JP2013177636A - ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融法による結晶化合物やヤケ異物が低減されたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのエステル交換反応によるポリカーボネート樹脂を撹拌装置を備えた竪型重合槽3基と横型重合槽1基を用いて製造する際、少なくとも第3竪型重合槽6c内の圧力における副生フェノールの沸点t1と、留出管8cの壁面温度Tと、第3竪型重合槽6cの内温t2との関係が式(1)を満たすように、留出管8cの壁面温度Tを副生フェノールの沸点t1より高温に設定する。
t1<T≦t2 式(1)
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関し、より詳しくは、異物の発生並びにポリカーボネート樹脂への異物の混入を低減したポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性等の機械的特性、耐熱性、透明性等に優れ、各種機械部品、光学用ディスク、自動車部品等の用途に広く用いられている。
このようなポリカーボネート樹脂の製造方法としては、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを直接反応させる方法(界面法)、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合反応(溶融法)させる方法が知られている。なかでも、エステル交換反応による溶融法は、界面法と比較して安価にポリカーボネートを製造することができるという利点を有している。
ところで、溶融法では、長期間の連続運転中に、ポリカーボネート樹脂中に白色の異物が混入したり、配管ラインが閉塞したりする等の問題が生じる場合があることから、種々の対策手法が報告されている。例えば、重縮合反応の際に副生するフェノールやジフェニルカーボネートを減圧下で留出させる装置において、所定の傾斜を有する還流用配管を設けて留出成分の固化を防止する方法(特許文献1参照)、連続運転終了後、24時間以内にモノヒドロキシ化合物等で重合槽及び移送配管等を洗浄する方法(特許文献2参照)、重縮合反応の中途で生成する低分子量ポリカーボネートが接触する重合槽、重合反応液の移送配管、撹拌翼等の表面温度を制御して結晶化を抑制する方法(特許文献3参照)等が挙げられる。
特開2005−145841号公報 特開2005−042014号公報 特開2000−198839号公報
しかし、溶融法によるポリカーボネート樹脂の製造は、通常、重縮合反応の際に副生するフェノール等を効率良く留去させるために、製造装置全体を減圧装置により減圧状態に保持して行われる。このため、減圧下の重縮合で副生するフェノールや、飛沫同伴されるジフェニルカーボネート等の留出成分により、留出管の内壁に液溜まりを生じたり、このような溜まった留出成分が固化して留出管を閉塞させたり等の不具合がなかなか解消されない。その結果、製造されるポリカーボネート樹脂の色調が不安定になったり、運転を停止して留出管等を清掃するために製造効率が低下したりする等の問題がある。
本発明は、このような溶融法によるポリカーボネート樹脂の製造における課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、溶融法によるポリカーボネート樹脂の製造において、結晶化異物や「ヤケ」異物が低減されたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することにある。
そこで本発明者は鋭意検討を進めた結果、重合槽から留出される副生物の留出管の壁面温度を、副生モノヒドロキシ化合物の沸点より高い温度に設定すると、留出管内の液溜まり等が見られないことを見出した。さらに、留出管に逆流防止器を設置することにより、万が一留出管内にて結晶化異物等の原因となる留出成分が滞留しても、重合槽に逆流することが防止され、ポリカーボネート樹脂に異物が混入することが軽減されることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成した。
かくして本発明によれば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、エステル交換反応を行う反応器内の圧力における副生モノヒドロキシ化合物の沸点t1(℃)と、反応器から副生モノヒドロキシ化合物を留出させる留出管の壁面温度T(℃)と、反応器内の内温t2(℃)との関係が、式(1)を満たすことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
t1<T≦t2 式(1)
ここで、T(℃)とt2(℃)との関係が、さらに式(2)を満たすことが好ましい。
230(℃)<T≦t2 式(2)
また、反応器は、反応器内の圧力を減圧に保つ減圧装置と、留出管から反応器外に留出する副生モノヒドロキシ化合物を凝縮する凝縮器と、を備える竪型重合槽であることが好ましい。
さらに、竪型重合槽に設けられた留出管は、留出物の逆流を防止する逆流防止器を備えることが好ましい。
また、留出管の少なくとも内壁部分が鉄含量20%以上の鉄材料で形成されていることが好ましい。
また、副生モノヒドロキシ化合物がフェノールであることが好ましい。
