JP6495088B2 - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。
芳香族ポリカーボネートは、透明性と優れた耐衝撃性とを併せ持ち、携帯機器の筐体や家電機器の筐体等、高い耐衝撃性が要求される分野において極めて広く用いられている。また、自動車の内装部品やグレージング等、上記特性に加えて耐熱性を必要とする分野においても広く用いられている。
近年、筐体等の使用者の目に見える部分の材料においては、意匠性が強く求められ、その内の一つとして、漆黒(ピアノブラック)の外観が求められる分野がある。このような分野において、従来は、主に樹脂材料表面に塗装する方法が採用されているが、揮発性有機化合物(VOC)の排出による環境汚染やコストが高い等の問題により、塗装工程(クリアコートを含む)を行わず、原料に着色材を混ぜて意匠性を出す原着材料を使用したいという要望が高まってきている。
しかし、原着材料として使用するためには、ポリカーボネート(PC)特有の透明性と耐衝撃性を低下させることなく耐傷付き性や耐候性が求められる。従来において、PCの耐傷付き性を改善する技術としては、例えば、下記特許文献1に、脂肪酸の炭素数が20以上である脂肪酸エステルを0.01〜1重量部添加することで摺動性に優れたポリカーボネートという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。その他、粘度が1000〜2000cPのシリコーンオイルを配合する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、耐傷付き性に優れる透明材料として、イソソルバイドが主原料のバイオポリカーボネート系樹脂も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2008−308606号公報 特開2000−143965号公報 特開2013−49847号公報
しかしながら、特許文献1の技術においては、脂肪酸エステルの含有量を増やすと耐熱性及び耐衝撃性が低下しまうという問題を有しており、特許文献2の技術においては、配合したシリコーンオイルのブリードによる成形品の外観不良が発生し、長期的な耐傷付き性が十分でないという問題がある。さらに特許文献3の技術においては、芳香族ポリカーボネートと比較して衝撃値が低下する傾向にあり、十分な衝撃値を得ることは困難であるという問題を有している。
そのため、これまで耐傷付き性、耐衝撃性、耐熱性、及び高品位な外観をすべて満足する材料は得られていない、というのが現状である。
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、塗装することなく成形のみで、高い耐傷付き性及び耐衝撃性、耐熱性と高品位な外観とを併せ持つ成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物、及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、所定の非晶性ポリエステル、及び/又は、芳香族ポリカーボネートからなる非晶性熱可塑性樹脂(A)と、所定の(B)添加剤とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記(B)成分がα−オレフィンと無水マレイン酸との構成単位からなり、この熱可塑性樹脂組成物が、ASTM1003に準拠して、厚み2.5mmで測定した際の全光線透過率が50%以上を有することで、塗装することなく成形のみで高い耐傷付き性及び耐衝撃性、耐熱性と高品位な外観とを併せ持つ成形体を製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
非晶性ポリエステル、及び/又は、芳香族ポリカーボネートからなる非晶性熱可塑性樹脂(A)と、添加剤(B)とを、含み、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.1質量部を超え、
前記(B)成分が、下記式(1)及び(2)で示される構成単位を含有し、
ASTM1003に準拠して、厚み2.5mmで測定した際の全光線透過率が50%以上である、熱可塑性樹脂組成物。
[式(1)中、Rは炭素数が10〜60の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
[2]
前記(A)成分として、少なくとも非晶性ポリエステルを含有する、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]
前記(A)成分中の非晶性ポリエステルのジオール成分として、少なくとも脂環族ジオールを含む、[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]
前記(A)成分中の非晶性ポリエステルが、少なくとも芳香族ジカルボン酸と脂環族ジオールとを含むポリエステル樹脂である、[2]又は[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]
前記(A)成分中の、脂環族ジオールとして、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールを含む、[3]又は[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]
前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分を0.2〜1.5質量部含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7]
ゴム成分(C)をさらに含有し、
前記(C)成分が、グラフト共重合体(a)からなる分散相と、連続相(b)とを含み、前記グラフト共重合体(a)が、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、当該幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖とを有し、前記グラフト鎖が、シアン化ビニル系単量体単位と、そのシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体単位と、を有し、前記グラフト共重合体(a)の前記グラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布が、2つ以上のピークを有し、前記2つ以上のピークのうち1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が0質量%以上10質量%未満の範囲内にピークトップを有する第1のピークであり、前記第1のピークとは異なるピークの1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が10質量%以上55質量%未満の範囲内にピークトップを有する第2のピークであり、前記第1のピーク及び第2のピークにおける、それぞれのピーク全体の積分値から求められる加重平均値を代表値としたとき、前記第1のピークが示す前記含有率の代表値と、前記第2のピークが示す前記含有率の代表値との差が10質量%以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8]
さらに、前記ゴム成分(C)以外のゴム成分の含有量が1質量%未満である、[7]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9]
着色剤、耐候剤及び熱安定剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[10]
[1]〜[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
[11]
前記成形体が無塗装である、[10]に記載の成形体。
[12]
前記成形体が自動車用材料である、[10]又は[11]に記載の成形体。
本発明によれば、塗装することなく成形のみで、高い耐傷付き性及び耐衝撃性、耐熱性と高品位な外観とを併せ持つ成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物、及び当該熱可塑性樹脂組成物の成形体が得られる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、
