JP6165263B2 - 自動車内装部品 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車内装部品に関する。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)は、流動性、耐衝撃性、耐薬品性、及び表面外観に優れるバランスのとれた樹脂であることから、自動車用部品や、OA機器、家電製品、玩具の筐体等様々な分野で使用されてきている。
近年では、TVの筐体等の家電製品、OA機器、及び玩具等の製品の塗装の代わりに、無塗装でも、耐衝撃性等の性能に加えて、高い美観を有する材料が求められている。このような材料としてABS樹脂とPMMAのアロイに漆黒の着色を施した樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、自動車の内装部品等を無塗装とする場合には、深みのある漆黒性等の意匠性や、耐傷性の他に高い耐熱性を有する材料が必要となる。この点、特許文献1に記載されたアロイでは、漆黒性や耐傷性は得られるものの高い耐熱性を得ることができないため、自動車内装部品へ展開することが困難である。
そこで、自動車内装部品向けに耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れた耐熱透明樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2009−067970号公報 特開2005−298776号公報
しかしながら、特許文献2に記載の耐熱透明樹脂組成物を用いて、漆黒の成形品を作製した場合、成形温度や成形圧力の変化により、成形品表面に白モヤ(色調のムラや曇り)及びシルバー(銀条)が生じるという問題がある。また、シルバー(耐傷性)の因子であるメタクリル酸エステル系樹脂や、白モヤの因子であるゴム変性熱可塑性樹脂の粒子径等について、引用文献2の実施例及び比較例の記載に鑑みても、成形温度や成形圧力の変化による白モヤ及びシルバー双方を解決する樹脂組成物については記載がない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、漆黒性、耐傷性、耐熱性、及び耐衝撃性を有し、シルバー及び白モヤのない安定した綺麗な外観を有する自動車内装部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、所定の熱可塑性樹脂組成物を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は以下の通りである。
〔1〕
アセトン不溶分(A)と、アセトン可溶分(B)と、を含み、
前記アセトン不溶分(A)の含有量が、前記アセトン不溶分(A)及び前記アセトン可溶分(B)の合計100質量%に対して、5〜18質量%であり、
前記アセトン不溶分(A)は、構成単位の異なる1種又は2種以上の樹脂を含み、前記アセトン不溶分(A)に含まれる全樹脂の構成単位には、少なくとも、質量平均粒子径0.1〜0.35μmのゴム成分単位、芳香族ビニル単量体単位、及び不飽和ニトリル単量体単位が含まれ、
前記アセトン不溶分(A)が、前記ゴム成分単位に、少なくとも前記不飽和ニトリル単量体単位がグラフトされたグラフト共重合体を含み、
該グラフト共重合体に含まれる前記不飽和ニトリル単量体単位の含有量が、グラフトされた全構成単位100質量%に対して、15〜28質量%であり、
前記アセトン可溶分(B)は、構成単位の異なる1種又は2種以上の樹脂を含み、前記アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位には、少なくとも、芳香族ビニル単量体単位、不飽和ニトリル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位、及びマレイミド系単量体単位が含まれ、
前記メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が、前記アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対して、45〜60質量%である熱可塑性樹脂組成物からなる、
自動車内装部品。
〔2〕
前記熱可塑性樹脂組成物のISO 306に準拠したビカット軟化点が、105〜120℃である、前項〔1〕に記載の自動車内装部品。
〔3〕
前記マレイミド系単量体単位の含有量が、前記熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、5〜13質量%である、前項〔1〕又は〔2〕に記載の自動車内装部品。
〔4〕
前記ゴム成分単位が、ジエン系ゴム単位を含む、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の自動車内装部品。
〔5〕
前記ゴム単位の含有量が、前記アセトン不溶分(A)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対して、30〜60質量%である、前項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の自動車内装部品。
本発明によれば、漆黒性、耐傷性、耐熱性、及び耐衝撃性を有し、シルバー及び白モヤのない安定した綺麗な外観を有する自動車内装部品を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、「単量体」とは、樹脂を構成する前の重合性分子をいい、「単量体単位」又は「単位」とは、所定の単量体に対応する、樹脂を構成する単位をいう。
〔自動車内装部品〕
本実施形態に係る自動車内装部品は、
アセトン不溶分(A)と、アセトン可溶分(B)と、を含み、
前記アセトン不溶分(A)の含有量が、前記アセトン不溶分(A)及び前記アセトン可溶分(B)の合計100質量%に対して、5〜18質量%であり、
前記アセトン不溶分(A)は、構成単位の異なる1種又は2種以上の樹脂を含み、前記アセトン不溶分(A)に含まれる全樹脂の構成単位には、少なくとも、質量平均粒子径0.1〜0.35μmのゴム成分単位、芳香族ビニル単量体単位、及び不飽和ニトリル単量体単位が含まれ、
前記アセトン不溶分(A)が、前記ゴム成分単位に、少なくとも前記不飽和ニトリル単量体単位がグラフトされたグラフト共重合体を含み、
該グラフト共重合体に含まれる前記不飽和ニトリル単量体単位の含有量が、グラフトされた全構成単位100質量%に対して、15〜28質量%であり、
前記アセトン可溶分(B)は、構成単位の異なる1種又は2種以上の樹脂を含み、前記アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位には、少なくとも、芳香族ビニル単量体単位、不飽和ニトリル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位、及びマレイミド系単量体単位が含まれ、
前記メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が、前記アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対して、45〜60質量%である熱可塑性樹脂組成物からなる。
〔アセトン不溶分(A)〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、アセトン不溶分(A)を含む。アセトン不溶分(A)は、構成単位の異なる1種又は2種以上の樹脂を含み、アセトン不溶分(A)に含まれる全樹脂の構成単位には、少なくとも、質量平均粒子径0.1〜0.35μmのゴム成分単位、芳香族ビニル単量体単位、及び不飽和ニトリル単量体単位が含まれる。
ここで、「アセトン不溶分(A)」とは、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物をアセトンに溶解した場合に、アセトンに溶解されない成分をいう。アセトン不溶分(A)は、実施例に記載の方法により特定することができる。
また、「アセトン不溶分(A)に含まれる全樹脂の構成単位」とは、アセトン不溶分(A)に含まれる樹脂が1種である場合には、その樹脂を構成する全構成単位をいい、アセトン不溶分(A)に含まれる樹脂が2種以上である場合には、各樹脂を構成する構成単位全てをいう。すなわち、アセトン不溶分(A)に含まれる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ゴム成分単位を含む樹脂と、芳香族ビニル単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;ゴム成分単位及び芳香族ビニル単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;ゴム成分単位を含む樹脂と、芳香族ビニル単量体単位及び不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;ゴム成分単位を含む樹脂及び不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂と、芳香族ビニル単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;ゴム成分単位、芳香族ビニル単量体単位、及び不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂単独が挙げられる。
