JP5587235B2 - ポリマーペレットの気力輸送方法およびポリマーペレットの貯蔵方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリマーペレットの輸送方法、ポリマーペレットの気力輸送方法およびポリマーペレットの貯蔵方法に関する。
ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド等のポリマーは、通常、所定の製造装置において重縮合反応等が行われた後に溶融状態でストランド状に押し出され、冷却水により冷却された後、カッター等によりペレット形状に成形され、製品となる。この場合、ペレット形状のポリマー(以下、「ポリマーペレット」と言う。)は、所定の乾燥手段によって表面や内部に吸着した水分が除去され、その後、所定の輸送配管内を圧力気体流に乗って気力輸送され、検査や出荷等のため貯槽サイロ等の貯蔵容器に一旦貯蔵される。
ポリマーペレットを乾燥する方法については、例えば、特許文献1に、樹脂成形材料のペレットを貯蔵カプセルに供給し、真空処理して脱気乾燥する方法が記載されている。
特開平6−134764号公報
一般に、吸湿性のポリマーペレットは、ポリマーペレットを気力輸送する際に使用する圧縮空気やポリマーペレットを貯蔵する貯蔵容器中の気体に水分が含まれていると、気体に含まれている水分を吸湿する。この場合、例えば、ポリエステル等の樹脂は、吸湿した水分により加水分解を生じるおそれがあるため、乾燥等の後処理によって吸湿した水分を除去する必要が生じる。
しかし、このような後処理を行う方法は設備が過大になるばかりか、省エネルギーの観点からも問題がある。
また、ポリマーペレットは溶融状態から持ち越した顕熱を有している。このため、溶融状態のストランドが冷却水により冷却されペレット形状に成形される際にポリマーペレットの表面に付着した水は、ポリマーペレットが気力輸送される工程で、この顕熱により気力輸送に使用する気体中に水蒸気となって蒸発する。
気力輸送されるポリマーペレットの温度が高い場合、気体中に蒸発した水蒸気が、再びポリマーペレットの表面に付着したり内部に拡散する可能性は低い。しかし、ポリマーペレットが、気力輸送中や気力輸送で運ばれた貯蔵容器中等で冷却されると、水分が再びポリマーペレットに吸着し、最終的にはペレット内部に取り込まれる可能性がある。特に、吸湿性のポリマーペレットを気力輸送する場合、このような現象が起きやすい。このため、ポリマーの種類によって、ポリマーの加水分解や成形時のトラブル等を生じるおそれがある。
ところで、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合反応させて得られる芳香族ポリカーボネートは、耐衝撃性や透明性に優れることから、光学材料等の用途に広く用いられている。なかでも、分子量が比較的低い芳香族ポリカーボネートは、耐熱性及び流動性が要求される溶融成形に適し、特に、光ディスク等の光学用記録材料として有用である。
このような分子量が比較的低い芳香族ポリカーボネートは、ポリマーペレットの表面や内部に吸着した水が原因となる加水分解が生じると、芳香族ポリカーボネートを使用して得られる成形体の機械的強度が大幅に低下する傾向があり、高品質な光ディスク等が得られないという問題がある。
また、ポリマーペレットに水が付着したまま、例えば、350℃程度の高温で溶融成形加工が行われると、ディスク等の成形体の表面にシルバーストリーク等の表面欠陥が生じ、光学用記録材料としては致命的な品質トラブルを招くという問題がある。
本発明は、従来の技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、吸湿性のポリマーペレットを気力輸送する際に、ポリマーペレットの含水率を増大させることなく簡便な手段で輸送することができるポリマーペレットの輸送方法を提供することにある。
尚、吸湿性のポリマーペレットとは、平衡含水率が0.1重量%以上であるポリマーのペレットを言う。また、平衡含水率とは、温度30℃、湿度70%の状態で吸湿と放湿が見かけ上平衡に達したときの含水率である。
かくして、下記[1]〜[11]に係る発明が提供される。
[1]請求項1に係る発明は、露点が0℃以下の気体を使用し、吸湿性のペレット形状のポリカーボネートを気力輸送することを特徴とするポリマーペレットの輸送方法である。
[2]請求項2に係る発明は、前記ペレット形状のポリカーボネートは、粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000のポリカーボネートのペレットであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの輸送方法である。
[3]請求項3に係る発明は、前記ペレット形状のポリカーボネートは、原料としてジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、溶融重縮合反応を行うことにより得られるポリカーボネートのペレットであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの輸送方法である。
[4]請求項4に係る発明は、前記気体は、空気であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの輸送方法である。
[5]請求項5に係る発明は、露点が0℃以下の気体により気力輸送されたポリマーペレットの含水率が、0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの輸送方法である。
[6]請求項6に係る発明は、ペレット形状のポリカーボネートを圧力気体流と共に輸送配管を介し気力輸送するポリマーペレットの気力輸送方法であって、ペレット形状のポリカーボネートの気力輸送に用いる気体に含まれる水分量を低減し当該気体の露点を0℃以下に調整する気体除湿工程と、前記気体除湿工程において露点が0℃以下に調整された気体を圧縮する気体圧縮工程と、前記気体圧縮工程において圧縮された圧力気体をペレット形状のポリカーボネート1トン当たり50Nm/時間〜600Nm/時間で輸送配管内に供給する圧力気体供給工程と、前記圧力気体供給工程において輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状のポリカーボネートを当該輸送配管を介し気力輸送する輸送工程と、を有することを特徴とするポリマーペレットの気力輸送方法である。
[7]請求項7に係る発明は、前記気体除湿工程において、ペレット形状のポリカーボネートの気力輸送に用いる気体の露点を−10℃以下に調整することを特徴とする請求項6に記載のポリマーペレットの気力輸送方法である。
[8]請求項8に係る発明は、前記輸送工程において、前記輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状のポリカーボネートを予め露点が0℃以下の気体が充填された貯蔵設備に気力輸送することを特徴とする請求項6又は7に記載のポリマーペレットの気力輸送方法である。
[9]請求項9に係る発明は、前記ペレット形状のポリカーボネートは、粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000の芳香族ポリカーボネートのペレットであって、当該ペレットはリン原子を重量換算で0.5ppm〜10ppmの範囲で含むことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のポリマーペレットの気力輸送方法である。
[10]請求項10に係る発明は、貯蔵容器中に露点が0℃以下の気体を充填し、当該貯蔵容器に吸湿性のペレット形状のポリカーボネートを貯蔵することを特徴とするポリマーペレットの貯蔵方法である。
[11]請求項11に係る発明は、前記貯蔵容器中に貯蔵されたペレット形状のポリカーボネートの含水率が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項10に記載のポリマーペレットの貯蔵方法である。
本発明によれば、ポリマーペレットが吸湿性を有する場合においても、簡便な手段で吸湿することなくポリマーペレットを気力輸送し貯蔵することができる。
芳香族ポリカーボネートの製造装置の一例を示す図である。 本実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法および貯蔵方法の一例を説明する図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本発明の実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
ここでは、ポリマーとしてポリカーボネートを例示し、本実施の形態を説明する。