非晶性ポリエステル、及び/又は、芳香族ポリカーボネートからなる非晶性熱可塑性樹脂(A)と、添加剤(B)とを、含み、
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.1質量部を超え、
前記(B)成分が、下記式(1)及び(2)で示される構成単位を含有し、
ASTM1003に準拠して、厚み2.5mmで測定した際の全光線透過率が50%以上である、熱可塑性樹脂組成物。
[式(1)中、Rは炭素数が10〜60の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
((A)非晶性熱可塑性樹脂)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、非晶性ポリエステル、及び/又は、芳香族ポリカーボネートからなる非晶性熱可塑性樹脂(A)を含有している。本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、(A)成分を含むことにより、高品位な外観と高い耐衝撃性と、さらに耐熱性にも優れた成形体を得ることができる。
(A)成分に用いられる非晶性ポリエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂環式ジオール化合物及び/又は脂環式ジオール化合物残基、及び/又は、脂環式ジカルボン酸化合物及び/又は脂環式ジカルボン酸化合物残基、及び/又は、芳香族ジカルボン酸化合物及び/又は芳香族ジカルボン酸化合物残基を含む非晶性ポリエステル等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで使用する「残基」とは、対応するモノマーから重縮合及び/又はエステル化反応によってポリマー中に組み入れられた任意の有機構造を意味する。従って、例えば、ジカルボン酸残基とは、ジカルボン酸モノマー若しくはその関連酸ハライド、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物に由来する。
(A)成分としては、特に、芳香族ポリカーボネート、脂環式ジオール化合物及び/又は脂環式ジオール化合物残基を含む非晶性ポリエステル、又は、これらの混合物であることが好ましい。
前記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ホモポリカーボネート、芳香族コポリカーボネートのいずれも使用することができる。
前記芳香族ポリカーボネートは、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法や、2官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法、二酸化炭素とアルコールとから炭酸ジエチルを得て、炭酸ジエチルと芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて芳香族炭酸エステルを得る方法等、種々の方法により製造することができる。
前記2官能フェノール系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる、特に、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕を用いることが好ましい。前記2官能フェノール系化合物としては、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
また、上記で製造された芳香族ポリカーボネートを単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)成分として、少なくとも非晶性ポリエステルを含有することが好ましい。
また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)成分中の非晶性ポリエステルのジオール成分として、少なくとも脂環族ジオールを含むことがより好ましい。
前記非晶性ポリエステルに含まれる脂環式ジオール成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数2〜12のアルキレングリコール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、2,2,4,4−テトラメチルシクロブタンジオール(TMCD)等の脂環族ジオールが挙げられる。中でも、前記(A)成分中の、脂環族ジオールとして、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールを含むことが好ましい。本実施形態における耐熱性を得るためには、特に、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)と2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)とを併用することが好ましい。ジオール成分の構成割合としては、ジオール成分の総モル%を100モル%としたとき、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)残基を10〜70モル%、より好ましくは15〜65モル%、さらに好ましくは20〜50モル%、特に好ましくは30〜45モル%、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基を30〜90モル%、より好ましくは35〜85モル%、さらに好ましくは50〜80モル%、より好ましくは55〜70モル%、含む。
前記(TMCD)残基、前記(CHDM)残基を前記数値範囲で含むことにより、耐熱性と耐衝撃性との効果が得られる。
また、前記(TMCD)残基、前記(CHDM)残基の含有量は、NMRにより測定することができる。
前記ジオール類は、シス、トランス、又はこれらの混合物を用いることができる。
本実施形態においては、効果を損なわない範囲で、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の、一種又はそれ以上の改質用ジオールを15モル%以下含むことができ、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下含むことができる。
2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の一種又はそれ以上の改質用ジオールとしては、2〜16個の炭素原子を含むジオールが挙げられる。以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、p−キシレングリコール又はそれらの混合物が挙げられる。この中で好ましい改質用ジオールは、耐衝撃性と高品位な外観とを得る観点から、エチレングリコールである。
前記ポリエステル成分は、ジオール成分と対になるジカルボン酸成分を含有する。当該ジカルボン酸成分としては、例えば、脂環式ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸残基、芳香族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸残基、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸残基が挙げられる。特に、芳香族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸残基と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸残基から選ばれる1種以上であることが好ましい。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸残基が好ましい。中でも、前記(A)成分中の非晶性ポリエステルは、少なくとも芳香族ジカルボン酸と脂環族ジオールとを含むポリエステル樹脂であることが好ましい。
