JP3694434B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とを原料として、色相に優れる高品質の芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは、耐衝撃性、寸法安定性、透明性等の諸物性に優れた樹脂であり、幅広い分野で利用され、その工業的製法としては、ホスゲン法(界面重合法)、エステル交換法(溶融重合法)が挙げられる。後者のエステル交換法は、ホスゲン法に比べて工程が比較的単純であり、操作、コスト面で優位性が発揮できるだけでなく、毒性の強いホスゲンや塩化メチレン等のハロゲン系化合物を使用しないという点において、環境保全の面からも優れている。
【0003】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との反応は、通常、エステル交換触媒の存在下、多段の反応槽を用いて実施する。ポリマーの重合度を上げるためには、副生するフェノールを効率的に除去する必要があるので、反応槽の運転条件は、後段になるほど高温、高真空の条件にするのが一般的で、通常、温度は150〜320℃、圧力は101.3kPa〜1.33Paの範囲で制御する。一方、色相等の品質に優れるポリマーを製造するためには、できるだけ熱履歴を少なくして、短時間で反応を完結させることが好ましい。
【0004】
また、反応槽間や最終反応槽から次工程へ移送する配管内の条件についても、反応槽での条件に比較して、見かけ上熱履歴を受けにくいが、一般に、強制的な攪拌機能もなく、反応槽と違って、流量や圧力制御用のバルブ、移送ポンプ、熱交換器等の付帯設備が設置されていたり、配管部についてもベンド、レジューサー、フランジ等が存在するため、流路も複雑となり均一な流動状態の確保は困難で、局所的な反応液の滞留部が皆無とは言い難い。一方、芳香族ポリカーボネートの特徴として、粘度平均分子量3000以上では、約240℃以下の温度領域になると、結晶核や結晶化物が生成し易くなり、滞留部で生成したこれら結晶核や結晶化物が、製品ポリマー中への混入異物として無視できなくなったり、また、逆に、必要以上に高温状態で滞留させた場合には、着色原因となる異種構造の生成が促進され、製品ポリマーの色相等の品質の低下原因となる。したがって、反応槽での運転条件だけでなく、反応液の移送配管での運転操作条件についても、品質管理上、重要なポイントとなる。
【0005】
例えば、芳香族ポリカーボネートの製造にあたり、特開平10−226723号公報では、溶融ポリマーの数平均分子量毎に、移送配管内での移送速度をある一定値以上になるようにする方法が、特開平10−330474号公報では、溶融ポリマーを移送する移送配管の外壁温度と該溶融ポリマーを製造した重合器内部の溶融ポリマーの温度との差をある一定温度範囲にする方法が、また、特開平10−330473号公報では、数平均分子量が4000以上である溶融ポリマーを移送する配管の曲折部の数を50以下とする方法が開示されている。
このように、移送の際の条件についても、これまで、種々の規定がなされているが、これらすべての条件を満足していても、必ずしも良好な品質のポリマーが製造できるとは限らず、不充分なものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エステル交換法芳香族ポリカーボネートの製造方法において、熱履歴が少なく、色相等の品質に優れた芳香族ポリカーボネート製造する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、反応途中の反応液を次の反応槽又は工程機器に移送するに際し、反応液の流速、平均滞留時間及び移送流路の温度等の条件をある特定の範囲となるようにすることによって、色相等の品質に優れる芳香族ポリカーボネートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とを原料として、複数の反応槽を用いて粘度平均分子量15000以上の芳香族ポリカーボネートを製造する方法において、反応槽間及び最終反応槽と次の工程機器との間を、内管内に反応液、内管と外管の間に加熱媒体を配した二重管型の移送配管で連結し、粘度平均分子量が3000以上の反応液を移送する各移送配管において、反応液の配管流速が下記式(1)を満たし、反応液の平均滞留時間が900秒以内となるようにし、かつ、加熱媒体の温度を当該移送配管と連結された上流側の反応槽の反応液温度以上で当該反応液温度+50℃を超えない範囲内に保持することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法を提供するものである。
u≧exp{−0.2ln(μ)−3.8} 式(1)
u:配管流速(m/s)、反応液の移送流量を移送配管の断面積で除した数値
μ:移送配管入口部における反応液粘度(Pa・s)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の芳香族ポリカーボネートの製造方法について、さらに具体的に説明する。本発明では、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とを用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に溶融重縮合して、芳香族ポリカーボネートを製造する。
