JP5236868B2 - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
特許文献2によると、連続相及び分散相の各屈折率を略一致させることにより、例えば、AS樹脂の屈折率を高くすることにより、半透明化又は透明化を図っているが、耐衝撃性が未だ不十分である。また、芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する組成物は、成形加工に際して溶融状態とした場合、樹脂の分解による低分子化や、異物の発生を招くことがある。これらの現象は、更に組成物の着色、粘度の低下等を導き、安定した成形加工が進められない場合がある。
本発明の目的は、押出加工、成形加工等による熱可塑性樹脂成形品の製造において、熱履歴による品質低下の影響を受けにくい等、加工条件の許容範囲が広く、半透明性、耐衝撃性、耐熱性及び流動性に優れた、ゴム強化樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂及びリン酸系化合物を必須成分とする熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いてなる成形品を提供することにある。
[1]〔A〕屈折率が1.530〜1.570の範囲にあり、且つ、スチレン単位の含有量が20〜75質量%であるスチレン・ブタジエン共重合体からなるゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物75〜95質量%及びシアン化ビニル化合物5〜25質量%(但し、これらの合計を100質量%とする。)からなるビニル系単量体(b)を重合して得られるゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と上記ビニル系単量体(b)の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂と、〔B〕ポリカーボネート樹脂と、〔D〕リン酸系化合物と、を含有し、上記ゴム強化樹脂〔A〕及び上記ポリカーボネート樹脂〔B〕の含有量は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜60質量%及び40〜95質量%であり、上記リン酸系化合物〔D〕が、下記式で表される有機リン酸エステルであり、
O=P(OR) s (OH) 3−s
〔式中、各Rは、独立して、炭素数1〜30の炭化水素基であり、sは1又は2である。〕
上記リン酸系化合物〔D〕の含有量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕及び上記ポリカーボネート樹脂〔B〕の合計を100質量部とした場合に、0.01〜5質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2]上記ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が、0.17〜0.6μmである上記[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]上記ゴム質重合体(a)の含有量が、組成物に対して、3〜10質量%である上記[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]上記スチレン・ブタジエン共重合体を構成するスチレン単位の含有量が、すべての単量体単位の合計を100質量%とした場合に、30〜45質量%である上記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]更に、〔C〕ポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂〔C〕の含有量が、上記ゴム強化樹脂〔A〕及び上記ポリカーボネート樹脂〔B〕の合計を100質量部とした場合に、1〜40質量部である上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]上記ポリエステル樹脂〔C〕が、非晶性ポリエステル樹脂である上記[5]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7]上記非晶性ポリエステル樹脂が、ジカルボン酸類と、炭素数2〜12のアルキレングリコール及び脂環族ジオールを含むジオール類との縮重合体である上記[6]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8]上記アルキレングリコールがエチレングリコールであり、且つ、脂環族ジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールである上記[7]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9]厚さ2.5mmの試験片に対して、ASTM D1003に準じて測定された全光線透過率が45〜70%である上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[10]上記[1]乃至[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
ゴム強化樹脂〔A〕を形成するゴム質重合体(a)が、スチレン・ブタジエン系共重合体であり、該スチレン・ブタジエン系共重合体を構成するスチレン単位の含有量が所定の範囲にあるので、特に、半透明性、耐衝撃性及び流動性に優れる。
リン酸系化合物〔D〕が、上記式で表される化合物であるので、成形加工の際に、特に、熱履歴の影響を受けにくく、得られる成形品の変色が抑制され、成形加工の条件の許容範囲が広くなる。
また、上記ゴム強化樹脂〔A〕及び上記ポリカーボネート樹脂〔B〕に、更に、ポリエステル樹脂〔C〕を含有する組成物は、更に耐衝撃性に優れ、半透明性の度合いの調整も容易である。
