JP6289800B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)粘度平均分子量が23,000〜30,000である。
(2)末端水酸基濃度が100ppm以上、500ppm以下である。
(3)芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が20ppm以下である。
この発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとのエステル交換反応によって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂についての発明である。
前記のジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(DPC)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらのジアリールカーボネートは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記の芳香族ジヒドロキシ化合物は、分子内に二つの水酸基を有する芳香族化合物であり、この発明においては、芳香族ジヒドロキシ化合物の中でも、分子内に一つ以上の芳香環を有し、二つの水酸基がそれぞれ芳香環に結合された芳香族ジヒドロキシ化合物を用いるのが好ましい。
前記のエステル交換反応においては、エステル交換触媒が用いられる。このエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、第1族元素(水素を除く)の化合物、第2族元素の化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的には第1族元素(水素を除く)の化合物及び第2族元素の化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。これらのエステル交換触媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は、500ppm以下であり、450ppm以下が好ましい。500ppmより多いと、未反応原料、低分子量生成物等の揮発性不純物の残存が多くなる傾向があり、溶融成形時に臭気が発生しやすくなる虞がある。また500ppmより多いと、成形品を高温、高湿下に曝された場合に分子量が低下する場合があり、その結果、成形品が白化したり割れやすくなったりする虞がある。一方、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度の下限は、100ppmであり、200ppmが好ましい。100ppmより少ないと、重縮合反応(エステル交換反応)が遅くなり、所定の粘度平均分子量に到達するためには高温、高真空、高滞留時間とする必要が生じ、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂が黄変する虞があり好ましくない。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記揮発性不純物の残存量を減らす目的から、粘性が高くない方が好ましい。具体的には、この芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が30,000以下であり、28,000以下が好ましい。30,000より大きいと、前記揮発性不純物の揮散が困難となりやすく、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂への残存量が増大する傾向がある。また架橋反応が進みやすくゲル状物質が発生する虞があり、該ゲル状物質が成形品における異物として外観不良となる可能性がある。一方、粘度平均分子量の下限は、23,000であり、24,000が好ましい。23,000より低いと、成形品が脆くなり、割れやすくなる場合がある。
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、原料である前記の芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネート化合物を混合して原料混合物を調整し、この原料混合物を、前記エステル交換触媒の存在下、重縮合反応装置で重縮合反応をさせる(重縮合工程)ことによって行われる。この重縮合工程の反応方式は、バッチ式、連続式、これらの組合せ等を用いることができるが、本願発明においては、原料調製工程及び重縮合工程を連続式で行う。重縮合工程後、反応を停止させ重合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程、必要に応じて所定の粒径のペレットに形成する工程等を経て、芳香族ポリカーボネート樹脂が製造される。
前記の原料混合物は、溶融状態で図1に示すような直列に連結した複数の反応器による多段方式の重縮合反応装置に送られ、重縮合工程に供される。この重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で連続的に行われる。具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
そして、この重縮合工程で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、脱揮後、冷却される。
エステル交換触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
触媒失活剤としては、エステル交換触媒の触媒作用を低下させる化合物であれば特に制限はないが、例えば、酸性化合物が挙げられる。
具体的には、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸、等のブレンステッド酸及びそのエステル類、酸ハロゲン化物、塩等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記の方法で製造される芳香族ポリカーボネート樹脂には、前記揮発性不純物が含まれる。この揮発性不純物としては、DPC、BPA等の未反応原料、低分子量生成物等があげられる。この低分子量生成物としては、重縮合反応(エステル交換反応)で副生するフェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物のような反応副生成物等があげられる。
まず、各評価の測定方法について、説明する。
[末端水酸基の測定]
