JP5587235B2 - ポリマーペレットの気力輸送方法およびポリマーペレットの貯蔵方法 - Google Patents
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Description
ポリマーペレットを乾燥する方法については、例えば、特許文献1に、樹脂成形材料のペレットを貯蔵カプセルに供給し、真空処理して脱気乾燥する方法が記載されている。
しかし、このような後処理を行う方法は設備が過大になるばかりか、省エネルギーの観点からも問題がある。
気力輸送されるポリマーペレットの温度が高い場合、気体中に蒸発した水蒸気が、再びポリマーペレットの表面に付着したり内部に拡散する可能性は低い。しかし、ポリマーペレットが、気力輸送中や気力輸送で運ばれた貯蔵容器中等で冷却されると、水分が再びポリマーペレットに吸着し、最終的にはペレット内部に取り込まれる可能性がある。特に、吸湿性のポリマーペレットを気力輸送する場合、このような現象が起きやすい。このため、ポリマーの種類によって、ポリマーの加水分解や成形時のトラブル等を生じるおそれがある。
このような分子量が比較的低い芳香族ポリカーボネートは、ポリマーペレットの表面や内部に吸着した水が原因となる加水分解が生じると、芳香族ポリカーボネートを使用して得られる成形体の機械的強度が大幅に低下する傾向があり、高品質な光ディスク等が得られないという問題がある。
また、ポリマーペレットに水が付着したまま、例えば、350℃程度の高温で溶融成形加工が行われると、ディスク等の成形体の表面にシルバーストリーク等の表面欠陥が生じ、光学用記録材料としては致命的な品質トラブルを招くという問題がある。
即ち、本発明の目的は、吸湿性のポリマーペレットを気力輸送する際に、ポリマーペレットの含水率を増大させることなく簡便な手段で輸送することができるポリマーペレットの輸送方法を提供することにある。
尚、吸湿性のポリマーペレットとは、平衡含水率が0.1重量%以上であるポリマーのペレットを言う。また、平衡含水率とは、温度30℃、湿度70%の状態で吸湿と放湿が見かけ上平衡に達したときの含水率である。
[1]請求項1に係る発明は、露点が0℃以下の気体を使用し、吸湿性のペレット形状のポリカーボネートを気力輸送することを特徴とするポリマーペレットの輸送方法である。
[2]請求項2に係る発明は、前記ペレット形状のポリカーボネートは、粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000のポリカーボネートのペレットであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの輸送方法である。
[3]請求項3に係る発明は、前記ペレット形状のポリカーボネートは、原料としてジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、溶融重縮合反応を行うことにより得られるポリカーボネートのペレットであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの輸送方法である。
[4]請求項4に係る発明は、前記気体は、空気であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの輸送方法である。
[5]請求項5に係る発明は、露点が0℃以下の気体により気力輸送されたポリマーペレットの含水率が、0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの輸送方法である。
[7]請求項7に係る発明は、前記気体除湿工程において、ペレット形状のポリカーボネートの気力輸送に用いる気体の露点を−10℃以下に調整することを特徴とする請求項6に記載のポリマーペレットの気力輸送方法である。
[8]請求項8に係る発明は、前記輸送工程において、前記輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状のポリカーボネートを予め露点が0℃以下の気体が充填された貯蔵設備に気力輸送することを特徴とする請求項6又は7に記載のポリマーペレットの気力輸送方法である。
[9]請求項9に係る発明は、前記ペレット形状のポリカーボネートは、粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000の芳香族ポリカーボネートのペレットであって、当該ペレットはリン原子を重量換算で0.5ppm〜10ppmの範囲で含むことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のポリマーペレットの気力輸送方法である。
[11]請求項11に係る発明は、前記貯蔵容器中に貯蔵されたペレット形状のポリカーボネートの含水率が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項10に記載のポリマーペレットの貯蔵方法である。
ポリカーボネートは、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性等にも優れたエンジニアリングプラスチックスであるので、近年、OA部品、自動車部品、建築材料等に幅広く用いられている。
最後に、遠心脱水機等にて水分除去した後、貯蔵容器である貯槽サイロに輸送される。このとき、本発明の実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法、および貯蔵方法が使用される。
ここで、気体の露点とは、一般に、気体中の水蒸気の分圧を飽和水蒸気圧とする温度であって、徐々に冷却された気体に含まれる水分が凝縮し、露ができ始めるときの温度である。
ポリカーボネート等のポリマーのペレットは、通常、含水率が0.1重量%以下の状態で製品として出荷される。本実施の形態では、気力輸送に使用する気体の露点を0℃以下に管理することにより、ポリマーのペレットの含水率を0.1重量%以下に維持することが可能となる。