ポリカーボネートは、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性等にも優れたエンジニアリングプラスチックスであるので、近年、OA部品、自動車部品、建築材料等に幅広く用いられている。
従来、ポリカーボネートの製造方法としては、ビスフェノール化合物等の芳香族ジヒドロキシ化合物と塩化カルボニル(ホスゲン)とを原料とした、いわゆる界面法と、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換し、副生するフェノール等の低分子量物を系外に取り除きながら芳香族ポリカーボネートを得る、いわゆる溶融法が知られている。前者の界面法は、ジクロロメタン等の環境負荷の大きな溶媒を用いること、又排水処理の負荷が高いこと等から、近年は後者の溶融法が注目を集めている。
ここで、溶融法によりポリカーボネートを製造する場合は、好ましいジヒドロキシ化合物である芳香族ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常、「ビスフェノールA」と呼ばれる。)等が、また炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネート等が、またエステル交換触媒としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性化合物等が使用され、これらを混合、溶融し、複数の反応器を用いて多段階方式で重縮合反応させる(重縮合工程)。
重縮合反応後、押出機において各種添加剤がそれぞれ供給され、押出機より排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートはストランドバス等を経由して冷却水により冷却され、ストランドカッター等のカッターにより切断されペレット化される。
最後に、遠心脱水機等にて水分除去した後、貯蔵容器である貯槽サイロに輸送される。このとき、本発明の実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法、および貯蔵方法が使用される。
本実施の形態において使用するポリカーボネートは、原料としてジヒドロキシ化合物、好ましくは芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、連続溶融重縮合反応を行うことにより得られるポリカーボネートが好ましく、特に芳香族ポリカーボネートが好ましい。特に、ポリカーボネートのなかでも、粘度平均分子量(Mv)が17,000以下、好ましくは16,000以下の、分子量が比較的低いポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネートは、耐熱性及び流動性が要求される溶融成形に適している。特に、このような分子量が比較的低いポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネートは、光学用記録材料として、通常、350℃程度の高温下で射出成形により成形される光ディスク用の基板の材料として有用である。但し、ポリカーボネート(好ましくは芳香族ポリカーボネート)の粘度平均分子量(Mv)は、通常、10,000以上、好ましくは、12,000以上である。
また、上述した溶融重縮合反応により得られるポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネートは、後述するように製造工程の後半において、熱安定剤としてリン化合物が添加されたペレットとして製品化される場合が多い。このようなリン化合物は該化合物自体吸湿性があると共に、ポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネートを加水分解する触媒として働く場合があり、製品化されたポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネートの加水分解を促進する可能性がある。このような吸湿性を有し、加水分解によってダメージを受けやすいポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送する場合、露点が0℃以下の気体を用いることにより、ペレットが吸湿することなく、ペレットを輸送し、貯蔵することが可能になる。
ここで、気体の露点とは、一般に、気体中の水蒸気の分圧を飽和水蒸気圧とする温度であって、徐々に冷却された気体に含まれる水分が凝縮し、露ができ始めるときの温度である。
尚、本実施の形態において、ペレットの含水率は、ペレットの所定の重量m(本実施の形態では、0.2g〜1g)と、このペレットを250℃で加熱乾燥した後に測定したペレットの重量mとの重量差(m−m)の乾燥前のペレットの重量mに対する割合(重量%)である。本実施の形態では、所定の水分測定装置及び水分気化装置を用いる電量滴定法によりペレットの含水率が測定される。
ポリカーボネート等のポリマーのペレットは、通常、含水率が0.1重量%以下の状態で製品として出荷される。本実施の形態では、気力輸送に使用する気体の露点を0℃以下に管理することにより、ポリマーのペレットの含水率を0.1重量%以下に維持することが可能となる。
以下、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に溶融重縮合反応を行うことにより、芳香族ポリカーボネートを製造する方法について詳述する。
(芳香族ジヒドロキシ化合物)
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005587235
ここで、一般式(1)において、Aは、単結合または置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO−で示される2価の基である。X及びYは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。p及びqは0乃至2の整数である。尚、XとY及びpとqは、それぞれ、同一でも相互に異なるものでもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェノール類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
(炭酸ジエステル)
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005587235
ここで、一般式(2)中、A’は、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基である。2つのA’は、同一でも相互に異なるものでもよい。
炭酸ジエステルの具体例としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
また、上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
これら炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いられる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル1.01〜1.30、好ましくは1.02〜1.20のモル比で用いられる。モル比が過度に小さくなると、得られる芳香族ポリカーボネートの末端OH基が多くなり、得られる芳香族ポリカーボネートの熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が過度に大きくなると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネートの生産が困難となる他、未反応の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品の臭気の原因となることがあり、好ましくない。
(エステル交換触媒)
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法により芳香族ポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム化合物、マグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲で用いられる。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物;アルカリ金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等の有機アルカリ金属化合物等が挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウム等が好ましい。
