤、3官能のカップリング剤、4官能のカップリング剤、5官能以上のカップリング剤が挙げられる。
2官能のカップリング剤としては、例えば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジクロロジメチルシラン等の2官能性ハロゲン化シラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタン等の2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズ等の2官能性ハロゲン化スズ;が挙げられる。
3官能のカップリング剤としては、例えば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;が挙げられる。
4官能のカップリング剤としては、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;が挙げられる。
5官能以上のカップリング剤としては、例えば、1,1,1,2,2−ペンタクロロエタン、パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテルなどが挙げられる。
これらは1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
上述した中でも、カップリング剤としては、ジクロロジメチルシランが好ましい。なお、カップリング剤を用いたカップリング反応によれば、当該カップリング剤に由来するカップリング部位が、ブロック重合体を構成する高分子鎖(例えば、トリブロック構造体)に導入される。
なお、上述したブロック重合及び任意に行われるカップリング反応後に得られるブロック重合体の溶液は、そのまま後述する乳化工程に供してもよいが、必要に応じて、ブロック重合体に対し上述した水素添加を行った後に、乳化工程に供することもできる。
−乳化工程−
乳化工程における乳化の方法は、特に限定されないが、例えば、上述したブロック重合体溶液調製工程で得られたブロック重合体の溶液と、乳化剤の水溶液との予備混合物を転相乳化する方法が好ましい。ここで、転相乳化には、例えば既知の乳化剤及び乳化分散機を用いることができる。具体的には、乳化分散機としては、特に限定されることなく、例えば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化分散機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化分散機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化分散機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化分散機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化分散機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化分散機;などを用いることができる。なお、乳化分散機による乳化操作の条件(例えば、処理温度、処理時間など)は、特に限定されず、所望の分散状態になるように適宜選定すればよい。
そして、転相乳化後に得られる乳化液から、必要に応じて、既知の方法により有機溶媒を除去する等して、粒子化したブロック重合体の水分散液を得ることができる。
−グラフト工程−
グラフト工程におけるグラフト重合の方法は、特に限定されないが、例えば、グラフト重合させる単量体の存在下において、レドックス開始剤などのラジカル開始剤を用いてブロック重合体のグラフト重合及び架橋を同時に進行させる方法が好ましい。ここで、反応条件は、ブロック重合体の組成等に応じて調整することができる。
<<粒子状結着材>>
本発明のスラリー組成物は、結着材として、粒子状重合体に加えて、かかる粒子状重合体とは組成及び/又は性状の異なる重合体である、粒子状結着材を含有していても良い。かかる粒子状結着材としては、結着材全体として、上述した特定の性状(電解液に対する接触角及び膨潤度)を満たす限りにおいて特に限定されることなく、スチレンブタジエンランダム共重合体及びアクリル重合体など既知の粒子状の結着材が挙げられる。中でも、結着性の観点から、スチレンブタジエンランダム共重合体が好ましい。スチレンブタジエンランダム共重合体は、スチレン単量体単位を20質量%以上80質量%以下、ブタジエン単量体単位を20質量%以上80質量%以下の割合で含有し、任意で、親水性基を有する単量体単位を1質量%以上15質量%以下の割合で含有していても良い。なお、「親水性基」としては、後述する水溶性重合体が有し得る親水性基と同様の基が挙げられる。中でも、親水性基を有する単量体単位としては、カルボキシル基を有する単量単位及びヒドロキシル基を有する単量体単位が好ましい。粒子状結着材としては、乳化重合法等の定法に従って調製して得た重合体を用いても良いし、上市製品を用いても良い。
[粒子状結着材の膨潤度]
粒子状結着材は、電解液(濃度1mol/LのLiPF及びエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が3:7である混合溶媒を含む電解液)に対する膨潤度が、110%以上450%以下であることが好ましい。粒子状結着材の電解液に対する膨潤度が上記下限値以上であれば、電解液に対して粒子状結着材が適度に膨潤することで、二次電池内部にて電池反応に寄与するイオンが移動し易くなり、二次電池の内部抵抗が過度に高くなることを一層効果的に抑制することができる。また、粒子状結着材の電解液に対する膨潤度が上記上限値以下であれば、負極合材層中にて、電解液が移動し易く、リチウムイオン等が析出することを一層効果的に抑制することができる。さらにまた、粒子状結着材の電解液に対する膨潤度が上記上限値以下である場合に、負極合材層中にて電解液が移動し易いことに関連して、得られる二次電池の低温充電受入性を高めることができる。