従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品は、半透明性、耐衝撃性及び耐熱性に優れ、光を透過させて装飾性を付与しやすく、例えば、自動車等の車両の内装部品に好適である。
尚、本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。また、「屈折率」は、プレス成形により厚さ100〜500μmのフィルムを作製し、アッベの屈折率計により25℃で測定した値であるが、共重合体の屈折率については、該共重合体の構成単位を100質量%含む単独重合体のそれぞれの25℃における屈折率の値を用い、構成単位の含有割合に応じた計算値とすることができる。
O=P(OR) s (OH) 3−s
〔式中、各Rは、独立して、炭素数1〜30の炭化水素基であり、sは1又は2である。〕
この成分〔A〕は、屈折率が1.530〜1.570の範囲にあり、且つ、スチレン単位の含有量が20〜75質量%であるスチレン・ブタジエン共重合体からなるゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物75〜95質量%及びシアン化ビニル化合物5〜25質量%(但し、これらの合計を100質量%とする。)からなるビニル系単量体(b)を重合して得られるゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と上記ビニル系単量体(b)の(共)重合体(A2)との混合物、からなるものである。
スチレン単位の含有量は、20〜75質量%、更に好ましくは25〜65質量%である。スチレン単位の含有量が多すぎると、耐衝撃性が低下する傾向にある。一方、該含有量が少なすぎると、成形品が不透明となる傾向にある。
上記ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径は、好ましくは80〜15,000nm、より好ましくは100〜15,000nm、更に好ましくは100〜3,000nm、より更に好ましくは200〜2,000nm、特に好ましくは500〜2,000nmである。該体積平均粒子径が上記範囲外の場合、耐衝撃性が十分でないことがある。尚、上記体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法等により測定することができる。
上記ゴム強化共重合樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合による方法で製造することができる。これらのうち、乳化重合が好ましい。
尚、製造時に用いるゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)は、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b)を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
尚、ビニル系単量体(b)の種類別の使用量は下記の通りである。
芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の各使用量は、ビニル系単量体(b)の全量を100質量%とした場合に、それぞれ、75〜95質量%及び5〜25質量%である。
シアン化ビニル化合物の使用量が少なすぎると、成分〔A〕及び〔B〕のあいだの相溶性が低下し、耐衝撃性も低下する場合がある。一方、シアン化ビニル化合物の使用量が多すぎると、熱安定性が低下する傾向にある。
尚、上記凝固剤として、無機塩を用いた場合、ゴム強化共重合樹脂(A1)に残存し、本発明の組成物中にも含有されることとなる。無機塩が含有されると、本発明の組成物中の成分〔B〕の分子量低下を招くことがあり、その結果、耐衝撃性が低下する傾向にある。従って、上記凝固剤としては、無機酸及び/又は有機酸を用いることが好ましい。
上記溶媒としては、公知のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;ジクロルメチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を用いることができる。
上記連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン類等が挙げられる。
上記ゴム強化共重合樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜100質量%、更に好ましくは30〜80質量%である。このグラフト率が10質量%未満では、ゴム質重合体(a)と、ビニル系単量体(b)の共重合体との界面接着強度が劣るため、耐衝撃性が十分でない場合がある。一方、100質量%を超えると、ビニル系単量体(b)の共重合体からなる界面層が厚くなり、また、ゴム質重合体(a)の内部にグラフトした共重合体からなる層が発達するため、ゴム弾性が低下し、耐衝撃性が十分でない場合がある。
尚、上記グラフト率は、下記式により求められる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sは、ゴム強化共重合樹脂(A1)1グラムをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で1時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは、ゴム強化共重合樹脂(A1)1グラムに含まれるゴム質重合体(a)の質量(g)である。
従って、上記成分〔A〕としては、ゴム強化共重合樹脂(A1)の1種以上であってよいし、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)の1種以上と、上記共重合体(A2)の1種以上との混合物であってもよい。
芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の各使用量は、ビニル系単量体(b)の全量を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは75〜95質量%及び5〜25質量%、より好ましくは75〜90質量%及び10〜25質量%、更に好ましくは75〜85質量%及び15〜25質量%である。
また、上記アセトン可溶分の多分散度、即ち、GPCにより得られた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.3〜5、より好ましくは1.5〜4、更に好ましくは1.5以上3未満である。このMw/Mn比が大きすぎると、成形加工性が低下する傾向がある。
尚、上記数平均粒子径は、上記成分〔A〕又は本発明の組成物又はその成形品からなる薄片を、OsO4又はRuO4の溶液に浸漬することにより染色した後、透過型電子顕微鏡で観察し、例えば、100個のゴム質重合体の粒子について測定された粒子径の平均値とすることができる。
この成分〔B〕は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば特に限定されない。
上記成分〔B〕は、芳香族ポリカーボネートでよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、この成分〔B〕は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。この成分〔B〕は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この成分〔D〕は、下記式で表される有機リン酸エステルである。
O=P(OR) s (OH) 3−s
〔式中、各Rは、独立して、炭素数1〜30の炭化水素基であり、sは1又は2である。〕。
この成分〔D〕を含有することにより、押出加工、成形加工等の際に、本発明の組成物が、熱履歴の影響を受けにくくなるため、半透明性、耐衝撃性及び耐熱性に優れた成形品を安定して製造することができる。また、本発明の組成物を溶融混練する際に、ポリカーボネート樹脂の分子量低下を抑制することができることから、成形品の表面が変色することなく、所望の外観を有する成形品を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、他の重合体成分、添加剤等を含有したものとすることができる。
他の重合体成分としては、特に限定されないが、熱可塑性重合体が好ましい。この熱可塑性重合体としては、樹脂、アロイ及びエラストマーが挙げられ、これらは、各々、単独であるいは組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;オレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール樹脂(POM);ポリアリレート樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;フッ素樹脂;イミド系樹脂;ケトン系樹脂;スルホン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;液晶ポリマー;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、ポリエステル樹脂が好ましい。
上記成分〔C〕は、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル及び脂環族ポリエステルのいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。これらのポリエステルは、各々、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この成分〔C〕を含有することにより、耐衝撃性をより向上させることができる。
更に、p−オキシ安息香酸及びp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のような、オキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体を用いることもできる。
上記ジカルボン酸類は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、必要に応じて、長鎖型のジオール化合物(ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合体等(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加重合体等)等を用いることもできる。
上記ジオール類は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(ア)1種のジカルボン酸類と、2種以上のジオール類との縮重合体。
(イ)2種以上のジカルボン酸類と、1種のジオール類との縮重合体。
(ウ)2種以上のジカルボン酸類と、2種以上のジオール類との縮重合体。
上記縮重合体は、例えば、特表平9−509449号等に開示されている。
尚、本発明において、「非晶性」とは、加熱処理を行っても結晶化による物性の変化を起こすことのない性質をいい、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用いて熱分析を行った場合に、結晶化に基づく発熱ピークを示さないこと、あるいは、外観的に白濁又は白化を生じないことにより確認することができる。
粉末状の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化マグネシウム、ワラストナイト、ミルドファイバー等が挙げられる。
