JP2014152245A - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】塗装することなく成形のみで、高い耐衝撃性、高品位な外観を併せ持つ成形体及び当該成形体用の熱可塑性樹脂組成物を得る。
【解決手段】(A):ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体をグラフトさせたグラフト共重合体と、
(B):芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を重合させた重合体と、
(C)芳香族ポリカーボネートと、
を含み、
前記(A)成分のグラフト率が70〜250%であり、前記(A)〜(C)成分の合計量を100質量%としたとき、前記(A)成分と(B)成分との合計含有量(X)が10〜50質量%、前記(C)成分の含有量が50〜90質量%である、
熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。
従来から、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)と芳香族ポリカーボネート(PC)とのアロイ(PC/ABS)は、ABSの成形性の良さとPCの優れた耐衝撃性とを併せ持ち、携帯機器の筐体や家電機器の筐体等、高い耐衝撃性が要求される分野において広く用いられている。また、自動車の内装部品等、上記特性に加えて耐熱性を必要とする分野においても広く用いられている。
近年、筐体等の使用者の目に見える部分の材料においては、耐衝撃性や耐熱性等の材料物性の他に、意匠性が強く求められてきている。当該意匠性の一つとして、漆黒(ピアノブラック)が求められる分野がある。このような分野においては、塗装による揮発性有機化合物(VOC)の排出問題から、無塗装化が望まれている。
一方において、漆黒という深みがあり特に黒味の強い色を樹脂材料に保持させるためには、着色前のベース樹脂が、ある程度の透明性を有していることが必要である。かかる観点から、従来より、PC/ABSの透明性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2006−328355号公報
しかしながら、従来公知のPC/ABSは不透明であるため、これに染顔料を含有させても、深みがあり特に強い黒味を持つピアノブラック(漆黒)を得ることは困難であるという問題を有している。
また、例えばPMMA/ABSのように透明性の高いものは、染顔料を含有させることによりピアノブラックを得ることができるが、耐衝撃性及び耐熱性に劣るという欠点があるという問題を有している。
また、上記特許文献1においては、ゴム質重合体中のスチレン単位量を増加させることにより、透明性の向上を図っている。しかし、実用上十分な耐衝撃性が得られなくなるおそれがあるという問題を有している。
このように、従来技術においては、耐衝撃性と高品位な外観の双方の特性を満足する材料は得られていない、というのが現状である。
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、塗装することなく成形のみで、耐衝撃性と高品位な外観とを満足し、これらの特性バランスに優れた熱可塑性樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、所定の(A)グラフト共重合体と、所定の単量体を重合させた(B)重合体と、(C)芳香族ポリカーボネートとを含み、前記(A)成分のグラフト率を70〜250%に特定し、かつ前記(A)〜(C)成分の合計量に対する前記(A)成分と(B)成分との合計含有量を特定し、前記(C)成分の含有量を特定した熱可塑性樹脂組成物が、塗装することなく成形のみで、高い耐衝撃性と高品位な外観とを併せ持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
(A):ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体をグラフトさせたグラフト共重合体と、
(B):芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を重合させた重合体と、
(C)芳香族ポリカーボネートと、
を含み、
前記(A)成分のグラフト率が70〜250%であり、前記(A)〜(C)成分の合計量を100質量%としたとき、前記(A)成分と(B)成分との合計含有量(X)が10〜50質量%、前記(C)成分の含有量が50〜90質量%である、
熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕
(D)成分として、ポリエステルを、さらに含み、前記(A)〜(D)成分の合計量を100質量%としたとき、前記(D)成分の含有量が5〜25質量%である、前記〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕
前記(D)成分中のジオール成分の総モル%を100モル%としたとき、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基の含有量が、25モル%〜80モル%である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕
着色剤として、染料及び/又はカーボンブラックを、さらに含む、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
〔6〕
前記成形体が無塗装である、前記〔5〕に記載の成形体。
〔7〕
前記成形体が自動車内装材である、前記〔5〕又は〔6〕に記載の成形体。
本発明によれば、塗装することなく成形のみで、高い耐衝撃性、高品位な外観を併せ持つ成形体及び当該成形体用の熱可塑性樹脂組成物が得られる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、
(A):ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体をグラフトさせたグラフト共重合体と、
(B):芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を重合させた重合体と、
(C)芳香族ポリカーボネートと、
を含み、
前記(A)成分のグラフト率が70〜250%であり、前記(A)〜(C)成分の合計量を100質量%としたとき、前記(A)成分と(B)成分との合計含有量(X)が10〜50質量%、前記(C)成分の含有量が50〜90質量%である、熱可塑性樹脂組成物である。
