(第1実施形態)
(スタータ)
次に、この発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、スタータの断面図、図2は、スタータの概略構成を示す部品展開図である。
図1、図2に示すように、スタータ1は、不図示のエンジンの始動に必要な回転力を発生するためのものであって、モータ部3と、モータ部3の一方(図1における左側)に連結されているドライブシャフト4と、ドライブシャフト4上にスライド移動可能に設けられたクラッチ機構5と、ドライブシャフト4の回転力を不図示のエンジンのリングギヤ23に伝達するアイドルギヤユニット100と、モータ部3に対する電源供給路を開閉するスイッチユニット7と、スイッチユニット7の可動接点板8を軸方向に沿って移動させるための電磁装置9と、を有している。
(モータ部)
モータ部3は、ブラシ付直流モータ51と、ブラシ付直流モータ51の回転軸52に連結され、この回転軸52の回転力をドライブシャフト4に伝達するための減速機構としての遊星歯車機構2とにより構成されている。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54と、を有している。モータヨーク53の内周面には、複数(例えば、本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
モータヨーク53の他方(図1における右側)の端部には、モータヨーク53の開口部53aを閉塞するエンドプレート55が設けられている。エンドプレート55の径方向中央には、回転軸52の他方側端を回転自在に支持するための滑り軸受56a、およびスラスト軸受56bが設けられている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
アーマチュアコア58は、放射状に形成された複数のティース(不図示)と、周方向に隣接する各ティース間に形成された複数のスロット(不図示)と、を有している。周方向に所定間隔をあけた各スロット間には、コイル59が例えば波巻により巻装されている。コイル59の端末部は、コンミテータ61に向かって引き出されている。
コンミテータ61には、複数枚(例えば、本実施形態では26枚)のセグメント62が周方向に沿って、かつ互いに電気的に絶縁されるように所定間隔を空けた状態で設けられている。
各セグメント62のアーマチュアコア58側端には、折り返すように曲折形成されたライザ63が設けられている。ライザ63には、アーマチュアコア58に巻装されているコイル59の端末部が接続されている。
モータヨーク53のエンドプレート55とは反対側には、有底筒状のトッププレート12が設けられている。このトッププレート12におけるアーマチュアコア58側の内面に、遊星歯車機構2が設けられている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体形成されたサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
複数のプラネタリギヤ14は、出力部としてのキャリアプレート16により連結されている。キャリアプレート16には、各プラネタリギヤ14に対応する位置に複数の支持シャフト16aが立設されており、ここにプラネタリギヤ14が回転自在に支持されている。また、キャリアプレート16の径方向中央にはセレーションを有する係合孔16bが設けられ、ドライブシャフト4の他方側端部4dのセレーション部4eがセレーション係合により噛合っている。
内歯リングギヤ15は、トッププレート12のアーマチュアコア58側の内面に一体成形されている。トッププレート12の内周面における径方向中央には、滑り軸受12aが設けられている。滑り軸受12aは、回転軸52と同軸上に配置されているドライブシャフト4の他方側端部4dを回転自在に支持している。
(ハウジング)
このように、遊星歯車機構2が設けられているトッププレート12は、ハウジング17内に収納されて固定されている。ハウジング17は、不図示のエンジンにスタータ1固定する役割と、トッププレート12(遊星歯車機構2)、電磁装置9、クラッチ機構5、アイドルギヤユニット100等を収納する役割とを有している。
ハウジング17は、一方(図1における左側)と他方(図1における右側)とに、それぞれ開口部171a(第1の位置決め手段),171cを有するブラケット部171と、ブラケット部171の一方(図1における左側)に装着されたギヤカバー172と、により分割構成されている。これらブラケット部171およびギヤカバー172は、それぞれアルミニウム製で、ダイカスト鋳造にて形成されている。そして、ブラケット部171の他方の開口部171cを閉塞するようにトッププレート12が設けられている。
また、ブラケット部171には、他方の開口部171c側の外周面に、軸方向に沿うように雌ネジ部171bが刻設されている。また、モータヨーク53の他方(図1における右端側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部171bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部171bにボルト95を螺入することによって、モータ部3とブラケット部171とが一体化される。
また、ブラケット部171の内壁には、後述するクラッチアウタ18のモータ部3側への変位を規制するリング状のストッパ94が設けられている。このストッパ94は、樹脂やゴム等により形成され、クラッチアウタ18が当接した際の衝撃を緩和できるようになっている。
さらに、ブラケット部171の内壁には、ストッパ94よりも一方の開口部171a寄りに段差により縮径形成された縮径部171dが設けられている。この縮径部171dの段差面は、ブラケット部171における一方の開口部171aから電磁装置9が抜け出てしまうことを防止するための抜け止め部として機能している。
図3は、ブラケット部をギヤカバー側からみた斜視図である。
図1〜図3に示すように、ブラケット部171の一方の開口部171a側(図3における紙面手前側)には、この開口部171aの径方向外側に、シャフト孔174が形成されている。このシャフト孔174は、後述するアイドルシャフト102の一方の端部102a(図1における左側の端部)近傍を回転自在に支持するためのものである。
また、ブラケット部171の一方の開口部171a側には、外周側に張り出した外フランジ部171tが一体的に形成されている。外フランジ部171tのギヤカバー172と対向する面は、このギヤカバー172との当接面(合わせ面)171eとなる。この当接面171eには、外周部を除いて肉盗み部169が形成されている。肉盗み部169を形成することにより、ブラケット部171の軽量化が図られていると共に、当接面171eの加工面積を減少でき、製造コストの低減化が図られている。
ここで、不図示のエンジンにスタータ1を取り付けた状態では、図3に示す上側がスタータ1の鉛直方向上側となり、図3に示す下側がスタータ1の鉛直方向下側となる。なお、以下の説明では、不図示のエンジンにスタータ1を取り付けた状態での鉛直方向下側(図3に示す下側)を単に下側と称し、鉛直方向上側(図3に示す上側)を単に上側と称して説明する場合がある。
外フランジ部171tの当接面171eには、下側となる位置に水抜き溝168が形成されている。この水抜き溝168は、ハウジング17内に浸入、または結露によって発生した水滴を、外部に排出するためのものである。水抜き溝168は、鉛直方向に対して屈曲形成されたラビリンス構造になっている。水抜き溝168をラビリンス構造とすることにより、水滴のハウジング17外への排出を可能にしつつ、外部からハウジング17内に水が浸入してしまうのを防止できる。
また、外フランジ部171tの外周部には、周方向に間隔をあけて複数のボルト挿通孔175が形成されている。さらに、外フランジ部171tの上側には、ギヤカバー172の後述のボルト挿通孔183に対応する位置に、雌ネジ部167が刻設されている。これらボルト挿通孔175および雌ネジ部167は、周方向にほぼ等間隔となるように配置されている。
また、外フランジ部171tの下側には、水抜き溝168とボルト挿通孔175との間に、ギヤカバー172の後述の位置決めピン184を挿通可能なピン挿通孔166(第2の位置決め手段)が形成されている。ブラケット部171のボルト挿通孔175、雌ネジ部167およびピン挿通孔166は、ブラケット部171とギヤカバー172とを固定するために用いられる。
図4は、ギヤカバーをブラケット部側からみた斜視図、図5は、ギヤカバー、ブラケット部およびモータ部を組み付けた状態を、ギヤカバー側からみた平面図、図6は、ギヤカバー、ブラケット部およびモータ部を組み付けた状態を、モータ部側からみた平面図である。
図1、図2、図4〜図6に示すように、ギヤカバー172は、ブラケット部171に対向する側に、ブラケット部171の外フランジ部171tに当接する当接面(合わせ面)172sを有している。この当接面172sには、外周部を除いて、換言すればブラケット部171の肉盗み部169に対応する位置に、肉盗み部181が形成されている。肉盗み部181を形成することにより、ギヤカバー172の軽量化が図られていると共に、当接面172sの加工面積を減少でき、製造コストの低減化が図られている。
また、当接面172sの外周部には、ブラケット部171のボルト挿通孔175に対応する位置に、雌ネジ部172aが刻設されている。さらに、当接面172sの外周部には、ブラケット部171の雌ネジ部167に対応する位置に、外周側に張り出したフランジ部182が一体的に形成されており、ここにボルト挿通孔183が形成されている。また、当接面172sの外周部には、ブラケット部171のピン挿通孔166に対応する位置に、位置決めピン184(第2の位置決め手段)が圧入固定されている。
このような構成のもと、ブラケット部171とギヤカバー172とを組み付ける際は、ブラケット部171のピン挿通孔166にギヤカバー172の位置決めピン184を挿入するようにしてブラケット部171の当接面171eとギヤカバー172の当接面172sとを重ね合わせる。
そして、図2、図5、図6に示すように、ブラケット部171のボルト挿通孔175にモータ部3側から4つのボルト177aを挿入し、これらボルト177aをギヤカバー172の雌ネジ部172aに螺入する。また、ギヤカバー172のボルト挿通孔183にモータ部3とは反対側からボルト177bを挿入し、このボルト177bをブラケット部171の雌ネジ部167に螺入する。このように、ブラケット部171の当接面171eおよびギヤカバー172の当接面172sを挟んで両側からそれぞれボルト177a,177bを締結するようにして、ブラケット部171とギヤカバー172とを一体化させている。
