JP5965268B2 - スタータ - Google Patents
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Description
特許文献1によれば、ピニオンギヤが一旦リングギヤに噛み合うと、両ギヤの歯のねじれ角によって発生するスラスト荷重を受けてピニオンギヤが飛び込み方向に自ら進行するようになり、ピニオンギヤのリングギヤに対する噛合性が向上する。
ここで、マグネットスイッチ(電磁装置)によってレバー(ギヤプランジャ)を最大吸引位置に引込んで保持するように設定する際、この空隙がないと、部品の寸法誤差が大きい方向に振れると、その誤差によって、レバー(ギヤプランジャ)を最大吸引位置に引込んで保持できなくなるおそれがある。上記の空隙は、その誤差分を設計時に加味して各部品の寸法設定するために発生するものである。
この状態から、先のリングギヤの回転速度がピニオンギヤの回転速度よりも低い状態となって、モータ部(アーマチュア)の回転力でピニオンギヤを回転させる状態となった際、レバー(ギヤプランジャ)とクラッチ機構の間にガタがあると、このガタ分だけクラッチ機構が軸方向に変位することになり、僅かではあるが、その分、モータ部(アーマチュア)の回転力をピニオンギヤに伝達するのが遅れることになる。さらに、クラッチ機構がこのガタ分だけ動く間は、モータ部(アーマチュア)の回転にかかる負荷も小さくなるため、モータ部(アーマチュア)の回転は加速状態となるが、ガタが詰まると、モータ部(アーマチュア)の回転に負荷が加わって加速状態から定速状態に移ることになる。この状態の変化によって、モータ部(アーマチュア)の回転にムラが生じることがあり、この回転ムラによって減速機構の歯車同志の噛合い音が発生するおそれがある。
また、衝撃の吸収をピニオンスプリングで行い、クラッチ機構のガタをガタ吸収機構で行うことで、ピニオンスプリングおよびガタ吸収機構の機能を分離しているので、ピニオンスプリングおよびガタ吸収機構のそれぞれの弾性係数を最適に設定できる。これにより、耐久性および静粛性に優れたスタータを提供できる。
また、爪部の内周面と出力軸の外周面との隙間が爪部の高さよりも狭く設定されているので、プランジャインナとプランジャアウタとを一体化した後に出力軸に外挿することで、爪部がその高さよりも大きく径方向内側へ変位するのを出力軸の外周面で規制できる。これにより、プランジャインナとプランジャアウタとのスナップフィットによる係合が外れるのを確実に防止できるので、信頼性の高いスタータを形成できる。
図1は、本発明の実施形態におけるスタータ1の断面図である。なお、図1では、中心線より上側にスタータ1の静止状態を示し、下側にスタータ1の通電状態(ピニオンギヤとリングギヤとが噛合った状態)を示している。
図1に示すように、スタータ1は、不図示のエンジンの始動に必要な回転力を発生するためのものであって、モータ部3と、モータ部3の一方側(図1における左側)に連結されている出力軸4と、出力軸4上にスライド移動可能に設けられたクラッチ機構5およびピニオン機構70と、モータ部3に対する電源供給路を開閉するスイッチユニット7と、スイッチユニット7の可動接点板8およびピニオン機構70を軸方向に沿って移動させるための電磁装置9とを有している。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54とを有している。モータヨーク53の内周面には、複数(本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
マグネットカバー60の一方側(図1における左側)には、径方向外側に張り出した外フランジ部60aが形成されており、永久磁石57の一方側の端面を覆っている。
また、マグネットカバー60の他方側(図1における右側)には、一方側から他方側に向かって径方向外側に傾斜したカシメ部60bが形成されており、マグネットカバー60が永久磁石57の径方向内側にカシメ固定されている。マグネットカバー60を設けることによりモータヨーク53を補強し、モータヨーク53、永久磁石57およびマグネットカバー60で構成されるヨークユニットの強度を向上させている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
各セグメント62のアーマチュアコア58側端には、折り返すように曲折形成されたライザ63が設けられている。ライザ63には、アーマチュアコア58に巻装されているコイル59の端末部が接続されている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体成型されたサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
ハウジング17の開口部17a側の外周面には、軸方向に沿うように雌ネジ部17bが刻設されている。また、モータヨーク53の他方側(図1における右端側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部17bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部17bにボルト95を螺入することによって、モータ部3とハウジング17とが一体化される。
また、軸受孔47の底部には、ハウジング17の底部17cと出力軸4の一方側端面4cとの間に、荷重受部材50が配置されている。
