JP5378736B2 - 難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
(A成分:芳香族ポリカーボネート)
本発明のA成分である芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
本発明で使用されるB成分は、屈折率が1.535以上であるブタジエン系ゴム質重合体を含有するラテックス、不飽和カルボン酸アルキルエステル、および芳香族ビニル系単量体を乳化重合して得られた平均粒子径が100nm〜180nmである不飽和カルボン酸アルキルエステル−ブタジエン系ゴム−芳香族ビニル系単量体グラフト共重合体であり、好ましくはメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)である。
なお、これらのビニル系単量体および架橋性単量体は、1種または2種以上で使用することができる。
酸基含有共重合体を製造する際に用いる乳化剤としてはアニオン、カチオン、ノニオン乳化剤が挙げられ、陰イオン界面活性剤が好ましく、更に好ましくはリン酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩以外の陰イオン界面活性剤である。
B成分の含有量はA成分100重量部に対し、0.1〜10重量部であり、1〜8重量部が好ましく、2〜7重量部がより好ましい。含有量が10重量部より大きい場合は難燃性が低下する。
本発明の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂は流動性の向上、耐擦傷性の向上を目的として、C成分として、重量平均分子量が120,000以下のB成分以外のスチレン系樹脂を含有する。C成分の重量平均分子量は115,000以下が好ましく、110,000以下がより好ましい。重量平均分子量が120,000を超えると充分な耐擦傷性が得られず好ましくない。なお、重量平均分子量の下限は特に限定されないが、80,000以上が好ましい。なお、重量平均分子量はGPCにより標準ポリスチレン(Polymer Laboratories製)を用い、溶離時間と溶出量との関係を分子量と変換して求めることができる。
かかるABS樹脂は塊状重合、溶液重合、懸濁重合、および乳化重合などのいずれの方法で製造されたものでもよい。
かかるAS樹脂の還元粘度は、下記に記載の方法で求めた還元粘度(30℃)が0.2〜1.0dl/g、より好ましくは0.3〜0.7dl/gであるものである。
還元粘度(ηsp/C)={(t/t0)−1}/0.5
C成分の含有量はA成分100重量部に対し、5〜40重量部であり、18〜38重量部が好ましく、20〜35重量部がより好ましい。含有量が5重量部より小さい場合は充分な耐擦傷性が発現せず、40重量部より大きい場合は難燃性が著しく低下する。
本発明の有機リン系難燃剤(D成分)としては、下記式(1)で表されるリン酸エステル化合物を挙げることができる。
本発明で使用するE成分の含フッ素滴下防止剤とは、燃焼時の溶融滴下を防止し難燃性を更に向上させるためのもので、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましく使用される。尚、以下ポリテトラフルオロエチレンを単にPTFEと称することがある。フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
本発明の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂は耐擦傷性の向上を目的としてF成分として摺動性付与剤を含有する。本発明の摺動性付与剤としては、具体的にはシリコーンオイル、シリコーン樹脂微粒子、ポリエチレン等が挙げられ、その中でもシリコーンオイル、ポリエチレンが好ましい。以下、F成分として好ましいシリコーンオイル、ポリエチレンについて説明する。
本発明でF成分として用いるシリコーンオイルとしては直鎖状または環状のポリジメチルシロキサンオイルやポリメチルフェニルシリコーンオイル、メチル基の一部に有機基を導入した変性シリコーンオイル等が挙げられ、その中でも下記(2)で表されるポリオルガノポリシロキサンが好ましく使用される。
本発明でF成分として用いるポリエチレン樹脂は、通常市販されているものを用いることができるが、その粘度平均分子量が10,000以下であり、2,000〜7,000の範囲のものが好ましい。粘度平均分子量が10,000を越えるものでは成形品に層剥離が生じやすくなり、外観が悪くなる。特に上記の範囲のポリエチレンを用いることによってはじめて外観が優れ、衝撃強度やウェルド強度にも優れた成形品が得られる。かかるポリエチレン樹脂は、ポリカーボネート樹脂との親和性を増すために酸、エステル、酸無水物基、エポキシド基のような極性基を導入して変性して用いることができ、こうすることは好ましいことでもある。
本発明におけるG成分は一価または多価アルコールと高級脂肪酸とのエステルの高級脂肪酸である。高級脂肪酸は、好ましくは炭素数20以上(より好ましくは炭素数20〜32、更に好ましくは炭素数26〜32)の脂肪酸を60重量部以上含有する。かかる高級脂肪酸として、モンタン酸を主成分とする高級脂肪酸が好ましく例示される。かかる高級脂肪酸は通常モンタンロウを酸化することにより製造される。一方、一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、成形加工時の分子量や色相を安定化させるために各種安定剤や色材を使用することができる。かかる安定剤としては、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、紫外線吸収剤、洗顔料、熱安定剤、帯電防止剤などが挙げられる。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
ヒンダードフェノール化合物としては、通常樹脂に配合される各種の化合物が使用できる。かかるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセテート、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセチルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。本発明の樹脂組成物は、ゴム成分や難燃剤の影響によって耐候性に劣る場合があることから、かかる劣化を防止するため紫外線吸収剤の配合は有効である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は更に各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
