JP4957311B2 - 芳香族ポリカーボネートの連続製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、この方法は人体に有害なホスゲンを用いなければならないこと、環境に対する負荷の高いジクロロメタン等の溶剤を必要とすること、また多量に副生する塩化ナトリウムのポリマーへの混入等の問題点が指摘されている。
一方、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換し、副生するフェノール等の低分子量物を系外に取り除きながら芳香族ポリカーボネートを得る方法も、いわゆる溶融法として古くから知られている。溶融法は界面法による上記のような問題点もなく芳香族ポリカーボネートが製造できるという利点がある。
芳香族ポリカーボネートのヤケが生じたり、異物が混入したりする原因としては種々存在するが、反応装置内で芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換反応をさせる際に、攪拌が不十分なために反応液の一部が加熱を行う内部コイル周辺で滞留し、その結果熱劣化が生じ、それがヤケや異物が生じる原因の1つであると考えられている。
特に竪型の大型反応器を使用し、エステル交換反応のための加熱源として反応器内部に内部コイルを取り付け、攪拌翼を使用して攪拌しながら反応を行う反応装置においては、内部コイルが反応液の流動性を阻害し、反応液の滞留を生じやすい。
この問題を解決する手段として、例えば、攪拌槽内に上下方向の循環流を生じさせるのに適した攪拌翼を使用し、被処理液がむらなく伝熱コイルの全体を通過するようにした竪型攪拌装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
即ち、本発明の目的は、内部コイルを複数設置した反応装置においても十分に反応液の流動性が確保でき、かつ伝熱能力についても優れた反応装置を提供することにある。
また、内部コイルは、少なくとも一部において多重に配されることが好ましく、少なくとも一部において2重〜5重で配されることが更に好ましい。
図1に示した反応装置20は、いわゆる竪型であり直胴部は縦方向に長い円筒形状をしている。内部には攪拌装置(攪拌手段)を有し、この攪拌装置は中心軸21に攪拌翼22が取り付けられ、また中心軸上部に回転装置23が取り付けられている。そして回転装置23により中心軸21を中心にして攪拌翼22を回転させることにより循環流を生じさせ、内部の反応液を攪拌する。
また、攪拌翼22の外側にはらせん状の内部コイル24,25,26が3重に配され、反応液を攪拌翼22により攪拌しつつ加熱することにより反応を進行させる。
ここで、内部コイル24,25,26は、反応装置20の中心軸21を中心とする異なる半径の円筒状の曲面上にらせん状に各々配される。即ち、図1に示すように、中心軸21を中心として内部コイル24,25,26は多重に設置されることになり、また上部から見ると中心軸21を中心にしてそれぞれの内部コイルは同心円状になっている。そして反応装置20の上部から下部へ、あるいは下部から上部へのらせん状に巻かれて設置される。
内部コイルは、個数が多くなるに従い加熱できる熱量も多くすることができるが、5重より過度に多くなると反応液の循環を阻害する効果が大きくなりすぎるため2重から5重であることが好ましい。
図2は、図1に示した反応装置20の内部コイル24,25,26の位置関係を説明する図である。
図2に示した通り、内部コイル24,25,26の位置関係は、隣接する内部コイル24と内部コイル25、あるいは隣接する内部コイル25と内部コイル26の中心間距離Aと内部コイルの外径Bとの関係A/B(コイル間ピッチ)が、1.6〜4.0となっている。
また、内部コイル間の中心間距離Aといった場合、水平方向の中心間距離に限られるものではなく、例えば、図2に示した鉛直方向の中心間距離A’(水平方向の中心間距離Aと区別するため便宜上A’と書く。)と内部コイルの外径Bとの関係A’/B(コイル間ピッチ)についても、1.6〜4.0となっている。
コイル間ピッチがこの範囲より過度に小さいと反応液の循環を阻害し、また過度に大きいと伝熱能力が確保できないという問題が生じる傾向にある。なおコイル間ピッチは2〜3であることが好ましい。
なお、内部コイル24,25,26の外径Bは全て同一であることが好ましい。
即ち、図1に示した反応装置20においては、中心軸21は垂直であるので、らせん状に中心軸21まわりに巻かれた内部コイル24,25,26の中心は、図2に示した通り反応装置20の上部から下部にかけて全て水平に並ぶことになる。
なお、上記の例では、反応装置20内で内部コイル24,25,26は上部から下部まで全て多重になっていたが、少なくとも一部が多重になっていればよく、また内部コイル24,25,26の中心は反応装置20の上部から下部にかけて全て水平に並んでいたが、千鳥状などでもよく、必ずしも水平に並んでいる必要はない(少なくとも一部で水平に並んでいれば本実施の形態の趣旨から外れるものではない)。
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づく溶融重縮合により製造される。
以下、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に溶融重縮合反応を行うことにより、ポリカーボネート樹脂を製造する方法について説明する。
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
