JP2006161590A - スタータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】クラッチと共に反モータ方向へ押し出されたピニオン6がリングギヤ38の端面に当接した後、モータ接点が閉じる前に、ピニオン6がリングギヤ38に噛み合い可能な位置まで回転できる様に、ピニオンストロークS1とヘリカルスプライン結合部の捩じり角とが設定されている。リングギヤ38に噛み合い可能な位置まで回転したピニオン6は、ピニオンスプリング25に蓄えられた反力によってリングギヤ38に噛み合わされる。これにより、モータのトルクによってピニオン6をリングギヤ38に噛み合い可能な位置まで強制的に回転させる必要がないので、ピニオン6がリングギヤ38に噛み合う時に、ピニオン6に大きな衝撃力が加わることはなく、ピニオン6およびリングギヤ38の強度、耐久性が向上する。
【選択図】図2
Description
このスタータは、図6に示す様に、モータ100の回転力がクラッチ110を介して伝達される筒状のスプラインチューブ120と、このスプラインチューブ120の内周にヘリカルスプライン結合される出力軸130と、この出力軸130の端部にスプライン結合されるピニオン140と、このピニオン140と出力軸130との間に反力を蓄えるピニオンスプリング150等を有し、電磁スイッチ160の働きで出力軸130を図示左方向に押し出すことにより、ピニオン140をエンジンのリングギヤ170に噛み合わせる方式である。
この構成では、ピニオンスプリング150の反力によって質量の軽いピニオン140をリングギヤ170に押し込むことができるので、ピニオン140とリングギヤ170との噛み合い性が向上する。
a)電磁スイッチ160の働きにより、出力軸130と共にピニオン140が押し出されて、リングギヤ170の端面に当接する。この時、ピニオン140の一点は、図示矢印で示す様に、ヘリカルスプラインの捩じれに沿って斜めに移動する。
b)ピニオン140がリングギヤ170の端面に当接した状態で、ピニオンスプリング150を撓ませながら出力軸130のみ更に前進する。この時、ピニオン140は、出力軸130が前進した分(ピニオンスプリング150が撓むことのできるストローク分)だけ、出力軸130上を相対的に後退するため、ピニオン140の一点は、リングギヤ170の端面に沿って移動する。
d)ピニオン140がリングギヤ170に噛み合い可能な位置まで回転すると、ピニオン140とリングギヤ170との噛み合いが開始される。この時、ピニオン140の一点は、図示矢印で示す様に、リングギヤ170の面取りに沿って斜めに移動する。
e)ピニオン140とリングギヤ170との噛み合いが完了して、ピニオン140からリングギヤ170に回転力が伝達される。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、ピニオンに使用できる材料の選択範囲を広くできると共に、ピニオンの強度および耐久性を向上できるスタータを提供することにある。
本発明は、モータの回転力がヘリカルスプライン結合部を介して伝達される出力部と、この出力部にスプライン結合されるピニオンと、出力部とピニオンとの間に配設されるピニオンスプリングと、モータの通電回路に設けられるモータ接点を閉操作すると共に、ピニオンを出力部と一体に軸方向に押し出す働きを有する電磁スイッチとを備え、軸方向に押し出されたピニオンがエンジンのリングギヤに噛み合わされて、モータの回転力をピニオンからリングギヤに伝達するスタータであって、軸方向に押し出されたピニオンがリングギヤに噛み合うことなく、リングギヤの端面に当接した場合でも、モータ接点が閉じる前にピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できる様に、ピニオンストロークとヘリカルスプライン結合部の捩じり角とが設定されていることを特徴とする。
これにより、ピニオンおよびリングギヤの強度、耐久性が向上する。また、ピニオンには、必ずしも熱処理された硬度の高い材料を使用する必要はなく、硬度の低い材料、例えば樹脂を使用することも可能であり、材料の選択範囲が従来より広くなる。
請求項1に記載したスタータにおいて、ピニオンストロークは、ピニオンがリングギヤの端面に当接した後、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によって、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるだけの長さが確保されていることを特徴とする。
