JP6167570B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法及び製造設備 - Google Patents

芳香族ポリカーボネートの製造方法及び製造設備 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族ポリカーボネートの製造方法、詳しくは、特定の原料調製装置と重縮合反応装置を備える製造設備を用いる芳香族ポリカーボネートの製造方法、及び製造設備に関する。
炭酸ジエステル及び芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として重合させる重合工程を経て芳香族ポリカーボネートを製造する場合において、原料となる炭酸ジエステル及び芳香族ジヒドロキシ化合物は、それぞれ前工程で製造された後、重合工程に運ばれて重合される。
これらの原料は、それぞれの前工程で製造された段階では溶融状態であり、一旦、冷却し、固化した後、この重合工程において、加熱、溶融、混合が行われている。
重合工程においては、加熱して両原料とも溶融されており、前工程での溶融状態をそのまま重合工程に供与すると、冷却、加熱の手間が省け、かつ、熱資源の省力化にもつながる。
このような方法として、芳香族ジヒドロキシ化合物を溶融状態のまま重合槽に供給する方法が知られている(特許文献1参照)。
特開平6−32886号公報
芳香族ジヒドロキシ化合物は、高温での安定性に欠け、分解が生じる場合がある。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物として、ビスフェノールAを用いる場合、融点以上の高温で保持すると、安定性に劣る傾向がみられる。このことは、後述する参考例3の結果からも明らかである。
この原因は、熱によって、ビスフェノールAから1分子のフェノールが脱離する熱分解反応が進行するためである。1分子のフェノールが脱離したイソプロペニルフェノール(IPP)は、得られる芳香族ポリカーボネートの黄変の原因となるため、この分解反応は、可能な限り抑制することが望まれる。
このため、芳香族ジヒドロキシ化合物は、可能な限り高温で保持する時間を短縮するのが好ましい。
そこで、本発明の目的は、芳香族ポリカーボネートを製造する際の熱資源の省力化を図るとともに、芳香族ジヒドロキシ化合物の分解を抑制し、色相の良好な芳香族ポリカーボネートを安定的に製造することのできる製造方法と、該製造方法において用いる製造設備を提供することである。
(1)炭酸ジエステル及び芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として重縮合反応させる重縮合工程を経て芳香族ポリカーボネートを製造する方法において、
前記炭酸ジエステルの溶融物の流れである溶融炭酸ジエステル流と、
前記芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物の流れである溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流とを、
合流させ配管内で混合させることにより、ポリカーボネート樹脂溶融原料を調製し、
次いで前記ポリカーボネート樹脂溶融原料を重縮合反応装置において、連続的に重縮合反応を行うことを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(2)前記重縮合工程が、エステル交換触媒の存在下に、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とを重縮合反応させる工程である上記(1)に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(3)前記エステル交換触媒が、長周期型周期表第1族元素(水素を除く)の化合物、長周期型周期表第2族元素の化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、及びアミン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物である上記(2)に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(4)炭酸ジエステルが、置換もしくは無置換のジフェニルカーボネート及びジアルキルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(5)芳香族ジヒドロキシ化合物が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(6)前記芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物である時間が、20分以内である上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(7)前記芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が、1重量%以下である上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(8)前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流の温度が、180℃以下である上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(9)前記芳香族ジヒドロキシ化合物が、芳香族モノヒドロキシ化合物を含有する芳香族ジヒドロキシ化合物から芳香族モノヒドロキシ化合物を除去した芳香族ジヒドロキシ化合物を少なくとも含む上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(10)前記芳香族モノヒドロキシ化合物を除去する方法が、蒸留である上記(9)に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(11)前記芳香族ポリカーボネート樹脂溶融原料の調製を、スタティックミキサーで行う上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(12)上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の製造方法に用いられる芳香族ポリカーボネートの製造設備であって、
前記炭酸ジエステルの溶融物の流れである溶融炭酸ジエステル流と、
前記芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物の流れである溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流とを、
合流させることにより、配管内でポリカーボネート樹脂溶融原料を調製する原料調製装置、
及び前記原料調製装置内で調製されたポリカーボネート樹脂溶融原料を用いて、連続的
に重縮合反応を行う重縮合反応装置、
を備えることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造設備。