次に、本発明によれば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの連続的エステル交換反応を、直列に接続された複数基の竪型重合槽と、竪型重合槽に接続された少なくとも1基の横型重合槽と、少なくとも1基の竪型重合槽の上部に設置された竪型重合槽からエステル交換反応で副生するモノヒドロキシ化合物を留出させる留出管と、を有する重合装置を使用して行うに際して、竪型重合槽内の圧力における副生モノヒドロキシ化合物の沸点t1(℃)と、竪型重合槽内の内温t2(℃)と、留出管の壁面温度T(℃)とが、式(1)を満たすことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
t1<T≦t2 式(1)
ここで、横型重合槽の直前に位置する竪型重合槽において、t1(℃)、t2(℃)及びT(℃)と、が前述した式(1)を満たすことがより好ましい。
また、留出管は、留出物の逆流を防止する逆流防止器をさらに備えることが好ましい。
本発明によれば、結晶化異物や「ヤケ」異物が低減されたポリカーボネート樹脂を製造することができる。
ポリカーボネート樹脂の製造装置の一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
(ポリカーボネート樹脂)
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づく溶融重縮合により製造される。
以下、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に溶融重縮合反応を行うことにより、ポリカーボネート樹脂を製造する方法について説明する。
(芳香族ジヒドロキシ化合物)
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2013177636
ここで、一般式(1)において、Aは、単結合または置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO2−で示される2価の基である。X及びYは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。p及びqは、0又は1の整数である。尚、XとY及びpとqは、それぞれ、同一でも相互に異なるものでもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェノール類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
(炭酸ジエステル)
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2013177636
ここで、一般式(2)中、A’は、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基である。2つのA’は、同一でも相互に異なるものでもよい。
炭酸ジエステルの具体例としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
また、上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
これら炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)は、ジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いられる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル1.01〜1.30、好ましくは1.02〜1.20のモル比で用いられる。モル比が1.01より小さくなると、得られるポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が1.30より大きくなると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品の臭気の原因となることがあり、好ましくない。
(エステル交換触媒)
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム化合物又はマグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲で用いられる。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物;アルカリ金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等の有機アルカリ金属化合物等が挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
ベリリウム化合物又はマグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ベリリウム又はマグネシウム、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物;これらの金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等が挙げられる。ここで、アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。
