JP3681529B2 - ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明はポリカーボネートの製造方法に関し、さらに詳しくは色相に優れるとともに、成形時の熱安定性、色相安定性などの滞留安定性、透明性および耐水性に優れたポリカーボネートを効率よく製造することができるようなポリカーボネートの製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリカーボネートは、耐衝撃性などの機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性などにも優れており、各種機械部品、光学用ディスク、自動車部品などの用途に広く用いられている。
【0003】
このようなポリカーボネートは、従来、ビスフェノールAなどのビスフェノール類とホスゲンとを直接反応させる方法(界面法)、あるいはビスフェノール類とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとをエステル交換反応させる方法(溶融法、固相重合法)によって製造されている。
【0004】
これらのうちでもエステル交換法(溶融法)は、界面法と比較して安価にポリカーボネートを製造することができるという利点を有しており、またホスゲンあるいは塩化メチレンなどの毒性物質を用いないので環境衛生上も好ましく、近年特に注目されている。
【0005】
このような溶融法によるポリカーボネートの製造方法では、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物からなる触媒の存在下に反応させるが、生成したポリカーボネートは製造工程中に長時間高温に晒されるため、ポリカーボネートが着色してしまうことがある。このような着色は、上記アルカリ(土類)金属化合物の量が多量である場合に発生しやすくなるため、たとえば本出願人は特公平6―92529号公報で提案した溶融重縮合法によるポリカーボネートの製造方法では、ビスフェノール類1モルに対して10-7〜10-6モル程度の量で用いている。
【0006】
また反応原料も、通常精製して溶融重縮合反応に供されるが、特に上記のような触媒量の反応系では、反応原料に含まれるアルカリ性あるいは酸性を示す不純物がポリカーボネートの生成反応速度および生成ポリカーボネートの物性などに大きな影響を与えるため、このような不純物の量を反応に影響のない程度まで低減するかあるいは制御することが重要である。
【0007】
上記反応原料のうち、ジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステル類は、蒸留などにより比較的容易に精製することができる。
一方ビスフェノール類は、一般的にフェノール類とケトン類とを、塩酸などの鉱酸あるいは強酸性イオン交換樹脂などの酸性触媒の存在下に反応させることにより製造されるが、これら鉱酸あるいは強酸性イオン交換樹脂から溶出した酸性物質が微量残留する。具体的には、触媒として強酸性イオン交換樹脂を用いてビスフェノール類を製造する場合には、強酸性イオン交換樹脂触媒から微量の酸性物質が溶出してくることがあった。また鉱酸触媒を用いてビスフェノール類を製造する場合には、得られるビスフェノール類から酸性物質を除去しているが、この酸性物質を完全に除去することは困難であった。
【0008】
このようにして得られる原料ビスフェノール類中の酸性物質量は、一般的に商業プラントで生産されるもので2ppm 以下(酸滴定によるp-トルエンスルホン酸換算)であるとされているが、このような量であっても上記のように極微量のアルカリ(土類)金属化合物を触媒とする溶融法によるポリカーボネートの製造においては、原料ビスフェノール類中に含まれる酸性物質によって重合速度が大きく変化したり、得られるポリマーの物性が低下するなどの問題が生じやすく、その影響は無視できない。
【0009】
このようなビスフェノール類の精製は、蒸留により高沸点留分の除去時に熱分解を伴いやすいため容易ではなく、一般的にはたとえばビスフェノールAはフェノールとの付加体を生成させる方法により精製されている。
【0010】
本願出願人も先に、特開平8−183844号公報において、溶融法によりポリカーボネートを製造するに際して、上記のような付加体生成法によるビスフェノール類の精製時に、予め触媒としてのアルカリ(土類)金属化合物をビスフェノール類に添加し、このアルカリ(土類)金属化合物を含むビスフェノール類を溶融重縮合反応に供することを提案した。具体的には、(1) 粗製ビスフェノール類とフェノール類との付加体を形成し、(2) 得られた付加体に、触媒としてのアルカリ(土類)金属化合物をビスフェノール類1モルに対して5×10-8〜2×10-6モルの量で添加して、分散または溶解した後、(3) 該付加体からフェノール類を除去し、(4) 得られたビスフェノール類を用いてポリカーボネートを製造することを提案した。このような方法によれば、精製されたビスフェノール類を反応に供することができるとともに、該ビスフェノール類は触媒を含んでいるので溶融重縮合反応を反応初期段階から効率よく行なうことができる。
【0011】
ところで上記の公報では、触媒としてのアルカリ(土類)金属化合物をビスフェノール類1モルに対して上記のような範囲内の一定量で添加していた。しかしながら一定量のアルカリ(土類)金属化合物を原料ビスフェノール類に添加したのでは、ポリカーボネートの生成速度および得られるポリカーボネートの色相などにばらつきを生じることを見出した。このような問題点を解決すべく鋭意研究したところ、原料ビスフェノール類中に含まれる酸性物質の量が変化しているためであることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとを、ある範囲量の有効触媒量下で安定して溶融重縮合させることができ、また反応初期段階から効率的に反応を行うことができ、しかも色相に優れ、成形時の熱安定性、色相安定性などにも優れ、さらには耐水性にも優れたポリカーボネートを得ることができるようなポリカーボネートの製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
【発明の概要】
本発明に係るポリカーボネートの製造方法は、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとを、予めビスフェノール類中に添加した(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を触媒として溶融重縮合させ、ポリカーボネートを製造するに際して、
前記ビスフェノール類中に含まれる(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の触媒として有効に作用する触媒有効量が、純粋なビスフェノールA1モルに対して、ビスフェノールAの2Na塩として1×10-8〜1×10-6モルの範囲の量であるときと同様な触媒活性を有する量となるように、前記(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物のビスフェノール類への添加量を制御して、得られたビスフェノール類を連続的に溶融重縮合反応に供することを特徴としている。
【0014】
本発明では、上記触媒有効量を、上記ビスフェノールAの2Na塩として1×10-8〜1×10-6モルの範囲内から選ばれる特定値の10%以内に制御することができる。
【0015】
上記のようなビスフェノール類の触媒有効量は、該ビスフェノール類中に含まれる(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物をエステル交換反応触媒として、該ビスフェノール類と炭酸ジエステルとをエステル交換反応させたときのエステル交換反応度から求めることができる。
【0016】
前記ビスフェノール類に添加する(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の量を、前記エステル交換反応度から求められるビスフェノール類の触媒有効量に基づいて制御することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様では、フェノール類とケトン類との反応によって得られるビスフェノール類と、フェノール類とから、これらの付加体あるいは該付加体とフェノール類との混合物を形成し、該付加体あるいは混合物からフェノール類を除去して、精製ビスフェノール類を前記溶融重縮合反応に供するに際して、
上記付加体、該付加体とフェノール類との混合物あるいは精製ビスフェノール類に、(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を添加して、(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を前記触媒有効量で含む精製ビスフェノール類を前記溶融重縮合反応に供している。
【0018】
本発明では、溶融重縮合反応に供されるビスフェノール類の高速液体クロマトグラフィーで測定される純度は99重量%以上であることが望ましい。
上記ビスフェノール類はビスフェノールAであることが好ましい。
【0019】
また本発明に係るポリカーボネートの製造方法では、
上記のような溶融重縮合反応によって得られた[A]ポリカーボネートが溶融状態にある間に、[B]pKa値が3以下であるイオウ含有酸性化合物および/または該酸性化合物から形成される誘導体を、(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の触媒量の1〜20モル倍の量で、さらに必要に応じて[C]水をポリカーボネートに対して5〜1000ppm の量で添加して混練することもできる。
