JP6146989B2 - ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物由来の原料からなる、耐熱性、透明性、耐候性、機械的強度、及び溶融安定性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂は一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、光学記録媒体、レンズ等の光学分野等でいわゆるエンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。
従来のポリカーボネート樹脂は、石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後に廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな植物由来モノマーを原料としたポリカーボネート樹脂の開発が求められている。
かかる状況下、バイオマス資源から得られるジヒドロキシ化合物であるイソソルビド(ISB)をモノマー成分とし、炭酸ジエステルとのエステル交換により、副生するモノヒドロキシ化合物を減圧下で留去しながら、ポリカーボネート樹脂を得る方法が提案されている。ISBから得られるポリカーボネート樹脂は、耐熱性を活かした成形材料としての利用の他にも、優れた光学特性を活かした光学用途への検討もされている(例えば特許文献1〜4参照)。
国際公開第2004/111106号パンフレット 特開2006−232897号公報 特開2006−28441号公報 特開2008−24919号公報
本発明者らの検討によると、ISBや脂肪族ジヒドロキシ化合物のようなアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物からなるポリカーボネート樹脂は、高温下でカーボネート結合の脱炭酸反応を生じるため、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂に比べると熱安定性が低く、樹脂を溶融させて行う各種成形加工やコンパウンドの際に、分子量や溶融粘度の低下が大きいという問題があることが見出された。分子量の低下に伴い、機械物性が低下するため、初期の分子量を高くする必要があるが、一方で成形加工時の流動性を確保するためや、剪断発熱などに樹脂温度が高くなるため、樹脂が着色する問題も生じる。本発明の目的は、このような課題を解決するために、溶融時の粘度低下を抑制されたポリカーボネート樹脂を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、下記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、カルボジイミド、イソシアネート、エポキシ、シラン、酸無水物、オキサゾリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を1分子内に3つ以上
有する化合物(B)を0.05〜5重量部含有し、かつ、芳香族モノヒドロキシ化合物を1000重量ppm以下含有するポリカーボネート樹脂組成物が、優れた品質を示し、かつ高い溶融安定性を有することを見出し、本発明に至った。
Figure 0006146989
即ち、本発明は以下を要旨とする。
(1)下記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、カルボジイミド、イソシアネート、エポキシ、シラン、酸無水物、オキサゾリンからなる群より選ばれる少なくとも1種
の官能基を1分子内に3つ以上有する化合物(B)を0.05〜5重量部含有し、かつ、芳香族モノヒドロキシ化合物を1000重量ppm以下含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0006146989
(2)該ポリカーボネート樹脂組成物を260℃、60分間加熱した後の芳香族モノヒドロキシ化合物の増加量が700重量ppm以下であることを特徴とする(1)に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(3)前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が80℃以上、180℃以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
以下の赤いマーカーのところを修正してください。
(4)測定温度250℃、剪断速度91.2sec−1 における前記ポリカーボネート
樹脂の溶融粘度が300Pa・s以上、3000Pa・s以下であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(5)前記ポリカーボネート樹脂が、前記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を30重量%以上含有することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(6)前記ポリカーボネート樹脂が、脂肪族ジヒドロキシ化合物、または脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を5重量%以上、80重量%以下含有することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(7)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含有することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(8)前記リン系化合物をリン原子の量として1重量ppm以上8重量ppm以下含有することを特徴とする(7)に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(9)前記ポリカーボネート樹脂中のナトリウム、カリウム及びセシウムの合計の含有量
が、金属量として1重量ppm以下であることを特徴とする(1)乃至(8)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(10)(1)乃至(9)のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法であって、前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記化合物(B)を、ベント式二軸押出機を用いて混練することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
(11)前記押出機出口の樹脂温度が200℃以上、280℃以下であることを特徴とする(10)に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
(12)前記押出機において、芳香族モノヒドロキシ化合物の脱揮率が20%以上であることを特徴とする(10)または(11)に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱性、透明性、耐候性、機械的強度に優れることから、各種射出成形分野、押出成形分野に適用可能な材料として提供することができる。さらに溶融下での粘度低下が小さいことから、より高温での成形加工条件においても本来有する物性を低下させずに用いることが可能である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、下記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、カルボジイミド、イソシアネート、エポキシ、シラン、酸無水物、オキサゾリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を1分子内に3つ以上有する化合物(B)