塩基性ホウ素化合物としては、ホウ素化合物のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。ここで、ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3価のリン化合物、又はこれらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
次に、ポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
ポリカーボネート樹脂の製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製し(原調工程)、これらの化合物を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の重合槽を用いて多段階の重縮合反応させる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は、複数基の竪型重合槽及びこれに続く少なくとも1基の横型重合槽が用いられる。通常、これらの重合槽は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、押出機にて停止剤により反応を停止させた後、反応液中の未反応原料や反応副生物を除去し、熱安定剤や離型剤等の添加剤を添加し(押出工程)、押出機から排出されるポリカーボネート樹脂ストランドは冷却され、所定の粒径のペレットに成形される(ペレット化工程)。
次に、製造方法の各工程について説明する。
(原調工程)
ポリカーボネート樹脂の原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、溶融混合物として調製される。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
この際、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの割合は、炭酸ジエステルが過剰になるように調整され、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルは通常1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの割合になるように調整される。
(重縮合工程)
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段工程で連続的に行われる。具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
多段工程の各重合槽においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に排出するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られるポリカーボネート樹脂の色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。
多段工程の重縮合は、通常、撹拌翼を備えた竪型重合槽を複数個接続し、最終工程として横型重合槽を設けて、ポリカーボネート樹脂の平均分子量を増大させる。竪型重合槽は通常2個〜5個、好ましくは3個〜4個設置される。
ここで、竪型重合槽とは、撹拌翼の回転軸が竪型(垂直方向)であるものをいう。竪型重合槽の形状としては、重合槽の内径Dに対する直胴部長さLとの比率(L/D)が3以下、好ましくは0.5〜3であるものが用いられる。尚、重合槽の直胴部長さLとは、重合槽の形状が、円筒両鏡のときには、重合槽のタンジェンシャルライン間の長さを指し、また、重合槽の上部または下部が平蓋構造のときには、側胴部片側のタンジェンシャルラインと、もう一方の片側端面間の値を指す。また、重合槽の内径Dは、反応液が充填されている領域での距離を指すものである。
竪型重合槽の撹拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼環境ソリューション(株)製)、サンメラー翼(三菱重工業(株)製)、マックスブレンド翼(住重機器システム(株)製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼((株)日立プラントテクノロジー製)等が挙げられる。
また、横型重合槽とは、撹拌翼の回転軸が横型(水平方向)であるものをいう。横型重合槽の撹拌翼としては、例えば、円板型、パドル型等の一軸タイプの撹拌翼やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業(株)製)、バイボラック(住重機器システム(株)製)、あるいはメガネ翼、格子翼((株)日立プラントテクノロジー製)等の二軸タイプの撹拌翼が挙げられる。
尚、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との重縮合に使用するエステル交換触媒は、通常、予め水溶液として準備される。触媒水溶液の濃度は特に限定されず、触媒の水に対する溶解度に応じて任意の濃度に調整される。また、水に代えて、アセトン、アルコール、トルエン、フェノール等の他の溶媒を選択することもできる。
触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
(押出工程)