【0020】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るポリカーボネートの製造方法について具体的に説明する。本発明に係るポリカーボネートの製造方法では、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとを、予めビスフェノール類中に添加した(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物(以下(a) アルカリ(土類)金属化合物ともいう)を触媒として溶融重縮合させ、ポリカーボネートを製造するに際して、
上記ビスフェノール類中に含まれる(a) アルカリ(土類)金属化合物の溶融重縮合触媒として有効に作用する触媒有効量が、純粋なビスフェノールA1モルに対して、ビスフェノールAの2Na塩として1×10-8〜1×10-6モルの範囲の量であるときと同様な触媒活性を有するように、上記(a) アルカリ(土類)金属化合物のビスフェノール類への添加量を制御して、得られたビスフェノール類を連続的に溶融重縮合反応に供している。
【0021】
本発明では、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとを溶融重縮合させるに際して、上記のように予めビスフェノール類中に(a) アルカリ(土類)金属化合物を添加して、(a) アルカリ(土類)金属化合物を触媒有効量で含むビスフェノール類を溶融重縮合工程に供している。まずこのような(a) アルカリ(土類)金属化合物を含むビスフェノール類の製造工程について説明する。
【0022】
ビスフェノール類の製造
本発明でビスフェノール類と炭酸ジエステルとを溶融重縮合反応に供されるビスフェノール類は、特に限定されないがたとえば下記式[I]で示される。
【0023】
【化1】
【0024】
上記のような式[I]で示されるビスフェノール類としては、具体的には、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールA)、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類などが挙げられる。
【0025】
また本発明では、上記式中、Xが−O−、−S−、−SO−または−SO2−であるようなビスフェノール類も挙げられ、たとえば
4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、
4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル類、
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド類、
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、
4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド類、
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホンなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホン類などを挙げることもできる。
【0026】
またビスフェノール類として下記式[II]で示される化合物も挙げられる。
【0027】
【化2】
【0028】
(式中、Rf はハロゲン原子または炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4の整数である。nが2以上のとき、Rf は同一であっても異なっていてもよい。)
この式[II]で示されるビスフェノール類としては、具体的に、
レゾルシンおよび3-メチルレゾルシン、3-エチルレゾルシン、3-プロピルレゾルシン、3-ブチルレゾルシン、3-t-ブチルレゾルシン、3-フェニルレゾルシン、3-クミルレゾルシン、2,3,4,6-テトラフルオロレゾルシン、2,3,4,6-テトラブロムレゾルシンなどの置換レゾルシン、
カテコール、
ハイドロキノンおよび3-メチルハイドロキノン、3-エチルハイドロキノン、3-プロピルハイドロキノン、3-ブチルハイドロキノン、3-t-ブチルハイドロキノン、3-フェニルハイドロキノン、3-クミルハイドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルハイドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルハイドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロハイドロキノン、2,3,5,6-テトラブロムハイドロキノンなどの置換ハイドロキノンを挙げることができる。
【0029】
ビスフェノール類としては、さらに下記式で示される2,2,2',2'-テトラヒドロ-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビ-[IH-インデン]-6,6'-ジオールを用いることもできる。
【0030】
【化3】
【0031】
これらのうちでも、上記式[I]で示されるビスフェノール類が好ましく、特にビスフェノールAが好ましい。
上記のようなビスフェノール類は、フェノール類とケトン類とを酸性触媒の存在下に縮合反応させる公知のビスフェノール類の生成反応により得ることができる。フェノール類としては、たとえば上記式[I]中Xで結合していない構造のフェノール類が用いられる。また上記のようなビスフェノール類を得ることができれば、フェノール類とホルムアルデヒド、スルホン酸類などとを縮合反応させてもよい。
【0032】
本発明では、フェノール類とケトン類との反応により生成するビスフェノール類に、触媒有効量の(a) アルカリ(土類)金属化合物を含ませるが、本発明の好ましい態様例では、以下に示すような工程(1)〜(7)および必要に応じて工程(8) により、フェノール類とケトン類との反応によって前記式[I]で示されるビスフェノール類を生成させ、得られたビスフェノール類と、フェノール類とから、これらの付加体あるいは該付加体とフェノール類との混合物を形成し、該付加体あるいは混合物からフェノール類を除去して、精製ビスフェノール類を溶融重縮合反応に供するに際して、上記で得られた付加体、該付加体とフェノール類との混合物あるいは精製ビスフェノール類に、溶融重縮合触媒としての(a) アルカリ(土類)金属化合物を一定の触媒有効量となるように添加する。
【0033】
以下、好ましい具体的態様例を、図1に示すプロセスフローを参照しながら主としてフェノールとアセトンとの脱水縮合反応によりビスフェノールA(以下BPAと略すこともある)を製造する場合について説明する。
【0034】
工程 (1)
本発明では、まずフェノール類とケトン類とを反応させてたとえば上記式[I]で示されるビスフェノール類を生成させている。
【0035】
上記反応では、通常フェノールはアセトンに対して過剰量で用いられ、フェノールとアセトンとのモル比(フェノール/アセトン)は、通常3〜30好ましくは5〜20であることが望ましい。
【0036】
酸性触媒としては、公知の酸性イオン交換樹脂触媒を特に限定することなく用いることができるが、通常ゲル型で架橋度が1〜8%好ましくは2〜6%のスルホン酸型陽イオン交換樹脂が好ましく用いられる。
【0037】
また塩酸、硫酸などの鉱酸触媒を用いることもできる。
反応は、通常、温度が30〜100℃好ましくは50〜90℃、圧力が常圧〜5kg/cm2G の条件下に行われる。
【0038】
上記のようなフェノールとアセトンとの反応では、通常生成したビスフェノールAとともに未反応フェノール、未反応アセトン、反応副生水および着色物質などの反応副生物を含む反応混合物が得られる。
【0039】
工程 (2)
上記で得られたビスフェノール類を含む反応混合物から触媒および低沸点物を除去する。
【0040】
上記反応触媒として鉱酸を用いたときには、反応混合物から低沸点物を蒸留除去するに先立って、水洗などの触媒の分離除去処理を行なう。イオン交換樹脂触媒が充填された固定床反応器を用いる反応では、触媒を含まない反応混合物が得られるので、脱触媒処理は通常行なわない。
【0041】
反応混合物の蒸留は、通常、50〜300mmHg、70〜130℃の条件下で行われる。この減圧蒸留では、アセトン、水などの低沸点物とともに、共沸によりフェノールの一部も除去されることもある。
【0042】
工程 (3)
フェノール類の添加または除去により濃度調整されたビスフェノール類の均一溶液を得る。
【0043】
フェノール類としてはフェノールが好ましく用いられ、たとえばビスフェノールAとフェノールとの付加体を生成させることが好ましい。
ビスフェノールAとフェノールとの付加体を効率よく晶析させるには、ビスフェノールAとフェノールとの均一溶液を形成し、かつ均一溶液中のビスフェノールAの濃度を20〜50重量%好ましくは30〜45重量%とすることが望ましい。この均一溶液は、上記付加体からなってもよく、また付加体とフェノールとの混合物からなってもよい。
【0044】
工程 (4)
上記で得られた均一溶液を冷却し、ビスフェノール類とフェノール類との付加体を晶析させてスラリーとする。
【0045】
ビスフェノールAとフェノールとの均一溶液は、35〜60℃に冷却することが好ましく、冷却は外部熱交換器あるいは減圧による除熱などによって行うことができる。
【0046】
工程 (5)
