JP5332100B2 - 芳香族ポリカーボネートの連続製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
このような芳香族ポリカーボネートの製造方法としては、ビスフェノールA等のビスフェノール類とホスゲンとを直接反応させる方法(界面法)、ビスフェノールA等のビスフェノール類とジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合反応させる方法(溶融法)が知られている。なかでも、エステル交換反応による溶融法は、界面法と比較して安価に芳香族ポリカーボネートを製造することができるという利点を有している。
このような切り替えロスや品質低下を減少させる方法として、複数の反応器を接続した製造装置において、前段の反応器においてビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを重縮合させ(前期重合工程)、引き続いて行う重縮合反応(後期重合工程)を複数化することにより、複数の品種の芳香族ポリカーボネートを連続的に製造する方法が報告されている(特許文献1参照)。
しかしながら、該溶融混合槽や該反応器で触媒を供給した場合に、得られるポリマーが目標とする分子量にまで到達しないといった原因不明のトラブルが発生することがあった。
そのため、重合温度、重合圧力あるいは滞留時間等の操作条件の変更を余儀なくされ、色相等の品質が低下したり、所望の分子量の製品が得られないといった問題があった。
即ち、本発明の目的は、溶融法により複数品種の芳香族ポリカーボネートを製造する方法において、切り替えロスや品質低下が減少した芳香族ポリカーボネートの連続製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、複数品種の芳香族ポリカーボネートが切り替えロス等が生じることなく製造することが可能な芳香族ポリカーボネートの製造装置を提供することにある。
さらに、本発明が適用される芳香族ポリカーボネートの連続製造方法においては、複数系列の重縮合工程において、同一種及び/又は異なる複数種の芳香族ポリカーボネートを製造することが好ましい。
特に、原調工程以降に炭酸ジエステルを追加添加する場合は、(炭酸ジエステル/芳香族ジヒドロキシ化合物)の原料モル比が1.0以上、1.3以下好ましくは1.00以上、1.30以下、更に好ましくは1.001以上、1.300以下の範囲内となるように、フィルターでろ過した炭酸ジエステルを添加し、次いで、エステル交換触媒存在下で溶液重縮合することが好ましい。
該原料モル比が1.0より低い場合は、反応性は高いが末端OH基の量が多くなり、熱安定性、対加水分解性等が低下する。又1.3を超えると所望の分子量のポリカーボネートを得ることが困難となる。
ここで、重縮合反応器は、直列に接続された複数基の竪型反応器と、竪型反応器に続く少なくとも1つの横型反応器と、を有することが好ましい。
本発明において、芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づく重縮合により製造される。重縮合反応は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを調製した後、複数の重合系列を備えた製造装置において行われ、1又は複数の品質の芳香族ポリカーボネートが同時に製造される。
以下、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、重縮合反応を行うことにより、芳香族ポリカーボネートを製造する方法について説明する。
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
なお、A’上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などが例示される。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを併用した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル1.0〜1.3のモル比で用いられる。同一反応条件下では、このモル比が小さくなるほど反応速度が上昇し、芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量が大きくなる傾向がある。また、この範囲でモル比が大きくなると、反応速度が低下し、粘度平均分子量は小さくなる傾向がある。
モル比が過度に小さいと、重縮合により得られる芳香族ポリカーボネートの末端OH基の量が多くなり、反応性は高くなるものの、熱安定性、耐加水分解性等が低下する傾向がある。また、モル比が過度に大きいと、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネートの生産が困難となる傾向がある。
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法により芳香族ポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム又はマグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲で用いられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
次に、本実施の形態が適用される芳香族ポリカーボネートの連続製造方法について説明する。