【0010】
(i) 反応原料
芳香族ジヒドロキシ化合物:
本発明方法の原料の一である芳香族ジヒドロキシ化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Aは、単結合、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO2 −で示される2価の基であり、X及びYは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、p及びqは、0又は1の整数である。なお、XとY及びpとqは、それぞれ、同一でも相互に異なるものでもよい。)
【0013】
代表的な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェノ−ル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」とも言い、BPAと略記することもある。)が好ましい。
【0014】
炭酸ジエステル化合物:
本発明の原料の他の一である炭酸ジエステル化合物は、下記一般式(2)で示される化合物である。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、A’は、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基であり、2つのA’は、同一でも相互に異なるものでもよい。)
【0017】
代表的な炭酸ジエステル化合物としては、例えば、ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネートに代表される置換ジフェニルカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート(DPCと略記することもある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0018】
また、上記の炭酸ジエステル化合物は、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0019】
エステル交換触媒:
エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。本発明のポリカーボネート製造方法においては、触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。触媒の使用量は、通常は芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10-9〜1×10-1モル、好ましくは1×10-7〜1×10-2モルの範囲で用いられる。これらの触媒のうち、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。
【0020】
アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物、等の無機アルカリ金属化合物、アルコール類、フェノール類、そして有機カルボン酸類との塩等の有機アルカリ金属化合物等がある。これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、具体的に最も好ましいセシウム化合物を挙げれば炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムである。
【0021】
また、アルカリ土類金属化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの水酸化物、炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物、アルコール類、フェノール類、そして有機カルボン酸類との塩等の有機アルカリ土類金属化合物等がある。
【0022】
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素、等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、又はストロンチウム塩等がある。
【0023】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3価のリン化合物、又はこれらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等がある。
【0024】
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド等がある。
【0025】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン,4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等がある。