上記で得られたスラリーを固液分離して、ビスフェノール類とフェノール類との付加体を固体で得る。
【0047】
スラリーの固液分離は、遠心分離、減圧濾過などにより行うことができる。固液分離によりビスフェノール類とフェノール類との付加体結晶は、反応副生物などを含む母液から分離される。分離された付加体(ウエットケーキ)はたとえばフェノールなどで洗浄してもよい。
【0048】
工程 (6)
上記で得られた固体状付加体を加熱溶融する。
上記で分離された付加体結晶たとえばビスフェノールAとフェノールとの付加体は、通常100〜160℃で加熱溶融して、溶融物(液状混合物)とする。
【0049】
工程 (7)
溶融物からフェノール類を除去する。
溶融物(液状混合物)から減圧蒸留などによってフェノール類を除去してビスフェノール類を回収する。蒸留によりフェノールを留去させるときには、10〜100mmHgの圧力下、蒸留温度150〜190℃で減圧蒸留を行う。この際、蒸留塔内に存在するビスフェノールAとフェノールとの混合液の融点よりも少なくとも10℃高い温度で行われる。
【0050】
この工程(7) では、さらに特開平2−28126号公報、特開昭63−132850号公報などに記載された利用してビスフェノールA中に残存するフェノール類をスチームストリッピングなどにより除去してもよい。
【0051】
工程 (8)
上記のようなビスフェノール類の製造工程(7) では、液状(溶融状態)の精製ビスフェノール類が得られる。本発明では、このビスフェノール類を液状のまま以下のようなポリカーボネートの製造工程に供給することもできるが、一旦ビスフェノール類を冷却、造粒することもできる。
【0052】
ビスフェノール類の造粒は、上記工程(7) で得られた液状のビスフェノール類をスプレードライヤーなどを用いて噴霧、滴下、散布等の方法により液滴とし、これを窒素、空気等によって冷却固化することにより行われる。
【0053】
上記工程を連続的に行なってビスフェノール類を製造することが好ましい。
本発明では、上記のようにしてビスフェノールAを製造するに際して、付加体、該付加体とフェノール類との混合物あるいは精製ビスフェノール類に、触媒としての(a) アルカリ(土類)金属化合物を添加するが、具体的には工程(3) 〜工程(7) のうち少なくとも一つの工程において(a) アルカリ(土類)金属化合物を添加し、かつ溶融重縮合反応に供されるビスフェノール類中の(a) アルカリ(土類)金属化合物が後述するような一定の触媒有効量となるように添加量を制御している。
【0054】
(a) アルカリ(土類)金属化合物の添加場所としては、より具体的には、上記工程(3) で得られる均一溶液、工程(4) で得られるスラリー、工程(5) で固液分離された付加体(ウエットケーキ)の洗浄液に、工程(6) で得られる溶融物(液状混合物)、工程(7) で得られる溶融ビスフェノール類などを挙げることができる。
【0055】
(a) アルカリ(土類)金属化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩、無機酸塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコラートなどが好ましく用いられる。
【0056】
具体的には、アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、二リチウム塩、フェノール類のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられ、
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどが挙げられる。これら化合物を2種以上併用することもできる。
【0057】
上記のようなアルカリ(土類)金属化合物は溶液状態で用いられることが望ましく、たとえばアルカリ(土類)金属化合物の水溶液、メタノール、エタノールなどのアルコール溶液、フェノール類溶液などで用いられる。また上記アルカリ(土類)金属化合物を含むビスフェノール類を用いることもできる。
【0058】
本発明では、上記のようにビスフェノール類の製造工程において(a) アルカリ(土類)金属化合物を添加するが、ビスフェノール類が溶融重縮合反応に供される際の該(a) アルカリ(土類)金属化合物の触媒として有効に作用する触媒有効量が、純粋なビスフェノールA1モルに対して、ビスフェノールAの2Na塩として1×10-8〜1×10-6モルの範囲の量であるときと同様な触媒活性を有する量となるように、前記(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の添加量を制御している。
【0059】
ここでビスフェノール類中に添加したアルカリ(土類)金属化合物の触媒有効量は、通常、滴定により直接定量することが考えられるが、上記のように極微量のNa量に相当する触媒有効量を滴定により測定することは極めて困難である。このようなビスフェノール類の触媒有効量は、該ビスフェノール類中に含まれるアルカリ(土類)金属化合物がエステル交換反応触媒として有効に作用する量として求めることが正確でかつ最適であると考えられる。
【0060】
具体的には、以下のようにして求めることができる。
予め、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとをエステル交換反応させたときの触媒量(触媒として有効に作用する量)と、エステル交換反応度との関係を示す検量線を作成する。この際、純粋なビスフェノール類1モルに対するビスフェノール類の2Na塩の量を触媒量とする。なお純粋なビスフェノール類とは、実質的に酸性または塩基性不純物を含まないビスフェノール類である。エステル交換反応度は、たとえば反応により生成するフェノール類、オリゴマー、未反応のビスフェノール類または炭酸ジエステルの量などとして求めることができる。フェノール類、オリゴマーまたは未反応のビスフェノール類またはジフェニルカーボネートの量は、近赤外計、屈折率計、高速液体クロマトグラフィーなどの分析装置で測定することができる。
【0061】
上記で製造されるアルカリ(土類)金属化合物を含むビスフェノール類と、炭酸ジエステルとを、検量線を作成する際のエステル交換反応(温度、圧力)と同一条件下でエステル交換反応させたときのエステル交換反応度を測定することにより、上記検量線から、ビスフェノール類中のアルカリ(土類)金属化合物がエステル交換反応触媒として有効に作用した量、すなわち純粋なビスフェノール類1モルに対してビスフェノール類の2Na塩含有量と同様な触媒活性を有する量としてのビスフェノール類の触媒有効量を求める。
【0062】
このような触媒有効量の測定は一定時間毎に行ってもよいが、前記分析装置をビスフェノール類の製造ラインにオンラインで付設し、製造されるビスフェノール類の触媒有効量を連続的に測定することはさらに好ましい。
【0063】
上記のようにしてビスフェノール類の製造工程で最終的に得られるビスフェノール類の触媒有効量を測定し、この測定値に基づいて工程(3) 〜(7)で添加するアルカリ(土類)金属化合物の添加量を制御することにより、溶融重縮合に供されるビスフェノール類の触媒有効量を一定に制御することができる。
【0064】
本発明では、上記のように溶融重縮合反応に供されるビスフェノール類中のアルカリ(土類)金属化合物の触媒有効量を、ビスフェノール類2Na塩として1×10-8〜1×10-6モル/モル−BPAの範囲の量であるときと同様な触媒活性を有するように制御しているが、この範囲内から選ばれる特定値の10%以内、好ましくは6%以内に制御することが望ましい。
【0065】
また溶融重縮合工程に供されるビスフェノール類の純度は、ビスフェノールAの場合には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定される純度が99重量%以上さらには99.5重量%以上であることが好ましい。
【0066】
上記のようにして(a) アルカリ(土類)金属化合物を一定の触媒有効量で含むビスフェノール類は、次いで連続的に溶融重縮合工程に供給される。溶融重縮合工程には、工程(7) から溶融状態のビスフェノール類が直接供給されてもよく、あるいは工程(8) で造粒されたビスフェノール類が供給されてもよい。
【0067】
溶融重縮合工程には上記のビスフェノール類を2種以上供することもできる。本発明では、色相に優れた高純度のビスフェノール類を溶融重縮合工程に供することができ、これにより色相の良好なポリカーボネートを製造することができる。
【0068】
またビスフェノール類は、溶融重縮合触媒である(a) アルカリ(土類)金属化合物を予め含有している。本発明で触媒として用いられる(a) アルカリ(土類)金属化合物は極少量であるが、上記のようにビスフェノール類中に予め分散性よく含有されており、したがってビスフェノール類と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応を、少量でかつ均等に分散された触媒の存在下に行なうことができる。しかもこの(a) アルカリ(土類)金属化合物の触媒有効量は一定しており、安定して溶融重縮合反応を行うことができる。
【0069】
さらにこのように(a) アルカリ(土類)金属化合物を予め含有するビスフェノール類を用いると、ビスフェノール類と炭酸ジエステルの混合溶液に(a) アルカリ(土類)金属化合物を直接添加する従来の方法に比較して、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応の初期段階から着色の原因となる副反応物の生成が抑制されるので、重縮合直後の初期色調に優れたポリカーボネートを得ることができる。またビスフェノール類とフェノール類との付加体から、フェノール類が除去されているので、重縮合工程を煩雑化することなく効率よく実施することができる。