(13)芳香族モノヒドロキシ化合物を含有する芳香族ジヒドロキシ化合物から芳香族モノヒドロキシ化合物を除去し、次いで、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物として前記原料調製装置に送り出すことにより、前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流とする芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置を、
更に備える上記(12)に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備。
(14)前記原料調製装置における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流との合流から前記重縮合反応装置入口までの流路の容積が、0.5m以上である上記(12)又は(13)に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備。
(15)前記芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置の出口から、前記原料調製装置における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流とを合流させるまでの
流路の容積をV1とし、
前記原料調製装置における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流との合流から前記重縮合反応装置の入口までの流路の容積をV2とし、
V1とV2との比であるV1/V2が0.5以下である上記(12)乃至(14)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備。
(16)前記原料調製装置内にスタティックミキサーが具備されている上記(12)乃至(15)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備。
本発明は、重縮合反応装置の前に原料調製装置を設け、高温状態の溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を保持する時間を短縮できる。さらに、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合物であるポリカーボネート樹脂溶融原料の融点は、芳香族ジヒドロキシ化合物の融点より低下し、混合した後の溶融温度は、混合物の融点付近まで低下させることができるので、芳香族ジヒドロキシ化合物の分解が抑制される。
すなわち、本発明の芳香族ポリカーボネートの製造方法及び製造設備においては、芳香族ポリカーボネートを製造する際の熱資源を省力化することが可能となるとともに、芳香族ジヒドロキシ化合物の分解を抑制することが可能となり、色相の良好な芳香族ポリカーボネートを安定的に製造することができる。
芳香族ポリカーボネートの製造設備の一部を示す工程図の例である。 参考例3(BPAの熱安定性)の結果を示すグラフである。 芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置の出口Pから合流部Qまでの流路配管、及び合流部Qから重縮合反応装置の入口Sまでの流路配管への保温配管の配置方法の例である。 芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置の出口Pから合流部Qまでの流路配管、及び合流部Qから重縮合反応装置の入口Sまでの流路配管への保温配管の配置方法の他の例である。
本発明にかかる芳香族ポリカーボネートの製造方法、及び該製造方法に用いる製造設備は、炭酸ジエステル及び芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として、エステル交換触媒を用いて重縮合反応(エステル交換反応)させる重縮合工程を経て、芳香族ポリカーボネートを製造するために用いられる。
(芳香族ポリカーボネート)
本発明における製造対象物である芳香族ポリカーボネートとは、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とを重縮合反応することにより製造されるポリマー化合物である。
(炭酸ジエステル)
炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと称する場合がある。)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル
酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
これら炭酸ジエステル(前記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いられる。すなわち、炭酸ジエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、1.01〜1.30倍量(モル比)、好ましくは1.02〜1.20倍量(モル比)で用いられる。モル比が小さすぎると、得られる芳香族ポリカーボネートの末端水酸基量が多くなり、芳香族ポリカーボネートの熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が大きすぎると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネートの生産が困難となる場合や、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となる場合がある。
(芳香族ジヒドロキシ化合物)
芳香族ジヒドロキシ化合物は、分子内に一つ以上の芳香環を有し、二つの水酸基がそれぞれ芳香環に結合された化合物である。このような芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェノ−ル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA(以下、BPAと称する場合がある。))が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
(エステル交換触媒)
前記のエステル交換反応においては、エステル交換触媒が用いられる。エステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、長周期型周期表第1族元素(水素を除く)(以下「第1族元素(水素を除く)」と称する場合がある。)の化合物、長周期型周期表第2族元素(以下「第2族元素」と称する場合がある。)の化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、及びアミン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的には、第1族元素(水素を除く)の化合物及び第2族元素の化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。これらのエステル交換触媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常1×10−9〜1×10−1モルが好ましく、より好ましくは1×10−7〜1×10−3モル、更に好ましくは1×10−7〜1×10−5モルの範囲で用いられる。