出力軸と共に押し出されたピニオンがリングギヤの端面に当接した場合に、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用で、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できる様にピニオンストロークの長さが確保されていれば、電磁スイッチによってモータ接点が閉操作される前に、ピニオンとリングギヤの面取りの有無に係わらず、ピニオンをリングギヤに噛み合わせることができる。
請求項1または2に記載したスタータにおいて、ピニオンがリングギヤの端面に当接した後、モータ接点が閉じる前に、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転して、ピニオンスプリングの反力によりピニオンを押し込んでリングギヤに噛み合わせることを特徴とする。
請求項1〜3に記載した何れかのスタータにおいて、ピニオンがリングギヤに噛み合ってリングギヤを駆動する時のピニオンの回転方向を駆動方向と呼ぶ時に、ピニオンは、リングギヤの端面に当接した後、ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用により、反駆動方向に回転してリングギヤに噛み合うことを特徴とする。
リングギヤの端面に当接したピニオンは、出力部に対し相対的に後退しながら出力部と共に反駆動方向に回転するため、リングギヤの端面に当接した位置から反駆動方向へリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転することで、ピニオンとリングギヤの面取りの有無に係わらず、リングギヤに噛み合うことができる。例えば、ピニオンとリングギヤに全く面取りが形成されていない場合は、ピニオンの回転ピッチを多く取り、両ギヤに面取りが形成されている場合は、両ギヤ端面の底面当たり分の回転が出来れば良い。
請求項1〜4に記載した何れかのスタータにおいて、出力部とプランジャとの間に配設されて、両者間に反力を蓄えるドライブスプリングを備え、ピニオンがリングギヤの端面に当接した後、モータ接点が閉じる前に、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できなかった場合に、モータ接点が閉じてモータが回転することにより、そのモータの回転力でピニオンをリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転させて、ドライブスプリングの反力とピニオンスプリングの反力とでピニオンを押し込んでリングギヤに噛み合わせることを特徴とする。
請求項5に記載したスタータにおいて、
ピニオンスプリングは、ドライブスプリングより、ばね定数および初期荷重がそれぞれ小さく設定されていることを特徴とする。
前記の請求項5に記載した様に、ドライブスプリングを備える構成では、ピニオンがリングギヤに噛み合い可能な位置まで回転する間に、ドライブスプリングよりピニオンスプリングの方が先に撓むことで、ピニオンスプリングに反力を蓄えることができ、その反力によってピニオンをリングギヤに噛み合わせることができる。
実施例1に係るスタータ1は、回転力を発生するモータ2と、このモータ2の回転が減速装置3を介して伝達される出力軸4と、この出力軸4上にクラッチ5と共に配置されるピニオン6と、シフトレバー7を介してクラッチ5とピニオン6を反モータ方向(図1の左方向)へ押し出す働きを有すると共に、モータ2の通電回路に設けられるモータ接点(後述する)を開閉する電磁スイッチ8等より構成される。
界磁は、磁気回路を形成するヨーク12の内周に複数個の永久磁石13を配置して構成される。なお、永久磁石13の代りに界磁巻線を用いることもできる。
電機子10は、電機子軸14の一端側端部が軸受15を介して出力軸4に相対回転可能に支持され、電機子軸14の他端側端部が軸受16を介してエンドフレーム17に回転自在に支持されている。
出力軸4は、減速装置3を介して電機子軸14と同軸線上に配置され、反モータ側の端部が軸受20を介してフロントハウジング21に回転自在に支持されている。
クラッチ5は、ヘリカルスプライン結合部22を介して出力軸4の外周に配置され、出力軸4の回転をピニオン6に伝達すると共に、ピニオン6がエンジンにより高速で回された時、つまりピニオン6の回転速度が出力軸4の回転速度を上回った時に、ピニオン6の回転が出力軸4に伝わらない様に、両者間の動力伝達を遮断する一方向クラッチとして構成されている。