ここで、ブラケット部171とギヤカバー172とを締結固定するためのボルト挿通孔175、雌ネジ部167、雌ネジ部172aおよびボルト挿通孔183は、それぞれ周方向にほぼ等間隔となるように配置されている。このため、ブラケット部171とギヤカバー172とに、締結固定力が周方向にバランスよく作用し、ブラケット部171とギヤカバー172との固定を確実なものとしている。
また、ブラケット部171の当接面171eおよびギヤカバー172の当接面172sを挟んで両側からそれぞれボルト177a,177bを締結するように構成することで、不図示のエンジンにスタータ1を取り付けた状態で、スタータ1を容易に分解できないようにしている。
図7は、ギヤカバー、ブラケット部およびモータ部を組み付けた状態を、斜め下側からみた斜視図である。
同図に示すように、ブラケット部171における外フランジ部171tの当接面171eには、下側となる位置に水抜き溝168が形成されているので、ブラケット部171とギヤカバー172とを一体化させた状態では、水抜き溝168とギヤカバー172の当接面172sとにより、水抜き部(水抜き孔)185が形成される。このように、ブラケット部171の外フランジ部171tとギヤカバー172との間に水抜き部185が形成されるので、ブラケット部171やギヤカバー172に浸入、または結露により発生した水滴を、速やかに排出することができる。
また、ブラケット部171に水抜き溝168を設けることで、ギヤカバー172の形状が変わったり、後述する躯体への固定のためのボルト挿通孔172bの位置が変更になったりして、ギヤカバー172の仕様の変更があった場合でも、ブラケット部171を共用化することで容易に水抜き部185を構成することができる。
また、図1、図2、図4に示すように、ギヤカバー172は、ブラケット部171に対向する側に開口して、クラッチ機構5および伝達ピニオンギヤ(伝達ギヤ)70と、後述するアイドルギヤ101を収容する収容凹部173が形成されている。
収容凹部173は、伝達ピニオンギヤ70が収容されるピニオンギヤ収容凹部173aと、アイドルギヤ101が収容されるアイドルギヤ収容凹部173bとにより構成されており、それぞれの収容凹部173a,173bが連通するように形成されている。
また、収容凹部173のうち、ピニオンギヤ収容凹部173aの開口部周縁には、ギヤカバー172とブラケット部171とを重ね合わせた際にブラケット部171の一方の開口部171aにインロー嵌合するインロー部173c(第1の位置決め手段)が突設されている。
インロー部173cは、ピニオンギヤ収容凹部173aの開口部周縁の形状に対応するように、軸方向からみた平面視が、アイドルギヤ収容凹部173b側が開口する略C字状に形成されている。
ここで、後述するように、第1の位置決め手段の一方のインロー部173cと第2の位置決め手段としてのアイドルギヤ収容凹部側インロー部を、連続するように略8の字形状に設ける実施形態の場合、各インロー部の連結部位に精度出しのための切削加工を行う際に切削刃が入れ辛くなり、専用の切削加工が必要となってしまう。このため、製造コストの低減の観点では課題となるが、本実施形態のように、第1の位置決め手段の一方であるインロー部173cを略C字状に形成し、第2の位置決め手段を位置決めピン184またはピン挿通孔166とすることにより、位置決め手段を簡素な構造とできると共に、インロー部173cの精度出しのための切削加工を行う際、第2の位置決め手段が邪魔になることがなくなるため、加工性を向上させ、製造コストを低減させることができる。
上述のように、第1の位置決め手段(インロー部173c、開口部171a)と第2の位置決め手段(位置決めピン184、ピン挿通孔166)とにより、本発明の位置決め手段が構成されている。
ここで、ギヤカバー172の当接面172sに圧入固定されている位置決めピン184は、アイドルギヤ収容凹部173bの開口部周縁のうち、ピニオンギヤ収容凹部173aとは反対側に位置する箇所の近傍に配置された状態になっている。換言すれば、位置決めピン184は、インロー部173cとは、アイドルギヤ101(後述のアイドルシャフト102)を挟んで反対側に配置された状態になっている。さらに換言すると、インロー部173cと位置決めピン184は、ギヤカバー172の当接面172s上において、互いにできる限り離間して配置されている。このように、第1の位置決め手段を略C字状のインロー部173cと開口部171a、第2の位置決め手段を位置決めピン184、ピン挿通孔166とから構成することで、位置決め手段を簡素な構造とできる。
また、収容凹部173の底部173dには、ドライブシャフト4と同軸に、有底の軸受凹部47が形成されている。さらに、収容凹部173の底部173dには、軸受凹部47の側方に、後述するアイドルシャフト102が貫通するシャフト貫通孔179が形成されている。
軸受凹部47は、内径がドライブシャフト4の外径よりも大きく形成されている。軸受凹部47には、ドライブシャフト4の一方側端(図1における左側端)を回転自在に支持するための滑り軸受178が圧入固定されている。この滑り軸受178には所望の基油からなる潤滑油が含浸されており、ドライブシャフト4を円滑に摺接させることができるようになっている。
また、軸受凹部47の底部と、ドライブシャフト4の一方側端面4cとの間には、荷重受部材50が配置されている。
荷重受部材50は、平板状の金属部材であり、例えばプレスにより形成されたリング状のワッシャが採用される。荷重受部材50は、硬度がドライブシャフト4よりも高く耐摩耗性に優れた材料により形成されている。荷重受部材50の材料としては、例えばSK85等の炭素工具鋼が好適である。
荷重受部材50を配置することにより、一方(図1における左側)に向かってドライブシャフト4にスラスト荷重が発生したときでも、ギヤカバー172に設けた荷重受部材50でドライブシャフト4の移動を規制しつつ、ドライブシャフト4のスラスト荷重を受けることができる。また、ドライブシャフト4の回転時には、ドライブシャフト4の一方側端面4cと荷重受部材50とが摺接するので、ドライブシャフト4の一方側端面4cとギヤカバー172とが直接摺接するのを防止できる。したがって、ギヤカバー172の摩耗を防止して耐久性に優れたスタータ1とすることができる。
なお、荷重受部材50の周囲には、ドライブシャフト4の一方側端面4cとの摺接時の摩擦を軽減するためのグリスが塗布されるが、このグリスに、滑り軸受178に含浸される潤滑油と同種の基油を含むものが採用されているため、滑り軸受178の潤滑油を長期間保持できるようになっている。
ドライブシャフト4の他方側端部4dには、回転軸52の一方側端(図1における左側端)を挿入して嵌合可能な凹部4aが形成されている。凹部4aの内周面には、滑り軸受4bが圧入されており、ドライブシャフト4と回転軸52とが相対回転可能に連結されるようになっている。
また、ギヤカバー172のシャフト貫通孔179には、当接面172sとは反対側の一方側端面172r側から順に、オイルシール190とボールベアリング180とが設けられている。オイルシール190は、シャフト貫通孔179を介して外部からギヤカバー172内部に塵埃や水が浸入してしまうことを防止するためのものである。ボールベアリング180は、後述するアイドルシャフト102を回転自在に支持するためのものである。
さらに、ギヤカバー172の一方側端面172rには、シャフト貫通孔179の周囲を取り囲むように、かつ同心円上に突出形成された内側円筒部186と外側円筒部187とが設けられている。これら内側円筒部186および外側円筒部187も、シャフト貫通孔179を介して外部からギヤカバー172内部に塵埃や水が浸入してしまうことを防止するための役割を有している。
この他に、ギヤカバー172には、収容凹部173を挟んで両側に、当接面172sに対して外周側に張り出すように形成された一対の取付ブラケット部172tが一体成形されている。取付ブラケット部172tは、収容凹部173から離間するに従って先細りとなるように形成されており、その頂点部にそれぞれボルト挿通孔172bが形成されている。このボルト挿通孔172bに不図示のボルトを挿入することにより、不図示の躯体(エンジンや車体シャーシ等)にギヤカバー172を固定できるようになっている。
(クラッチ機構)
図1に示すように、ドライブシャフト4の軸方向略中央には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22と、クラッチアウタ18およびクラッチインナ22を一体的に固定するクラッチカバー6と、を有している。
クラッチ機構5には、クラッチアウタ18側からの回転力はクラッチインナ22に動力を伝達するが、クラッチインナ22側からの回転力はクラッチアウタ18に伝達しない、いわゆる公知のワンウェイクラッチ機能が設けられている。これにより、エンジン始動時に、クラッチアウタ18よりもクラッチインナ22の回転速度が速くなるオーバーラン状態になった際、エンジンのリングギヤ23側からの回転力を遮断するように構成されている。また、クラッチ機構5は、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間に生じるトルク差、および回転速度差が所定値以内の場合、互いに回転力を伝達する。一方、トルク差および回転速度差が所定値を越えた場合、回転力の伝達が遮断される。すなわち、クラッチ機構5は、いわゆるトルクリミッタ機能も備えている。
クラッチアウタ18の他方(図1における右側)には、縮径されたスリーブ18aが一体形成されており、この内周面に、ドライブシャフト4のヘリカルスプライン19に噛合するヘリカルスプライン18bが形成されている。これにより、クラッチ機構5は、ドライブシャフト4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられる。
クラッチアウタ18の内周面におけるスリーブ18aの一方には、段部18cが形成されている。段部18cの内周面は、スリーブ18aの内周面よりも大径に形成されている。
クラッチアウタ18の外周面には、後述するクラッチカバー6が、例えばカシメ等により固定されている。