荷重受部材50を配置することにより、一方側(図1における左側)に向かって出力軸4にスラスト荷重が発生したときでも、ハウジング17に設けた荷重受部材50で出力軸4の移動を規制しつつ、出力軸4のスラスト荷重を受けることができる。また、出力軸4の回転時には、出力軸4の一方側端面4cと荷重受部材50とが摺接するので、出力軸4の一方側端面4cとハウジング17とが直接摺接するのを防止できる。したがって、ハウジング17の耐久性を向上できる。
なお、荷重受部材50の周囲には、出力軸4の一方側端面4cとの摺接時の摩擦を軽減するためのグリスが塗布されるが、このグリスに、滑り軸受17dに含浸される潤滑油と同種の基油を含むものが採用されているため、滑り軸受17dの潤滑油を長期間保持できるようになっている。
出力軸4の軸方向略中央には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22とを有している。このクラッチ機構5には、クラッチアウタ18側からの回転力はクラッチインナ22に動力を伝達するが、クラッチインナ22側からの回転力はクラッチアウタ18に伝達しない、所謂公知のワンウェイクラッチ機能が設けられており、これにより、エンジン始動時に、クラッチアウタ18よりもクラッチインナ22の方が速くなるオーバーラン状態になった際には、エンジンのリングギヤ23側からの回転力を遮断するよう構成されている。また、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間に生じるトルク差、および回転速度差が所定値以内の場合、互いに回転力を伝達する一方、トルク差および回転速度差が所定値を越えた場合、回転力の伝達が遮断される所謂トルクリミッタ機能も備えている。
また、クラッチアウタ18の内周面におけるスリーブ18aの一方側には、段部18cが形成されている。段部18cの内周面は、スリーブ18aの内周面よりも大径に形成されており、段部18cの内周面と出力軸4の外周面との間には空間が形成される。この空間には、後述するリターンスプリング21が配置されている。
移動規制部20は、出力軸4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方側への移動が規制された状態に設けられるとともに、クラッチアウタ18に形成された段部18cと干渉可能なように、段部18cの内周面よりも大径に形成されている。後述するようにクラッチ機構5が一方側にスライド移動したときには、クラッチアウタ18の段部18cと移動規制部20とが干渉する。これにより、クラッチ機構5の一方側へのスライド移動量が規制される。
移動規制部20とクラッチアウタ18のスリーブ18aとの間であって、段部18cの内周面と出力軸4の外周面との間には、出力軸4を取り囲むように形成されたリターンスプリング21が圧縮変形した状態で設けられている。これにより、クラッチアウタ18は、常時モータ部3側へ向かって押し戻されるように付勢された状態になる。
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、ピニオン機構70が一体的に設けられている。
ピニオン機構70は、クラッチインナ22の先端に一体成形された筒状のピニオンインナ71を有している。ピニオンインナ71の内周面には、軸方向両側にそれぞれ出力軸4にピニオンインナ71を摺動可能に支持するための2つの滑り軸受72,72が設けられている。
ここで、リングギヤ23およびピニオンギヤ74は、はすば歯車(ヘリカルギヤ)で構成されており、リングギヤ23とピニオンギヤ74との歯のねじれ方向は、ピニオンギヤ74がリングギヤ23を駆動する状態でピニオンギヤ74に飛び込み方向のスラスト荷重が作用するように設定されている。
収納部76のクラッチ機構5側に形成されている開口部は、クラッチインナ22の基端側に設けられた段差部71aによって閉塞された状態になっている。すなわち、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71によって軸方向に摺動可能に支持された状態になっている。これにより、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71に対して大きくがたつくことなく軸方向にスライド移動する。
ピニオンスプリング11は、後述するように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが当接したときに軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収する、ダンパ機構として機能している。これにより、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、スタータ1の耐久性向上を図っている。
また、ピニオンインナ71の一方側(図1における左側)の外周面には、止め輪77が設けられている。これにより、ピニオンインナ71に対して出力軸4の一方側にピニオンギヤ74が抜けるのを規制している。
ハウジング17の内周面には、クラッチ機構5よりもモータ部3側に、電磁装置9を構成するヨーク25が内嵌固定されている。ヨーク25は磁性材からなる有底筒状に形成されており、底部25aの径方向中央の大部分が大きく開口されている。また、ヨーク25の底部25aとは反対側端には、磁性材からなる円環状のプランジャホルダ26が設けられている。