ジカルボン酸成分の構成割合としては、ジカルボン酸の総モル%を100モル%としたとき、例えば、炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸及び/又は炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基を好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%含有し、炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基を好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜1モル%含有する。
炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸及び/又は炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基、及び炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基の含有量を、前記数値範囲にすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、高い耐熱性と耐衝撃性とが得られる。
ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸及び/又は炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基、炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基の含有量は、NMRにより測定することができる。
前記芳香族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸残基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸とそのエステル、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−、1,5−、2,6−、2,7−ナフタレンジカルボン酸、及びトランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸並びにそれらのエステルとの混合物が挙げられるが、色調と流動性の観点から、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸エステルが好ましい。
前記脂肪族カルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸残基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びドデカン二酸が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸成分としては、直鎖、パラ配向、対称性を有する構造のいずれであってもよく、炭素数20以下のものが好ましいものとして挙げられるが、これらに限定するものではない。
本実施形態に用いる非晶性熱可塑性樹脂(A)は、重量平均分子量が10,000〜200,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜60,000、さらにより好ましくは20,000〜60,000の範囲である。(A)成分の重量平均分子量を10,000以上とすることで、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において耐衝撃性と押出安定性とを得ることができ、(A)成分の重量平均分子量を200,000以下とすることで、成形加工性が良好となる。
(A)成分として、二種以上の芳香族ポリカーボネートを併用する場合においては、混合物の重量平均分子量が上記範囲であることが好ましく、低重量平均分子量の芳香族ポリカーボネートと高重量平均分子量の芳香族ポリカーボネートとを混合することもできる。
(A)成分の重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線から換算し、算出することができる。
(A)成分のガラス転移温度[Tg]は、100〜170℃であることが好ましく、より好ましくは110〜170℃、さらに好ましくは120〜170℃である。(A)成分のガラス転移温度を前記範囲とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及び成形体において耐熱性を維持することができる。
ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
(A)成分が、芳香族ポリカーボネートと非晶性ポリエステルとの混合物であった場合、その割合は、(A)成分中に芳香族ポリカーボネートが10〜90質量%、非晶性ポリエステルが10〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは、芳香族ポリカーボネートが30〜90質量%、非晶性ポリエステルが10〜70質量%、さらに好ましくは芳香族ポリカーボネートが40〜80質量%、非晶性ポリエステルが20〜60質量%である。(A)成分の質量割合を前記範囲とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及び成形体において耐熱性と高品位な外観とを得ることができる。
((B)添加剤)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、下記式(1)及び(2)で示される構成単位を含有する添加剤(B)を含有している。
[式(1)中、Rは炭素数が10〜60の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、(B)成分を含むことにより、耐傷付き性と耐衝撃性と、耐熱性とに優れた成形体を得ることができる。
(B)成分中の上記式(1)及び(2)で示される構成単位を含有する重合体は、ランダム共重合体及びブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよいが、交互共重合体であることが好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、その他、本発明の効果が得られる範囲において、従来一般的に知られているワックスを含んでもよい。以下に限定されるものではないが、例えば、炭化水素系ワックス、エステル系ワックス、シリコーン系ワックスなどが挙げられる。これらは部分的に変性されているものであっても構わない。
(その他の樹脂)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記(A)及び(B)成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の樹脂を、任意の方法により配合することができる。
その他の樹脂としては、例えば、特定のゴム成分(C)が挙げられる。特定のゴム成分(C)とは、グラフト共重合体(a)からなる分散相と、連続相(b)とを含み、前記グラフト共重合体(a)が、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、当該幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖とを有し、前記グラフト鎖が、シアン化ビニル系単量体単位と、そのシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体単位と、を有し、前記グラフト共重合体(a)の酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布が、2つ以上のピークを有し、前記2つ以上のピークのうち1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が0質量%以上10質量%未満の範囲内にピークトップを有する第1のピークであり、前記第1のピークとは異なるピークの1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が10質量%以上55質量%未満の範囲内にピークトップを有する第2のピークであり、前記第1のピーク及び第2のピークにおける、それぞれのピーク全体の積分値から求められる加重平均値を代表値としたとき、前記第1のピークが示す前記含有率の代表値と、前記第2のピークが示す前記含有率の代表値との差が10質量%以上であるゴム成分を指す。
