JP4836391B2 - 着色された難燃性熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

着色された難燃性熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色された難燃熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、難燃剤としてリン酸エステルおよび特定の染料化合物、更により好適には二酸化チタン顔料を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、過酷な成形条件下においても熱安定性に優れ、成形時の変色が少なく、特に大型の成形品を製造するに好適な着色された難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、および難燃剤としてリン酸エステルを含む熱可塑性樹脂組成物は、特にOA機器分野の外装材や筐体などにおいて広く利用されている。かかる製品は通常顔料などにより所定の色調に着色されることが多い。しかしながら大型成形品(例えば複写機、プリンター、およびそれらの複合機のカバー成形品など)や薄肉成形品(例えばノートパソコンなど携帯型コンピューター、およびCRTディスプレーのハウジング成形品など)などの高い熱負荷のかかる成形品においては、安定した色調が得られない場合があった。
【0003】
ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、および黄色染料との組み合わせ(特許文献1参照)、並びにこれらの樹脂と黄色染料および酸化チタンとの組み合わせ(特許文献2参照)については既に提案されている。これらは特定の黄色染料を含有することによるポリカーボネート樹脂組成物の耐光性の向上を提案している。また更に難燃剤としてリン酸エステルを含む組成物についても既に知られている(特許文献3参照)。
【0004】
一方で、二酸化チタン顔料は熱可塑性樹脂組成物の着色剤として広く使用されている。その種類は種々の目的や用途に対応すべく極めて広範囲にわたり各種の酸化チタンおよび該酸化チタンを配合したポリカーボネート樹脂組成物が提案され、分散性、隠蔽力が良好である特定の表面処理がなされた二酸化チタン(特許文献4参照)、熱可塑性樹脂と特定の表面処理がなされた二酸化チタン(特許文献5参照)、ポリカーボネート樹脂、スチレン系ポリマー、二酸化チタン、有機ハロゲン化合物、および特定の無機フィラーからなる樹脂組成物(リン酸エステルを含むものも記載されている)(特許文献6参照)、ポリカーボネート樹脂、特定のゴム質重合体、および酸化チタンからなる樹脂組成物(リン酸エステルを含むものも記載されている)(特許文献7参照)、ポリカーボネート樹脂、特定のリン酸エステル、ポリテトラフルオロエチレン、紫外線吸収剤、および酸化チタンからなる樹脂組成物(特許文献8参照)、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、1つの被膜を有する二酸化チタン、および有機ホスフェート系難燃剤からなる樹脂組成物(特許文献9参照)などが既に知られている。該特定のリン酸エステルは、耐加水分解性が良好であり、モールドデポジットの少ないリン酸エステル化合物として既にポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイに配合することが知られている(特許文献10〜14参照)
【0005】
【特許文献1】
特開平10−045981号公報
【特許文献2】
特開平10−001602号公報
【特許文献3】
WO01/72900号
【特許文献4】
特公昭59−37304号公報
【特許文献5】
特開平11−60743号公報
【特許文献6】
特開平7−242810号公報
【特許文献7】
特開平9−176471号公報
【特許文献8】
特開2000−169686号公報
【特許文献9】
特表2002−528588号公報
【特許文献10】
特開平06−080885号公報
【特許文献11】
特開平07−053876号公報
【特許文献12】
特開平10−168227号公報
【特許文献13】
特開平11−310695号公報
【特許文献14】
特表2001−512769号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、過酷な成形条件下においても熱安定性に優れ、成形時の変色が少なく、特に大型の成形品を製造するに好適な、特定の黄色染料により、更に好適には該黄色染料と特定の酸化チタンにより着色された難燃性熱可塑性樹脂組成物、中でもポリカーボネート樹脂とABS樹脂を樹脂主成分とする難燃性樹脂組成物、特にポリカーボネート樹脂、ABS樹脂および衝撃改質剤を樹脂成分とする難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する点にある。
【0007】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂、難燃剤して特定のリン酸エステル、および染料として特定のキノリン染料、並びにより好適には酸化チタン(特に特定の表面処理がなされた酸化チタン)を組み合わせた樹脂組成物が、大型の成形品において良好な熱安定性と少ない変色を有することをを見出した。これらの知見により本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)熱可塑性樹脂(A成分)75〜99重量部、および難燃剤として下記一般式(I)で表されるリン酸エステル化合物(B成分)1〜25重量部の合計100重量部、並びにハロゲン原子を含まないキノリン染料(C成分)0.00001〜1重量部からなる着色された難燃性熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0009】
【化2】
Figure 0004836391
【0010】
(ここでR1、R2、R3およびR4は各々独立した炭素数6〜12のアリール基であり、R5およびR6はメチル基または水素、R7およびR8はメチル基を表し、m1およびm2は0、1または2を示し、a、b、cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり、またnは0または1〜5の整数である。)