((A)グラフト共重合体)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体をグラフトさせた、(A)グラフト共重合体(以下、グラフト共重合体(A)、(A)成分と記載する場合がある。)を含有する。
<ゴム質重合体>
前記(A)成分に用いられるゴム質重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体等の共役ジエン系ゴム、及びこれらの水素添加物、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、シリコーンゴム、シリコーン−アクリルゴム等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
耐衝撃性の観点から、ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が好ましく、特に耐衝撃性の観点からポリブタジエンがより好ましい。 ゴム質重合体は、均一な組成であってもよく、異なる組成の重合体を含むものでもよく、また、連続的に組成が変化しているものでもよい。
<芳香族ビニル系単量体>
前記(A)成分に用いられる芳香族ビニル系単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレンが挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、耐熱性と色調の観点から、スチレン、及びα−メチルスチレンが好ましい。
<シアン化ビニル系単量体>
前記(A)成分に用いられるシアン化ビニル系単量体としては、以下に限定されるものではないが、生産性や色味の観点から、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種を組み合わせて用いてもよい。
<その他の共重合可能な単量体>
前記(A)成分に用いられる、前記その他の共重合可能な単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステルや、同様の各種置換体のメタクリル酸エステル、さらに、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸類等の不飽和アルキルエステル、さらに、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体等が挙げられる。
この中で、流動性や耐熱性、透明性の観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、N−フェニルマレイミド、グリシジルメタクリレートが好ましく、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、N−フェニルマレイミドがより好ましい。
<(A)グラフト共重合体の構成>
[グラフト率]
グラフト共重合体(A)のグラフト率は、70〜250%であり、好ましくは80〜230%、より好ましくは90〜220%、さらに好ましくは100〜220%、さらにより好ましくは150〜200%である。グラフト共重合体(A)のグラフト率を70〜250%の範囲とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、ピアノブラック(漆黒)という高品位な外観を得ることができる。
なおグラフト率は、グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体の質量を(A1)、グラフト共重合したグラフト成分の質量を(A2)としたとき、(A2)/(A1)×100〔%〕で定義される。
前記グラフト率は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物や成形体からグラフト共重合体(A)以外の樹脂成分を溶解するがグラフト共重合体(A)成分を溶解しない溶媒を選択し、不溶分(E)を取り出すことにより測定することができる。
具体的には、遠心分離機により不溶分(E)と可溶分とに分離し、取り出した不溶分(E)をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)等を用いて、ゴム成分及びその他の成分を分析し、その結果を元にして求めることができる。
前記(A)以外の樹脂成分を溶解するが(A)成分を溶解しない溶媒としては、例えば塩化メチレンやクロロホルムを用いることができる。もし、熱可塑性樹脂組成物やその成形体が上記以外の材料を含む場合であっても、それぞれの組成から適切な溶媒を選び、上記操作を容易に実施できる。
[グラフト共重合体(A)の形態]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、グラフト共重合体(A)は、後述する重合体(B)の連続相の中に分散した形態をとっている。
グラフト共重合体(A)の形状は、不定形、棒状、平板状、粒子状等をとり得るが、耐衝撃性の観点から、粒子状であることが好ましい。
グラフト共重合体(A)は、後述する重合体(B)の連続相中に一つ一つが独立して分散している状態、いくつかの集合体が分散している状態のいずれもとり得るが、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、一つ一つが独立して分散している状態であることが好ましい。
上述したように、グラフト共重合体(A)は後述する重合体(B)の連続相中に分散した形態をとっているので、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物中には、グラフト共重合体(A)のゴム質重合体が分散した形態となっている。
分散しているゴム質重合体の大きさは、成形体を製造する際の離型効果の観点から、体積平均粒子径が0.1μm以上であることが好ましく、成形体の外観の観点から1.2μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.15〜0.8μm、さらに好ましくは0.15〜0.6μm、さらにより好ましくは0.15〜0.5μmである。
分散するゴム質重合体の体積平均粒子径は、成形体から超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、超薄切片の任意の50μm×50μmの範囲について画像解析することにより求めることができる。