第1族元素(水素を除く)の化合物としては、第1族元素(水素を除く)の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機化合物;第1族元素(水素を除く)のアルコール類、フ
ェノール類、有機カルボン酸類との塩等の有機化合物;等が挙げられる。ここで、第1族元素(水素を除く)としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。これらの第1族元素(水素を除く)の化合物の中でも、セシウム化合物およびカリウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウム、酢酸カリウム、炭酸カリウムが好ましい。
また、第2族元素の化合物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の水酸化物、炭酸塩等の無機化合物;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩;等が挙げられる。これらの第2族元素の化合物の中でも、マグネシウム化合物が好ましい。
塩基性ホウ素化合物としては、ホウ素化合物のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。ここで、ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p−t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリブチルホスフィン等の3価のリン化合物、又はこれらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等が挙げられる。なかでも、トリフェニルホスフィン、トリス(p−t−ブチルフェニル)ホスフィンが好ましい。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド等が挙げられる。なかでも、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイドが好ましい。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
(芳香族ジヒドロキシ化合物、特にBPAの製造)
芳香族ジヒドロキシ化合物、特にBPAは、次の方法で製造することができる。すなわち、原料としてフェノール(以下、「PL」と称する場合がある。)及びアセトンを用い、合成反応工程、低沸除去工程、晶析・分離工程、加熱溶融工程、フェノール(PL)除
去工程を経由して製造される。
次に、各工程についてそれぞれ説明する。
合成反応工程は、フェノール(PL)とアセトンとを酸性触媒の存在下で、縮合反応させてBPAを生成させる工程である。ここで用いる原料のPL及びアセトンは、化学量論量よりもPLが過剰な条件で反応させる。PLとアセトンとのモル比は、PL/アセトンの比として3〜30、好ましくは5〜20である。反応温度は通常30℃〜100℃、好ましくは50℃〜90℃、反応圧力は、一般に常圧〜5kg/cm・G、で行われる。
酸性触媒としては、塩酸等の無機酸や有機酸、イオン交換樹脂等を用いることができる。上記酸性触媒としてイオン交換樹脂を用いる場合、ゲル型で架橋度が1%〜8%、好ましくは2%〜6%のスルホン酸型陽イオン交換樹脂が好ましいが、特に限定されるものではない。
スルホン酸陽イオン交換樹脂は、そのままでも用いられるが、必要に応じて、変性させたスルホン酸陽イオン交換樹脂を用いることができる。上記変性に用いられる化合物としては、メルカプト基を有する化合物等が挙げられる。
メルカプト基を有する化合物としては、従来から上記変性の用途に用いることが知られている、2−アミノエタンチオール等のアミノアルカンチオール、2−(4−ピリジル)エタンチオール等のω−ピリジルアルカンチオール、加水分解等により容易にメルカプト基を発現する2,2−ジメチルチアゾリジン等のチアゾリジン類等の化合物を用いることができる。
上記合成反応工程で生成する反応混合物中には、一般にBPAの他に、未反応PL、未反応アセトン、触媒、反応生成水及び着色物質等の副生物が含まれる。
低沸除去工程は、合成反応工程で得られる反応混合液から低沸点成分と触媒とを除去する工程である。ここでいう低沸点成分とは、反応生成水、未反応アセトン、及びこれらと沸点が近いものである。本工程では、上記反応混合物から、これらの低沸点成分が、例えば減圧蒸留等により除去し、また触媒等の固体成分は濾過等によって除かれる。なお、固定床触媒反応器を用いる場合は脱触媒の必要は特にない。減圧蒸留は圧力50mmHg〜300mmHg、温度70℃〜130℃で行なうのが好ましく、圧力100mmHg〜200mmHg、温度80℃〜120℃で行うのがより好ましく未反応PL等が共沸により、その一部を減圧蒸留時に系外へ除くことができる。
上記晶析・分離工程は、低沸除去工程で得られた混合液を冷却し、BPAとPLとの付加物結晶を析出させて分離する工程である。この晶析・分離工程に先立って、上記低沸除去工程で得られた混合液中のBPAの濃度を、フェノールを留去又は追加することにより、10重量%〜50重量%、好ましくは20重量%〜40重量%に調整しておくことが、上記付加物結晶の収率を高め、かつスラリー状の混合液の見掛けの粘度を調節することができ、作業性を改良する上で好ましい。
晶析・分離工程における冷却は、一般に45℃〜60℃、好ましくは50℃〜55℃まで行われる。この冷却によって、BPAとPLとの付加物の結晶が析出し、系はスラリー状になる。
冷却は、外部に設けた熱交換器や、晶析機に加えられる水の蒸発潜熱による除熱によって行われる。次に、このスラリー状の液を、ろ過、遠心分離等により付加物結晶と反応副生物を含む母液とに分離し、付加物結晶を次工程に供する。分離された母液の一部又は全部は、後述する母液処理工程を経由して、合成反応工程にリサイクルして、原料として使用されるフェノールの一部又は全部として用い、更に反応収率の向上を図る。
上記加熱溶融工程は、晶析・分離工程で得られた付加物の結晶を加熱溶融する工程である。この付加物結晶の組成は、BPAが45重量%〜70重量%、好ましくは50重量%〜60重量%、PLが55重量%〜30重量%、好ましくは50重量%〜40重量%である。この結晶を100℃〜160℃、好ましくは110℃〜150℃に加熱することにより溶融して次工程に供する。
上記PL除去工程は、加熱溶融工程で得られた溶融液からPLを除去して、溶融BPAを得る工程である。PL除去工程で得られた溶融液から、減圧蒸留等の方法によってPLを除去することにより、付加物結晶を解離させて、高純度のBPAが回収できる。この減圧蒸留は、圧力10mmHg〜100mmHg、温度150℃〜220℃、好ましくは圧力20mmHg〜80mmHg、温度160℃〜200℃で、かつ、系内に存在するBPAとPLとの混合液の融点より少なくとも10℃高い温度で行うのが好ましい。減圧蒸留に加えてスチームストリッピング(Steeam Stripping)を行って、残存するPLを除去する方法も提案されている。
(芳香族ポリカーボネートの製造方法及び製造設備)