本実施の形態において、芳香族ポリカーボネートの製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の所望のモル比の混合物をエステル交換触媒不存在下で調製し(原調工程)、これらの化合物を、重縮合工程を複数系列有する製造装置により、それぞれエステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階の重縮合反応させる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は、複数基の竪型反応器及びこれに続く少なくとも1基の横型反応器が用いられる。通常、これらの反応器は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、反応液中の未反応原料や反応副生物を除去し(脱揮工程)、冷却された芳香族ポリカーボネートは所定の粒径のペレットに成形される(ペレット化工程)。
具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル、エステル交換触媒は、原調工程から重縮合工程になる移送の途中か、又は、重縮合工程の初期段階で添加するのが、反応制御と品質調整の点で好ましい。
また、末端停止剤、添加剤は、重縮合工程の最終段階、重縮合工程から脱揮工程への移送時、又は脱揮工程の初期段階で添加することが、その添加目的に適っている。
熱可塑性樹脂の添加の時期は特に制限されないが、押出機を用いて脱揮工程を行う場合は、この工程で添加するのが一般的である。
ここで、フィルターの形態としては、一般にキャンドル型、プリーツ型、リーフディスク型等の公知の物が使用でき、特に限定されない。フィルターの材質は、前述した化合物に不活性であり、かつ溶出成分がなければ特に限定されるものではないが、通常、金属、特にステンレスが用いられ、例えば、SUS304、SUS316等が好ましく使用される。
使用するフィルターの目開きは、特に限定されないが、通常、絶体濾過精度が、0.5μm〜50μm、好ましくは、0.5μm〜20μmである。尚、絶体濾過精度とは、フィルターに粒子を通過させた時の除去率が99%以上となる粒子径を意味する。
次に、製造方法の各工程について説明する。
芳香族ポリカーボネートの原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、エステル交換触媒不存在下で溶融混合物として調製される。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
この際、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの割合は、炭酸ジエステルが過剰になるように調整され、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルは通常1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの割合になるように調整される。
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応による重縮合は、それぞれ各系列において、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で連続的に行われる。具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.33×10−3kPa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
重縮合工程を多段方式で行う場合の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に排出するために、上記の反応条件内で、通常、段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られる芳香族ポリカーボネートの色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、低滞留時間の設定が好ましい。
ここで、反応器としては、例えば、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が用いられる。
触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
各系列における重縮合工程後、脱揮工程において反応液中の未反応原料、エステル交換触媒、エステル交換反応で副生するヒドロキシ化合物、ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物が除去される。脱揮処理は、通常、ベント式の押出機により連続的に行われる。
使用する押出機としては、ベント部を備えたものであればどのような形式のものでも使用することができ特に限定されないが、例えば、ベント式の単軸又は多軸押出機が挙げられるが、特に、かみ合い型二軸押出機が好ましい。押出機の軸の回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。ベント数は、通常2段〜10段の多段ベントが用いられる。
