JP5957071B2 - スタータ - Google Patents
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Description
このとき、ピニオンには、押圧力と回転力とが作用している。このため、リングギヤとピニオンとの噛合位相がずれて互いの端面同士が当接した場合であっても、その後スムーズにリングギヤにピニオンを噛合させることができる。
そして、リングギヤにピニオンが噛合されて連係されると、モータ部の回転力が出力軸およびピニオンを介してリングギヤに伝達され、リングギヤが回転することによりエンジンが始動する。
エンジンが始動し、ピニオンの回転速度よりリングギヤの回転速度が速くなると、スタータに設けられたクラッチ機構のワンウェイクラッチ機能が作用してピニオンが空転し、リングギヤの回転がスタータのモータ部に伝達されないように構成されている。
例えば、エンジンの回転中(すなわちリングギヤの回転中)に運転者がキー操作を誤るなどしてスタータを作動させた場合には、ピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度よりも遅い状態で、ピニオンがリングギヤ側に押し出される場合がある。
また、例えばアイドリングストップ機能を備えた自動車にあっては、エンジンの燃料噴射を停止した直後にエンジンを再始動させる場合、リングギヤが惰性回転している場合がある。したがって、エンジンの再始動時には、上述同様にピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度よりも遅い状態で、ピニオンがリングギヤ側に押し出されることがある。
このとき、ピニオンギヤとリングギヤの歯同志の噛合位相がずれていれば、ギヤ同志が噛合うことはなく、また、噛合位相が合ってピニオンギヤとリングギヤが噛合ってしまった場合でも、スタータに組み込まれているワンウェイクラッチが作動して、リングギヤ側の回転がモータ部に伝達されることはないよう設定されている。
しかしながら、歯同志が噛合った状態が継続すると、スタータのクラッチ機構にリングギヤの回転力による負荷が継続して伝達されるため、スタータの部品の寿命が低下する可能性がある。
また、リングギヤから離反する方向にスライド移動するピニオンにはリングギヤの回転によって回転力が付与され、この状態を繰り返す度にピニオンの回転速度は加速し、ピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
そして、リングギヤの回転速度に対してピニオンの回転速度が同じ(同期した状態)又は速くなって、一旦リングギヤとピニオンとが連係し始めると、ピニオンにはリングギヤに接近する方向に向かってスラスト荷重が発生するので、ピニオンをリングギヤにスムーズに連係させることができる。
また、ピニオンとピニオンインナとの間にピニオンスプリングを備えているので、ピニオンとリングギヤとの連係時における衝撃を吸収しつつピニオンとリングギヤとの回転速度を同期させながら、ピニオンスプリングの付勢力によりピニオンをリングギヤ側に押圧できる。したがって、ピニオンとリングギヤとの連係時における部品の摩耗を抑制するとともに、素早く連係させることができる。
したがって、リングギヤとピニオンとの良好な連係性を確保しつつ、部品の延命化を図ることができる。
また、リングギヤから離反する方向にスライド移動するピニオンにはリングギヤの回転によって回転力が付与され、この状態を繰り返す度にピニオンの回転速度は加速し、ピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
そして、リングギヤの回転速度に対してピニオンの回転速度が同じ(同期した状態)又は速くなって、一旦リングギヤとピニオンとが連係し始めると、ピニオンにはリングギヤに接近する方向に向かってスラスト荷重が発生するので、ピニオンをリングギヤにスムーズに連係させることができる。
また、ピニオンとピニオンインナとの間にピニオンスプリングを備えているので、ピニオンとリングギヤとの連係時における衝撃を吸収しつつピニオンとリングギヤとの回転速度を同期させながら、ピニオンスプリングの付勢力によりピニオンをリングギヤ側に押圧できる。したがって、ピニオンとリングギヤとの連係時における部品の摩耗を抑制するとともに、素早く連係させることができる。
したがって、リングギヤとピニオンとの良好な連係性を確保しつつ、部品の延命化を図ることができる。
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、スタータ1の断面図である。なお、図1では、中心線より上側にスタータ1の静止状態を示し、下側にスタータ1の通電状態(ピニオン74とリングギヤ23とが噛合した状態)を示している。