芳香族ポリカーボネートの製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の混合物を、原料調製装置で調製し(原料調製工程)、これらの化合物を、前記エステル交換反応触媒の存在下、重縮合反応装置で重縮合反応をさせる(重縮合工程)ことによって行われる。
反応方式としては、バッチ式、連続式、これらの組合せ等を用いることができるが、本発明においては、原料調製工程及び重縮合工程は連続式で行う。重縮合工程後、反応を停止させ重合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程、必要に応じて所定の粒径のペレットに形成する工程等を経て、芳香族ポリカーボネートが製造される。
(原料調製工程)
原料調製工程は、原料調製装置で行われるが、連続式で行われるので、この工程に使用される装置としては、スタティックミキサー(Static Mixer)等の連続混合機が用いられる。
また、原料調製装置に供給される芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、溶融状態で連続的に供給される。すなわち、炭酸ジエステルの溶融物の流れである溶融炭酸ジエステル流と、芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物の流れである溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流として、この原料調製装置に送られ、両者の流れは合流し、混合される。これにより、ポリカーボネート樹脂の溶融原料を調製することができる。
前記溶融炭酸ジエステル流は、炭酸ジエステルを溶融させ、原料調製装置に向かって配管中を流すことによって生成することができる。一般的には、炭酸ジエステルが製造された時は溶融状態にあるので、炭酸ジエステルの製造装置から、冷却せずにそのまま溶融状態の炭酸ジエステルを用いると、熱資源の省力化を図ることができる。
また、前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流は、芳香族ジヒドロキシ化合物を溶融させ、原料調製装置に向かって配管中を流すことによって生成することができる。一方で、高温状態の溶融芳香族ジヒドロキシ化合物は、熱分解を生じやすいため、この高温状態を長時間保持することは好ましくない。
芳香族ジヒドロキシ化合物は、製造された時点では溶融状態にあるので、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物の製造装置から、冷却せずにそのまま溶融状態の溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を用いることが考えられる。しかし、製造直後の溶融芳香族ジヒドロキシ化合物には、フェノールが含有されており、フェノール含有芳香族ジヒドロキシ化合物の混合溶
融物(以下、「第1混合溶融物」と称する場合がある。)の状態にある。この第1混合溶融物の融点は、芳香族ジヒドロキシ化合物単独の融点より低く、この第1混合溶融物の融点付近の温度だと、芳香族ジヒドロキシ化合物の分解は生じにくい。
一方、重縮合反応においては、フェノールを除去することが好ましい。このため、この第1混合溶融物からフェノールを除去して、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を得る精製工程を行うことが好ましい。
前記精製工程は、芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置によって行われる。この装置においては、前記第1混合溶融物に更に熱を加え、フェノールを除去して、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を得る。次いで、該溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を原料調製装置に送り出すことにより、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流とすることができる。
前記精製工程は、通常、減圧下で、好ましくは圧力10mmHg〜100mmHg、より好ましくは20mmHg〜80mmHgで行う。また温度は120℃〜240℃が好ましく、より好ましくは150℃〜220℃で行う。また、好ましくは第1混合溶融物の融点よりも少なくとも10℃高い温度で行う。
図1を用いて、上記工程を説明する。
まず、第1混合溶融物Aを芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11に送り、精製を行い、フェノールを留去する。次いで、精製された溶融芳香族ジヒドロキシ化合物は、送り出されて溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流A’となり、原料調製装置12に送られる。
また、溶融炭酸ジエステル流Bは、そのまま原料調整装置12に送られる。
溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流A’と溶融炭酸ジエステル流Bとは、原料調製装置12の合流部Qより混合され、原料調整装置12内で混合物Cとなる。混合物Cは、原料調製装置12の出口Rを経て重縮合反応装置13に送られる。
(重縮合工程)
前記工程で得られた溶融状態の芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合物C(以下、「第2混合溶融物」と称する場合がある。)は、ポリカーボネート樹脂溶融原料として、図1の第1重縮合反応装置13等の重縮合反応装置に連続的に送られると共に、エステル交換触媒等が加えられ、連続的に重縮合が行われる。なお、第2段目以降の重縮合反応装置については、図1には示していない。
この重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で連続的に行われる。具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜300分、好まくは、温度:180℃〜310℃、圧力:20Torr〜0.05Torr(2.7kPa〜6.7Pa)、平均滞留時間:60分〜150分である。
多段方式においては、各重縮合反応装置で、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に系外に除去するために、前記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。なお、得られる芳香族ポリカーボネートの色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。
重縮合工程を多段方式で行う場合は、通常、竪型反応装置を含む複数基の反応装置を設けて、芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量を増大させる。反応装置は通常3基〜6基、好ましくは4基〜5基設置される。
反応装置としては、例えば、攪拌槽型反応装置、薄膜反応装置、遠心式薄膜蒸発反応装置、表面更新型二軸混練反応装置、二軸横型攪拌反応装置、濡れ壁式反応装置、自由落下させながら重合する多孔板型反応装置、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイ
ヤー付き多孔板型反応装置等が用いられる。なかでも、攪拌槽型反応装置、二軸横型攪拌反応装置が好ましい。
竪型反応装置の撹拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック社製)、サンメラー翼(三菱重工業社製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業社製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼(日立製作所社製)等が挙げられる。なかでも、マックスブレンド翼(住友重機械工業社製)、ヘリカルリボン翼が好ましい。
また、横型反応装置とは、攪拌翼の回転軸が横型(水平方向)であるものをいう。横型反応装置の攪拌翼としては、例えば、円板型、パドル型、車輪型等の一軸タイプの撹拌翼やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業社製)、バイボラック(住友重機械工業社製)、あるいはメガネ翼、格子翼(日立製作所社製)等の二軸タイプの撹拌翼が挙げられる。なかでも、車輪型、メガネ翼、格子翼(日立製作所社製)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との重縮合に使用するエステル交換触媒は、通常、予め水溶液として準備されることが好ましい。触媒水溶液の濃度は特に限定されず、触媒の水に対する溶解度に応じて任意の濃度に調整される。また、水に代えて、アセトン、アルコール、トルエン、フェノール等の他の溶媒を選択することもできる。
触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
(芳香族ポリカーボネートの製造設備上の好ましい要件)
前記の芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置によって、精製された溶融芳香族ジヒドロキシ化合物が得られる。
前記したように、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物は、高温状態だと熱分解が生じやすい。このため、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流A’とする場合、高温状態を保持することになるので、熱分解が生じやすいこととなる。
一方、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物単独に比べ融点が低くなり、この混合物の溶融物である第2混合溶融物の温度を、第2混合溶融物の融点付近とすることにより、芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解を抑制することができる。このため、芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置から出た溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流A’が前記溶融炭酸ジエステル流Bと合流するまでの距離は、できるだけ短いほうが好ましい。
したがって、芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11の出口Pから、原料調製装置12における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流A’と前記溶融炭酸ジエステル流Bとを合流させる合流部Qまでの流路の容積をV1(図1のV1の破線の範囲内)とし、合流部Qから重縮合反応装置13の入口Sまでの流路の容積をV2(図1のV2の破線の範囲内)としたとき、V1とV2との比であるV1/V2が0.5以下とするのが好ましく、0.2以下とするのがより好ましい。0.5より大きいと、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が生じやすくなる傾向がある。一方、この比は、通常0.01以上が好ましい。0.01より小さいとはV2が過大であることを意味しており、設備が大きいものとなる場合がある。
V2の好ましい容積としては0.5m〜10mであり、さらに好ましくは1m〜5mである。
尚、合流部Qから重縮合反応装置13の入口Sまでの間にタンクを設置しても構わない
。ただし、その場合は該タンクの容積も合流部Qから重縮合反応装置13の入口Sまでの流路の容積V2の一部となる。
前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流A’の配管内線速は0.3m/秒以上が好ましく、0.5m/秒以上がより好ましい。また3.0m/秒以下が好ましく、2.0m/秒以下がさらに好ましく、1.5m/秒以下が最も好ましい。線速が小さいと配管内滞留時間が長くなってしまい、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が生じやすくなる虞がある。線速が大きいと配管での圧力損失が大きくなってしまい、過度に送液ポンプの能力を上げなければならず、配管との摩擦熱や送液ポンプ内での発熱により不純物が生成する虞がある。
前記第2混合溶融物の配管内線速は0.3m/秒以上が好ましく、0.5m/秒以上がより好ましい。また3.0m/秒以下が好ましく、2.0m/秒以下がさらに好ましく、1.5m/秒以下が最も好ましい。線速が小さいと配管内滞留時間が長くなってしまい、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が生じやすくなる虞がある。線速が大きいと配管での圧力損失が大きくなってしまい、過度に送液ポンプの能力を上げなければならず、配管との摩擦熱や送液ポンプ内での発熱により、不純物が生成する虞がある。
前記第1混合溶融物の温度は、230℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、200℃以下が最も好ましく、180℃以下が特に好ましい。温度が高すぎると、第1混合溶融物Aの熱分解が進み、精製芳香族ジヒドロキシ化合物に不純物多くなる場合がある。また、第1混合溶融物Aの融点以上であることが好ましく、第1混合溶融物Aの融点より10℃以上高いことが更に好ましい。
また、芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11で得られる溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流A’の温度は、220℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。温度が高すぎると、熱分解が進行し、不純物量が増加する場合がある。また、芳香族ジヒドロキシ化合物の融点以上であることが好ましい。
前記溶融炭酸ジエステル流Bの温度は130℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。また85℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。温度が高すぎると前記第2混合溶融物の温度が高くなり、芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が進行し、不純物が増加する虞があり、温度が低すぎると、前記第2混合溶融物中に芳香族ジヒドロキシ化合物が析出する虞がある。