<<粒子状重合体と粒子状結着材との混合比率>>
結着材における粒子状重合体と粒子状結着材との混合比率は、質量基準で、粒子状重合体:粒子状結着材=10:0〜2:8であることが好ましく、10:0〜3:7であることがより好ましく、10:0〜4:6であることが更に好ましい。粒子状重合体の占有率が、結着材全体の20質量%以上であれば、負極合材層中における電解液の移動性を高めることができ、電解液注液性に一層優れる負極を形成することができる。
<負極活物質>
負極活物質としては、特に限定されることなく、二次電池に用いられる既知の負極活物質を使用することができる。具体的には、例えば、二次電池の一例としてのリチウムイオン二次電池の負極合材層において使用し得る負極活物質としては、特に限定されることなく、以下の負極活物質を用いることができる。
リチウムイオン二次電池の負極の負極合材層に配合される負極活物質としては、例えば、炭素系負極活物質、金属系負極活物質、及び、これらを組み合わせた負極活物質などが挙げられる。
ここで、炭素系負極活物質とは、リチウムを挿入(「ドープ」ともいう。)可能な、炭素を主骨格とする活物質をいう。そして、炭素系負極活物質としては、具体的には、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)及びハードカーボンなどの炭素質材料、並びに、天然黒鉛及び人造黒鉛などの黒鉛質材料が挙げられる。
また、金属系負極活物質とは、金属を含む活物質であり、通常は、リチウムの挿入が可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の単位質量当たりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいう。そして、金属系活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金を形成し得る単体金属(例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn、Tiなど)及びそれらの酸化物、硫化物、窒化物、ケイ化物、炭化物、燐化物などが挙げられる。さらに、チタン酸リチウムなどの酸化物を挙げることができる。
なお、上述した負極活物質は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、負極活物質は、タップ密度が0.70g/cm3以上であることが好ましく、0.75g/cm3以上であることがより好ましく、0.80g/cm3以上であることが更に好ましく、1.10g/cm3以下であることが好ましく、1.05g/cm3以下であることがより好ましく、1.00g/cm3以下であることが更に好ましい。負極活物質のタップ密度が上記下限値以上であれば、負極合材層に含まれる負極活物質の流動が抑制され、負極合材層中にて負極活物質が配向して形成された電解液流路を良好に維持することができる。また、負極活物質のタップ密度が上記上限値以下であれば、負極をプレスして高密度化した際のスプリングバックが抑制され、高密度な負極を良好に形成することができる。
なお、スラリー組成物中における粒子状重合体と負極活物質との配合割合は、特に限定されない。例えば、粒子状重合体の配合量は、負極活物質100質量部当たり、固形分換算で、粒子状重合体の量が0.5質量部以上15質量部以下となる量とすることができる。
<増粘性成分>
増粘性成分は、スラリー組成物中に対して粘性を付与するとともに、上述した粒子状重合体等の配合成分をスラリー組成物中にて良好に分散させ得る成分である。増粘性成分としては、かかる機能を発揮し得る限りにおいて特に限定されることなく、既知の増粘剤及び水溶性重合体等を挙げることができる。中でも、増粘性成分として、水溶性重合体を配合することで、スラリー組成物を用いて形成した負極合材層の構造が最適化され、負極の電解液注液性を更に高めることができる。なお、重合体が「水溶性」であるとは、温度25℃において重合体0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が1.0質量%未満となることをいう。
水溶性重合体は、塩の形態(水溶性重合体の塩)であってもよい。すなわち、本発明において、「水溶性重合体」には、当該水溶性重合体の塩も含まれる。なお、例えば、好適な水溶性重合体としては、親水性基を有し、且つ、重量平均分子量が15,000以上3,000,000以下である水溶性重合体が挙げられる。
[親水性基]
水溶性重合体が有し得る親水性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシル基が挙げられる。水溶性重合体は、これらの親水性基を1種類のみ有していてもよく、2種類以上有していてもよい。そしてこれらの中でも、スラリー組成物の安定性を高めて塗布密度を向上させると共に当該スラリー組成物塗布時における粒子状重合体等の凝集を抑制し、更には電極のハンドリング性を一層向上させる観点から、親水性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
ここで、水溶性重合体に親水性基を導入する方法は特に限定されず、上述した親水性基を含有する単量体(親水性基含有単量体)を付加重合して重合体を調製し、親水性基含有単量体単位を含む水溶性重合体を得てもよいし、任意の重合体を変性(例えば、末端変性)することにより、上述した親水性基を有する水溶性重合体を得てもよいが、前者が好ましい。
−親水性基含有単量体単位−