クラッチインナ22は、クラッチアウタ18のスリーブ18aよりも拡径形成されており、クラッチインナ22および段部18cの内周面と、ドライブシャフト4との間には、空間が形成されている。この空間には、後述するリターンスプリング21が配置されている。
クラッチインナ22の外周面には、クラッチアウタ18の一方側端面と径方向で対応する位置に、略円盤状のクラッチワッシャ64が外嵌固定されている。
クラッチカバー6は、本体筒部68と、本体筒部68の一方(図1における左側)の底壁66と、を有する有底筒状の部材であり、例えば鉄等の金属板材を絞り加工することにより形成されている。
本体筒部68は、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に外挿され、本体筒部68の他方の縁部をクラッチアウタ18の他方側端面にカシメることにより、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に固定される。
底壁66の略中央には、一方と他方とを貫通する開口が形成され、この開口から軸方向の一方に向かって延びる補強筒部67が形成されている。補強筒部67は、ドライブシャフト4と同心円上に形成され、ドライブシャフト4が挿通されている。
ドライブシャフト4には、ヘリカルスプライン19よりも一方側(図1における左側)に、移動規制部20が設けられている。
移動規制部20は、ドライブシャフト4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方への移動が規制された状態に設けられると共に、クラッチアウタ18に形成された段部18cと干渉可能なように、段部18cの内周面よりも大径に形成されている。後述するようにクラッチ機構5が一方にスライド移動したときには、クラッチアウタ18の段部18cと移動規制部20とが干渉する。これにより、クラッチ機構5の一方へのスライド移動量が規制される。
移動規制部20とクラッチアウタ18のスリーブ18aとの間であって、段部18cの内周面とドライブシャフト4の外周面との間には、リターンスプリング21が設けられている。リターンスプリング21は、ドライブシャフト4を取り囲むように形成され、圧縮変形した状態で設けられている。これにより、クラッチアウタ18は、常時モータ部3側へ向かって押し戻されるように付勢された状態になる。
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、伝達ピニオンギヤ70が一体的に設けられている。
伝達ピニオンギヤ70は、ドライブシャフト4に摺動可能に外嵌されている筒部70aと、この外周面に一体成形され、後述のアイドルギヤ101に噛合される外歯車部70bとから形成されている。そして、筒部70aとクラッチインナ22とが一体成形されている。
また、筒部70aの基端側であるクラッチ機構5側には、伝達ピニオンギヤ70の外歯車部70bとは軸方向に間隔をあけて外フランジ部73が一体成形されている。筒部70aの内周面の軸方向両側に、ドライブシャフト4に伝達ピニオンギヤ70を摺動可能に支持するための2つの滑り軸受72,72が設けられている。
(アイドルギヤユニット)
図8は、アイドルギヤユニットの拡大断面図である。なお、図1、図8において、アイドルシャフト102の中心軸より下側にスタータ1の静止状態(アイドルシャフト102が後退した状態)を示し、上側にスタータ1の通電状態(アイドルシャフト102が前進し、駆動ピニオンギヤ(駆動ギヤ)110と不図示のエンジンのリングギヤ23とが噛合された状態)を示している。
図1、図8に示すように、アイドルギヤユニット100は、ドライブシャフト4と平行に配置されたアイドルシャフト102と、アイドルシャフト102の軸方向中間部に一体成形され、伝達ピニオンギヤ70に噛み合うアイドルギヤ101と、アイドルシャフト102の一方の端部102aに設けられ、リングギヤ23に噛合可能な駆動ピニオンギヤ110と、を備えている。
アイドルギヤ101は、アイドルシャフト102から外周側に拡径して形成され、その外周面に、外歯車部101bが形成されている。
ここで、アイドルギヤ101の外歯車部101bと、伝達ピニオンギヤ70の外歯車部70bとの減速比は、伝達ピニオンギヤ70の回転速度に対してアイドルギヤ101の回転速度が減少するように設定されている。これにより、ドライブシャフト4の回転トルクよりもアイドルシャフト102の回転トルクを大きくできる。このように、伝達ピニオンギヤ70とアイドルギヤ101とのギヤ比を調整することにより、トルク重視型や回転重視型のスタータとできる。
また、アイドルギヤ101および伝達ピニオンギヤ70は、ヘリカルギヤ(はすば歯車)で構成されている。アイドルギヤ101の歯のねじれ方向は、後述の駆動ピニオンギヤ110の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている。一方、伝達ピニオンギヤ70の歯のねじれ方向は、リングギヤ23の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている。
アイドルシャフト102の一方の端部102a(図1、図8における左側の端部102a)は、ギヤカバー172のシャフト貫通孔179を貫通して、ギヤカバー172の外方に突出している。つまり、アイドルシャフト102の一方の端部102aよりも手前側が、ギヤカバー172に設けられたボールベアリング180に回転自在に支持されている。
また、アイドルシャフト102は、他方の端部102bがブラケット部171に形成されたシャフト孔174に、滑り軸受103を介して、回転自在、かつ軸方向(スラスト方向)にスライド移動自在に支持されている。
ここで、アイドルシャフト102の他方の端部102bとブラケット部171のシャフト孔174の間に形成される空隙部K1には、滑り軸受103に対するアイドルシャフト102の摺動性を高めるための潤滑剤として、グリスが充填されている。一方、アイドルシャフト102の他方の端部102bには、グリス溜まり部99が凹設されている。
このグリス溜まり部99は、ブラケット部171の滑り軸受103にアイドルシャフト102の他方の端部102bを挿入する際、ポンピング作用により空隙部K1からグリスが流出しないようにするためである。すなわち、アイドルシャフト102がスライド移動することにより空隙部K1の容積が変化した際(空隙部K1の容積が小さくなるように変化した際)、空隙部K1のグリスがグリス溜まり部99に受け入れられる。これにより、ブラケット部171の外部にグリスが飛散してしまうことを防止できる。
また、グリス溜まり部99は、端部102bに向かうに従って開口面積が漸次大きくなるようにテーパ状に形成されている。このため、例えば空隙部K1の容積が大きくなるように変化した際、一旦、グリス溜まり部99に溜まったグリスが空隙部K1に流出しやすい。したがって、空隙部K1とグリス溜まり部99の間をグリスが循環することによって滑り軸受103とアイドルシャフト102との摺動性が十分確保される。
また、アイドルシャフト102の外周部には、アイドルギヤ101に対してクラッチ機構5側に、円板状のアイドルワッシャ104が外嵌されている。アイドルワッシャ104のクラッチ機構5側への抜け方向への移動は、アイドルシャフト102に取り付けられている止め輪105によって規制されている。また、アイドルワッシャ104の外径は、外歯車部101bの外径と略同一になるように設定されている。さらに、アイドルワッシャ104は、その外周部が、伝達ピニオンギヤ70の外歯車部70bと外フランジ部73との環状の隙間に挿入されている。
これにより、アイドルギヤ101を有したアイドルシャフト102は、アイドルワッシャ104を介して、伝達ピニオンギヤ70と共に、軸方向に追従して移動可能となっている。
なお、アイドルワッシャ104は、伝達ピニオンギヤ70とアイドルギヤ101との間の摺動性を向上させるための役割を有している。このため、アイドルワッシャ104にも、潤滑剤としてのグリス等が塗布されている。
また、アイドルシャフト102において、ボールベアリング180に挿通された部分よりもアイドルギヤ101側には、その外径が拡径することによって段差部102dが形成されている。この段差部102dがボールベアリング180に突き当たることによって、アイドルシャフト102の駆動ピニオンギヤ110側への移動量が規制されている。
また、アイドルシャフト102の一方の端部102aには、外周面にスプライン108が形成されている。アイドルシャフト102の一方の端部102aに設けられた駆動ピニオンギヤ110には、内周面の先端側に、スプライン108にスプライン嵌合可能なスプライン110aが形成されている。アイドルシャフト102側のスプライン108の長さは、駆動ピニオンギヤ110のスプライン110aの長さよりも軸方向に長く設定されている。これにより、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110は、互いに相対回転不能かつ軸方向にスライド移動可能に設けられた状態になる。
また、アイドルシャフト102には、スプライン108よりも他方(図1、図8における右側)に、スプライン108側よりも拡径した段差部102cが形成されている。
一方、駆動ピニオンギヤ110の他方(図1、図8における右側)の端面には、延長筒部110dが延設されている。
延長筒部110dは、アイドルシャフト102と同心円上に形成されている。延長筒部110dは、駆動ピニオンギヤ110が軸方向の他方(図1、図8における右側)にスライド移動したとき、段差部102cと当接可能となっている。すなわち、駆動ピニオンギヤ110がアイドルシャフト102に対して軸方向にスライド移動したとき、延長筒部110dが段差部102cに突き当たることで、駆動ピニオンギヤ110の他方への移動を規制する。
また、アイドルシャフト102の一方の端部102aには、アイドルシャフト102に外嵌固定された止め輪106が設けられている。これにより、駆動ピニオンギヤ110が、アイドルシャフト102に対してアイドルシャフト102の一方に抜けるのを規制している。
ここで、駆動ピニオンギヤ110は、外歯車部110gのピッチ径D1が、アイドルギヤ101の外歯車部101bのピッチ径D2に対し、
D1≦D2を満足するように設定するのが好ましい。
さらには、
D1<D2
を満足するように設定するのが好ましい。
外歯車部110gのピッチ径D1よりもアイドルギヤ101の外歯車部101bのピッチ径D2が大きいと、外歯車部101bで得られるトルクが、駆動ピニオンギヤ110から出力されるトルクよりも大きくなる。つまり、アイドルギヤ101側、つまりドライブシャフト4側から駆動ピニオンギヤ110へのトルク伝達が効率良く行うことができる。