ベリリウム化合物、マグネシウム化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物;これらの金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等が挙げられる。ここで、アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
塩基性ホウ素化合物としては、ホウ素化合物のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3価のリン化合物、又はこれらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
(芳香族ポリカーボネートの製造方法)
次に、芳香族ポリカーボネートの製造方法について説明する。
芳香族ポリカーボネートの製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製し(原調工程)、これらの化合物を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階の重縮合反応させる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は通常、複数基の反応器が用いられ、これらの反応器は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、押出機にて停止剤により反応を停止させた後、反応液中の未反応原料や反応副生物を除去し、熱安定剤や離型剤等の添加剤を添加し(押出工程)、押出機から排出される芳香族ポリカーボネートのストランドはストランドバス等を経由して冷却水により冷却され、所定の粒径のペレットに成形される(ペレット化工程)。次に、製造方法の各工程について説明する。
(原調工程)
芳香族ポリカーボネートの原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、溶融混合物として調製される。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
この際、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの割合は、炭酸ジエステルが過剰になるように調整され、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルは通常1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの割合になるように調整される。
(重縮合工程)
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段工程で連続的に行われる。具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
多段工程の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に排出するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られる芳香族ポリカーボネートの色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましく、最終反応器の温度設定は前の反応器の設定温度よりも低温にすることもできる。
多段工程の重縮合は、好ましくは、撹拌翼を備えた竪型反応器を複数個接続し、最終工程として横型反応器を設けて、芳香族ポリカーボネートの平均分子量を増大させる。竪型反応器は通常2個〜5個、好ましくは3個〜4個設置される。
竪型反応器の撹拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック株式会社製)、サンメラー翼(三菱重工業株式会社製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業株式会社製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼(株式会社日立製作所製)等が挙げられる。
また、横型反応器とは、撹拌翼の回転軸が横型(水平方向)であるものをいう。横型反応器の撹拌翼としては、例えば、円板型、パドル型等の一軸タイプの撹拌翼やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業株式会社製)、バイボラック(住友重機械工業株式会社製)、あるいはメガネ翼、格子翼(株式会社日立製作所製)等の二軸タイプの撹拌翼が挙げられる。
尚、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との重縮合に使用するエステル交換触媒は、通常、予め水溶液として準備される。触媒水溶液の濃度は特に限定されず、触媒の水に対する溶解度に応じて任意の濃度に調整される。また、水に代えて、アセトン、アルコール、トルエン、フェノール等の他の溶媒を選択することもできる。
触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
(押出工程)
重縮合工程後、押出工程において反応液中の未反応原料、エステル交換反応で副生するヒドロキシ化合物、ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物が除去される。この除去は、通常、ベント式の押出機により連続的に行われる。
使用する押出機としては、ベント部を備えたものであればどのような形式のものでも使用することができ特に限定されない。例えば、ベント式の単軸又は多軸押出機が挙げられるが、特に、かみ合い型二軸押出機が好ましい。押出機の軸の回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。ベント数は、通常2段〜10段の多段ベントが用いられる。
また、押出工程において、重縮合反応後の芳香族ポリカーボネート中に残留する塩基性エステル交換触媒を、酸性化合物又はその誘導体により中和・失活させることが好ましい。これにより押出機内での副反応を抑え、残存する未反応原料及びヒドロキシ化合物を除去することができる。
押出工程において添加する酸性化合物又はその誘導体としては、塩基性エステル交換触媒を中和するものであれば、いずれも使用でき特に限定されない。例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステルが挙げられる。これらの酸性化合物又はその誘導体のなかでも、スルホン酸類又はそのエステルが特に好ましい。
尚、酸性化合物又はその誘導体は直接添加してもよいし、いわゆるマスターバッチとして調製して添加してもよい。又溶媒で希釈し添加してもよい。この場合、溶媒は、酸性化合物又はその誘導体を溶解するものであれば特に限定されない。なかでも水が特に好ましい。また、水単独に不溶な酸性化合物又はその誘導体は、アセトン等の有機溶媒を水に加えた混合溶媒を使用することができる。これら酸性化合物又はその誘導体の使用量は、重縮合反応に使用した塩基性エステル交換触媒の中和当量に対し0.1倍〜50倍、好ましくは0.5倍〜30倍の範囲で添加する。
また、本実施の形態では、押出工程において、必要に応じ、押出機に各種添加剤がそれぞれ供給される。各種添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、強化剤、難燃剤等が挙げられる。
これらの添加剤の中から熱安定剤を例に挙げると、好ましい熱安定剤の例としては、例えば、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、イオウ系安定剤、エポキシ系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等が挙げられる。これらの熱安定剤の中でもリン系安定剤が好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
リン系安定剤としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が用いられる。これらの中でも、リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート;トリシクロヘキシルホスフェート等のトリシクロアルキルホスフェート;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート等のトリアリールホスフェート等が挙げられる。