これらヨーク25、およびプランジャホルダ26によって径方向内側に形成される収納凹部25bに、略円筒状に形成された励磁コイル24が収納されている。励磁コイル24は、コネクタを介してイグニションスイッチ(いずれも不図示)に電気的に接続されている。
プランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状のスイッチプランジャ27と、このスイッチプランジャ27と出力軸4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80とを有している。これらスイッチプランジャ27とギヤプランジャ80とは、互いに同心円上に設けられ、軸方向に相対移動可能に設けられている。また、プランジャホルダ26とスイッチプランジャ27との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるスイッチリターンスプリング27aが配設されている。
スイッチプランジャ27の径方向内側に配置されたギヤプランジャ80は、径方向内側に配置されたプランジャインナ81と、径方向外側に配置されたプランジャアウタ85と、プランジャインナ81とプランジャアウタ85との間に配置されるプランジャスプリング91と、を備えている。
図2は、プランジャインナ81およびプランジャスプリング91の外観斜視図である。
図3は、中心軸に沿ったギヤプランジャ80の断面図である。なお、図3では、出力軸4を二点鎖線で表しており、ギヤプランジャ80および出力軸4以外の部品の図示を省略している。
図2に示すように、プランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。図3に示すように、プランジャインナ81の本体部81cの内径は、出力軸4に外挿可能なように、出力軸4の外周面4dの直径よりも若干大きく形成されている。これにより、プランジャインナ81は、出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられる。
また、爪部83の一方側(図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。溝部84内には、プランジャアウタ85の内フランジ部86が配置される。
プランジャアウタ85は、プランジャインナ81と同様に樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャアウタ85の内径は、プランジャインナ81の外フランジ部82の外径よりも若干大きく形成されており、プランジャインナ81に外挿されている。
プランジャアウタ85の他方側端85a(図3における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体的に形成されている。内フランジ部86の内径は、プランジャインナ81の爪部83の外径よりも小さく、かつプランジャインナ81の溝部84の底部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、プランジャインナ81の溝部84内にプランジャアウタ85の内フランジ部86を配置することで、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とが一体化され、プランジャ機構37が構成される。
また、外フランジ部87の一方側(図3における左側)であって、プランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、プランジャアウタ85と一体成型されている。鉄心88は、後述するように励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により吸引される。
プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86との間には、スプリング収納部90が形成されている。スプリング収納部90には、プランジャインナ81の本体部81cに外挿され、本体部81cの外周面を取り囲むように形成されたプランジャスプリング91が収納されている。
プランジャスプリング91は、スプリング収納部90に収納された状態で、プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、プランジャインナ81は一方側(図3における左側)に向かって、プランジャアウタ85は他方側(図3における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
また、スタータ1の通電状態(図1における中心線より上側の状態)では、ギヤプランジャ80が一方側(図1における左側)に最大変位したとき、プランジャインナ81の一方側端81aがクラッチ機構5のクラッチアウタ18の他方側端と常に当接した状態となっている。
すなわち、プランジャスプリング91は、クラッチ機構5とギヤプランジャ80との間における軸方向の空隙の発生を防止し、クラッチ機構5のガタつきを吸収するガタ吸収機構を構成している。
α<β・・・(1)
を満足するように設定されている。
(1)式を満たすようにプランジャスプリング91のばね荷重αおよび電磁装置9の吸引力βを設定することで、ガタ吸収機構を構成するプランジャスプリング91のばね荷重αに抗して、電磁装置9のギヤプランジャ80が吸引される。これにより、電磁装置9の作用点であるプランジャインナ81の一方側端81aは、ギヤプランジャ80のスライド移動時においても、クラッチアウタ18の他方側端に常に弾性的に当接している。