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル1.01〜1.30、好ましくは1.02〜1.20のモル比で用いられる。モル比が過度に小さくなると、得られる芳香族ポリカーボネートの末端OH基が多くなり、得られる芳香族ポリカーボネートの熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が過度に大きくなると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネートの生産が困難となる他、未反応の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品の臭気の原因となることがあり、好ましくない。
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法により芳香族ポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム化合物、マグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲で用いられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウム等が好ましい。
次に、芳香族ポリカーボネートの製造方法について説明する。
芳香族ポリカーボネートの製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製し(原調工程)、これらの化合物を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階の重縮合反応させる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は通常、複数基の反応器が用いられ、これらの反応器は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、押出機にて停止剤により反応を停止させた後、反応液中の未反応原料や反応副生物を除去し、熱安定剤や離型剤等の添加剤を添加し(押出工程)、押出機から排出される芳香族ポリカーボネートのストランドはストランドバス等を経由して冷却水により冷却され、所定の粒径のペレットに成形される(ペレット化工程)。次に、製造方法の各工程について説明する。
芳香族ポリカーボネートの原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、溶融混合物として調製される。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
この際、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの割合は、炭酸ジエステルが過剰になるように調整され、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルは通常1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの割合になるように調整される。
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段工程で連続的に行われる。具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
多段工程の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に排出するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られる芳香族ポリカーボネートの色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましく、最終反応器の温度設定は前の反応器の設定温度よりも低温にすることもできる。
触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
重縮合工程後、押出工程において反応液中の未反応原料、エステル交換反応で副生するヒドロキシ化合物、ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物が除去される。この除去は、通常、ベント式の押出機により連続的に行われる。
使用する押出機としては、ベント部を備えたものであればどのような形式のものでも使用することができ特に限定されない。例えば、ベント式の単軸又は多軸押出機が挙げられるが、特に、かみ合い型二軸押出機が好ましい。押出機の軸の回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。ベント数は、通常2段〜10段の多段ベントが用いられる。
押出工程において添加する酸性化合物又はその誘導体としては、塩基性エステル交換触媒を中和するものであれば、いずれも使用でき特に限定されない。例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステルが挙げられる。これらの酸性化合物又はその誘導体のなかでも、スルホン酸類又はそのエステルが特に好ましい。
これらの添加剤の中から熱安定剤を例に挙げると、好ましい熱安定剤の例としては、例えば、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、イオウ系安定剤、エポキシ系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等が挙げられる。これらの熱安定剤の中でもリン系安定剤が好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
本実施の形態では、熱安定剤としてリン系安定剤を使用し、上述した範囲の量のリン系安定剤を添加することにより、後述するペレット化工程を経て製品化された芳香族ポリカーボネートのペレットにリン系安定剤が含まれる。本実施の形態では、芳香族ポリカーボネートのペレットに含まれるリン系安定剤の量が、芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、リン原子の量(重量換算)として0.5ppm〜10ppm、好ましくは0.5〜5ppmの範囲である場合に、本発明により得られる効果が大きい。
