JP5211512B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法、その製造方法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂ペレット - Google Patents
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例えば、押出機から押し出した樹脂組成物を温度差を有する2段階の冷却槽を用いて徐冷する方法(特許文献1参照)、芳香族ポリカーボネート樹脂のストランドの冷却を複数の冷却帯域に区分して行う方法(特許文献2参照)、冷却したストランドをカットして得たペレットと水とを濾過してミスカットを分離する方法(特許文献3参照)、ストランドの切断直後のペレット温度が110℃〜130℃となるような温度でストランドを切断する方法(特許文献4参照)が挙げられる。
また、得られたペレットとフタロシアニンブルー等の染料及び炭酸ジエステル化合物とを配合した組成物を用いて、色相や臭気の問題を低減した成形体を得る方法が報告されている(特許文献5参照)。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂は、このような残存成分に起因して溶融成形時に臭気が発生したり、またその結果、成形品にも臭気が残ることがある。このため、食品容器等に用いるためには制限を受けることがある。
即ち、本発明の目的は、成形時の異臭発生を抑制し、成型不良の少ないポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、成形時の異臭発生を抑制した芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、成型不良の少ない芳香族ポリカーボネート樹脂の成形品を提供することにある。
かくして本発明によれば、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との反応により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを製造する方法であって、溶融押し出しされた芳香族ポリカーボネート樹脂のストランドを冷却及び/又は切断する際に使用する冷却水中の含有フェノール濃度が2.0ppm以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法が提供される。
さらに、少なくとも1基のフィルタにより濾過され、更に当該フィルタに直列に接続された少なくとも1基のイオン交換器によりイオン交換された水を追加して添加、混合することが好ましい。
また、フィルタを複数基並列に設け、かつその少なくとも1基を用いて濾過を行うとともに、他の少なくとも1基は待機させておき、濾過を行っていたフィルタの少なくとも1基の前後の差圧が所定の値を超えた場合、待機させてあった他の少なくとも1基のフィルタを用いて濾過を行うことが好ましい。
さらに、本発明によれば、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットから成形された成形品が提供される。
このような成形品としては、乳製品ボトル、清涼飲料水ボトル又は水ボトルであることが好ましい。
本発明において、芳香族ポリカーボネート樹脂は、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に溶融重縮合反応を行うことにより製造する。
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示す化合物が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル1.01〜1.30、好ましくは1.02〜1.20のモル比で用いる。モル比が1.01より小さくなると、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が1.30より大きくなると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の生産が困難となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品の臭気の原因となることがあり、好ましくない。
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際に用いる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム又はマグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲で用いられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを調製し(原調工程)、これらの化合物を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いる多段階の重縮合反応(重縮合工程)によって行う。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は、複数基の竪型反応器及びこれに続く少なくとも1基の横型反応器を用いる。通常、これらの反応器を直列に設置し、連続的に処理を行う。
次に、押出工程及びペレット化工程について説明する。
常法により得られるポリカーボネート樹脂は、重縮合工程後、押出工程において反応液中の未反応原料、エステル交換触媒、エステル交換反応で副生するヒドロキシ化合物、芳香族ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物を除去する。これらの除去操作は、通常、ベント式の押出機により連続的に行う。