モータ部3は、ブラシ付直流モータ51と、ブラシ付直流モータ51の回転軸52に連結され、この回転軸52の回転力を出力軸4に伝達するための遊星歯車機構2とにより構成されている。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54とを有している。モータヨーク53の内周面には、複数(本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
これら第一固定接点板34a、および第二固定接点板34bに、後述する可動接点板8が跨るように当接するように構成されている。可動接点板8が第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bに当接することにより、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bが電気的に接続される。
また、4つのブラシ41のうち、2つの陰極側ブラシは、不図示のピグテールを介してリング状のセンタープレートに接続されている。そして、このセンタープレート、ハウジング17、および不図示の車体を介して、バッテリの陰極に4つのブラシ41のうちの2つの陰極側ブラシが電気的に接続されるように構成されている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体成形されているサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
ハウジング17の開口部17a側の外周面には、軸方向に沿うように雌ネジ部17bが刻設されている。また、モータヨーク53の軸方向他方側(図1における右端側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部17bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部17bにボルト95を螺入することによって、モータ部3とハウジング17とが一体化される。
また、軸受孔47には、出力軸4の一方側端(図1における左側端)を回転自在に支持するための滑り軸受17dが圧入固定されている。この滑り軸受17dには所望の基油からなる潤滑油が含浸されており、出力軸4を円滑に摺接させることができるように構成されている。
出力軸4の軸方向略中央には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22と、クラッチアウタ18、およびクラッチインナ22を一体的に固定するクラッチカバー6とを有している。
クラッチアウタ18の外周面18dには、クラッチカバー6が、例えばカシメ等により固定されている。
クラッチインナ22の外周面には、クラッチアウタ18の軸方向一方側端面と径方向で対応した位置に、略円盤状のクラッチワッシャ64が外嵌固定されている。
本体筒部68は、クラッチアウタ18、およびクラッチワッシャ64に外挿され、本体筒部68の軸方向他方側の縁部をクラッチアウタ18の軸方向他方側端面にカシメることにより、クラッチアウタ18、およびクラッチワッシャ64に固定される。
移動規制部20は、出力軸4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方側への移動が規制された状態で設けられている。また、移動規制部20は、この直径がクラッチアウタ18に形成された段差部18cと干渉可能なように、段差部18cの内周面よりも大径に設定されている。
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、ピニオン機構70が一体的に設けられている。
ピニオン機構70は、クラッチインナ22の先端に一体成形された筒状のピニオンインナ71と、ピニオンインナ71の径方向外側にピニオンインナ71と同軸に設けられたピニオン74と、を備えている。
ピニオンインナ71の外周面には、クラッチ機構5とは反対側である先端側に、ピニオンインナ側ヘリカル外歯73が形成されている。このピニオンインナ側ヘリカル外歯73には、不図示のエンジンのリングギヤ23に噛合可能なピニオン74が外嵌されている。
リングギヤ23の歯部23A、およびピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aは、それぞれ所定の方向に捩れ角度を有している。ピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aの捩れ方向は、リングギヤ23の歯部23Aの捩れ方向に基づいて規定されている。具体的には、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時において、リングギヤ23に接近する方向(飛び込み方向)にピニオン74にスラスト荷重が発生するように設定されている。
ピニオンインナ71のピニオンインナ側ヘリカル外歯73およびピニオン74のピニオン側ヘリカル内歯74aは、それぞれ所定の方向に捩れ角度を有している。具体的には、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時において、リングギヤ23から離間する方向(離反方向)にピニオン74にスラスト荷重が発生するように設定されている。