なお、ここで体積平均粒子径とは、ゴム質重合体の形状が球状の場合は、その直径に相当し、球状で無い場合は、最長径と最短径との平均値とする。
前記ゴム質重合体は、例えば、ゴム質重合体の内部で樹脂成分が相分離した、オクルージョンを含んだ構造のように、ゴム成分と樹脂成分とを含む不均一な構造体である場合がある。オクルージョンを含む粒子の場合のゴム質重合体部分の体積平均粒子径は、オクルージョンを含めた状態で測定する。
<(A)グラフト共重合体の製造方法>
グラフト共重合体(A)は、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、懸濁塊状重合、溶液重合等の公知の方法によって製造することができる。
このうち、乳化重合により製造する際には、レドックス開始剤・触媒系又は熱分解型の重合開始剤を用いてもよいが、レドックス開始剤・触媒系は、グラフト率の制御が容易であり、さらに、最終重合率が上がりやすいため、熱可塑性樹脂組成物中の未反応の単量体、及びオリゴマー量を低く抑えることができ、機械的強度に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られるという利点があり、好ましい。
なお、グラフト共重合体(A)の重合工程においては、自動的に、グラフト共重合体(A)の他に、グラフトしていない共重合体が生成する(後述する(B)成分に相当する)。
後述する〔実施例〕においては、グラフト共重合体(A)の添加においては、グラフト共重合体(A)の重合工程において得られた、グラフト未反応成分(後述する(B)成分に相当する。)を含めたものを(a)成分とし、当該(a)成分を添加している。すなわち、(a)=(A)成分+グラフト未反応成分((B)成分)である。
((B)重合体)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を重合させた(B)重合体(以下、重合体(B)、(B)成分と記載する場合がある。)を含有する。
<芳香族ビニル系単量体>
重合体(B)における芳香族ビニル系単量体としては、上述したグラフト共重合体(A)において使用することができる芳香族ビニル系単量体をいずれも使用できる。
<シアン化ビニル系単量体>
重合体(B)におけるシアン化ビニル系単量体としては、上述したグラフト共重合体(A)において使用することができるシアン化ビニル系単量体をいずれも使用できる。
<その他の共重合可能な単量体>
重合体(B)における、その他の共重合可能な単量体としては、上述したグラフト共重合体(A)において使用することができる単量体をいずれも使用できる。
<(B)重合体の製造方法>
重合体(B)は、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、懸濁塊状重合、溶液重合等の、いずれの方法によっても製造することができる。
重合体(B)は、重合体(B)として製造されたもの以外に、上述したように、(A)成分を製造する際に副生成物として生成するグラフト未反応成分も含む。
<(B)重合体の還元粘度>
(B)成分全体の還元粘度(ηsp/c)は、0.3〜1.0dL/gが好ましく、より好ましくは0.35〜1.0dL/g、さらに好ましくは0.35〜0.9dL/g、さらにより好ましくは0.35〜0.8dL/g、よりさらに好ましくは0.40〜0.7dL/gである。
この還元粘度は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物中の、全ての(B)成分の平均還元粘度を示している。
重合体(B)の還元粘度がこの範囲にあると、成形流動性及び耐衝撃性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
重合体(B)の還元粘度は、例えば、(A)成分を溶解せず、その他の成分を溶解する溶媒を用いて、熱可塑性樹脂組成物又は成形体を溶解させ、まず(A)成分を分離し、残った(B)成分と(C)成分との混合溶液に、(B)成分はよく溶解するが、(C)成分は溶解しない溶媒を加えて(C)成分を再沈させることで、(C)成分と(B)成分に分離し、その内の(B)成分0.50gを2−ブタノン100mLにて溶解した溶液を、30℃以下でCannon−Fenske型毛細管中の流出時間を測定することにより得ることができる。
(B)成分が、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体との共重合体、又は、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びアクリル酸エステル系単量体からなる3元共重合体である場合には、これら共重合体又は3元共重合体100質量%に対するシアン化ビニル系単量体の含有量は、15〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは25〜45質量%、さらに好ましくは30〜45質量%、さらにより好ましくは35〜45質量%である。
前記(B)成分の共重合体100質量%中のシアン化ビニル系単量体の含有量を上記範囲とすることで、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、さらに黒味が増し、高品位な外観を得ることができる。
(B)成分がアクリル酸ブチルやメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単量体を用いて重合された場合、これらの含有量は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐熱性の観点から(B)成分を100質量%としたとき1〜10質量%であることが好ましく、1〜7質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることがさらに好ましい。
前記シアン化ビニル系単量体の含有量は、上記同様に熱可塑性樹脂組成物又はその成形体から(B)成分を抽出し、取り出した(B)成分をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて測定することにより得られる。
前記アクリル酸エステル系単量体の含有量は、上記同様に熱可塑性樹脂組成物又はその成形体から(B)成分を抽出し、取り出した(B)成分を熱分解ガスクロマトグラフィー(GC−MS)を用いて測定することにより得られる。
((C)芳香族ポリカーボネート)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(C)芳香族ポリカーボネート(以下、芳香族ポリカーボネート(C)、(C)成分と記載する場合がある。)を含有する。