繊維状の充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、酸化亜鉛ウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー等が挙げられる。好ましい繊維径は6〜60μmであり、好ましい繊維長さは、30μm以上である。
塊状の充填剤としては、ガラスビーズ、中空ガラス、ロックフィラー等が挙げられる。
板状の充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。
上記の充填剤を用いることにより、剛性及び耐熱変形性を付与することができる。尚、炭酸カルシウム及びタルクを用いた場合には、成形品の表面に艶消し性を付与することができる。
上記滑剤としては、エチレンビスステアリルアミド、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体等が挙げられる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリエーテル、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。
ラクトン系化合物としては、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等が挙げられる。
好ましい製造方法は、押出機を用いる方法であり、二軸押出機を用いることが特に好ましい。
射出成形では、通常の成形法のほか、ガスアシスト成形、インモールド成形、二色成形、サーモエジェクト成形、サンドイッチ成形等により、成形品を得ることができる。
シート押出成形では、平滑シート、表面にエンボス模様等を有するシート等を得ることができる。
真空成形では、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト・リバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、エアクッション成形、プラグアシスト・エアスリップ成形、フリー成形、マッチドモールド成形、プラグリング成形、スリップ成形、接触加熱成形等により、成形品を得ることができる。
成形品とする場合には、通常、本発明の組成物を200〜280℃、好ましくは210〜270℃に加熱し、溶融させた後、加工される。
また、各種成形品は、用途等に応じて、塗装、スパッタリング、溶着等の二次加工を施してもよい。
下記の実施例及び比較例における、各評価項目の測定方法を以下に示す。
(1)体積平均粒子径
ゴム強化共重合樹脂(A1)の調製に用いたラテックス中の分散粒子(ゴム質重合体(a))の体積平均粒子径を、レーザー粒径解析装置(型式「LPA−3100」、大塚電子社製)により、光散乱法で測定し、70回積算でキュムラント法により算出した。尚、熱可塑性樹脂組成物を製造後、該組成物に含まれるグラフト化されたゴム質重合体の数平均粒子径は、上記ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径とほぼ同じであることを透過型電子顕微鏡で確認した。
(2)グラフト率
本文中に記載した。
(3)固有粘度[η]
ゴム強化共重合樹脂(A1)のアセトン可溶分、及び共重合体(A2)について、それぞれ、メチルエチルケトンに溶解し、30℃における固有粘度[η]を、ウベローデ型粘度計を用いて測定した。
ASTM D1238に準じ、温度240℃、荷重10kgでメルトフローレート(MFR)を測定した。
(5)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準じて測定した。試験片の大きさは、2.5×1/2×1/4インチであり、ノッチ付きである。
(6)全光線透過率
ASTM D1003に準じて測定した。試験片の厚さは、2.5mmである。
(7)ヘイズ
ASTM D1003に準じて測定した。試験片の厚さは、2.5mmである。
(8)熱変形温度
ASTM D648に準じ、荷重18.56kg/cm2で熱変形温度(HDT)を測定した。試験片の厚さは、1/2インチである。
(9)MFR保持率
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを、除湿乾燥機を用いて十分に乾燥した後、温度95℃及び湿度98%の条件下に200時間放置し、放置前後のMFRの比を算出し、MFR保持率を得た。
(10)滞留後の落錘強度保持率
新潟鐵工所社製射出成形機「NN30B型」を用い、下記のような異なる成形条件により、大きさが2.5×100×100mmである板状成形品(以下、「試験片P」及び「試験片Q」という。)を作製し、ASTM D2794に準じ、23℃でデュポン式衝撃強さを測定し、下記式により滞留後の落錘強度保持率を得た。
試験片P;シリンダー温度を270℃に設定した後、熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを供給し、40秒サイクルで板状成形品を作製し、5ショット目を試験片Pとした。
試験片Q;シリンダー温度を270℃に設定した後、熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを供給し、40秒サイクルで板状成形品を5ショット作製した後、15分間滞留させ、次いで、40秒サイクルで板状成形品を作製し、4ショット目を試験片Qとした。
(11)滞留後のΔE
新潟鐵工所社製射出成形機「NN30B型」を用い、下記のような異なる成形条件により、大きさが2×50×80mmである板状成形品(以下、「試験片X」及び「試験片Y」という。)を作製し、多光源分光測定計(スガ試験機社製)を用いて、各Lab値(L;明度、a;赤色度、b;黄色度)を測定し、下記式によりΔEを得た。
試験片X;シリンダー温度を270℃に設定した後、熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを供給し、40秒サイクルで板状成形品を作製し、5ショット目を試験片Xとした。