ゴム成分単位としては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、及びエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体等からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる(共役)ジエン系ゴム単位;ポリアクリル酸ブチル等からなるアクリル系ゴム単位;エチレン−プロピレンゴム単位;シリコンゴム単位;シリコーン−アクリル複合ゴム単位;及びそれらの水素添加物からなるゴム単位等が挙げられる。これらの中でも(共役)ジエン系ゴム単位が好ましく、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体がより好ましい。(共役)ジエン系ゴム単位を用いることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。ゴム成分単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分単位に含まれる重合体のガラス転移温度は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは−50℃以下であり、さらに好ましくは−70℃以下である。ガラス転移温度は、定法に従いDSCにより測定することができる。
ゴム成分単位の質量平均粒子径は、0.1〜0.35μmであり、好ましくは0.12〜0.33μmであり、より好ましくは0.15〜0.3μmである。質量平均粒子径が0.1μm以上であることにより、耐衝撃性がより向上する。また、0.35μm以下であることにより、漆黒性等の意匠性がより向上し、白モヤがより抑制される。質量平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定することができる。なお、「ゴム成分単位の質量平均粒子径」とは、ゴム成分単位の大きさであり、グラフト共重合体である場合にはグラフト共重合体部分は除く。
ゴム成分単位の含有量は、アセトン不溶分(A)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対して、好ましくは30〜60質量%であり、より好ましくは35〜60質量%であり、さらに好ましくは40〜55質量%である。ゴム成分単位の含有量が上記範囲内であることにより、アセトン可溶分との相容性(衝撃性など)により優れる。ゴム単位の含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
芳香族ビニル単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、スチレン単位、α−メチルスチレン単位、o−メチルスチレン単位、p−メチルスチレン単位、o−エチルスチレン単位、p−エチルスチレン単位、p−t−ブチルスチレン単位、及びビニルナフタレン単位等が挙げられる。このなかでもスチレン単位及びα−メチルスチレン単位が好ましい。芳香族ビニル単量体単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
不飽和ニトリル単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル単位、メタクリロニトリル単位及びエタクリロニトリル単位等が挙げられる。このなかでもアクリロニトリル単位が好ましい。不飽和ニトリル単量体単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
共重合可能な他の単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位;無水マレイン酸単位、N−フェニルマレイミド単位、N−メチルマレイミド単位等のN−置換マレイミド系単量体単位;グリシジルメタクリレート単位等のグリシジル基含有単量体単位等が挙げられる。共重合可能な他の単量体単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、ブチルアクリレート単位、エチルアクリレート単位、メチルアクリレート単位、メチルメタクリレート単位等のアクリル酸エステル化合物単位及びメタクリル酸エステル化合物単位;アクリル酸単位、メタクリル酸単位等のアクリル酸類単位が挙げられる。この場合の共重合成分としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(グラフト共重合体)
アセトン不溶分(A)は、ゴム成分単位に少なくとも不飽和ニトリル単量体単位がグラフトされたグラフト共重合体を含む。また、アセトン不溶分(A)は、ゴム成分単位に少なくとも芳香族ビニル単量体単位がグラフトされたグラフト共重合体、及びゴム成分単位に芳香族ビニル単量体単位及び不飽和ニトリル単量体単位がグラフトされたグラフト共重合体を含むことが好ましい。ゴム成分単位にグラフトされる重合体は、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体と共重合可能な他の単量体単位を含むこともできる。このようなグラフト共重合体を含むことにより、アセトン可溶分(マトリクス)との相溶性が強く、衝撃性が優れる傾向にある。
グラフトされる重合体としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、及びアクリロニトリル−スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブチルアクリレート共重合体、及びアクリロニトリル−スチレン−メチルメタクリレート共重合体が好ましい。
グラフト共重合体に含まれる不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、グラフトされた全構成単位100質量%に対して、15〜28質量%であり、好ましくは17〜27質量%であり、より好ましくは18〜25質量%である。不飽和ニトリル単量体単位の含有量が15質量%以上であることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、不飽和ニトリル単量体単位の含有量が28質量%以下であることにより、漆黒性などの意匠性がより向上する傾向にある。不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
グラフト共重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、及びこれらの重合法の組合せ等の方法が挙げられる。具体的には、乳化重合で製造されたゴム成分のラテックスに共重合体をグラフト重合させる乳化グラフト重合方法が挙げられる。なお、連続式、バッチ式、セミバッチ式いずれの方式を採用することも可能である。
グラフト共重合体の製造過程で生成するゴム成分単位にグラフトした共重合体の割合(グラフト率)は、ゴム成分単位100質量%に対して、好ましくは10〜200質量%であり、より好ましくは20〜170質量%であり、さらに好ましくは30〜100質量%である。グラフト率は、グラフト共重合体100質量%に対する、ゴム成分単位にグラフトした共重合体(グラフト成分)の質量割合で定義できる。なお、グラフト率は実施例に記載の方法により測定することができる。
グラフト共重合体の含有量は、アセトン不溶分(A)100質量%に対して、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは70〜100質量%であり、さらに好ましくは80〜100質量%である。グラフト共重合体の含有量が上記範囲内であることにより、衝撃性により優れる傾向にある。
アセトン不溶分(A)の含有量は、アセトン不溶分(A)及びアセトン可溶分(B)の合計100質量%に対して、5〜18質量%であり、好ましくは7〜18質量%であり、より好ましくは10〜17質量%である。アセトン不溶分(A)の含有量が5質量%以上であることにより、耐衝撃性及び成形の離形性より向上する。また、アセトン不溶分(A)の含有量が18質量%以下であることにより、耐傷性及び耐熱性がより向上する。アセトン不溶分(A)の含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
〔アセトン可溶分(B)〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、アセトン可溶分(B)を含む。アセトン可溶分(B)は、構成単位の異なる1種又は2種以上の樹脂を含み、アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位には、少なくとも、芳香族ビニル単量体単位、不飽和ニトリル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位、及びマレイミド系単量体単位が含まれる。
ここで、「アセトン可溶分(B)」とは、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物をアセトンに溶解した場合に、アセトンに溶解される成分をいう。アセトン可溶分(B)は、実施例に記載の方法により特定することができる。
また、「アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位」とは、アセトン可溶分(B)に含まれる樹脂が1種である場合には、その樹脂を構成する全構成単位をいい、アセトン可溶分(B)に含まれる樹脂が2種以上である場合には、各樹脂を構成する構成単位全てをいう。すなわち、アセトン可溶分(B)に含まれる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂と、メタクリル酸エステル単量体単位を含む樹脂と、マレイミド系単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位及び不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂と、メタクリル酸エステル単量体単位を含む樹脂と、マレイミド系単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位及びメタクリル酸エステル単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂と、マレイミド系単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位及びマレイミド系単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂と、メタクリル酸エステル単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位及びメタクリル酸エステル単量体単位を含む樹脂と、マレイミド系単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位及びマレイミド系単量体単位を含む樹脂と、メタクリル酸エステル単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位、不飽和ニトリル単量体単位、及びメタクリル酸エステル単量体単位を含む樹脂と、マレイミド系単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位、不飽和ニトリル単量体単位、及びマレイミド系単量体単位を含む樹脂と、メタクリル酸エステル単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位、及びマレイミド系単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位を含む樹脂と、不飽和ニトリル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位、及びマレイミド系単量体単位を含む樹脂との組み合わせ;芳香族ビニル単量体単位、不飽和ニトリル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位、及びマレイミド系単量体単位を含む樹脂単独が挙げられる。