リングギヤ23および駆動ピニオンギヤ110は、ヘリカルギヤで構成されており、リングギヤ23と駆動ピニオンギヤ110との歯のねじれ方向は、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23を駆動する状態で、駆動ピニオンギヤ110に、リングギヤ23に対して飛び込み方向のスラスト荷重が発生するように設定されている。
また、エンジン始動時におけるクランキングの際には、リングギヤ23の回転速度に変動が生じやすい。ここで、ヘリカル噛合している駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23との間に回転速度差が発生すると、駆動ピニオンギヤ110にかかるスラスト荷重の向きが変化する。
リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも低いときには、駆動ピニオンギヤ110にはリングギヤ23に接近する方向にスラスト荷重が発生するようになっている。また、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも高いときには、駆動ピニオンギヤ110にはリングギヤ23から離反する方向(図1において右方)にスラスト荷重が発生する。
しかしながら、この場合、アイドルギヤ101の回転速度が伝達ピニオンギヤ70の回転速度よりも速いため、アイドルギヤ101には伝達ピニオンギヤ70から、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23から作用するスラスト荷重とは反対方向のスラスト荷重が作用する。このため、駆動ピニオンギヤ110に作用する、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重が相殺されるようになっている。
すなわち、アイドルギヤ101の歯のねじれ方向は、駆動ピニオンギヤ110の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている一方、伝達ピニオンギヤ70の歯のねじれ方向は、リングギヤ23の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されているので、駆動ピニオンギヤ110で発生するスラスト荷重の方向と、アイドルギヤ101で発生するスラスト荷重の方向が逆になり、両者のスラスト荷重が相殺されるようになっている。
このとき、駆動ピニオンギヤ110の離反する方向へのスラスト荷重が、アイドルギヤ101に作用する反対方向へのスラスト荷重よりも大きくなるよう設定するのが好ましい。さらに、駆動ピニオンギヤ110の離反する方向へのスラスト荷重は、電磁装置9による吸引力よりも小さいのが好ましい。
駆動ピニオンギヤ110の内周面には、スプライン110aの後端側に、段差部110bを介して拡径された拡径部111が形成されており、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110との間に収納部112が形成されるようになっている。
収納部112において、アイドルギヤ101側に形成されている開口部は、アイドルシャフト102のスプライン108におけるアイドルギヤ101側の端部に拡径して設けられた段差部102eによって閉塞された状態になっている。
収納部112には、アイドルシャフト102の外周面を取り囲むように形成されたピニオンスプリング113が収納されている。ピニオンスプリング113は、例えばコイルスプリングからなる。
ピニオンスプリング113は、収納部112に収納された状態で、駆動ピニオンギヤ110の拡径部111の段差部110bと、アイドルシャフト102の段差部102eとにより圧縮変形されている。これにより駆動ピニオンギヤ110は、アイドルシャフト102に対してリングギヤ23側に向かって付勢された状態になる。
また、ピニオンスプリング113は、後述するように、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが当接したときに軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収する、いわゆるダンパ機構として機能している。これにより、駆動ピニオンギヤ110およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、スタータ1の耐久性向上を図っている。
(電磁装置)
図1に示すように、ハウジング17(ブラケット部171)の内周面には、クラッチ機構5よりもモータ部3側に、電磁装置9を構成するヨーク25が内嵌固定されている。ヨーク25は磁性材からなる有底筒状に形成されており、底部25aの径方向中央の大部分が大きく開口されている。
また、ヨーク25の底部25aとは反対側端には、磁性材からなる円環状のプランジャホルダ26が設けられている。プランジャホルダ26は、円環状のホルダ本体26aと、ホルダ本体26aの径方向内側から軸方向の他方に向かって屈曲延出されたプランジャホルダ側円筒部26bとが一体的に形成されている。これにより、後述するギヤプランジャ80の鉄心88との離間距離が狭くなるので、プランジャホルダ26による鉄心88の吸引力(以下、単に「吸引力」ということがある)を上げることができる。
ヨーク25、およびプランジャホルダ26によって径方向内側に形成される収納凹部25bには、略円筒状に形成された励磁コイル24が収納されている。すなわち、プランジャホルダ26のホルダ本体26aは、励磁コイル24の一方の側面を覆うように形成されており、プランジャホルダ側円筒部26bは、励磁コイル24の径方向内側に臨むように屈曲延出されている。
励磁コイル24は、ブラケット部171の外周面に設けられたコネクタ150を介し、不図示のイグニションスイッチに電気的に接続されている。
励磁コイル24の内周面とドライブシャフト4の外周面との間の空隙には、プランジャ機構37が励磁コイル24に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状のスイッチプランジャ27と、このスイッチプランジャ27とドライブシャフト4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80と、を有している。
図9は、スイッチプランジャの斜視図、図10は、スイッチプランジャの断面図、図11は、図10のA部拡大図である。
図9〜図11に示すように、スイッチプランジャ27は、磁性材からなる金属板材にプレス加工を施して形成されたものである。スイッチプランジャ27は、ヨーク25、およびプランジャホルダ26によって形成される収納凹部25bの径方向内側を閉塞するように設けられたスイッチプランジャ側円筒部121を有している。スイッチプランジャ側円筒部121の一方の開口部(図10における左側の開口部、クラッチ機構5側の開口部)122は、段差により拡径した拡径部122aとなっている。この拡径部122aは、プランジャホルダ26に生じる磁束が、プランジャホルダ側円筒部26bから、直接、スイッチプランジャ27側に漏れてしまうことを効果的に抑制するための逃げ部として機能する(詳細は後述する)。
なお、拡径部122aの内径は、後述のスイッチリターンスプリング27aがスイッチプランジャ側円筒部121の一方の開口部122側の端部を確実に押圧できる大きさに設定されている。すなわち、拡径部122aの内径を大きくしすぎてしまうと、スイッチプランジャ側円筒部121の一方の開口部122の肉厚が薄肉になりすぎてしまい、スイッチリターンスプリング27aがスイッチプランジャ側円筒部121の一方の開口部122側の端部を確実に押圧できなくなってしまう。
また、スイッチプランジャ側円筒部121の内周面には、拡径部122aの他方側(図10における右側、モータ部3側)に、凸条部122bが全周に亘って形成されている。これら拡径部122aと凸条部122bは、スイッチプランジャ側円筒部121の内周面において、一方の開口部122側から連続的に形成されている。
なお、拡径部122aと凸条部122bの形成方法としては、例えば、スイッチプランジャ側円筒部121の内周面に治具を装着した後、スイッチプランジャ側円筒部121の内径よりも直径が若干大きい円柱状の治具を、スイッチプランジャ側円筒部121の一方の開口部122側から突き当てる方法がある。これにより、拡径部122aが形成され、かつ拡径部122aを形成したことによるスイッチプランジャ側円筒部121の残肉を、凸条部122bとすることができる。
スイッチプランジャ側円筒部121の他方の開口部(図10における右側の開口部、モータ部3側の開口部)123には、外周側に張り出した外フランジ部29が一体成形されている。さらに、外フランジ部29の一側には、シャフトホルダ29aが延出形成されている。シャフトホルダ29aは、後述のスイッチシャフト30を保持するためのものであって、スイッチシャフト30の端部を受け入れ可能なようにU字状に形成されている。
また、スイッチプランジャ側円筒部121の内周面には、リング部材27rが一体的に設けられている。リング部材27rは、スイッチプランジャ27が一方(リングギヤ23側)に向かって移動する際、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧するためのものである。ギヤプランジャ80は、リング部材27rと当接、離反可能に設けられている。
さらに、スイッチプランジャ側円筒部121の一方の開口部122側の端部とプランジャホルダ26との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるスイッチリターンスプリング27aが設けられている。
図1に戻り、ギヤプランジャ80は、スイッチプランジャ27のスイッチプランジャ側円筒部121の径方向内側に、このスイッチプランジャ側円筒部121と同心円上に設けられている。ギヤプランジャ80は、径方向内側に配置されたプランジャインナ81と、径方向外側に配置されたプランジャアウタ85と、プランジャインナ81とプランジャアウタ85との間に配置されるプランジャスプリング91と、を備えている。
プランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャインナ81の内径は、ドライブシャフト4に外挿可能なように、ドライブシャフト4の外径よりも若干大きく形成されている。これにより、プランジャインナ81は、ドライブシャフト4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
プランジャインナ81の一方側端81a(図1における左側端)には、径方向外側に張り出した外フランジ部82が一体成形されている。後述するように、プランジャインナ81が一方にスライド移動したとき、プランジャインナ81の一方側端81aがクラッチアウタ18の他方側端と当接し、クラッチ機構5および伝達ピニオンギヤ70を一方に向かってスライド移動させている。
プランジャインナ81の他方側端81b(図1における右側端)には、他方から一方に向かって漸次外径が大きくなる爪部83が周方向に複数個所設けられている。また、爪部83の一方(図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。
プランジャアウタ85は、プランジャインナ81と同様に樹脂等により略円筒形状に形成されている。プランジャアウタ85の内径は、プランジャインナ81の外フランジ部82の外径よりも若干大きく形成されており、プランジャインナ81に外挿されている。
プランジャアウタ85の他方側端85a(図1における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体成形されている。内フランジ部86の内径は、プランジャインナ81の爪部83の外径よりも小さく、かつプランジャインナ81の溝部84の底部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、プランジャインナ81の溝部84内にプランジャアウタ85の内フランジ部86を配置することにより、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とが一体化され、プランジャ機構37が構成される。
プランジャアウタ85の内フランジ部86の肉厚は、プランジャインナ81の溝部84の幅よりも薄く形成されている。これにより、プランジャアウタ85の内フランジ部86とプランジャインナ81の溝部84との間には、クリアランスが形成される。したがって、プランジャインナ81とプランジャアウタ85とは、プランジャアウタ85の内フランジ部86とプランジャインナ81の溝部84とのクリアランス分だけ、軸方向に相対的にスライド移動可能となっている。
プランジャアウタ85の他方側端85a(図1における右側端)には、径方向外側に張り出した外フランジ部87が一体成形されている。外フランジ部87は、スイッチプランジャ27のリング部材27rと当接する当接部として機能している。
また、外フランジ部87の一方(図1における左側)で、プランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、プランジャアウタ85と一体成形されている。鉄心88は、後述するように励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により、所定の吸引力で電磁装置9に吸引される。
プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86との間には、収納部90が形成されている。収納部90には、プランジャインナ81の外周面を取り囲むように形成されたプランジャスプリング91が収納されている。
プランジャスプリング91は、収納部90に収納された状態で、プランジャインナ81の外フランジ部82と、プランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、プランジャインナ81は一方(図1における左側)に向かって、プランジャアウタ85は他方(図1における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
ここで、プランジャインナ81の一方側端81aとクラッチアウタ18の他方側端は、互いに当接していないので、クラッチアウタ18は、リターンスプリング21のばね荷重によって、ストッパ94に押し付けられた状態となっている。これにより、スタータ1の静止状態では、プランジャスプリング91のばね荷重によって、クラッチ機構5を押出さない、つまり、伝達ピニオンギヤ70を不用意に押出さないようにできる。
一方、スタータ1の通電状態では、ギヤプランジャ80が一方(図1における左側)に最大変位したとき、プランジャインナ81の一方側端81aは、常にクラッチ機構5のクラッチアウタ18の他方側端と当接した状態になる。すなわち、プランジャスプリング91は、クラッチ機構5とギヤプランジャ80との間における軸方向の空隙の発生を防止し、クラッチ機構5のガタつきを吸収するガタ吸収機構として機能している。
また、スイッチプランジャ27のシャフトホルダ29aには、スイッチシャフト30がホルダ部材30aを介して軸方向に沿って立設されている。このスイッチシャフト30は、モータ部3のトッププレート12および後述するブラシホルダ33を貫通している。スイッチシャフト30のトッププレート12から突出した端部には、ブラシ付直流モータ51のコンミテータ61に隣接配置された、スイッチユニット7の可動接点板8が連結されている。
可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられていると共に、スイッチスプリング32によって浮動的に支持されている。そして、可動接点板8は、後述のブラシホルダ33に固定されている、スイッチユニット7の固定接点板34に対して接近、離反可能になっている。
固定接点板34は、スイッチシャフト30を挟んでコンミテータ61側である径方向内側に配置された第一固定接点板34aと、コンミテータ61とは反対側である径方向外側に配置された第二固定接点板34bとに分割構成されている。これら第一固定接点板34a、および第二固定接点板34bに、可動接点板8が跨るように当接するようになっている。可動接点板8がドライブシャフト4に沿ってストロークし、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bに当接することにより、第一固定接点板34aおよび第二固定接点板34bがON状態となって電気的に接続される。
ここで、クラッチ機構5のクラッチアウタ18は、リターンスプリング21によりプランジャインナ81へ向かって付勢されている。したがって、スタータ1の静止状態において、クラッチ機構5は、ギヤプランジャ80およびリング部材27rを介して、スイッチプランジャ27を他方(図1における右側)に押圧している。これにより、可動接点板8は他方に押圧されて、固定接点板34と離反したOFF状態となっている。
一方、電磁装置9が伝達ピニオンギヤ70と可動接点板8とを一方(図1における左側)にスライド移動させると、可動接点板8がON状態となると共に、伝達ピニオンギヤ70がリングギヤ23に当接する。
電磁装置9および遊星歯車機構2よりも他方(図1における右側)には、ブラシホルダ33が設けられている。ここで、第二固定接点板34bの外周側には、軸方向に折曲して一体形成された切起し部34cが設けられ、この切起し部34cの挿通孔を介して軸端子44aがブラシホルダ33の外壁33aを貫通してスタータ1の径方向外側に突出するよう設けられている。さらに、軸端子44aの突出側の先端には、バッテリの陽極が電気的に接続されるターミナルナット44bが設けられている。
なお、このブラシホルダ33には、固定接点板34、スイッチシャフト30周りを保護するカバー45が装着されている。ブラシホルダ33およびカバー45は、モータヨーク53およびブラケット部171に挟持された状態で固定されている。
ブラシホルダ33には、コンミテータ61の周囲に4個のブラシ41が、径方向に沿って進退可能に配置されている。各ブラシ41の基端側には、ブラシスプリング42が設けられている。このブラシスプリング42によって、各ブラシ41がコンミテータ61側に向かって付勢され、各ブラシ41の先端がコンミテータ61のセグメント62に摺接するようになっている。
4個のブラシ41は、2個の陽極側ブラシと2個の陰極側ブラシとで構成され、このうち2個の陽極側ブラシが不図示のピグテールを介して固定接点板34の第一固定接点板34aに接続されている。一方、固定接点板34の第二固定接点板34bには、ターミナルナット44bを介して不図示のバッテリの陽極が電気的に接続される。
すなわち、固定接点板34に可動接点板8が当接した際、ターミナルナット44b、固定接点板34およびピグテール(不図示)を介して4個のブラシ41のうちの2個の陽極側ブラシに電圧が印加され、コイル59に電流が供給されるようになっている。
また、4個のブラシ41のうち、2個の陰極側ブラシは、不図示のピグテールを介してリング状のセンタープレートに接続されている。そして、このセンタープレート、ハウジング17、および不図示の車体を介して、バッテリの陰極に4個のブラシ41のうちの2個の陰極側ブラシが電気的に接続されるようになっている。
(スタータの組み付け方法)
次に、図12に基づいて、スタータ1の組み付け方法について説明する。
図12は、スタータの組み付け手順を示す説明図であって、(a)〜(d)は、各工程を示す。
まず、図12(a)に示すように、予めブラケット部171に電磁装置9を組み付け(電磁装置組み付け工程)、さらに、ブラケット部171内に電磁装置9を組み込んだ状態で、ブラケット部171にモータ部3を組み付けてサブユニットとしておく。
ここで、ブラケット部171の内壁には、電磁装置9(ストッパ94)よりも一方の開口部171a寄りに段差により縮径形成された縮径部171dが設けられている。この縮径部171dがブラケット部171におけるギヤカバー172側の一方の開口部171aから電磁装置9が抜け出てしまうことを規制するので、ブラケット部171から電磁装置9が抜け出てしまうことがないサブユニットとすることができる。
また、ギヤカバー172の軸受凹部47に設けられている滑り軸受178に、クラッチ機構5が組み付けられたドライブシャフト4の一方側端を挿入する。また、ギヤカバー172のシャフト貫通孔179に設けられているボールベアリング180に、アイドルシャフト102の一方側端を挿入する(予備組み付け工程)。このとき、伝達ピニオンギヤ70とアイドルギヤ101とのギヤ同士の噛み合わせ作業は、視認性もよく容易に行うことができる。