シフトレバー7は、支点部31を中心に揺動可能に設けられ、プランジャ29の動き(図示左右方向の動き)をクラッチ5に伝達することで、クラッチ5およびピニオン6が出力軸4上を軸方向に移動する。
S2>G1+G2………………………………………(1)
また、図2に示す様に、クラッチ5が軸方向に移動できる最大距離をS0、ピニオン6が押し出されてリングギヤ38の端面に当接するまでに移動する距離(ピニオン6とリングギヤ38との間に確保されているギャップ)をギヤ間ギャップG3とすると、以下の関係(2)が成立している。
S0≧S1+G3………………………………………(2)
このスタータ1は、電磁スイッチ8の働きにより、シフトレバー7を介して反モータ方向へ押し出されたピニオン6が、エンジンのリングギヤ38に直接噛み合うことなく、リングギヤ38の端面に当接した場合に、その後、モータ接点が閉じる前に、ピニオン6がリングギヤ38に噛み合い可能な位置まで回転できる様に、前記ピニオンストロークS1とヘリカルスプライン結合部22の捩じり角とが設定されている。すなわち、ピニオンストロークS1は、ピニオン6がリングギヤ38の端面に当接した後、ヘリカルスプライン結合部22の捩じり作用によって、ピニオン6がリングギヤ38に噛み合い可能な位置まで回転できるだけの長さが確保されている。
なお、シフトレバー7の支点部31からプランジャ29側の長さをL1、支点部31からクラッチ5側の長さをL2とする。
(S1+G3)×L1/L2<G1+G2…………(3)
なお、図中に示す矢印は、図7の場合と同様に、ピニオン6の端面に注目した一点の軌跡を示している。また、以下の説明では、ピニオン6がリングギヤ38に噛み合ってリングギヤ38を駆動する時のピニオン6の回転方向を駆動方向と呼び、その反対方向を反駆動方向と呼ぶ。
a)始動スイッチの閉操作により電磁スイッチ8の励磁コイル28に通電されると、プランジャ29が吸引されて、図1の右方向へ移動する。このプランジャ29の移動により、シフトレバー7を介してクラッチ5が反モータ方向へ押し出されるため、クラッチ5と共にピニオン6が出力軸4上を反モータ方向へ移動(前進)して、リングギヤ38の端面に当接する。
c)上記b)の行程で蓄えられたピニオンスプリング25の反力により、ピニオン6がリングギヤ38に押し込まれる。
d)ピニオン6とリングギヤ38との噛み合いが完了した後、モータ接点が閉じてモータ2に通電される。これにより、モータ2のトルクがピニオン6からリングギヤ38に伝達されて、エンジンを駆動する。
本実施例のスタータ1は、反モータ方向に押し出されたピニオン6がリングギヤ38の端面に当接した後、モータ接点が閉じる前に、ヘリカルスプライン結合部22の捩じれ角に応じて、ピニオン6がリングギヤ38と噛み合い可能な位置まで回転できる様に、ピニオンストロークS1の長さが確保されている。これにより、ピニオン6がリングギヤ38の端面に当接した場合でも、モータ接点が閉じる前に、ピニオン6をリングギヤ38に噛み合い可能な位置まで回転させて、ピニオンスプリング25の反力だけでピニオン6をリングギヤ38に噛み合わせることができる。
更に、ピニオン6は、必ずしも熱処理された硬度の高い材料を使用する必要はなく、硬度の低い材料を選択できる。例えば、ピニオン6を樹脂製にすることで、クランキング時の衝撃を低減できると共に、ギヤ騒音を小さくできる効果もある。
この実施例2に係るスタータ1は、実施例1に記載したスタータ1にドライブスプリング39を設けた一例である。
ドライブスプリング39は、図4に示す様に、プランジャ29の空洞部に配設されて、シフトレバー7の上端部が係合する係合部材40とプランジャ29との間に反力を蓄えている。但し、このドライブスプリング39は、実施例1に記載したピニオンスプリング25より、ばね定数および初期荷重がそれぞれ大きく設定されている。
この実施例3に係るスタータ41は、実施例1のスタータ1と比較して、出力軸4に対するモータ2と電磁スイッチ8の位置が異なり、図5に示す様に、出力軸4と同軸線上に電磁スイッチ8が配置され、出力軸4とモータ2の電機子軸14とが平行に配置されている。この基本的な構成は、特許文献1に記載されたスタータと略同じである。
出力軸4は、モータ2の回転が伝達されるスプラインチューブ42にヘリカルスプライン結合部22を介して挿入され、本発明の出力部を構成している。