芳香族ポリカーボネート(C)としては、芳香族ホモポリカーボネート、芳香族コポリカーボネートのいずれも使用することができる。
<芳香族ポリカーボネート(C)の製造方法>
芳香族ポリカーボネート(C)は、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法や、2官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法、二酸化炭素とアルコールとから炭酸ジエチルを得て、炭酸ジエチルと芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて芳香族炭酸エステルを得る方法等、種々の方法により製造することができる。
前記2官能フェノール系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる、特に、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕を用いることが好ましい。前記2官能フェノール系化合物としては、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
また、本実施形態における(C)成分は、上記で製造された芳香族ポリカーボネートを単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
<(C)芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量>
(C)成分は、重量平均分子量が10,000〜200,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは10,000〜10,000、さらに好ましくは10,000〜60,000、さらにより好ましくは10,000〜40,000、よりさらに好ましくは20,000〜30,000の範囲である。(C)成分の重量平均分子量を10,000以上とすることで、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において耐衝撃性と押出安定性を得ることができ、200,000以下とすることで、成形加工性が良好となる。
(C)成分として二種以上の芳香族ポリカーボネートを併用する場合においては、混合物の重量平均分子量が上記範囲であることが好ましく、低重量平均分子量のものと高重量平均分子量を混合することもできる。
(C)成分の重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線から換算し、算出することができる。
((D)ポリエステル)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(D)ポリエステル(以下、ポリエステル(D)、(D)成分と記載する場合がある。)を、さらに含むことが好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(D)成分を含むことにより、高品位な外観と高い耐衝撃性、さらには、高い耐熱性が得られる。本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の合計量を100質量%としたとき、(D)成分を5〜25質量%含むことが好ましい。より好ましくは5〜20質量%であり、さらに好ましくは5〜15質量%である。
(D)成分を5質量%以上含むことにより高品位な外観が得られ、25質量%以下含むことにより高い耐衝撃性を保持することができる。
ポリエステル(D)は、ジオール成分とジカルボン酸成分を含む。当該ジオール成分としては、脂環式ジオール化合物及び/又は脂環式ジオール化合物残基を含むことが好ましい。
ここで使用する「残基」とは、対応するモノマーから重縮合及び/又はエステル化反応によってポリマー中に組み入れられた任意の有機構造を意味する。従って、例えば、ジカルボン酸残基とは、ジカルボン酸モノマー若しくはその関連酸ハライド、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物に由来する。
前記ジオール成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数2〜12のアルキレングリコール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)等の脂環族ジオールが挙げられる。高品位な外観を得るためには、特に、エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を併用することが好ましい。
(D)成分は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において漆黒を得る観点から、ジオール成分の総モル%を100モル%としたとき、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基を25〜80モル%含むことが好ましく、より好ましくは25〜70モル、さらに好ましくは25〜50モル%、さらにより好ましくは25〜45モル%含む。
前記1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基の含有量は、NMRにより測定することができる。
前記(D)成分を構成するジオール類は、シス、トランス、又はこれらの混合物を用いることができる。
前記(D)成分は、上述したように、ジオール成分と対になるジカルボン酸成分を含有する。当該ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸残基、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸残基が挙げられる。
(D)成分は、ジカルボン酸の総モル%を100モル%としたとき、例えば、炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸及び/又は炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基を好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%含有し、炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基を好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜1モル%含有する。
炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸及び/又は炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基、及び炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基の含有量を、前記数値範囲にすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、高い耐熱性と耐衝撃性が得られる。
(D)成分中の炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸及び/又は炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基、炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基の含有量は、NMRにより測定することができる。
前記芳香族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸残基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸とそのエステル、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−、1,5−、2,6−、2,7−ナフタレンジカルボン酸、及びトランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸並びにそれらのエステルとの混合物が挙げられるが、色調と流動性の観点から、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸エステルが好ましい。
前記脂肪族カルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸残基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びドデカン二酸が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸成分としては、直鎖、パラ配向、対称性を有する構造のいずれであってもよく、炭素数20以下のものが好ましいものとして挙げられるが、これらに限定するものではない。
(その他の樹脂)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて種々のその他の樹脂を、任意の方法により配合することができる。
その他の樹脂としては、前記(D)成分以外のポリエステルが挙げられる。
その他の樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメタノールシクロヘキサン−1、4−ジカルボキシレート)樹脂や脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールとコハク酸及び又はその誘導体からなるポリエステルなどの非晶性ポリエステルが好ましく挙げられる。
その他の樹脂の含有量は、耐衝撃性、耐熱性、高品位な外観を得る観点から、上記(A)〜(D)成分の合計量を100質量%としたとき、その合計量が25質量%を超えない範囲であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
((A)成分〜(C)成分の含有量)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、(A)〜(C)成分の合計量を100質量%としたとき、前記(A)成分と前記(B)成分との合計含有量(X)量が10〜50質量%、前記(C)成分が50〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは前記(X)量が10〜40質量%、前記(C)成分が60〜90質量%、さらに好ましくは前記(X)量が10〜30質量%、前記(C)成分が70〜90質量%である。
(X)成分と(C)成分の比率をこの範囲にすることで、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において高い耐衝撃性を得ることができる。
((D)成分の含有量)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、上述した(A)〜(D)成分の合計量を100質量%としたとき、前記(D)成分の含有量は5〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。
(D)成分の量を上記数値範囲とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において優れた耐衝撃性と漆黒を合わせ持つことができる。
((A)成分中のゴム質重合体の含有量)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、(A)成分中のゴム質重合体の含有量は、(A)〜(D)成分の合計量を100質量%としたとき、1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは3〜15質量%である。
(A)成分中のゴム質重合体の含有量を、(A)〜(D)成分の合計量100質量%に対して1質量%以上とすることで、耐衝撃性、離型性、及び押出安定性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られ、30質量%以下とすることで、透明性及び流動性、耐熱性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。
(A)成分中のゴム質重合体の量、及び(A)成分と(B)成分の合計量、(C)成分及び(D)成分の量は、例えば、以下の方法により求めることができる。
すなわち、(A)成分を溶解せず、その他成分を溶解する溶媒を用いて、熱可塑性樹脂組成物や成形体を溶解させ、まず(A)成分を分離し、残った(B)成分と(C)成分と(D)成分の混合溶液に、(B)成分はよく溶解するが(C)成分と(D)成分は溶解しない溶媒を加えて(C)成分と(D)成分を再沈させることで(B)成分を分離し、(A)成分と(B)成分の合計量を求めることができる。