【0011】
かかる構成(1)によれば、過酷な成形条件下においても熱安定性に優れ、成形時の変色が少なく、特に大型の成形品を製造するに好適な(以下これらを単に“本発明の効果”と称する場合がある)、着色された難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0012】
本発明の好適な態様の1つは、(2)更に、顔料として二酸化チタン(D成分)をA成分とB成分の合計100重量部あたり0.1〜3重量部含んでなる前記(1)に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。かかる構成(2)によれば、本発明の効果がより効果的に発揮する難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明の好適な態様の1つは、(3)前記D成分は、アミン類化合物で表面処理されていることを特徴とする前記(2)に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。本発明の効果おいてより熱安定性に優れ、かつ色調も良好な難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0014】
本発明の好適な態様の1つは、(4)前記A成分はその100重量%中、ポリカーボネート樹脂(A1成分)50〜97重量%、およびスチレン系樹脂(A2成分)3〜50重量%を含有してなる前記(1)〜(3)に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。かかる構成(4)によれば、本発明の効果を有し、大型の成形品の成形により好適な難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0015】
本発明の好適な態様の1つは、(5)更に珪酸塩鉱物フィラー(E成分)を前記A成分とB成分の合計100重量部あたり、0.1〜100重量部含んでなる前記(1)〜(4)に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物である。かかる構成(5)によれぱ、本発明の効果を有し、大型かつ薄肉の成形品に好適な熱可塑性樹脂が提供される。更に珪酸塩鉱物フィラーは耐湿熱性の向上にも有効な作用を有する。
【0016】
本発明の好適な態様の1つは、(6)前記(1)〜(5)に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物より形成された成形品であって、該成形品はその投影面積が2,000〜20,000cm2の範囲であり、その重量が300〜3,000gの範囲であることを特徴とする成形品である。かかる構成(6)によれば、色調の良好な大型の難燃性熱可塑性樹脂組成物より形成された成形品が提供される。
【0017】
以下本発明の各成分について説明する。
【0018】
<A成分について>
本発明のA成分として使用される熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、機械的強度、成形加工時の流動性、および難燃性の点から好ましいものとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂などのいわゆるスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、並びにポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂などの芳香族ポリエステル系樹脂が例示される。前記好適な例示の樹脂から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂は、好適には熱可塑性樹脂(A成分)100重量%中80重量%以上、より好適には熱可塑性樹脂(A成分)100重量%中90重量%以上含有される。
【0019】
前記例示された好適なA成分の中でも、特に好ましい樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、およびポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂よりなる樹脂組成物が挙げられ、特にポリカーボネート樹脂(A1成分)とスチレン系樹脂(A2成分)よりなる樹脂組成物が好ましい。かかる成分の割合は、A成分100重量%中、好ましくはA1成分50〜97重量%およびA2成分3〜50重量%であり、より好ましくはA1成分70重量%〜95重量%およびA2成分5〜30重量%であり、更に好ましくはA1成分75〜90重量%およびA2成分10〜25重量%であり、特に好ましくはA1成分78〜88重量%およびA2成分12〜22重量%である。かかるA1成分とA2成分からなるA成分の場合、本発明の樹脂組成物は、着色剤がより効果的に作用することから良好な着色性を得る他、機械的強度および流動性に優れる。
【0020】
<A1成分について>
本発明のA1成分であるポリカーボネート樹脂について説明する。代表的なポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0021】
二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましい。
【0022】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0023】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0024】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0025】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、ポリカーボネート樹脂全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、ポリカーボネート樹脂全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0026】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0027】