なお、A’上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などが例示される。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して炭酸ジエステルのモル比が、好ましくは、1.01以上、特に好ましくは1.02以上、また好ましくは1.30以下、特に好ましくは1.20以下で用いられる。モル比が1.01より小さくなると、得られるポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が1.30より大きくなると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となる傾向となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品の臭気の原因となることがあり、好ましくない。
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム又はマグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、好ましくは1×10−9モル以上、特に好ましくは1×10−7モル以上、また好ましくは、1×10−1モル以下、特に好ましくは1×10−2モル以下の範囲で用いられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
次に、芳香族ポリカーボネートの製造方法について説明する。
芳香族ポリカーボネートの製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを含む混合物を調製し(原調工程)、これらの化合物の混合物を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階方式で重縮合反応させる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は、一般に複数基の竪型反応器及び/又はこれに続く少なくとも1基の横型反応器が用いられる。通常、これらの反応器は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、反応を停止させ反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程、ポリカーボネート樹脂を所定の粒径のペレットに形成する工程などを適宜追加してもよい。
次に、製造方法の各工程について説明する。
芳香族ポリカーボネートの原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、溶融混合物として調製される。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、好ましくは120℃以上、特に好ましくは125℃以上、また好ましくは180℃以下、特に好ましくは160℃以下の範囲から選択される。
この際、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合割合は、炭酸ジエステルが過剰になるように調整され、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルの割合は、好ましくは1.01モル以上、特に好ましくは1.02モル以上、また好ましくは、1.30モル以下、特に好ましくは1.20モル以下になるように調整される。
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で連続的に行われる。
具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜1.3Pa、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
重縮合工程を多段で行う場合の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に排出するために、上記の反応条件内で、通常段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られるポリカーボネート樹脂の色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。
ここで、反応器としては、例えば、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が用いられる。
触媒の溶解に使用する水としては、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用される芳香族ポリカーボネートの製造方法の一例を具体的に説明する。
図3は、芳香族ポリカーボネートの製造装置の一例を示す図である。図3に示す製造装置において、芳香族ポリカーボネートは、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを調製する原調工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応させる重縮合工程とを経て製造される。
その後、反応を停止させ重合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程(図示せず)や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程(図示せず)、芳香族ポリカーボネートを所定の粒径のペレットに形成する工程(図示せず)を経て、ポリカーボネート樹脂のペレットが成形される。