【0070】
なお上記のようなビスフェノール類とフェノール類との付加体あるいは該付加体とフェノール類との混合物より、フェノール類を除去してビスフェノール類を製造する方法は、前述の特開平4−20523号公報に詳述されている。
【0071】
ポリカーボネートの製造
本発明では、上記のようなビスフェノール類と炭酸ジエステルとを、ビスフェノール類中に一定触媒有効量で含まれる(a) アルカリ(土類)金属化合物の存在下に溶融重縮合させてポリカーボネートを製造する。
【0072】
炭酸ジエステルとしては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどを用いることができ、これらを2種以上併用することもできる。これらのうちでも特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
【0073】
本発明で用いられる炭酸ジエステル中には、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステルが含有されていてもよい。具体的に、炭酸ジエステルは、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステルを好ましくは50モル%以下さらに好ましくは30モル%以下の量で含有していてもよい。
【0074】
このようなジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステルとしては、
テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルなどの芳香族ジカルボン酸類、
コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、セバシン酸ジフェニル、デカン二酸ジフェニル、ドデカン二酸ジフェニルなどの脂肪族ジカルボン酸類、
シクロプロパンジカルボン酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,3-シクロブタンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、
シクロプロパンジカルボン酸ジフェニル、1,2-シクロブタンジカルボン酸ジフェニル、1,3-シクロブタンジカルボン酸ジフェニル、1,2-シクロペンタンジカルボン酸ジフェニル、1,3-シクロペンタンジカルボン酸ジフェニル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニル、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニルなどの脂環族ジカルボン酸類を挙げることができる。炭酸ジエステルは、これらのジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステルを2種以上含有していてもよい。
【0075】
本発明では、上記のような炭酸ジエステルとビスフェノール類とを、重縮合反応させるに際して、炭酸ジエステルはビスフェノール類1モルに対して、通常1.0〜1.30モル、好ましくは1.01〜1.20モルの量で用いられることが望ましい。
【0076】
また本発明では、ポリカーボネートを製造するに際して、上記のようなビスフェノール類と炭酸ジエステルとともに、1分子中に3個以上の官能基を有する多官能化合物を用いることもできる。多官能化合物としては、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する化合物が好ましく、特にフェノール性水酸基を3個含有する化合物が好ましい。このような多官能化合物としては、たとえば1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル) エタン、2,2',2"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、α-メチル-α,α',α'-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジエチルベンゼン、α, α',α"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン-2、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル) ベンゼン、2,2-ビス-[4,4-(4,4'-ジヒドロキシフェニル)-シクロヘキシル]-プロパン、トリメリット酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0077】
これらのうちでは、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル) エタン、α, α',α"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼンなどが好ましく用いられる。
【0078】
このような多官能化合物は、ビスフェノール類1モルに対して、通常0.03モル以下、好ましくは0.001〜0.02モル、さらに好ましくは0.001〜0.01モルの量で用いることができる。
【0079】
ポリカーボネートを製造する際には、上記の炭酸ジエステルおよび他の多官能化合物は、固体状で用いられてもよく、またこれらの製造装置から直接、溶融状態で供給されてもよい。
【0080】
また本発明では、溶融重縮合触媒として、上記のような(a) アルカリ(土類)金属化合物に加えて(b) 塩基性化合物を併用することもできる。
このような(b) 塩基性化合物としては、たとえば高温で易分解性あるいは揮発性の含窒素塩基性化合物が挙げられ、具体的には、以下のような化合物を挙げることができる。
【0081】
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3NOH )などのアルキル、アリール、アルアリール基などを有するアンモニウムヒドロオキシド類、
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミンなどの三級アミン類、
R2NH(式中Rはメチル、エチルなどのアルキル、フェニル、トルイルなどのアリール基などである)で示される二級アミン類、
RNH2(式中Rは上記と同じである)で示される一級アミン類、
4-ジメチルアミノピリジン、4-ジエチルアミノピリジン、4-ピロリジノピリジンなどのピリジン類、
2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類、
あるいはアンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)などの塩基性塩。
【0082】
これらのうち、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、特に金属不純物の少ない電子用テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類が好ましく用いられる。
【0083】
上記のような(b) 含窒素塩基性化合物は、ビスフェノール類1モルに対して、1×10-6〜1×10-1モル好ましくは1×10-5〜1×10-2モルの量で用いることができる。
【0084】
またさらに触媒として、(c) ホウ酸化合物を用いることもできる。
このような(c) ホウ酸化合物としては、ホウ酸およびホウ酸エステルなどを挙げることができる。
【0085】
ホウ酸エステルとしては、下記一般式で示されるホウ酸エステルを挙げることができる。
B(OR)n(OH)3-n
式中、Rはメチル、エチルなどのアルキル、フェニルなどのアリールなどであり、nは1,2または3である。
【0086】
このようなホウ酸エステルとしては、具体的には、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリヘプチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリトリル、ホウ酸トリナフチルなどが挙げられる。
【0087】
このような(c) ホウ酸またはホウ酸エステルは、ビスフェノール類1モルに対して、1×10-8〜1×10-1モル、好ましくは1×10-7〜1×10-2モル、さらに好ましくは1×10-6〜1×10-4モルの量で用いることができる。
【0088】
本発明では、溶融重縮合触媒としては、たとえば(a) アルカリ(土類)金属化合物と(b) 含窒素塩基性化合物とを組合せて、さらには(a) アルカリ(土類)金属化合物と(b) 含窒素塩基性化合物と(c) ホウ酸またはホウ酸エステルとの三者を組合せて用いることが好ましい。
【0089】
これらの(b) 含窒素塩基性化合物、(c) ホウ酸またはホウ酸エステルは、溶融重縮合反応系に(ビスフェノール類と炭酸ジエステルの混合溶液)に添加することができる。
【0090】
触媒として、上記のような量の(a) アルカリ(土類)金属化合物と(b) 含窒素塩基性化合物とを組合せて用いると、重縮合反応を十分な速度で進行させることができるとともに、高分子量のポリカーボネートを高い重合活性で生成させることができて好ましい。
【0091】
このような触媒の存在下、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとの重縮合反応は、従来知られている重縮合反応条件と同様な条件下で行なうことができる。