を0.1〜0.05重量部含有し、かつ、芳香族モノヒドロキシ化合物を1000重量ppm以下含有するポリカーボネート樹脂組成物である。
Figure 0006146989
<ポリカーボネート樹脂(A)>
以下、本発明のポリカーボネート樹脂の構造、および製造するための方法について詳述する。
<原料>
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(以下、「本発明のジヒドロキシ化合物」と称する場合がある。)に由来する構造単位を少なくとも含む。本発明のジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニドおよびイソイデットが挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物の中でも、植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが最も好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のジヒドロキシ化合物は、得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、
単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明のポリカーボネート樹脂は、本発明のジヒドロキシ化合物に由来する構造を30重量%以上含有することが耐熱性や光学物性の観点からは好ましい。さらに好ましくは35重量%以上、特に好ましくは40重量%以上である。また、含有量が多すぎると機械物性が低下することがあるため、上限値としては80重量%以下であることが好ましい、さらに好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。
本発明のジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤または熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよい。特に酸性下で本発明のジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩および脂肪酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ジエタノールアミン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよびアミノキノリン等のアミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。安定剤の中でも安定化の効果からはジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、イミダゾールまたはヒンダードアミン系化合物が好ましい。
これら塩基性安定剤の前記ジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、本発明で用いる前記のジヒドロキシ化合物は酸性状態では不安定であるので、上記の安定剤を含む本発明のジヒドロキシ化合物の水溶液のpHが7以上となるように安定剤を添加することが好ましい。
少なすぎると本発明のジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると本発明のジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、本発明のジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
これら塩基性安定剤としてアルカリ金属化合物を本発明のジヒドロキシ化合物に含めたままポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度または品質の制御が困難になるだけでなく、樹脂色相の悪化を招いてしまう。このため、本発明のジヒドロキシ化合物のうち塩基性安定剤を有するものについては、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂または蒸留等で除去することが好ましい。
一方、アミン系化合物などの塩基性有機化合物を安定剤として用いると、重合触媒とし
ての作用や着色への影響が小さいため、蒸留などによって安定剤を除去せずに重合反応に用いることができる。
また、本発明のジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管または製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上記の本発明のジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。前記その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物、芳香族ビスフェノール類、脂肪族複素環構造を有するジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族基に結合したエーテル基を主鎖中に有するジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
前記の直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールおよび1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
前記の直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールおよびヘキシレングリコール等が挙げられる。
前記の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、リモネンなどのテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
前記の芳香族ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェ
ニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
前記の脂肪族複素環構造を有するジヒドロキシ化合物としては、下記式(12)および下記式(13)で表されるスピログリコール等が挙げられる。
Figure 0006146989
前記のオキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール等が挙げられる。
前記の芳香族基に結合したエーテル基を主鎖中に有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニルおよびビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
これらの前記その他のジヒドロキシ化合物も、得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独で前記特定ジヒドロキシ化合物と併用してもよく、2種以上を組み合わせた上で前記特定ジヒドロキシ化合物と併用してもよい。中でも、ポリカーボネート樹脂の色調や耐候性、光学特性の観点からは、分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物、即ち脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物または脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましく、これらを併用してもよい。