押出工程において押出機より排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートは、通常、ストランドバス等を経由して冷却水により冷却され、ストランドカッターにより、通常、粒径1mm〜5mm程度のペレットになるように切断され、その後、脱水機等により水分除去した後に貯槽サイロに収納される。
また、エステル交換触媒の使用量は、エステル交換触媒がアルカリ金属である場合、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して金属原子の含有量として1×10−8〜1×10−5モル、好ましくは1×10−7〜1×10−6モルの範囲で用いられる。
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用される芳香族ポリカーボネートの製造方法の一例を具体的に説明する。
図1は、芳香族ポリカーボネートの製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、芳香族ポリカーボネートは、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製する原調工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応させる重縮合工程とを経て製造され、その後、反応液中の未反応原料や反応副生物を除去し任意の添加剤を添加し溶融混練する押出工程と、ペレット化工程を経て芳香族ポリカーボネートのペレットが成形される。
また、第1原料調製槽2aには、DPC供給口1a−1から、炭酸ジエステルであるジフェニルカーボネート(以下、DPCと記載することがある。)が溶融状態で供給され、BPA供給口1bからは、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールA(以下、BPAと記載することがある。)が粉末状態で供給され、溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールAが溶解される。
さらに、4個の反応器には、それぞれ重縮合反応により生成する副生物等を排出するための留出管8a,8b,8c,8dが取り付けられている。留出管8a,8b,8c,8dは、それぞれ凝縮器81a,81b,81c,81dに接続し、また、各反応器は、減圧装置82a,82b,82c,82dにより、所定の減圧状態に保たれる。
ペレット化工程においては、押出機11aより排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートを冷却水により冷却するストランド冷却機13aと、冷却したストランドを所定の粒径にカットするカッター14aと、ペレットの水分を除去するための遠心脱水機14bと、規格外のペレットを篩い分ける篩分機15aと、乾燥したペレットを格納する貯槽サイロ16a,16bとが設けられている。
次に、原料混合物は、原料供給ポンプ4aを経由して第1竪型反応器6aに連続的に供給される。また触媒として、水溶液状の炭酸セシウムが、原料混合物の移送配管途中の触媒供給口5aから連続的に供給される。
本実施の形態において、第1竪型反応器6aと第2竪型反応器6bとにそれぞれ取り付けられた凝縮器81a,81bから、フェノール等の副生物が連続的に液化回収される。また、第3竪型反応器6cと第4横型反応器9aとにそれぞれ取り付けられた凝縮器81c,81dにはコールドトラップ(図示せず)が設けられ、副生物が連続的に固化回収される。
押出機11aより排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートはストランド冷却機13aを経由してカッター14aでペレット化され、遠心脱水機14bにより遠心脱水処理され、篩分機15aにて規格外のペレットを除去した後に、気力輸送により貯槽サイロ16a,16bに導入される。気力輸送については後述する。
図2には、前述した図1に示す製造装置から供給された芳香族ポリカーボネートのペレット(ポリマーペレット)を貯蔵する貯槽サイロ16a,16b(貯蔵容器、貯蔵設備)と、芳香族ポリカーボネートのペレットの気力輸送に使用する空気(Air)を除湿し圧縮した後、送り出す除湿機17とが示されている。
また、貯槽サイロ16a,16bの槽底には、内部に貯蔵した芳香族ポリカーボネートのペレットを排出するためのペレット出口配管26a,26bがそれぞれ設けられている。
また、空気輸送配管23から分岐し、除湿機17から排出される空気を貯槽サイロ16a,16b内に導く空気輸送配管24が設けられている。
さらに、空気輸送配管23から分岐し、貯槽サイロ16a,16bの槽底に設けられたペレット出口配管26a,26bと結合し、貯槽サイロ16a,16b内から排出される芳香族ポリカーボネートのペレットを、装置外に移送するための空気を供給する空気輸送配管25が配設されている。
除湿機17の空気供給口21から除湿機17内に導入された空気は、除湿機17に内蔵された除湿ロータ(図示せず)を通過する際に、空気中に含まれた水分が除湿材によって吸着される(気体除湿工程)。その後、図示しない空気圧縮機により圧縮され(気体圧縮工程)、除湿機17の空気排出口22より排出される。
本実施の形態では、芳香族ポリカーボネートのペレットは、露点が0℃以下に調整された圧縮空気により気力輸送されることにより、ペレットの含水率が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは、0.02重量%以下に保たれた状態で貯槽サイロ16a,16b内に貯蔵される。ペレットの含水率の下限には特に制限はない。
特に、含水率が0.02重量%以下に保たれた状態で貯槽サイロ16a,16b内に貯蔵される芳香族ポリカーボネートのペレットは、例えば、350℃程度で射出成形法によって成形される光ディスクの基板用の材料として好適である。