【0026】
(ii) 芳香族ポリカーボネートの製造方法
次に、本発明に係わる芳香族ポリカーボネートの製造方法について説明する。
本発明では、上述の芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とを原料として、好ましくは上述のエステル交換触媒の存在下、複数の反応槽を用いて粘度平均分子量15000以上の芳香族ポリカーボネートを製造する。
複数の反応槽の好ましい構成は、複数基の竪型撹拌反応槽に引き続き、少なくとも1基の横型撹拌反応槽を直列に組み合わせたものである。撹拌翼の形式としては、竪型反応槽では、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼(新鋼パンテック(株)製)、サンメラー翼(三菱重工業(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼(日立製作所(株)製)等が挙げられ、横型反応槽では、例えば、円板型、パドル型等の一軸タイプの撹拌翼やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業(株)製)、バイボラック(住友重機械工業(株)製)、又はメガネ翼、格子翼(日立製作所(株)製)等の二軸タイプの撹拌翼が挙げられる。
【0027】
まず、使用されるエステル交換触媒は、通常、原料モノマー又は反応液に供給する前に予め水溶液として準備しておく。このときの触媒水溶液の濃度は触媒の水に対する溶解度見合いで任意の濃度に調整される。触媒の溶解に使用される水の性状については、含有される不純物の種類及び濃度が常に一定であれば、特に規定されるものではないが、通常の水に含有されるようなナトリウムイオン、カリウムイオン、鉄イオン、塩素イオン等の不純物成分は触媒活性やポリマー色相、異物の有無等に影響を及ぼすため、これら不純物成分が少ない蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
【0028】
一方、芳香族ポリカーボネートの製造は、原料として使用する炭酸ジエステル化合物と芳香族ジオール化合物を溶融混合物とした後、重縮合反応に付される。この際、炭酸ジエステル化合物と芳香族ジオール化合物の割合は、炭酸ジエステル化合物が過剰になるように調整され、芳香族ジオール化合物1モルに対して炭酸ジエステル化合物は1.01〜1.30モル、好ましくは1.02〜1.20モルの割合になるように調整される。原料の溶融は、撹拌槽型の装置を用いてバッチ式、半回分式、連続式のいずれの方法でも行なうことができる。また、このときの温度は炭酸ジエステル化合物として、ジフェニルカーボネートを用い、芳香族ジオール化合物としてビスフェノールAを用いるときには、120〜180℃、好ましくは、125〜160℃とする。
【0029】
また、本発明による芳香族ポリカーボネートの製造は、好ましくは連続的に行う。反応条件としては、温度:150〜320℃、圧力:101.3kPa〜1.33Pa、平均滞留時間:5〜90分の範囲とし、各反応槽においては、エステル交換反応副生物を反応系外に排出させながらポリマーの重合度を上げていく。通常、後段の反応槽に移行していくほど、反応液中の副生物濃度が減少し、また、反応液の粘度も増大してくるため、副生物の排出をより効果的なものとするために、段階的に上記反応条件範囲内で高温、高真空に設定する。なお、得られる芳香族ポリカーボネートの色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、低滞留時間の設定が好ましい。
【0030】
次に、添付の図面に従って、本発明の実施態様を説明する。
図1は、連続重合法に用いる装置の1例を示す。図1では4基の反応槽が直列に設置されている。図中、1は原料導入管、2は触媒溶液槽、21は触媒導入管、3は副生物排出管、4a、4b、4cは竪型反応槽、5はマックスブレンド攪拌翼、61〜64は第1〜4移送配管、7は横型反応槽、8は格子翼、9は最終製品ポリマーを示す。
【0031】
まず、第1反応槽(4a)には、不活性ガス、例えば窒素ガス雰囲気下、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との溶融混合物を、原料導入管(1)を通して導入し、また、触媒としてのアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性化合物等を溶媒に溶解した触媒溶液を、触媒溶液槽(2)から、触媒導入管(21)を介して、上記反応槽(4a)内に連続的に供給し、各反応槽(4a)(4b)(4c)においては、エステル交換反応副生物であるモノヒドロキシ化合物(炭酸ジエステル化合物としてジフェニルカーボネートを使用した場合は、フェノール)を、副生物排出管(3)から除去しながら、3〜7段の各反応槽(図1では4基)を用いて、溶融重縮合を行い、最終反応槽(7)からは最終製品ポリマー(9)が得られる。
【0032】