さらに、前記第2混合溶融物の温度は、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、155℃以下が更に好ましい。温度が高すぎると、芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が進行し、不純物が増加する場合がある。また、第2混合溶融物Cの融点以上であることが好ましい。
芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11の出口Pから、原料調製装置12における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流とが合流する合流部Qまでの距離は、5m以上が好ましく、10m以上がより好ましい。また100m以下が好ましく、50m以下がより好ましい。配管距離は短いほどよいが、あまりに短いと、配置の上で、機器の設置ができなくなる虞がある。配管距離が長すぎると、芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が進行し、不純物が増加する虞がある。
合流部Qから重縮合反応装置13の入口Sまでの配管距離は50m以上が好ましく、100m以上がより好ましい。また500m以下が好ましく、300m以下がより好ましい。配管距離は短いほど好ましいが、あまりに短いと、配置の上で、機器の設置ができなくなる虞がある。配管距離が長すぎると、芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が進行し、不純物が増加する虞がある。
芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11の出口Pから合流部Qまでの流路、溶融炭酸ジエステル流の合流部Qまでの流路、及び合流部Qから重縮合反応装置13の入口Sまでの流路については、図3に示すように流路配管14の外周に保温配管15を設置することが好ましい。その際、保温配管15は流路配管14が垂直配管であれば、流路配管14の同心円状に対象に設置するのが好ましい。流路配管14が水平配管であれば、図4に示すように保温配管15を流路配管14の下半分以下に設置するのが好ましい。水平配管で図3のように流路配管14の同心円状に保温配管15を設置すると、必要以上に熱媒を使用する可能性があり、芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が進行し不純物が増加する虞がある。また、保温配管15には蒸気又は加熱オイルを流通させることが好ましい。
保温配管15の内温と流路配管14の内温との差は50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、10℃以下が更に好ましい。差が大きすぎると芳香族ジヒドロキシ化合物の熱分解が進行し、不純物が増加する虞がある。
以下、本発明の実施例によりさらに詳細に説明するが、これらに限定して解釈されるものではない。 ポリカーボネート樹脂の各評価方法について、説明する。
〔1〕粘度平均分子量
芳香族ポリカーボネートの塩化メチレン溶液(濃度(C)は0.6g/dl)を調製し、ウベローデ粘度計を用いて、この溶液の温度20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp
[η]=1.23×10−4Mv0.83
〔2〕芳香族ポリカーボネートのペレットYI値
芳香族ポリカーボネートの色相は、ASTM D1925に準拠して、ペレットの反射光におけるYI値(イエローインデックス値)を測定して評価した。
測定装置としてはコニカミノルタ社製の分光測色計(CM−5)を用いた。測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラス(CM−A212)を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックス(CM−A124)をかぶせてゼロ校正を行い、続いて、内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。
白色校正板(CM−A210)を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YI値が−0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから、再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を芳香族ポリカーボネートペレットのYI値とした。該YI値が小さいほど芳香族ポリカーボネートの黄色味が少なく、色調に優れることを意味する。
〔3〕ビスフェノールA中のイソプロペニルフェノール量
ビスフェノールAの1gをアセトン23mlに溶解させ、液体クロマトグラフィー((島津製作所社製(LC―10AT)、カラムはMCI GEL ODS)(5μm)、4.6mmID×150mmL、検出器219nm、溶離液:アセトニトリル/水=4/6容量比)で測定し、ビスフェノールA中のイソプロペニルフェノール量を定量した。
〔DPC(ジフェニルカーボネート)の製造例〕
溶融した市販フェノールとピリジン触媒を150℃に温度を保った反応器へ連続供給し、更にホスゲンガスを連続供給した。フェノールのホスゲン化反応に伴って副生される塩
化水素ガスは10℃まで冷却し凝縮した。凝縮液は反応器に戻され、未凝縮ガスはアルカリ水溶液で中和後排出した。一方、反応器からはDPCを約91重量%含有する反応液を連続的に抜き出した。反応工程でのホスゲンの反応率はほぼ100%であった。
次いで、前記反応液と約5重量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、それぞれテフロン(登録商標)ライニング製の中和混合槽に供給し、80℃で約10分間混合し、pH8.5に調整した。中和後の有機相を静置分離し、水洗混合槽に移送した。水洗混合槽で有機相に対して約30重量%に相当する温水で有機相を洗浄し、水相を分離して、粗製DPC(水1重量%、ピリジン2重量%、フェノール8重量%、及びDPC89重量%を含有)を得た。
次に、前記粗製DPCを約30kg/hrの供給速度で低沸蒸留塔の中段に連続供給した。低沸蒸留塔は内径150mm、高さ4.0mで、上部に還流装置、中央に原料供給部があり、濃縮部及び回収部にスルザーパッキング(Sulzer packing)(住友重機械工業社製)を充填した、理論段数8段の連続蒸留塔を使用した。真空度20torr、熱媒オイル温度約220℃、トップ温度80℃〜100℃、塔中段温度160℃、還流比1の条件で蒸留してDPCより低沸点物質である水、ピリジン、及びフェノールを蒸留留去した。塔底からは、約26kg/hrでDPC(水10重量ppm以下、ピリジン1重量ppm以下、及びフェノール50重量ppmを含む)を連続的に抜き出した。