試験片Y;シリンダー温度を270℃に設定した後、熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを供給し、40秒サイクルで板状成形品を5ショット作製した後、15分間滞留させ、次いで、40秒サイクルで板状成形品を作製し、4ショット目を試験片Yとした。
ΔE=√{(L1−L2)2+(a1−a2)2+(b1−b2)2}
(式中、L1、a1及びb1は、各々、試験片Xの色調を、L2、a2及びb2は、各々、試験片Yの色調を示す。)
ΔEは、小さいほど、色の変化が小さく、色調が優れていることを示す。
熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料成分を以下に示す。
2−1.成分〔A〕
2−1−1.ゴム強化共重合樹脂(A1)
製造例1
攪拌装置を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、ゴム質重合体(a)として、体積平均粒子径が0.17μmであり且つスチレン単位量が30%のスチレン・ブタジエン共重合体(以下、スチレン・ブタジエン共重合体を「SBR」と表記する。)50部(固形分換算)と、スチレン7.5部と、アクリロニトリル2.5部と、不均化ロジン酸ナトリウム1.5部と、tert−ドデシルメルカプタン0.1部と、イオン交換水100部とを充填し、攪拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部及びイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部とを添加し、1時間反応を続けた。
その後、反応系に、イオン交換水50部、不均化ロジン酸ナトリウム1部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルヒドロパーオキサイド0.2部、スチレン30部及びアクリロニトリル10部からなるインクレメント重合用成分を3時間にわたって連続的に添加し、攪拌しながら重合反応を続けた。該インクレメント重合用成分の全量を添加した後、更に攪拌を1時間続け、ゴム強化共重合樹脂(A1−1)を含むラテックスを得た。
次いで、反応系に、老化防止剤としての2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加した。その後、樹脂成分等を含むラテックスに、硫酸2部を添加して、凝固し、凝固物を十分に水洗した。その後、75℃で、24時間乾燥し、白色粉末を得た。重合転化率は97%、グラフト率は80%、アセトン可溶分の固有粘度[η]は0.50dl/gであった(表1参照)。
屈折率 = 1.591×0.3 + 1.515×0.7
= 1.538
ゴム質重合体(a)として、表1に示す、体積平均粒子径及びスチレン単位量を有するスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)を用いた以外は、製造例1と同様にして、ゴム強化共重合樹脂(A1−2)〜(A1−4)を得た。尚、グラフト率及びアセトン可溶分の固有粘度[η]は、表1に併記した。
ゴム質重合体(a)として、表1に示す、体積平均粒子径を有するポリブタジエン(以下、ポリブタジエンを「BR」と表記する。)を用いた以外は、製造例1と同様にして、ゴム強化共重合樹脂(A1−5)を得た。尚、グラフト率及びアセトン可溶分の固有粘度[η]は、表1に併記した。
製造例6
攪拌装置を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、スチレン75部と、アクリロニトリル25部と、オレイン酸ナトリウム1.5部と、tert−ドデシルメルカプタン0.1部と、イオン交換水300部とを加え、攪拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、過硫酸カリウム0.8部及び酸性亜硫酸ナトリウム0.2部を添加し、3時間反応を行い、アクリロニトリル・スチレン共重合体(A2−1)を含むラテックスを得た。
その後、攪拌を1時間続け、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加した。次いで、樹脂成分等を含むラテックスに、硫酸2部を添加して、凝固し、凝固物を十分に水洗した。その後、75℃で、24時間乾燥し、白色粉末を得た。固有粘度[η]は、0.45dl/gであった。
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート樹脂「ノバレックス7022PJ」(JIS K7210に準ずるMFR(温度240℃、荷重10kg)は8g/10分であり、粘度平均分子量は22,000であり、屈折率は1.585である。)を用いた。
2−3−1.PETG(C1)
イーストマンケミカル社製「Easter Copolyester 6763」(商品名)を用いた。
2−3−2.ホモPET(C2)
三菱化学社製「NOVAPEX GM700」(商品名)を用いた。
2−3−3.共重合PET(C3)
東洋紡績社製「RN−163」(商品名)を用いた。
上記各成分は、表3において、それぞれ、「C1」、「C2」及び「C3」と表記した。
旭電化工業社製「アデカスタブAX−71」(商品名、オクタデシルジハイドロジェンホスフェート及びジオクタデシルホスフェートの混合物)を用いた。
実施例1〜6、参考例1及び比較例1〜3
上記の成分〔A〕及び〔B〕を、表2に記載の配合割合でヘンシェルミキサーに投入し、混合した。その後、二軸押出機(シリンダー設定温度;240℃)を用いて溶融混練し、ペレット(熱可塑性樹脂組成物)を作製した。
次いで、ペレットを、除湿乾燥機を用いて十分に乾燥し、射出成形機(シリンダー設定温度;250℃、金型温度;60℃)を用いて評価用試験片を得た。この試験片を用いて、各種評価を行い、その結果を表2に併記した。