各反応槽(4a)(4b)(4c)(7)間及び最終反応槽(7)と次の工程機器(図示せず)との間は、第1〜4移送配管(61)(62)(63)(64)で連結されている。これら移送配管には、二重管型のもの(詳細図示せず)を用い、内管内に反応液を、内管と外管の間に加熱媒体を配し、内管壁を通じて相互に熱交換可能とする。
【0033】
(iii) 移送配管
一般的には、移送配管では強制的な撹拌設備がなく、移送配管に付属するバルブ、ノズル、フランジ類に加えて、移送ポンプ等の機器が設置される場合もあるため、流路も複雑となり易く、撹拌設備を有する反応槽と比較し、局所的なポリマーの滞留部が生じ易い状況にある。このため、移送配管は、極力、滞留部ができないように、径、長さ、表面粗度、曲率、構造等を考慮した設計選定とする。こうすることによって、局所的な反応液の滞留部がさらに削減され、ポリマーの結晶化物や焼け等の発生が抑制されるようになり、異物混入の少ない製品が確保できるようになる。また、配管部以外の移送配管の付帯設備についても、できるだけデッドスペースのない構造とし、配管径の断面積相当の流路を確保できるようなものが好ましい。
【0034】
反応液の配管流速:
本発明では、複数の反応槽を用いて重合度を段階的に上げていくために、反応槽間又は最終反応槽と次の工程機器との間を、内管内に反応液を、内管と外管の間に加熱媒体を配した二重管型の移送配管で連結している。従って、反応液を次の段階へ移送するに際しては、各移送配管において、下記式(1)を満たすような、反応液の配管流速(u)を選択することが必要である。
u≧exp{−0.2ln(μ)−3.8} 式(1)
ここで、反応液の配管流速u(m/s)は、反応液の移送流量(m3/s)を移送配管の断面積(m2)で除した値である。また、μは、移送配管入口部における反応液粘度(Pa・s)の値であり、反応液の分子量や温度によって変化するが、エステル交換反応による芳香族ポリカーボネートの生成では、反応液粘度の値は、通常、0.01Pa・s〜5000Pa・sの範囲内である。この式(1)の意味するところは、反応液の粘度に応じて、反応液移送の際の配管流速をある数値以上に規定するもので、例えば、移送される反応液粘度が100Pa・sの場合には、0.009m/s以上、また2.5Pa・sの場合には、0.019m/s以上の配管流速での移送を必要とする。
【0035】
反応液の配管流速(u)の好ましい値は、下記式(2)を満たすように選択される。
u≧exp{−0.2ln(μ)−3.3} 式(2)
例えば、移送液粘度が100Pa・sの場合、配管流速(u)の好ましい値は、0.015m/s以上である。
また、反応液の配管流速(u)の上限値は特に規定されないが、移送配管での圧損が移送上問題とならないような流速設定とするとの観点からは、下記式(3)を満たすように選択される。
u≦exp{−0.2ln(μ)+1.0} 式(3)
例えば、移送液粘度が100Pa・sの場合、1.1m/s以下となる。
【0036】
移送流量の算定:
各移送配管での反応液の移送流量については、流量計の設置による反応液の流量計内での滞留発生を避け、また、超音波等の間接的な流量測定も困難なことから、以下のようにして算定した。
すなわち、第n反応槽と次の反応槽又は工程機器を連結する、第n移送配管における反応液の移送流量(Qn)は、第1反応槽に導入された原材料の流入量、具体的には、原料溶融混合槽から第1反応槽への移送配管の途中に設けた流量計を用いて測定した質量流量(Wo)を基準とし、これから、第1〜第nの各反応槽における流出量、具体的には、各反応槽のフェノール等の留出ラインで一定時間内に回収した留出液量から算出した流量(Qti)又は留出ラインに設けた流量計を用いて測定した流量(Qti)と留出液の密度(ρti)との積の総和を差し引いて、第n移送配管における反応液の質量流量を計算し、この質量流量を当該反応液の液密度(ρn)で除することによって算定した。一般式で表現すると以下のようになる。
【0037】
【数1】
【0038】
式中、Qn: 第n移送配管における反応液の移送流量(m3/s)
Wo: 第1反応槽への質量流量(kg/s)
Qti:第i反応槽の留出液流量(m3/s)
ρti:第i反応槽の留出液の密度(kg/m3)
ρn: 第n移送配管における反応液の密度(kg/m3)
添字i、n: 自然数(i≦n)
このようにして算定された、第n移送配管における反応液の移送流量Qn(m3/s)の値を用いて、反応液の配管流速u(m/s)を算出すれば、上記式(1)〜(3)を満たしているか否かを確認することができる。
【0039】
反応液の平均滞留時間:
一般的には、移送配管で反応液の温度が低下すると、反応液の粘度が上昇し、移送が困難となったり、流路閉塞等の問題が生じるため、反応液の温度低下が生じないように加熱保温する。しかし、ポリマーの着色原因となる異種構造の生成は、ポリマーの重合反応と違い、移送配管においても継続して進行するため、できるだけ迅速に次の反応槽又は処理工程に移送することが重要となる。
【0040】
すなわち、反応槽以外の反応操作段階にある反応液の熱履歴ができるだけ抑制されるようにするために、本発明では、上記のような流速条件と併せて、各移送配管における反応液の平均滞留時間が900秒以内、好ましくは700秒以内、更に好ましくは600秒以内となるようにすることが必要である。