そして、水溶性重合体は、スラリー組成物の安定性を高めて塗布密度を向上させると共に当該スラリー組成物塗布時における粒子状重合体等の凝集を抑制し、更には、負極のハンドリング性を一層向上させる観点から、親水性基含有単量体単位として、カルボキシル基含有単量体単位、スルホン酸基含有単量体単位、リン酸基含有単量体単位、及び、ヒドロキシル基含有単量体単位からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、カルボキシル基含有単量体単位とスルホン酸基含有単量体単位との少なくとも一方を含むことがより好ましく、カルボキシル基含有単量体単位を含むことが更に好ましい。なお、水溶性重合体は、上述した親水性基含有単量体単位を1種類のみ含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。
ここで、カルボキシル基含有単量体単位を形成しうるカルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体単位を形成しうるスルホン酸基含有単量体、及び、リン酸基含有単量体単位を形成しうるリン酸基含有単量体としては、例えば、粒子状重合体を形成する重合体に使用し得るものと同様のものを用いることができる。
ヒドロキシル基含有単量体単位を形成しうるヒドロキシル基含有単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式:CH2=CR−COO−(Cq2qO)p−H(式中、pは2〜9の整数、qは2〜4の整数、Rは水素原子又はメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル−2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲン及びヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテル及びそのハロゲン置換体;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;N−ヒドロキシメチルアクリルアミド(N−メチロールアクリルアミド)、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミドなどのヒドロキシル基を有するアミド類などが挙げられる。
そして、水溶性重合体中の親水性基含有単量体単位の割合は、水溶性重合体中の全繰り返し単位の量を100質量%とした場合に、10質量%以上であることが好ましい。水溶性重合体中に占める親水性基含有単量体単位の割合が10質量%以上であれば、スラリー組成物の安定性を高めて塗布密度を向上させると共に当該スラリー組成物塗布時における粒子状重合体等の凝集を抑制することができる。なお、水溶性重合体中に親水性基含有単量体単位の割合の上限は、特に限定されず、100質量%以下とすることができる。
−その他の単量体単位−
水溶性重合体は、上述した親水性基含有単量体単位以外の単量体単位(その他の単量体単位)を含んでいてもよい。水溶性重合体に含まれるその他の単量体単位を形成しうるその他の単量体は、上述した親水性基含有単量体と共重合可能であれば特に限定されない。その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、架橋性単量体が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、架橋性単量体としては、例えば、特開2015−70245号公報で例示されたものを用いることができる。
なお、その他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[水溶性重合体の調製方法]
水溶性重合体は、上述した単量体を含む単量体組成物を、例えば水などの水系溶媒中で重合することにより、製造し得る。この際、単量体組成物中の各単量体の含有割合は、水溶性重合体中の各単量体単位の含有割合に準じて定めることができる。
そして、重合様式は、特に制限なく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。また、重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。
また、重合に使用される乳化剤、分散剤、重合開始剤、重合助剤、分子量調整剤などの添加剤は、一般に用いられるものを使用しうる。これらの添加剤の使用量も、一般に使用される量としうる。重合条件は、重合方法及び重合開始剤の種類などに応じて適宜調整しうる。
[結着材と水溶性重合体との含有量比]
本発明のスラリー組成物における結着材と水溶性重合体との含有量比(固形分換算)は特に限定されず、例えば、結着材の含有量は、結着材と水溶性重合体の合計含有量(100質量%)の50質量%以上99.8質量%以下であることが好ましい。
<水系媒体>
本発明のスラリー組成物が含有する水系媒体は、水を含んでいれば特に限定されず、水溶液や、水と少量の有機溶媒との混合溶液であってもよい。
<その他の成分>
本発明のスラリー組成物は、上記成分以外の成分(その他の成分)を含有することができる。例えば、スラリー組成物は、既知の添加剤を含んでいてもよい。このような既知の添加剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどの酸化防止剤、消泡剤、分散剤(上述した増粘性成分に該当するものを除く。)、及び導電材が挙げられる。なお、その他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
<スラリー組成物の調製方法>
そして、本発明のスラリー組成物は、特に限定されることなく、粒子状重合体と、負極活物質と、必要に応じて用いられる水溶性重合体及び/又はその他の成分とを、水系媒体の存在下で混合してスラリー組成物を調製することができる。また、混合方法は特に制限されないが、通常用いられうる撹拌機や、分散機を用いて混合することができる。
