JP6027379B2 - スタータ - Google Patents
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Description
また、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合時の衝撃を吸収するために、ダンパ機構を有するピニオン機構を備えている。
また、上述の特許文献1または特許文献2の技術にあっては、クラッチカバーとピニオンギヤとの固定部分は、平板状に形成されている。このため、クラッチカバーの強度が確保できず、スラスト荷重による応力が固定部分に集中してクラッチカバーが変形するおそれがある。
したがって、ピニオン機構にダンパ機構を設けるとともに、クラッチカバーの変形を抑制できる。
図1は、本発明の実施形態におけるスタータ1の断面図である。なお、図1では、中心線より上側にスタータ1の静止状態を示し、下側にスタータ1の通電状態(ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが噛合した状態)を示している。
図1に示すように、スタータ1は、不図示のエンジンの始動に必要な回転力を発生するためのものであって、モータ部3と、モータ部3の一方側(図1における左側)に連結されている出力軸4と、出力軸4上にスライド移動可能に設けられたクラッチ機構5およびピニオン機構70と、モータ部3に対する電源供給路を開閉するスイッチユニット7と、スイッチユニット7の可動接点板8およびピニオン機構70を軸方向に沿って移動させるための電磁装置9とを有している。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54とを有している。モータヨーク53の内周面には、複数(本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
各セグメント62のアーマチュアコア58側端には、折り返すように曲折形成されたライザ63が設けられている。ライザ63には、アーマチュアコア58に巻装されているコイル59の端末部が接続されている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体成型されたサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
ハウジング17の開口部17a側の外周面には、軸方向に沿うように雌ネジ部17bが刻設されている。また、モータヨーク53の他方側(図1における右端側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部17bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部17bにボルト95を螺入することによって、モータ部3とハウジング17とが一体化される。
軸受圧入部47aには、出力軸4の一方側端(図1における左側端)を回転自在に支持するための滑り軸受17dが圧入固定されている。この滑り軸受17dには所望の基油からなる潤滑油が含浸されており、出力軸4を円滑に摺接させることができるようになっている。
また、軸受孔47の底部には、ハウジング17の底部17cと出力軸4の一方側端面4cとの間に、荷重受部材50が配置されている。
荷重受部材50を配置することにより、一方側(図1における左側)に向かって出力軸4にスラスト荷重が発生したときでも、ハウジング17に設けた荷重受部材50で出力軸4の移動を規制しつつ、出力軸4のスラスト荷重を受けることができる。また、出力軸4の回転時には、出力軸4の一方側端面4cと荷重受部材50とが摺接するので、出力軸4の一方側端面4cとハウジング17とが直接摺接するのを防止できる。したがって、ハウジング17の摩耗を防止して耐久性に優れたスタータ1とすることができる。
なお、荷重受部材50の周囲には、出力軸4の一方側端面4cとの摺接時の摩擦を軽減するためのグリスが塗布されるが、このグリスに、滑り軸受17dに含浸される潤滑油と同種の基油を含むものが採用されているため、滑り軸受17dの潤滑油を長期間保持できるようになっている。
図2は、クラッチ機構5およびピニオン機構70の拡大図である。なお、図2では、分かり易くするために、クラッチ機構5、ピニオン機構70および出力軸4以外の部品について図示を省略している。
図2に示すように、出力軸4には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22と、クラッチアウタ18およびクラッチインナ22を一体的に固定するクラッチカバー6と、を有している。
また、回転速度差が所定値を越えた場合、スプリング5bの付勢力に抗してクラッチローラ5aが移動し、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間で噛み込まれていたクラッチローラ5aが解除される。これにより、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との機械的な結合が解除されて、回転力の伝達が遮断されるように構成されている。
また、クラッチ機構5は、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間に生じるトルク差、および回転速度差が所定値以内の場合、互いに回転力を伝達する一方、トルク差および回転速度差が所定値を越えた場合、回転力の伝達が遮断される所謂トルクリミッタ機能も備えている。
また、クラッチアウタ18の内周面におけるスリーブ18aの一方側には、段部18cが形成されている。段部18cの内周面は、スリーブ18aの内周面よりも大径に形成されている。段部18cは、後述するように、出力軸4に外嵌された移動規制部20と当接することで、ピニオン機構70およびクラッチ機構5の一方側へのスライド移動を規制する第二規制部98を形成している。
クラッチインナ22の外周面には、クラッチアウタ18の一方側端面18eと径方向で対応した位置に、固定溝部22aが全周にわたって形成されている。