上記の染顔料の含有量は、A成分、B成分、およびC成分の合計100重量部を基準として0.00001〜1重量部が好ましく、0.00005〜0.5重量部がより好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、上記のリン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の熱安定剤を配合することもできる。かかるその他の熱安定剤は、これらの安定剤および酸化防止剤のいずれかと併用されることが好ましく、特に両者と併用されることが好ましい。かかる他の熱安定剤としては、例えば3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤(かかる安定剤の詳細は特開平7−233160号公報に記載されている)が好適に例示される。かかる化合物はIrganox HP−136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販され、該化合物を利用できる。更に該化合物と各種のホスファイト化合物およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤が市販されている。例えば上記社製のIrganox HP−2921が好適に例示される。本発明においてもかかる予め混合された安定剤を利用することもできる。ラクトン系安定剤の配合量は、A成分、B成分、およびC成分の合計100重量部を基準として好ましくは0.0005〜0.05重量部、より好ましくは0.001〜0.03重量部である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩の含有量はA成分、B成分、およびC成分の合計100重量部を基準として5重量部以下が適切であり、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは1〜3.5重量部、更に好ましくは1.5〜3重量部の範囲である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、A成分B成分及びC成分以外の熱可塑性樹脂、その他の流動改質剤、抗菌剤、流動パラフィンの如き分散剤、光触媒系防汚剤、熱線吸収剤およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
A成分とB成分及びC成分以外の熱可塑性樹脂としては芳香族ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(いわゆるPET−G樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂、およびポリブチレンナフタレート樹脂など)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、熱可塑性フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン樹脂に代表される)、並びにポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、エチレン−(α−オレフィン)共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂、およびプロピレン−(α−オレフィン)共重合体樹脂など)が例示される。上記他の熱可塑性樹脂は、A成分、B成分、およびC成分の合計100重量部を基準として20重量部以下、より好ましくは10重量部以下が好ましい。
本発明の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造には、任意の方法が採用される。例えばA成分からF成分、および任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合(いわゆるドライブレンド)した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより得られた予備混合物の造粒を行い、その後ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練し、溶融混練後の組成物をペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
(I)難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の評価
(i)シャルピー衝撃強さ
ISO 179に従い、ノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。
(ii)耐擦傷性試験
本発明に係わる耐擦傷性試験方法を図1に基づいて説明する。測定は往復動摩擦摩耗試験機[東測精密工業(株)製AFT−15−M]に直径10mmの円柱に試験布を装着したものを使用した。この装置を用い、特定の荷重をかけ、試験サンプルを50往復させることにより耐擦傷性試験を実施した。
試験機器 :往復動摩擦摩耗試験機
試験布 :帝人製あっちこっちふきん(商品名)(ポリエステル50%ナイロン50%)
回数 :50往復
ストローク :15mm
速度 :10mm/s
荷重 :400g
判定方法 :2,000〜4,000lxの人工光源下(ISO/FDIS 3668に基づく)で30cmの距離から傷の有無を目視で判断した。
(iii)難燃性
UL規格94Vに従い、厚み1.8mmで燃焼試験を実施した。
(iv)L値
JIS K 7105に従い、D65光源を用いて反射測定を実施した。色立体(色空間)にはLabといった表現の三次元の座標軸が使われている。表中L値はL明度(lightness)を表し、L=0が最も暗く(黒色)、L=100が最も明るい状態(白色)を表現している。ΔL=0〜1.5ではわずかな明度差、ΔL=1.5〜3.0では感知し得る明度差、ΔL=3以上では目立つほどの明度差となる。なお、試験片の厚みは2.0mmで実施した。L値はMBS無添加時(比較例1)の値と変わらないことが好ましい。
表1及び表2に示す組成で、C成分、D成分を除く成分からなる混合物を押出機の第1供給口から供給した。かかる混合物は下記の(i)の予備混合物と他の成分とをV型ブレンダーで混合して得た。すなわち、(i)はE成分(含フッ素滴下防止剤)とA成分の芳香族ポリカーボネートとの混合物であってE成分がその2.5重量部となるようポリエチレン袋中で該袋全体を振り動かすことで均一に混合された混合物である。なお、C成分は第2供給口からサイドフィーダーを用いて供給した。更にD成分は、80℃に加熱した状態で液注装置(富士テクノ工業(株)製HYM−JS−08)を用いてシリンダー途中の第3供給口(第2供給口とベント排気口との間に位置)から、各々所定の割合になるよう押出機に供給した。液注装置は一定量を供給する設定とし、その他の原料の供給量は計量器[(株)クボタ製CWF]により精密に計測された。押出は径30mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30α−38.5BW−3V)を使用し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/h、ベントの真空度3kPaで溶融混練したペレットを得た。なお、押出温度については、第1供給口からダイス部分まで260℃とした。