(1)式を満足するようにプランジャスプリング91のばね荷重αおよび電磁装置9の吸引力βを設定することで、電磁装置9の吸引性能を維持しつつ、クラッチ機構5が軸方向にガタつくのを抑制できる。
このようにプランジャスプリング91を配置することで、クラッチ機構5側に配置されるプランジャスプリング91の端面91aの向く方向が、クラッチ機構5(図1参照)の回転方向Rと同方向となるように配置される。また、プランジャスプリング91の上記とは反対側の端面91bの向く方向は上記の回転方向Rとは逆向きとなる。
そして、プランジャスプリング91の端面91aの向く方向がクラッチ機構5の回転方向Rと同方向となることで、クラッチ機構5およびこれに摺接するプランジャインナ81がピニオン機構70とともに回転しても、プランジャスプリング91の端面91a周縁がプランジャインナ81の外フランジ部82に引っ掛かるのを抑制できる。したがって、プランジャスプリング91の端面91a周縁によりプランジャインナ81の外フランジ部82の内面側が摩耗するのを防止できる。
また、プランジャスプリング91の上記とは反対側の端面91bの向く方向は上記の回転方向Rとは逆向きとなることで、プランジャスプリング91がプランジャインナ81に引き摺られて共周りした場合であっても、プランジャスプリング91の端面91b周縁がプランジャアウタ85の内フランジ部86に引っ掛かるのを抑制できる。したがって、プランジャスプリング91の端面91b周縁によりプランジャアウタ85の内フランジ部86の内面側が摩耗するのを防止できる。
各ブラシ41の基端側には、ブラシスプリング42が設けられている。このブラシスプリング42によって、各ブラシ41がコンミテータ61側に向かって付勢され、各ブラシ41の先端がコンミテータ61のセグメント62に摺接するようになっている。
続いて、図面を用いてスタータ1の動作について説明をする。
図1における中心線の上側の状態に示すように、励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態にあっては、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、ピニオンギヤ74と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態でモータ部3側(図1における右側)へ一杯に付勢されている。そして、クラッチ機構5のクラッチアウタ18がストッパ94に当接した位置で停止しており、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との結合が断たれている。
この状態から車両のイグニションスイッチ(不図示)をオンすると、励磁コイル24に電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80を磁束が通る磁路が形成される。これにより、図4(a)に示すように、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側(図4における左側)へ向かってスライド移動する。
このとき、スイッチプランジャ27の内周面にリング部材28が一体的に設けられていることから、このリング部材28がギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧することで、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80が一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
したがって、ギヤプランジャ80は、プランジャスプリング91のばね荷重αに抗して吸引され、一方側(図4(b)における左側)にスライド移動する。これにより、電磁装置9の作用点であるプランジャインナ81の一方側端81aは、ギヤプランジャ80のスライド移動時において、クラッチアウタ18の他方側端に弾性的に常に当接した状態となっている。
さらにスイッチプランジャ27が吸引されてリングギヤ23側へ向かってスライド移動すると、図5(a)に示すように、可動接点板8が固定接点板34に接触する。可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向変位可能に浮動支持されているので、スイッチスプリング32の押圧力が可動接点板8および固定接点板34に加わることになる。
すると、アーマチュアコア58に磁界が発生し、この磁界とモータヨーク53に設けられている永久磁石57との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、アーマチュア54が回転し始める。そして、このアーマチュア54の回転軸52の回転力が遊星歯車機構2を介して出力軸4に伝達され、出力軸4が回転し始める。