本実施の形態では、上述した範囲の風量で圧縮空気を空気輸送配管23に供給することにより、芳香族ポリカーボネートのペレットの輸送速度は、通常、1t/時間〜20t/時間、好ましくは2t/時間〜10t/時間、さらに好ましくは3t/時間〜8t/時間で気力輸送される。
このように、露点が0℃以下に調整された空気が貯槽サイロ16a,16b内に充填されていることにより、例えば、芳香族ポリカーボネートのペレットが熱安定剤としてリン系安定剤を含むことにより吸湿性が増大した場合であっても、貯槽サイロ16a,16b内にペレットは、含水率が増大することなく貯蔵されている。
図2に示すように、ペレット出口配管26a,26bにより貯槽サイロ16a,16bから排出された芳香族ポリカーボネートのペレットは、除湿機17によって露点が0℃以下に調整され空気輸送配管25を経て供給された空気により、芳香族ポリカーボネートのペレットが水分を吸着しないように乾燥状態が保たれたまま製造装置外に気力輸送される。
また、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送するための気体として空気を使用したが、これに限定されるものでなく、気力輸送するポリマーのペレットの性質等に応じ、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等を使用することできる。
ポリマーのペレットの形状は、粒状、不定形状、平板状、円柱状等が挙げられ、特に限定されることはない。また、ペレットの大きさは、最も長い部分の長さが20mm以下に加工されたものが好ましい。
ポリマーペレットの含水率は、水分測定装置(ダイアインスツルメンツ社製CA−100型)及び水分気化装置(ダイアインスツルメンツ社製VA−100型)を用いた電量滴定法により測定した。試料とするポリマーペレットの重量は、0.2g〜1gである。水分気化装置におけるポリマーペレットの加熱条件は、250℃である。
ポリマーペレットの気力輸送に使用する気体の露点は、露点測定器(株式会社いすず製作所社製形式ISUZU−1A)を用い、以下の手順で測定した。
(i) 露点を測定する気体を露点測定器の冷却筒に連続的に吹き付ける。
(ii)気体が連続的に吹き付けられた冷却筒にエタノールを入れ、その中にドライアイスの小片を少しずつ投入し、注意深く撹拌しながら徐々に冷却する。そして、冷却筒の鏡面を目視にて観察し、鏡面上に露が生じた時点でドライアイスの投入を止める。尚、鏡面上に露が生じた時点の、冷却筒中のエタノールの温度をT1とする。
(iii)次いで、冷却筒に入れたエタノール及びドライアイスを撹拌し、冷却筒の鏡面上の露が消えるまで徐々に温度を上昇させる。鏡面上の露が消える時点の冷却筒中のエタノールの温度をT2とする。
(iv)T1とT2との平均値を、その気体の露点とする。
気力輸送した芳香族ポリカーボネートのペレットを射出成形機(住友重機社製DISC3)に供給し、以下の条件で、芳香族ポリカーボネートのディスク(径(φ)120mm、厚さ0.6mm)を100枚成形し、得られたディスク表面におけるシルバーストリークの有無を目視にて確認した。
バレル設定温度:ペレット供給側から350℃、370℃、380℃、380℃
金型温度:128℃
成形サイクル:6.0秒
尚、射出成形機による成形の初期100ショット分を廃棄する。
気力輸送した芳香族ポリカーボネートのペレットを、窒素雰囲気下、120℃で6時間乾燥する。次に、乾燥した芳香族ポリカーボネートのペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度360℃、成形サイクル30秒間の条件で、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形する操作を繰り返す。
そして、6ショット目〜15ショット目で得られた射出成形片のイエローインデックス(YI)値をカラーテスタ(コニカミノルタ社製CM−3700d)を用いて測定し、平均値を算出する。イエローインデックス(YI)値が小さい程、色相が良好で品質が優れることを示す。
前述した芳香族ポリカーボネートの初期色相の評価において、射出成形機による射出成形片の成形サイクルを、16ショット目から10分間とし、22ショット目まで成形操作を繰り返す。そして、20ショット目〜22ショット目で得られた射出成形品のYI値をカラーテスタを用いて測定し、平均値を算出する。
芳香族ポリカーボネートのペレットを塩化メチレンに溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液における極限粘度[η]を測定し、以下の粘度式(1)により粘度平均分子量(Mv)を求める。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83 (1)
ポリマーとしてポリカーボネートを使用し、ハニカム型吸着式除湿装置を使用して−20℃の露点の圧縮空気を空気輸送配管に供給し、ポリカーボネートのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの空気輸送配管中の風量は1800Nm3/時間であり、ポリマーペレットは、4t/時間の輸送速度で貯槽サイロに気力輸送された。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.09重量%であった。
ポリマーとしてポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用し、露点が6℃の圧縮空気を輸送配管に供給し、PBTのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの輸送配管中の風量は1800Nm3/時間であり、ポリマーペレットは、4t/時間の輸送速度で貯槽サイロに気力輸送された。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.2重量%であった。
ポリマーとしてポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)を使用し、ハニカム型吸着式除湿装置を使用して−30℃の露点の圧縮空気を輸送配管に供給し、PBSLのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの輸送配管中の風量は720Nm3/時間であり、ポリマーペレットは、2t/時間の輸送速度で貯槽サイロに気力輸送された。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.05重量%であった。
ポリマーとしてポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)を使用し、32℃で湿度70%の未処理の外気(露点26℃)を使用した圧縮空気を輸送配管に供給し、PBSLのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの輸送配管中の風量は720Nm3/時間であり、ポリマーペレットは、2t/時間の輸送速度で貯槽サイロに気力輸送された。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.2重量%であった。
図1に示す製造装置を使用し、以下の操作を行い、粘度平均分子量(Mv)15,300である芳香族ポリカーボネートを製造した。
初めに、窒素雰囲気下、内温140℃に制御された第1原料調製槽2aに、DPC供給口1a−1からジフェニルカーボネート(DPC)を連続的に供給し、BPA供給口1bからビスフェノールA(BPA)を連続的に供給し、DPCとBPAとが均一な溶融状態で、一定のモル比(DPC/BPA=1.12)の混合物((DPC/BPA)混合物と記すことがある。)になるように調整した。
第1竪型反応器6aは、内温220℃、圧力13.3kPaに制御した。重縮合反応液の液面レベルは、第1竪型反応器6a槽底部の排出ラインに設けられたバルブ(図示せず)の開度を調節して一定に保たれ、これにより第1竪型反応器6aにおける重縮合反応液の平均滞留時間が1.5時間になるように調整した。
前述したシルバーストリークの評価方法((3)ディスク表面のシルバーストリークの評価)に基づき、射出成形機により100枚のディスクを成形し、得られたディスク表面におけるシルバーストリークの有無を目視にて確認したところ、100枚全てのディスクにおいてシルバーストリークは見られなかった。
さらに、前述した初期色相の評価方法((4)芳香族ポリカーボネートの初期色相の評価)により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.25であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法((5)加熱状態で滞留した芳香族ポリカーボネートの色相の評価)で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.07であった。
このように含水率が低下した状態で貯槽サイロ16a,16bに貯蔵された芳香族ポリカーボネートのペレットを用いて成形したディスクには、シルバーストリークが観察されないことから、本発明の実施の形態で説明したポリマーペレットの気力輸送方法が、光学材料として有用な芳香族ポリカーボネートのペレットを輸送する方法として優れていることが分かる。
実施例3において、露点が−20℃になるように調整した圧縮空気を用いる他は、実施例3と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が−20℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、0.009重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき、射出成形機によりディスクを成形し、得られたディスク表面におけるシルバーストリークの有無を目視にて確認したところ、成形した100枚のディスクの中、97枚のディスクにシルバーストリークが見られなかった。
さらに、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.28であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.11であった。
実施例3において、露点が−5℃になるように調整した圧縮空気を用いる他は、実施例3と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が−5℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、0.015重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき、射出成形機によりディスクを成形し、得られたディスク表面におけるシルバーストリークの有無を目視にて確認したところ、成形した100枚のディスクの中、92枚のディスクにシルバーストリークが見られなかった。
さらに、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.30であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートのペレットの色相は3.20であった。
実施例3において、露点が5℃になるように調整した圧縮空気を用いる他は、実施例3と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が5℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、0.025重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき成形した100枚のディスクの中、シルバーストリークが見られたディスクが31枚に大幅に増大した。
また、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.37であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.23であった。