前記したうち、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオール等の炭素数3〜6で両末端にヒドロキシ基を有する直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましい。
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはトリシクロデカンジメタノールが好ましく、より好ましいのは1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサン構造を有するジヒドロキシ化合物であり、最も好ましいのは1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
これら前記その他のジヒドロキシ化合物を、前記特定ジヒドロキシ化合物と併用することにより、ポリカーボネート樹脂の柔軟性や機械物性の改善、および成形性の改善などの効果を得ることも可能である。ただし、前記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下または耐熱性の低下を招くことがあるため、本発明のポリカーボネート樹脂において、前記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下である。一方、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。
(炭酸ジエステル)
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述した特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(6)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 0006146989
前記式(6)において、AおよびAは、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、AとAとは同一であっても異なっていてもよい。AおよびAの好ましいものは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、より好ましいのは無置換の芳香族炭化水素基である。
前記式(6)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(DPC)およびジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート並びにジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。中でも好ましくはジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻
害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
(エステル交換反応触媒)
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述したジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造する。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。
前記エステル交換反応の際には、エステル交換反応触媒存在下で重縮合を行うが、本発明のポリカーボネート樹脂の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に触媒、重合触媒と言うことがある)は、反応速度または重縮合して得られるポリカーボネート樹脂の品質に非常に大きな影響を与え得る。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネート樹脂の透明性、色相、耐熱性、耐候性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されない。例えば、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物およびアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
前記の1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩および2セシウム塩等が挙げられる。中でも重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、リチウム化合物が好ましい。
前記の2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物またはバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
なお、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
前記の塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニ
ルホスフィン、トリブチルホスフィンおよび四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
前記の塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
前記のアミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリンおよびグアニジン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmolが好ましく、より好ましくは0.5μmol〜100μmolである。特に1μmol〜50μmolが好ましい。
中でも長周期型周期表における2族からなる群及びリチウムより選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/またはカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上が好ましく、より好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上とする。また上限としては、20μmol以下が好ましく、より好ましくは10μmol以下であり、さらに好ましくは5μmol以下で、特に好ましくは3μmol以下である。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ようとするにはその分だけ重合温度を高くせざるを得なくなる。そのために、得られたポリカーボネート樹脂の色相が悪化する可能性が高くなり、また、未反応の原料が重合途中で揮発してジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、好ましくない副反応を併発し、得られるポリカーボネート樹脂の色相の悪化または成形加工時の樹脂の着色を招く可能性がある。
ただし、1族金属の中でもナトリウム、カリウムまたはセシウムは、ポリカーボネート樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料または反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、ポリカーボネート樹脂中のこれらの金属の化合物の合計量は、金属量として、1重量ppm以下であることが好ましい。さらには0.5重量ppm以下であることが好ましい。