重縮合工程後、押出工程において反応液中の未反応原料、エステル交換触媒、エステル交換反応で副生するヒドロキシ化合物、ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物が除去される。この除去は、通常、ベント式の押出機により連続的に行われる。
使用する押出機としては、ベント部を備えたものであればどのような形式のものでも使用することができ特に限定されないが、例えば、ベント式の単軸又は多軸押出機が挙げられるが、特に、かみ合い型二軸押出機が好ましい。押出機の軸の回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。ベント数は、通常2段〜10段の多段ベントが用いられる。
また、押出工程において、重縮合反応後のポリカーボネート樹脂中の残留塩基性エステル交換触媒を、酸性化合物又はその誘導体により中和・失活させることが好ましい。これにより押出機内での副反応を抑え、残存する未反応原料及びヒドロキシ化合物を除去することができる。
押出工程において添加する酸性化合物又はその誘導体としては、塩基性エステル交換触媒を中和するものであれば、いずれも使用でき、特に限定されないが。例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。これらの酸性化合物又はその誘導体のなかでも、スルホン酸類又はそのエステル類が特に好ましい。
尚、酸性化合物又はその誘導体を溶解する溶媒としては、上記の酸性化合物又はその誘導体を溶解するものであれば特に限定されない。なかでも水が特に好ましい。また、水単独に不溶な酸性化合物又はその誘導体は、アセトン等の有機溶媒を水に加えた混合溶媒を使用することができる。これら酸性化合物又はその誘導体の使用量は、重縮合反応に使用した塩基性エステル交換触媒の中和当量に対し0.1倍〜50倍、好ましくは0.5倍〜30倍の範囲で添加する。
押出工程において、多段ベント口を備えた押出機を使用する場合、酸性化合物又はその誘導体は、樹脂供給口に最も近いベント口の手前に添加される。押出機による中和脱揮処理に供するポリカーボネート樹脂の形態としては、重合直後の溶融状態にあるうちに押出機に導入し処理する方法、または、一旦冷却固化した後、押出機に導入し処理する方法等が挙げられる。
(ペレット化工程)
押出工程において押出機より排出されたストランド状のポリカーボネートは、通常、ストランド冷却バスを経由してストランドカッターによりペレット化され、その後、脱水機等により水分除去した後に製品サイロに収納される。
(製造装置)
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法の一例を具体的に説明する。
図1は、ポリカーボネート樹脂の製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、ポリカーボネート樹脂は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製する原調工程と、これらの原料を溶融状態で複数の重合槽を用いて重縮合反応させる重縮合工程とを経て製造され、その後、反応液中の未反応原料や反応副生物を除去したり任意の添加剤を添加し溶融混練したりする押出工程と、ペレット化工程を経て、ポリカーボネート樹脂のペレットが成形される。
原調工程においては、直列に接続した第1原料混合槽2a及び第2原料混合槽2bと、調製した原料を重縮合工程に供給するための原料供給ポンプ4aとが設けられている。第1原料混合槽2aと第2原料混合槽2bとには、例えばアンカー型撹拌翼3a,3bがそれぞれ設けられている。
また、第1原料混合槽2aには、DPC供給口1a−1から、炭酸ジエステルであるジフェニルカーボネート(以下、DPCと記載することがある。)が溶融状態で供給され、BPA供給口1bからは、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールA(以下、BPAと記載することがある。)が粉末状態で供給され、溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールAが溶解される。
次に、重縮合工程においては、直列に接続した第1竪型重合槽6a、第2竪型重合槽6b及び第3竪型重合槽6cと、第3竪型重合槽6cの後段に直列に接続した第4横型重合槽9aとが設けられている。第1竪型重合槽6a、第2竪型重合槽6b及び第3竪型重合槽6cには、マックスブレンド翼7a,7b,7cがそれぞれ設けられている。また、第4横型重合槽9aには、撹拌翼10aが設けられている。
さらに、4個の重合槽(第1竪型重合槽6a,第2竪型重合槽6b,第3竪型重合槽6c,第4横型重合槽9a)には、それぞれ重縮合反応により生成する副生物等を排出するための留出管8a,8b,8c,8dが取り付けられている。留出管8a,8b,8c,8dは、それぞれ凝縮器81a,81b,81c,81dに接続し、また、各重合槽は、減圧装置82a,82b,82c,82dにより、所定の減圧状態に保たれる。
また、4個の重合槽(第1竪型重合槽6a,第2竪型重合槽6b,第3竪型重合槽6c,第4横型重合槽9a)にそれぞれ設けられた留出管8a、8b、8c、8dには、留出物の逆流を防止するための逆流防止器を適宜設置することが好ましい。この場合、逆流防止器は、各留出管8a、8b、8c、8dにそれぞれ設置してもよい。より好ましくは、少なくとも第4横型重合槽9a(横型重合槽)の直前に位置する第3竪型重合槽6c(竪型重合槽)に設けた留出管8cに逆流防止器を設置するのが良い。