アセトン可溶分(B)に含まれる樹脂は、少なくとも2種類以上の共重合体の混合物であることが好ましい。また、2種類以上の共重合体は相溶することが好ましい。なお、2種類以上の共重合体が相溶するか否かは、Tgが1つに定まることにより確認することができる。
芳香族ビニル単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、スチレン単位、α−メチルスチレン単位、o−メチルスチレン単位、p−メチルスチレン単位、o−エチルスチレン単位、p−エチルスチレン単位、p−t−ブチルスチレン単位、及びビニルナフタレン単位等が挙げられる。このなかでもスチレン単位及びα−メチルスチレン単位が好ましい。芳香族ビニル単量体単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
不飽和ニトリル単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル単位、メタクリロニトリル単位及びエタクリロニトリル単位等が挙げられる。このなかでもアクリロニトリル単位が好ましい。不飽和ニトリル単量体単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
メタクリル酸エステル単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸ブチル単位、メタクリル酸エチル単位、メタクリル酸メチル単位、メタクリル酸プロピル単位、メタクリル酸イソプロピル単位、メタクリル酸シクロヘキシル単位、メタクリル酸フェニル単位、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)単位、メタクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)単位、メタクリル酸ベンジル単位、及びメタクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)単位等が挙げられる。このなかでもメタクリル酸メチル単位が好ましい。メタクリル酸エステル単量体単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
メタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対して、45〜60質量%であり、好ましくは52〜58質量%であり、より好ましくは53〜57質量%である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が45質量%以上であることにより、鉛筆硬度及び耐傷性がより向上する。また、メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が60質量%以下であることにより、耐衝撃性、及び成形時の離形性がより向上する。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
マレイミド単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、マレイミド単位、N−メチルマレイミド単位、N−エチルマレイミド単位、N−シクロヘキシルマレイミド単位、N−フェニルマレイミド単位、N−(o−クロロフェニル)マレイミド単位、N−(m−クロロフェニル)マレイミド単位、及びN−(p−クロロフェニル)マレイミド単位等が挙げられる。このなかでもN−シクロヘキシルマレイミド単位、N−フェニルマレイミド単位が好ましい。マレイミド系単量体単位は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
マレイミド単量体単位の含有量は、アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対して、好ましくは2.5〜15質量%であり、より好ましくは5.0〜12.5質量%であり、さらに好ましくは7.5〜10質量%である。マレイミド単量体単位の含有量が2.5質量%以上であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、マレイミド単量体単位の含有量が15質量%以下であることにより、成形性がより向上し、白モヤがより抑制され、外観がより向上する傾向にある。
その他共重合可能な単量体単位としては、アクリル酸エステル単量体単位等が挙げられる。アクリル酸エステル単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ブチル単位、アクリル酸エチル単位、アクリル酸メチル単位、アクリル酸プロピル単位、アクリル酸イソプロピル単位、アクリル酸シクロヘキシル単位、アクリル酸フェニル単位、アクリル酸(2−エチルヘキシル)単位、アクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)単位、アクリル酸ベンジル単位、及びアクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)などが挙げられる。
(ビニル系共重合体及びメタクリル系共重合体)
アセトン可溶分(B)に含まれる樹脂の組合せとしては、特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル単量体単位、不飽和ニトリル単量体単位、及びその他これらと共重合可能な他の単量体単位からなるビニル系共重合体、メタクリル酸エステル単量体単位、マレイミド系単量体単位、及びその他これらと共重合可能な他の単量体単位からなるメタクリル系共重合体の組み合わせが好ましい。アセトン可溶分(B)に含まれる樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アセトン可溶分(B)に含まれるビニル系共重合体中の不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは15〜28質量%であり、より好ましくは17〜27質量%であり、さらに好ましくは18〜25質量%である。不飽和ニトリル単量体単位の含有量が15質量%以上であることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、不飽和ニトリル単量体単位の含有量が28質量%以下であることにより、アセトン可溶分(B)に含まれるメタクリル系共重合体との相溶性、漆黒性等の意匠性がより向上する傾向にある。
アセトン可溶分(B)に含まれるビニル系共重合体は、ラジカル重合により製造されることが好ましい。ビニル系共重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、及び乳化重合法等が挙げられる。これらのうち、塊状重合法、溶液重合法、及び塊状懸濁重合法が好ましい。
ビニル系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは60,000〜300,000であり、より好ましくは80,000〜200,000であり、さらに好ましくは80,000〜150,000である。ビニル系共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、衝撃性、および成形性により優れる傾向にある。
アセトン可溶分(B)に含まれるメタクリル系共重合体中のメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは75〜97質量%であり、より好ましくは75〜95質量%であり、さらに好ましくは80〜95質量%である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が75質量%以上であることにより、鉛筆硬度及び漆黒性がより向上する傾向にある。また、メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が97質量%以下であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
アセトン可溶分(B)に含まれるメタクリル系共重合体中のマレイミド系単量体単位の含有量は、好ましくは3〜25質量%であり、より好ましくは5〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。マレイミド系単量体単位の含有量が3質量%以上であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、マレイミド系単量体単位の含有量が25質量%以下であることにより、アセトン可溶分(B)に含まれるビニル系共重合体との相溶性、白モヤ等の外観性がより向上する傾向にある。