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂は、特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られる。
原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その
上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、耐候性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂の原料である本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと混合する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001vol%〜10vol%、中でも0.0001vol%〜5vol%、特には0.0001vol%〜1vol%の雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明の樹脂を得るためには、反応に用いる特定ジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルを0.90〜1.20のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.95〜1.10のモル比率である。このモル比率が小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂の末端水酸基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、成型時に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望する高分子量体が得られない可能性がある。
また、このモル比率が大きくなると、エステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネート樹脂の製造が困難となる場合がある。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂の色相や耐候性を悪化させる可能性がある。さらには、本発明のジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られるポリカーボネート樹脂中の残存炭酸ジエステル量が増加し、成形時の汚れや臭気の問題を招く場合があり、好ましくない。
本発明において、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよいが、より少ない熱履歴でポリカーボネート樹脂が得られ、生産性にも優れている連続式が好ましい。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重合速度の制御や得られるポリカーボネート樹脂の品質の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本願発明の目的を達成することができない可能性がある。
さらには、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることが有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは、80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、逆に低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的なポリカーボネート
樹脂の色相を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。本発明のポリカーボネート樹脂は、触媒を用い、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明の方法で使用される反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは4つである。本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
本発明において、重合触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、重合槽に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、重合槽に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、130〜250℃、好ましくは150〜240℃、更に好ましくは170〜230℃で、1〜110kPa、好ましくは5〜70kPa、さらに好ましくは7〜30kPa(絶対圧力)の圧力下、0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を200Pa以下にして、内温の最高温度210〜270℃、好ましくは220〜250℃で、通常0.1〜10時間、好ましくは、1〜6時間、特に好ましくは0.5〜3時間行う。
所定の分子量のポリカーボネート樹脂を得るために、重合温度を高く、重合時間を長くし過ぎると色調が悪化する傾向にある。特にポリカーボネート樹脂の着色や熱劣化を抑制し、色相の良好なポリカーボネート樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度が250℃未満、特に220〜245℃であることが好ましい。 また、重合反応後半の
重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
押出機を使用すると、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃
剤等を添加、混練することもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂には、重合触媒を失活させ、さらに高温下でのポリカーボネート樹脂の着色を抑制するため、リン系化合物を添加することが好ましい。リン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。特には亜リン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステルが好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル、(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p−メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert−ブチル、(4−クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、またはジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
脂肪族環状亜リン酸エステルは、リン原子を含む環状構造中に芳香族基を含まない亜リン酸エステル化合物と定義する。例えば、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマーなどジヒドロキシ化合物とペンタエリスリトールジホスファイトからなるポリマー型の化合物などが挙げられる。
前記リン系化合物の添加量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえってポリカーボネート樹脂が着色してしまうため、添加量はリン原子の量として1重量ppm以上、8重量ppm以下とすることが好ましい。さらには1.2重量ppm以上、7重量ppm以下が好ましく、特には1.5重量ppm以上、6重量ppm以下が好ましい。