なお、ここで言う反応液の平均滞留時間とは、反応槽間や最終反応槽と次の工程機器とを連結する当該移送配管だけでなく、これに付帯するバルブ、ノズル、フランジ類や移送ポンプ等の機器が保有する空間容積を含めた全空間容積を、前記の当該移送配管における反応液の移送流量で除した数値のことを意味する。
【0041】
反応液の容積流量は、必要とする生産能力からほぼ一義的に決まるため、上記平均滞留時間以内の設定とするには、移送配管にある配管長はできるだけ短くなるように反応槽等機器の配置を考慮して設計し、通常30m以内、好ましくは、20m以内の範囲で設計される。また、配管径については、選定した配管長を前提に、前述の移送配管での平均滞留時間と配管流速を満たすようなサイズであれば、任意に選定できる。
【0042】
本発明で使用する、二重管型の移送配管では、内管内に反応液、内管と外管の間に加熱媒体を配し、移送配管の内管と外管の間に加熱媒体を流通させて、移送配管の内管内を流れる反応液を加熱する。加熱媒体としては、例えば、オイル、スチーム等が挙げられる。配管の材質は、加熱媒体から反応液への伝熱が妨げられない限り、特に限定されないが、ステンレス製であることが一般的であり、例えばSUS304、SUS304L、SUS310S、SUS316、SUS316L等が挙げられる。また、該配管表面は各種処理を行ってもよく、例えばバフ研磨、電解研磨、酸処理、加熱処理、各種メッキ、コーティング処理等により表面処理を行ってもよい。
【0043】
加熱媒体の温度:
一般的に、移送配管での加熱保温が不充分で、移送配管の途中で移送配管に連結された上流側の反応槽にある反応液よりも低温で滞留した場合には、結晶や結晶核が発生し、ポリマー中への異物混入や配管閉塞トラブルの要因となったり、逆に放熱等による反応液の温度低下を懸念して、過剰な高温トレースとした場合には、配管やその他構成機器と反応液との接液滞留部等の局所的なところでポリマーの焼け異物等が生成し、製品ポリマー中への異物混入や色相低下原因となったりすることがある。
【0044】
したがって、本発明では、移送配管の加熱媒体の温度を、当該移送配管と連結された上流側の反応槽の反応液温度以上で当該反応液温度+50℃を超えない、好ましくは当該反応液温度+35℃以内の範囲内に保持することが必要である。すなわち、局所的な反応液の温度低下を解消し、かつ、局所的な反応液の温度上昇も抑制することができるように、移送配管の加熱媒体の温度を設定することが重要である。
【0045】
移送配管に供給される加熱媒体の配管流路に保護管を介して熱電対を挿入し、その指示値を加熱媒体の温度とした。反応液の温度についても、反応槽の液面より下の位置に保護管を介して熱電対を挿入し、その指示値を反応液温度とした。また、本発明は、反応温度が高く、反応液の粘度も高くなる反応槽以降の移送配管に適用するとより効果的となるため、反応液の粘度平均分子量が3000以上、好ましくは4000以上となる反応槽以降の移送配管では特に重要な設計条件となる。
【0046】
(iv) 最終反応槽以後の処理
上記方法で製造した芳香族ポリカーボネートは、通常、溶融状態にあるうちに耐熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤等の添加剤を添加した後、冷却ペレタイズ化処理されるが、一旦冷却固化した後に、再溶融して上記添加剤を添加してもよい。
【0047】
上記の方法で製造した芳香族ポリカーボネート中には、両原料、触媒、エステル交換反応副生物であるヒドロキシ化合物、ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物が残存している。なかでも、両原料とヒドロキシ化合物は残留量が多く、耐熱老化性、耐加水分解性等の物性に悪影響を与える。
【0048】
そのため、それらを除去する方法として、ベント式の押出機により連続的に脱揮してもよい。その際、樹脂中に残留している塩基性エステル交換触媒を、あらかじめ酸性化合物又はその誘導体により中和し、失活させておくことにより脱揮中の副反応を抑え、効率よく残存する両原料及びヒドロキシ化合物を除去することができる。
【0049】
添加する酸性化合物又はその誘導体には特に制限が無く、重縮合反応に使用する塩基性エステル交換触媒を中和する効果のあるものであれば、いずれも使用できる。具体的には、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。これらの酸性化合物又はその誘導体でもスルホン酸又はそのエステル類が特に好ましい。
【0050】
酸性化合物又はその誘導体の供給は単独又は溶媒で希釈して行われる。
溶媒としては、上記酸性化合物又はその誘導体が溶解すれば良く、特に水が好ましい。また水単独に不溶な酸性化合物又はその誘導体については、アセトン等の有機溶媒を水に加えた混合溶媒の使用も好ましい。また、有機溶媒を使用する場合は、ポリカーボネートに悪影響を及ぼさないアセトン類や脂肪族、芳香族炭化水素類化合物が特に好ましく使用される。しかしながら、アルコール類や含ハロゲン系溶媒は、得られたポリカーボネート樹脂の解重合や着色の原因となるため、避けることが好ましい。また、これら酸性化合物又はその誘導体の使用量は、重縮合反応に使用した塩基性エステル交換触媒の中和量に対して0.1〜50倍モル、好ましくは0.5〜30倍モルの範囲で添加する。