脱揮工程において添加する酸性化合物又はその誘導体としては、塩基性エステル交換触媒を中和するものであれば、いずれも使用でき、特に限定されない。例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。これらの酸性化合物又はその誘導体は、単独で使用しても、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの酸性化合物又はその誘導体の中でもスルホン酸類又はそのエステル類が好ましく、特に、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチル等が特に好ましい。
脱揮工程において押出機より排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートは、通常、ストランドバスを経由してストランドカッターによりペレット化され、その後、遠心脱水機等により水分除去した後に製品サイロに収納される。
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用される芳香族ポリカーボネートの連続製造方法を説明する。
図1は、2系列の重縮合工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、品質が異なる2品種の芳香族ポリカーボネートは、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を含む混合物を、エステル交換触媒不存在下で調製する1つの原調工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いてそれぞれ重縮合反応させる2系列の重縮合工程(第1系列重縮合工程、第2系列重縮合工程)とを経て製造される。
そして、その後、重合反応液中の未反応原料や反応副生物を除去する脱揮工程(第1系列脱揮工程、第2系列脱揮工程)と、ペレット化工程(第1系列ペレット化工程、第2系列ペレット化工程)を経て、2品種の芳香族ポリカーボネートのペレットがそれぞれ製造される。
エステル交換触媒不存在下で原料を調製する1つの原調工程に引き続き、2系列の重縮合工程では、各系列毎にそれぞれの品質の芳香族ポリカーボネートが製造される。
2系列の重縮合において芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の重縮合反応を行うことにより、単独の重縮合工程を有する製造装置を用いて製造する際の切り替えロスや品質低下の問題が解消され、例えば、平均分子量や末端基数の異なる複数の芳香族ポリカーボネートが、安定的に効率よく同時に連続製造することができる。
図1に示すように、原調工程においては、溶融混合槽である直列に接続した第1原料混合槽2a及び第2原料混合槽2bが設けられている。また、調製した原料を2系列(第1系列、第2系列)の重縮合工程(第1系列重縮合工程、第2系列重縮合工程)にそれぞれ供給するための原料供給ポンプ4a,4bとが設けられている。第1原料混合槽2aと第2原料混合槽2bとには、例えばアンカー型攪拌翼3a,3bがそれぞれ設けられている。
本実施の形態では、第1原料混合槽2aには、DPC供給口1a−1から、炭酸ジエステルであるジフェニルカーボネート(以下、DPCと記載することがある。)が融液状態で供給され、BPA供給口1bからは、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールA(以下、BPAと記載することがある。)が粉末状態で供給される。
第1系列ペレット化工程においては、押出機11aより排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートを冷却するストランドバス13aと、冷却したストランドを所定の粒径にカットするストランドカッター14aと、ペレットの水分を除去するための遠心脱水機15aと、乾燥したペレットを格納する製品サイロ16a,16bとが設けられている。
第2系列ペレット化工程においては、ストランドバス13bと、ストランドカッター14bと、遠心脱水機15bと、製品サイロ16c,16dとが設けられている。
図1に示すように、原調工程において、窒素ガス雰囲気下、所定の温度で調製されたDPC融液と、窒素ガス雰囲気下計量されたBPA粉末とが、それぞれDPC供給口1a−1とBPA供給口1bから第1原料混合槽2aに連続的に供給される。そして、第1原料混合槽2aにおいてDPC融液とBPA粉末とが、エステル交換触媒不存在下で混合される。第1原料混合槽2aの液面が移送配管中の最高位と同じ高さを超えると、原料混合物が第2原料混合槽2bに移送され、さらに攪拌混合される。
尚、第1系列においては、所定の温度で調製されたDPC融液が、原料供給ポンプ4aと第1竪型反応器6aとを接続する移送配管の途中に設けたDPC供給口1a−2から供給される。
尚、DPC融液の供給口は第1竪型反応器6aの手前に設けることに限定されず、例えば、第1竪型反応器6aと第2竪型反応器6bとの中間、第2竪型反応器6bと第3竪型反応器6cとの中間等、必要に応じて設けることが可能である。また、DPC融液の供給口の数は、必要に応じて適宜選択される。
さらに、後述する第2系列においても、第1系列と同様に、所定のDPC供給口を設け、DPC融液を供給することにより、前述した原調工程で調製した(DPC/BPA)混合物のモル比を必要に応じて調整することができる。
複数系列の重縮合工程の各系列に供給されるエステル交換触媒の量は、各系列で製造される芳香族ポリカーボネートの品質に応じて適宜選択され、特に限定されない。また、エステル交換触媒の供給口の個数も限定されず、例えば、複数個の触媒供給口を設け、エステル交換触媒を分割して供給することも可能である。