(非水系二次電池用負極)
本発明の非水系二次電池用電極は、上述した非水系二次電池負極用スラリー組成物を用いて形成した負極合材層を備える。従って、負極合材層は、上述したスラリー組成物の乾燥物よりなり、通常、負極活物質と、粒子状重合体に由来する成分とを含有し、任意に、水溶性重合体やその他の成分を含有する。なお、負極合材層中に含まれている各成分は、上記非水系二次電池負極用スラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、スラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。また、粒子状重合体は、スラリー組成物中では粒子形状で存在するが、スラリー組成物を用いて形成された負極合材層中では、粒子形状であってもよいし、その他の任意の形状であってもよい。
そして、本発明の非水系二次電池用負極は、上述した非水系二次電池負極用スラリー組成物を使用して負極合材層を形成しているので、電解液注液性に優れている。そして、かかる非水系二次電池用負極を備える二次電池は、低温環境下で充電操作を行った場合に、良好に充電することができる。
本発明の非水系二次電池用負極は、負極合材層の密度が、1.60g/cm以上であることが好ましく、1.65g/cm以上であることがより好ましく、2.00g/cm以下であることが好ましく、1.95g/cm以下であることがより好ましく、1.90g/cm以下であることが更に好ましい。負極合材層の密度が上記下限値以上である負極を備える二次電池は、高容量である。また、負極合材層の密度が上記上限値以下である負極を備える二次電池は、通常の充放電操作によって充放電が可能であるために、利便性が高い。
<非水系二次電池用負極の製造>
ここで、本発明の非水系二次電池用負極の負極合材層は、例えば、以下の方法を用いて形成することができる。
1)本発明のスラリー組成物を集電体の表面に塗布し、次いで乾燥する方法;
2)本発明のスラリー組成物に集電体を浸漬後、これを乾燥する方法;及び
3)本発明のスラリー組成物を離型基材上に塗布し、乾燥して負極合材層を製造し、得られた負極合材層を集電体の表面に転写する方法。
これらの中でも、前記1)の方法が、負極合材層の層厚制御をしやすいことから特に好ましい。前記1)の方法は、詳細には、スラリー組成物を集電体上に塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布されたスラリー組成物を乾燥させて集電体上に負極合材層を形成する工程(乾燥工程)を含む。
[塗布工程]
上記スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる負極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
ここで、スラリー組成物を塗布する集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などからなる集電体を用い得る。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[乾燥工程]
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法を用いることができる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に負極合材層を形成し、集電体と負極合材層とを備える非水系二次電池用負極を得ることができる。
なお、乾燥工程の後、金型プレス又はロールプレスなどを用い、負極合材層に加圧処理を施してもよい。加圧処理により、負極合材層と集電体との密着性を向上させると共に得られる負極合材層をより一層高密度化することができる。また、負極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、負極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、正極と、上述した非水系二次電池用負極と、電解液と、セパレータとを備えている。そして、本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用負極を用いて製造されるため、二次電池の内部における電解液の移動性が高く、低温充電受入性に優れる。
なお、以下では、一例として二次電池がリチウムイオン二次電池である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
<正極>
ここで、本発明の非水系二次電池で使用し得る、非水系二次電池用正極としては、特に限定されることなく、二次電池の製造に用いられている既知の正極を用いることができる。具体的には、既知の製造方法を用いて集電体上に正極合材層を形成してなる正極などを用いることができる。
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。リチウムイオン二次電池の支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類を用いることが好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加することができる。
<セパレータ>
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
そして、本発明の二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。ここで、本発明の非水系二次電池では、上述した非水系二次電池用負極を使用する。なお、本発明の非水系二次電池には、二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