前記リン系化合物は通常、三塩化リンを出発原料に用いられるため、未反応物や脱離した塩酸由来の含塩素成分が残存する場合がある。前記リン系化合物に含有される塩素原子の量は5重量%以下であることが好ましい。塩素原子の残存量が多いと、前記リン系化合物を添加する製造設備の金属部を腐食させたり、ポリカーボネート樹脂の熱安定性を低下させ、着色や熱劣化による分子量低下を促進させる懸念がある。
前記リン系化合物は上述のとおり、押出機を用いてポリカーボネート樹脂に添加、混練されることが好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂を重合後に溶融状態のまま押出機に供給し、ただちに前記リン系化合物を樹脂に添加することが最も効果的である。さらに、触媒を失活させた状態で、押出機で真空ベントにより脱揮処理を行うと、効率的に低分子成分を脱揮除去することができる。
前記リン系化合物に加えて、ヒンダードフェノール化合物も併用することで、ポリカーボネート樹脂のさらなる色調向上が期待できる。ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−
ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−
ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
上記のヒンダードフェノール化合物の配合量は、ポリカーボネート樹脂を100質量部とした場合、0.001質量部〜1質量部が好ましく、0.005質量部〜0.5質量部がより好ましく、0.01質量部〜0.3質量部がさらに好ましい。
また、前記ポリカーボネート樹脂には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペ
ンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂を100質量部とした場合、0.0001質量部〜0.1質量部が好ましく、0.0005質量部〜0.08質量部がより好ましく、0.001質量部〜0.05質量部がさらに好ましい。
押出機中の溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは220〜270℃である。溶融混練温度が200℃より低いと、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネート樹脂の熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招く。
このようにして得られた本発明のポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.33dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。 尚、還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の溶融粘度は300Pa・s以上、3000Pa・s以下が好ましい。さらには400Pa・s以上、2700Pa・s以下が好ましく、特に500Pa・s以上、2500Pa・s以下が好ましい。溶融粘度が上記範囲より低いと、ポリカーボネート樹脂が脆くなり、十分な機械物性を有する材料にならない。一方、溶融粘度が上記範囲よりも高いと、成形加工時に流動性が不足し、成形品の外観が損なわれたり、寸法精度が悪化したりする。また、剪断発熱により樹脂温度が上昇して、樹脂が着色したり発泡したりする懸念がある。なお、本明細書において溶融粘度とは、キャピラリーレオメーター[東洋精機(株)製]を用いて、測定温度250℃、剪断速度91.2s−1における溶融粘度を示す。
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は80℃以上、180℃以下であることが好ましい。さらには90℃以上、160℃以下が好ましく、特に95℃以上、140℃以下が好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、高温下や高湿下において成形品が変形するなどして、使用に耐えうる耐熱性を満足できない。一方、ガラス転移温度が過度に高いと、成形加工の際に温度を高くせざるを得ず、ポリカーボネート樹脂の分子量低下や着色などの熱劣化を招いたり、ガスの発生により成形品の外観を損ねるおそれがある。本発明のガラス転移温度はDSCを用いて測定される。測定条件の詳細は実施例の項で記載する。
重縮合反応において、炭酸ジエステルから脱離成分として芳香族モノヒドロキシ化合物が生成する。炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、生成する芳
香族モノヒドロキシ化合物はフェノールである。炭酸ジエステルと同様に芳香族モノヒドロキシ化合物もポリカーボネート樹脂中に多く残存すると、成形加工時の問題を生じることがある。本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含有される芳香族モノヒドロキシ化合物の残存量は1000重量ppm以下であることを特徴としている。さらに700重量ppm以下であると好ましく、特には300重量ppm以下であると好ましい。触媒失活剤である前述のリン系化合物を適量用いることや、十分に脱揮処理を行うこと、さらにはこれらを組み合わせて行うことにより、ポリカーボネート樹脂中の芳香族モノヒドロキシ化合物の残存量を低減し、かつ加熱下での発生を抑制することができる。
また、芳香族モノヒドロキシ化合物は重合中だけでなく、ポリカーボネート樹脂を加熱して成形や加工する時にも、重合反応や熱分解が進行して発生するため、重合後の加熱条件下においても発生を抑制する必要がある。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、260℃、60分間加熱することで発生する芳香族モノヒドロキシ化合物は700重量ppm以下であることが好ましい。さらには500重量ppm以下であることが好ましく、特には300重合ppm以下であることが好ましい。
前記の芳香族モノヒドロキシ化合物の樹脂中の含有量や加熱発生量が多いと、後述する化合物(B)の官能基と芳香族モノヒドロキシ化合物が反応してしまい、所望とする特性が得られないことがある。
<化合物(B)>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、カルボジイミド、イソシアネート、エポキシ、シラン、酸無水物、オキサゾリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を1
分子内に3つ以上有する化合物(B)を含有する。
化合物(B)はポリカーボネート樹脂の末端水酸基と結合することが可能な前記官能基を有している。本発明の目的であるポリカーボネート樹脂の分子量低下を抑制するためには、溶融下で化合物(B)によって、ポリカーボネート樹脂の末端水酸基同士を結合させて、分子量を増加させる反応を起こしてやればよい。そのため、化合物(B)は1分子内に前記官能基を2以上有する必要がある。しかし、前記の官能基はポリカーボネート樹脂中の水分や芳香族モノヒドロキシ化合物とも反応するため、本願発明のようにポリマー鎖同士を効率良く結合させるためには、官能基は1分子内に3つ以上有していることを特徴としている。
前記官能基を1分子内に3つ以上含有させるためには、前記官能基を有するモノマーを重縮合またはビニル重合により共重合したポリマー、あるいはオリゴマーを化合物(B)として用いることができる。化合物(B)は分子量が大きすぎると、ポリカーボネート樹脂との相溶性が悪くなるため、混練した樹脂組成物が白濁することがある。相溶性の観点からは、化合物(B)の分子量は低い方が好ましい。また、組み合わせる共重合モノマーや共重合組成を調整し、ポリカーボネート樹脂に相溶しやすくさせたり、屈折率を合わせることで、混練した樹脂組成物の透明性を向上させることが可能である。