さらに、(C)成分と(D)成分の再沈物の核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することにより、(D)成分の量を求め、その差を取ることにより、(C)成分の量を求めることができる。
前記の分離した(A)成分(=不溶分)を乾燥させ完全に溶媒を除去した後、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて測定することにより、(A)成分中のゴム質重合体の量を求めることができる。
前記(A)成分を溶解せず、その他成分を溶解する溶媒としては、例えば塩化メチレンやクロロホルムを用いることができ、前記(B)成分はよく溶解するが(C)成分と(D)成分は溶解しない溶媒としては、例えばアセトンを用いることができる。もし、熱可塑性樹脂組成物やその成形体が上記以外の材料を含む場合であっても、それぞれの組成から適切な溶媒を選び、上記操作を容易に実施できる。
(添加剤)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を、任意の方法により配合することができる。
そのような添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、可塑剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤等が挙げられる。
これらの添加剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物に対して、それぞれ10質量%を超えない範囲であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
高品位な外観を得るためには、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、染料及び/又はカーボンブラックをさらに含むことが好ましい。染料においては、数種の染料を併用することが好ましい。例えば、有機染料を併用することが好ましく、赤、青、紫、黄、緑から選ばれる一種以上を併用することが好ましい。漆黒を得るためには、三種以上の有機染料を併用することが好ましい。
(熱可塑性樹脂組成物の形態)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物のモルフォロジーは、連続相と分散相の2相に分かれており、連続相は(C)成分、分散相は(A)成分と(B)成分からなることが好ましい。
さらに、分散相に存在する(A)成分中のゴム質重合体がより粒子状に独立して分散して存在していることが好ましい。
上述したような形態であると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、優れた耐衝撃性と耐熱性、高品位な外観を得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物のモルフォロジーは、成形体から超薄切片を切り出し、四酸化オスミウム及び四酸化ルテニウムにより染色処理を行った後、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行うことによって確認することができる。
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
次に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を、以下に例を挙げて説明する。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、(A)成分〜(C)成分を中心として説明すると、例えば、
(1)(A)〜(C)成分を一括して二軸押出機に供給し溶融混練する方法、
(2)上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)成分と(B)成分を供給し溶融混練した後、下流側供給口より(C)成分を供給し溶融混練する方法、
(3)上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)成分と(C)成分を供給し溶融混練した後、下流側供給口より(B)成分を供給し溶融混練する方法、
(4)上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(B)成分と(C)成分を供給し溶融混練した後、下流側供給口より(A)成分を供給し溶融混練する方法、
等が挙げられる。
耐衝撃性の観点から、前記(1)〜(3)の方法がより好ましい。
また、押出機のバレル設定温度は240℃〜280℃であることが好ましい。この範囲とすることで、上述したモルフォロジーを得ることができ、本発明の効果を確実に得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分を配合することによって、高い耐衝撃性と高品位な外観という、本来相反する特性を併せ持つことができる。他の成分は、適宜添加して、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
〔成形体〕
上述した本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を、従来公知の成形法を用いて成形することにより、所望の成形体が得られる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、塗装することなく成形のみで、高品位な外観を持つ成形体を製造することができる。すなわち、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を成形することにより得られる成形体は、塗装を施すことなく、高品位な外観を有している。成形体の外観性は、例えば、多光源分光測色計「CM−2002」(コニカミノルタ(株)製)用いて、SCE(正反射光を除く)、D65光源/10°視野の条件で、L*a*b*表色系にて、L*を測定することにより評価することができる。具体的には後述する実施例に記載する方法により評価することができる。
このような高品位な外観を有する成形体は、例えば、射出成形機を用いて、シリンダー温度=240℃〜280℃、金型温度=60℃〜90℃の一般的な成形によって得ることができる。
成形体を製造する際には、金型が加熱/冷却を繰り返すヒートアンドクール成形が好ましく、高外観の成形体をより容易に得ることができる。これは、特に薄肉成形体やウェルド部を有する成形体を製造する場合に好ましく使用される。その際の金型温度は、加熱時は100℃〜200℃、冷却時は80℃〜50℃が好ましい。