そして、実施例及び比較例において、結着材の電解液接触角及び電解液膨潤度、粒子状結着材の電解液膨潤度、負極活物質のタップ密度、二次電池の低温充電受入性、並びに、負極の電解液注液性は、以下の方法で測定又は評価した。
<結着材の電解液接触角>
実施例1、4、及び、比較例1、2では、それぞれ調製した粒子状重合体の水分散液を製膜して得られたフィルムを電解液接触角の測定対象とした。また、実施例2〜3では、それぞれ調製した粒子状重合体の水分散液に対して、粒子状重合体との混合比率が固形分の質量基準で表1に示すとなるように、粒子状結着材を添加して得た混合物を製膜して得られたフィルムを電解液接触角の測定対象とした。接触角の測定要領は、以下の通りとした。
測定装置として、接触角計(協和界面化学社製、「DMs−400」)を用いた。また、電解液接触角測定用の電解液としては、支持電解質としてのLiPFを、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が3:7である混合溶媒に対して、濃度1mol/Lとなるように溶解してなる電解液(以下、「EC:EMC=3:7;LiPF=1mol/L」電解液とも表記することがある。)を用いた。かかる電解液を、25℃のドライルーム(露点温度−40℃以下の環境下)においてフィルム上に滴下し、上記接触角計により、水平方向から取得した画像について接線法に基づいて画像解析して、接触角を求めた。なお、実施例4については、支持電解質としてのLiPFを、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比が1:2である混合溶媒に対して、濃度1mol/Lとなるように溶解してなる、上記とは異なる組成の電解液(以下、「EC:DEC=1:2;LiPF=1mol/L」電解液とも表記することがある。)を用いて、同様の手順に従って、接触角を測定した。
<結着材の電解液膨潤度>
上記<結着材の電解液接触角>の測定の際と同様にして、電解液膨潤度の測定対象としてのフィルムを作成した。電解液膨潤度測定用の電解液としては、<結着材の電解液接触角>の測定の際と同じ、「EC:EMC=3:7;LiPF=1mol/L」電解液、又は、「EC:DEC=1:2;LiPF=1mol/L」電解液を用いた。
測定対象としてのフィルムを秤量し、浸漬前質量M0を測定した。その後、電解液に対して、60℃72時間の条件でフィルムを浸漬し、引き上げた。引き上げたフィルムの表面の電解液をふき取り、秤量して、浸漬後質量M1を得た。そして、下式に従って、結着材の電解液膨潤度(%)を算出した。
電解液膨潤度(%)=M1/M0×100
<粒子状結着材の電解液膨潤度>
実施例2〜3で調製した粒子状結着材としての、スチレンブタジエンランダム共重合体を含む、水分散液を製膜して得られたフィルムを電解液接触角の測定対象とした。かかる点以外は、上記<結着材の電解液膨潤度>の際と同様にして、粒子状結着材の電解液膨潤度(%)を算出した。
<負極活物質のタップ密度>
実施例、比較例で用いた負極活物質について、パウダテスタ(登録商標)(ホソカワミクロン社製、製品名「PT−D」)を用いてタップ密度を測定した。具体的には、まず、測定容器に充填した負極活物質の粉体を容器上面にてすり切った。次いで、測定容器に測定器付属のキャップを取り付け、取り付けたキャップの上縁まで負極活物質の粉体を追加充填し、高さ1.8cmから180回繰り返し落下させることにより、タッピングを行った。タッピング終了後にキャップを外し、容器上面にて負極活物質の粉体を再びすり切った。タッピング後にすり切った試料を秤量し、この状態の嵩密度を固め嵩密度、即ちタップ密度(g/cm3)として測定した。
<二次電池の低温充電受入性>
実施例、比較例で作製したリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた後に、25℃の環境下で、1.0Cにて定電流で1時間の充電の操作を行い、常温充電容量(C0)を測定した。その後、25℃の環境下で、0.1Cの定電流で放電を行い3Vに達した時点で、放電を停止した。次に、−15℃環境下で、1.0Cにて定電流で1時間の充電を行い、低温充電容量(C1)を測定した。そして、C1/C0で求められる低温環境におけるリチウムイオンの受入性(即ち、低温充電受入性)Xを求め、以下の基準により判定した。この低温充電受入性Xが大きいほど、低温環境下での充電操作により、負極合材層中にてより多くのリチウムイオンを受け入れることができることを意味する。
A:低温充電受入性Xが0.5以上1以下
B:低温充電受入性Xが0.4以上0.5未満
C:低温充電受入性Xが0.4未満
<負極の電解液注液性>
実施例、比較例で作製した負極原反の負極合材層側を温度25±3℃の環境下、線圧14t(トン)の条件でロールプレスし、負極合材層密度を1.75g/cm3に調整した。このようにして得た二次電池用負極を直径16mmの円形に切り出し、負極合材層を有する面にプロピレンカーボネートを1μL滴下した。滴下した液滴が負極合材層内に浸透するまでの時間(以下、「浸透時間」とも称する。)を目視で測定し、以下の基準により評価した。なお、浸透時間は、滴下時点から負極合材層表面に液体が確認されなくなるまでの所要時間である。この浸透時間が短いほど、プロピレンカーボネートに代えて、所望の電解液を用いた場合であっても、電解液と負極との親和性が良好であり、即ち、二次電池の製造における、電解液の注液性に優れることを示す。
A:浸透時間が110秒未満
B:浸透時間が110秒以上130秒未満
C:浸透時間が130秒以上
(実施例1)
<粒子状重合体の調製>
[ブロック重合体のシクロヘキサン溶液の調製]