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0028】
ポリカーボネート樹脂は、上述した各種二価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体など各種のポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。さらに下記に示す製造法の異なるポリカーボネート樹脂、末端停止剤の異なるポリカーボネートなど各種についても2種以上を混合したものが使用できる。
【0029】
ポリカーボネート樹脂の重合反応において界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0030】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0031】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0032】
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0033】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。さらにアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0034】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0035】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
【0036】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は特定されない。しかしながら粘度平均分子量は、10,000未満であると強度などが低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、15,000〜28,000の範囲がさらに好ましい。この場合粘度平均分子量が前記範囲外であるポリカーボネートとを混合することも当然に可能である。すなわち、粘度平均分子量が50,000を超える高分子量のポリカーボネート成分を含有することができる。
【0037】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0038】
本発明においては、ポリカーボネート樹脂中のアルカリ(土類)金属量を低減することも重要である。かかる金属はキノリン染料に対する熱安定性の低下を誘起しやすいためである。前記の如くポリカーボネート樹脂はその製造において触媒としてアルカリ(土類)金属化合物を使用するのが通常であるから、界面重縮合の場合は十分な水洗を行い、溶融エステル交換法の場合はかかる触媒の配合量に十分留意して、ポリカーボネート樹脂自体のアルカリ(土類)金属元素の含有量を0.5ppm未満とすることが好ましい。より好ましくはかかる含有量を0.3ppm未満、特に好ましくは0.2ppm未満としたポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。
【0039】
<A2成分について>
スチレン系樹脂(A2成分)は芳香族ビニル化合物の重合体または共重合体からなる樹脂、または芳香族ビニル化合物と他のビニル単量体およびゴム質重合体より選ばれる1種以上とを共重合して得られる共重合体からなる樹脂をいう。芳香族ビニル化合物は樹脂100重量%中10重量%以上含有するものが好ましい。A2成分中の芳香族ビニル化合物の割合は、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜80重量%である。かかる芳香族ビニル化合物の割合はA2成分の全量100重量%中の割合であり、A2成分として複数の重合体が混合する場合は、全ての重合体がかかる好適な条件を満足する必要はない。しかしいずれの重合体においても芳香族ビニル化合物の割合は10重量%以上であることが好ましい。次にスチレン系樹脂中に含まれる代表的な単量体化合物について説明する。
【0040】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0041】
芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物を好ましく挙げることができる。シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。尚(メタ)アクリレートの表記はメタクリレートおよびアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。特に好適な(メタ)アクリル酸エステル化合物としてはメチルメタクリレートを挙げることができる。
【0043】
シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物があげられる。
【0044】
上記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体など)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリル系ゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。中でもより好適であるのは、その効果がより発現しやすいポリブタジエン、ポリイソプレン、またはジエン系共重合体であり、特にポリブタジエンが好ましい。これらゴム質重合体はスチレン系樹脂100重量%中90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは80重量%以下である。
【0045】
スチレン系樹脂として具体的には、例えば、ポリスチレン樹脂、HIPS樹脂、MS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、MAS樹脂、SMA樹脂、SIS樹脂、およびSBS樹脂などが挙げられ、いずれも容易に入手可能である。中でもより好適であるのはHIPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、MAS樹脂、SIS樹脂およびSBS樹脂である。