そして、アイドルシャフト102の一方の端部102aに駆動ピニオンギヤ110を組み付ける。これにより、ドライブシャフト4およびアイドルシャフト102は、一方側端がギヤカバー172に支持された状態になる。
この状態で、予め電磁装置9とモータ部3とサブユニットとされたブラケット部171の当接面171eとギヤカバー172の当接面172sとを重ね合わせるように、ギヤカバー172に向かってブラケット部171を移動させる(図12(a)における矢印参照)。
このとき、図12(b)に示すように、まず、ブラケット部171のシャフト孔174に設けられている滑り軸受103にアイドルシャフト102の他方の端部102bを挿入する(図12(b)におけるS1部参照)。この時点では、ドライブシャフト4の他方側端部4dに形成されている凹部4aに、モータ部3の回転軸52が挿入されない。
さらに、ブラケット部171とギヤカバー172とを互いに接近する方向に移動させると、図12(c)に示すように、トッププレート12の内周面に設けられている滑り軸受12aにドライブシャフト4の他方側端部4dが挿入される。さらに、ブラケット部171のピン挿通孔166にギヤカバー172の位置決めピン184が挿入される(図12(c)におけるS2部参照)。
この時点で、ブラケット部171とギヤカバー172との周方向(ドライブシャフト4の回転方向)の位置が2点(滑り軸受103およびアイドルシャフト102による点、ピン挿通孔166および位置決めピン184による点)決まることになる。このため、ブラケット部171とギヤカバー172との周方向の相対位置が決定する。
ここで、アイドルシャフト102の他方の端部102bの軸径と、ブラケット部171の滑り軸受103の内径は、それぞれ他方の端部102bと滑り軸受103との間に多少のガタ(隙間)が生じる程度の大きさに設定されている。このため、ピン挿通孔166、位置決めピン184、シャフト孔174等にそれぞれ製造誤差が生じても、この製造誤差を、アイドルシャフト102の他方の端部102bと滑り軸受103との間のガタで吸収できるようになっている。
また、ブラケット部171のピン挿通孔166にギヤカバー172の位置決めピン184が挿入される時点では、ドライブシャフト4の他端側端部4dが滑り軸受12aに挿入されているが、キャリアプレート16の係合孔16bとドライブシャフト4のセレーション部4eとは係合していない。
一方、ドライブシャフト4の軸長と、回転軸52の軸長は、ブラケット部171の滑り軸受103にアイドルシャフト102の他方の端部102bが挿入されるよりも先に、ドライブシャフト4の他方側端部4dが滑り軸受12aに挿入されない長さに設定されている。
さらに、キャリアプレート16の係合孔16bとドライブシャフト4の他方側端部4dのセレーション部4eとの嵌合代は、ブラケット部171のシャフト孔174に対するアイドルシャフト102の他方の端部102bの挿入代よりも短く設定されている。また、回転軸52とドライブシャフト4との嵌合代は、ブラケット部171のピン挿通孔166に対するギヤカバー172の位置決めピン184の挿入代よりも短く設定されている。
続いて、さらにブラケット部171とギヤカバー172とを互いに接近する方向に移動させると、図12(d)に示すように、ドライブシャフト4の他方側端部4dのセレーション部4eに、モータ部3のキャリアプレート16の係合孔16bが係合され、両者が噛合う(図12(d)におけるS3部参照)。
このように、スタータ1の組み立て時に目暗状態となって外部から視認しにくいドライブシャフト4の凹部4aとモータ部3の回転軸52との連結は、ブラケット部171とギヤカバー172との周方向の相対位置が決定した後に行われる。
また、ドライブシャフト4の他方側端部4dのセレーション部4eとモータ部3のキャリアプレート16の係合孔16bとが嵌合されるのとほぼ同時に、ブラケット部171の一方の開口部171aに、ギヤカバー172のインロー部173cがインロー嵌合される。
続いて、ブラケット部171の当接面171eとギヤカバー172の当接面172sとが重ね合わされた後、ボルト177a,177b(図2参照)を用いて両者を締結固定する(ブラケット部組み付け工程)。これにより、スタータ1の組み付けが完了する。
(スタータの動作)
次に、スタータ1の動作について説明する。
図1に示すように、励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態にあっては、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、伝達ピニオンギヤ70と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態で、モータ部3側(図1における右側)へ一杯に付勢されている。そして、クラッチ機構5のクラッチアウタ18がストッパ94に当接した位置で停止している。これに伴い、伝達ピニオンギヤ70に噛み合ったアイドルギヤ101を有するアイドルギヤユニット100は、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが離反した状態で結合が断たれている。
また、スイッチプランジャ27は、スイッチリターンスプリング27aにより押し戻され、モータ部3側(図1における右側)へ一杯に移動している。そして、スイッチプランジャ27の外フランジ部29がトッププレート12に当接した状態で停止している。さらに、外フランジ部29に立設されているスイッチシャフト30の可動接点板8は、固定接点板34に対して離間しており、電気的に切断されている。
この状態から車両のイグニションスイッチ(不図示)をオンすると、励磁コイル24に電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80を磁束が通る磁路が形成される。これにより、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側に向かってスライド移動する。
このとき、スイッチプランジャ27の内周面にリング部材27rが一体的に設けられていることから、このリング部材27rがギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧することで、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80とが一体となってリングギヤ23側に向かってスライド移動する。
また、クラッチアウタ18は、ドライブシャフト4にヘリカルスプライン噛合されており、スリーブ18aがギヤプランジャ80のプランジャインナ81と当接している。したがって、クラッチアウタ18は、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へスライド移動すると、ドライブシャフト4に対して、ヘリカルスプライン18bの傾斜角度分、若干相対回転しながら押出される。さらに、伝達ピニオンギヤ70とアイドルギヤユニット100も、クラッチ機構5を介してギヤプランジャ80のスライド移動に連動し、リングギヤ23側に向かって押出される。
さらに、スイッチプランジャ27がリングギヤ23側へ移動すると、外フランジ部29、およびスイッチシャフト30を介して可動接点板8が固定接点板34側に向かって移動し、固定接点板34に接触する。可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向変位可能に浮動支持されているので、スイッチスプリング32の押圧力が可動接点板8および固定接点板34に加わることになる。
固定接点板34に可動接点板8が接触すると、4個のブラシ41のうちの2個の陽極側ブラシにバッテリ(不図示)の電圧が印加され、コンミテータ61のセグメント62を介してコイル59が通電される。
すると、アーマチュアコア58に磁界が発生し、この磁界とモータヨーク53に設けられている永久磁石57との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、アーマチュア54が回転し始める。そして、アーマチュア54が回転することにより、このアーマチュア54の回転軸52の回転力(モータ部3の回転力)が遊星歯車機構2を介してドライブシャフト4に伝達され、ドライブシャフト4が回転し始める。
ドライブシャフト4が回転することにより、ドライブシャフト4のヘリカルスプライン19に噛合うクラッチアウタ18が連れ回り、クラッチ機構5に慣性力が作用する。そして、慣性力によってクラッチ機構5がヘリカルスプライン19に沿うようにリングギヤ23側へ向かって押し出される。ここで、ギヤプランジャ28には、リングギヤ23側へ向かう力が作用しているので、クラッチ機構5の移動に伴ってギヤプランジャ28もリングギヤ23側へ向かって移動する。
クラッチ機構5がリングギヤ23側へ向かって押し出されることにより、クラッチ機構5と一体化している伝達ピニオンギヤ70に連動してアイドルギヤ101がリングギヤ23側へと回転しながら押し出される。すると、アイドルシャフト102の端部102bに設けられた駆動ピニオンギヤ110も、アイドルギヤ101と一体に、リングギヤ23側へと回転しながら押し出される。
駆動ピニオンギヤ110が回転し始めると、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fとリングギヤ23の他方側端面23aとが当接していた場合には、その当接状態が解除され、各ギヤ同士が噛合される。そして、ピニオンスプリング113の付勢力により、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23側に押出され、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが噛合し始める。
このとき、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fとリングギヤ23の他方側端面23aとは、互いに当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となっている。このため、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fとリングギヤ23の他方側端面23aとが互いに当接していた場合には、駆動ピニオンギヤ110がさらに押出されると、ピニオンスプリング113が縮む。これにより、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fは、リングギヤ23の他方側端面23aに向かって付勢される。