耐圧反応器に、シクロヘキサン233.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)54.2mmol及びスチレン30.0kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム1806.5mmolを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン70.0kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてジクロロジメチルシラン722.6mmolを添加して2時間カップリング反応を行い、スチレン−イソプレンカップリングブロック共重合体を形成させた。この後、活性末端を有するスチレン−イソプレンブロック共重合体が残留していると考えられる反応液に、メタノール3612.9mmolを添加してよく混合し、活性末端を失活させた。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30.0部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、ブロック重合体を含む乾燥物を回収した。
そして、回収した乾燥物をシクロヘキサンに溶解し、ブロック重合体の濃度が15質量%であるブロック重合体溶液を調製した。
[転相乳化]
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムをイオン交換水に溶解し、5質量%の水溶液を調製した。
そして、得られたブロック重合体溶液500gと得られた水溶液500gとをタンク内に投入し撹拌させることで予備混合を行った。続いて、タンク内から、予備混合物を、定量ポンプを用いて100g/分の速度で連続式高能率乳化分散機(太平洋機工社製、製品名「マイルダー MDN303V」)へ移送し、回転数15000rpmで撹拌することにより、予備混合物を転相乳化した乳化液を得た。
次に、得られた乳化液中のシクロヘキサンをロータリーエバポレータにて減圧留去した。その後、留去した乳化液を遠心分離機(日立工機社製、「Himac CR21N」)にて、7000rpmで10分間遠心した後、上層部分を取り出すことで濃縮を行った。最後に、上層部分を100メッシュの金網で濾過し、粒子状のブロック重合体を含有する水分散液(ブロック重合体ラテックス)を得た。
[グラフト重合及び架橋]
得られたブロック重合体ラテックスを固形分換算で100部に対し、蒸留水850部を添加して希釈した。そして、希釈されたブロック重合体ラテックスを窒素置換された撹拌機付き重合反応容器に投入し、撹拌しながら温度を30℃にまで加温した。
また、別の容器を用い、酸性基含有単量体としてのメタクリル酸6部と蒸留水15部とを混合してメタクリル酸希釈液を調製した。このメタクリル酸希釈液を、30℃にまで加温した重合反応容器内に、30分間かけて添加した。
更に、別の容器を用い、蒸留水7部及び還元剤としての硫酸第一鉄(中部キレスト社製、商品名「フロストFe」)0.01部を含む溶液を調製した。得られた溶液を重合反応容器内に添加した後、酸化剤としての1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、商品名「パーオクタH」)0.5部を添加し、30℃で1時間反応させた後、更に70℃で2時間反応させた。なお、重合転化率は99%であった。
そして、ブロック重合体をグラフト重合及び架橋してなる重合体よりなる粒子状重合体の水分散液を得た。得られた水分散液を走査型電子顕微鏡(SEM)により拡大観察し、含有される重合体が粒子状であることを確認した。
得られた粒子状重合体の水分散液を用いて、結着材の電解液接触角及び電解液膨潤度を測定した。結果を表1に示す。
<非水系二次電池負極用スラリー組成物の調製>
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質としての人造黒鉛(容量:360mAh/g)100部、導電材としてのカーボンブラック(TIMCAL社製、製品名「Super C65」)1部、水溶性重合体としてのカルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル社製、製品名「MAC−350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1.2部加えて混合物を得た。得られた混合物をイオン交換水で固形分濃度60%に調整した後、25℃で60分間混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した後、さらに25℃で15分間混合し混合液を得た。得られた混合液に、上述で調製された粒子状重合体の水分散液を固形分相当量で2.0部、及びイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が48%となるように調整した。さらに10分間混合した後、減圧下で脱泡処理することにより、負極用スラリー組成物を得た。
<負極の形成>
得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ15μmの銅箔の上に、乾燥後の目付が11mg/cmになるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、負極原反を得た。
そして、負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の密度が1.70g/cmの負極を得た。
<正極の形成>
正極活物質としての体積平均粒子径12μmのLiCoOを100部と、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS−100」)を2部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、製品名「#7208」)を固形分相当で2部と、溶媒としてのN−メチルピロリドンとを混合して全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を得た。