使用する押出機としては、特に限定されないが、例えば、ベント式の単軸又は多軸押出機が挙げられる。特に、かみ合い型二軸押出機が好ましい。押出機の軸の回転方向は、同方向回転でも異方向回転でもよい。ベント数は、通常、2段〜10段の多段ベントを用いる。
また、押出工程において、重縮合反応後の芳香族ポリカーボネート樹脂中の残留塩基性エステル交換触媒を、酸性化合物又はその誘導体により中和・失活させることが好ましい。これにより押出機内での副反応を抑え、残存する未反応原料及びヒドロキシ化合物を除去することができる。
押出工程において押出機より排出されるストランド状の芳香族ポリカーボネート樹脂を、通常、ストランドバスを経由してストランドカッタによりペレット化し、その後、脱水機等により水分除去した後に製品サイロに収納する。
図1は、本実施の形態において使用する冷却水の供給回路を説明するための図である。
図1に示すように、溶融押し出しされた芳香族ポリカーボネート樹脂のストランドをストランドバスにて冷却する。冷却水として使用する水は、先ず、直列に並べた3基のフィルタ(冷却水フィルタ:フィルタ1−1,フィルタ2−1,フィルタ3−1)により濾過し、次に、これらのフィルタに直列に接続した1基のイオン交換器1によりイオン交換した後、一端、冷却水タンクに蓄える。
尚、図1に示す冷却水の供給回路には、3基のフィルタと1基のイオン交換器1の予備として、同様な構成(フィルタ1−2,フィルタ2−2,フィルタ3−2,イオン交換器2)の濾過ラインを備えている。
尚、ペレタイザにおいてペレット/水スラリーから分離した冷却水の一部は、系外に排出(パージ)する。
尚、ペレット/水スラリーから分離したペレットに同伴する水は、遠心脱水機15aにおいてペレットから分離し、分離した水の一部は系外に排出(パージ)し、一部は冷却水タンクに戻り、循環使用する。
製品ペレット中に混入した微粉や欠け等は、製品サイロ等に入る前に、例えば、篩い、エアーフィルタ等によりある程度は除去することができる。しかし、それだけでは不十分であり、さらに、混入した微粉等の含有量が増大すると、篩やフィルタ等の目詰まりが頻繁に起こり、連続運転に支障を来たすので好ましくない。
ここで、フィルタとしては、水処理用途において用いるフィルタであれば特に限定されない。また、フィルタの形態としては、一般に、キャンドル型、プリーツ型、リーフディスク型、バスケット型等の公知の物が使用できる。これらのフィルタは、1基または複数基直列に設けてもよい。通常、フィルタの寿命、交換頻度の面から、目開きを段階的に細かくしたフィルタを複数基直列に設けるのが好ましい。
即ち、フィルタを複数基並列に設け、かつその少なくとも1基を用いて濾過を行うとともに、他の少なくとも1基は待機させておき、濾過を行っていたフィルタの少なくとも1基の前後の差圧が所定の値を超えた場合、予め待機させてあった他の少なくとも1基のフィルタを用いて濾過を行うことが好ましい。これにより、例えば、生産レートの変更やグレードの切替え時のように、差圧変動が大きい場合でも対応することができる。
水中に微量のアルカリ成分が存在すると、得られたペレットを用いて製造した光ディスク基板は、高温・高湿条件下に長時間保持した場合、加水分解を起こし、その表面または基板中に微小な白点が発生する場合があり、記録媒体の信頼性に影響を与えるので好ましくない。
また、熱交換器2において調整し、ペレタイザにおけるペレット/水スラリーに供給する冷却水の温度は、特に限定されないが、通常、50℃〜100℃、好ましくは60℃〜90℃である。
上記含有フェノール濃度を2.0ppm以下とするためには、芳香族ポリカーボネート樹脂のストランドを冷却及び切断する際に使用した冷却水の系外排出量、循環量と新たな供給水量とを調節することで達成できる。
ウベローデ粘度計を用いて、塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より粘度平均分子量(Mv)を求める。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83
水を液体クロマトグラフィー(LC)により測定する。(カラム;MCI GEL ODS−1HU、4.6mmID×150mmL、溶離液:アセトニトリル/水(体積比1/1)、検出器;UV220nm、注入量20μl、測定機種SHIMADZU LC−10AT)
ペレットを、窒素雰囲気下、120℃、6時間以上乾燥する。その後、単軸30mm押出機(株式会社いすず化工製)を用いて、厚み70μmのフィルムを製膜する。このフィルムの90cm×50cmの範囲(約4g)を、実体顕微鏡を用いて核のない透明異物(フィッシュアイ)をマーキングし、10μm以上の数を数え、1g当たりの異物数として算出する。
ペレットを、窒素雰囲気下、120℃、6時間以上乾燥した後、以下の2種の試験片に鼻を近づけて臭気を嗅ぎ、下記基準に基き評価する。
(評価基準)
○:臭気が感じられない
△:臭気が僅かに感じられる
×:臭気が感じられる
(i)射出成形機で成形した直後の成形品(直径120mmΦ、厚み0.6mmのDVD−R用基板)
(射出成形機:住友重機株式会社製SD30成形機、シリンダー温度380℃、金型温度115℃、射出速度300mm/sec、保持圧力40kgf/cm2)
(ii)ブロー成型により成形した5ガロンボトル
(ブロー成型機:日本製鋼所株式会社製B−30、バレル温度270℃〜260℃、金型温度70℃)
上記DVD−R基板を、100ショット、安定的に連続成形し、製品として安定しているものを10枚採取し、85℃、85%RHの環境下に2日間保持した後、取り出したDVD−R基板を偏向顕微鏡下に全面観察し、10枚の基板中に存在する加水分解白点数で表現する。
上記DVD−R基板にスパッタリング装置(レイボルト株式会社製)を用いてアルミニウムを蒸着させた後、外観を目視観察してシルバーの有無を判定する。