さらに、後述する第2系列においても、第1系列と同様に、所定の触媒供給口を設け、エステル交換触媒を供給することができる。
本実施の形態においては、第1竪型反応器6a(6d)と第2竪型反応器6b(6e)とにそれぞれ取り付けられた凝縮器(図示せず)からは、フェノール等の副生物が連続的に液化回収される。また、第3竪型反応器6c(6f)と第4横型反応器9a(9b)とにそれぞれ取り付けられた凝縮器(図示せず)にはコールドトラップ(図示せず)が設けられ、副生物が連続的に固化回収される。
次に、押出機11a(11b)より排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートはストランドバス13a(13b)を経由してストランドカッター14a(14b)でペレット化され、遠心脱水機15a(15b)にて水分除去した後に製品サイロ16a,16b(16c,16d)に導入される。
また、本実施の形態では、品種が異なる2種類の芳香族ポリカーボネートを、2個の系列の重縮合工程で同時に製造する例を挙げたが、必要に応じて、2個の系列の重縮合工程で同一品種の芳香族ポリカーボネートを並列で製造することも可能である。
(1)芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)
芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し以下の式より求めた。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83
(2)芳香族ポリカーボネートの末端水酸基濃度
芳香族ポリカーボネートの末端水酸基濃度は、四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem.88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行うことにより測定した。
(3)芳香族ポリカーボネートの色相
芳香族ポリカーボネートの色相は、射出成形機(株式会社日本製鋼所製J100SS−2)を用いて、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて成形した厚み3mm、一辺100mm角のシートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)で色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z)
YI値が大きいほど着色していることを示す。
図1に示すように、2系列の重縮合工程を有する芳香族ポリカーボネートの製造装置により、以下の通り、芳香族ポリカーボネートを製造した。
(原料溶液調製)
窒素ガス雰囲気下120℃で調製したDPC融液及び窒素ガス雰囲気下計量したBPA粉末を、DPC供給口1a−1とBPA供給口1bとから第1原料混合槽2aにそれぞれ供給した。DPCは供給速度87.7kg/h、BPAは供給速度89.8kg/h(DPC/BPAモル比1.040)となるように、マイクロモーション式流量計及びロスインウェイト方式の重量フィーダーで計量した。第1原料混合槽2aは、常圧窒素雰囲気下140℃に設定し、内容積0.4m3であり、アンカー型撹拌翼3aを備えている。このとき、第1原料混合槽2a内にはエステル交換触媒は存在しない。
第1原料混合槽2aと第2原料混合槽bとを通過するに要した原料混合物の全滞留時間は160分であった。原料混合物はエステル交換反応の進行はなく、BPAの反応率は0%であった。
次に、上記の原料混合物を原料供給ポンプ4a,4bをそれぞれ経由し、(1/2)ずつ同流量(88.8kg/h)の原料混合物を、第1系列の第1竪型反応器6aと第2系列の第1竪型反応器6dとにそれぞれ連続的に供給した。第1竪型反応器6aと第1竪型反応器6dとは、それぞれマックスブレンド翼7a,7dを備え、内容積0.1m3である。
また、エステル交換触媒として、炭酸セシウム水溶液(濃度0.011%)を、第1系列では原料混合物の移送配管のDPC供給口1a−2の後方に設けた触媒供給口5aから、第2系列では、移送配管の第1竪型反応器6dの直前に設けた触媒供給口5bから、それぞれ、204ml/h(BPA1モルに対し0.35×10−6モル)、292ml/h(BPA1モルに対し0.50×10−6モル)で連続的に供給した。
第1系列の第1竪型反応器6aは、窒素雰囲気下、温度220℃、圧力13.33kPa(100Torr)、翼回転数160rpmに保持し、副生したフェノールを副生物排出管8aから留出させながら平均滞留時間が60分になるように液面レベルを一定に保った。
第1竪型反応器6aより排出された重合反応液は、引き続きマックスブレンド翼7bを備えた内容積0.1m3の第2竪型反応器6b、第3竪型反応器6cおよび格子翼10aを備えた内容積0.15m3の第4横型反応器9aに順次連続供給した。
第2竪型反応器6b〜第4横型反応器9aにおける重縮合反応条件は、反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度となるようにそれぞれ下記の条件に設定した。
第3竪型反応器6c;温度260℃、圧力0.09kPa(0.7Torr)、翼回転数44rpm
第4横型反応器9a;温度265℃、圧力0.09kPa(0.7Torr)、翼回転数5rpm