2つ以上のピークが上記の範囲を満たすことによって、透過率が高く、漆黒性に優れた樹脂が得られる。
前記ゴム質重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体等の共役ジエン系ゴム、及びこれらの水素添加物、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、シリコーンゴム、シリコーン−アクリルゴム等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が、耐衝撃性の観点から好ましく、ポリブタジエンがより好ましい。ゴム質重合体は、均一な組成であってもよく、異なる組成の重合体を含むものでもよく、また、連続的に組成が変化しているものでもよい。
ビニル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体等が挙げられる。芳香族ビニル系単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレンが挙げられる。シアン化ビニル系単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(a)のグラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布の測定は、グラフト共重合体(a)を酸化分解した後にグラフト鎖由来の成分を単離して、そのグラフト鎖由来の成分を、HPLCで測定して得られるクロマトグラムに基づいて求めることができる。
酸化分解の方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オゾン分解、オスミウム酸分解などを用いることができる。具体的には、高分子論文集(井手文雄ら、vol.32、No.7、PP.439−444(July.1975))に記載の方法を用いることができる。この文献において、単離された枝ポリマーが、本実施形態において、グラフト鎖由来の成分に相当する。
より具体的には、例えば、下記のようにして、グラフト共重合体(a)におけるグラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布を求めることができる。
まず、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物をクロロホルムに溶解し、クロロホルム可溶分とクロロホルム不溶分とに分離する。このクロロホルム不溶分(例えば0.5g)に四酸化オスミウム(例えば0.0046g)、t−ブチルアルコール(例えば10.7g)、有機過酸化物(例えば、「パーブチルH−69」(日油株式会社商品名)9.2g)を加えて、例えば30分間、還流させた後、溶媒除去により濃縮して、クロロホルムに溶解させる。これにメタノールを添加することで沈殿物が得られるので、その沈殿物を分離・乾燥する。これを(例えば0.03g)秤量して、(例えば10mLの)テトラヒドロフランに溶解させ、測定試料とする。
上記とは別に、窒素分析によって、シアン化ビニル系単量体単位の含有率が既知である標準試料(ポリマー)を用いて、シアン化ビニル系単量体単位の含有率とHPLCにおけるリテンションタイムとの関係の検量線を作成しておく。
上記測定試料を、HPLCで測定してクロマトグラムを得た後、そのクロマトグラムにおけるリテンションタイムから、上記検量線を用いて、シアン化ビニル系(VCN)単位含有率の分布を求める。
条件は下記のとおりである。
測定装置:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)
サンプル濃度:サンプル30mg/THF10mL
カラム:シリカ系シアノプロピル処理品(島津製作所製、商品名「Shim−Pak CLC−CN」)
展開溶剤:テトラヒドロフラン/n−ヘキサン(2液グラジエント測定)
検出器:紫外線(254nm)
特定のゴム成分(C)のグラフト率は、好ましくは250%以下であり、より好ましくは40〜230%、さらに好ましくは65〜220%、さらにより好ましくは80〜200%、よりさらに好ましくは90〜180%である。ゴム成分(C)のグラフト率を前記範囲とすることで、高品位な外観を得ることができる。
なおグラフト率は、グラフト共重合体(a)中のゴム質重合体の質量を(a1)、グラフト共重合したグラフト成分の質量を(a2)としたとき、(a2)/(a1)×100〔%〕で定義される。
その他の樹脂の屈折率は、高品位な外観の観点から、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物における必須成分である非晶性熱可塑性樹脂(A)との屈折率差が小さければ小さいほどよく、1.51〜1.60であることが好ましい。より好ましくは、1.53〜1.60、さらに好ましくは、1.55〜1.60である。
その他の樹脂の含有量は、耐衝撃性、耐熱性、高品位な外観の観点から、上記(A)及び(B)成分の合計100質量%に対して、25質量%を超えない範囲であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
特に、上記特定のゴム成分(C)以外のゴム成分を添加する場合には、ゴム成分(C)以外のゴム成分の含有量は、5質量%未満であることが好ましく、さらに好ましくは、1質量%未満であることが好ましい。ゴム成分(C)以外のゴム成分の含有量を5質量%未満とすることで、本実施形態の成形体における高品位な外観を得ることができる。上記特定のゴム成分(C)以外のゴム成分としては前記グラフト共重合体(a)の酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布が、1つのみのピークを有するゴム成分が挙げられる。
((A)成分、(B)成分の含有量)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物における、上述した(A)非晶性熱可塑性樹脂、(B)添加剤の含有量について、以下に説明する。
先ず、前記(A)成分を100質量部としたとき、前記(B)成分の含有量は、0.1質量部を超え、5.0質量部より小さいことが好ましく、より好ましくは、0.2〜3.0質量部、さらに好ましくは0.2〜1.5質量部、さらにより好ましくは0.25〜1.0質量部、特に好ましくは、0.3〜0.8質量部である。
前記(A)成分と前記(B)成分の含有量を前記範囲にすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及び成形体において、耐傷付き性と高品位な外観とを得ることができる。
(熱可塑性樹脂組成物中の各残基の含有量)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を構成している、各モノマー残基成分の含有量について以下に説明する。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、当該熱可塑性樹脂組成物の一態様として、当該熱可塑性樹脂組成物の成形体を、テトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸、1,2−ジクロロエタン、シクロヘキサノン及びクロロベンゼンから選ばれる、少なくとも一種の溶媒に溶解したとき、可溶分中に、ジフェニルカーボネート(DPC)残基が10〜80質量%、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)残基が1〜10質量%、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基が3〜20質量%、テレフタル酸(TPA)残基が5〜40質量%、含まれていることが好ましい。
前記可溶分中の各種の残基は、1H−NMRにより測定することができる。
前記可溶分中の各種の残基の含有量が、上記範囲であることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及び成形体は、透明性、高品位な外観、耐衝撃性、及び耐熱性の特性バランスが優れたものとなる。