逆流防止器は、各留出管8a、8b、8c、8dの途中にそれぞれ設置されることが好ましく、より好ましくは、重合槽と凝縮器との間の重合槽寄りの位置に設置するのが良い。このような逆流防止器としては、留出物の逆流を防止する機能を示すものであれば特に限定されず、例えば、ポット状のものが用いられる。
押出工程においては、添加剤供給口12a,12b,12cを有する押出機11aが設けられている。
ペレット化工程においては、押出機11aより排出されたストランド状のポリカーボネートを冷却するストランド冷却機13aと、冷却したストランドを所定の粒径にカットするカッター14aと、ペレットの水分を除去するための脱水機15aと、乾燥したペレットを格納する製品サイロ16a,16bとが設けられている。
図1に示すポリカーボネート樹脂の製造装置において、窒素ガス雰囲気下、所定の温度で調製されたDPC融液と、窒素ガス雰囲気下計量されたBPA粉末とが、それぞれDPC供給口1a−1とBPA供給口1bから第1原料混合槽2aに連続的に供給される。第1原料混合槽2aの液面が移送配管中の最高位と同じ高さを超えると、原料混合物が第2原料混合槽2bに移送される。
次に、原料混合物は、原料供給ポンプ4aを経由して第1竪型重合槽6aに連続的に供給される。また触媒として、水溶液状の炭酸セシウムが、原料混合物の移送配管途中の触媒供給口5aから連続的に供給される。
第1竪型重合槽6aでは、窒素雰囲気下、例えば、温度220℃、圧力13.33KPa(100Torr)、マックスブレンド翼7aの回転数を160rpmに保持し、副生したフェノールを留出管8aから留出させながら平均滞留時間60分になるように液面レベルを一定に保ち、重縮合反応が行われる。次に、第1竪型重合槽6aより排出された重合反応液は、引き続き、第2竪型重合槽6b、第3竪型重合槽6c、第4横型重合槽9aに順次連続供給され、重縮合反応が進行する。各重合槽における反応条件は、重縮合反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度となるようにそれぞれ設定される。重縮合反応の間、各重合槽における平均滞留時間は、例えば、60分程度になるように液面レベルを制御し、また各重合槽においては、副生するフェノールが留出管8b,8c,8dから留出される。
本実施の形態においては、第1竪型重合槽6aと第2竪型重合槽6bとにそれぞれ取り付けられた凝縮器81a,81bからは、フェノール等の副生物が連続的に液化回収される。また、第3竪型重合槽6cと第4横型重合槽9aとにそれぞれ取り付けられた凝縮器81c,81dにはコールドトラップ(図示せず)が設けられ、副生物が連続的に固化回収される。
次に、第4横型重合槽9aより抜き出されたポリカーボネートは、溶融状態のまま3段ベント口を具備した2軸型の押出機11aに供給される。押出機11aには添加剤供給口12a,12b,12cから、たとえば、p−トルエンスルホン酸ブチル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ステアリン酸モノグリセリド等の各種添加剤がそれぞれ供給される。押出機11aの条件は、例えば、吐出量50kg/h、回転数150rpm、最高樹脂温度278℃程度に設定される。
押出機11aより排出されたストランド状のポリカーボネートはストランド冷却機13aを経由してカッター14aでペレット化され、脱水機15aにて水分除去した後に製品サイロ16a,16bに導入される。
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法では、少なくとも、第3竪型重合槽6cにおける重縮合の際に、以下の式(1)の関係を満たすことを特徴としている。
t1<T≦t2 式(1)
式(1)において、t1は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応による重縮合の際に、副生物として留出する副生モノヒドロキシ化合物の、第3竪型重合槽6c内の圧力下における沸点(単位:℃)である。
また、Tは、副生物を留出させるために第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの壁面温度(単位:℃)である。
さらに、t2は、第3竪型重合槽6cの内温(単位:℃)である。
ここで、留出管8cの壁面温度(T)は、例えば、留出管8cが二重管の場合は、留出管8cへの熱媒の供給温度と排出温度の平均値である。また、蒸気トレースまたは電気トレースの場合には、トレースの温度のことを意味する。
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応による重縮合は、副生物を除去することにより進行することが知られている。副生物の大多数は、フェノールを代表とする副生モノヒドロキシ化合物である。特に、図1に示すように、竪型重合槽を3基直列に接続した重縮合工程において、第3竪型重合槽6cでは、重縮合反応の進行に伴い、重合反応液の粘度が増大し、副生物を効率良く除くことが、重縮合反応を進行させるために重要となる。
留出管8cの壁面温度(T)が、副生モノヒドロキシ化合物の第3竪型重合槽6c内の圧力下における沸点(t1)以下の場合は、副生物を効率よく除くことが困難となり、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応による重縮合が促進されない傾向がある。