具体的には、第一段目の反応を80〜250℃、好ましくは100〜230℃、さらに好ましくは120〜190℃の温度で、0〜5時間、好ましくは0〜4時間、さらに好ましくは0〜3時間、常圧下、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとを反応させる。次いで反応系を減圧にしながら反応温度を高めて、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとの反応を行ない、最終的には5mmHg以下、好ましくは1mmHg以下の減圧下で、240〜320℃でビスフェノール類と炭酸ジエステルとの重縮合反応を行なう。
【0092】
上記のような重縮合反応は、連続式で行なってもよく、バッチ式で行なってもよい。また上記の反応を行なうに際して用いられる反応装置は、槽型であっても管型であっても塔型であってもよい。
【0093】
上記のようにして得られる反応生成物であるポリカーボネートの20℃塩化メチレン中で測定した極限粘度は、通常0.10〜1.0dl/g好ましくは0.30〜0.65dl/gである。
【0094】
このようなポリカーボネートのメルトフローレートは、高粘度品では、温度300℃、荷重1.2kgで測定して1〜70g/10分、好ましくは2〜50g/10分であり、低粘度品では同様に測定して5〜20g/10分、好ましくは8〜16g/10分であることが望ましい。
【0095】
上記のように本発明に係る製造方法は、溶融重縮合に際して、毒性物質であるホスゲンや塩化メチレンなどを用いないので、環境衛生上好ましい。
上記のような本発明によれば、初期色相に優れた反応生成物であるポリカーボネート(以下ポリカーボネート[A])が得られる。
【0096】
本発明では、上記のようにして得られる反応生成物である[A]ポリカーボネートを冷却することなく重縮合反応後ただちに、下記のような[B]pKa値が3以下であるイオウ含有酸性化合物および/または該酸性化合物から形成される誘導体(以下[B]酸性化合物ということもある)を添加することが好ましい。
【0097】
さらに[B]酸性化合物とともに[C]特定量の水を添加することが好ましい。
本発明では、[B]イオウ含有酸性化合物および該酸性化合物から形成される誘導体としては、亜硫酸、硫酸、スルフィン酸系化合物、スルホン酸系化合物およびこれらの誘導体を挙げることができる。具体的に、
亜硫酸誘導体としては、ジメチル亜硫酸、ジエチル亜硫酸、ジプロピル亜硫酸、ジブチル亜硫酸、ジフェニル亜硫酸などを挙げることができる。
【0098】
硫酸誘導体としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸、ジブチル硫酸、ジフェニル硫酸などを挙げることができる。
スルフィン酸系化合物としては、ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ナフテレンスルフィン酸などを挙げることができる。
【0099】
またスルホン酸系化合物およびこの誘導体としては、下記一般式[III]で表わされる化合物またはそのアンモニウム塩を挙げることができる。
【0100】
【化4】
【0101】
式中、Rg は炭素数1〜50の炭化水素基またはハロゲン置換炭化水素基であり、Rh は水素原子または炭素数1〜50の炭化水素基またはハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜3の整数である。
【0102】
このようなスルホン酸系化合物およびこの誘導体としては、たとえば
ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸、
ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、
p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸オクチル、p-トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル、
p-トルエンスルホン酸アンモニウムなどのスルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。
【0103】
さらにトリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル-スルホン化スチレン共重合体などのスルホン酸化合物を用いてもよい。
【0104】
これらを2種以上併用することもできる。
本発明では、[B]酸性化合物として、上記一般式[III]で表されるスルホン酸系化合物およびこの誘導体が好ましく用いられる。
【0105】
特に上記一般式[III]において、Rg は炭素数1〜6の置換脂肪族炭化水素基、Rh は炭素数1〜8の置換脂肪族炭化水素基、nは0〜3の整数で表されるエステル化合物が好ましく用いられ、具体的に、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸ブチルなどが好ましく用いられる。
【0106】
これらのうちでも、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸ブチルが特に好ましく用いられる。
これらを2種以上併用することもできる。
【0107】
本発明では、上記のような[B]酸性化合物を、上記[A]ポリカーボネートの反応に用いられた(a) アルカリ(土類)金属化合物の量に対して1〜20モル倍、好ましくは1〜10モル倍、1〜8モル倍の量で含んでいることが好ましい。
【0108】
このような量で酸性合物[B]を反応生成物(ポリカーボネート)[A]に添加することにより、ポリカーボネート中に残存するアルカリ性金属化合物が中和されあるいは弱められて、最終的に滞留安定性および耐水性がさらに向上されたポリカーボネートを得ることができる。
【0109】
また本発明では、上記の[B]酸性化合物とともに[C]水を添加することが好ましく、ポリカーボネート[A]に対して5〜1000ppm 好ましくは10〜500ppm さらに好ましくは20〜300ppm の量で添加することが望ましい。
【0110】
このように[B]酸性化合物とともに[C]水を添加すると、[B]酸性化合物によるとともに[A]ポリカーボネート中の塩基性触媒の中和効率が高められ、溶融時の滞留安定性に優れ、色相、透明性、耐水性および耐候性に優れたポリカーボネートが得られる。
【0111】
なお水を1000ppm より多く添加すると、ポリカーボネートの加水分解が起こり易くなって、ポリカーボネートの物性が低下してしまうことがある。
本発明では、反応生成物である[A]ポリカーボネートに、上記[B]酸性化合物と、少量の[C]水とを添加して、混練することによりポリカーボネートを得ることが好ましい。
【0112】
[A]ポリカーボネートと[B]酸性化合物と[C]水との混練は、一軸押出機、二軸押出機、スタティックミキサ−などの通常の混練機により行われ、これらの混練機はベント付きでもベントなしでも有効に使用される。
【0113】
具体的には、重縮合反応により得られる[A]ポリカーボネートが反応器内または押出機内で溶融状態にある間に、[B]酸性化合物と[C]水とを添加することが好ましい。この[B]酸性化合物と[C]水とは、別々に添加してもよいし、あるいは同時に添加してもよく、添加順序は限定されないが、同時に添加するのが好ましい。
【0114】
より具体的に[A]ポリカーボネートと[B]酸性化合物と[C]水とからポリカーボネートを製造するには、たとえば、反応器内にある重縮合反応で得られた[A]ポリカーボネートに、[B]酸性化合物と[C]水を添加してポリカーボネートを形成した後、押出機を通してペレタイズしてもよく、また重縮合反応で得られた[A]ポリカーボネートが反応器から押出機を通ってペレタイズされる間に、[B]酸性化合物と[C]水を添加して、これらを混練してポリカーボネートとすることもできる。
【0115】
一般的にポリカーボネートを使用する時にはポリカーボネートペレットを再溶融して耐熱安定剤などの種々添加剤を配合している。本発明で得られるポリカーボネートペレットは、各種添加剤の配合時あるいは成形時に溶融しても、熱安定性が向上され、溶融時の滞留安定性に優れているので、溶融による熱分解が特に抑制されて分子量が低下しにくく、着色しにくい。
【0116】
さらに本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリカーボネート[A]には上記[B]酸性化合物、[C]水とともに[D]添加剤を添加することが好ましい。
【0117】
このような[D]添加剤は、溶融状態にある[A]ポリカーボネートに[B]酸性化合物および[C]水と同時に添加することもできるし、別々に添加することもできる。本発明では、以下に示すような[D]添加剤のうちでも、反応性の添加剤は、[B]酸性化合物および[C]水を添加した後に添加することが好ましい。
【0118】
本発明で用いられる[D]添加剤としては、具体的に、使用目的に応じて一般的にポリカーボネートに添加される添加剤を広く挙げることができ、耐熱安定剤、エポキシ化合物、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤などを挙げることができる。
【0119】
これらのうちでも、以下に示すような耐熱安定剤、エポキシ化合物、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤などが好ましく用いられる。これらを2種以上併用することもできる。