収納部76のクラッチ機構5側に形成されている開口部は、クラッチインナ22の基端側に設けられた段差部71aによって閉塞された状態になっている。すなわち、ピニオン74は、ピニオンインナ71によって軸方向に摺動可能に支持された状態になっている。これにより、ピニオン74は、ピニオンインナ71に対して大きくガタつくことなく軸方向にスライド移動する。
ピニオンスプリング11は、ピニオン74とリングギヤ23とが当接したときに軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収する、ダンパ機構として機能している。これにより、ピニオン74およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、ピニオン74およびリングギヤ23の延命化を図っている。
延長筒部74dの外径は、クラッチカバー6の開口部66aの直径および補強筒部67の内径よりも小さく設定されている。これにより、ピニオン74が軸方向他方側に移動しても、延長筒部74dがクラッチカバー6と干渉することなく、規制段差部22bと当接できる。
L1>L2・・・(1)
を満たすように設定されている。このように設定することで、リングギヤ23から離間する方向にピニオン74がピニオンスプリング11の離間距離L2だけスライド移動しても、ピニオン74とリングギヤ23との噛合が外れることがない。
ハウジング17の内周面には、クラッチ機構5よりもモータ部3側に、電磁装置9を構成するヨーク25が内嵌固定されている。ヨーク25は磁性材からなる有底筒状に形成されており、底部25aの径方向略中央の大部分が大きく開口されている。
また、ヨーク25の底部25aとは反対側端には、磁性材からなる円環状のプランジャホルダ26が設けられている。プランジャホルダ26は、ヨーク25の底部25aに対応するように略円環状に形成されたホルダ本体部26aと、このホルダ本体部26aの内周縁から軸方向他方側に向かって屈曲延出されたホルダ円筒部26bとが一体成形された部材である。ホルダ円筒部26bにより、後述するギヤプランジャ80の鉄心88との離間距離が狭くなるので、プランジャホルダ26による鉄心88の吸引力を上げることができる。
プランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状のスイッチプランジャ27と、このスイッチプランジャ27と出力軸4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80とを有している。これらスイッチプランジャ27とギヤプランジャ80とは、互いに同心円状に設けられ、軸方向に相対移動可能に設けられている。また、プランジャホルダ26とスイッチプランジャ27との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるスイッチリターンスプリング27bが配設されている。
L3>L4・・・(2)
を満たすように設定されている。したがって、電磁装置9がピニオン74と可動接点板8とを軸方向一方側(図1における左側)にスライド移動させたときに、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオン74がリングギヤ23に当接する。
プランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャインナ81の内径は、出力軸4に外挿可能なように、出力軸4の外径よりも若干大きく形成されている。これにより、プランジャインナ81は、出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャインナ81の軸方向他方側端81b(図1における右側端)には、軸方向他方側から軸方向一方側に向かって漸次外径が大きくなる爪部83が周方向に沿って複数形成されている。また、爪部83の軸方向一方側(図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。
プランジャアウタ85の軸方向他方側端85a(図1における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体的に形成されている。
また、外フランジ部87の軸方向一方側(図1における左側)であって、プランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、プランジャアウタ85と一体成型されている。鉄心88は、励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により吸引される。