【0046】
これらの中でも特にABS樹脂が好ましい。ABS樹脂は薄肉成形品に対する優れた成形加工性を有し、良好な耐衝撃性も有する。殊に芳香族ポリカーボネート樹脂との組合せにおいて好ましい特性が発現される。
【0047】
尚、ここでMS樹脂はメチルメタクリートとスチレンから主としてなる共重合体樹脂、AES樹脂はアクリロニトリル、エチレン−プロピレンゴム、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、ASA樹脂はアクリロニトリル、スチレン、およびアクリルゴムから主としてなる共重合体樹脂、MABS樹脂はメチルメタクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、MAS樹脂はメチルメタクリレート、アクリルゴム、およびスチレンから主としてなる共重合体樹脂、SMA樹脂はスチレンと無水マレイン酸(MA)から主としてなる共重合体樹脂、SIS樹脂はポリスチレンおよびポリイソプレンからなるブロックコポリマー樹脂(ジ−ブロック以上であればよく、また水添されたものを含む)、SBS樹脂はポリスチレンおよびポリブタジエンからなるブロックコポリマー(ジ−ブロック以上であればよく、また水添されたものを含む)を示す。
【0048】
スチレン系樹脂は単独で使用することも2種以上を併用することも可能である。例えばABS樹脂においてはAS重合体(アクリロニトリルとスチレンとの共重合体)およびABS共重合体(ポリブタジエンゴムにアクリロニトリルとスチレンがグラフト共重合した共重合体)との混合物が一般的であり、かかる混合物は本発明においても好適に使用される。
【0049】
更にスチレン系樹脂はその製造時にメタロセン触媒等の触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレン等の高い立体規則性を有するものであってもよい。更に場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られる、分子量分布の狭い重合体及び共重合体、ブロック共重合体、および立体規則性の高い重合体、共重合体であってもよい。
【0050】
本発明で使用するABS樹脂においては、ABS樹脂成分100重量%中(すなわちABS重合体とAS重合体の合計100重量%中)ジエンゴム成分の割合が5〜80重量%であるのが好ましく、より好ましくは8〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
【0051】
ABS樹脂に使用されるシアン化ビニル化合物としては、前記のものを挙げることができ、特にアクリロニトリルが好ましい。また芳香族ビニル化合物としては、同様に前記のものを使用できるが、特にスチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、ABS樹脂成分100重量%中95〜20重量%が好ましく、より好ましくは92〜50重量%である。更にかかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%(より好ましくは15〜35重量%)、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%(より好ましくは65〜85重量%)であることが好ましい。更に上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部についてメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。更に反応で使用される開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0052】
ABS樹脂においては、ゴム粒子径は重量平均粒子径において0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1.5μmがより好ましく、0.2〜0.8μmが更に好ましい。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
【0053】
またABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体を含有することは従来からよく知られているところである。本発明のABS樹脂は、上記のとおりかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有してよく、また芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものでもよい。かかるフリーのシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物からなる共重合体(AS共重合体)の還元粘度は、下記に記載の方法で求めた還元粘度(30℃)が0.2〜1.0dl/g、より好ましくは0.3〜0.7dl/gであるものである。
【0054】
還元粘度は、AS共重合体0.25gを精秤し、ジメチルホルムアミド50mlに2時間かけて溶解させた溶液を、ウベローデ粘度計を用いて30℃の環境で測定したものである。なお、粘度計は溶媒の流下時間が20〜100秒のものを用いる。還元粘度は溶媒の流下秒数(t0)と溶液の流下秒数(t)から次式によって求める。
還元粘度(ηsp/C)={(t/t0)−1}/0.5
尚、かかるフリーのAS共重合体の割合は、アセトンなどのかかるAS共重合体の良溶媒にABS樹脂を溶解し、その可溶分から採取することが可能である。一方その不溶分(ゲル)が正味のABS共重合体となる。
【0055】
ABS共重合体においてジエン系ゴム成分にグラフトされたシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の割合(ジエン系ゴム成分の重量に対するかかるグラフト成分の重量の割合)、すなわちグラフト率(重量%)は20〜200%が好ましく、より好ましくは20〜80%である。
【0056】