【0051】
用いられる押出機とは、ベント部を備えたものであればどのような形式のものでもよい。具体的には、ベント式の単軸又は多軸押出機が挙げられるが、特に、かみ合い型二軸押出機が好ましく、回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。ベント数に制限はないが、通常は2〜10段の多段ベントが用いられる。多段ベント口を備えた押出機の場合、酸性化合物又はその誘導体の添加は、樹脂供給口に最も近いベント口の手前に添加される。押出機による中和脱揮処理に供する樹脂の形態としては、重合直後の溶融状態にあるうちに押出機に導入し処理する方法が好ましいが、一旦冷却固化した後、押出機に導入し処理する方法でもよい。また該押出機は必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤等の添加剤を添加し、樹脂と混練することもできる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、得られた芳香族ポリカーボネートの分析は下記の測定方法により行った。
【0053】
(1)粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ粘度計を用いて、塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より粘度平均分子量(Mv)を求めた。
[η]=1.23×10-4×(Mv)0.83
【0054】
(2)色相
射出成形機J100SS−2(日本製鋼所製)を用いて、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて成形した厚み3mm、一辺100mm角のシートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)で色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z)
このYI値が大きいほど着色していることを示す。
【0055】
(3)異物量
製造したペレット2gを塩化メチレン250mlに溶解し、HIAC/ROYCO社製モデルPC−320で測定して2μm以下の異物量を測定した。
【0056】
(4)液粘度
移送配管入口部に設けたサンプル採取管から反応液の一部を採取し、以下のようにして反応液の粘度を測定した。
4−1 液粘度μ≦100Pa・sの場合
ビーカーに採取した約500mlの反応液について液温度が移送配管入口部の温度と等しくなるようにオイルバス中にて温度制御して、音叉型振動式粘度計(システム綜合開発(株)製:CVJ1000)を用いて測定した。
4−2 液粘度μ>100Pa・sの場合
キャピログラフ(東洋精機(株)製:キャピログラフ1B)を用いて、移送配管入口部の反応液温度と等しい温度に制御して測定した。
【0057】
[実施例1]
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを、一定のモル比(DPC/BPAモル比=1.040)に混合調製した溶融混合物を、合わせて88.7kg/時の流量で、原料導入管を介して、マックスブレンド翼を具備し、13.3kPa、210℃、翼回転数:160rpmに制御した、容量100Lの第1竪型攪拌反応槽内に連続供給し、平均滞留時間が60分になるように槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。また、原料の供給を開始すると同時に、触媒として3.2×10-2重量%の濃度の炭酸セシウム水溶液を、200ml/時(ビスフェノールA1モルに対し、1×10-6モル)の流量で連続供給した。なお、第1反応槽から排出された反応液の粘度平均分子量は1500であった。
【0058】
槽底より排出された反応液は、第1反応槽と第2反応槽とを結ぶ二重管型の移送配管を介し、反応槽間の液ヘッド差を利用して送液した。この第1移送配管入口部における反応液の粘度は、0.05Pa・sであり、配管流速が条件式(1)を満たすように配管サイズ(内管内径21.4mm)を選定し、また配管長についても、反応液の平均滞留時間が900秒以内となるように、10mに調整した。結果、配管流速は、0.044m/sであり、第1移送配管における平均滞留時間は230秒であった。また、二重管型の移送配管の内管と外管の間に加熱媒体を流通させて、移送配管の内管内を流れる反応液の温度低下を防止するようにし、二重管型の移送配管と反応槽との接続部ノズルについてもジャッケト付きノズルとして加熱媒体が流通できるようにした。なお、第1移送配管での加熱媒体の入口温度は、245℃であった。
【0059】