但し、ピニオン6がリングギヤ38の端面に当接した場合は、実施例1と同じく、モータ接点が閉じる前に、ピニオン6がリングギヤ38に噛み合い可能な位置まで回転できる様に、ピニオンストロークとヘリカルスプライン結合部22の捩じり角とが設定されている。
なお、図5に示すスタータ41は、ドライブスプリングを有していないが、ピニオンスプリング25とドライブスプリングとを併用することで、実施例2に記載したスタータ1と同様の効果を得ることもできる。
2 モータ
4 出力軸(実施例3の出力部)
6 ピニオン
8 電磁スイッチ
22 ヘリカルスプライン結合部
23 インナチューブ(実施例1の出力部)
25 ピニオンスプリング
29 プランジャ
34 固定接点(モータ接点)
36 可動接点(モータ接点)
38 リングギヤ
39 ドライブスプリング(実施例2)
41 スタータ(実施例3)
S1 ピニオンストローク
Claims (6)
- 回転力を発生するモータと、
このモータの回転力がヘリカルスプライン結合部を介して伝達される出力部と、
この出力部にスプライン結合されると共に、前記出力部に対し軸方向に所定量だけ移動可能に支持されたピニオンと、
前記出力部と前記ピニオンとの間に配設され、両者間に軸方向の反力を蓄えるピニオンスプリングと、
電磁力を発生してプランジャを吸引することにより、前記モータの通電回路に設けられるモータ接点を閉操作すると共に、前記プランジャを吸引する力を利用して、前記ピニオンを前記出力部と一体に軸方向に押し出す働きを有する電磁スイッチとを備え、
軸方向に押し出された前記ピニオンがエンジンのリングギヤに噛み合わされて、前記モータの回転力を前記ピニオンから前記リングギヤに伝達するスタータであって、
前記ピニオンスプリングを押し縮めながら、前記ピニオンが前記出力部に対し軸方向に移動できる最大距離をピニオンストロークと呼ぶ時に、
軸方向に押し出された前記ピニオンが前記リングギヤに噛み合うことなく、前記リングギヤの端面に当接した場合でも、前記モータ接点が閉じる前に前記ピニオンが前記リングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できる様に、前記ピニオンストロークと前記ヘリカルスプライン結合部の捩じり角とが設定されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1に記載したスタータにおいて、
前記ピニオンストロークは、前記ピニオンが前記リングギヤの端面に当接した後、前記ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用によって、前記ピニオンが前記リングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できるだけの長さが確保されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1または2に記載したスタータにおいて、
前記ピニオンが前記リングギヤの端面に当接した後、前記モータ接点が閉じる前に、前記ピニオンが前記リングギヤに噛み合い可能な位置まで回転して、前記ピニオンスプリングの反力により前記ピニオンを押し込んで前記リングギヤに噛み合わせることを特徴とするスタータ。 - 請求項1〜3に記載した何れかのスタータにおいて、
前記ピニオンが前記リングギヤに噛み合って前記リングギヤを駆動する時の前記ピニオンの回転方向を駆動方向と呼ぶ時に、
前記ピニオンは、前記リングギヤの端面に当接した後、前記ヘリカルスプライン結合部の捩じり作用により、反駆動方向に回転して前記リングギヤに噛み合うことを特徴とするスタータ。 - 請求項1〜4に記載した何れかのスタータにおいて、
前記出力部と前記プランジャとの間に配設されて、両者間に反力を蓄えるドライブスプリングを備え、
前記ピニオンが前記リングギヤの端面に当接した後、前記モータ接点が閉じる前に、前記ピニオンが前記リングギヤに噛み合い可能な位置まで回転できなかった場合に、前記モータ接点が閉じて前記モータが回転することにより、そのモータの回転力で前記ピニオンを前記リングギヤに噛み合い可能な位置まで回転させて、前記ドライブスプリングの反力と前記ピニオンスプリングの反力とで前記ピニオンを押し込んで前記リングギヤに噛み合わせることを特徴とするスタータ。 - 請求項5に記載したスタータにおいて、
前記ピニオンスプリングは、前記ドライブスプリングより、ばね定数および初期荷重がそれぞれ小さく設定されていることを特徴とするスタータ。
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