アセトン可溶分(B)に含まれるメタクリル系共重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、及び乳化重合法等が挙げられる。これらにうち塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法が好ましい。
メタクリル系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは60,000〜300,000であり、より好ましくは60,000〜250,000であり、さらに好ましくは70,000〜230,000である。メタクリル系共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、衝撃性、および成形性により優れる傾向にある。
ビニル系共重合体及びメタクリル系共重合体の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
(自動車内装部品の特性)
本実施形態の自動車内装部品においてISO 306に準拠したビカット軟化点は、好ましくは105〜120℃であり、より好ましくは107〜119℃であり、さらに好ましくは110〜119℃である。ビカット軟化点が105℃以上であることにより、自動車内装部品に必要な耐熱性が満たされる傾向にある。また、ビカット軟化点が120℃以下であることにより、成形性及び漆黒等の意匠性がより向上し、白モヤがより抑制され、外観性がより向上する傾向にある。ビカット軟化点は、実施例に記載の方法により測定することができる。
ビカット軟化点を105〜120℃に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、アセトン可溶分(B)中に、ガラス転移点が150℃以上の、マレイミド系単量体単位を含む樹脂を添加する方法が挙げられる。マレイミド系単量体単位を含む樹脂のガラス転移点は、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは165℃以上であり、さらに好ましくは170℃以上である。ガラス転移点の上限は、特に制限はないが、好ましくは220℃以下である。ガラス転移点が150℃以上であることにより、ビカット軟化点を特定範囲に調整するために必要なマレイミド系単量体単位を含む樹脂の使用量を低減できるため、マレイミド系単量体単位を含む樹脂の過大な使用量に起因するアセトン不溶分(A)との相溶性の悪化、及び耐衝撃性の低下をより抑制できる傾向にある。
マレイミド系単量体単位の含有量は、熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは5〜13質量%であり、より好ましくは7〜10質量%である。マレイミド系単量体単位の含有量が5質量%以上であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、マレイミド系単量体単位の含有量が13質量%以下であることにより、成形性がより向上し、白モヤがより抑制され、外観がより向上する傾向にある。
本実施形態の自動車内装部品においてJIS Z8722に準拠した明度(L*)は、好ましくは6.5以下であり、より好ましくは6.2以下であり、さらに好ましくは6.1以下である。明度(L*)は、小さければ小さいほど、漆黒性が高いことを意味しており、明度(L*)が上記範囲内であることにより、漆黒性がより向上する傾向にある。明度(L*)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
明度(L*)を6.5以下に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂の透明性を上げる方法が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物の透明性を上げる方法としては、アセトン可溶分(B)に含まれうるビニル系共重合体とメタクリル系共重合体が相溶する方法、及び/又はアセトン不溶分(A)のゴム成分単位の質量平均粒子径を特定範囲に調整する方法が挙げられる。
アセトン可溶分(B)に含まれうるビニル系共重合体とメタクリル系共重合体を相溶させるには、ビニル系共重合体中の不飽和ニトリル単量体単位の割合、及びメタクリル系共重合体中のマレイミド系単量体の割合を調整する方法が挙げられる。
また、ゴム成分単位の質量平均粒子径は、小さいほど熱可塑性樹脂組成物の透明性は高くなる傾向にあるが、耐衝撃性が低下する傾向にある。そのため、本実施形態では、ゴム成分単位の質量平均粒子径を所定の範囲に調整することで目標の明度を達成している。
本実施形態の自動車内装部品においてJIS K5400に準拠した鉛筆硬度は、好ましくはHB以上であり、より好ましくはF以上である。鉛筆硬度がHB以上であることにより、自動車室内で成形体を用いた場合の耐傷性がより向上する傾向にある。鉛筆硬度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態において、鉛筆硬度をHB以上に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、アセトン可溶分(B)中に含まれうるメタクリル酸エステル単量体単位の含有量を調整する方法が挙げられる。
アセトン可溶分(B)中に含まれうるメタクリル酸エステル単量体単位の含有量を増やすと鉛筆硬度は高くなる傾向にあるが、マレイミド系単量体単位の含有量が減るため、耐熱性が低下する傾向にある。ゴム成分、及びアセトン不溶分(A)の含有量は、少ないほど鉛筆硬度は高くなる傾向にあるが、耐衝撃性、成形時の離形性が低下する傾向にある。そのため、本実施形態では、これらを特定範囲に調整することで目標の鉛筆硬度を達成している。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物の260℃における質量減少率は、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.9%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下である。260℃における質量減少率が1%以下であることにより、白モヤや揮発性ガス等が抑制されるため、外観性がより向上する傾向にある。質量減少率とは、試験前後で質量が減少した割合を表すものである。「260℃における質量減少率」は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、白モヤが発生しにくいという効果を有する。「白モヤ」とは、漆黒等の射出成形体において、成形品全体、又は一部分が曇ったように見える現象をいう。この白モヤは、樹脂の圧力や温度が変化する部分等に発生する傾向にあり、厚みが薄くかつ小さい曲率半径を持ったコーナーを有する付近やゲートや流動末端付近等にも発生することがある。その原因は、ゴム成分の配向やポリマーアロイにおける相溶性等にあると考えられる。樹脂圧力が成形品内部で異なることで、射出成形体内においてゴム成分単位が球状、及び球状が伸ばされたような卵状等の形状で存在し、成形品表面から見た場合、光の透過性が異なり曇ったように見える。また、ポリマーアロイの場合、樹脂温度により樹脂同士の相溶性が異なることで、樹脂そのものが曇り、成形品が曇ったように見える。ポリマーアロイのような高分子混合では、一般的に相溶性を相図で示す(例えば、実用ポリマーアロイ設計 2.3 相溶性と相図 発行所:工業調査会 参照)。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物で用いられる樹脂組成は、LCST(Lower critical solution temperature)タイプであることから、臨界となるCloud Pointが存在する。この温度が成形温度より大幅に高い場合には、安定的な相溶性を示すが、成形温度より低い、或いは近い場合には、相溶性が不安定となる。本実施形態では、これらの原因を突き止め、所定のゴム粒径と、Cloud Pointの高い樹脂組成の組み合わせにすることで成形品の白モヤが改善できることを見出した。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、シルバーが発生しにくいという効果を有する。「シルバー」とは、樹脂中の水分、揮発分、分解ガス、スクリュ(Screw)の回転による空気の巻き込みなどにより、樹脂表面にキラキラした銀白色の条痕のもの、比較的短い泡状のものなどが発生し、外観を損なう現象をいう。
〔その他の添加剤〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、摺動補助剤を含有してもよい。摺動補助剤は、自動車内装部品表面に滑性を付与することを目的とするものである。摺動補助剤の含有量は、漆黒性や耐衝撃性の点で0.05〜2質量%であることが好ましい。
摺動補助剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族金属塩等の滑剤、ポリオレフィン類、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。このなかでも、脂肪酸金属塩、及びアミド基又はエステル基を有する滑剤を少なくとも1種以上含むことが好ましい。このような摺動補助剤を含むことにより耐傷性がより向上する傾向にある。
脂肪酸金属塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛から選ばれる1種以上が含まれた金属と脂肪酸の塩が挙げられる。このような脂肪酸金属塩としては、特に限定されないが、具体的には、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム(モノ、ジ、トリ)、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸カルシウムが挙げられる。このなかでも、好ましくは、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛であり、より好ましくはステアリン酸系の金属塩であり、さらに好ましくはステアリン酸カルシウムである。このような脂肪酸金属塩を含むことにより耐傷性がより向上する傾向にある。