かかるABS樹脂は塊状重合、溶液重合、懸濁重合、および乳化重合などのいずれの方法で製造されたものでもよい。より好ましいのは塊状重合法により製造されたABS樹脂である。更にかかる塊状重合法としては代表的に、化学工学 48巻第6号415頁(1984)に記載された連続塊状重合法(いわゆる東レ法)、並びに化学工学 第53巻第6号423頁(1989)に記載された連続塊状重合法(いわゆる三井東圧法)が例示される。本発明のABS樹脂としてはいずれのABS樹脂も好適に使用される。また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。
【0057】
本発明においてAS樹脂とは、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物を共重合した熱可塑性共重合体である。かかるシアン化ビニル化合物としては、前記のものを挙げることができ、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。また芳香族ビニル化合物としては、同様に前記のものが挙げられるが、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。AS樹脂中における各成分の割合としては、全体を100重量%とした場合、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、好ましくは15〜35重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%、好ましくは85〜65重量%である。更にこれらのビニル化合物に、前記の共重合可能な他のビニル系化合物が共重合されたものでもよい。これらの含有割合は、AS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。また反応で使用する開始剤、連鎖移動剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0058】
かかるAS樹脂は塊状重合、溶液重合、懸濁重合、懸濁塊状重合、および乳化重合などのいずれの方法で製造されたものでもよいが、好ましくは塊状重合によるものである。また共重合の方法も一段での共重合、または多段での共重合のいずれであってもよい。またかかるAS樹脂の還元粘度としては、0.2〜1.0dl/gであり、好ましくは0.4〜0.7dl/gである(還元粘度の測定方法は上記に準ずる)。
【0059】
かかるAS樹脂は、AS樹脂全体100重量%中、アクリロニトリルが15〜35重量%、スチレンが85〜65重量%の範囲であり、塊状重合により製造され、その還元粘度が0.4〜0.7dl/gであるものを好ましく使用できる。またABS樹脂において、ABS共重合体とAS共重合体とをブレンドする場合それぞれ共重合体における芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との割合は同一であっても、異なっていてもよいがより好ましくはほぼ同一であることが好ましい。
【0060】
前記AS樹脂およびABS樹脂は、アルカリ(土類)金属量が低減されたものが良好な熱安定性や耐加水分解性などの点からより好適である。スチレン系樹脂中のアルカリ(土類)金属量は、好ましくは100ppm未満であり、より好ましくは80ppm未満であり、更に好ましくは50ppm未満であり、特に好ましくは10ppm未満である。かかる点からも塊状重合法によるAS樹脂およびABS樹脂(特に三井東圧法)が好適に使用される。更にかかる良好な良好な熱安定性や耐加水分解性に関連して、AS樹脂およびABS樹脂において乳化剤を使用する場合には、該乳化剤は好適にはスルホン酸塩類であり、より好適にはアルキルスルホン酸塩類である。また凝固剤を使用する場合には、該凝固剤は硫酸または硫酸のアルカリ土類金属塩が好適である。
【0061】
本発明のA2成分は前記AS樹脂やABS樹脂を好ましい主成分とするが、組成物の耐衝撃性の改良のため、ABS樹脂以外のゴム含有量の多いスチレン系樹脂を含むことが好適である。かかるスチレン系樹脂としては、殊にメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類をシェル成分として含有するコア−シェルグラフトゴムが好ましい。A2成分におけるかかるコア−シェルグラフトゴムとしては、MBS樹脂が特に好ましい。MBS樹脂は、ポリカーボネート樹脂およびABS樹脂からなる樹脂組成物中に混合された場合、ASマトリックスより、ポリカーボネート樹脂マトリックス中に多く含まれるようになり耐衝撃性がより効率的に向上する。かかる点については例えば特開昭48−72249号などに記載されている。
【0062】
<その他好適な熱可塑性樹脂について>
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂とは、フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体または共重合体(以下単にPPE重合体と称する場合がある)である。
【0063】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。
【0064】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの共重合体の代表例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等がある。
【0065】
上記のPPE重合体の製造方法は特に限定されるものではないが例えば米国特許4,788,277号明細書(特願昭62−77570号)に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合して製造することができる。
【0066】
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量および分子量分布も種々のものが使用可能であるが、分子量としては、0.5g/dlクロロフォルム溶液、30℃における還元粘度が0.20〜0.70dl/gの範囲が好ましく、0.30〜0.55dl/gの範囲がより好ましい。
【0067】
また、本発明のポリフェニレンエーテル樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特願昭63−12698号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0068】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘動体と、ジオール、またはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