得られたペレットは80〜90℃で6時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機[住友重機械工業(株)製SG150U]により、シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件で評価用の試験片を成形した。
(A成分)
PC:芳香族ポリカーボネート樹脂[ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量22,400のポリカーボネート樹脂粉末、帝人化成(株)製 パンライトL−1225WP]
(B成分)
IM−1:コア−シェルグラフト共重合体;コアがスチレン及びブタジエン系ゴム重合体を含有するラテックス、シェルがスチレンおよびメチルメタクリレートであるグラフト共重合体。コア部分の屈折率(計算値)は1.538。グラフト重合体の平均粒子径は160nmである。(三菱レイヨン(株)製 メタブレン C−215A(商品名))
IM−2:コア−シェルグラフト共重合体;コアがスチレン及びブタジエン系ゴム重合体を含有するラテックス、シェルがスチレンおよびメチルメタクリレートであるグラフト共重合体。コア部分の屈折率(計算値)は1.545。グラフト重合体の平均粒子径は100nmである。
IM−3:コア−シェルグラフト共重合体;コアがスチレン及びブタジエン系ゴム重合体を含有するラテックス、シェルがスチレンおよびメチルメタクリレートであるグラフト共重合体。コア部分の屈折率(計算値)は1.531。グラフト重合体の平均粒子径は200nmである。
IM−4:コア−シェルグラフト共重合体;コアがスチレン及びブタジエン系ゴム重合体を含有するラテックス、シェルがスチレンおよびメチルメタクリレートであるグラフト共重合体。コア部分の屈折率(計算値)は1.538。グラフト重合体の平均粒子径は200nmである。
IM−5:コア−シェルグラフト共重合体;コアがスチレン及びブタジエン系ゴム重合体を含有するラテックス、シェルがスチレンおよびメチルメタクリレートであるグラフト共重合体。コア部分の屈折率(計算値)は1.538。グラフト重合体の平均粒子径は80nmである。
(C成分)
AS−1:AS樹脂(日本A&L(株)製 ライタック−A BS207(商品名))乳化重合AS樹脂。重量平均分子量は109,000である。
AS−2:AS樹脂(CHEIL INDUSTRIES INC.製:HR5330(商品名))重量平均分子量は129,000である。
AS−3:AS樹脂(CHEIL INDUSTRIES INC.製:HR5330S(商品名))重量平均分子量は147,000である。
ABS−1:ABS樹脂(CHEIL INDUSTRIES INC.製:CH−T(商品名))重量平均分子量は60,000である。
ABS−2:ABS樹脂(電気化学工業(株)製GT−A−200(商品名))乳化重合ABS樹脂。重量平均分子量は101,000である。
(D成分)
FR:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル(大八化学工業(株)製:CR−741(商品名))
(E成分)
PTFE1:ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製 ポリフロンMP FA500(商品名))
PTFE2:ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体( 三菱レイヨン(株)製 メタブレン A3750(商品名))
(F成分)
Si:シリコーンオイル(信越化学(株)製 KF−96−1万cs)
PE:ポリエチレン樹脂(三井石油化学(株)製 ハイワックス310MP(商品名))粘度平均分子量3,000である。
(G成分)
SL:脂肪酸エステル系離型剤(理研ビタミン(株)製;リケマールSL900(商品名))
(その他の成分)
IRG:フェノール系熱安定剤(Ciba Specialty Chemicals K.K.製;IRGANOX1076(商品名))
CB:カーボンブラックマスター(越谷化成工業社製、ロイヤルブラック904S(商品名))
Claims (7)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)屈折率が1.535以上であるブタジエン系ゴム質重合体を含有するラテックス、不飽和カルボン酸アルキルエステル、および芳香族ビニル系単量体を乳化重合して得られた平均粒子径が100nm〜180nmであるグラフト共重合体(B成分)0.1〜10重量部並びに(C)重量平均分子量が120,000以下のB成分以外のスチレン系樹脂(C成分)5〜40重量部を含んでなる樹脂成分100重量部に対し、(D)有機リン系難燃剤(D成分)5〜25重量部、(E)含フッ素滴下防止剤(E成分)0.05〜2重量部および(F)摺動性付与剤(F成分)0.01〜0.4重量部を含んでなる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- B成分が、ゴム成分量が40〜90重量%であるグラフト共重合体である請求項1記載の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- C成分が、ゴム成分量が0.1〜30重量%であるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)およびアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体である請求項1または2に記載の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- F成分がシリコーンオイルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- F成分が粘度平均分子量10,000以下のポリエチレンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
Priority Applications (2)
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