【0120】
本発明で用いられる耐熱安定剤としては、具体的にはたとえば、リン化合物、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤などを挙げることができる。
【0121】
リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸エステルおよび亜リン酸エステルを用いることができる。
このようなリン酸エステルとしては、たとえば、
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、
トリシクロヘキシルホスフェートなどのトリシクロアルキルホスフェート、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェートなどのトリアリールホスフェートなどを挙げることができる。
【0122】
また亜リン酸エステルとしては、下記一般式で表される化合物を挙げることができる。
P(OR)3
(式中、Rは脂環族炭化水素基、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す。これらは同一であっても異なっていてもよい。)
このような式で表される化合物としては、たとえば、
トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2-クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスファイトなどのトリアルキルホスファイト、
トリシクロヘキシルホスファイトなどのトリシクロアルキルホスファイト、
トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t- ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどのトリアリールホスファイト、
フェニルジデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、フェニルイソオクチルホスファイト、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイトなどのアリールアルキルホスファイトなどを挙げることができる。
【0123】
さらに亜リン酸エステルとしては、たとえば、ジステアリルペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t- ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイトなどを挙げることができる。これらを2種以上併用することもできる。
【0124】
これらのうちでは、上記一般式で表される亜リン酸エステルが好ましく、さらに芳香族亜リン酸エステルが好ましく、特にトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく用いられる。
【0125】
またフェノール系安定剤としては、たとえばn-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ジステアリル(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチル)ベンジルマロネート、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-t-ブチルフェノールなどが挙げられる。
【0126】
チオエーテル系安定剤としては、たとえばジラウリル・チオジプロピオネート、ジステアリル・チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジトリデシル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)などが挙げられる。
【0127】
またヒンダードアミン系安定剤としては、たとえばビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-ベンジル-7,7,9,9-テトラメチル-3-オクチル-1,2,3-トリアザスピロ[4,5 ]ウンデカン-2,4-ジオン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
【0128】
これらの化合物を2種以上併用することもできる。
これらの耐熱安定剤は、ポリカーボネート100重量部に対して、0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜0.5重量部、さらに好ましくは0.01〜0.3重量部の量で用いることができる。
【0129】
また耐熱安定剤は、固体状で添加してもよく、液体状で添加してもよい。
このような耐熱安定剤を、[B]または[C]と同様に[A]ポリカーボネートが溶融状態にある間に添加すると、製造時の熱履歴回数が少ないポリカーボネートを製造することができて好ましく、得られたポリカーボネートペレットは耐熱安定剤を含有しているので、再溶融時の熱分解を抑制することができる。
【0130】
またエポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシ-6'-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4-(3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシル)ブチル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6'-メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス-エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス-エポキシエチレングリコール、ビス-エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3,5-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3-メチル-5-t-ブチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、オクタデシル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル-2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2-イソプロピル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2-エチルヘキシル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6-ジメチル-2,3-エポキシシクロヘキシル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3-t-ブチル-4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5-エポキシ- シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ-n-ブチル-3-t-ブチル-4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレートなどを挙げることができる。
【0131】
これらを2種以上併用することもできる。
これらのうち、脂環族エポキシ化合物、特に3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましく用いられる。
【0132】
このようなエポキシ化合物は、上記[A]ポリカーボネートに対して、1〜2000ppm 、好ましくは10〜1000ppm の量で添加することができる。
特に[D]添加剤としてエポキシ化合物が用いられる場合には、エポキシ化合物を[B]酸性化合物および[C]水の添加後に添加して、過剰に添加された[B]酸性化合物を中和することが好ましい。このように過剰な[B]酸性化合物をエポキシ化合物で中和しておくと、特に耐水性および透明性に優れたポリカーボネートが得られる。
【0133】
また紫外線吸収剤としては、一般的な紫外線吸収剤でよく、特に限定されないが、たとえば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などを挙げることができる。
【0134】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、具体的には、フェニルサリシレート、p-t-ブチルフェニルサリシレートが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2'-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5- スルホベンゾフェノントリヒドレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸などが挙げられる。
【0135】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチル- フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3",4",5",6"-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5'-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]などが挙げられる。