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを一定のモル比(DPC/BPAモル比=1.065)に混合し、140℃の溶融混合物を調製する。この溶融混合物を原料導入管を介し、常圧、窒素雰囲気下、210℃に制御した第1竪型撹拌反応器内に連続供給し、平均滞留時間が60分となるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けるバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保つ。
また、上記原料の供給を開始すると同時に、触媒として炭酸セシウム水溶液を、ビスフェノールA1モルに対し、0.5×10−6モルの流量で連続供給する。生成するフェノール等の留出物は、第1竪型撹拌反応器の留出管に設けた凝縮器で連続的に液化回収する。
(第2竪型撹拌反応器)210℃、13,300Pa
(第3竪型撹拌反応器)240℃、1,995Pa
(第4竪型撹拌反応器)260℃、67Pa
(第5横型撹拌反応器)265℃、67Pa
得られる芳香族ポリカーボネート樹脂のペレット及び成形品についての結果を表1に示す。
実施例1において、冷却水を、冷却水フィルタ(フィルタ1−1、フィルタ2−1、フィルタ3−1)、イオン交換器1及び循環水フィルタ(フィルタ4−1、フィルタ5−1、フィルタ6−1)で濾過し、温度68℃、フェノール濃度1.4ppmとなるように調整する。26時間後にフィルタ4−1の所定差圧(0.10MPa)に達すると、フィルタ4−2に切り替え、以下、実施例1と同様にして芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを得る。
得られる芳香族ポリカーボネート樹脂のペレット及び成形品についての結果を表1に示す。
実施例1において、設定原料モル比(DPC/BPA)を1.040とし、第4竪型撹拌反応器、第5横型撹拌反応器の温度を、それぞれ270℃、280℃と設定する。
次に、ダイプレートから出てきた溶融状態のストランドをストランドバス13aに導き冷却水で冷却する。ストランドバス13aに供給する冷却水は、冷却水フィルタ(フィルタ1−1、フィルタ2−1、フィルタ3−1)、イオン交換器1及び循環水フィルタ(フィルタ4−1、フィルタ5−1、フィルタ6−1)で濾過し、温度70℃、フェノール濃度1.8ppmとなるように調整した後、ストランドバス13aに供給する。
得られる芳香族ポリカーボネート樹脂のペレット及び成形品についての結果を表1に示す。
実施例1において、冷却水における循環水のフェノール濃度が3.5ppmとなるように調整し、これ以外は実施例1と同様の操作を行って芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを得る。
得られる芳香族ポリカーボネート樹脂のペレット及び成形品についての結果を表1に示す。
実施例2において、冷却水における循環水のフェノール濃度が6.5ppmとなるように調整し、これ以外は実施例2と同様の操作を行って芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを得る。
得られる芳香族ポリカーボネート樹脂のペレット及び成形品についての結果を表1に示す。
比較例1において、冷却水フィルタ(フィルタ1−1、フィルタ2−1、フィルタ3−1)に直列に配列するイオン交換器1を使用せず、これ以外は比較例1と同様の操作を行って芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを得る。
得られる芳香族ポリカーボネート樹脂のペレット及び成形品についての結果を表1に示す。
比較例1において、循環水フィルタ(フィルタ4−1、フィルタ5−1、フィルタ6−1)を使用せず、これ以外は比較例1と同様の操作を行って芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを得る。
得られる芳香族ポリカーボネート樹脂のペレット及び成形品についての結果を表1に示す。
このような成形品としては、乳製品ボトル、清涼飲料水ボトル又は水ボトル等の食品容器等の用途に好適である。
Claims (3)
- 炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との反応により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを製造する方法であって、
溶融押し出しされた前記芳香族ポリカーボネート樹脂のストランドを冷却及び/又は切断する際に含有フェノール濃度が2.0ppm以下である冷却水を使用し、
前記ストランドの冷却及び/又は切断時に使用した前記冷却水の一部を、少なくとも1基のフィルタを用いてペレットの微粉を除去した後に、当該ストランドの冷却及び/又は切断時に使用する当該冷却水として循環使用し、
前記ストランドの冷却及び/又は切断時に循環使用する前記冷却水に、前記フィルタにより濾過され、更に当該フィルタに直列に接続された少なくとも1基のイオン交換器によりイオン交換されアルカリ成分が除去された新たな供給水を追加して混合する
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。 - フィルタを複数基並列に設け、かつその少なくとも1基を用いて濾過を行うとともに、他の少なくとも1基は待機させておき、当該濾過を行っていたフィルタの少なくとも1基の前後の差圧が所定の値を超えた場合、当該待機させてあった他の少なくとも1基のフィルタを用いて濾過を行うことを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂ペレット。
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