プランジャスプリング91は、収納部90に収納された状態で、プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、プランジャインナ81は軸方向一方側(図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は軸方向他方側(図1における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
続いて、図1から図4Cの各図に基づいて、スタータ1の動作について説明をする。
図1における中心線の上側の状態に示すように、励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態では、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、ピニオン74と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態でモータ部3側(図1における右側)へ一杯に付勢されている。そして、クラッチ機構5のクラッチアウタ18がストッパ94に当接した位置で停止しており、ピニオン74とリングギヤ23とが最大離間距離L4を有した状態で結合が断たれている。
これにより、クラッチアウタ18は、リターンスプリング21のばね荷重によって、ストッパ94に押圧された状態になっている。したがって、スタータ1の静止状態では、プランジャスプリング91のばね荷重によって、クラッチ機構5を押圧しない、つまり、不用意にピニオン機構70をリングギヤ23側に押出さないように設定されている。
図2Aに示すように、スイッチプランジャ27の移動直後の状態から車両のイグニションスイッチ(不図示)をオンすると、励磁コイル24に電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ27、およびギヤプランジャ80を磁束が通る磁路が形成される。これにより、スイッチプランジャ27、およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側(図2Aにおける左側)へ向かってスライド移動する。
このとき、スイッチプランジャ27の内周面にリング部材28が一体的に設けられていることから、このリング部材28がギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧することで、スイッチプランジャ27、およびギヤプランジャ80が一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
したがって、図2Aに示すように、スイッチプランジャ27、およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へスライド移動すると、クラッチアウタ18が、出力軸4に対してヘリカルスプライン18bの傾斜角度分、若干相対回転しながら押出される。さらに、ピニオン機構70も、クラッチ機構5を介してギヤプランジャ80のスライド移動に連動し、リングギヤ23側へ押出される。
また、スイッチプランジャ27は、ギヤプランジャ80と一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動するため、スイッチプランジャ27、およびこれと連動する可動接点板8も、最大離間距離L4だけ軸方向一方側(図2Bにおける左側)に移動する。
L3>L4・・・(2)
を満たすように設定されている。したがって、ピニオン74との最大離間距離L4だけ軸方向一方側(図2Aにおける左側)に移動したときであっても、可動接点板8と固定接点板34との間に、ストローク量L3と最大離間距離L4との差に等しいクリアランスC(図2A参照)を有した状態で、可動接点板8がOFF状態となっている。すなわち、可動接点板8がON状態となる前に、ピニオン74の軸方向一方側端面74bとリングギヤ23の軸方向他方側端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となる。
図3Aに示すように、プランジャホルダ26によりスイッチプランジャ27が吸引され、さらにリングギヤ23側へ向かってスライド移動すると、スイッチプランジャ27の円筒部27aとプランジャホルダ26のホルダ円筒部26bとが径方向で重複した状態になる。このため、ホルダ円筒部26bとスイッチプランジャ27の円筒部27aとの間の磁束が増し、励磁コイル24のスイッチプランジャ27に対する磁力が大きくなる。よって、スイッチプランジャ27のスライド移動した状態が確実に保持される。
すなわち、ピニオンスプリング11は、ピニオン74とリングギヤ23とが当接したときのスラスト荷重を吸収するダンパ機構として機能している。したがって、ピニオン74の軸方向一方側端面74bと、リングギヤ23の軸方向他方側端面23aとが互いに当接していた状態であっても、スイッチプランジャ27を所定の位置にまで押出すことができると共に、ピニオン74の軸方向一方側端面74b、およびリングギヤ23の軸方向他方側端面23aの摩耗を抑制でき、ピニオン74およびリングギヤ23の延命化を図ることができる。