前記化合物(B)は官能基として、カルボジイミド、イソシアネート、エポキシ、シラン、酸無水物、オキサゾリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどのビニル重合系の樹脂に、前記官能基を有するビニルモノマーを共重合することで合成することができる。例えば、以下のようなモノマーが使用される。
イソシアネート:メタクリル酸2−イソシアナトエチル等のイソシアネート基含有(メタ)クリル酸エステルやイソシアネート基含有スチレン
エポキシ:メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有(メタ)クリル酸エステルやエポキシキ基含有スチレン
シラン:ビニルトリアルコキシシラン、ビニルアルキルトリアルコキシシラン、トリアルコキシシリルノルボルネン、p−スチリルトリアルコキシシラン、3−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン等のアルコキシシラン基含有ビニルモノマー
酸無水物:無水マレイン酸等のカルボン酸無水物
オキサゾリン:2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有ビニルモノマー
カルボジイミド化合物については、例えば、触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用い、各種ポリイソシアネートを約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で、脱炭酸縮合反応に付することにより合成したものを用いることができる。上記カルボジイミド化合物に含まれるポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には、従来のポリカルボジイミドの製造方法(例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28,2069−2075(1963)、Chemical Review
1981,Vol.8,No.4,p.619−621)により、製造されたものを用いることができる。
ポリカルボジイミド化合物の製造における合成原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート,2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等を例示することができる。
本発明のカルボジイミド化合物(B)の好ましい例としては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=3〜20)、テトラメチレンキシリレンカルボジイミド(重合度=3〜20)、N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド(重合度3〜20)、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(重合度=3〜20)等が挙げられる。これらは、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、本発明の化合物(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.05〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。化合物(B)の含有量が0.1重量部未満では、ポリカーボネート樹脂の溶融下での分子量低下を抑制する効果が不十分となる。一方、化合物(B)の含有量が多すぎると、透明性が低下したり、ゲル状の異物が発生することがある。
化合物(B)は前述の熱安定剤などと同様に、押出機を用いてポリカーボネート樹脂に添加、混練されることが好ましい。使用する押出機にはベント式二軸押出機を用いて、混練とともにポリカーボネート樹脂中の芳香族モノヒドロキシ化合物や水分を真空脱揮すると、化合物(B)による溶融下での分子量低下抑制の効果が効率良く発現しやすくなる。化合物(B)とポリカーボネート樹脂(A)を混練する時は、ポリカーボネート樹脂(A)中の芳香族モノヒドロキシ化合物の脱揮率が20%以上となることが好ましい。また、
混練時に樹脂温度が上がりすぎると、ポリカーボネート樹脂(A)や化合物(B)の熱分解により、所望とする特性が得られなくなることがあるため、押出機出口の樹脂温度は280℃以下とすることが好ましく、さらには270℃以下、特に260℃以下とすることが好ましい。また、樹脂の溶融粘度と押出機の動力の制約から、下限値としては200℃以上とすることが好ましく、さらには210℃以上、特に220℃以上とすることが好ましい。押出機出口の樹脂温度は、樹脂の処理量やスクリューの回転数、シリンダーの温度設定、スクリューエレメントの選択などにより調節することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物にすることができる。 本発明のポリカーボネート樹脂の優れた透
明性を活かすためには、前述のとおり、化合物(B)の組成や分子量を調整することで、混練後の樹脂の透明性をできるだけ高く保つことが好ましい。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、厚さ3mmのプレート成形体の全光線透過率が70%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、75%以上、特に好ましくは80%以上である。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
本発明によれば、色相、透明性、耐熱性、耐候性、光学特性、及び機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。 以下において、ポリカーボネート樹
脂の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂試料を塩化メチレンに溶解させ、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(2)ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度の測定
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて測定した。樹脂試料約10mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で室温から250℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度とした。
(3)ポリカーボネート樹脂中の金属濃度の測定
パーキンエルマー社製マイクロウェーブ分解容器にポリカーボネート樹脂試料約0.5gを精秤し、97%硫酸2mLを加え、密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱した。室温まで冷却後、68%硝酸1.5mLを加えて、密閉状態にして150℃で10分間マイクロウェーブ加熱した後、再度室温まで冷却を行い、68%硝酸2.5mLを加え、再び密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱し、内容物を完全に分解させた。室温まで冷却後、上記で得られた液を純水で希釈し、サーモクエスト社製ICP−MSで定量した。