すなわち、ピニオンスプリング113は、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが当接したときのスラスト荷重を吸収するダンパ機構を構成している。したがって、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fとリングギヤ23の他方側端面23aとが互いに当接していた状態であっても、スイッチプランジャ27を所定の位置にまで押出すことができると共に、駆動ピニオンギヤ110の一方側端面110fおよびリングギヤ23の他方側端面23aの摩耗を抑制でき、スタータ1の耐久性向上を図ることができる。
このとき、前述のように、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とがヘリカル噛合していることから、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23方向(飛び込み方向)へのスラスト荷重が発生する。そして、このスラスト荷重によって駆動ピニオンギヤ110はリングギヤ23側に向かって移動する。また、クラッチアウタ18も、慣性力によってヘリカルスプライン19に沿うように、リターンスプリング21の付勢力に抗してリングギヤ23側に向かって押し出される。
このとき、ギヤプランジャ80には、リングギヤ23側へ向かう所定の吸引力が作用している。したがって、ギヤプランジャ80は、クラッチアウタ18のスライド移動に連動するように、クラッチアウタ18を押圧しつつリングギヤ23側へ向かってスライド移動する。このようにして、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23側に押し出され、リングギヤ23が所定の噛み合い位置で噛合する。
このようにしてリングギヤ23と駆動ピニオンギヤ110が噛合い、ドライブシャフト4の回転力がリングギヤ23に伝達されることによって、エンジンが始動する。
図13は、スイッチプランジャおよびギヤプランジャが、完全にリングギヤ側に向かってスライド移動した際の状態を示し、かつこの状態のときのスイッチプランジャおよびギヤプランジャ周りの磁束の発生状態を示す説明図である。
同図に示すように、スイッチプランジャ27が完全にリングギヤ23側に向かってスライド移動したとき、ヨーク25の底部25aに、スイッチプランジャ27の外フランジ部29が当接した状態になる。また、プランジャホルダ側円筒部26bにギヤプランジャ80の鉄心88が当接した状態になる。
この状態では、ヨーク25、プランジャホルダ26およびスイッチプランジャ27を通る磁束が形成されている。そして、ギヤプランジャ80の鉄心88は、プランジャホルダ側円筒部26b、およびスイッチプランジャ側円筒部121に形成されている凸条部122bに磁気的に吸引され、その場に保持された状態になっている。
ここで、スイッチプランジャ側円筒部121には、一方の開口部122に拡径部122aが形成されているので、この拡径部122aとプランジャホルダ側円筒部26bとの間の間隔が広くなっている。このため、プランジャホルダ側円筒部26bからスイッチプランジャ27への磁束漏れを防止できる。
また、スイッチプランジャ27の凸条部122bとギヤプランジャ80の鉄心88との間の間隔は、凸条部122bが形成されていない場合と比較して狭くなっている。このため、凸条部122bと鉄心88との間の磁束密度を高くできる。
よって、プランジャホルダ26のプランジャホルダ側円筒部26bおよびスイッチプランジャ27の凸条部122bにより、ギヤプランジャ80の鉄心88の位置を確実に保持できる。
ここで、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とはヘリカル噛合しているため、ドライブシャフト4の回転力を駆動ピニオンギヤ110からリングギヤ23に伝達すると、駆動ピニオンギヤ110には一方(図1における左側)に向かってスラスト荷重が発生する。駆動ピニオンギヤ110に発生したスラスト荷重は、駆動ピニオンギヤ110の一方に設けられた止め輪106に伝達された後、アイドルシャフト102、アイドルギヤ101、伝達ピニオンギヤ70、クラッチインナ22、クラッチアウタ18および移動規制部20、サークリップ20aを介して、ドライブシャフト4に伝達される。このため、ドライブシャフト4には一方に向かってスラスト荷重が発生し、一方に向かってスライド移動する。
しかし、ハウジング17のギヤカバー172には、荷重受部材50が設けられている。これにより、ドライブシャフト4は、一方側端面4cが荷重受部材50に当接し、ドライブシャフト4の一方へのスライド移動が規制される。このように、荷重受部材50によって、ドライブシャフト4に加わるスラスト荷重を効果的に受けることができる。
一方、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23との噛合後、エンジン始動時におけるクランキングの際には、リングギヤ23の回転速度に変動が生じる。これにより、駆動ピニオンギヤ110には一方(図1における左側)および他方(図1における右側)に向かってスラスト荷重が発生する。
具体的には、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも遅いとき、駆動ピニオンギヤ110には、リングギヤ23に接近する方向(図1における左側)にスラスト荷重が発生する。
一方、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも速いとき、駆動ピニオンギヤ110には、リングギヤ23から離反する方向(図4における右側)にスラスト荷重が発生する。
特に、アイドルストップ機能を備えた車両においては、エンジンの停止/始動が頻繁に行われ、一般のスタータよりも使用頻度が高まるため、上述のようなスラスト荷重が頻繁に発生する。
しかしながら、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも速いときには、駆動ピニオンギヤ110にはリングギヤ23から離反する方向(図4における右側)にスラスト荷重が発生するが、この場合、アイドルギヤ101と伝達ピニオンギヤ70とのヘリカル噛合部から、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23から作用するスラスト荷重とは反対方向のスラスト荷重が作用する。
すなわち、アイドルギヤ101の歯のねじれ方向は、駆動ピニオンギヤ110の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている一方、伝達ピニオンギヤ70の歯のねじれ方向は、リングギヤ23の歯のねじれ方向と同じ方向に設定されている。このような状態において、リングギヤ23の回転速度が駆動ピニオンギヤ110の回転速度よりも速い場合に対し、アイドルギヤ101の回転速度が伝達ピニオンギヤ70の回転速度よりも速い状態になる。このため、駆動ピニオンギヤ110に作用する、リングギヤ23から離反する方向のスラスト荷重を相殺することができる。
したがって、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23から離反する方向にスラスト荷重が発生しても、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とのヘリカル噛合が解除されることなく、適切な安定したヘリカル噛合状態を維持できる。
これに加え、スイッチプランジャ側円筒部121には、一方の開口部122に拡径部122aが形成されていると共に、凸条部122bが形成されている。このため、プランジャホルダ側円筒部26bおよびスイッチプランジャ27の凸条部122bにより、ギヤプランジャ80の鉄心88の位置が確実に保持されている。
したがって、例え、駆動ピニオンギヤ110にリングギヤ23から離反する方向にかかるスラスト荷重によって、アイドルシャフト102(アイドルギヤ101)のイナーシャが大きくなり、そのスラスト荷重がアイドルギヤ101と伝達ピニオンギヤ70により相殺できない場合であっても、ギヤプランジャ80の位置が保持されているので、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とのヘリカル噛合が解除されることがない。このため、適切な安定したヘリカル噛合状態を維持できる。
また、駆動ピニオンギヤ110に発生したスラスト荷重は、駆動ピニオンギヤ110の一方に設けられた止め輪106に伝達された後、アイドルシャフト102、クラッチインナ22、クラッチワッシャ64を介してクラッチカバー6の底壁66に伝達される。しかし、底壁66には補強筒部67が一体成形されているので、クラッチカバー6の軸方向への変形が抑制される。
エンジンが完全に始動し、駆動ピニオンギヤ110の回転速度がドライブシャフト4の回転速度を上回ると、クラッチ機構5のワンウェイクラッチ機能が作用して駆動ピニオンギヤ110が空転する。また、エンジンが始動に伴って励磁コイル24への通電を停止すると、クラッチアウタ18に対するリターンスプリング21の付勢力により、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23から離脱すると共に、可動接点板8が固定接点板34から離反してブラシ付直流モータ51が停止する。
(効果)
このように、上述の第1実施形態では、トッププレート12(遊星歯車機構2)、電磁装置9、クラッチ機構5、アイドルギヤユニット100等を収納するハウジング17を、ブラケット部171と、ギヤカバー172とに分割構成している。そして、ブラケット部171に、アイドルシャフト102の他方の端部102bを回転自在に支持するためのシャフト孔174を形成している。また、ギヤカバー172に、ドライブシャフト4の一方の端部(図1における左側の端部)を回転自在に支持するための軸受凹部47を形成すると共に、アイドルシャフト102の一方側(図1における左側)を回転自在に支持するためのシャフト貫通孔179を形成している。また、ブラケット部171とギヤカバー172とは別にモータ部3を設けている。このため、ブラケット部171とギヤカバー172との2つの部材を用いてドライブシャフト4およびアイドルシャフト102を組み付けることができる。