更に、低沸蒸留塔の缶出液であるDPCを高沸蒸留塔に連続供給した。高沸蒸留塔は内径200mm、高さ4.0mで、上部に還流装置、中央に原料供給部があり、濃縮部及び回収部にスルザーパッキング(住友重機械工業社製)を充填した、理論段数8段の連続蒸留塔を使用した。真空度20torr、熱媒オイル温度約240℃、トップ温度約180℃、還流比0.5の条件で蒸留して、トップより精製DPCの溶融液を得た。
〔BPAの製造例〕
温度調節器を有する流通式合成反応器に、4−ピリジンエタンチオールでスルホン酸基の15%を中和した、スルホン酸型酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名ダイヤイオンSK−104)を60L(リットル)充填した。この合成反応器に、市販のフェノールとアセトンとをフェノール:アセトンのモル比が10:1の混合比で混合した混合液を温度80℃、68.2kg/hの流量で装入し、反応させた。アセトンの転化率は80%であった。反応混合物は、低沸点物(未反応アセトン、水、フェノールの一部)を5.1kg/hの流量で蒸留塔を使用して除去した後、50℃に冷却して付加物の結晶を析出させた。次いで、付加物の結晶と母液とを濾過により分離した。流量は付加物の結晶が16.5kg/hと母液が46.5kg/hであった。得られた付加物結晶を、再度27.2kg/hの流量のフェノールに溶解させた後、50℃に冷却して結晶を析出させ、濾過により付加物の結晶と母液とに分離した。流量はそれぞれ11.3kg/hと32.5kg/hであった。得られた結晶を溶融させ、BPAとフェノールの混合溶融物である第1混合溶融物を得た。
[BPAの精製]
前記のBPAの製造例で得られた第1混合溶融物を、溶融状態のまま、図1に示す芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11に送入した。次いで、180℃、0.3Torrの条件下で蒸留を行い、精製されたBPAの溶融物を得た。
(参考例1)
図1に示す装置及び配管ラインを用いて、原料調製工程及び第1重縮合反応装置への送入を行う。
[原料調製工程]
芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11で精製して得られたBPAの溶融物を、出口Pから配管を介して原料調製装置に向けて送り、温度180℃、流速0.7m/秒の溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流A’とする。
また、前記の精製DPCの溶融液を配管を介して、原料調製装置に向けて送り、温度100℃、流速0.8m/秒の溶融炭酸ジエステル流Bとする。
次に、これらの流れA’及びBを合流させ、原料調製装置12に送り込む。このとき、V1は0.16m(芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11の出口Pから、原料調製装置12における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流とを合流させる合流部Qまでの距離が30m)である。また、DPC/BPAはモル比で1.03とする。
原料調製装置12の温度を150℃、混合流を均一化した後、得られた第2混合溶融物Cを第1竪型攪拌反応器に送り、重縮合を行う。このとき、V2は0.92mとなる装置を用いる。
溶融重縮合は竪型攪拌反応器3基及び横型攪拌反応器1基を有する連続製造装置により、以下の条件で芳香族ポリカーボネートを製造する。
(第1竪型攪拌反応器):220℃、13.3kPa、平均滞留時間60分
(第2竪型攪拌反応器):260℃、4kPa、平均滞留時間60分
(第3竪型攪拌反応器):270℃、200Pa、平均滞留時間30分
(第1横型攪拌反応器):280℃、70Pa、平均滞留時間90分
前記第2混合溶融物Cを第1竪型攪拌反応器内に連続供給する。このとき第1竪型攪拌反応器直前に触媒導入管から、触媒として炭酸セシウム水溶液を、BPA1モルに対し、0.5×10−6モルの割合で、連続供給する。また、第1竪型攪拌反応器は平均滞留時間が60分となるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けたバルブの開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保つ。
第1竪型攪拌反応器の槽底から排出された重合反応液は、引き続き第2竪型攪拌反応器、第3竪型攪拌反応器、及び第1横型攪拌反応器に、逐次、連続供給する。重合反応の間、各反応器の平均滞留時間は前述の通りとなるように液面レベルを制御し、また、重合反応と同時に副生するフェノールの留去を行う。
(参考例2)
配管の長さを変え、V1を0.55m(芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置11の出口Pから、原料調製装置12における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流とを合流させる合流部Qまでの距離が100m)とした以外は、参考実施例1と同様に実施する。
(実施例1)
参考例1と同等の熱履歴となるように、200mL攪拌機付き反応器を用いて重合反応を行った。具体的には以下の通りである。
芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置の出口Pから送り出されたBPA116gを、200mL攪拌機付き反応器に添加し、内温180℃にて5分、攪拌下で保持した。そこへ、溶融したDPCを114.5g(モル比はDPC/BPA=1.045)添加し第2溶融混合物とし、内温150℃で、13分攪拌下に保持した。その後、40分間かけて反応器内の圧力を、絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させなが
ら、80分間、エステル交換反応を行った。次に熱媒ジャケットにて内温を昇温(250℃)し、反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達した後、70Paを保持し、重縮合反応を行った。反応器内の最終的な内部温度は280℃であった。攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
このとき得られた芳香族ポリカーボネートのMvは21,200であり、末端水酸基濃度は650ppmであり、色相はYI値4.2であった。
(比較例1)
参考例2と同等の熱履歴となるように、200mL攪拌機付き反応器を用いて重合反応を行った。具体的には以下の通りである。
芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置の出口Pから送り出されたBPAを、内温180℃にて16分保持した以外は実施例1と同様に実施した。
このとき得られた芳香族ポリカーボネートのMvは21,400であり、末端水酸基濃度は705ppmであり、色相はYI値6.2であった。
[BPAの熱安定性]
(参考例3)
BPA100gをガラス製容器に入れて加温し、180℃、200℃、及び220℃での熱安定性を測定した。その結果を図2に示す。
熱安定性の測定方法は、液体クロマトグラフィーでイソプロペニルフェノール(IPP)の増加量を測定することで行った。
IPPは、下記の反応式(1)に示すように、BPAの分解物であり、黄変の原因となる化合物である。