実施例4において、押出機11aにトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを、芳香族ポリカーボネートの重量に対し、リン原子の重量換算として0.4ppmになるよう添加し、その他は実施例4と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が−20℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、実施例4と同様に0.009重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき成形した100枚のディスクにはシルバーストリークが見られなかった。
また、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.44であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.50であり、実施例4で示した結果より悪化した。
実施例4において、押出機11aにトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを、芳香族ポリカーボネートの重量に対し、リン原子の重量換算として13ppmになるよう添加し、その他は実施例4と同様な操作を行い、芳香族ポリカーボネートのペレットを気力輸送した。
露点が−20℃の圧縮空気により気力輸送された芳香族ポリカーボネートのペレットの含水率は、実施例4と同様に0.009重量%であった。
シルバーストリークの評価方法に基づき成形した100枚のディスクの中、15枚のディスクにシルバーストリークが見られたが、85枚のディスクにシルバーストリークが見られなかった。これは、芳香族ポリカーボネートに添加されたリン原子の添加量が実施例4の場合より多いことにより、実施例4で得られた芳香族ポリカーボネートのペレットの場合より加水分解反応が促進されたためと考えられる。
また、初期色相の評価方法により評価した芳香族ポリカーボネートの初期色相は1.41であり、加熱状態で滞留した後の色相の評価方法で評価した芳香族ポリカーボネートの色相は3.46であり、実施例4で示した結果より悪化した。
Claims (9)
- 露点が0℃以下の気体を使用し、吸湿性の粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000で、熱安定剤としてリン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルからなるリン系安定剤をリン原子の量(重量換算)として0.5ppm〜5ppmの範囲で含有するポリカーボネートのペレットを圧縮された圧力気体を用いて気力輸送することを特徴とするポリマーペレットの気力輸送方法。
- 前記ポリカーボネートのペレットは、原料としてジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、溶融重縮合を行うことにより得られるポリカーボネートのペレットであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
- 前記気体は空気であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
- 露点が0℃以下の気体により気力輸送されたポリマーペレットの含水率が、0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
- 吸湿性の粘度平均分子量(Mv)が10,000〜17,000で、熱安定剤としてリン酸エステル及び/又は亜リン酸エステルからなるリン系安定剤をリン原子の量(重量換算)として0.5ppm〜5ppmの範囲で含有するポリカーボネートのペレットを圧力気体流と共に輸送配管を介し気力輸送するポリマーペレットの気力輸送方法であって、
ペレット形状のポリカーボネートの気力輸送に用いる気体に含まれる水分量を低減し当該気体の露点を0℃以下にする気体除湿工程と、
前記気体除湿工程において露点が0℃以下に調整された気体を圧縮する気体圧縮工程と、
前記気体除湿工程において圧縮された圧力気体をペレット形状のポリカーボネート1トン当たり50Nm3/時間〜600Nm3/時間で輸送配管内に供給する圧力気体供給工程と、
前記圧力気体供給工程において輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状のポリカーボネートを当該輸送配管を介し気力輸送する輸送工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。 - 前記気体除湿工程において、ペレット形状のポリカーボネートの気力輸送に用いる気体の露点を−10℃以下に調整することを特徴とする請求項5に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
- 前記輸送工程において、前記輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状のポリカーボネートを予め露点が0℃以下の気体が充填された貯蔵設備に気力輸送することを特徴とする請求項5又は6に記載のポリマーペレットの気力輸送方法。
- 貯蔵容器中に露点が0℃以下の気体を充填し、当該貯蔵容器に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の気力輸送方法により輸送された、吸湿性のペレット形状のポリカーボネートを貯蔵することを特徴とするポリマーペレットの貯蔵方法。
- 前記貯蔵容器中に貯蔵されたペレット形状のポリカーボネートの含水率が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項8に記載のポリマーペレットの貯蔵方法。
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