クラッチワッシャ64の一方側(図2における左側)の主面64aは、径方向内側が規制段差部22bと当接し、径方向外側が後述するクラッチカバー6の一方側の底壁66と当接している。また、クラッチワッシャ64の他方側(図2における右側)の主面64bは、他方側に設けられた第二のワッシャ65の一方側端面と当接し、さらに第二のワッシャ65の他方側端面がクラッチアウタ18の一方側端面18eと当接している。なお、第二のワッシャ65は、クラッチローラ5aおよびスプリング5bの軸方向の移動を規制するために設けられている。
図3は、クラッチカバー6の斜視図である。
図3に示すように、クラッチカバー6は、本体筒部68と、本体筒部68の一方側(図3における左側)に一体的に環状に設けられた底壁66と、を有する筒状の部材であり、例えば鉄等の金属板材を絞り加工することにより形成されている。
本体筒部68の内径は、クラッチアウタ18の外径より僅かに小さく形成されており、クラッチアウタ18の外周面18d(図2参照)に圧入されるようになっている。
底壁66の略中央には、一方側と他方側とを貫通する開口部66aが形成されている。また、底壁66には、開口部66aの縁部から軸方向の一方側(図3における左側)に向かって延びる補強筒部67が一体的に形成されている。補強筒部67は、出力軸4と同心円状に形成されている。
開口部66aの直径、および補強筒部67の内径は、規制段差部22bの外径よりも大きく形成されている。これにより、補強筒部67は、規制段差部22bと干渉することなく、規制段差部22bの径方向外側に配置される。
ここで、クラッチワッシャ64は、クラッチカバー6が外嵌固定されることで径方向外側がクラッチカバー6によって保持されるとともに、径方向内側がクラッチインナ22の固定溝部22aによって保持されている。したがって、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64にクラッチカバー6を外嵌固定することで、クラッチアウタ18、クラッチインナ22、およびクラッチカバー6がクラッチワッシャ64を介して一体的に固定される。
移動規制部20は、出力軸4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方側(図2における左側)への移動が規制された状態に設けられるとともに、クラッチアウタ18に形成された段部18cと干渉可能なように、段部18cの内周面よりも大径に形成されている。後述するようにクラッチ機構5が一方側にスライド移動したときには、クラッチアウタ18の段部18cと移動規制部20とが干渉する。これにより、クラッチ機構5およびピニオン機構70の一方側へのスライド移動量が規制される。すなわち、クラッチアウタ18の段部18cおよび移動規制部20は、互いに当接することでクラッチ機構5およびピニオン機構70の一方側への移動を規制する第二規制部98を構成している。
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、ピニオン機構70が一体的に設けられている。
ピニオン機構70は、クラッチインナ22の先端に一体成形された筒状のピニオンインナ71を有している。ピニオンインナ71の内周面には、軸方向両側にそれぞれ出力軸4にピニオンインナ71を摺動可能に支持するための2つの滑り軸受72,72が設けられている。
ここで、リングギヤ23およびピニオンギヤ74は、はすば歯車(ヘリカルギヤ)で構成されており、リングギヤ23とピニオンギヤ74との歯のねじれ方向は、ピニオンギヤ74がリングギヤ23を駆動する状態でピニオンギヤ74に飛び込み方向のスラスト荷重が作用するように設定されている。
収納部76のクラッチ機構5側に形成されている開口部は、クラッチインナ22の基端側に設けられた段差部71aによって閉塞された状態になっている。すなわち、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71によって軸方向に摺動可能に支持された状態になっている。これにより、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71に対して大きくがたつくことなく軸方向にスライド移動する。
ピニオンスプリング11は、後述するように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが当接したときに、軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収するダンパ機構として機能している。これにより、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、スタータ1の耐久性向上を図っている。
ここで、延長筒部74dの外径は、クラッチカバー6の開口部66aの直径および補強筒部67の内径よりも小さく形成されている。これにより、ピニオンギヤ74が他方側に移動しても、延長筒部74dがクラッチカバー6と干渉することなく、規制段差部22bと当接可能とされている。
図1に示すように、ハウジング17の内周面には、クラッチ機構5よりもモータ部3側に、電磁装置9を構成するヨーク25が内嵌固定されている。ヨーク25は磁性材からなる有底筒状に形成されており、底部25aの径方向中央の大部分が大きく開口されている。
また、ヨーク25の底部25aとは反対側端には、磁性材からなる円環状のプランジャホルダ26が設けられている。プランジャホルダ26の径方向内側は、軸方向の他方側に向かって延出された円筒部26aとなっている。これにより、後述するギヤプランジャ80の鉄心88との離間距離が狭くなるので、プランジャホルダ26による鉄心88の吸引力を上げることができる。
ヨーク25、およびプランジャホルダ26によって径方向内側に形成される収納凹部25bには、略円筒状に形成された励磁コイル24が収納されている。励磁コイル24は、コネクタを介してイグニションスイッチ(いずれも不図示)に電気的に接続されている。
プランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状のスイッチプランジャ27と、このスイッチプランジャ27と出力軸4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80とを有している。これらスイッチプランジャ27とギヤプランジャ80とは、互いに同心円上に設けられ、軸方向に相対移動可能に設けられている。また、プランジャホルダ26とスイッチプランジャ27との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるスイッチリターンスプリング27aが配設されている。
プランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャインナ81の内径は、出力軸4に外挿可能なように、出力軸4の外径よりも若干大きく形成されている。これにより、プランジャインナ81は、出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャインナ81の他方側端81b(図1における右側端)には、他方側から一方側に向かって漸次外径が大きくなる爪部83が周方向に複数個所設けられている。また、爪部83の一方側(図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。
プランジャアウタ85の他方側端85a(図1における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体的に形成されている。内フランジ部86の内径は、プランジャインナ81の爪部83の外径よりも小さく、かつプランジャインナ81の溝部84の底部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、プランジャインナ81の溝部84内にプランジャアウタ85の内フランジ部86を配置することで、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とが一体化され、プランジャ機構37が構成される。
また、外フランジ部87の一方側(図1における左側)であって、プランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、プランジャアウタ85と一体成型されている。鉄心88は、後述するように励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により吸引される。
プランジャスプリング91は、収納部90に収納された状態で、プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、プランジャインナ81は一方側(図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は他方側(図1における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
また、スタータ1の通電状態(図1における中心線より上側の状態)では、ギヤプランジャ80が一方側(図1における左側)に最大変位したとき、プランジャインナ81の一方側端81aは常にクラッチ機構5のクラッチアウタ18の他方側端と当接した状態となっている。
すなわち、プランジャスプリング91は、クラッチ機構5とギヤプランジャ80との間における軸方向の空隙の発生を防止し、クラッチ機構5のガタつきを吸収するガタ吸収機構を構成している。
各ブラシ41の基端側には、ブラシスプリング42が設けられている。このブラシスプリング42によって、各ブラシ41がコンミテータ61側に向かって付勢され、各ブラシ41の先端がコンミテータ61のセグメント62に摺接するようになっている。
続いて、図面を用いてスタータ1の動作について説明をする。
図1における中心線の上側の状態に示すように、励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態にあっては、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、ピニオンギヤ74と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態でモータ部3側(図1における右側)へ一杯に付勢されている。そして、クラッチ機構5のクラッチアウタ18がストッパ94に当接した位置で停止しており、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との結合が断たれている。
この状態から車両のイグニションスイッチ(不図示)をオンすると、励磁コイル24に電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80を磁束が通る磁路が形成される。これにより、図4(a)に示すように、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側(図4における左側)へ向かってスライド移動する。
このとき、スイッチプランジャ27の内周面にリング部材28が一体的に設けられていることから、このリング部材28がギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧することで、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80が一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
このとき、ピニオンギヤ74は、図4(b)に示すように、リングギヤ23側に所定距離移動する。そして、ピニオンギヤ74の一方側(図4(b)における左側)端面74bとリングギヤ23の他方側(図4(b)における右側)端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となっている。