(その他の添加剤)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上述した成分(A)及び(B)成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて種々のその他の添加剤を、任意の方法により配合することができる。
その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、滑剤、着色剤、光輝剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、熱安定剤等が挙げられる。中でも、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、着色剤、耐候剤及び熱安定剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
これらの添加剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物に対して、それぞれ10質量%を超えない範囲であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下である。
高品位な外観を得るためには、着色剤として染料を使用することが好ましく、数種の染料を併用することが好ましい。例えば、有機染料を併用することが好ましく、赤、青、紫、黄、緑から選ばれる一種以上を併用することが好ましい。特に、ピアノブラック(漆黒)を得るためには、三種以上の有機染料を併用することが好ましい。光輝剤としては、近年好ましく用いられているメタリックやパール状の外観を持つ、種々の無機物を用いることができる。
より耐候性の良い成形体を得るためには、紫外線吸収剤を用いることが好ましい。好ましい紫外線吸収剤としては、例えば、ベンザトリアゾール系やトリアジン系の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。中でも、トリアジン系の紫外線吸収剤がより好ましい。
また、加工安定性の面より、熱安定剤を用いることが好ましい。好ましい熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤やリン系加工熱安定剤、硫黄系熱安定剤があげられる。より好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系加工熱安定剤とを併用することが好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、などが挙げられるが、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートがより好ましい。
リン系加工熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、などが挙げられるが、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトがより好ましい。
(熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、ASTM1003に準拠して、厚み2.5mmで測定した際の全光線透過率が50%以上を有することが好ましく、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
全光線透過率が50%以上とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及び成形体は、高品位な外観(漆黒)を得ることができる。
全光線透過率を50%以上とする方法としては、以下に限定されるものではないが、(A)成分に対する(B)成分の添加量を制御する方法や、(A)成分として非晶性ポリエステル、及び、芳香族ポリカーボネートを用いる場合には、非晶性ポリエステルと芳香族ポリカーボネートとの配合比率を制御する方法も挙げられる。
(熱可塑性樹脂組成物の形態)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物のモルフォロジーは、連続相と分散相との2相に分かれており、連続相は(A)成分、分散相は(B)成分からなることが好ましい。
さらに、連続相が複数成分からなっているとしても、それらは相溶していることが好ましく、(A)成分としては1相となっていることが好ましく、分散相(B)成分が、独立して分散して存在していることが好ましい。
上述したような形態であると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、優れた耐傷付き性と、耐衝撃性と耐熱性とを得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物のモルフォロジーは、成形体から超薄切片を作製し、四酸化ルテニウムにより染色処理を行った後、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行うことによって確認することができる。
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
次に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を、以下に例を挙げて説明する。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、例えば、
(1)(A)及び(B)成分を一括して二軸押出機に供給し溶融混練する方法、
(2)上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)成分の一部を供給し溶融混練した後、下流側供給口より残りの(A)成分と(B)成分とを供給し溶融混練する方法、
(3)(A)成分が複数成分からなる場合、まず(A)成分全てを二軸押出機に供給し溶融混練した後、改めてその溶融混練物と(B)成分とを二軸押出機に供給し、2度、溶融混練する方法、
等が挙げられる。
また、押出機のバレル設定温度は240℃〜300℃であることが好ましい。この範囲とすることで、上述したモルフォロジーを得ることができ、本発明の効果を確実に得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分を配合することによって、高い耐傷付性と耐熱性と耐衝撃性と、高品位な外観との相反する特性を併せ持つことができる。
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形することにより得られる。
成形体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、射出成形、シート成形、真空成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、Tダイ成形、プレス成形、押出成形、発泡成形、流延法による成形等、公知の方法を適用できる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の特徴は、塗装することなく成形のみで、高品位な外観を持つ成形体を作製することができるところにある。
特に、射出成形においては、特に外観の良い成形体が得られる。
射出成形体は、例えば、射出成形機を用いて、シリンダー温度=260℃〜300℃、金型温度=60℃〜90℃とし、一般的な射出成形法を実施することにより得られる。
射出成形体を製造する際には、金型が加熱/冷却を繰り返すヒートアンドクール成形が好ましく、高外観の射出成形体をより容易に得ることができる。これは、特に薄肉成形体やウェルド部を有する成形体を製造する場合に好ましく使用される。その際の金型温度は、加熱時は90℃〜180℃、冷却時は80℃〜50℃が好ましい。
射出速度はより速い方が好ましく、射出圧力は高すぎない方が好ましい。
射出速度が速い方が、成形体表面の状態を均一にすることにより成形時の外観不良を起こしにくく、射出圧力を調整することによってより金型への転写性が向上し、より漆黒度の高い高品位な成形体を得ることができる。
(用途)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成形体は、無塗装で、成形のみで高い耐熱性と耐衝撃性と、高品位な外観とを併せ持ち、意匠性と耐衝撃性とが求められる各種筐体材料や、自動車内装材料、各種自動車内装部品等の自動車用材料として好適である。