出力軸4の回転速度が上昇すると、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合されたクラッチアウタ18に慣性力が作用する。このとき、前述のように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とがヘリカル噛合していることから、ピニオンギヤ74にリングギヤ23方向(飛び込み方向)へのスラスト力が発生するため、このスラスト力によってピニオンギヤ74はヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側(図6における左側)へ向かって移動する。また、そして、図6(a)に示すように、クラッチアウタ18も、慣性力によってヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側(図6における左側)へ向かって押し出される。
これにより、図6(b)に示すように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが所定の噛み合い位置で噛合する。
特に、アイドルストップ機能を備えた車両においては、エンジンの停止/始動が頻繁に行われ、一般のスタータよりも使用頻度が高まるため、このリングギヤ23の回転速度の変動が頻繁に発生することになる。
ここで、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とはヘリカル噛合しているため、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との間に回転速度差が発生したときには、ピニオンギヤ74にかかるスラスト荷重の向きが変化し、ピニオンギヤ74は軸方向に沿って変位する。具体的には、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも低いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23側に向かってスラスト荷重がかかり、ピニオンギヤ74はリングギヤ23側に変位する。ピニオンギヤ74に発生したスラスト荷重は、ピニオンギヤ74の一方側に設けられた止め輪77に伝達された後、ピニオンインナ71、クラッチインナ22、クラッチアウタ18および移動規制部20、サークリップ20aを介して、出力軸4に伝達される。このため、出力軸4には一方側(図6における左側)に向かってスラスト荷重が発生し、一方側に向かってスライド移動する。また、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも高いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23側とは反対側に向かってスラスト荷重がかかり、ピニオンギヤ74はリングギヤ23とは反対側に変位する。
この状態から、先のリングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも低い状態となって、アーマチュア54の回転力でピニオンギヤ74を回転させる状態となった際、ギヤプランジャ80とクラッチ機構5の間にガタがあると、このガタ分だけクラッチ機構5が軸方向に変位することになり、僅かではあるが、その分、アーマチュア54の回転力をピニオンギヤ74に伝達するのが遅れることになる。さらに、クラッチ機構5がこのガタ分だけ動く間は、アーマチュア54の回転にかかる負荷も小さくなるため、アーマチュア54の回転は加速状態となるが、ガタが詰まると、アーマチュア54の回転に負荷が加わって加速状態から定速状態に移ることになる。この状態の変化によって、アーマチュア54の回転にムラが生じることがあり、この回転ムラによって遊星歯車機構2の歯車同志の噛合い音が発生するおそれがある。
本実施形態によれば、電磁装置9の作用点であるプランジャインナ81の一方側端81aとクラッチ機構5とを常に弾性的に当接させるガタ吸収機構を設けたので、プランジャインナ81の一方側端81aとクラッチ機構5との間に空隙が発生するのを防止できる。これにより、エンジン始動時に、リングギヤ23とピニオンギヤ74との回転速度差によりピニオンギヤ74が軸方向に沿って変位しても、クラッチ機構5が軸方向に沿ってガタつくのを抑制できる。したがって、クラッチ機構5の軸方向変位による騒音の発生を防止できる。
また、衝撃の吸収をピニオンスプリング11で行い、ガタつきの防止をガタ吸収機構であるプランジャスプリング91で行うことで、ピニオンスプリング11およびプランジャスプリング91の機能を分離しているので、ピニオンスプリング11およびプランジャスプリング91のそれぞれの弾性係数を最適に設定できる。これにより、耐久性および静粛性に優れたスタータ1を提供できる。
図7は、参考実施例の説明図であり、ヨークユニットの軸方向に直交する断面図である。
図7に示すように、モータヨーク53、永久磁石57およびマグネットカバー60で構成されるヨークユニットにおいて、周方向に略ピッチに配置された複数(本参考実施形態では6個)の永久磁石57の間に、制振部材65を配置してもよい。
しかしながら、本発明の適用は一軸式のスタータ1に限られることはなく、ピニオン機構70を進退動作させることができる構成を含むスタータであれば、本発明を適用することが可能である。例えば、電磁装置(プランジャ機構37)と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる二軸式のスタータや、電磁装置(プランジャ機構37)の軸と回転軸52と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる三軸式のスタータ等、様々な形式のスタータに本発明を適用してもよい。