上記の成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を、表3に記載の配合割合でヘンシェルミキサーに投入し、混合した。その後、二軸押出機(シリンダー設定温度;240℃)を用いて溶融混練し、ペレット(熱可塑性樹脂組成物)を作製した。
次いで、ペレットを、除湿乾燥機を用いて十分に乾燥し、射出成形機(シリンダー設定温度;250℃、金型温度;60℃)を用いて評価用試験片を得た。この試験片を用いて、各種評価を行い、その結果を表3に併記した。
尚、表3において、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の配合量の欄内にある括弧内数字は、成分〔A〕及び〔B〕の合計を100%とした場合の換算値である。
一方、実施例1〜6では、いずれも、半透明性、耐衝撃性及び耐熱性に優れていた。特に、実施例1は、比較例2に対して、成分〔D〕が配合された例であり、滞留後のΔEが8から4へと向上し、MFRが25g/10分から23g/10分へと、アイゾット衝撃強度も45kgf・cm/cmから52kgf・cm/cmへと改良された。また、実施例2も、比較例4に対して、成分〔D〕が配合された例であり、滞留後のΔEが13から4へと向上し、MFRが20g/10分から18g/10分へと、アイゾット衝撃強度も52kgf・cm/cmから57kgf・cm/cmへと改良された。また、
成分〔A〕、〔B〕及び〔D〕の種類並びに含有量を同一として、成分〔C〕を含有した実施例7及び15は、それぞれ、実施例2及び1に比べ、半透明性及び耐衝撃性に優れていた。
また、成分〔A〕、〔B〕及び〔D〕の種類並びに含有量を同一として、成分〔C〕の種類を変えた実施例7、12及び13の場合、非晶性のポリエステル樹脂(C1)を用いた実施例7は、結晶性のポリエステル樹脂(C2及びC3)を用いた実施例12及び13に比べて、湿熱試験後のMFR保持率が小さく、組成物の耐湿熱安定性に優れている。
Claims (10)
- 〔A〕屈折率が1.530〜1.570の範囲にあり、且つ、スチレン単位の含有量が20〜75質量%であるスチレン・ブタジエン共重合体からなるゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物75〜95質量%及びシアン化ビニル化合物5〜25質量%(但し、これらの合計を100質量%とする。)からなるビニル系単量体(b)を重合して得られるゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と上記ビニル系単量体(b)の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂と、〔B〕ポリカーボネート樹脂と、〔D〕リン酸系化合物と、を含有し、
上記ゴム強化樹脂〔A〕及び上記ポリカーボネート樹脂〔B〕の含有量は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜60質量%及び40〜95質量%であり、
上記リン酸系化合物〔D〕が、下記式で表される有機リン酸エステルであり、
O=P(OR) s (OH) 3−s
〔式中、各Rは、独立して、炭素数1〜30の炭化水素基であり、sは1又は2である。〕
上記リン酸系化合物〔D〕の含有量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕及び上記ポリカーボネート樹脂〔B〕の合計を100質量部とした場合に、0.01〜5質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 上記ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が、0.17〜0.6μmである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記ゴム質重合体(a)の含有量が、組成物に対して、3〜10質量%である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記スチレン・ブタジエン共重合体を構成するスチレン単位の含有量が、すべての単量体単位の合計を100質量%とした場合に、30〜45質量%である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 更に、〔C〕ポリエステル樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂〔C〕の含有量が、上記ゴム強化樹脂〔A〕及び上記ポリカーボネート樹脂〔B〕の合計を100質量部とした場合に、1〜40質量部である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記ポリエステル樹脂〔C〕が、非晶性ポリエステル樹脂である請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記非晶性ポリエステル樹脂が、ジカルボン酸類と、炭素数2〜12のアルキレングリコール及び脂環族ジオールを含むジオール類との縮重合体である請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記アルキレングリコールがエチレングリコールであり、且つ、脂環族ジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールである請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 厚さ2.5mmの試験片に対して、ASTM D1003に準じて測定された全光線透過率が45〜70%である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
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