ポリオレフィン類としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、α−オレフィン等の少なくとも1種以上から生成される組成物が挙げられる。なお、ポリオレフィン類は該組成物を原料に誘導された組成物も含む。このようなポリオレフィン類としては、特に限定されないが、具体的には、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン(高密度、低密度、直鎖状低密度)、酸化型ポリオレフィン、グラフト重合ポリオレフィン等が挙げられる。これらのうち、酸化型ポリオレフィンワックス、スチレン系樹脂をグラフトしたポリオレフィンが耐傷付き性の点で好ましく、より好ましくは、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、アクリロニトリル−スチレン共重合体グラフトポリプロピレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体グラフトポリエチレン、スチレン重合体グラフトポリプロピレン、及びスチレン重合体グラフトポリエチレンである。
ポリエステルエラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物との重縮合体、オキシカルボン酸化合物の重縮合体、ラクトン化合物の開環重縮合体、或いはこれらの各成分の混合物の重縮合体等によって得られるポリエステルが挙げられる。ホモポリエステル又はコポリエステルの何れを用いてもよい。
上記ジカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;及びこれらのジカルボン酸の混合物;これらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等が挙げられる。また、これらのジカルボン酸化合物は、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステルのような低級アルコールエステルの形で使用することも可能である。本実施形態においては、これらのジカルボン酸化合物を単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。このうち、特にテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸及びドデカンジカルボン酸が重合性、色調及び耐衝撃性の点から好ましく用いられる。
上記ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブテンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等;これらのポリオキシアルキレングリコール及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記オキシカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等;これらのアルキル、アルコキシ及びハロゲン置換体が挙げられる。これらのオキシカルボン酸化合物は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ポリエステルエラストマーの製造のために、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を用いることもできる。
ポリアミドエラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又はm+nが12以上のナイロンmn塩等が挙げられる。ポリアミドエラストマーのハードセグメントとしては、特に限定されないが、例えば、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナン酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノベルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸;カプロラクタムラウロラクタム等のラクタム類;ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11,6、ナイロン11,10、ナイロン12,6、ナイロン11,12、ナイロン12,10、ナイロン12,12等のナイロン塩が挙げられる。
また、ポリアミドエラストマーのソフトセグメントとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとのブロック又はランダム共重合体等のポリオールが挙げられる。これらのソフトセグメントの数平均分子量は好ましくは2.0×10〜6.0×10であり、より好ましくは2.5×10〜4.0×10である。なお、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの両末端を、アミノ化又はカルボキシル化して用いてもよい。
これらの摺動補助剤の中では、耐傷性の点で特にステアリン酸系金属塩とワックス類を併用したものがよい。摺動補助剤を添加する場合には、その相容性を向上させる目的で、酸変性或いはエポキシ変性した変性樹脂を混合してもよい。
また、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、ホスファイト系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、及びシアノアクリレート系化合物等の紫外線吸収剤及び酸化防止剤;高級脂肪酸、酸エステル系化合物、酸アミド系化合物、及び高級アルコール等の滑剤及び可塑剤;モンタン酸、その塩、そのエステル、及びそのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイド、並びにエチレンワックス等の離型剤;亜リン酸塩、次亜リン酸塩等の着色防止剤;核剤;アミン系化合物、スルホン酸系化合物、ポリエーテル系化合物等の帯電防止剤;1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニル=ホスフェート)、テトラフェニル−m−フェニレンビスホスフェート、フェノキシホスホリル、フェノキシホスファゼン等のリン系難燃剤;ハロゲン系難燃剤等の添加剤を含んでもよい。耐候性の点から、これら添加剤の含有量は、それぞれ好ましくは0.05〜1質量%である。
また、意匠性をより向上させる観点から、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、公知の着色剤含んでもよい。公知の着色剤としては、特に限定されないが、例えば無機顔料、有機系顔料、メタリック顔料、染料が挙げられる。着色剤の中では、自動車内装部品の色を白、黒、赤、にするものが、自動車内装部品の意匠に、特に際立った高級感を付与するので、好ましく用いられる。
無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料等が挙げられる。
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等が挙げられる。
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、リン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属をメッキやスパッタリングで被覆したもの等が挙げられる。
染料としては、特に限定されないが、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料等が挙げられる。
これらの着色剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
色調をより向上させる観点から、これら着色剤の添加量は、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%である。
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、原料を押出機等で混練する方法が挙げられる。混練手段としては、特に限定されないが、例えば、オープンロール、インテシブミキサー、インターナルミキサー、コニーダー、二軸ローター付の連続混練機、押出機等の混和機が挙げられる。このなかでも、単軸、又は二軸押出機が一般的に用いられる。
熱可塑性樹脂組成物の原料を溶融混練機に供給する方法としては、特に限定されないが、例えば、全ての原料を同一の供給口に一度に供給してもよいし、原料をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。例えば、投入口を2ヶ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口からアセトン可溶分(B)となる成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口からアセトン不溶分(A)となる成分を供給して溶融混練する方法が挙げられる。また、原料全てを同一の供給口から供給する場合、予め全てを混合した後、押出機ホッパーに投入して混練してもよい。
好ましい溶融混練温度は、ISO 306に準拠したビカット軟化点により異なる。具体的には、シリンダー設定温度で、ビカット軟化点よりも110〜180℃高い温度が好ましい。
また、押出機を用いる場合、シリンダー設定温度は、供給ゾーンを30〜200℃とし、溶融混練が行われる混練ゾーンの温度を、ビカット軟化点よりも110〜+180℃高い温度とすることが好ましい。温度設定をこのように二段階とすることにより、混練がスムーズに行われ、その後得られる自動車内装部品表面の外観性が一段と優れたものとなる。
溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂組成物を押出生産する際、射出成形機に供給する段階で、樹脂組成物中の揮発分は1500ppm以下であることが好ましい。揮発分の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、二軸押出機のシリンダーの中央部から押出機先端の間に設置されたベント孔から、減圧度−100〜−800hPaで揮発分を吸引することが好ましい。
押出された熱可塑性樹脂組成物は、直接切断してペレット化するか、又はストランドを形成した後ペレタイザーで切断してペレット化することができる。ペレットの形状は、円柱、角柱、球状等の一般的な形状をとり得るが、円柱型が好適である。
〔自動車内装部品の製造方法〕
本実施形態に係る自動車内装部品は、上記熱可塑性樹脂組成物からなる。自動車内装部品の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、射出圧縮成形、窒素ガスや炭酸ガス等によるガスアシスト成形、及び金型温度を高温化にする高速ヒートサイクル成形等が挙げられる。これらは組み合わせて用いることができる。好ましくは、ガスアシスト成形、高速ヒートサイクル成形、及びガスアシスト成形と高速ヒートサイクル成形の組合せである。
ここでいう「ガスアシスト成形」とは、一般的に公知な窒素ガスや炭酸ガスを用いた射出成形である。ガスアシスト成形としては、特に限定されないが、例えば、特公昭57−14968号公報等のように樹脂を金型キャビティ内に射出した後に、成形体内部に加圧ガスを注入する方法;特許3819972号公報等のように樹脂を金型キャビティ内に射出した後に、成形体の片面に対応するキャビティに加圧ガスを圧入する方法;特許3349070号公報等のように熱可塑性樹脂に予めガスを充填させ成形する方法が挙げられる。これらのうち、成形体の片面に対応するキャビティに加圧ガスを圧入する方法が好ましい。
本実施形態では、ヒケ、ソリ防止の保圧はガスアシストが好ましい。ヒケ、ソリ防止の保圧をガスアシストで行うことにより、金型温度が比較的高くとも、バリが発生しにくくなると共に、ヒケやソリを防止するため保圧時間を短くすることができる。
成形体の金型としては♯4000番手以上、好ましくは♯12000番手以上のヤスリで仕上げられた金型を使用することが好ましい。金型表面の算術平均表面粗さRaは好ましくは0.02μm以下であり、より好ましくは0.01μm以下である。このようなRaの金型を用いることで、深みのある漆黒性等の意匠性を有する自動車内装部品が得られる傾向にある。
金型の表面を上記算術平均表面粗さRaに調整する方法としては、特に制限はなく、ダイヤモンドヤスリ、砥石、セラミック砥石、ルビー砥石、GC砥石等により超音波研磨機或いは手作業で磨く方法が挙げられる。
また、用いる金型の鋼材は40HRC以上の焼入れ焼き戻し鋼が好ましく、さらに好ましくは50HRC以上である。金型を磨く代わりに、クロムめっきした金型を用いてもよいし、上述のように磨いた金型にクロムめっきをした金型を用いてもよい。
射出成形における金型温度は、好ましくはISO 306に準拠したビカット軟化点付近であり、より好ましくはビカット軟化点より−25℃〜ビカット軟化点より+20℃であり、さらに好ましくはビカット軟化点より−15℃〜ビカット軟化点より+5℃である。上記金型温度とすることにより、キャビティ表面への転写性がより向上し、より深みのある漆黒性に優れた自動車内装部品を得ることができる。
一般に、キャビティ表面温度を高くすると冷却までの時間が長くなるため、成形サイクルが長くなってしまう問題がある。そこで、キャビティ表面を短時間で加熱冷却する高速ヒートサイクル成形法を用いることが好ましい。これによって、鮮映性の向上と生産性を両立することができる。成形体の鮮映性に大きく影響する成形体表面の冷却速度は、好ましくは1〜100℃/秒であり、より好ましくは30〜90℃/秒であり、さらに好ましくは40〜80℃/秒である。射出成形におけるシリンダー設定温度は、ISO 306に準拠したビカット軟化点より105〜150℃高い温度が好ましく、ビカット軟化点より110〜+140℃高い温度がより好ましい。
また、スチーム配管や電熱線を内蔵させた金型を用いて、金型温度を上下させる成形法や、超臨界のCOを用いた成形法も好ましく使用できる。
射出成形時の樹脂(上記混練物)温度は、成形される樹脂に適した温度で成形されることが好ましい。例えば、ABS系樹脂、ゴム変性ポリスチレン、及びメチルメタクリレート系樹脂の場合には、220〜260℃の樹脂温度が好ましく、ポリカーボネートを含む樹脂の場合には、260〜300℃の樹脂温度が好ましい。
射出速度は、好ましくは1〜50mm/sであり、より好ましくは3〜30mm/sである。
本実施形態に係る自動車内装部品は、深みのある漆黒性を有することから無塗装の製品の筐体等に用いられることが好ましい。ここで、「自動車内装部品」とは、自動車の内装に用いられる、目に見える意匠部品である。特にヘッドインパクト試験が不要な非衝撃エリアに属される部品が好ましい。このような部品としては、具体的には、インジケーターカバー、ウィンドウフィニッシャ、ガーニッシュ、モール、及び各種スイッチ及びカバー類等が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂組成物は、その他の製品においても用いることができる。その他の製品としては、特に限定されないが、例えば、家庭用製品や日用品等が好ましく、特に需要者及び取引者の目に見える製品の部材として用いられることが好ましい。
自動車内装部品において無塗装で使用可能な材料には、漆黒性等の意匠性、耐傷性、及び耐衝撃性の他に高い耐熱性が必要となり、その上シルバー及び白モヤのない安定した綺麗な外観性が要求される。このような課題は自動車内装漆黒部品の無塗装化において初めて明らかになったものであり、このような性質を全て有する射出成形体を得ることは従来の知見では困難である。しかしながら、本実施形態に係る射出成形体であればこれら性質を具備するため自動車内装部品に好適に用いることができる。
自動車内装部品の形状は、特に限定されないが、例えば、板状のような薄い形状から、3次元的な厚みがある形状、及びコーナーが角張った多角形型の形状から曲面の多い形状等が挙げられる。また、自動車内装部品の大きさについても、特に限定されないが、例えば、10×10×10mmの範囲に含まれる小さい形状から、1、000×1、000×500の範囲に含まれる大きな形状等が挙げられる。
以下、実施例によって本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらによって何ら限定されるものではない。
(1)アセトン不溶分の抽出方法
射出成形体に含まれるアセトン不溶分の含有量は以下の方法により確認した。乾燥した遠沈管を1サンプルにつき2本準備し、遠沈管をデシケーター中で15分以上放冷後、電子天秤で0.1mgまで精秤した。射出成形体から約1gのサンプルを切削し遠沈管に計量し、0.1mgまで精秤した。メスシリンダーでアセトン約20mLを採取し遠沈管に入れ、シリコーン栓をして振とう機で2時間振とうした。振とう後、シリコーン栓に付着しているサンプルは、少量のアセトンを用いて遠沈管内へ落とした。2本の遠沈管を日立高速冷却遠心機のローターへ対角線上にセットし、遠心分離機を操作して、回転数20000rpmで60分間遠心分離した。
遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し、上澄み液をデカンテーションした。メスシリンダーでアセトン約20mLを採取し遠沈管に入れシリコーン栓をした後、振とう機で1時間振とうした。この(1時間振とうした後)上澄み液をデカンテーションし、アセトン約20mLを再投入してさらに1時間振とうする操作をもう一度繰り返した後、回転数20000rpmで50分間遠心分離した。
遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し、上澄み液をデカンテーションした。その後、2回目のデカンテーションと同様の操作をもう一度行った。
遠心分離終了後、メスシリンダーでアセトン約20mLを採取し、遠沈管に入れシリコーン栓をした後、回転数20000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し上澄み液をデカンテーションした。得られた沈殿物を80℃で30分間乾燥した後、130℃で30分間乾燥して、アセトン不溶分を得た。
(1−2)アセトン可溶分の抽出方法
上記の方法においてデカンテーションした上澄み液を収集し、アセトン成分を揮発により取り除くことでアセトン可溶分を得た。
(1−3)アセトン不溶分の含有量の測定方法
乾燥後、デシケーター中で30分以上放冷した。十分に放冷後、得られたアセトン不溶分を電子天秤で0.1mgまで精秤た。以下の式により、アセトン不溶分(A)及びアセトン可溶分(B)の合計100質量%に対するアセトン不溶分の含有量(質量%)を算出した。
アセトン不溶分の含有量(質量%)=[アセトン不溶分量(g)÷サンプル採取量(g)]×100
射出成形体が無機系不溶分を含んでいる場合における、アセトン不溶分(A)及びアセトン可溶分(B)の合計100質量%に対するアセトン不溶分の含有量(質量%)は以下の式により算出した。
アセトン不溶分(質量%)=[(無機系不溶分を含むアセトン不溶成分(質量%)−無機系不溶分(質量%))/(100−無機系不溶分(質量%))]×100
ここで、「無機系不溶分」とは、例えば着色顔料に用いられたチタン、ガラスファイバー、タルク、炭酸カルシウム等をいう。
(2)ゴム成分単位の質量平均粒子径
射出成形体からアセトン不溶分(A)を抽出し、60nm±2nmの超薄切片を切り出した。超薄切片をオスミニウム酸を用いて染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名H−600AB)により観察した。得られたTEM写真を画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製、製品名A像くん)で解析し、ゴム成分単位の質量平均粒子径を得た。
(3)メタクリル酸エステル単量体単位の含有量
熱分解ガスクロ法を用いアセトン可溶分(B)の組成分析を行い、アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対するメタクリル酸メチル単位の含有量を算出した。