また、前述したように、第3竪型重合槽6c内の重合反応液の粘度は、重縮合反応の進行とともに増大するため、第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cには、副生モノヒドロキシ化合物と同伴して、重合原料や低分子量のポリカーボネート等の飛沫同伴物が留出管8c内に引き込まれることがある。
このとき、留出管8cの壁面温度(T)が、第3竪型重合槽6cの内温(t2)より高くなると、留出管8cの壁面に高温下で焼けた飛沫同伴物が付着する傾向がある。このような付着物は、長期間の運転中に留出管8cの壁面から第3竪型重合槽6c内に落下し、「ヤケ」異物となるため、品質上好ましくない。
さらに、留出管8c内に引き込まれた低分子量のポリカーボネートの結晶化を防止するために、留出管8cの壁面温度(T)は230℃以上であることが好ましいし、留出管8cの途中に逆流防止器(図示せず)をさらに設置することがより好ましい。このような逆流防止器は、流出液や異物などの重合槽への逆流を防止するために設置され、通常ポット状のものが用いられる。
また、留出管8cの少なくとも内壁部分を形成する材料としては、例えば、SUS304,SUS316,SUS316L等の鉄含量20%以上の鉄材料;鉄含量20%以下の鉄材料;ニッケル、チタン等の非鉄金属材料等が挙げられる。ここで、鉄含量20%以上の鉄材料を使用する場合は、留出管8cの内壁部分に電解研磨処理が施されていることが好ましい。鉄含量20%以上の鉄材料で構成された留出管8cの内壁部分に電解研磨処理が施されていないと、製造されるポリカーボネート樹脂が着色する場合があり、樹脂の黄色度(YI)が増大する傾向がある。
尚、ここでは、図1に示すポリカーボネート樹脂の製造装置の第3竪型重合槽6cにおける式(1)の適用について詳細に説明したが、式(1)の関係は、第3竪型重合槽6cに限定されず、第1竪型重合槽6a、第2竪型重合槽6bまたは第4横型重合槽9aにおける重縮合反応にも適用することができる。
尤も、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法では、図1に示すように、重縮合工程で撹拌機を備えた複数の竪型重合槽を直列に接続した製造装置を使用する場合、少なくとも最終に接続した竪型重合槽である第3竪型重合槽6cにおいて、前述した式(1)の関係を満たす条件でポリカーボネート樹脂の製造を行うことが好ましい。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
前述した図1に示すように、原料混合槽2基と、竪型重合槽3基及び横型重合槽1基とを有する製造装置により、以下の条件でポリカーボネート樹脂の製造を行った。
初めに、原調工程において、DPC(ジフェニルカーボネート)とBPA(ビスフェノールA)とを、窒素ガス雰囲気下、一定のモル比(DPC/BPA=1.064)に混合し、DPC/BPAの混合溶融液を調製した。
次に、重縮合工程では、先ず、原調工程で調製した混合溶融液を移送配管によりマックスブレンド翼7aを備えた第1竪型重合槽6a内に連続供給した。第1竪型重合槽6aは、容量10.8mで、重合槽内は、温度222℃、圧力1.33×10Pa、撹拌速度59rpmに制御されている。
混合溶融液は、流量4483kg/時で第1竪型重合槽6a内に連続供給される。また、第1竪型重合槽6aにおける平均滞留時間が75分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ(図示せず)の開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。
続いて、上述した混合溶融液の供給を開始すると同時に、触媒として、水溶液状の炭酸セシウムを混合溶融液の移送配管途中の触媒供給口5aから連続供給した。触媒の供給量は、BPA1モルに対し、1.0μモル(セシウム金属量として、BPA1モルに対し2.0μモル)の割合である。
次に、第1竪型重合槽6aの槽底より排出された重合反応液は、引き続き、第2竪型重合槽6b(容量12.6m)、第3竪型重合槽6c(容量9.0m)及び第4横型重合槽9a(容量15.5m)に逐次連続供給され、第4横型重合槽9a底部のポリマー排出口から抜き出された。
第2竪型重合槽6b〜第4横型重合槽9aにおける反応条件(温度、圧力、撹拌速度)は、それぞれ、第2竪型重合槽6b(260℃、4.00×10Pa、59rpm)、第3竪型重合槽6c(274℃、700Pa、69rpm)、第4横型重合槽9a(280℃、170Pa、3rpm)である。尚、第4横型重合槽9aは、撹拌翼10aを備えている。
重縮合工程においては、重縮合反応が進行するとともに、各重合槽の温度、圧力、撹拌速度を設定した。また、反応時間は、第2竪型重合槽6b〜第4横型重合槽9aにおける平均滞留時間が、順番に75分(第2竪型重合槽6b)、38分(第3竪型重合槽6c)、113分(第4横型重合槽9a)となるように、各重合槽における液面レベルを制御した。
また、各重合槽において、重縮合反応と同時に副生するフェノールは、それぞれの重合槽に取り付けた留出管を通して、重合槽から留去した。第1竪型重合槽6a及び第2竪型重合槽6bには、SUS310Sを電解研磨した留出管8a,8bをそれぞれ取り付け、第3竪型重合槽6c及び第4横型重合槽9aには、SUS316Lを電解研磨した留出管8c,8dをそれぞれ取り付けた。これらの4基の重合槽にそれぞれ取り付けた留出管(8a,8b,8c,8d)の壁面温度を、いずれも120℃に保持した。