以下、具体的な実施例と比較例とを挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(使用した原料)
〔1〕
(A−1)芳香族ポリカーボネート
商品名「WONDERLITE(登録商標) PC−110(MVR;10g/10min)」奇美社製、を用いた。
MVRはISO1133に準拠して測定した。
(A−2)非晶性ポリエステル
(A−2−1)商品名「Tritan TX2000(インヘレント粘度;0.64dL/g、Tg;131℃、ジオール成分;TMCD残基36モル%、CHDM残基64モル%、ジカルボン酸成分;炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基100モル%)」、EASTMAN社製を用いた。
(A−2−2)商品名「EASTAR GN001(PET−G)、(インヘレント粘度;0.75dL/g、Tg;85℃、ジオール成分;エチレングリコール(EG)残基30モル%、CHDM残基70モル%、ジカルボン酸成分;炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基100モル%)」EASTMAN社製、を用いた。
前記インヘレント粘度は、ISO1628−1:1998の規定に従い、25℃において60/40(wt/wt)のフェノール/テトラクロロエタン中で0.5g/dLの濃度で測定した。
(B)添加剤
(B−1)商品名「ダイヤカルナ30M」、三菱化学社製
なお、(B−1)は、下記式(1)及び(2)で示される構成単位を含有していた。
[式(1)中、Rは炭素数が10〜60の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
(B−2)商品名「リケマールS−100」、理研ビタミン社製
(B−3)商品名「サンワックス E−250P」、三洋化成工業社製
(B−4)商品名「NUC−3810」、日本ユニカー社製
(B−5)商品名「シャリーヌR−170S」、日信化学工業社製
(B−6)商品名「GENIOPLASTPELLET S」旭化成ワッカーシリコン社製
なお、(B−2)〜(B−6)は、上記式(1)及び(2)で示される構成単位を含有していなかった。
(C−1)ゴム成分
ゴム成分(C)は、後述するようにゴムラテックス(ゴム質重合体)に所定の単量体単位がグラフト重合されたグラフト共重合体(a)と、グラフトされずに連続相(b)となった単量体やその重合体を含むゴム成分を用いた。
グラフト共重合体(a);アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)となるゴムラテックスの製造方法は、下記の通りとした。
ブタジエン18質量部、アクリロニトリル2質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)160質量部、ロジン酸カリウム0.067質量部、オレイン酸カリウム0.033質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、水酸化ナトリウム0.03質量部、過硫酸ナトリウム0.075質量部、重炭酸ナトリウム0.10質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から2.5時間経過後、さらに5時間かけて、ブタジエンモノマー80質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.3質量部、不均化ロジン酸カリウム0.67質量部、オレイン酸カリウム0.33質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部、水酸化ナトリウム0.05質量部、重炭酸ナトリウム0.15質量部、脱イオン水50質量部を連続的に添加した後、系を80℃まで昇温し、重合開始から14時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分(ゴムラテックス:ゴム質重合体)は41.8質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は165nmであった。
上記により得られたゴムラテックス(ゴム質重合体)40質量部(固形分)に、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)95質量部を添加し、気相部を窒素置換し、そこに、脱イオン水20質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0786質量部、硫酸第一鉄0.0036質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.0408質量部を溶解してなる水溶液を添加した。その後、70℃に昇温した。
続いて、1.5時間かけて、スチレン18質量部とクメンハイドロパーオキシド0.129質量部とからなる単量体混合液、及び、脱イオン水10.5質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0392質量部を溶解してなる水溶液を添加した。
続いて、3.5時間かけて、アクリロニトリル14.7質量部、スチレン27.3質量部とクメンハイドロパーオキシド0.14質量部とからなる単量体混合液、及び脱イオン水24.5質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0914質量部を溶解してなる水溶液を添加した。
それらの添加終了後に、クメンハイドロパーオキシド0.02質量部を、更に添加した後、さらに1時間、反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させ、そこにロジン酸カリウム0.5質量部を添加した。このようにしてグラフト共重合体(a)を含有するABSゴムラテックスを得た。
前記ABSゴムラテックス100質量部に、シリコーン樹脂製消泡剤0.07質量部、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョン0.6質量部を添加した後、固形分濃度が10質量%となるように脱イオン水を加えて調整し、70℃に加温した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、スクリュープレス機にて固液分離を行った。この時の含水率は10質量%であった。これを乾燥させてゴム成分(C−1)を得た。
ゴム成分(C−1)は、グラフト共重合体(a)からなる分散相と、連続相(b)とを含み、前記グラフト共重合体(a)は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、当該幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖とを有し、前記グラフト鎖は、シアン化ビニル系単量体単位と、そのシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体単位と、を有していた。(C−1)成分において、前記グラフト共重合体(a)の酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布を測定したところ、2つのピークを有し、前記2つのピークのうち1つが、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が0.2質量%にピークトップを有し、もう1つが、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が35質量%にピークトップを有しており、前記第1のピーク及び第2のピークにおける、それぞれのピーク全体の積分値から求められる加重平均値を代表値としたとき、前記第1のピークが示す前記含有率の代表値と、前記第2のピークが示す前記含有率の代表値との差が34.8質量%であった。
(C−2)ゴム成分