【0136】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2-エチルヘキシル-2- シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。これらを2種以上併用することもできる。
【0137】
紫外線吸収剤は、[A]ポリカーボネート100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜1.0重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部の量で用いることができる。
【0138】
また離型剤としては、一般的に離型剤として知られているものが、特に限定されることなく広く用いられる。
たとえば天然、合成パラフィン類、ポリエチレンワックス類、フルオロカーボン類などの炭化水素系離型剤、
ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸などの高級脂肪酸、オキシ脂肪酸類などの脂肪酸系離型剤、
ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミドなどの脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド類などの脂肪酸アミド系離型剤、
ステアリルアルコール、セチルアルコールなどの脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール類などのアルコール系離型剤、
ブチルステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどの脂肪族酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル類などの脂肪酸エステル系離型剤、
シリコーンオイル類などのシリコーン系離型剤を用いることができ、これらを2種以上併用することもできる。
【0139】
離型剤は、[A]ポリカーボネート100重量部に対して、通常、0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜1重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部の量で用いることができる。
【0140】
着色剤としては、顔料であってもよく、染料であってもよく、また無機系着色剤、有機系着色剤のいずれを用いてもよく、これらを併用してもよい。
無機系着色剤として具体的には、二酸化チタン、ベンガラなどの酸化物、アルミナホワイトなどの水酸化物、硫化亜鉛などの硫化物、セレン化物、紺青などのフェロシアン化物、ジンククロ メート、モリブデンレッドなどのクロム酸塩、硫酸バリウムなどの硫酸塩、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、群青などの硅酸塩、マンガンバイオレットなどのリン酸塩、カーボンブラックなどの炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉などの金属粉着色剤などが挙げられる。
【0141】
有機系着色剤としては、具体的には、ナフトールグリーンBなどのニトロソ系、ナフトールイエローSなどのニトロ系、リソールレッドやボルドー10B、ナフトールレッド、クロモフタールイエローなどのアゾ系、フタロシアニンブルーやファストスカイブルーなどのフタロシアニン系、インダントロンブルーやキナクリドンバイオレット、ジオクサジンバイオレットなどの縮合多環系着色剤などが挙げられる。
【0142】
着色剤は、[A]ポリカーボネート100重量部に対して、通常1×10-6〜5重量部、好ましくは1×10-5〜3重量部、さらに好ましくは1×10-5〜1重量部の量で用いることができる。
【0143】
また本発明では、上記のような[B]酸性化合物、[C]水および[D]添加剤は、上述したように溶融状態にあるポリカーボネート[A]に添加されるが、本発明の目的を損なわない範囲で、これら[B]、[C]または[D]をポリカーボネート粉末で希釈してポリカーボネート[A]に添加してもよく、予め[B]、[C]または[D]を高濃度に含むマスタ−ペレットをポリカーボネート[A]に添加してもよい。このときポリカーボネート粉末あるいはペレットに吸水量分の水が同伴されることがあるので、上記の[C]水としては、この吸水量分を差し引いた量で添加すれば良い。
【0144】
【発明の効果】
上記のように本発明に係るポリカーボネートの製造方法によれば、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応を、反応初期段階から極少量の一定範囲に制御された触媒量下に反応を行なうことができる。このような本発明によれば色相に優れ、しかも成形時の熱安定性、色相安定性などに優れ、透明性、耐水性にも優れたポリカーボネートを効率よく製造することができる。
【0145】
さらに溶融重縮合反応直後の溶融状態にある反応生成物に、酸性化合物などの添加剤を添加すると、触媒が安定化され、耐熱性、耐水性などがさらに向上されたポリカーボネートが得られる。
【0146】
このような本発明の方法により製造されたポリカーボネートは、一般の成形材料はもとより、シ−トなどの建築材料、自動車用ヘッドランプレンズ、メガネなどの光学用レンズ類、光学用記録材料などに好適に用いられる。
【0147】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0148】
本明細書において、ビスフェノールAの2Na塩濃度に相当する触媒有効量、ビスフェノールAの色相、純度、ポリカーボネートのMFR、色相は、以下のようにして測定した。
【0149】
[ビスフェノールAの2Na塩濃度に相当する触媒有効量]
100mlスケールの反応器に、実施例で製造されたビスフェノールA(以下BPAともいう)と、ジフェニルカーボネートとを1:1のモル比で合計で200ml/hrの量で連続的に導入し、160℃で滞留時間30分でエステル交換反応させ、反応器から出てくる液を近赤外分析計で測定し、該液中のフェノール濃度(反応により生成したフェノールの量すなわちエステル交換反応度)を測定し、予め同一エステル交換反応条件下で作成された下記の検量線から触媒有効量を求めた。
【0150】
触媒有効量(ビスフェノールAの2Na塩モル/モル−BPA)=3.33×10-7×フェノール濃度(重量%)
[ビスフェノールAの色相]
ビスフェノールAを空気中で250℃にて10分間加熱した時の色相を、APHA標準比色液を用いて目視により測定した。
【0151】
[ビスフェノールAの純度]
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。
[ポリカーボネートの色相(黄色度:YI)]
3mm厚の射出成形板をシリンダー温度290℃、射出圧力1000kg/cm、1サイクル45秒、金型温度100℃で成形し、X、Y、Z値を日本電色工業(株) 製の Colorand Color Defference Meter ND-1001 DP を用いて透過法で測定し、黄色度〔YI〕を測定した。
【0152】
YI=100(1.277X−1.060Z)/Y
[ポリカーボネートのMFR]
JIS K−7210の方法に準拠し、温度250℃、荷重1.2kgで測定した。
【0153】
以下に実施例における基本的なビスフェノールAの製造工程およびポリカーボネートの製造工程を示す。
ビスフェノールAの製造工程
(1) フェノールとアセトンとを、フェノール/アセトン=5のモル比で、50℃、常圧で、酸性触媒として架橋度4%のスルホン酸型陽イオン交換樹脂を用いて反応させ、反応混合物を得た。
(2) 上記で得られた反応混合物を、200mmHg、120℃で減圧蒸留して未反応アセトン、反応副生水などを除去して粗製液(ビスフェノールA)を得た。
(3) 上記で得られた粗製液からフェノールを留去してビスフェノールAの濃度を30重量%に調整した。
(4) 上記で濃度調整された粗製液(均一溶液)を、外部熱交換器により除熱して42℃まで冷却してビスフェノールAとフェノールとの付加体を晶析し、スラリーとした。
(5) 該スラリーを遠心分離および減圧濾過することにより、付加体(結晶部)と母液とに分離した。
(6) 固液分離されたビスフェノールAとフェノールとの付加体を130℃で加熱溶融した。
(7) 溶融物(液状混合物)を、100mmHg、190℃で減圧蒸留してフェノールを除去し、溶融状態のビスフェノールAを回収した。
(8) 上記工程(7) で得られた溶融状態のビスフェノールAを、スプレードライヤーにより液滴にし、窒素で冷却固化してビスフェノールAを造粒した。
【0154】
ポリカーボネートの製造工程
工程(7) から送液されてきた溶融状態のビスフェノールAまたは工程(8) で造粒されたビスフェノールA(供給速度36.0kg/hr)と、蒸留後に直接配管にて送液されてきた溶融状態のジフェニルカーボネート(供給速度34.7kg/hr)とを、以下の温度に保った原料のミキシング用の攪拌槽に連続して供給して、目標MFRが11.0g/10分のポリカーボネートを製造した。
【0155】
ポリカーボネートの重合装置は、原料のミキシング用の攪拌槽を一基、前重合槽を二基、横形重合槽を二基、備え付けられたものを使用し、ビスフェノールA換算で36.0kg/hrの供給速度で前重合槽I、前重合槽II、横形重合槽I、横形重合槽IIに順次供給し、下記反応条件下で重合を行った。