高品位な外観を持つ成形体を得るためには、速度はより速い方が好ましく、圧力は高すぎない方が好ましい。速度の速い方が成形体表面の状態を均一にすることができ、圧力による成形体表層のゴム質重合体の偏平を制御することによって、より漆黒の高い高品位な成形体を得ることができる。
〔用途〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成形体は、意匠性と耐衝撃性の求められる各種筐体材料や、自動車内装材料、各種自動車内装部品等として利用できる。
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各物性の評価方法は以下のとおりである。
(評価方法)
<漆黒の測定>
高品位な外観の指標として、漆黒を評価した。
後述する実施例1〜7、比較例1〜4の熱可塑性樹脂組成物に、各色(赤・黄・青・緑)染料を合計1質量%練り込んだ後、射出成形機を用いて、シリンダー温度=270℃、金型温度=70℃にて、5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を成形した。
染料は、赤染料「C.I.;Solvent Red 179」、黄染料「C.I.;DisperseYellow 160」、青染料「C.I.;Solvent Blue 97」、緑染料「C.I.;Solvent Green 3」の四種を用いた。
得られた平板を多光源分光測色計「CM−2002」(コニカミノルタ(株)製)用いて、SCE(正反射光を除く)、D65光源/10°視野の条件で、L*a*b*表色系にて、L*を測定した。
測定は、5点の加算平均をもってL*値とした。
数値が小さいほど明度が低くより漆黒で、高品位な外観が得られたことを意味する。
<シャルピー衝撃強度の測定>
後述する実施例1〜7、比較例1〜4の熱可塑性樹脂組成物を用い、射出成形機により、シリンダー温度=250℃、金型温度=60℃の条件で、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。
得られた試験片を80×10×4mmの形状に加工し、加工した試験片にノッチを付与した後、ISO179に準じてシャルピー衝撃強度を測定した。
測定は、10点の加算平均をもってシャルピー衝撃値とした。
(実施例及び比較例で使用した原料)
((a):ABS((A)成分とグラフト未反応成分との混合物。):アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)
以下、特開平7−258501号公報に記載の方法に準じて(a−1)〜(a−3)のグラフト共重合体を製造した。
(a−1):グラフト共重合体(A)60質量%(ブタジエン66.7質量%、グラフト重合体33.3質量%、グラフト率50%)、グラフト未反応共重合体(B)40質量%(シアン化ビニル系単量体の含有量;30質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;70質量%、還元粘度0.5dL/g。)
(a−2):グラフト共重合体(A)70質量%(ブタジエン57.1質量%、グラフト重合体42.9質量%、グラフト率75%)、グラフト未反応共重合体(B)30質量%(シアン化ビニル系単量体の含有量;20質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;80質量%、還元粘度0.5dL/g)。
(a−3):グラフト共重合体(A)76質量%(ブタジエン52.6質量%、グラフト重合体47.4質量%、グラフト率90%)、グラフト未反応共重合体(B)24質量%(シアン化ビニル系単量体の含有量;20質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;80質量%、還元粘度0.5dL/g)。
(a−4):グラフト共重合体(A)66質量%(ブタジエン45.5質量%、グラフト重合体54.5質量%、グラフト率120%)、グラフト未反応共重合体(B)34質量%(シアン化ビニル系単量体の含有量;20質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;80質量%、還元粘度0.5dL/g)。
(a−5):グラフト共重合体(A)80質量%(ブタジエン質量35%、グラフト重合体64.3質量%、グラフト率180%)、グラフト未反応共重合体(B)20質量%(シアン化ビニル系単量体の含有量;35質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;60質量%、還元粘度0.53dL/g。)
(a−6):グラフト共重合体(A)80質量%(ブタジエン35質量%、グラフト重合体65質量%、グラフト率186%)、グラフト未反応共重合体(B)20質量%(シアン化ビニル系単量体の含有量;20質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;80質量%、還元粘度0.5dL/g)。
((B)AS:アクリロニトリル・スチレン共重合体)
(B−1):シアン化ビニル系単量体の含有量;20質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;80質量%、還元粘度0.6dL/g。
(B−2):シアン化ビニル系単量体の含有量;30質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;70質量%、還元粘度0.6dL/g。
(B−3):シアン化ビニル系単量体の含有量;40質量%、芳香族ビニル系単量体の含有量;60質量%、還元粘度0.5dL/g。
((C)芳香族ポリカーボネート)
商品名「WONDERLITE(登録商標) PC−110(重量平均分子量;26,000)」、奇美社製
((D)ポリエステル)
商品名「EASTAR GN001(PET−G)、(インヘレント粘度;0.75dL/g、Tg;85℃、ジオール成分;エチレングリコール(EG)残基70モル%、CHDM残基30モル%、ジカルボン酸成分;テレフタル酸残基100モル%)」EASTMAN社製
前記(D)成分のインヘレント粘度は、ISO1628−1:1998の規定に従い、25℃において60/40(wt/wt)のフェノール/テトラクロロエタン中で0.5g/dLの濃度で測定した。
〔実施例1〕
2軸押出機(東芝機械製「TEM−58SS」)を用いて、以下のとおりに熱可塑性樹脂組成物を製造した。