(4)グラフト共重合体に含まれる不飽和ニトリル単量体単位の含有量
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR;株式会社パーキンエルマージャパン製、製品名Spectrum One)を用い、アセトン不溶分(A)の組成分析を行い、グラフトされた全構成単位100質量%に対する、グラフト共重合体に含まれる不飽和ニトリル単量体単位の含有量を算出した。
(5)グラフト率(%)
下記グラフト共重合体のグラフト率(%)は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて得られる吸収ピーク解析により求めた。
(6)還元粘度(dl/g)
下記共重合体の還元粘度(dl/g)は、下記の方法にて測定した。
熱可塑性樹脂をアセトンに溶解し、これを遠心分離機によりアセトン可溶分、及びアセトン不溶分に分離する。熱可塑性樹脂におけるゴム状重合体にグラフトしていない成分(非グラフト成分)の還元比粘度は、アセトン可溶分0.25gを2−ブタノン50mlにて溶解した溶液を、30℃にてCannon−Fenske型毛細管中の流出時間を測定することにより得られる。
(7)メタクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)
メタクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC;東ソー株式会社製、製品名HLC−8220GPC)により測定した。具体的な条件は、東ソー株式会社製分離カラム(TSKgel−GMHXLを3本使用)を用いて、温度38℃、溶媒テトラヒドロフラン、サンプル濃度0.1wt/v%、サンプリングピッチ1/0.4(回/秒)で行う。分離成分の分子量は、同社製TSK標準ポリスチレンの分子量と溶出時間の関係を3次回帰曲線として検量線を作成し、算出する。特定分子量含有量は、面積比により計算される。ピークトップ分子量は、ピーク高さが最大となる溶出時間に相当する分子量である。
(8)漆黒性(明度(L*))
JIS Z8722に準拠した機可条件C(de:8°)により射出成形体表面の明度(L*)を測定した。明度(L*)の測定には、分光測色計「CM−2002」(コニカミノルタ製)を用いた。具体的な条件は、光源D65、光束φ11mm、視野10°とした。サンプルとしては、特に制限はないが射出成形体の比較的平滑な部分を用いた。
(9)耐熱性(ビカット軟化点)
射出成形体を用いて、ISO306に準拠したB−120法により測定した。荷重は50N、昇温速度は、120℃/hとした。サンプルは、(幅)20〜30mm×(長さ)20〜30mm×(厚み)2〜4mm程度とした。なお、サンプルの厚みが2mmに満たない場合には、サンプルを何枚か重ねて用いることもできる。
(10)耐衝撃性(シャルピー衝撃値)
射出成形機(東芝機械株式会社製、製品名EC100S)を用い、シリンダー温度250℃、金型温度60℃にて、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(ISOダンベル試験片)を成形し、得られた試験片を80mm×10mm×4mmの形状に加工した後、ISO 179に従って所定のサイズのノッチ加工を行い試験した。試験の値は、試験片5本の平均値を用いた。
(11)質量減少率
ペレットを用い、TGA「MTC 1000SA」、「TG−DTA 2000SR」(Bruker社製)にて質量減少率を測定した。具体的には、90℃にて4時間乾燥し、水分を除去した後、100℃/minで260℃まで昇温し、260℃で30分間放置した後、質量を測定した。質量減量率は、試験前の質量(m1)を100%とし、試験後の質量(m2)とした場合、下記式で計算した。
質量減量率(%)=100−m2/m1×100
なお、昇温速度等が特に制限はないが、100℃/minで昇温するのが好ましい。
(12)耐傷性(鉛筆硬度)
射出成形体を用い、JIS K5400に準拠し測定した。
(13)外観性(白モヤ)
射出成形体全体を目視確認した。色調にムラや曇りがない場合を○と評価し、100mmの距離で確認できる場合を△と評価し、500mmの距離で確認できる場合を×と評価した。
(14)外観性(シルバー)
270℃にて射出成形体の表面を観察した。シルバーが確認できない場合を○と評価し、100mmの距離で確認できる場合を△と評価し、500mmの距離で確認できる場合を×と評価した。
(1)使用原料
(グラフト共重合体の製造例1)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.25μm、固形分量=50質量%、膨潤指数40%)110質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、及び脱イオン水25質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル12質量部、スチレンを48質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.5質量部、クメンハイドロパーオキシド0.15質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、製品名TSA737、以下同じ)、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョン(中京油脂株式会社製、製品名L−673、以下同じ)を添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させてグラフト共重合体(A−1)を得た。ここでは同時に熱可塑性樹脂であるビニル系共重合体(B−1)も得られた。グラフト共重合体(A−1)とビニル系共重合体(B−1)との割合は、74.9質量%と25.1質量%であった。グラフト共重合体(A−1)及びビニル系共重合体(B−1)を分析した結果を表1に示す。
(グラフト共重合体の製造例2)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.32μm、固形分量=50質量%、膨潤指数40%)110質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、及び脱イオン水25質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル16.2質量部、スチレンを43.8質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.5質量部、クメンハイドロパーオキシド0.15質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させてグラフト共重合体(A−2)を得た。ここでは同時に熱可塑性樹脂であるビニル系共重合体(B−2)も得られた。グラフト共重合体(A−2)とビニル系共重合体(B−2)との割合は、75.0質量%と25.0質量%であった。グラフト共重合体(A−2)及びビニル系共重合体(B−2)を分析した結果を表1に示す。
(グラフト共重合体の製造例3)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.32μm、固形分量=50質量%、膨潤指数40%)110質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、及び脱イオン水25質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル18質量部、スチレンを42質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.5質量部、クメンハイドロパーオキシド0.15質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させてグラフト共重合体(A−3)を得た。ここでは同時に熱可塑性樹脂であるビニル系共重合体(B−3)も得られた。グラフト共重合体(A−3)とビニル系共重合体(B−3)との割合は、75.0質量%と25.0質量%であった。グラフト共重合体(A−3)及びビニル系共重合体(B−3)を分析した結果を表1に示す。
(グラフト共重合体の製造例4)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.37μm、固形分量=50質量%、膨潤指数40%)110質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、及び脱イオン水25質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル18質量部、スチレンを42質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.5質量部、クメンハイドロパーオキシド0.15質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させてグラフト共重合体(A−4)を得た。ここでは同時に熱可塑性樹脂であるビニル系共重合体(B−4)も得られた。グラフト共重合体(A−4)とビニル系共重合体(B−4)との割合は、74.9質量%と25.1質量%であった。グラフト共重合体(A−4)及び共ビニル系共重合体(B−4)を分析した結果を表1に示す。
(ビニル系共重合体の製造例1)
アクリロニトリル13質量部、スチレン52質量部、溶媒としてトルエン35質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部からなる混合物を、窒素ガスを用いてバブリングさせた後、特許第3664576号の実施例2に記載されたものと同様の二段傾斜パドル型(傾斜角度45度)攪拌翼を供えた内容積150Lの反応槽に、スプレーノズルを用いて連続的に37.5kg/時間の速度で供給した。
重合温度は130℃とし、反応槽内での反応液の充満率が70容量%を維持できるように、供給液量と同量の反応液を連続的に抜き出した。反応槽の液相部相当部分には温調のためのジャケットが設けられ、ジャケット温度は128℃であった。
抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、生成したビニル系共重合体(B−5)をペレットとして回収した。ビニル系共重合体(B−5)を分析した結果を表1に示す。
(ビニル系共重合体の製造例2)
アクリロニトリル16質量部、スチレン49質量部、溶媒としてトルエン35質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を用い、温調ジャケット温度を129℃とした以外は、ビニル系共重合体の製造例1と同様の方法でビニル系共重合体(B−6)を製造した。
抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、生成したビニル系共重合体(B−6)をペレットとして回収した。ビニル系共重合体(B−6)を分析した結果を表1に示す。
(ビニル系共重合体の製造例3)
アクリロニトリル21質量部、スチレン47質量部、溶媒としてトルエン32質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を用い、温調ジャケット温度を128℃とした以外は、ビニル系共重合体の製造例1と同様の方法でビニル系共重合体(B−7)を製造した。
抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、生成したビニル系共重合体(B−7)をペレットとして回収した。ビニル系共重合体(B−7)を分析した結果を表1に示す。
(メタクリル系共重合体の製造例1)
4枚傾斜パドル翼を取り付けた攪拌機を有する容器に、水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39gを投入し、混合液を得た。次に、3枚後退翼を取り付けた攪拌機を有する60Lの反応器に水26kgを投入して80℃に昇温し、混合液、及びメタクリル酸メチル19,042g、スチレン1,393g、N−フェニルマレイミド2,787g、ラウロイロパーオキサイド40.64g、及びn−オクチルメルカプタン48.77gを投入した。約75℃を保って懸濁重合を行い、原料投入してから約120分後に発熱ピークが観測された。その後、93℃に1℃/minの速度で昇温した後、120分間熟成し、重合反応を実質終了した。次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入した。次に、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去した上で、水分を濾別し、得られたスラリーを脱水してビーズ状ポリマーを得、得られたビーズ状ポリマーを水洗浄した後、上記と同様に脱水し、更にイオン交換水で洗浄、脱水を繰り返して洗浄し、メタクリル系共重合体(M−1)を得た。得られたメタクリル系共重合体(M−1)は、メタクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体であった。メタクリル系共重合体(M−1)を分析した結果を表1に示す。
(メタクリル系共重合体の製造例2)
メタクリル酸メチル18,578g、スチレン1,161g、N−フェニルマレイミド3,019g、アクリル酸メチル464g、ラウロイロパーオキサイド40.32g、及びn−オクチルメルカプタン47.32gとした以外は、メタクリル系共重合体の製造例1と同様の方法でメタクリル系共重合体(M−2)を製造した。得られたメタクリル系共重合体(M−2)は、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体であった。メタクリル系共重合体(M−1)を分析した結果を表1に示す。
(メタクリル系共重合体の製造例3)
メタクリル酸メチル1,523g、スチレン284g、無水マレイン酸163g、ラウロイロパーオキサイド0.99g、及びn−オクチルメルカプタン4.93gとした以外は、メタクリル系共重合体の製造例1と同様の方法でメタクリル系共重合体(M−3)を製造した。得られたメタクリル系共重合体(M−3)は、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体であった。メタクリル系共重合体(M−1)を分析した結果を表1に示す。
(メタクリル系共重合体の製造例4)
メタクリル酸メチル22,440g、アクリル酸メチル694g、ラウロイロパーオキサイド46.27g、及びn−オクチルメルカプタン55.52gとした以外は、メタクリル系共重合体の製造例1と同様の方法でメタクリル系共重合体(M−4)を製造した。得られたメタクリル系共重合体(M−4)は、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体であった。メタクリル系共重合体(M−1)を分析した結果を表1に示す。
(メタクリル系共重合体の製造例5)
メタクリル酸メチル14,482g、スチレン2,758g、N−フェニルマレイミド5,747g、ラウロイロパーオキサイド34.48g、及びn−オクチルメルカプタン43.68gとした以外は、メタクリル系共重合体の製造例1と同様の方法でメタクリル系共重合体(M−5)を製造した。得られたメタクリル系共重合体(M−5)は、メタクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド−スチレン共重合体であった。メタクリル系共重合体(M−5)を分析した結果を表1に示す。
(その他着色剤例1)
三菱カーボンブラック#850(X−1)(商品名)(三菱化学(株)製 カーボンブラック、昇華温度3642℃)
(実施例1)
グラフト共重合体(A−1)15質量部、ビニル系共重合体(B−1)5質量部、ビニル系共重合体(B−5)15質量部、ビニル系共重合体(B−6)5質量部、メタクリル系共重合体60質量部、着色剤(X−1)0.5質量部を混合し、これを2軸押出機(Coperion社製「ZSK−25」)のホッパーに投入し、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量10kg/hrにてペレットを作製した。作製されたペレットを樹脂温度250℃、金型温度70℃、射出速度20mm/sにて射出成形(東芝機械製「EC100」)を行い、50mm×90mm×2.5mmの平板の射出成形体を作製した。なお、シルバーを確認する際には、樹脂温度270℃とした以外は、平板作製と同様の方法で射出成形体を作製した。
(実施例2〜6、比較例1〜7)
表2記載の組成にて、実施例1と同様の方法でペレット、及び射出成形体を得た。
Figure 0006165263
Figure 0006165263
以上より、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、漆黒性、耐傷性、耐熱性、及び耐衝撃性を有し、シルバーや白モヤのない安定した綺麗な外観を有する射出成形体を与えることがわかる。
本出願は、2013年11月11日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2013−233402)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の自動車内装部品は、漆黒性、耐傷性、及び耐熱性を有し、シルバーや白モヤのない安定した綺麗な外観を有し、耐衝撃性に優れるため、塗装や加飾等を必要とせず、意匠性に優れることから経済的、環境的に有用である。

Claims (5)

  1. アセトン不溶分(A)と、アセトン可溶分(B)と、を含み、
    前記アセトン不溶分(A)の含有量が、前記アセトン不溶分(A)及び前記アセトン可溶分(B)の合計100質量%に対して、5〜18質量%であり、
    前記アセトン不溶分(A)は、構成単位の異なる1種又は2種以上の樹脂を含み、前記アセトン不溶分(A)に含まれる全樹脂の構成単位には、少なくとも、質量平均粒子径0.1〜0.35μmのゴム成分単位、芳香族ビニル単量体単位、及び不飽和ニトリル単量体単位が含まれ、
    前記アセトン不溶分(A)が、前記ゴム成分単位に、少なくとも前記不飽和ニトリル単量体単位がグラフトされたグラフト共重合体を含み、
    該グラフト共重合体に含まれる前記不飽和ニトリル単量体単位の含有量が、グラフトされた全構成単位100質量%に対して、15〜28質量%であり、
    前記アセトン可溶分(B)は、構成単位の異なる1種又は2種以上の樹脂を含み、前記アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位には、少なくとも、芳香族ビニル単量体単位、不飽和ニトリル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位、及びマレイミド系単量体単位が含まれ、
    前記メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が、前記アセトン可溶分(B)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対して、45〜60質量%である熱可塑性樹脂組成物からなる、
    自動車内装部品。
  2. 前記熱可塑性樹脂組成物のISO 306に準拠したビカット軟化点が、105〜120℃である、請求項1に記載の自動車内装部品。
  3. 前記マレイミド系単量体単位の含有量が、前記熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、5〜13質量%である、請求項1又は2に記載の自動車内装部品。
  4. 前記ゴム成分単位が、ジエン系ゴム単位を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車内装部品。
  5. 前記ゴム成分単位の含有量が、前記アセトン不溶分(A)に含まれる全樹脂の構成単位100質量%に対して、30〜60質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車内装部品。
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