引き続き、マックスブレンド翼を具備した容量100Lの第2、第3竪型攪拌反応槽及び格子翼を具備した容量150Lの第4横型攪拌反応槽に、逐次連続供給され、第4反応槽底部のポリマー排出口から抜き出されたポリカーボネートは、ベント式押出機を用いて脱揮し、冷却後ペレット化した。製品芳香族ポリカーボネートの、粘度平均分子量Mvは22200、色相YIは1.6、異物量は5200個/gであった。第2、第3及び第4反応槽の運転条件と運転開始から100時間後の粘度平均分子量Mvは、下記表−1aに示すとおりであった。なお、芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量の目標値は、22000〜23000であった。
【0060】
また、各反応槽間の第2、3移送配管及び第4反応槽とベント式押出機との間の第4移送配管は、いずれも、第1、第2反応槽管の第1移送配管と同様に、二重管で連結させ、反応槽間の液ヘッド差を利用して送液し、内管内に反応液、内管と外管の間に加熱媒体を配した。加えて、第3、4反応槽の槽底部には、ギアポンプを設置した。第2〜4移送配管の仕様(内管内径、配管長)及び運転条件(液粘度、配管流速、平均滞留時間、加熱媒体の温度)は、それぞれ、下記表−1bに示すとおりであった。
【0061】
【表1】
【0062】
[比較例1]
実施例1において、第1〜4移送配管の長さだけを、それぞれ、50m、40m、25m、10mに変更した(その結果、平均滞留時間は、それぞれ、1150s、1050s、1110s、1030sとなった。)以外は、全く実施例1と同様に芳香族ポリカーボネートの製造を行ったところ、運転開始から100時間後に得られた製品芳香族ポリカーボネートの、粘度平均分子量Mvは22200、色相YIは2.1、異物量は21000個/gであった。
【0063】
[比較例2]
実施例1において、移送配管の仕様(内管内径、配管長)を下記表−2のとおり変更し、配管流速が条件式(1)を満たないように、移送配管の運転条件(配管流速、平均滞留時間)を下記表−2のとおり変更した以外は、全く実施例1と同様に芳香族ポリカーボネートの製造を行ったところ、運転開始から100時間後に得られた製品芳香族ポリカーボネートの、粘度平均分子量Mvは22200、色相YIは2.2、異物量は25000個/gであった。
【0064】
【表2】
【0065】
[比較例3]
実施例1において、第1〜4移送配管の加熱媒体の温度だけを、それぞれ、上流側の反応槽の反応液温度+50℃以上である、270℃、310℃、330℃、330℃に変更した以外は、全く実施例1と同様に芳香族ポリカーボネートの製造を行ったところ、運転開始から100時間後に得られた製品芳香族ポリカーボネートの、粘度平均分子量Mvは22200、色相YIは2.1、異物量は6500個/gであった。
【0066】
[比較例4]
実施例1において、第1〜4移送配管の加熱媒体の温度だけを、それぞれ、上流側の反応槽の反応液温度より低い、190℃、230℃、250℃、260℃に変更した以外は、全く実施例1と同様に芳香族ポリカーボネートの製造を行ったところ、運転開始から100時間後に得られた製品芳香族ポリカーボネートの、粘度平均分子量Mvは22200、色相YIは1.5、異物量は37000個/gであった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の方法に従い、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換法による重縮合を連続的に実施し、色相に優れた高分子量の芳香族ポリカーボネートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の1例を示したフローシート図である。
【符号の説明】
1 原料導入管
2 触媒溶液槽
21 触媒溶液導入管
3 副生物排出管
4a、4b、4c 竪型反応槽
5 マックスブレンド翼
61〜64 第1〜4移送配管
7 横型反応槽
8 格子翼
9 最終製品ポリマー
Claims (1)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とを原料として、複数の反応槽を用いて粘度平均分子量15000以上の芳香族ポリカーボネートを製造する方法において、反応槽間及び最終反応槽と次の工程機器との間を、内管内に反応液、内管と外管の間に加熱媒体を配した二重管型の移送配管で連結し、粘度平均分子量が3000以上の反応液を移送する各移送配管において、反応液の配管流速が下記式(1)を満たし、反応液の平均滞留時間が900秒以内となるようにし、かつ、加熱媒体の温度を当該移送配管と連結された上流側の反応槽の反応液温度以上で当該反応液温度+50℃を超えない範囲内に保持することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
u≧exp{−0.2ln(μ)−3.8} 式(1)
u:配管流速(m/s)、反応液の移送流量を移送配管の断面積で除した数値
μ:移送配管入口部における反応液粘度(Pa・s)
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