上述した条件で、ポリカーボネート樹脂の製造運転を3ヶ月間継続後、運転を停止し、各重合槽に取り付けた留出管(8a〜8d)の内壁を観察した。その結果、第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの内壁に、わずかに結晶化異物と思われる付着物が見られたが、留出管内部を閉塞することはなかった。また、留出管8c以外の留出管(8a,8b,8d)にも異物が観察されなかった。
また、3ヶ月間の製造運転において製造したポリカーボネート樹脂中には、ほとんど異物が観察されなかった。
尚、異物の個数は、ポリカーボネート樹脂500g中5個であった。ここで、異物の個数は、顕微鏡を用い、ポリカーボネート樹脂ペレット500g中の40μm以上の異物の個数を計測した。
(実施例2)
実施例1で使用した製造装置において、重縮合工程の第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの壁面温度を、240℃に変更した以外は、実施例1と同様な条件で、ポリカーボネート樹脂の製造運転を3ヶ月継続した。
3ヶ月間の製造運転において製造したポリカーボネート樹脂中には、異物がポリカーボネート樹脂500g中に2個しか観測されなかった。
(実施例3)
実施例2において、重縮合工程の第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの途中(第3竪型重合槽6cと凝縮器81cとの間の第3竪型重合槽6c寄りに)にポット型の逆流防止器(図示せず)を設置し、これ以外は実施例2と同様の条件でポリカーボネート樹脂を製造した。
3ヶ月間の製造運転において製造したポリカーボネート樹脂中には、異物がポリカーボネート樹脂500g中に1個しか観測されなかった。
(比較例1)
実施例1で使用した製造装置において、重縮合工程の第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの壁面温度を、第3竪型重合槽6cの圧力下(700Pa)における副生フェノールの沸点(67℃)より低い50℃に保ち、一方、第1竪型重合槽6a、第2竪型重合槽6b及び第4横型重合槽9aにそれぞれ取り付けた留出管(8a,8b,8d)の壁面温度を120℃に調整し、それ以外は、実施例1と同様な条件で、ポリカーボネート樹脂の製造運転を1ヶ月継続した。
1ヶ月後、運転を停止し、各重合槽に取り付けた留出管の内壁を観察した。その結果、第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの内壁には、副生フェノールや結晶化異物等が付着したため、管内が閉塞ぎみとなっていた。このため、重合系内の圧力を維持できなくなった。また、ポリカーボネート樹脂中に、結晶化異物が多く見られた。
(比較例2)
実施例1で使用した製造装置において、重縮合工程の第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの壁面温度を、第3竪型重合槽6cの温度(274℃)より高い280℃に保ち、一方、第1竪型重合槽6a、第2竪型重合槽6b及び第4横型重合槽9aにそれぞれ取り付けた留出管(8a,8b,8d)の壁面温度を120℃に調整し、それ以外は、実施例1と同様な条件で、ポリカーボネート樹脂の製造運転を3ヶ月継続した。
3ヶ月後、製造運転を停止し、各重合槽に取り付けた留出管の内壁を観察した。その結果、第3竪型重合槽6cに取り付けた留出管8cの内壁には、副生フェノールや結晶化異物等の付着は無かったが、副生フェノールと飛沫同伴したポリカーボネート樹脂のヤケ異物が多く見られた。
また、製造運転中に得られたポリカーボネート樹脂の黄色度(YI)が増大する場合があり、色調が不安定となる傾向を示した。さらに、ポリカーボネート樹脂中に、異物が多く見られた。
ここで、黄色度(YI)の測定方法は以下の通りである。
射出成形機(株式会社日本製鋼所製:J100SS−2)を用いて、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて成形した厚み3mm、一辺100mm角のシートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製:SC−1−CH)により、色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z)
このYI値が大きいほど着色していることを示す。
尚、第3竪型重合槽6cにおける重合条件と結果について表1に示す。
Figure 2013177636
以上詳述したように、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法によれば、重合槽に取り付けた留出管からの結晶化異物や「ヤケ」異物等の落下を防止し、このような異物が低減されたポリカーボネート樹脂を製造することができる。
こうして得られたポリカーボネート樹脂は、シート等の建築材料、水用ボトル等の容器、自動車用ヘッドランプレンズ、眼鏡等の光学用レンズ類、光ディスク等の光学用記録材料、液晶ディスプレイの導光板等に好適に使用することができる。