3 モータ部
4 出力軸
5 クラッチ機構
9 電磁装置
11 ピニオンスプリング
18 クラッチアウタ
22 クラッチインナ
23 リングギヤ
24 励磁コイル
70 ピニオン機構
71 ピニオンインナ
74 ピニオンギヤ
80 ギヤプランジャ
81a プランジャインナの一方側端(作用点)
83 爪部
85 プランジャアウタ
86 プランジャアウタの内フランジ部
90 スプリング収納部
91 プランジャスプリング(ガタ吸収機構)
Claims (9)
- 通電により回転力を発生するモータ部と、
前記モータ部の回転力を受けて回転する出力軸と、
前記出力軸上にスライド移動可能に設けられ、エンジンのリングギヤとヘリカル噛合可能なピニオン機構と、
前記出力軸と前記ピニオン機構との間に設けられ、前記出力軸の回転力を前記ピニオン機構に伝達するクラッチ機構と、
前記モータ部への通電、遮断を行うと共に、前記クラッチ機構および前記ピニオン機構に前記リングギヤ側に向かう押圧力を付勢する電磁装置と、
を備えたスタータであって、
前記ピニオン機構は、前記出力軸に外挿され、前記出力軸に沿ってスライド移動可能なピニオンインナを備え、
前記電磁装置に、前記電磁装置の作用点を常に前記クラッチ機構に弾性的に当接させるガタ吸収機構と、前記クラッチ機構に押圧力を付勢するギヤプランジャと、を設け、
前記クラッチ機構は、
前記ギヤプランジャ側に配置されたクラッチアウタと、
前記クラッチアウタの径方向内側に、前記クラッチアウタと同心円状に設けられ、前記ピニオンインナと一体形成されたクラッチインナと、
を備え、
前記ギヤプランジャは、
前記出力軸に外挿され、前記出力軸に沿ってスライド移動可能なプランジャインナと、
前記プランジャインナの径方向外側に、前記プランジャインナと同心円状に設けられ、前記プランジャインナと連動して前記出力軸に沿ってスライド移動可能なプランジャアウタと、
前記プランジャインナと前記プランジャアウタとの間に設けられた前記ガタ吸収機構と、
を備え、
前記ガタ吸収機構は、一方側端が前記プランジャインナに当接し、他方側端が前記プランジャアウタに当接していることを特徴とするスタータ。 - 前記ピニオン機構は、
前記ピニオンインナの径方向外側に、前記ピニオンインナと同心円状に設けられ、前記リングギヤとヘリカル噛合可能なピニオンギヤと、
前記ピニオンインナと前記ピニオンギヤとの間に配置され、前記ピニオンギヤと前記リングギヤとがヘリカル噛合したときの衝撃を吸収するピニオンスプリングと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスタータ。 - 前記電磁装置は、
励磁コイルと、
前記出力軸と同軸に設けられるとともに、前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記クラッチ機構に押圧力を付勢する前記ギヤプランジャと、
を備え、
前記作用点を前記ギヤプランジャの前記リングギヤ側の端部に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のスタータ。 - 前記プランジャインナと前記プランジャアウタとの間に設けられたプランジャスプリングを備え、
前記励磁コイルへの通電に基づいて前記プランジャアウタがスライド移動し、これと連動して前記プランジャインナとがスライド移動するように構成され、
前記プランジャスプリングを、前記ガタ吸収機構として機能させたことを特徴とする請求項3に記載のスタータ。 - 前記プランジャスプリングは、前記プランジャインナを前記クラッチアウタに弾性的に当接させていることを特徴とする請求項4に記載のスタータ。
- 前記プランジャスプリングのばね荷重をαとし、前記電磁装置の前記励磁コイルへの通電で発生した磁界により、前記プランジャアウタに生じる吸引力をβとすると、
前記ばね荷重α、および前記電磁装置の吸引力βは、
α<β
を満たすように設定したことを特徴とする請求項4または5に記載のスタータ。 - 前記プランジャインナを前記クラッチアウタに当接させ、このクラッチアウタを介して前記ピニオン機構に押圧力を付勢し、
前記プランジャインナの一方側端に外フランジ部を形成するとともに、前記プランジャアウタの他方側端に内フランジ部を形成し、
この外フランジ部と内フランジ部との間に形成されたスプリング収納部に前記プランジャスプリングを収納し、
前記プランジャスプリングは、前記プランジャインナに対して同軸に外挿されたコイルバネであり、前記プランジャスプリングの前記クラッチ機構側に向かう巻回方向が、前記ピニオン機構の回転方向と同一になるように設定されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載のスタータ。 - 前記プランジャインナには、前記プランジャアウタの前記内フランジ部に対応する部位に、径方向外側に突出し径方向内側に弾性変形可能な爪部が形成され、この爪部に前記内フランジ部が係合可能に構成され、
前記爪部の内周面と前記出力軸の外周面との隙間は、前記爪部の高さよりも狭く設定されたことを特徴とする請求項7に記載のスタータ。 - 前記電磁装置は、前記出力軸と同軸に設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のスタータ。
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