JP5347225B2 - ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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このようなポリカーボネート樹脂の製造方法としては、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを直接反応させる方法(界面法)、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合反応(溶融法)させる方法が知られている。なかでも、エステル交換反応による溶融法は、界面法と比較して安価にポリカーボネートを製造することができるという利点を有している。
即ち、本発明の目的は、溶融法によるポリカーボネート樹脂の製造において、結晶化異物や「ヤケ」異物が低減されたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することにある。
t1<T≦t2 式(1)
230(℃)<T≦t2 式(2)
また、副生モノヒドロキシ化合物がフェノールであることが好ましい。
t1<T≦t2 式(1)
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づく溶融重縮合により製造される。
以下、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に溶融重縮合反応を行うことにより、ポリカーボネート樹脂を製造する方法について説明する。
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル1.01〜1.30、好ましくは1.02〜1.20のモル比で用いられる。モル比が1.01より小さくなると、得られるポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が1.30より大きくなると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品の臭気の原因となることがあり、好ましくない。
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム化合物又はマグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲で用いられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
次に、ポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
ポリカーボネート樹脂の製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製し(原調工程)、これらの化合物を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の重合槽を用いて多段階の重縮合反応させる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は、複数基の竪型重合槽及びこれに続く少なくとも1基の横型重合槽が用いられる。通常、これらの重合槽は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
次に、製造方法の各工程について説明する。
ポリカーボネート樹脂の原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、溶融混合物として調製される。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段工程で連続的に行われる。具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
多段工程の各重合槽においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に排出するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られるポリカーボネート樹脂の色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。
触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
重縮合工程後、押出工程において反応液中の未反応原料、エステル交換触媒、エステル交換反応で副生するヒドロキシ化合物、ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物が除去される。この除去は、通常、ベント式の押出機により連続的に行われる。
使用する押出機としては、ベント部を備えたものであればどのような形式のものでも使用することができ特に限定されないが、例えば、ベント式の単軸又は多軸押出機が挙げられるが、特に、かみ合い型二軸押出機が好ましい。押出機の軸の回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。ベント数は、通常2段〜10段の多段ベントが用いられる。
押出工程において押出機より排出されたストランド状のポリカーボネートは、通常、ストランド冷却バスを経由してストランドカッターによりペレット化され、その後、脱水機等により水分除去した後に製品サイロに収納される。
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法の一例を具体的に説明する。
図1は、ポリカーボネート樹脂の製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、ポリカーボネート樹脂は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製する原調工程と、これらの原料を溶融状態で複数の重合槽を用いて重縮合反応させる重縮合工程とを経て製造され、その後、反応液中の未反応原料や反応副生物を除去したり任意の添加剤を添加し溶融混練したりする押出工程と、ペレット化工程を経て、ポリカーボネート樹脂のペレットが成形される。
ペレット化工程においては、押出機11aより排出されたストランド状のポリカーボネートを冷却するストランド冷却機13aと、冷却したストランドを所定の粒径にカットするカッター14aと、ペレットの水分を除去するための脱水機15aと、乾燥したペレットを格納する製品サイロ16a,16bとが設けられている。
次に、原料混合物は、原料供給ポンプ4aを経由して第1竪型重合槽6aに連続的に供給される。また触媒として、水溶液状の炭酸セシウムが、原料混合物の移送配管途中の触媒供給口5aから連続的に供給される。
押出機11aより排出されたストランド状のポリカーボネートはストランド冷却機13aを経由してカッター14aでペレット化され、脱水機15aにて水分除去した後に製品サイロ16a,16bに導入される。
t1<T≦t2 式(1)
式(1)において、t1は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応による重縮合の際に、副生物として留出する副生モノヒドロキシ化合物の、第3竪型重合槽6c内の圧力下における沸点(単位:℃)である。
また、Tは、副生物を留出させるために第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの壁面温度(単位:℃)である。
さらに、t2は、第3竪型重合槽6cの内温(単位:℃)である。