芳香族ポリカーボネート樹脂0.1gを塩化メチレン10mlに溶解し、これに酢酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)の5%塩化メチレン溶液5mlと四塩化チタン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)の2.5%塩化メチレン溶液10mlを加えて発色させ、分光光度計(株式会社島津製作所製「UV160型」)を使用し、546nmの波長での吸光度を測定した。別に、芳香族ポリカーボネート樹脂製造時に使用した二価フェノールの塩化メチレン溶液を使用して吸光係数を求め、サンプル中の末端水酸基濃度を定量した。
芳香族ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液(濃度(C)0.6g/dl)を調製し、ウベローデ粘度計を用いて、この溶液の温度20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10−4Mv0.83
芳香族ポリカーボネート樹脂1.2gを塩化メチレン7mlに溶解し、攪拌しながらこれにアセトン23mlを加えて再沈殿させ、その上澄み液を液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製「LC―10AT」、カラム:「MCI GEL ODS」(5μm)、4.6mmID×150mmL、検出器:UV219nm、溶離液:アセトニトリル/水=4/6容量比)で測定し、芳香族ポリカーボネート樹脂中の残存フェノール量、残存ビスフェノールA(BPA)量、残存ジフェニルカーボネート(DPC)量を定量した。
芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットを80℃、6時間通風乾燥機で乾燥した後、インジェクションブロー成型機(日精エー・エス・ビー機械株式会社製)にて250mLほ乳瓶を成形した。プリフォーム成形時のバレル温度300℃、プリフォーム加熱温度220℃にて実施し、成形直後の成形品開口部の臭気を確認した。
芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットを120℃、4時間通風乾燥機で乾燥した後、ポリカーボネート樹脂ペレットを射出成形機(株式会社日本製鋼所製J75EIIを用い、金型温度90℃の条件下にて、厚み3mm、縦60mm、横60mmの成形体を射出成形した。成形条件はバレル温度280℃、成形サイクル37秒、スクリュー回転数90rpmとした。この成形体を気相部につり下げた状態で、オートクレーブを使用し、120℃、飽和蒸気圧下で100時間処理した。処理後の分子量低下率を下記式により求めた。
分子量低下率=
(処理前粘度平均分子量―処理後粘度平均分子量)/処理前粘度平均分子量 × 100
芳香族ポリカーボネート樹脂1gを、塩化メチレン100mlに溶解した後、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液18ml及びメタノール80mlを加え、さらに純水25mlを添加した後、室温で2時間攪拌して加水分解した。その後、1規定塩酸を加えて中和し、塩化メチレン層を分離して加水分解物を得た。
該加水分解物0.05gをアセトニトリル10mlに溶解し、逆相の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用し、一般式(1)〜一般式(5)をビスフェノールAのモル吸光係数を基準として定量した。
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールA(三菱化学(株)製)とジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)とを一定のモル比(DPC/BPAモル比=1.075)に混合して調製した140℃の溶融混合物を、原料導入管を介して、13.3×103Pa、220℃に制御した第1竪型攪拌重合槽内に連続供給し、平均滞留時間が60分となるように槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ液面レベルを一定に保った。また、上記の原料の供給を開始すると同時に、触媒として炭酸セシウム水溶液を、ビスフェノールA1モルに対し、0.5×10−6モル(0.5μモル/BPA1モル)の流量で連続供給した。生成したフェノール等の留出物は、第1竪型攪拌重合槽の留出ラインに設けた凝縮器で連続的に液化して回収した。第1竪型攪拌重合槽から排出された反応液は、引き続き、第2、第3の竪型重合槽ならびに第4の横型重合槽に逐次連続導入した。各槽の運転は、下記の通り、反応の進行と共に、より高温、高真空になるようにした。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の評価結果について表1に示した。
表1に示すようにDPC/BPAモル比、触媒量、第4重合槽出口樹脂温度、第4重合槽内真空度、触媒失活剤量を変えた以外は実施例1と同様に実施した。評価結果を表1に示した。尚、比較例2の芳香族ポリカーボネート樹脂はインジェクションブロー成形時にタレ落ちが発生し、250mLほ乳瓶を取得できなかった。
11d 横型反応器
12 熱交換器
13 フェノールタンク
A 原料混合物
B 芳香族ポリカーボネート樹脂
Claims (3)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとをエステル交換触媒の存在下、エステル交換反応によって芳香族ポリカーボネート樹脂を連続して製造する方法であって、
前記芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの混合比(モル比)は、ジアリールカーボネート/芳香族ジヒドロキシ化合物で1.03以上1.075以下であり、
直列に連結した複数の反応器を用い、最終反応器の温度が275℃以上であり、かつ、圧力が100Pa以下であり、
前記のエステル交換反応終了後、ベント付き2軸押出機で触媒失活剤を、前記エステル交換触媒1モルに対し、5〜15モル当量添加し、
下記の(1)〜(4)の条件を満足することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂の連続製造方法。
(1)粘度平均分子量が23,000〜30,000である。
(2)末端水酸基濃度が100ppm以上、500ppm以下である。
(3)芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が20ppm以下である。
(4)前記ジアリールカーボネートの含有量が120ppm以下である。 - 前記エステル交換触媒が第1族元素(水素を除く)の化合物及び第2族元素の化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の連続製造方法。
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