さらにスイッチプランジャ27が吸引されてリングギヤ23側へ向かってスライド移動すると、図5(a)に示すように、可動接点板8が固定接点板34に接触する。可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向変位可能に浮動支持されているので、スイッチスプリング32の押圧力が可動接点板8および固定接点板34に加わることになる。
ここで、クラッチカバー6の補強筒部67は、第一規制部97を構成する延長筒部74dおよび規制段差部22bよりも径方向外側に配置されている。したがって、クラッチカバー6の補強筒部67と第一規制部97とが干渉することなく、ピニオンスプリング11によるダンパ機構が機能できる。
すると、アーマチュアコア58に磁界が発生し、この磁界とモータヨーク53に設けられている永久磁石57との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、アーマチュア54が回転し始める。そして、アーマチュア54が回転することにより、このアーマチュア54の回転軸52の回転力が遊星歯車機構2を介して出力軸4に伝達され、出力軸4が回転し始める。
出力軸4の回転速度が上昇すると、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合されたクラッチアウタ18に慣性力が作用する。このとき、前述のように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とがヘリカル噛合していることから、ピニオンギヤ74にリングギヤ23方向(飛び込み方向)へのスラスト荷重が発生する。そして、このスラスト荷重によってピニオンギヤ74はヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側(図6における左側)へ向かって移動する。また、図6(a)に示すように、クラッチアウタ18も、慣性力によってヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側(図6における左側)へ向かって押し出される。
このとき、ギヤプランジャ80には、リングギヤ23側へ向かう吸引力が作用している。したがって、ギヤプランジャ80は、クラッチアウタ18のスライド移動に連動するように、クラッチアウタ18を押圧しつつリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。これにより、図6(b)に示すように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが所定の噛み合い位置で噛合する。
しかし、図2に示すように、ハウジング17の底部17cには、荷重受部材50が設けられている。これにより、出力軸4は、一方側端面4cが荷重受部材50に当接し、出力軸4の一方側(図5における左側)へのスライド移動が規制され、これにより、出力軸4に加わるスラスト荷重を効果的に受けることができる。
一方、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合後、エンジン始動時におけるクランキングの際には、リングギヤ23の回転速度に変動が生じる。これにより、ピニオンギヤ74には一方側(図6における左側)および他方側(図6における右側)に向かってスラスト荷重が発生する。具体的には、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも低いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23側に向かってスラスト荷重が発生する。また、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも高いときには、ピニオンギヤ74にはリングギヤ23側とは反対側に向かってスラスト荷重が発生する。
特に、アイドルストップ機能を備えた車両においては、エンジンの停止/始動が頻繁に行われ、一般のスタータよりも使用頻度が高まるため、上述のようなスラスト荷重が頻繁に発生する。
ここで、クラッチワッシャ64と当接しているクラッチカバー6の底壁66には、出力軸4と同心円状の補強筒部67が一体的に形成されている。これにより、クラッチカバー6の肉厚を従来のクラッチカバーと同等の厚みの材料で成形した場合であっても、クラッチカバー6の底壁66の断面係数を十分確保し、底壁66の強度を向上させている。したがって、ピニオンギヤ74にスラスト荷重が発生し、止め輪77、ピニオンインナ71、クラッチインナ22およびクラッチワッシャ64を介してクラッチカバー6の底壁66にスラスト荷重が作用しても、クラッチカバー6の軸方向への変形が抑制される。
本実施形態によれば、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74との間に配置され、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とがヘリカル噛合したときの衝撃を吸収するピニオンスプリング11と、ピニオンスプリング11とピニオンギヤ74のリングギヤ23とは反対側へのスライド移動を規制する第一規制部97を備えたスタータ1において、クラッチカバー6が、出力軸4と同心状の補強筒部67を備えているので、ピニオン機構70にダンパ機構を設けた構造であってもクラッチカバー6の軸方向への変形を効果的に抑制できる。さらに、補強筒部67は、ピニオン機構70の第一規制部97(すなわち、延長筒部97dおよび規制段差部22b)よりも径方向外側に設けられているので、ピニオンギヤ74がリングギヤ23とは反対側のクラッチ機構5側にスライド移動しても、第一規制部97と補強筒部67とが干渉することなく、ダンパ機構を機能させることができる。
したがって、ピニオン機構70にダンパ機構を設けるとともに、クラッチカバー6の変形を抑制できる。
図7は、実施形態の変形例にかかるクラッチカバー6の斜視図である。