【0069】
ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸が好適に用いられ、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく使用できる。
【0070】
芳香族ジカルボン酸は二種以上を混合して使用してもよい。なお少量であれば、該ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を一種以上混合使用することも可能である。
【0071】
また本発明の芳香族ポリエステルの成分であるジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等、2,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香環を含有するジオール等およびそれらの混合物等が挙げられる。更に少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
【0072】
また本発明の芳香族ポリエステルは少量の分岐剤を導入することにより分岐させることができる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0073】
具体的な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、等の他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、等のような共重合ポリエステルが挙げられる。これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびこれらの混合物が好ましく使用できる。
【0074】
本発明に使用される芳香族ポリエステル樹脂の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0075】
本発明に使用される芳香族ポリエステル樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム、および三酸化アンチモン等が例示できる。
【0076】
また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。
【0077】
芳香族ポリエステルの製造方法は、バッチ式、連続重合式のいずれの方法をとることも可能である。
【0078】
上記芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度は、o−クロロフェノールを溶媒として35℃で測定した固有粘度において、0.4〜1.5であり、0.5〜1.2が好ましく、0.6〜1.15がより好ましい。
【0079】
更に本発明のA成分は衝撃改質剤を含んでよい。衝撃改質剤としては各種の弾性重合体を挙げることができる。ここで弾性重合体とは、ガラス転移温度が10℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−30℃以下であるゴム成分と、該ゴム成分と共重合可能な単量体成分とを共重合した重合体のうち、上記スチレン系樹脂以外のものをいう。ゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体およびアクリル・ブタジエンゴム(アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルとブタジエンとの共重合体)など)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。
【0080】
かかるゴム成分に共重合される単量体成分としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物などが好適に挙げられる。その他の単量体成分としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物等を挙げることができる。
【0081】
より具体的には、MB(メチルメタクリレート−ブタジエン)重合体、MA(メチルメタクリレート−アクリルゴム)重合体、メチルメタクリレート−アルキルアクリレート−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−アルキルアクリレート−アクリルゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)重合体などを挙げることができる。
【0082】
その他弾性重合体としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなど各種の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0083】
衝撃改質剤として使用する場合、通常ゴム成分の割合は上記弾性重合体中40〜95重量%であり、より好ましくは50〜85重量%である。同様に熱可塑性エラストマーの場合ソフトセグメントの割合は通常40〜95重量%であり、より好ましくは50〜85重量%である。衝撃改質剤は単独での使用、および2種以上を組み合わせた使用のいずれも選択できる。
【0084】
また、A成分中のゴム成分の割合は(スチレン系樹脂由来のものおよび衝撃改質剤由来のものいずれも含む)、A成分100重量%中、0.1〜30重量%となる割合が好ましく、0.8〜20重量%がより好ましく、1.5〜15重量%が更に好ましい。これらの組成割合では良好な難燃性と耐衝撃性との両立が得られる。
【0085】
<B成分について>
本発明のB成分として使用されるリン酸エステル系難燃剤は、一般式(I)で表される1種または2種以上のリン酸エステルを挙げることができる。
【0086】
【化3】
Figure 0004836391
【0087】
(ここでR1、R2、R3およびR4は各々独立した炭素数6〜12のアリール基であり、R5およびR6はメチル基または水素、R7およびR8はメチル基を表し、m1およびm2は0、1または2を示し、a、b、cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり、またnは0または1〜5の整数である。)