第4横型反応器9aより抜き出された芳香族ポリカーボネートは、溶融状態のまま3段ベント口を具備した2軸の押出機11a(株式会社神戸製鋼所製、スクリュー径0.046m、L/D=36)に供給した。押出機11aには添加剤供給口12a,12b,12cから、p−トルエンスルホン酸ブチル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト及びステアリン酸モノグリセリドをそれぞれ供給した。これらの化合物の供給量は、芳香族ポリカーボネートに対し、それぞれ5ppm、50ppmおよび350ppmの濃度とし、定量的に供給した。
押出機11aの押し出し条件は、吐出量50kg/h、回転数150rpm、最高樹脂温度278℃であった。
粘度平均分子量(Mv);14,800
末端水酸基濃度;790ppm
YI(黄色度)=1.5
次に、第2系列における第1竪型反応器6dは、窒素雰囲気下、温度220℃、圧力13.33kPa(100Torr)、翼回転数160rpmに保持し、副生したフェノールを副生物排出管8dから留出させながら平均滞留時間が60分になるように液面レベルを一定に保った。
第1竪型反応器6dより排出した重合反応液は、引き続きマックスブレンド翼7eを備えた内容積0.1m3の第2竪型反応器6e、第3竪型反応器6fおよび格子翼10bを備えた内容積0.15m3の第4横型反応器9bに順次連続供給した。
前述した第1系列と同様に、第2竪型反応器6e〜第4横型反応器9bにおける重縮合反応条件は、反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度となるようにそれぞれ下記の条件に設定した。
第3竪型反応器6f;温度270℃、圧力0.13kPa(1.0Torr)、翼回転数44rpm
第4横型反応器9b;温度280℃、圧力0.13kPa(1.0Torr)、翼回転数5rpm
第4横型反応器9bより抜き出された芳香族ポリカーボネートは、溶融状態のまま3段ベント口を具備した2軸の押出機11b(株式会社神戸製鋼所製、スクリュー径0.046m、L/D=36)に供給した。
押出機11bには添加剤供給口12d,12eから、p−トルエンスルホン酸ブチル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ供給した。これらの化合物の供給量は、芳香族ポリカーボネートに対し、それぞれ5ppm、200ppmの濃度とし、定量的に供給した。
押出機11bの押し出し条件は、吐出量50kg/h、回転数150rpm、最高樹脂温度285℃であった。
粘度平均分子量(Mv);21,900
末端水酸基濃度;900ppm
YI(黄色度)=1.6
その結果、第2系列の製造装置により、以下の物性の色相良好な芳香族ポリカーボネートが得られた。
粘度平均分子量(Mv);22,300
末端水酸基濃度;300ppm
YI(黄色度)=1.6
第2系列においては、第3竪型反応器6fおよび第4横型反応器9bにおける反応圧力のみを変更することにより、得られた芳香族ポリカーボネートの分子量の切り替えロスは生じなかった。
なお、このとき、第1系列における製造条件は変更しなかったため、芳香族ポリカーボネート物性の変化は認められなかった。
次に、重縮合工程を1系列のみ有する製造装置により芳香族ポリカーボネートを製造する例について説明する。
図2は、原調工程1系列に対して重縮合工程1系列を有する芳香族ポリカーボネートの製造装置を説明する図である。各機器の仕様は、実施例1で使用した芳香族ポリカーボネートの製造装置における原調工程及び第1系列と同様であり、符号も同様なものを用いた。
図2に示す芳香族ポリカーボネートの製造装置において、重縮合工程の第4横型反応器9aの翼回転数を10rpmに変更したこと、及び1a−2よりDPC融液を供給しなかったこと以外は実施例1の第1系列における製造条件と同様な条件で重縮合の操作を行い、以下の物性の色相良好な芳香族ポリカーボネートを連続的に得た。
粘度平均分子量(Mv);21,200
末端水酸基濃度;200ppm
YI(黄色度)=1.6
窒素ガス雰囲気下120℃で調製したDPC融液及び窒素ガス雰囲気下計量したBPA粉末を、DPC供給口1a−1とBPA供給口1bとから第1原料混合槽2aにそれぞれ供給した。DPCは供給速度88.7kg/h、BPAは供給速度89.8kg/h(DPC/BPAモル比1.065)となるように、マイクロモーション式流量計及びロスインウェイト方式の重量フィーダーで計量した。第1原料混合槽2aは、常圧窒素雰囲気下140℃に設定し、アンカー型撹拌翼3aを備えている。
第1原料混合槽2aと第2原料混合槽2bとを通過するに要した原料混合物の全滞留時間は160分であった。原料混合物はエステル交換反応の進行はなく、BPAの反応率は0%であった。
また、エステル交換触媒として、炭酸セシウム水溶液(濃度0.011%)を、移送配管の第1竪型反応器6aの直前に設けた触媒供給口5aから、292ml/h(BPA1モルに対し0.50×10−6モル)で連続的に供給した。
第1竪型反応器6aより排出した重合反応液は、引き続きマックスブレンド翼7bを備えた内容積0.1m3の第2竪型反応器6b、第3竪型反応器6cおよび格子翼10aを備えた内容積0.15m3の第4横型反応器9aに順次連続供給した。
第2竪型反応器6b〜第4横型反応器9aにおける重縮合反応条件は、反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度となるようにそれぞれ下記の条件に設定した。
第3竪型反応器6c;温度260℃、圧力0.09kPa(0.7Torr)、翼回転数44rpm