【0156】
2時間ごとに測定されるMFRを見ながら、横形重合槽Iと横形重合槽IIの圧力を調節して、できるだけ目標のMFRを外れないよう運転した。
【0157】
【実施例1】
ビスフェノールAの製造
上記工程(3) において、濃度調製された粗製液(ドラム)に0.5%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液を添加して、ビスフェノールAの2Na塩として2×10-7モル/モル−BPAの量に相当する触媒有効量に調整されたビスフェノールAを連続的に製造した。
【0158】
この際、上記工程(8) で得られる造粒ビスフェノールAの触媒有効量を連続的に測定して、ビスフェノールAが、ビスフェノールAの2Na塩として2×10-7モル/モル−BPAの量に相当する触媒活性を示すように、上記工程(c) で添加する0.5%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液を添加量を制御した。
【0159】
ポリカーボネートの製造
上記工程(7) より直接配管にて連続して送液されてきた溶融状態のビスフェノールAを用いて上記のポリカーボネートの重合方法にて、14日間連続して、ポリカーボネートを製造した。
【0160】
ビスフェノールAとポリカーボネートは、2時間ごとにサンプルを採取し、ビスフェノールA、純度、色相、ポリカーボネートの色相、MFRを評価した。結果を表1に示す。
【0161】
【実施例2】
実施例1において、0.5%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液の添加場所を、工程(4) で得られた付加体結晶を含んだスラリー(スラリーが流れる配管中)に変えた以外は、実施例1と同様にして、連続的にビスフェノールAを製造し、実施例1と同様にしてポリカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0162】
【実施例3】
実施例1において、0.5%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液の添加場所を、工程(5) での遠心分離と減圧濾過により得られた付加体結晶を取り出す配管に変えた以外は、実施例1と同様にして、連続的にビスフェノールAを製造し、実施例1と同様にしてポリカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0163】
【実施例4】
実施例1において、0.5%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液の添加場所を、工程(6) での付加体結晶の溶解槽中に変えた以外は、実施例1と同様にして、連続的にビスフェノールAを製造し、実施例1と同様にしてポリカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0164】
【実施例5】
実施例1において、0.5%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液の添加場所を、工程(7) で得られる溶融ビスフェノールAの取出配管中に変えた以外は、実施例1と同様にして、連続的にビスフェノールAを製造し、実施例1と同様にしてポリカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0165】
【実施例6】
実施例5において、0.5%の水酸化ナトリウムのフェノール溶液に代えてビスフェノールA2Na塩を用い、ビスフェノールA2Na塩濃度が8×10-7モル/モル−BPAとなるように制御した以外は、実施例5と同様にして、ビスフェノールAとポリカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0166】
【比較例1】
ビスフェノールAの触媒有効量の測定と、アルカリ(土類)金属化合物の添加制御は行わずビスフェノールAを製造した。
【0167】
工程(7) より直接配管にて連続して攪拌槽に送液されてきた溶融状態のビスフェノールAに、ビスフェノールA1モルに対してビスフェノールAの2Na塩を2×10-7モルの量の一定割合で添加して、上記のポリカーボネートの重合方法にて、14日間連続して、ポリカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0168】
【比較例2】
比較例1において、ビスフェノールA1モルに対してビスフェノールAの2Na塩を4×10-7モルの量の割合で添加した以外は、比較例1と同様にしてポリカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0169】
【比較例3】
実施例5において、ビスフェノールA2Na塩濃度が2×10-6モル/モル−BPAとなるように制御した以外は、実施例5と同様にして、ビスフェノールAとポリカーボネートを製造した。結果を表1に示す。
【0170】
比較例3のように触媒有効量が多いと、ビスフェノールAの色相、ポリカーボネート色相(YI)に劣る。
【0171】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るポリカーボネートの製造方法のプロセスフローを模式的に示す。
Claims (9)
- ビスフェノール類と炭酸ジエステルとを、予めビスフェノール類中に添加した(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を触媒として溶融重縮合させ、ポリカーボネートを製造するに際して、
前記ビスフェノール類中に含まれる(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の触媒として有効に作用する触媒有効量が、純粋なビスフェノールA1モルに対して、ビスフェノールAの2Na塩として1×10-8〜1×10-6モルの範囲の量であるときと同様な触媒活性を有する量となるように、前記(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物のビスフェノール類への添加量を制御して、得られたビスフェノール類を連続的に溶融重縮合反応に供することを特徴とするポリカーボネートの製造方法。 - 前記触媒有効量を、前記ビスフェノールAの2Na塩として1×10-8〜1×10-6モルの範囲内から選ばれる特定値の10%以内に制御することを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記ビスフェノール類の触媒有効量が、
該ビスフェノール類中に含まれる(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物をエステル交換反応触媒として、該ビスフェノール類と炭酸ジエステルとをエステル交換反応させたときのエステル交換反応度から求められたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネートの製造方法。 - 前記ビスフェノール類に添加する(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の量を、前記エステル交換反応度から求められるビスフェノール類の触媒有効量に基づいて制御することを特徴とする請求項3に記載のポリカーボネートの製造方法。
- フェノール類とケトン類との反応によって得られるビスフェノール類と、フェノール類とから、これらの付加体あるいは該付加体とフェノール類との混合物を形成し、該付加体あるいは混合物からフェノール類を除去して、得られた精製ビスフェノール類を前記溶融重縮合反応に供するに際して、
上記付加体、該付加体とフェノール類との混合物あるいは精製ビスフェノール類に、(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物に添加して、(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を前記触媒有効量で含むビスフェノール類を調製し、このビスフェノール類を前記溶融重縮合反応に供することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。 - 溶融重縮合反応に供されるビスフェノール類の高速液体クロマトグラフィーで測定される純度が99重量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
- ビスフェノール類がビスフェノールAであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
- 請求項1〜7で得られる[A]ポリカーボネートが溶融状態にある間に、
[B]pKa値が3以下であるイオウ含有酸性化合物および/または該酸性化合物から形成される誘導体を、(a) アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の含有量の1〜20モル倍の量で添加することを特徴とするポリカーボネートの製造方法。 - 前記[A]ポリカーボネートが溶融状態にある間に、[B]pKa値が3以下であるイオウ含有酸性化合物および/または該酸性化合物から形成される誘導体に加えて、[C]水をポリカーボネートに対して5〜1000ppm の量で添加することを特徴とする請求項8に記載のポリカーボネートの製造方法。
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