得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の目付が23mg/cmになるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。
そして、正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の密度が4.0g/cmの正極を得た。
<セパレータの準備>
セパレータ基材よりなるセパレータとして、単層のポリプロピレン製セパレータ(セルガード社製、製品名「セルガード2500」)を準備した。
<リチウムイオン二次電池の作製>
得られた正極を49cm×5cmの長方形に切り出して正極合材層側の表面が上側になるように置き、その正極合材層上に120cm×5.5cmに切り出したセパレータを、正極がセパレータの長手方向左側に位置するように配置した。更に、得られた負極を50×5.2cmの長方形に切り出し、セパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うように、かつ、負極がセパレータの長手方向右側に位置するように配置した。そして、得られた積層体を捲回機により捲回し、捲回体を得た。この捲回体を電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、二次電池用電解液(溶媒:エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=30/70(体積比)、支持電解質:濃度1mol/LのLiPF6)を空気が残らないように注入し、更にアルミ包材外装の開口を150℃のヒートシールで閉口して、容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。そして、このリチウムイオン二次電池について、上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
非水系二次電池負極用スラリー組成物の調製時に、結着材として、粒子状重合体に加えて、以下のようにして調製した粒子状結着材を配合した。この際、結着材としての総質量を維持しつつ、結着材の中での粒子状重合体と粒子状結着材との質量比率が50:50となるように、添加量を調節した。なお、粒子状重合体と粒子状結着材とは、予め撹拌機(新東科学社製、製品名「スリーワンモータ」)を用いて1時間撹拌してから、スラリー組成物の調製に用いるプラネタリーミキサーに投入した。これらの点以外は、実施例1と同様にして各種操作、測定、及び評価を実施した。結果を表1に示す。
<粒子状結着材の調製>
反応器に、イオン交換水150部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度10%)25部、スチレン63部、カルボキシル基を有する単量体としてのイタコン酸3.5部、ヒドロキシル基を有する単量体としての2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、及び、分子量調整剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.5部を、この順に投入した。次いで、反応器内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン32.5部を投入した。60℃に保った反応器に、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を投入して重合反応を開始し、撹拌しながら重合反応を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却し、重合停止剤としてのハイドロキノン水溶液(濃度10%)0.1部を加えて重合反応を停止した。その後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、粒子状結着材(スチレンブタジエンランダム共重合体、表1にて「SBR」と表記する)の水分散液を得た。
(実施例3)
非水系二次電池負極用スラリー組成物の調製時に、結着材として、粒子状重合体に加えて、実施例2と同様にして調製した粒子状結着材(SBR)を配合した。この際、結着材としての総質量を維持しつつ、結着材の中での粒子状重合体と粒子状結着材との質量比率が30:70となるように、添加量を調節した。なお、粒子状重合体と粒子状結着材とは、予め撹拌機(新東科学社製、製品名「スリーワンモータ」)を用いて1時間撹拌してから、スラリー組成物の調製に用いるプラネタリーミキサーに投入した。これらの点以外は、実施例1と同様にして各種操作、測定、及び評価を実施した。結果を表1に示す。
(実施例4)
<リチウムイオン二次電池の作製>に際して、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比が1:2である混合溶媒に、支持電解質としてLiPF6が濃度1mol/Lで溶解されてなる電解液(「EC:DEC=1:2;LiPF=1mol/L」電解液)を用いた以外は、実施例1と同様にして各種操作、測定、及び評価を実施した。結果を表1に示す。
(比較例1)
粒子状重合体の調製時に、以下のようにして、ランダム重合体である粒子状重合体の水分散液を得た以外は実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を実施した。結果を表1に示す。
<粒子状重合体の調製>