また、亜リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイト等のトリアルキルホスファイト;トリシクロヘキシルホスファイト等のトリシクロアルキルホスファイト;トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイト等のトリアリールホスファイト;フェニルジデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、フェニルイソオクチルホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト等のアリールアルキルホスファイト等が挙げられる。さらに、ジステアリルペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト等が挙げられる。中でも、亜リン酸エステルが好ましく、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ジステアリル(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチル)ベンジルマロネート、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジーt−ブチルフェノール等が挙げられる。
イオウ系安定剤としては、亜硫酸、硫酸、スルフィン酸系化合物、スルホン酸系化合物およびこれらの誘導体が挙げられる。より具体的には、亜硫酸誘導体として、ジメチル亜硫酸、ジエチル亜硫酸、ジプロピル亜硫酸、ジブチル亜硫酸、ジフェニル亜硫酸等が挙げられる。硫酸誘導体として、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸、ジブチル硫酸、ジフェニル硫酸等が挙げられる。スルフィン酸系化合物として、ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ナフテレンスルフィン酸等が挙げられる。スルホン酸系化合物およびこの誘導体として、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸;ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニル等のスルホン酸エステル;p−トルエンスルホン酸アンモニウム等のスルホン酸アンモニウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル−スルホン化スチレン共重合体等のスルホン酸化合物が挙げられる。
エポキシ系安定剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6’−メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス−エポキシエチレングリコール、ビス−エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3,5−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、オクタデシル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル−2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2−イソプロピル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−エチルヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6−ジメチル−2,3−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3−t−ブチル−4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ−n−ブチル−3−t−ブチル−4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等が挙げられる。これらの中でも、脂環族エポキシ化合物が好ましく用いられ、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましく用いられる。
熱安定剤の添加量は、通常、芳香族ポリカーボネート100重量部に対して0.0001重量部〜0.5重量部、好ましくは0.001重量部〜0.2重量部の範囲で用いられる。
本実施の形態では、熱安定剤としてリン系安定剤を使用し、上述した範囲の量のリン系安定剤を添加することにより、後述するペレット化工程を経て製品化された芳香族ポリカーボネートのペレットにリン系安定剤が含まれる。本実施の形態では、芳香族ポリカーボネートのペレットに含まれるリン系安定剤の量が、芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、リン原子の量(重量換算)として0.5ppm〜10ppm、好ましくは0.5〜5ppmの範囲である場合に、本発明により得られる効果が大きい。
芳香族ポリカーボネートのペレットに添加する熱安定剤の添加量が過度に少ないと、例えば、350℃程度の高温条件で射出成形する際に、芳香族ポリカーボネートの色相が悪化する傾向がある。また、芳香族ポリカーボネートのペレットに添加する熱安定剤の添加量が過度に多いと、特に、熱安定剤としてリン系安定剤を使用する場合、このようなリン系安定剤自体が吸湿性を有すると共に、リン系安定剤が芳香族ポリカーボネートを加水分解する触媒として働く場合があり、製品化された芳香族ポリカーボネートの加水分解性が促進される可能性がある。このような水分を吸着した芳香族ポリカーボネートのペレットを用いて、射出成形法により光ディスク用の基板を成形すると、得られた基板の表面にシルバーストリークが生じる傾向がある。
押出工程において、多段ベント口を備えた押出機を使用する場合、酸性化合物又はその誘導体は、樹脂供給口に最も近いベント口の手前に添加される。押出機による中和脱揮処理に供する芳香族ポリカーボネートの形態としては、重縮合反応直後の溶融状態にあるうちに押出機に導入し処理する方法、または、一旦冷却固化した後、押出機に導入し処理する方法等が挙げられる。
(ペレット化工程)
押出工程において押出機より排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートは、通常、ストランドバス等を経由して冷却水により冷却され、ストランドカッターにより、通常、粒径1mm〜5mm程度のペレットになるように切断され、その後、脱水機等により水分除去した後に貯槽サイロに収納される。
本実施の形態において、光学記録材料として有用な粘度平均分子量(Mv)が17,000以下であり、粘度平均分子量(Mv)が10,000以上の芳香族ポリカーボネートを得るために、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルの使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステル1.05〜1.20、好ましくは1.10〜1.15のモル比で用いられる。
また、エステル交換触媒の使用量は、エステル交換触媒がアルカリ金属である場合、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して金属原子の含有量として1×10−8〜1×10−5モル、好ましくは1×10−7〜1×10−6モルの範囲で用いられる。
(製造装置)
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用される芳香族ポリカーボネートの製造方法の一例を具体的に説明する。
図1は、芳香族ポリカーボネートの製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、芳香族ポリカーボネートは、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製する原調工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応させる重縮合工程とを経て製造され、その後、反応液中の未反応原料や反応副生物を除去し任意の添加剤を添加し溶融混練する押出工程と、ペレット化工程を経て芳香族ポリカーボネートのペレットが成形される。
原調工程において、直列に接続した第1原料調製槽2a及び第2原料調製槽2bと、調製した原料を重縮合工程に供給するための原料供給ポンプ4aとが設けられている。第1原料調製槽2aと第2原料調製槽2bとには、例えば、アンカー型撹拌翼3a,3bがそれぞれ設けられている。