ところで、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時において、ピニオン74とリングギヤ23との間には、一般に、相対的な回転速度差が発生する。例えば、アイドリングストップ機能を備えた自動車において、エンジンの燃料噴射を停止した直後にエンジンを再始動させる場合が想定される。この場合には、リングギヤ23が惰性回転しているため、ピニオン74とリングギヤ23との間に、相対的な回転速度差が発生している。
このとき、リングギヤ23は所定の回転速度で回転しているため、リングギヤ23に衝突したピニオン74はスラスト荷重F1を受けるとともに、回転中のリングギヤ23によってリングギヤ23の回転方向に回転力F2が付与される。
また、このとき、図4Cに示すように、ピニオン74には、ピニオンインナ71のピニオンインナ側ヘリカル外歯73とピニオン74のピニオン側ヘリカル内歯74aとの間に、衝突による衝突反力荷重F3が、ピニオン74の回転方向とは反対方向に発生する。さらに、ピニオンインナ側ヘリカル外歯73とピニオン側ヘリカル内歯74aとのヘリカル角度に沿って衝突反力荷重F3のベクトルが分割され、リングギヤ23から離反する方向に向かってスラスト荷重F4が発生する。これにより、ピニオン74は、リングギヤ23から離反する方向に向かって移動する。
そして、再び、図4Bに示すような、リングギヤ23の歯部23Aの先端角部とピニオン74のピニオン側ヘリカル外歯74Aの先端角部とが衝突する状態となり、その都度ピニオン74はリングギヤ23から回転力F2が与えられ、この状態を繰り返す度にピニオン74の回転速度は加速し、ピニオン74の回転速度がリングギヤ23の回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
図5Cに示すように、ピニオン74には、収縮させられたピニオンスプリング11の付勢力により、リングギヤ23側に接近する方向に押圧力が働く。さらに、出力軸4(図5A参照)の回転により、ピニオン74の回転速度がリングギヤ23の回転速度に対して同じ(同期した状態)又は速くなる。そして、一旦リングギヤ23とピニオン74とが連係し始めると、ピニオン74とリングギヤ23との噛合いによって発生するスラスト荷重F5により、ピニオン74はピニオンインナ側ヘリカル外歯73とピニオン側ヘリカル内歯74aとのヘリカル角度に沿って、リングギヤ23側に接近する方向に移動する。
そして、図5Bに示すように、リングギヤ23側に押出されたピニオン74はリングギヤ23と噛合し始める。
出力軸4の回転速度が上昇すると、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合されたクラッチアウタ18に慣性力が作用する。このとき、ピニオン74とリングギヤ23とがヘリカル噛合し、かつピニオンインナ71とヘリカルスプライン嵌合していることから、リングギヤ23側に接近する方向のスラスト荷重がさらに発生する。
これにより、図6Bに示すように、ピニオン74とリングギヤ23とが所定の噛み合い位置で噛合する。なお、このとき、図6Cに示すように、ピニオン74は、ピニオンスプリング11(図6A参照)によって、ピニオンインナ71に対してリングギヤ23側に向かって付勢されている。したがって、ピニオン74は、リングギヤ23と噛合後、ピニオンインナ71に対して相対移動することなく保持されている。
本実施形態によれば、リングギヤ23の回転速度よりもピニオン74の回転速度が遅い場合において、リングギヤ23とピニオン74とが噛合してリングギヤ23からピニオン74に回転力が伝達されたときに、リングギヤ23からから離反する方向にピニオン74を容易にスライド移動させることができる。つまり、ピニオン74がピニオンインナ側ヘリカル外歯73とピニオン側ヘリカル内歯74aとのヘリカル角度に沿って下がることで、端面接触時のピニオン74の衝撃力を緩和し、ピニオン74とリングギヤ23との連係時における部品の摩耗を抑制することができる。これにより、リングギヤ23の回転力による負荷がスタータ1に伝達するのを抑制できるので、クラッチ機構5等の部品の摩耗を抑制して延命化を図ることができる。また、ピニオンインナ71のインナ側外歯とピニオン74の内歯とがストレートスプライン噛合した構造に対して、円滑にピニオン74をリングギヤ23から離反させることができる。
また、リングギヤ23から離反する方向にスライド移動するピニオン74にはリングギヤ23の回転によって回転力が付与さられ、この状態を繰り返す度にピニオン74の回転速度は加速し、ピニオン74の回転速度がリングギヤ23の回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
そして、リングギヤ23の回転速度に対してピニオン74の回転速度が同じ(同期した状態)又は速くなって、一旦リングギヤ23とピニオン74とが噛合し始めると、ピニオン74にはリングギヤ23に接近する方向に向かってスラスト荷重が発生するので、ピニオン74をリングギヤ23にスムーズに噛合させることができる。