また、原料調製槽2aには、DPC供給口1aから、炭酸ジエステルであるジフェニルカーボネート(以下、DPCと記載することがある。)が溶融状態で供給され、BPA供給口1bからは、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールA(以下、BPAと記載することがある。)が粉末状態(あるいは溶融状態)で供給され、溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールAが溶解(あるいは混合)される。
この場合、反応装置内の芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は8000以下であることが好ましい。粘度平均分子量(Mv)がこの範囲より過度に大きいと、本実施の形態の反応装置では、内部コイルが反応液の流動を阻害し、攪拌効果が不十分になる傾向にある。
よって本実施の形態の芳香族ポリカーボネートの製造方法においては、本実施の形態の反応装置は、芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)があまり大きくならない段階、即ち第1竪型反応器6aと第2竪型反応器6bで使用することが好ましい。
押出機より排出されたストランド状の芳香族ポリカーボネートは冷却水にて冷却固化された後、カッターでペレット化され、水分除去した後に製品サイロに輸送される。
また、内部コイルは上記の例では、加熱のためのものであったが、コイル内部に冷媒を通し、除熱を行うようにしてもよい。
第1竪型反応器と第2竪型反応器の装置構成、重合反応を下記表1のような条件で、図3に示した製造装置を用いて芳香族ポリカーボネートを製造した。なお第3竪型反応器と横型反応器には内部コイルは設置していない。
この結果、製品として最終的な粘度平均分子量(Mv)が22000のペレット状の芳香族ポリカーボネートを得ることができた。
このとき得られた芳香族ポリカーボネートは、黄色度(YI)が1.6で非常に透明であった。また100gあたりの50μm以上の異物量は1個であり、異物量についても非常に少ない芳香族ポリカーボネートを製造することができた。
射出成型機(株式会社日本製鋼所製:J100SS−2)を用いて、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて成形した厚み3mm、一辺100mm角のシートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製:SC−1−CH)により、色の絶対値である3刺激値XYZを測定し、次の関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z)
このYI値が大きいほど着色していることを示す。
また、異物量の測定方法は以下の通りである。
射出成型機によりプレート(60mm×60mm×3.2mm)を7枚(計100g)成型し、これらプレート中に含まれる異物量を蛍光灯スタンド(1200lx〜1500lx)下で目視によりカウント測定した。尚、異物の大きさ判定については、50μmの異物を含有する基準プレートと比較し実施した。
一方、粘度平均分子量(Mv)の測定方法は以下の通りである。
ポリカーボネートをジクロロメタンに溶解し、濃度(C)が6.00g/Lの溶液を調整した。次に、ウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で、溶媒(ジクロロメタン)の流下速度(t0)と試料溶液の流下速度(t)を測定し、以下の式に従って、粘度平均分子量(Mv)を求めた。
ηsp=(t/t0)―1
a=0.28×ηsp+1
b=10×(ηsp/C)
[η]=b/a
Mv=51400×[η]exp1.205
第1竪型反応器と第2竪型反応器の装置構成、重合反応を下記表2のような条件で、図3に示した製造装置を用いて芳香族ポリカーボネートを製造した。なお第3竪型反応器と横型反応器には内部コイルは設置していない。
この結果、製品として最終的な粘度平均分子量(Mv)が22300のペレット状の芳香族ポリカーボネートを得ることができた。
このとき得られた芳香族ポリカーボネートは、黄色度(YI)が1.5で非常に透明であった。また100gあたりの50μm以上の異物量は0個であり、異物量についても非常に少ない芳香族ポリカーボネートを製造することができた。
Claims (4)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルを原料としてエステル交換反応を行い、かつ当該エステル交換反応で得られる芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)が8000以下までの反応工程において、
撹拌手段と複数の内部コイルを内部に有し、隣接する当該内部コイル間の中心間距離Aと当該内部コイルの外径Bとの関係A/B(コイル間ピッチ)が、1.6〜4.0である反応装置を使用する
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネートの連続製造方法。 - 前記内部コイルは、所定の中心軸を中心とする異なる半径の円筒状の曲面上にらせん状に各々配されることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネートの連続製造方法。
- 前記内部コイルは、少なくとも一部において多重に配されることを特徴とする請求項2に記載の芳香族ポリカーボネートの連続製造方法。
- 前記内部コイルは、少なくとも一部において2重〜5重に配されることを特徴とする請求項3に記載の芳香族ポリカーボネートの連続製造方法。
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