特開平7−258501号公報に記載の方法に準じて以下のグラフト共重合体を製造した。グラフト共重合体(a)70質量%(ブタジエン47質量%、グラフト重合体23質量%、グラフト率49%、酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布は30質量%に一つのピークトップを有する)、グラフトされずに連続相として存在する共重合体(b)30質量%(シアン化ビニル系単量体の含有量30質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;70質量%)
(C−3)ゴム成分
(C−1)成分と同様に、ゴムラテックスを得た後、得られたゴムラテックス(ゴム質重合体)50質量部(固形分)に、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)95質量部を添加し、気相部を窒素置換し、そこに、脱イオン水20質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0786質量部、硫酸第一鉄0.0036質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.0408質量部を溶解してなる水溶液を添加した。その後、70℃に昇温した。
続いて、1.5時間かけて、アクリロニトリル1.1質量部、スチレン13.9質量部とクメンハイドロパーオキシド0.1質量部とからなる単量体混合液、及び、脱イオン水10.5質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0392質量部を溶解してなる水溶液を添加した。
続いて、3.5時間かけて、アクリロニトリル5.3質量部、スチレン29.7質量部とクメンハイドロパーオキシド0.2質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.4質量部とからなる単量体混合液、及び脱イオン水24.5質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0914質量部を溶解してなる水溶液を添加した。
それらの添加終了後に、クメンハイドロパーオキシド0.02質量部を、更に添加した後、さらに1時間、反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させ、そこにロジン酸カリウム0.5質量部を添加した。このようにしてグラフト共重合体(a)を含有するABSゴムラテックスを得た。
前記ABSゴムラテックス100質量部に、シリコーン樹脂製消泡剤0.07質量部、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョン0.6質量部を添加した後、固形分濃度が10質量%となるように脱イオン水を加えて調整し、70℃に加温した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、スクリュープレス機にて固液分離を行った。この時の含水率は10質量%であった。これを乾燥させてゴム成分(C−3)を得た。
前記グラフト共重合体(a)は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、当該幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖とを有し、前記グラフト鎖は、シアン化ビニル系単量体単位と、そのシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体単位と、を有していた。(C−3)成分において、前記グラフト共重合体(a)の酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布を測定したところ、2つのピークを有し、前記2つのピークのうち1つが、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が6.9質量%にピークトップを有し、もう1つが、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が15.1質量%にピークトップを有しており、前記第1のピーク及び第2のピークにおける、それぞれのピーク全体の積分値から求められる加重平均値を代表値としたとき、前記第1のピークが示す前記含有率の代表値と、前記第2のピークが示す前記含有率の代表値との差が8.2質量%であった。
(評価方法)
各物性の評価方法は以下のとおりとした。
<(1)熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率の測定>
後述する実施例1〜11、比較例1〜12の熱可塑性樹脂組成物を用い、射出成形機により、シリンダー温度=280℃、金型温度=80℃の条件で、5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を射出成形した。
この平板を用いて、ASTM D1003に準じて、全光線透過率を評価した。
3点の測定値の加算平均値を算出し、全光線透過率の値とした。
<(2)シャルピー衝撃強度の測定>
後述する実施例1〜11、比較例1〜12の熱可塑性樹脂組成物を用い、射出成形機により、シリンダー温度=280℃、金型温度=80℃の条件で、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。
得られた試験片を80×10×4mmの形状に加工し、加工した試験片にノッチを付与して、ISO179に準じてシャルピー衝撃強度を測定した。
10点の測定値の加算平均値を算出し、シャルピー衝撃強度の値とした。
<(3)荷重たわみ温度(DTUL)の測定>
後述する実施例1〜11、比較例1〜12の熱可塑性樹脂組成物を用い、射出成形機により、シリンダー温度=280℃、金型温度=80℃の条件で、ISO294に準じて、厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。
得られた試験片を80×10×4mmの形状に加工し、ISO75に準じて荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
3点の測定値の加算平均値を算出し、DTULの値とした。
<(4)漆黒の測定>
高品位な外観の指標として、漆黒を評価した。
後述する実施例1〜11、比較例1〜12の熱可塑性樹脂組成物に各色(赤・黄・青・緑)染料を合計1質量%練り込んだ後、射出成形機を用いて、シリンダー温度=280℃、金型温度=80℃にて5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を射出成形した。
染料は、赤染料「C.I.;Solvent Red 179」、黄染料「C.I.;DisperseYellow 160」、青染料「C.I.;Solvent Blue 97」、緑染料「C.I.;Solvent Green 3」の四種を用いた。
得られた平板を多光源分光測色計「CM−2002」(コニカミノルタ(株)製)用いて、SCE(正反射光を除く)、D65光源/10°視野の条件で、L*a*b*表色系にて、L*を測定した。
2点の測定値の加算平均値を算出し、L*値とした。
<(5)耐傷性の測定>
実施例1〜11、比較例1〜12において、漆黒の測定に用いた5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を用い、Pin on Disc摩耗試験機により、1mm間隔で15回片道のみの引っ掻き試験を行った。荷重は5kg、ストロークは50mm、スピードは10mm/sec、相手材はSUS304球(直径5mm)を用いた。
多光源分光測色計「CM−2002」(コニカミノルタ(株)製)用いて、試験前後で前記平板の明度L*を測定し、その変化量ΔL*を確認した。ΔL*は下記式となる。
ΔL*=L*(耐傷後)−L*(耐傷前)
3点の測定値の加算平均値を算出し、0.5以下であれば○、0.5を超えた場合×として判定し、耐傷性の値とした。
<(6)耐候性の測定>
実施例1〜11、比較例1〜12において、漆黒の測定に用いた5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を用い、サンシャインウェザーメーター「SX75」、スガ試験機社製を用いて、ブラックパネル温度は83℃、降雨なし、照射照度は78W/m2、フィルターは#255を用いた。試験時間は300時間行った。