(4)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のペレットを90℃で5時間以上、真空乾燥した。乾燥した試料を用いて、キャピラリーレオメーター[東洋精機(株)製]で測定を行った。測定温度は250℃、ダイス径1mmφ×10mmLのオリフィスを使用した。樹脂をシリンダーに投入し、5分予熱した後、剪断速度91.2sec−1で溶融粘度を測定した。測定開始10分後の溶融粘度を初期溶融粘度とし、測定開始30分後の溶融粘度を滞留溶融粘度とする。また、初期溶融粘度に対する滞留溶融粘度の比率を溶融粘度保持率とした。
(5)プレート成形体の全光線透過率の測定
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、窒素雰囲気下、90℃で10時間乾燥した。次に乾燥したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、最終シリンダーの温度を240℃、成形サイクル23秒間の条件で、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形した。得られた射出成形片についてJIS K7105に準拠し、ヘイズメーター(色彩・濁度同時測定器COH400、日本電色工業(株)製)を使用し、D65光源にて全光線透過率を測定した。全光線透過率は大きいほど透明性に優れる。
(6)芳香族モノヒドロキシ化合物含有量の測定
ポリカーボネート樹脂試料約1gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解し溶液とした後、総量が25mLになるようにアセトンを添加して再沈殿処理を行った。次いで、該処理液を0.2μmディスクフィルターでろ過して、液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
(7)芳香族モノヒドロキシ化合物の加熱発生量の測定
ポリカーボネート樹脂を90℃で5時間以上、真空乾燥した。乾燥したポリカーボネート樹脂約5gをガラス試験管に入れ、容器内を窒素置換した後、窒素シールした。260℃に加熱したオイルバスに、試験管内のポリカーボネート樹脂ペレットがオイル液面よりも下になるように試験管を浸け、60分後にオイルバスから取り出した。室温付近まで冷却した後、樹脂を取り出し、前述の(6)の方法でポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の量を測定し、加熱処理前のモノヒドロキシ化合物の量を引いて、加熱によって増加した量を求めた。
以下の実施例の中で用いた化合物の略号、および製造元は次の通りである。
・ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製]
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール[SK Chemical社製]
・DPC:ジフェニルカーボネート[三菱化学(株)製]
・ホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)[城北化学工業(株)製]
・カルボジライトLA−1(官能基:カルボジイミド化合物)[日清紡ケミカル(株)製]
・ARUFON UG−4040(官能基:エポキシ)[東亞合成(株)製]
・EHPE 3150(官能基:エポキシ)[(株)ダイセル製]
・JONCRYL ADR4368(官能基:エポキシ)[BASF製]
・エポクロスRPS−1005(官能基:オキサゾリン)[(株)日本触媒製]
・ダイヤカルナ30(官能基:酸無水物)[三菱化学(株)製]
・リンクロンXVF600N(官能基:シラン)[三菱化学(株)製]
・リンクロンXHE740N(官能基:シラン)[三菱化学(株)製]
・エポライト1600(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル)[共栄社化学(株)製]
・トリレンジイソシアネート[東京化成工業(株)製]
・ピロメリット酸無水物[東京化成工業(株)製]
[ポリカーボネート樹脂の製造例]
竪型攪拌反応器3器と横型攪拌反応器1器、並びに二軸押出機からなる連続重合設備を用いて、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。ISBとCHDMとDPCをそれぞれタンクで溶融させ、ISBを25.6kg/hr、CHDMを25.3kg/hr、DPCを75.5kg/hr(モル比でISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.005)の流量で第1竪型攪拌重合槽に連続的に供給した。同時に、触媒として酢酸カルシウム1水和物の水溶液を全ジヒドロキシ化合物1molに対して1.5μmolとなるように第1竪型攪拌反応器に供給した。第1竪型攪拌反応器での平均滞留時間が90分となるように、反応器底部の移送配管に設けられたバルブの開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。反応器底部より排出された反応液は、引き続き第2竪型攪拌反応器、第3竪型攪拌反応器、第4横型攪拌反応器[(株)日立プラントテクノロジー社製2軸メガネ翼]に逐次連続供給された。第1竪型攪拌反応器と第2竪型攪拌反応器は還流冷却器を具備しており、還流比を調節することで、未反応のジヒドロキシ化合物とDPCの留出を抑制した。
各反応器の反応温度、内圧、滞留時間はそれぞれ、第1竪型反応器:190℃、25kPa、90分、第2竪型反応器:195℃、10kPa、45分、第3竪型反応器:210℃、3kPa、45分、第4横型反応器:225℃、0.5kPa、90分とした。得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.61から0.64となるように、第4横型反応器の内圧を微調整しながら運転を行った。
第4横型攪拌反応器より60kg/hrの量でポリカーボネート樹脂を抜き出し、続いて樹脂を溶融状態のまま二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30α]に供給した。押出機は3つの真空ベント口を有しており、樹脂中の残存低分子成分を脱揮除去した。押出機の第1ベント口の手前からホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対してホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)を25重量ppm(リン原子の量として2.5重量ppm)添加した。第2ベントの手前で水を樹脂に対して2000重量ppm加えて、注水脱揮を行った。押出機はシリンダー温度を220℃、スクリュー回転数を230rpmに設定した。
押出機を通過したポリカーボネート樹脂は、引き続き溶融状態のままフィルターを通して異物を濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転式カッターでペレット化し、ISB/CHDM=50/50mol%のポリカーボネート樹脂(A)を得た。得られたポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度は1040Pa・sであり、ガラス転移温度は100℃であった。樹脂中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量は430重量ppm、ナトリウム、カリウム及びセシウムの合計の含有量は0.1重量ppmであった。
[実施例1]
ポリカーボネート樹脂(A)ペレット100重量部に対して、化合物(B)としてカルボジライトLA−1を2重量部添加して、均一になるようにブレンドし、ベント口を1つ