供給口は、上流側に1ヶ所とし、充分に乾燥処理を施し、水分除去を行った前記(a−5)成分、(B)成分、(C)成分を、それぞれ供給した。
その際の押出機のシリンダー温度は、全段250℃に設定した。
また、この時の混練物の吐出量は300kg/時間、スクリュー回転数は250rpmであった。
原材料の種類、配合割合を、下記表1に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて上述の各評価を行った結果を、下記表1に示す。
〔実施例2、3、4〕
(a)成分として、グラフト率の異なる(a−2)〜(a−4)成分を用いた。また、(B)成分の配合量を下記表1に示すように調整した。その他の条件は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
原材料の種類、配合割合を下記表1に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて上述の各評価を行った結果を下記表1に示す。
〔実施例5〕
(D)成分を加えた。その他の条件は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
原材料の種類、配合割合を下記表1に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて上述の各評価を行った結果を下記表1に示す。
〔実施例6〕
(a)成分として、シアン化ビニル系単量体の配合量の異なる(a−6)成分を供給した。その他の条件は、実施例5と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
原材料の種類、配合割合を下記表1に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて上述の各評価を行った結果を下記表1に示す。
〔実施例7〕
(C)成分及び(D)成分の配合量を変更した以外は、実施例5と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
原材料の種類、配合割合を下記表1に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて上述の各評価を行った結果を下記表1に示す。
〔比較例1、2〕
(a)成分の配合量を変更し、(C)成分を配合しなかった。また、(B)成分として、(B−1)、(B−2)を用いた。その他の条件は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
原材料の種類、配合割合を下記表1に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて上述の各評価を行った結果を下記表1に示す。
〔比較例3〕
(a)成分として、シアン化ビニル系単量体の配合量、及びグラフト率の異なる(a−1)成分を供給した。また、当該(a)成分、(B)成分の配合量を変更した。その他の条件は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
原材料の種類、配合割合を下記表1に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて上述の各評価を行った結果を下記表1に示す。
〔比較例4〕
(B−3)成分を配合し、(C)成分及び(D)成分の配合量を変更した。その他の条件は、実施例7と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
原材料の種類、配合割合を下記表1に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて上述の各評価を行った結果を下記表1に示す。
前記表1中の文言の意味を示す。
(a−1)の、「グラフト率;50%」とは、(A)成分のグラフト率が50%であることを意味する。(a−2)〜(a−6)も同様である。
(B−1)の「AS VCN20wt%」とは、アクリロニトリル・スチレン共重合体であって、アクリロニトリル単位を20質量%含有することを意味する。(B−2)、(B−3)も同様である。
実施例1〜7においては、高い耐衝撃性、良好な漆黒評価が得られた。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成形体は、意匠性及び耐衝撃性を求められる各種筐体材料や、自動車内装材料、各種自動車内装部品等として、産業上の利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. (A):ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体をグラフトさせたグラフト共重合体と、
    (B):芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びその他の共重合可能な単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を重合させた重合体と、
    (C)芳香族ポリカーボネートと、
    を含み、
    前記(A)成分のグラフト率が70〜250%であり、前記(A)〜(C)成分の合計量を100質量%としたとき、前記(A)成分と(B)成分との合計含有量(X)が10〜50質量%、前記(C)成分の含有量が50〜90質量%である、
    熱可塑性樹脂組成物。
  2. (D)成分として、ポリエステルを、さらに含み、前記(A)〜(D)成分の合計量を100質量%としたとき、前記(D)成分の含有量が5〜25質量%である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記(D)成分中のジオール成分の総モル%を100モル%としたとき、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基の含有量が、25モル%〜80モル%である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 着色剤として、染料及び/又はカーボンブラックを、さらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
  6. 前記成形体が無塗装である、請求項5に記載の成形体。
  7. 前記成形体が自動車内装材である、請求項5又は6に記載の成形体。
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