しかも、ギヤカバー172のピニオンギヤ収容凹部173aの開口部周縁に、ブラケット部171の一方の開口部171aにインロー嵌合するインロー部173cが突設されている。また、ギヤカバー172の当接面172sに、ブラケット部171のピン挿通孔166に挿入される位置決めピン184が圧入固定されている。このため、ドライブシャフト4およびアイドルシャフト102を組み付けるにあたって、ブラケット部171とギヤカバー172との位置決めを精度よく行うことができる。この結果、ドライブシャフト4とアイドルシャフト102との位置決めや伝達ピニオンギヤ70とアイドルギヤ101とのギヤ同士の噛み合わせを容易に行うことができ、スタータ1の組み立て作業を容易化できる。
また、ギヤカバー172の当接面172s上において、位置決めピン184は、インロー部173cとは、アイドルギヤ101(アイドルシャフト102)を挟んで反対側に配置された状態になっている。このため、インロー部173cと位置決めピン184とを、互いにできる限り離間して配置することができる。ギヤカバー172とブラケット部171とを位置決めする2点(インロー部173cと位置決めピン184)ができる限り離間することにより、その2点が近接配置されている場合と比較してより高精度にギヤカバー172とブラケット部171とを位置決めできる。つまり、ブラケット部171とギヤカバー172との周方向(ドライブシャフト4の回転方向)のズレを可能な限り抑制することができる。
また、キャリアプレート16の係合孔16bとドライブシャフト4の他方側端部4dのセレーション部4eとの嵌合代は、ブラケット部171のシャフト孔174に対するアイドルシャフト102の他方の端部102bの挿入代よりも短く設定されている。さらに、キャリアプレート16の係合孔16bとドライブシャフト4の他方側端部4dのセレーション部4eとの嵌合代は、ブラケット部171のピン挿通孔166に対するギヤカバー172の位置決めピン184の挿入代よりも短く設定されている。
このため、外部から視認しにくいドライブシャフト4の凹部4aとモータ部3の回転軸52との連結を、ブラケット部171とギヤカバー172との周方向の相対位置が決定した後に行うことができる。よって、スタータ1の組み立て作業をさらに容易化できる。
さらに、アイドルシャフト102の他方の端部102bの軸径と、ブラケット部171の滑り軸受103の内径は、それぞれ他方の端部102bと滑り軸受103との間に多少のガタ(隙間)が生じる程度の大きさに設定されている。このため、ピン挿通孔166、位置決めピン184、シャフト孔174等にそれぞれ製造誤差が生じているうえで、ブラケット部171とギヤカバー172との位置決めを行った場合であっても、その製造誤差をアイドルシャフト102の他方の端部102bと滑り軸受103との間のガタで吸収でき無理な抉り力が作用してしまうことを防止できる。
そして、スタータ1の組み付け方法として、予めブラケット部171に電磁装置9を組み付け(電磁装置組み付け工程)、さらに、ギヤカバー172にドライブシャフト4およびアイドルシャフト102を組み付け(予備組み付け工程)、その後、ブラケット部171とギヤカバー172とを組み付ける(ブラケット部組み付け工程)方法としている。このため、スタータ1の組み立て作業を容易化できる。
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を図14、図15に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図14は、ブラケット部のシャフト孔およびアイドルシャフトの他方の端部(図1における右側の端部)を一方側(図1における左側)からみた拡大斜視図、図15は、図14の断面図である。なお、図15において、アイドルシャフト102の中心軸より下側にスタータ1の静止状態(アイドルシャフト102が後退した状態)を示し、上側にスタータ1の通電状態(アイドルシャフト102が前進し、駆動ピニオンギヤ(駆動ギヤ)110と不図示のエンジンのリングギヤ23とが噛合された状態)を示している。
図14、図15に示すように、第2実施形態のブラケット部171には、シャフト孔174の内周面にエア抜スリット176が形成されている。エア抜スリット176は、シャフト孔174の開口部174aから底部174bに向かって延出形成されている。エア抜スリット176の長さL1は、シャフト孔174に設けられている滑り軸受103の長さL2よりもやや長くなるように設定されている。
このため、エア抜スリット176とシャフト孔174の滑り軸受103よりも底部174b側とが連通した状態になる。換言すれば、シャフト孔174の空隙部k1は、エア抜スリット176を介してブラケット部171の外部(収容凹部173)と連通している。よって、アイドルシャフト102がスライド移動することにより空隙部K1の容積が変化した場合(空隙部K1の容積が小さくなるように変化した場合)であっても、ポンピング作用により空隙部K1からグリスが流出してしまうことを確実に防止できる。
また、エア抜スリット176は、アイドルシャフト102にかかる荷重F1の方向とは、アイドルシャフト102の回転中心を挟んでほぼ反対側に形成されている。このため、エア抜スリット176を形成することによって滑り軸受103の機能が阻害されてしまうことを防止できる。
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の第2実施形態では、エア抜スリット176は、アイドルシャフト102にかかる荷重F1の方向とは、アイドルシャフト102の回転中心を挟んでほぼ反対側に形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、エア抜スリット176は、アイドルシャフト102にかかる荷重F1の方向とは異なる箇所に形成されていればよい。
また、上述の実施形態では、ドライブシャフト4にヘリカルスプライン19を形成し、クラッチアウタ18にヘリカルスプライン18bを形成して、クラッチ機構5をドライブシャフト4にスプライン噛合することにより、クラッチ機構5をドライブシャフト4に対して軸方向にスライド移動可能としている場合について説明した。このときの、ドライブシャフト4のヘリカルスプライン19およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの傾斜角度は、スイッチプランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側へスライド移動し始めたとき、クラッチアウタ18がドライブシャフト4に対して若干相対回転しながら押出されるように設定されていればよい。
そして、上述の実施形態では、アイドルシャフト102の先端側に、スプライン108が形成されている一方、駆動ピニオンギヤ110の内周面の先端側に、スプライン108に噛合うスプライン110aが形成されていた。これにより、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110とは、互いに相対回転不能かつ軸方向にスライド移動可能に設けられていた。
しかしながら、上述のように、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110とをスプライン噛合によりスライド移動可能に形成する場合に限られない。例えば、アイドルシャフト102にキーを設ける一方、駆動ピニオンギヤ110にキー溝を設け、アイドルシャフト102と駆動ピニオンギヤ110とをスライド移動可能に形成してもよい。
また、電磁装置9が駆動ピニオンギヤ110と可動接点板8とを一方側(図1における左側)にスライド移動させたときに、可動接点板8がON状態となる前に、駆動ピニオンギヤ110がリングギヤ23に当接するようにしてもよい。
さらに、上述の実施形態では、ギヤカバー172には、ブラケット部171との位置決めを行うための位置決めピン184を一箇所圧入固定されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ギヤカバー172またはブラケット部171の何れか一方に位置決めピン184が設けられていればよく、また、位置決めピン184を圧入固定とせずにギヤカバー172またはブラケット部171に一体成形してもよい。さらに、位置決めピン184を複数個所設けてもよい。
位置決めピン184を複数個所設ける場合、ギヤカバー172にインロー部173cを設けない構成としてもよい。
そして、上述の実施形態では、ギヤカバー172の収容凹部173のうち、ピニオンギヤ収容凹部173aの開口部周縁に、インロー部173cを設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、収容凹部173のうち、アイドルギヤ収容凹部173bの開口部周縁に、ブラケット部171の一方の開口部171aにインロー嵌合するインロー部173cを設けてもよい。この場合、ギヤカバー172の位置決めピン184の位置を、ピニオンギヤ収容凹部173aの開口部周縁のうち、アイドルギヤ収容凹部173bとは反対側に位置する箇所の近傍に配置することが望ましい。このように配置することにより、インロー部173cと位置決めピン184とをできる限り離間して配置することができる。
さらに、上述の実施形態においては、第2の位置決め手段を、位置決めピン184とピン挿通孔166とにより構成した例を示した。しかしながら、これに限られるものではなく、第2の位置決め手段として、アイドルギヤ収容凹部173bの開口部周縁にブラケット部171の開口部171aにインロー嵌合するアイドルギヤ収容凹部側インロー部としてもよい。さらに、第1の位置決め手段の一方のインロー部173cと上記アイドルギヤ収容凹部側インロー部を連続するように略8の字形状に形成してもよい。この場合、ギヤカバー172に位置決めピン184を設けない構成としてもよい。
また、上述の実施形態では、自動車の始動用に用いられるスタータ1を例に挙げて説明をしているが、スタータ1の適用は自動車に限定されることはなく、例えば自動二輪車、エンジン式発電機等に適用してもよい。
さらに、上述の実施形態のスタータ1は、上述のように、駆動ピニオンギヤ110とリングギヤ23とが安定してヘリカル噛合できる。したがって、スタータ1が適用される自動車の中でも、特にスタータ1の使用頻度の高いアイドリングストップ機能を備えた自動車に好適である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。