有するベント式二軸押出機を用いて混練した。押出機出口の樹脂温度は254℃であった。押出機での芳香族モノヒドロキシ化合物の脱揮率は48%であり、加熱発生量は119重量ppmであった。混練で得られたペレットを用いて、前述の方法にて全光線透過率と溶融粘度保持率の測定を行った。全光線透過率は58.7%であり、若干低い値となった。溶融粘度保持率は83%であり、良好な値を示した。結果を表1にまとめる。
[実施例2]
実施例1において、カルボジライトLA−1を1重量部用いた。全光線透過率は74.0%であり、実施例1よりも向上した。溶融粘度保持率は79%であり、実施例1よりも若干低下したものの良好な値を示した。
[実施例3]
実施例1において、カルボジライトLA−1を0.5重量部用いた。全光線透過率は82.6%であり、実施例1や実施例2よりも向上した。溶融粘度保持率は76%であり、実施例1や実施例2よりも若干低下したものの良好な値を示した。
[実施例4]
実施例2において、押出機のスクリュー回転数を上げて混練を行った。押出機出口の樹脂温度は283℃となった。全光線透過率は78.2%であり、実施例2よりも若干向上したが、溶融粘度保持率は75%であり、実施例2よりも若干低下した。
[実施例5]
実施例1において、カルボジライトLA−1に替えて、ARUFON UG−4040を1重量部用いた。溶融粘度保持率は81%であり、良好な値を示した。
[実施例6]
実施例1において、カルボジライトLA−1に替えて、EHPE 3150を1重量部用いた。溶融粘度保持率は83%であり、良好な値を示した。また、全光線透過率は87.0%であり、透明性も優れていた。
[実施例7]
実施例1において、カルボジライトLA−1に替えて、JONCRYL ADR4368を1重量部用いた。溶融粘度保持率は79%であり、良好な値を示した。また、全光線透過率は89.6%であり、透明性も優れていた。
[実施例8]
実施例1において、カルボジライトLA−1に替えて、エポクロスRPS−1005を1重量部用いた。溶融粘度保持率は80%であり、良好な値を示した。
[実施例9]
実施例1において、カルボジライトLA−1に替えて、ダイヤカルナ30を1重量部用いた。溶融粘度保持率は83%であり、良好な値を示した。
[実施例10]
実施例1において、カルボジライトLA−1に替えて、リンクロンXHE740Nを1重量部用いた。溶融粘度保持率は78%であり、良好な値を示した。
[実施例11]
実施例1において、カルボジライトLA−1に替えて、リンクロンXVF600Nを1重量部用いた。溶融粘度保持率は81%であり、良好な値を示した。また、全光線透過率は85.8%であり、透明性も優れていた。
[比較例1]
実施例1において、化合物(B)を用いなかった。溶融粘度保持率は70%であり、溶融下での分子量低下が大きかった。
[比較例2]
ポリカーボネート樹脂の製造例において、押出機での真空脱揮を行わなかった。また、押出機にてホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)を添加しなかった。得られたポリカーボネート樹脂中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量は1160重量ppmであった。このポリカーボネート樹脂ペレット100重量部に対して、化合物(B)としてカルボジライトLA−1を1重量部添加して、均一になるようにブレンドし、ベント式二軸押出機を用いて混練した。この際も押出機のベントは使用しなかった。押出機出口の樹脂温度は251℃であった。混練後のペレットのモノヒドロキシ化合物の加熱発生量は1120重量ppmであり、加熱発生量も905重量ppmと非常に多かった。溶融粘度保持率は73%であり、カルボジライトLA−1を同量添加した実施例2と比較して低い値となった。
[比較例3]
実施例1において、化合物(B)として2官能性であるエポライト1600を1重量部用いた。溶融粘度保持率は72%であり、各実施例よりも低くなった。
[比較例4]
実施例1において、化合物(B)として2官能性であるトリレンジイソシアネートを1重量部用いた。溶融粘度保持率は73%であり、各実施例よりも低くなった。
[比較例5]
実施例1において、化合物(B)として2官能性であるピロメリット酸無水物を1重量部用いた。溶融粘度保持率は72%であり、各実施例よりも低くなった。
Figure 0006146989
本発明によれば、色相、透明性、耐熱性、耐候性、光学特性、及び機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。

Claims (11)

  1. 下記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、カルボジイミド、イソシアネート、エポキシ、シラン、酸無水物、オキサゾリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の官
    能基を1分子内に3つ以上有する化合物(B)を0.05〜5重量部含有し、かつ、芳香族モノヒドロキシ化合物を1000重量ppm以下含有し、
    前記ポリカーボネート樹脂が、脂肪族ジヒドロキシ化合物、または脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を5重量%以上、80重量%以下含有し、
    ポリカーボネート樹脂組成物は、厚さ3mmのプレート成形体の全光線透過率が70%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0006146989
  2. 該ポリカーボネート樹脂組成物を260℃、60分間加熱した後の芳香族モノヒドロキシ化合物の増加量が700重量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が80℃以上、180℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 測定温度250℃、剪断速度91.2sec−1 における前記ポリカーボネート樹脂
    の溶融粘度が300Pa・s以上、3000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記ポリカーボネート樹脂が、前記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を30重量%以上含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 前記リン系化合物をリン原子の量として1重量ppm以上8重量ppm以下含有することを特徴とする請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 前記ポリカーボネート樹脂中のナトリウム、カリウム及びセシウムの合計の含有量が、金属量として1重量ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法であって、前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記化合物(B)を、ベント式二軸押出機を用いて混練することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
  10. 前記押出機出口の樹脂温度が200℃以上、280℃以下であることを特徴とする請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
  11. 前記押出機において、芳香族モノヒドロキシ化合物の脱揮率が20%以上であることを特徴とする請求項または請求項10に記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
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