このとき、留出管8cの壁面温度(T)が、第3竪型重合槽6cの内温(t2)より高くなると、留出管8cの壁面に高温下で焼けた飛沫同伴物が付着する傾向がある。このような付着物は、長期間の運転中に留出管8cの壁面から第3竪型重合槽6c内に落下し、「ヤケ」異物となるため、品質上好ましくない。
(実施例1)
前述した図1に示すように、原料混合槽2基と、竪型重合槽3基及び横型重合槽1基とを有する製造装置により、以下の条件でポリカーボネート樹脂の製造を行った。
初めに、原調工程において、DPC(ジフェニルカーボネート)とBPA(ビスフェノールA)とを、窒素ガス雰囲気下、一定のモル比(DPC/BPA=1.064)に混合し、DPC/BPAの混合溶融液を調製した。
混合溶融液は、流量4483kg/時で第1竪型重合槽6a内に連続供給される。また、第1竪型重合槽6aにおける平均滞留時間が75分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ(図示せず)の開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。
第2竪型重合槽6b〜第4横型重合槽9aにおける反応条件(温度、圧力、撹拌速度)は、それぞれ、第2竪型重合槽6b(260℃、4.00×103Pa、59rpm)、第3竪型重合槽6c(274℃、700Pa、69rpm)、第4横型重合槽9a(280℃、170Pa、3rpm)である。尚、第4横型重合槽9aは、撹拌翼10aを備えている。
尚、異物の個数は、ポリカーボネート樹脂500g中5個であった。ここで、異物の個数は、顕微鏡を用い、ポリカーボネート樹脂ペレット500g中の40μm以上の異物の個数を計測した。
実施例1で使用した製造装置において、重縮合工程の第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの壁面温度を、240℃に変更した以外は、実施例1と同様な条件で、ポリカーボネート樹脂の製造運転を3ヶ月継続した。
3ヶ月間の製造運転において製造したポリカーボネート樹脂中には、異物がポリカーボネート樹脂500g中に2個しか観測されなかった。
実施例2において、重縮合工程の第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの途中(第3竪型重合槽6cと凝縮器81cとの間の第3竪型重合槽6c寄りに)にポット型の逆流防止器(図示せず)を設置し、これ以外は実施例2と同様の条件でポリカーボネート樹脂を製造した。
3ヶ月間の製造運転において製造したポリカーボネート樹脂中には、異物がポリカーボネート樹脂500g中に1個しか観測されなかった。
実施例1で使用した製造装置において、重縮合工程の第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの壁面温度を、第3竪型重合槽6cの圧力下(700Pa)における副生フェノールの沸点(67℃)より低い50℃に保ち、一方、第1竪型重合槽6a、第2竪型重合槽6b及び第4横型重合槽9aにそれぞれ取り付けた留出管(8a,8b,8d)の壁面温度を120℃に調整し、それ以外は、実施例1と同様な条件で、ポリカーボネート樹脂の製造運転を1ヶ月継続した。
実施例1で使用した製造装置において、重縮合工程の第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの壁面温度を、第3竪型重合槽6cの温度(274℃)より高い280℃に保ち、一方、第1竪型重合槽6a、第2竪型重合槽6b及び第4横型重合槽9aにそれぞれ取り付けた留出管(8a,8b,8d)の壁面温度を120℃に調整し、それ以外は、実施例1と同様な条件で、ポリカーボネート樹脂の製造運転を3ヶ月継続した。
また、製造運転中に得られたポリカーボネート樹脂の黄色度(YI)が増大する場合があり、色調が不安定となる傾向を示した。さらに、ポリカーボネート樹脂中に、異物が多く見られた。
射出成形機(株式会社日本製鋼所製:J100SS−2)を用いて、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて成形した厚み3mm、一辺100mm角のシートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製:SC−1−CH)により、色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z)
このYI値が大きいほど着色していることを示す。
尚、第3竪型重合槽6cにおける重合条件と結果について表1に示す。
こうして得られたポリカーボネート樹脂は、シート等の建築材料、水用ボトル等の容器、自動車用ヘッドランプレンズ、眼鏡等の光学用レンズ類、光ディスク等の光学用記録材料、液晶ディスプレイの導光板等に好適に使用することができる。
Claims (8)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
前記エステル交換反応を行う反応器内の圧力における副生モノヒドロキシ化合物の沸点t1(℃)と、
前記反応器から前記副生モノヒドロキシ化合物を留出させる留出管の壁面温度T(℃)と、
前記反応器内の内温t2(℃)との関係が、式(1)を満たすとともにさらに式(2)を満たすことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
t1<T≦t2 式(1)
230(℃)<T≦t2 式(2) - 前記反応器は、当該反応器内の圧力を減圧に保つ減圧装置と、前記留出管から当該反応器外に留出する前記副生モノヒドロキシ化合物を凝縮する凝縮器と、を備える竪型重合槽であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記留出管は、留出物の逆流を防止する逆流防止器をさらに備えることを特徴とする請求項2記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記留出管の少なくとも内壁部分が鉄含量20%以上の鉄材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記副生モノヒドロキシ化合物がフェノールであることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの連続的エステル交換反応を、
直列に接続された複数基の竪型重合槽と、
前記竪型重合槽に接続された少なくとも1基の横型重合槽と、
少なくとも1基の前記竪型重合槽の上部に設置された、当該竪型重合槽から、エステル交換反応で副生するモノヒドロキシ化合物を留出させる留出管とを有する重合装置を使用して行うに際して、
前記竪型重合槽内の圧力における副生モノヒドロキシ化合物の沸点t1(℃)と、当該竪型重合槽内の内温t2(℃)と、前記留出管の壁面温度T(℃)とが、式(1)を満たすとともにさらに式(2)を満たすことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
t1<T≦t2 式(1)
230(℃)<T≦t2 式(2) - 横型重合槽の直前に位置する竪型重合槽において、前記t1(℃)、前記t2(℃)及び前記T(℃)と、が式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする請求項6記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記留出管は、留出物の逆流を防止する逆流防止器をさらに備えることを特徴とする請求項6又は7記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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