実施形態では、クラッチカバー6の底壁66には、開口部66aの縁部から軸方向の一方側に向かって延びる補強筒部67が一体的に形成されていた(図3参照)。
これに対して、本変形例のクラッチカバー106は、図7に示すように、底壁66と補強筒部67との間に、変形抑制部167を設けた点で、実施形態のクラッチカバー6とは異なっている。なお、実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
本変形例によれば、変形抑制部167によりクラッチカバー106の底壁66と補強筒部67との間の強度を向上できるので、さらにクラッチカバー106の変形を抑制できる。また、変形抑制部167をビード167aとすることにより、絞り加工等で本体筒部68および補強筒部67を形成する際に簡単に形成できるので、低コストにクラッチカバー106の強度を向上でき、変形を抑制できる。
しかしながら、本発明の適用は一軸式のスタータ1に限られることはなく、ピニオン機構70を進退動作させることができる構成を含むスタータであれば、本発明を適用することが可能である。例えば、電磁装置(プランジャ機構37)と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる二軸式のスタータや、電磁装置(プランジャ機構37)の軸と回転軸52と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる三軸式のスタータ等、様々な形式のスタータに本発明を適用してもよい。
しかしながら、上述のように、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74とをスプライン噛合によりスライド移動可能に形成する場合に限られない。例えば、ピニオンインナ71にキーを設ける一方、ピニオンギヤ74にキー溝を設け、ピニオンインナ71とピニオンギヤ74とをスライド移動可能に形成してもよい。
3 モータ部
4 出力軸
5 クラッチ機構
6,106 クラッチカバー
9 電磁装置
11 ピニオンスプリング
18 クラッチアウタ
22 クラッチインナ
23 リングギヤ
24 励磁コイル
64 クラッチワッシャ
64a 一方側の主面(主面)
66 底壁
66a 開口部
67 補強筒部
68 本体筒部
70 ピニオン機構
71 ピニオンインナ
74 ピニオンギヤ
80 ギヤプランジャ
97 第一規制部
98 第二規制部
167 変形抑制部
167a ビード
Claims (5)
- モータ部の一方側に連結され、前記モータ部の回転力を受けて回転する出力軸と、
前記出力軸上にスライド移動可能に設けられ、エンジンのリングギヤとヘリカル噛合可能なピニオン機構と、
前記出力軸と前記ピニオン機構との間に設けられ、前記出力軸の回転力を前記ピニオン機構に伝達するクラッチ機構と、
前記クラッチ機構よりも前記モータ部側に設けられ、前記モータ部への通電、遮断を行うと共に、前記クラッチ機構を介して前記ピニオン機構に、前記リングギヤ側に向かう押圧力を付勢する電磁装置と、
を備えたスタータであって、
前記クラッチ機構は、
前記電磁装置側に配置されたクラッチアウタと、
前記クラッチアウタの径方向内側に、前記クラッチアウタと同心円状に設けられたクラッチインナと、
前記クラッチアウタおよび前記クラッチインナを覆い、前記クラッチアウタおよび前記クラッチインナを一体的に固定するクラッチカバーと、
を備え、
前記ピニオン機構は、
前記出力軸に外挿されて前記出力軸に沿ってスライド移動可能に設けられ、前記クラッチインナと一体形成されたピニオンインナと、
前記ピニオンインナの径方向外側に前記ピニオンインナと同心円状に設けられ、前記出力軸に沿ってスライド移動可能なピニオンギヤと、
前記ピニオンインナと前記ピニオンギヤとの間に配置され、前記ピニオンギヤと前記リングギヤとがヘリカル噛合したときの衝撃を吸収するピニオンスプリングと、
前記ピニオンギヤの前記リングギヤとは反対側へのスライド移動を規制する第一規制部と、
を備え、
前記第一規制部は、
前記リングギヤとは反対側の端面に、前記出力軸と同心円状に形成された延長筒部と、
前記クラッチインナの外周面が径方向外側に張り出して形成され、前記延長筒部と当接することで、前記ピニオンギヤのスライド移動量を規制する規制段差部と、
を有し、
前記クラッチカバーは、
前記クラッチアウタの周囲を囲繞する本体筒部と、
前記本体筒部の前記ピニオン機構側端に設けられ、前記出力軸が挿通される開口部が形成された底壁と、
を有し、
前記開口部の縁部には、前記底壁の変形を抑制するための補強筒部が一体的に形成されており、
前記補強筒部は、前記延長筒部と前記規制段差部とが当接した状態において、前記第一規制部と干渉することなく、前記第一規制部よりも径方向外側に位置するように設定されていることを特徴とするスタータ。 - 前記クラッチカバーの前記リングギヤ側の底壁と、前記クラッチアウタとの間に、前記出力軸と同心円状のクラッチワッシャを設け、
前記クラッチワッシャの径方向外側を、前記クラッチカバーにより保持し、前記クラッチワッシャの径方向内側を、前記クラッチインナにより保持したことを特徴とする請求項1に記載のスタータ。 - 前記クラッチカバーには、前記底壁と前記補強筒部との間に、前記底壁の変形を抑制するための変形抑制部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスタータ。
- 前記変形抑制部は、前記底壁と前記補強筒部とを接続するように形成されたビードであることを特徴とする請求項3に記載のスタータ。
- 前記電磁装置は、
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記クラッチ機構に押圧力を付勢するギヤプランジャと、
を備え、
前記ギヤプランジャは、前記出力軸と同軸上に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスタータ。
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