また、第1原料調製槽2aには、DPC供給口1a−1から、炭酸ジエステルであるジフェニルカーボネート(以下、DPCと記載することがある。)が溶融状態で供給され、BPA供給口1bからは、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールA(以下、BPAと記載することがある。)が粉末状態で供給され、溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールAが溶解される。
次に、重縮合工程においては、直列に接続した第1竪型反応器6a、第2竪型反応器6b及び第3竪型反応器6cと、第3竪型反応器6cの後段に直列に接続した第4横型反応器9aとが設けられている。第1竪型反応器6a、第2竪型反応器6b及び第3竪型反応器6cには、マックスブレンド翼7a,7b,7cがそれぞれ設けられている。また、第4横型反応器9aには、撹拌翼10aが設けられている。
さらに、4個の反応器には、それぞれ重縮合反応により生成する副生物等を排出するための留出管8a,8b,8c,8dが取り付けられている。留出管8a,8b,8c,8dは、それぞれ凝縮器81a,81b,81c,81dに接続し、また、各反応器は、減圧装置82a,82b,82c,82dにより、所定の減圧状態に保たれる。
押出工程においては、添加剤供給口12a,12b,12cを有する押出機11aが設けられている。
ペレット化工程においては、押出機11aより排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートを冷却水により冷却するストランド冷却機13aと、冷却したストランドを所定の粒径にカットするカッター14aと、ペレットの水分を除去するための遠心脱水機14bと、規格外のペレットを篩い分ける篩分機15aと、乾燥したペレットを格納する貯槽サイロ16a,16bとが設けられている。
図1に示す芳香族ポリカーボネートの製造装置において、窒素ガス雰囲気下、所定の温度で調製されたDPC溶融液と、窒素ガス雰囲気下計量されたBPA粉末とが、それぞれDPC供給口1a−1とBPA供給口1bから第1原料調製槽2aに連続的に供給される。第1原料調製槽2aの液面が移送配管中の最高位と同じ高さを超えると、原料混合物が第2原料調製槽2bに移送される。
次に、原料混合物は、原料供給ポンプ4aを経由して第1竪型反応器6aに連続的に供給される。また触媒として、水溶液状の炭酸セシウムが、原料混合物の移送配管途中の触媒供給口5aから連続的に供給される。
第1竪型反応器6aでは、窒素雰囲気下、例えば、温度220℃、圧力13.33KPa(100Torr)、マックスブレンド翼7aの回転数を160rpmに保持し、副生したフェノールを留出管8aから留出させながら平均滞留時間60分になるように液面レベルを一定に保ち、重縮合反応が行われる。次に、第1竪型反応器6aより排出された重縮合反応液は、引き続き、第2竪型反応器6b、第3竪型反応器6c、第4横型反応器9aに順次連続供給され、重縮合反応が進行する。各反応器における反応条件は、重縮合反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度となるようにそれぞれ設定される。重縮合反応の間、各反応器における平均滞留時間は、例えば、60分程度になるように液面レベルを制御し、また各反応器においては、副生するフェノールが留出管8b,8c,8dから留出される。
本実施の形態において、第1竪型反応器6aと第2竪型反応器6bとにそれぞれ取り付けられた凝縮器81a,81bから、フェノール等の副生物が連続的に液化回収される。また、第3竪型反応器6cと第4横型反応器9aとにそれぞれ取り付けられた凝縮器81c,81dにはコールドトラップ(図示せず)が設けられ、副生物が連続的に固化回収される。
次に、第4横型反応器9aより抜き出された芳香族ポリカーボネートは、溶融状態のまま3段ベント口を具備した2軸型の押出機11aに供給される。押出機11aには添加剤供給口12a,12b,12cから、例えば、p−トルエンスルホン酸ブチル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ステアリン酸モノグリセリド等の各種添加剤がそれぞれ供給される。押出機11aの条件は、例えば、吐出量50kg/hr、回転数150rpm、最高樹脂温度270℃〜320℃程度に設定される。
押出機11aより排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートはストランド冷却機13aを経由してカッター14aでペレット化され、遠心脱水機14bにより遠心脱水処理され、篩分機15aにて規格外のペレットを除去した後に、気力輸送により貯槽サイロ16a,16bに導入される。気力輸送については後述する。
図2は、本実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法および貯蔵方法の一例を説明する図である。
図2には、前述した図1に示す製造装置から供給された芳香族ポリカーボネートのペレット(ポリマーペレット)を貯蔵する貯槽サイロ16a,16b(貯蔵容器、貯蔵設備)と、芳香族ポリカーボネートのペレットの気力輸送に使用する空気(Air)を除湿し圧縮した後、送り出す除湿機17とが示されている。
また、貯槽サイロ16a,16bの槽底には、内部に貯蔵した芳香族ポリカーボネートのペレットを排出するためのペレット出口配管26a,26bがそれぞれ設けられている。
図2に示すように、除湿機17には、図1に示す製造装置の篩分機15a(図1参照)から供給される芳香族ポリカーボネートのペレットを貯槽サイロ16a,16bに気力輸送するための空気を供給する空気輸送配管23が設けられている。
また、空気輸送配管23から分岐し、除湿機17から排出される空気を貯槽サイロ16a,16b内に導く空気輸送配管24が設けられている。
さらに、空気輸送配管23から分岐し、貯槽サイロ16a,16bの槽底に設けられたペレット出口配管26a,26bと結合し、貯槽サイロ16a,16b内から排出される芳香族ポリカーボネートのペレットを、装置外に移送するための空気を供給する空気輸送配管25が配設されている。
本実施の形態において、除湿機17は、例えばハニカム型吸着式除湿装置である。除湿機17の内部には、塩化リチウム、ゼオライト、シリカゲル等の除湿剤を含浸させハニカム状に形成された不織布を用い、ロータ状に形成された除湿ロータ(図示せず)が内蔵されている。除湿ロータは、所定のモータによって回転駆動される。
除湿機17の空気供給口21から除湿機17内に導入された空気は、除湿機17に内蔵された除湿ロータ(図示せず)を通過する際に、空気中に含まれた水分が除湿材によって吸着される(気体除湿工程)。その後、図示しない空気圧縮機により圧縮され(気体圧縮工程)、除湿機17の空気排出口22より排出される。
本実施の形態では、除湿機17内に導入された空気は、予め、濾過精度5ミクロン以下、好ましくは1ミクロン以下のフィルターにより濾過されており、除湿機17に内蔵された除湿ロータにより空気中に含まれた水分が除湿材に吸着され、露点が0℃以下、好ましくは、−10℃以下、さらに好ましくは、−20℃以下になるように管理されている。露点の下限には特に制限はない。
図2に示すように、芳香族ポリカーボネートのペレット(polymer)は、図1に示した製造装置からペレット供給口15bを経て空気輸送配管23に供給される(圧力気体供給工程)。そして、除湿機17において露点が0℃以下に調整され空気排出口22から排出された圧縮空気により空気輸送配管23内を気力輸送され(輸送工程)、貯槽サイロ16a,16b内に導入されて貯蔵される。
本実施の形態では、芳香族ポリカーボネートのペレットは、露点が0℃以下に調整された圧縮空気により気力輸送されることにより、ペレットの含水率が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは、0.02重量%以下に保たれた状態で貯槽サイロ16a,16b内に貯蔵される。ペレットの含水率の下限には特に制限はない。
特に、含水率が0.02重量%以下に保たれた状態で貯槽サイロ16a,16b内に貯蔵される芳香族ポリカーボネートのペレットは、例えば、350℃程度で射出成形法によって成形される光ディスクの基板用の材料として好適である。
ここで、本実施の形態において、除湿機17の空気排出口22から空気輸送配管23に供給される圧縮空気の風量は、芳香族ポリカーボネートのペレット1トン当たり、通常、50Nm/時間〜600Nm/時間であり、好ましくは、100Nm/時間〜500Nm/時間であり、さらに好ましくは100Nm/時間〜400Nm/時間である。圧縮空気の風量が過度に少ないと、芳香族ポリカーボネートのペレットが気力輸送されない傾向がある。圧縮空気の風量が過度に大きいと、ペレットが配管内壁に衝突することによるペレットの割れが発生したり微粉の発生が多くなる傾向がある。