3点の測定値の加算平均値を算出し、耐候性の値とした。
(実施例1)
2軸押出機(東芝機械製「TEM−58SS」)を用いて以下のとおりに熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造した。
供給口は、上流側に1ヶ所とし、充分に乾燥して水分除去を行った(A−1)及び(B−1)成分を供給した。その際の押出機のシリンダー温度は、全段280℃に設定した。
また、この時の混練物の吐出量は300kg/時間、スクリュー回転数は250rpmであった。この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(実施例2)
(A)成分として(A−2−1)成分を供給した。その他の条件は、実施例1と同様にしてペレットを得た。この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(実施例3、5〜8、比較例9、10)
(A)成分として、(A−1)と(A−2−1)成分を供給した。その他の条件は実施例1と同様にしてペレットを得た。この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(実施例4)
(A)成分として、(A−1)と(A−2−1)と(A−2−2)成分とを供給した。その他の条件は実施例1と同様にしてペレットを得た。この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(実施例9)
(B)成分として、(B−1)と(B−2)成分とを供給した。その他の条件は実施例5と同様にしてペレットを得た。この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(実施例10)
(B−1)成分の配合量を変えた以外は、実施例1と同様にしてペレットを得た。この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いた上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(実施例11)
追加で(C−1)成分を供給した以外は、実施例5と同様にしてペレットを得た。この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いた上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(比較例1)
(A−1)成分のみを供給し、(B)成分を供給しなかった。その他の条件は、実施例1と同様にしてペレットを得た。
この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(比較例2)
(A−2−1)成分のみを供給し、(B)成分を供給しなかった。その他の条件は、実施例1と同様にしてペレットを得た。
この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(比較例3)
(A)成分として(A−1)と(A−2−1)成分とを供給し、(B)成分を供給しなかった。その他の条件は、実施例1と同様にしてペレットを得た。
この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(比較例4〜8)
(B)成分として(B−1)以外のものを添加した。その他の条件は実施例3と同様にしてペレットを得た。
この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表1に示す。
(比較例11、12)
(C)成分として(C−2)又は(C−3)成分を添加した以外は、実施例11と同様にしてペレットを得た。
この時の原材料の種類、配合割合を表1に示す。
得られたペレットを用いた上述の各評価を行った結果を表1に示す。
実施例1〜11においては、耐衝撃性、耐熱性、及び高品位な外観(漆黒)、耐傷性、耐光り性の全ての特性バランスが良好な成形品が得られた。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、各種成形体に好適に用いることができる。
例えば、意匠性と耐衝撃性との求められる各種筐体材料や自動車内外装部品等として産業上利用可能性を有する。

Claims (11)

  1. 非晶性ポリエステル、及び/又は、芳香族ポリカーボネートからなる非晶性熱可塑性樹脂(A)と、添加剤(B)とを、含み、
    前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.2〜1.5質量部であり
    前記(B)成分が、下記式(1)及び(2)で示される構成単位を含有し、
    ASTM1003に準拠して、厚み2.5mmで測定した際の全光線透過率が50%以上である、熱可塑性樹脂組成物。
    [式(1)中、Rは炭素数が10〜60の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
  2. 前記(A)成分として、少なくとも非晶性ポリエステルを含有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記(A)成分中の非晶性ポリエステルのジオール成分として、少なくとも脂環族ジオールを含む、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記(A)成分中の非晶性ポリエステルが、少なくとも芳香族ジカルボン酸と脂環族ジオールとを含むポリエステル樹脂である、請求項2又は3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記(A)成分中の、脂環族ジオールとして、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールを含む、請求項3又は4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. ゴム成分(C)をさらに含有し、
    前記(C)成分が、グラフト共重合体(a)からなる分散相と、連続相(b)とを含み、前記グラフト共重合体(a)が、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、当該幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖とを有し、前記グラフト鎖が、シアン化ビニル系単量体単位と、そのシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体単位と、を有し、前記グラフト共重合体(a)の前記グラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布が、2つ以上のピークを有し、前記2つ以上のピークのうち1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が0質量%以上10質量%未満の範囲内にピークトップを有する第1のピークであり、前記第1のピークとは異なるピークの1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が10質量%以上55質量%未満の範囲内にピークトップを有する第2のピークであり、前記第1のピーク及び第2のピークにおける、それぞれのピーク全体の積分値から求められる加重平均値を代表値としたとき、前記第1のピークが示す前記含有率の代表値と、前記第2のピークが示す前記含有率の代表値との差が10質量%以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. さらに、前記ゴム成分(C)以外のゴム成分の含有量が1質量%未満である、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 着色剤、耐候剤及び熱安定剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
  10. 前記成形体が無塗装である、請求項に記載の成形体。
  11. 前記成形体が自動車用材料である、請求項又は10に記載の成形体。
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