第4横型反応器9a;温度265℃、圧力0.09kPa(0.7Torr)、翼回転数5rpm
第4横型反応器9aより抜き出された芳香族ポリカーボネートは、溶融状態のまま3段ベント口を具備した2軸の押出機11a(株式会社神戸製鋼所製、スクリュー径0.046m、L/D=36)に供給した。
押出機11aには、添加剤供給口12a,12bから、p−トルエンスルホン酸ブチル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ供給した。これらの化合物の供給量は、芳香族ポリカーボネートに対し、それぞれ5ppm、50ppmの濃度とし、定量的に供給した。
押出機11aの押し出し条件は、吐出量50kg/h、回転数150rpm、最高樹脂温度278℃であった。
粘度平均分子量(Mv);15,100
末端水酸基濃度;880ppm
YI(黄色度)=1.9
製品サイロ16a,16bに収納したこれらの芳香族ポリカーボネートは色調が悪化した。また、製造運転において、芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)、末端水酸基濃度が安定するまでに約20時間を要し、この間に製造された芳香族ポリカーボネートが切り替えロスとなった。
次に、重縮合工程において原料と触媒とを混合し、その後、複数系列の重縮合工程により芳香族ポリカーボネートを製造する例について説明する。
図3は、原料と触媒との混合物を調製する原調工程1系列と、重縮合工程2系列を有する芳香族ポリカーボネートの製造装置の一例を示す図である。各機器の仕様は、実施例1で使用した芳香族ポリカーボネートの製造装置における原調工程、第1系列及び第2系列と同様であり、符号も同様なものを用いた。
さらに第2系列では、移送配管の第1竪型反応器6dの直前に設けた触媒供給口5bから、エステル交換触媒として炭酸セシウム水溶液(濃度0.011%)を、88ml/hで連続的に供給した。
上述した製造条件の他は、実施例1で使用した芳香族ポリカーボネートの製造装置における製造条件と同様にして、以下のような粘度平均分子量(Mv)、末端水酸基濃度が異なる2種類の芳香族ポリカーボネートを同時に連続製造した。
粘度平均分子量(Mv);13,700
末端水酸基濃度;1270ppm
YI(黄色度)=2.6
第2系列
粘度平均分子量(Mv);20,100
末端水酸基濃度;1020ppm
YI(黄色度)=2.9
次に、原調工程以降において、フィルターでろ過した炭酸ジエステルを追加添加し、複数系列の重縮合工程により芳香族ポリカーボネートを製造する例について説明する。
図4は、原調工程以降で、フィルターでろ過した炭酸ジエステルを追加添加する芳香族ポリカーボネートの製造装置の一例を示す図である。各機器の仕様は、実施例1で使用した芳香族ポリカーボネートの製造装置における原調工程、第1系列及び第2系列と同様であり、符号も同様なものを用いた。
また、エステル交換触媒として、炭酸セシウム水溶液(濃度0.011%)を、第1竪型反応器6aの上部に設けた触媒供給口5aから、204ml/h(BPA1モルに対し0.35×10−6モル)で連続的に供給した。尚、第1系列及び第2系列におけるその他の製造条件は、実施例1と同様である。
その結果、第1系列及び第2系列において、それぞれ実施例1と同様な物性で、色相良好な芳香族ポリカーボネートが得られた。
Claims (5)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により溶融重縮合して芳香族ポリカーボネートを連続的に製造する方法であって、
エステル交換触媒不存在下で芳香族ジヒドロキシ化合物及び/又は炭酸ジエステルの原料溶融混合物を調製する原料調製工程(以下、「原調工程」と略記することがある。)と、
前記原調工程で調製した前記原料溶融混合物を複数基の反応器を用いてエステル交換触媒存在下で重縮合する重縮合工程とを有し、且つ、原調工程1系列当たり、複数系列の重縮合工程を有することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの連続製造方法。 - 前記原調工程以降に、芳香族ジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル、エステル交換触媒、末端停止剤、添加剤及び熱可塑性樹脂から選ばれる何れか1つ以上を添加することを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリカーボネートの連続製造方法。
- 複数系列の前記重縮合工程において、同一種及び/又は異なる複数種の芳香族ポリカーボネートを製造することを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリカーボネートの連続製造方法。
- エステル交換触媒不存在下で芳香族ジヒドロキシ化合物及び/又は炭酸ジエステルの原料溶融混合物を調製する溶融混合槽と、
前記溶融混合槽で調製した前記原料溶融混合物をエステル交換触媒存在下で重縮合反応を連続的に行う少なくとも2系列の重縮合反応器と、を備えることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造装置。 - 前記重縮合反応器は、
直列に接続された複数基の竪型反応器と、
前記竪型反応器に続く少なくとも1つの横型反応器と、を有することを特徴とする請求項4記載の芳香族ポリカーボネートの製造装置。
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