本実施の形態では、上述した範囲の風量で圧縮空気を空気輸送配管23に供給することにより、芳香族ポリカーボネートのペレットの輸送速度は、通常、1t/時間〜20t/時間、好ましくは2t/時間〜10t/時間、さらに好ましくは3t/時間〜8t/時間で気力輸送される。
また、本実施の形態では、図2に示すように、除湿機17によって露点が0℃以下に調整された空気が除湿機17の空気排出口22から空気輸送配管24を経て貯槽サイロ16a,16b内に供給され、貯槽サイロ16a,16b内に充填されている。これにより貯槽サイロ16a,16b内は、貯槽サイロ16a,16b内に貯蔵された芳香族ポリカーボネートのペレットが水分を吸着しないように、常に乾燥状態に保たれている。
このように、露点が0℃以下に調整された空気が貯槽サイロ16a,16b内に充填されていることにより、例えば、芳香族ポリカーボネートのペレットが熱安定剤としてリン系安定剤を含むことにより吸湿性が増大した場合であっても、貯槽サイロ16a,16b内にペレットは、含水率が増大することなく貯蔵されている。
本実施の形態では、製品検査や出荷等のため貯槽サイロ16a,16bから芳香族ポリカーボネートのペレットを排出する場合、貯槽サイロ16a,16bの槽底部にそれぞれ設けられたペレット出口配管26a,26bによりペレットを排出する。
図2に示すように、ペレット出口配管26a,26bにより貯槽サイロ16a,16bから排出された芳香族ポリカーボネートのペレットは、除湿機17によって露点が0℃以下に調整され空気輸送配管25を経て供給された空気により、芳香族ポリカーボネートのペレットが水分を吸着しないように乾燥状態が保たれたまま製造装置外に気力輸送される。
尚、本実施の形態では、除湿機17としてハニカム型吸着式除湿装置を例に挙げて説明したが、気力輸送に使用する気体を除湿し、露点を0℃以下に調整できる除湿機能を有するものであれば、他の形態の除湿装置を使用することが可能であり、特に限定されるものではない。
また、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送するための気体として空気を使用したが、これに限定されるものでなく、気力輸送するポリマーのペレットの性質等に応じ、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等を使用することできる。
本実施の形態では、芳香族ポリカーボネートのペレットを例に挙げて説明したが、本実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法は、他の吸湿性を有するポリマーのペレットについても適用することが可能である。このようなポリマーとしては、例えば、ペレット形状のポリエステル、ポリアミド等が例示される。
ポリマーのペレットの形状は、粒状、不定形状、平板状、円柱状等が挙げられ、特に限定されることはない。また、ペレットの大きさは、最も長い部分の長さが20mm以下に加工されたものが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定して解釈されない。尚、実施例及び比較例において使用したポリマーペレットの各種の物性の測定方法と評価方法は以下(1)〜(6)に示す通りである。
(1)ポリマーペレットの含水率の測定方法
ポリマーペレットの含水率は、水分測定装置(ダイアインスツルメンツ社製CA−100型)及び水分気化装置(ダイアインスツルメンツ社製VA−100型)を用いた電量滴定法により測定した。試料とするポリマーペレットの重量は、0.2g〜1gである。水分気化装置におけるポリマーペレットの加熱条件は、250℃である。
(2)気体の露点の測定方法
ポリマーペレットの気力輸送に使用する気体の露点は、露点測定器(株式会社いすず製作所社製形式ISUZU−1A)を用い、以下の手順で測定した。
(i) 露点を測定する気体を露点測定器の冷却筒に連続的に吹き付ける。
(ii)気体が連続的に吹き付けられた冷却筒にエタノールを入れ、その中にドライアイスの小片を少しずつ投入し、注意深く撹拌しながら徐々に冷却する。そして、冷却筒の鏡面を目視にて観察し、鏡面上に露が生じた時点でドライアイスの投入を止める。尚、鏡面上に露が生じた時点の、冷却筒中のエタノールの温度をT1とする。
(iii)次いで、冷却筒に入れたエタノール及びドライアイスを撹拌し、冷却筒の鏡面上の露が消えるまで徐々に温度を上昇させる。鏡面上の露が消える時点の冷却筒中のエタノールの温度をT2とする。
(iv)T1とT2との平均値を、その気体の露点とする。
(3)ディスク表面のシルバーストリークの評価方法
気力輸送した芳香族ポリカーボネートのペレットを射出成形機(住友重機社製DISC3)に供給し、以下の条件で、芳香族ポリカーボネートのディスク(径(φ)120mm、厚さ0.6mm)を100枚成形し、得られたディスク表面におけるシルバーストリークの有無を目視にて確認した。
バレル設定温度:ペレット供給側から350℃、370℃、380℃、380℃
金型温度:128℃
成形サイクル:6.0秒
尚、射出成形機による成形の初期100ショット分を廃棄する。
(4)芳香族ポリカーボネートの初期色相の評価方法
気力輸送した芳香族ポリカーボネートのペレットを、窒素雰囲気下、120℃で6時間乾燥する。次に、乾燥した芳香族ポリカーボネートのペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度360℃、成形サイクル30秒間の条件で、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形する操作を繰り返す。
そして、6ショット目〜15ショット目で得られた射出成形片のイエローインデックス(YI)値をカラーテスタ(コニカミノルタ社製CM−3700d)を用いて測定し、平均値を算出する。イエローインデックス(YI)値が小さい程、色相が良好で品質が優れることを示す。
(5)加熱状態で滞留した芳香族ポリカーボネートの色相の評価方法
前述した芳香族ポリカーボネートの初期色相の評価において、射出成形機による射出成形片の成形サイクルを、16ショット目から10分間とし、22ショット目まで成形操作を繰り返す。そして、20ショット目〜22ショット目で得られた射出成形品のYI値をカラーテスタを用いて測定し、平均値を算出する。
(6)芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)の測定方法
芳香族ポリカーボネートのペレットを塩化メチレンに溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液における極限粘度[η]を測定し、以下の粘度式(1)により粘度平均分子量(Mv)を求める。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83 (1)
(実施例1)
ポリマーとしてポリカーボネートを使用し、ハニカム型吸着式除湿装置を使用して−20℃の露点の圧縮空気を空気輸送配管に供給し、ポリカーボネートのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの空気輸送配管中の風量は1800Nm/時間であり、ポリマーペレットは、4t/時間の輸送速度で貯槽サイロに気力輸送された。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.09重量%であった。
(比較例1)
ポリマーとしてポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用し、露点が6℃の圧縮空気を輸送配管に供給し、PBTのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの輸送配管中の風量は1800Nm/時間であり、ポリマーペレットは、4t/時間の輸送速度で貯槽サイロに気力輸送された。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.2重量%であった。
(実施例2)
ポリマーとしてポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)を使用し、ハニカム型吸着式除湿装置を使用して−30℃の露点の圧縮空気を輸送配管に供給し、PBSLのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの輸送配管中の風量は720Nm/時間であり、ポリマーペレットは、2t/時間の輸送速度で貯槽サイロに気力輸送された。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.05重量%であった。
(比較例2)
ポリマーとしてポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)を使用し、32℃で湿度70%の未処理の外気(露点26℃)を使用した圧縮空気を輸送配管に供給し、PBSLのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの輸送配管中の風量は720Nm/時間であり、ポリマーペレットは、2t/時間の輸送速度で貯槽サイロに気力輸送された。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.2重量%であった。
(実施例3)
図1に示す製造装置を使用し、以下の操作を行い、粘度平均分子量(Mv)15,300である芳香族ポリカーボネートを製造した。
初めに、窒素雰囲気下、内温140℃に制御された第1原料調製槽2aに、DPC供給口1a−1からジフェニルカーボネート(DPC)を連続的に供給し、BPA供給口1bからビスフェノールA(BPA)を連続的に供給し、DPCとBPAとが均一な溶融状態で、一定のモル比(DPC/BPA=1.12)の混合物((DPC/BPA)混合物と記すことがある。)になるように調整した。
次に、第1原料調製槽2aで調製した(DPC/BPA)混合物を、140℃に制御された第2原料調製槽2bに送り、続いて、原料供給ポンプ4aを用い、単位時間当たりの供給量が一定になるように、(DPC/BPA)混合物を第1竪型反応器6aに連続的に供給する。そして、エステル交換反応触媒として炭酸セシウムの水溶液を、BPA1モルに対し0.4×10−6モルになるように触媒供給口5aから連続的に供給し、第1竪型反応器6aにおいてDPCとBPAとによる溶融重縮合反応を連続的に行った。
第1竪型反応器6aは、内温220℃、圧力13.3kPaに制御した。重縮合反応液の液面レベルは、第1竪型反応器6a槽底部の排出ラインに設けられたバルブ(図示せず)の開度を調節して一定に保たれ、これにより第1竪型反応器6aにおける重縮合反応液の平均滞留時間が1.5時間になるように調整した。
続いて、第1竪型反応器6aの槽底部から排出された重縮合反応液を、引き続き第2竪型反応器6b、第3竪型反応器6c、第4横型反応器9aに逐次連続供給した。第2竪型反応器6bは、内温260℃、圧力4kPaに保ち、第2竪型反応器6bにおける重縮合反応液の平均滞留時間は1時間であった。第3竪型反応器6cは、内温270℃、圧力700Paに保ち、第3竪型反応器6cにおける重縮合反応液の平均滞留時間は1時間であった。第4横型反応器9aは、内温270℃、圧力200Paに保たれ、第4横型反応器9aにおける重縮合反応液の平均滞留時間は1.5時間であった。
次に、芳香族ポリカーボネートの重縮合反応液を第4横型反応器9aから排出し、溶融状態のまま2軸型の押出機11aに供給した。続いて、押出機11a中に、触媒失活剤としてp−トルエンスルホン酸ブチルを、芳香族ポリカーボネートの重量に対し、重量換算で4ppmとなるように添加した後、熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを、芳香族ポリカーボネートの重量に対し、リン原子の重量換算として2.4ppmになるよう添加し、離型剤としてステアリン酸モノグリセリドを芳香族ポリカーボネートに対し400ppm添加した。
次に、2軸型の押出機11aから、前述したように熱安定剤及び離型剤を混合した芳香族ポリカーボネートを、溶融状態でストランド状に排出し、排出された芳香族ポリカーボネートをストランド冷却機13aで水冷し、冷却固化した。続いて、冷却固化された芳香族ポリカーボネートをカッター14aで切断してペレットとした後、ペレットに付着した水分を遠心脱水機14bにより除去し、水分を除去されたペレットから、篩分機15aにより規格外の大きさのペレットを除去した。
前述した操作により製造した芳香族ポリカーボネート(Mv15,300)のペレットを、空気輸送配管に供給された圧縮空気により貯槽サイロ16a,16bに気力輸送した。圧縮空気は、予めハニカム型吸着式除湿装置により、露点が−35℃になるように調整した。空気輸送配管中の風量は1,800Nm/hrである。芳香族ポリカーボネートのペレットの輸送速度は4t/時間である。また、貯槽サイロ16a,16b内は、露点が−35℃になるように調整された空気が充填されている。
露点が−35℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、0.005重量%であった。尚、貯槽サイロ16a,16bに気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの一部は、アルミニウム蒸着した内袋を有する防湿袋に採取され、含水率を測定する直前に防湿袋を開封し、前述した操作((1)ポリマーペレットの含水率の測定方法)により芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率を測定した。
前述したシルバーストリークの評価方法((3)ディスク表面のシルバーストリークの評価)に基づき、射出成形機により100枚のディスクを成形し、得られたディスク表面におけるシルバーストリークの有無を目視にて確認したところ、100枚全てのディスクにおいてシルバーストリークは見られなかった。
さらに、前述した初期色相の評価方法((4)芳香族ポリカーボネートの初期色相の評価)により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.25であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法((5)加熱状態で滞留した芳香族ポリカーボネートの色相の評価)で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.07であった。
実施例3の結果から、このように、光ディスク等の光学材料として有用な粘度平均分子量(Mv)が15,300の芳香族ポリカーボネートのペレットを、露点が−35℃の圧縮空気により気力輸送することにより、気力輸送後のペレットの含水率が大幅に低下した状態で、安定的に貯槽サイロ16a,16bに貯蔵されることが分かる。
このように含水率が低下した状態で貯槽サイロ16a,16bに貯蔵された芳香族ポリカーボネートのペレットを用いて成形したディスクには、シルバーストリークが観察されないことから、本発明の実施の形態で説明したポリマーペレットの気力輸送方法が、光学材料として有用な芳香族ポリカーボネートのペレットを輸送する方法として優れていることが分かる。
尚、前述した芳香族ポリカーボネートの製造において、第1原料調製槽2a中に供給する原料のDPCの供給量を減少させ、原料のDPCとBPAとのモル比(DPC/BPA)が1.11となるようにDPC及びBPAを供給して混合し、さらに、第4横型反応器9aを、内温275℃、圧力150Paの条件に設定し、粘度平均分子量(Mv)18,000の芳香族ポリカーボネートを製造した。しかし、粘度平均分子量(Mv)18,000の芳香族ポリカーボネートは、射出成形機による成形の際に、高粘度であるため光ディスク用の基板が成形できなかった。
(実施例4)
実施例3において、露点が−20℃になるように調整した圧縮空気を用いる他は、実施例3と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が−20℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、0.009重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき、射出成形機によりディスクを成形し、得られたディスク表面におけるシルバーストリークの有無を目視にて確認したところ、成形した100枚のディスクの中、97枚のディスクにシルバーストリークが見られなかった。
さらに、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.28であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.11であった。
(実施例5)
実施例3において、露点が−5℃になるように調整した圧縮空気を用いる他は、実施例3と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が−5℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、0.015重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき、射出成形機によりディスクを成形し、得られたディスク表面におけるシルバーストリークの有無を目視にて確認したところ、成形した100枚のディスクの中、92枚のディスクにシルバーストリークが見られなかった。