また、ピニオン74とピニオンインナ71との間にピニオンスプリング11を備えているので、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時における衝撃を吸収しつつピニオン74とリングギヤ23との回転速度を同期させながら、ピニオンスプリング11の付勢力によりピニオン74をリングギヤ23側に押圧できる。したがって、ピニオン74とリングギヤ23との噛合時におけるピニオン74やリングギヤ23等の部品の摩耗を抑制するとともに、リングギヤ23からピニオン74が離反した後に、素早く噛合させることができる。
したがって、リングギヤ23とピニオン74との良好な噛合性を確保しつつ、部品の延命化を図ることができる。
しかしながら、本発明の実施の形態の適用は一軸式のスタータ1に限られることはなく、ピニオン機構70を進退動作させることができる構成を含むスタータであれば、本発明の実施の形態を適用することが可能である。例えば、電磁装置(プランジャ機構37)と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる二軸式のスタータや、電磁装置(プランジャ機構37)の軸と回転軸52と出力軸4とを異なる軸上に配置した、いわゆる三軸式のスタータ等、様々な形式のスタータに本発明の実施の形態を適用してもよい。
3 モータ部
4 出力軸
9 電磁装置
11 ピニオンスプリング
23 リングギヤ
24 励磁コイル
70 ピニオン機構
71 ピニオンインナ
73 ピニオンインナ側ヘリカル外歯
74 ピニオン
74A ピニオン側ヘリカル外歯
74a ピニオン側ヘリカル内歯
80 ギヤプランジャ
F1,F3,F4,F5 スラスト荷重
Claims (4)
- モータ部の回転力を受けて回転する出力軸と、
前記出力軸上にスライド移動可能、かつエンジンのリングギヤと連係可能に設けられ、前記出力軸の回転を前記リングギヤに伝達するためのピニオン機構と、
前記モータ部への通電および遮断を行うとともに、前記ピニオン機構に前記リングギヤ側へ向かう押圧力を付勢する電磁装置と、
を備えたスタータであって、
前記ピニオン機構は、
前記出力軸に外挿され、前記出力軸に沿ってスライド移動可能なピニオンインナと、
前記ピニオンインナの径方向外側に、前記ピニオンインナと同心円状に設けられ、前記リングギヤと噛合って連係可能なピニオンと、
前記ピニオンと前記ピニオンインナとの間に配置され、前記ピニオンを前記リングギヤ側に向かって付勢するピニオンスプリングと、
を備え、
前記ピニオンには、捩れ角を有し前記リングギヤに連係するピニオン側ヘリカル外歯と、捩れ角を有し前記ピニオンインナに連係するピニオン側ヘリカル内歯とが形成されている一方、前記ピニオンインナには、捩れ角を有し前記ピニオン側ヘリカル内歯に連係するピニオンインナ側ヘリカル外歯が形成されており、
前記ピニオン側ヘリカル外歯は、前記リングギヤと前記ピニオンとが噛合されずに衝突した時において、前記リングギヤの回転速度よりも前記ピニオンの回転速度が遅い場合、前記リングギヤから離反する方向に向かって前記ピニオン側ヘリカル外歯にスラスト荷重が発生するように形成され、
かつ前記リングギヤと前記ピニオンとが噛合した時において、前記リングギヤの回転速度よりも前記ピニオンの回転速度が速い場合、前記リングギヤに接近する方向に向かって前記ピニオン側ヘリカル外歯にスラスト荷重が発生するように形成されるとともに、
前記ピニオン側ヘリカル内歯および前記ピニオンインナ側ヘリカル外歯は、前記リングギヤと前記ピニオンとが噛合されずに衝突した時において、前記リングギヤの回転速度よりも前記ピニオンの回転速度が遅い場合、前記リングギヤから離反する方向に向かって前記ピニオンにスラスト荷重が発生するように形成され、
かつ前記リングギヤと前記ピニオンとが噛合した時において、前記リングギヤの回転速度よりも前記ピニオンの回転速度が速い場合、前記リングギヤに接近する方向に向かって前記ピニオンにスラスト荷重が発生するように形成されているスタータ。 - 前記ピニオンインナ側ヘリカル外歯の捩れ方向は、前記リングギヤと連係する前記ピニオン側ヘリカル外歯の捩れ方向と同一の方向に設定されている請求項1に記載のスタータ。
- 前記ピニオン側ヘリカル外歯、前記ピニオン側ヘリカル内歯および前記ピニオンインナ側ヘリカル外歯の捩れ方向は、前記リングギヤの歯部の捩れ方向に基づき規定される請求項1または2に記載のスタータ。
- 前記電磁装置は、
筒状に設けられた励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記ピニオン機構に押圧力を付勢するギヤプランジャと、
を備え、
前記出力軸と同軸に設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載のスタータ。
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