その結果、温度が高い程、IPPの生成量が大きいことがわかった。
Figure 0006167570
本発明は、芳香族ポリカーボネートを製造する際の熱資源の省力化が可能であり、さらに、芳香族ジヒドロキシ化合物の分解が抑制でき、色相の良好な芳香族ポリカーボネートを安定的に製造することができる等、産業上の利用可能性が高い。
11 芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置
12 原料調製装置
13 第1重縮合反応装置
14 流路配管
15 保温配管
A 第1混合溶融物
A’ 溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流
B 溶融炭酸ジエステル流
C 第2混合溶融物
P 芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置出口
Q 合流部
R 原料調製装置出口
S 第1重縮合反応装置入口

Claims (13)

  1. 炭酸ジエステル及び芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として重縮合反応させる重縮合工程を経て芳香族ポリカーボネートを製造する方法において、
    前記炭酸ジエステルの溶融物の流れである溶融炭酸ジエステル流と、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物の流れである溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流とを、合流させ配管内で混合させることにより、ポリカーボネート樹脂溶融原料を調製し、
    次いで前記ポリカーボネート樹脂溶融原料を重縮合反応装置において、連続的に重縮合反応を行う芳香族ポリカーボネートの製造方法に用いられる芳香族ポリカーボネートの製造設備であって、
    前記炭酸ジエステルの溶融物の流れである溶融炭酸ジエステル流と、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物の流れである溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流とを、合流させることにより、配管内でポリカーボネート樹脂溶融原料を調製する原料調製装置、
    前記原料調製装置内で調製されたポリカーボネート樹脂溶融原料を用いて、連続的に重縮合反応を行う重縮合反応装置、
    及び芳香族モノヒドロキシ化合物を含有する芳香族ジヒドロキシ化合物から芳香族モノヒドロキシ化合物を除去し、次いで、溶融芳香族ジヒドロキシ化合物として前記原料調製装置に送り出すことにより、前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流とする芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置を備える芳香族ポリカーボネートの製造設備であって、
    前記芳香族ジヒドロキシ化合物精製装置の出口から、前記原料調製装置における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流とを合流させるまでの流路の容積をV1とし、
    前記原料調製装置における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流との合流から前記重縮合反応装置の入口までの流路の容積をV2とし、
    V1とV2との比であるV1/V2が0.5以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造設備。
  2. 前記重縮合工程が、エステル交換触媒の存在下に、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とを重縮合反応させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  3. 前記エステル交換触媒が、長周期型周期表第1族元素(水素を除く)の化合物、長周期型周期表第2族元素の化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、及びアミン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物
    であることを特徴とする請求項2に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  4. 前記炭酸ジエステルが、置換もしくは無置換のジフェニルカーボネート及びジアルキルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  5. 前記芳香族ジヒドロキシ化合物が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  6. 前記芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物である時間が、20分以内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  7. 前記芳香族ジヒドロキシ化合物の溶融物中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が、1重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  8. 前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流の温度が、180℃以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  9. 前記芳香族ジヒドロキシ化合物が、芳香族モノヒドロキシ化合物を含有する芳香族ジヒドロキシ化合物から芳香族モノヒドロキシ化合物を除去した芳香族ジヒドロキシ化合物を少なくとも含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  10. 前記芳香族モノヒドロキシ化合物を除去する方法が、蒸留であることを特徴とする請求項9に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  11. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂溶融原料の調製を、スタティックミキサーで行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備
  12. 前記原料調製装置における前記溶融芳香族ジヒドロキシ化合物流と前記溶融炭酸ジエステル流との合流から前記重縮合反応装置入口までの流路の容積が、0.5m以上であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備。
  13. 前記原料調製装置内にスタティックミキサーが具備されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造設備。
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