2a…第1原料混合槽、2b…第2原料混合槽、3a,3b…アンカー型撹拌翼、4a…原料供給ポンプ、5a…触媒供給口、6a…第1竪型重合槽、6b…第2竪型重合槽、6c…第3竪型重合槽、7a,7b,7c…マックスブレンド翼、8a,8b,8c,8d…留出管、9a…第4横型重合槽、10a…撹拌翼、11a…押出機、12a,12b,12c…添加剤供給口、13a…ストランド冷却機、14a…カッター、15a…脱水機、16a,16b…製品サイロ、81a,81b,81c,81d…凝縮器、82a,82b,82c,82d…減圧装置
かくして本発明によれば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、エステル交換反応を行う反応器内の圧力における副生モノヒドロキシ化合物の沸点t1(℃)と、反応器から副生モノヒドロキシ化合物を留出させる留出管の壁面温度T(℃)と、反応器内の内温t2(℃)との関係が、式(1)を満たし、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して炭酸ジエステルのモル比が1.01〜1.30であることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
t1<T≦t2 式(1)
次に、本発明によれば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの連続的エステル交換反応を、直列に接続された複数基の竪型重合槽と、竪型重合槽に接続された少なくとも1基の横型重合槽と、少なくとも1基の竪型重合槽の上部に設置された竪型重合槽からエステル交換反応で副生するモノヒドロキシ化合物を留出させる留出管と、を有する重合装置を使用して行うに際して、竪型重合槽内の圧力における副生モノヒドロキシ化合物の沸点t1(℃)と、竪型重合槽内の内温t2(℃)と、留出管の壁面温度T(℃)とが、式(1)を満たし、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して炭酸ジエステルのモル比が1.01〜1.30であることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
t1<T≦t2 式(1)

Claims (9)

  1. 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
    前記エステル交換反応を行う反応器内の圧力における副生モノヒドロキシ化合物の沸点t1(℃)と、
    前記反応器から前記副生モノヒドロキシ化合物を留出させる留出管の壁面温度T(℃)と、
    前記反応器内の内温t2(℃)との関係が、式(1)を満たすことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
    t1<T≦t2 式(1)
  2. 前記T(℃)と前記t2(℃)との関係が、さらに式(2)を満たすことを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
    230(℃)<T≦t2 式(2)
  3. 前記反応器は、当該反応器内の圧力を減圧に保つ減圧装置と、前記留出管から当該反応器外に留出する前記副生モノヒドロキシ化合物を凝縮する凝縮器と、を備える竪型重合槽であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  4. 前記留出管は、留出物の逆流を防止する逆流防止器をさらに備えることを特徴とする請求項3記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  5. 前記留出管の少なくとも内壁部分が鉄含量20%以上の鉄材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  6. 前記副生モノヒドロキシ化合物がフェノールであることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  7. 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの連続的エステル交換反応を、
    直列に接続された複数基の竪型重合槽と、
    前記竪型重合槽に接続された少なくとも1基の横型重合槽と、
    少なくとも1基の前記竪型重合槽の上部に設置された、当該竪型重合槽から、エステル交換反応で副生するモノヒドロキシ化合物を留出させる留出管とを有する重合装置を使用して行うに際して、
    前記竪型重合槽内の圧力における前記副生モノヒドロキシ化合物の沸点t1(℃)と、当該竪型重合槽内の内温t2(℃)と、前記留出管の壁面温度T(℃)とが、式(1)を満たすことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
    t1<T≦t2 式(1)
  8. 横型重合槽の直前に位置する竪型重合槽において、前記t1(℃)、前記t2(℃)及び前記T(℃)と、が式(1)を満たすことを特徴とする請求項7記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  9. 前記留出管は、留出物の逆流を防止する逆流防止器をさらに備えることを特徴とする請求項7又は8記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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