反応器に、イオン交換水150部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度10%)25部、芳香族ビニル単量体としてのスチレン25部、酸性基含有単量体としてのメタクリル酸15部及び、分子量調整剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.8部を、この順に投入した。次いで、反応器内部の気体を窒素で3回置換した後、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエン60部を投入した。60℃に保った反応器に、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を投入して重合反応を開始し、撹拌しながら重合反応を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却し、重合停止剤としてのハイドロキノン水溶液(濃度10%)0.1部を加えて重合反応を停止した。その後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、粒子状のランダム重合体(粒子状重合体)の水分散液を得た。
(比較例2)
粒子状重合体の調製時に、以下のようにして、ランダム重合体である粒子状重合体の水分散液を得た以外は実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を実施した。結果を表1に示す。
<粒子状重合体の調製>
反応器に、イオン交換水150部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度10%)25部、芳香族ビニル単量体としてのスチレン19部、アクリロニトリル19部、酸性基含有単量体としてのメタクリル酸4部及び、分子量調整剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.5部を、この順に投入した。次いで、反応器内部の気体を窒素で3回置換した後、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエン58部を投入した。60℃に保った反応器に、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を投入して重合反応を開始し、撹拌しながら重合反応を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却し、重合停止剤としてのハイドロキノン水溶液(濃度10%)0.1部を加えて重合反応を停止した。その後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、粒子状のランダム重合体(粒子状重合体)の水分散液を得た。
Figure 2020053289
表1より、粒子状重合体を含んでなる結着材であって、電解液に対する接触角及び膨潤度が、それぞれ所定の範囲内である結着材と、負極活物質とを含む非水系二次電池負極用スラリー組成物を用いた実施例1〜4では、電解液注液性に優れる負極を形成することができ、結果的に、低温充電受入性に優れる二次電池を形成し得たことが分かる。一方、結着材の、電解液に対する接触角が50°超である比較例1、及び電解液に対する膨潤度が300%超である比較例2では、電解液注液性の充分に良好な負極を形成することができず、且つ、低温充電受入性に優れる二次電池を形成することもできなかったことが分かる。
本発明によれば、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を形成可能な非水系二次電池負極用スラリー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、電解液注液性に優れるとともに、得られる二次電池の低温充電受入性を高めることができる、非水系二次電池用負極を提供することができる。
そして、本発明によれば、電解液注液性に優れる非水系二次電池用負極を備えるとともに、低温充電受入性に優れる非水系二次電池を提供することができる。

Claims (6)

  1. 結着材及び負極活物質を含む非水系二次電池負極用スラリー組成物であって、
    前記結着材が、粒子状重合体を含み、
    前記結着材の、濃度1mol/LのLiPF及びエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比が3:7である混合溶媒を含む電解液との接触角が50°以下であるとともに、
    前記結着材の、前記電解液に対する膨潤度が110%以上300%以下である、
    非水系二次電池負極用スラリー組成物。
  2. 前記粒子状重合体が、芳香族ビニル単量体単位からなる芳香族ビニルブロック領域と、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有するその他の領域と、を含有する共重合体である、請求項1に記載の非水系二次電池負極用スラリー組成物。
  3. 前記粒子状重合体が、カップリング部位を更に含む、請求項1又は2に記載の非水系二次電池負極用スラリー組成物。
  4. 前記負極活物質のタップ密度が、0.70g/cm以上1.10g/cm以下である、請求項1〜3の何れかに記載の非水系二次電池負極用スラリー組成物。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の非水系二次電池負極用スラリー組成物を用いて形成した、密度が1.60g/cm以上の負極合材層を備える、非水系二次電池用負極。
  6. 正極、負極、セパレータ及び電解液を有し、
    前記負極が請求項5に記載の非水系二次電池用負極である、非水系二次電池。
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