さらに、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.30であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートのペレットの色相は3.20であった。
(比較例3)
実施例3において、露点が5℃になるように調整した圧縮空気を用いる他は、実施例3と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が5℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、0.025重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき成形した100枚のディスクの中、シルバーストリークが見られたディスクが31枚に大幅に増大した。
また、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.37であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.23であった。
(実施例6)
実施例4において、押出機11aにトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを、芳香族ポリカーボネートの重量に対し、リン原子の重量換算として0.4ppmになるよう添加し、その他は実施例4と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が−20℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、実施例4と同様に0.009重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき成形した100枚のディスクにはシルバーストリークが見られなかった。
また、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.44であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.50であり、実施例4で示した結果より悪化した。
(実施例7)
実施例4において、押出機11aにトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを、芳香族ポリカーボネートの重量に対し、リン原子の重量換算として13ppmになるよう添加し、その他は実施例4と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が−20℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、実施例4と同様に0.009重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき成形した100枚のディスクの中、15枚のディスクにシルバーストリークが見られたが、85枚のディスクにシルバーストリークが見られなかった。これは、芳香族ポリカーボネートに添加されたリン原子の添加量が実施例4の場合より多いことにより、実施例4で得られた芳香族ポリカーボネートのペレットの場合より加水分解反応が促進されたためと考えられる。
また、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.41であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.46であり、実施例4で示した結果より悪化した。
以上、本実施の形態において詳述したポリマーペレットの輸送方法および貯蔵方法によれば、吸湿性のポリマーペレットを、乾燥機等の大掛かりな装置を使用せずに、簡便な手段でポリマーペレットが吸湿することなく輸送することができる。また、吸湿性のポリマーペレットが吸湿することなく、簡便な手段で貯蔵することができる。
2a…第1原料調製槽、2b…第2原料調製槽、3a,3b…アンカー型撹拌翼、4a…原料供給ポンプ、5a…触媒供給口、6a…第1竪型反応器、6b…第2竪型反応器、6c…第3竪型反応器、7a,7b,7c…マックスブレンド翼、8a,8b,8c,8d…留出管、9a…第4横型反応器、10a…撹拌翼、11a…押出機、12a,12b,12c…添加剤供給口、13a…ストランド冷却機、14a…カッター、14b…遠心脱水機、15a…篩分機、15b…ペレット供給口、16a,16b…貯槽サイロ、17…除湿機、21…空気供給口、22…空気排出口、23,24,25…空気輸送配管、26a,26b…ペレット出口配管

Claims (9)

  1. 露点が0℃以下の気体を使用し、吸湿性の粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000で、熱安定剤としてリン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルからなるリン系安定剤をリン原子の量(重量換算)として0.5ppm〜5ppmの範囲で含有するポリカーボネートのペレットを圧縮された圧力気体を用いて気力輸送することを特徴とするポリマーペレットの気力輸送方法。
  2. 前記ポリカーボネートのペレットは、原料としてジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、溶融重縮合を行うことにより得られるポリカーボネートのペレットであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
  3. 前記気体は空気であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
  4. 露点が0℃以下の気体により気力輸送されたポリマーペレットの含水率が、0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
  5. 吸湿性の粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000で、熱安定剤としてリン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルからなるリン系安定剤をリン原子の量(重量換算)として0.5ppm〜5ppmの範囲で含有するポリカーボネートのペレットを圧力気体流と共に輸送配管を介し気力輸送するポリマーペレットの気力輸送方法であって、
    ペレット形状のポリカーボネートの気力輸送に用いる気体に含まれる水分量を低減し当該気体の露点を0℃以下にする気体除湿工程と、
    前記気体除湿工程において露点が0℃以下に調整された気体を圧縮する気体圧縮工程と、
    前記気体除湿工程において圧縮された圧力気体をペレット形状のポリカーボネート1トン当たり50Nm/時間〜600Nm/時間で輸送配管内に供給する圧力気体供給工程と、
    前記圧力気体供給工程において輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状のポリカーボネートを当該輸送配管を介し気力輸送する輸送工程と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
  6. 前記気体除湿工程において、ペレット形状のポリカーボネートの気力輸送に用いる気体の露点を−10℃以下に調整することを特徴とする請求項5に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
  7. 前記輸送工程において、前記輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状のポリカーボネートを予め露点が0℃以下の気体が充填された貯蔵設備に気力輸送することを特徴とする請求項5又は6に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
  8. 貯蔵容器中に露点が0℃以下の気体を充填し、当該貯蔵容器に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の気力輸送方法により輸送された、吸湿性のペレット形状のポリカーボネートを貯蔵することを特徴とするポリマーペレットの貯蔵方法。
  9. 前記貯蔵容器中に貯蔵されたペレット形状のポリカーボネートの含水率が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項8に記載のポリマーペレットの貯蔵方法。
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