尚、上記一般式(I)においてアリール基とは、芳香族化合物のベンゼン環の水素原子1個を除いた残基をいう。好ましくは芳香族炭化水素のベンゼン環の水素原子1個を除いた残基である。アリール基としては例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、およびナフチル基などを挙げることができる。
【0088】
B成分として好ましくは一般式(I)においてm1およびm2が0、a、b、c、およびdが1、R1、R2、R3、およびR4がフェニル基、並びにR5およびR6がメチル基である態様である。かかるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステルはリン含有量が高いため、それを含む樹脂組成物は難燃性が良好であり、成形時の流動性も良好である。更にかかるリン酸エステルはその構造上耐加水分解性も良好であるため、それを含む樹脂組成物は長期の品質保持性にも優れる。
【0089】
本発明のB成分は、好ましくはその100重量%中縮合度nのそれぞれの割合がn=0の成分0.1〜3重量%、より好ましくは0.5〜2.5重量%、n=1の成分86.5〜98.5重量%、より好ましくは89.5〜98.5重量%、n=2の成分1〜9重量%、より好ましくは1〜7重量%、およびn≧3の成分1.5重量%以下、より好ましくは1重量%以下の割合からなり、かつn=0の成分を除いて算出される重量平均縮合度Nが1.01〜1.10、好ましくは1.01〜1.09、より好ましくは1.01〜1.07である。尚、上記各n成分とは、所定の二価フェノールおよび一価フェノールから合成される成分をいい、反応副生物などを含まない。例えば一価フェノールとしてフェノールを使用する場合n=0の成分はトリフェニルホスフェートである。
【0090】
更に本発明のB成分の酸価は、好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、より好ましくは0.1mgKOH/g以下であり、更に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。かかる酸価の下限は実質的に0とすることも可能であり、実用上0.005mgKOH/g以上が好ましい。一方B成分中ハーフエステルの含有量は1.1重量%以下が好ましく、0.9重量%以下がより好ましい。下限としては実用上0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましい。酸価やハーフエステル量が上記範囲内にある場合、耐加水分解性が良好であり、それを含む樹脂組成物は長期の品質保持性にも優れる。
【0091】
上記B成分は異なる2種以上のリン酸エステルを、混合して使用することができる。
【0092】
B成分のリン酸エステルを製造する方法としては以下の方法が好ましい。すなわち(i)二価フェノールとオキシハロゲン化リンとを反応させた後に一価フェノールを反応させる方法により得られたリン酸エステルが好ましい。かかる方法はまずビスフェノールAなど一般式(I)の主鎖成分を構成する二価フェノール(以下“原料(a)”と称する場合がある)と、オキシ塩化リン等のオキシハロゲン化リン(以下“原料(b)” と称する場合がある)とをルイス酸触媒下で反応させて中間体を得る。該反応において触媒としては、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化鉄、塩化亜鉛、塩化スズなどが挙げられ、塩化アルミニウム、塩化マグネシウムがより好ましく、塩化マグネシウムが特に好ましい。
【0093】
原料(a)と原料(b)との比率(a):(b)はモル比で、通常1:2〜1:10であり、好ましくは1:3〜1:6、更に好ましくは1:3.5〜1:4.5である。原料(b)の割合が高いほど二価フェノールの両端を確実にオキシ塩化リンを反応させることが可能となりハーフエステルの割合は低められる。しかし総原料に対する製品収率も低下するため上記好ましい範囲とすることが適切である。また反応の際原料(a)と原料(b)とを予め混合して反応する方法、および一方の原料を仕込んだ反応容器内に他方の原料を滴下して反応する方法のいずれも選択できる。
【0094】
更に上記中間体を得る反応においてその反応温度は80〜130℃が好ましく、より好ましくは100〜120℃である。反応は通常無溶媒において行われるが、適宜トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、ヘキサン、およびヘプタンなどの溶媒を用いることも可能である。反応時間としては通常3〜20時間、より好ましくは3〜12時間、更に好ましくは5〜8時間である。また反応系内は通常大気圧雰囲気とする(反応後期などに減圧にする場合もある)。一方、反応は酸化防止のため脱酸素雰囲気中で行うことが好ましく、窒素ガス雰囲気中で行うことがより好ましい。
【0095】
上記中間体生成のための反応後、反応系を減圧にすることにより未反応のオキシハロゲン化リンを除去する。かかる除去の温度は100〜200℃が好ましく、120〜180℃がより好ましく、130〜170℃が更に好ましく、145〜160℃が特に好ましい。減圧は0.1〜40kPaの範囲が好ましく、1〜35kPaの範囲がより好ましく、5〜30kPaの範囲が更に好ましい。温度が上限を超える場合および減圧が下限を下回る場合、生成した中間体のアルキリデン部分で分解した副生物が生成しやすくなる(例えば二価フェノールがビスフェノールAの場合にはイソプロペニルフェニル基の結合した中間体が生成する)。かかる副生物は以後の反応でハーフエステルを生成しやすい。
【0096】
上記操作により得られた中間体にフェノールなどの一般式(I)の側鎖成分を構成する一価フェノール(以下“原料(c)”と称する場合がある)を加えて反応を行い粗リン酸エステルを得る。かかる反応における触媒は上記中間体合成の場合の触媒をそのまま利用することが効率的だが改めて加えることも可能である。ここで原料(a)と原料(c)との比率(a):(c)はモル比で1:4〜1:4.5の範囲が好ましく、より好ましくは1:4〜1:4.2、更に好ましくは1:4〜1:4.05の範囲である。かかる一価フェノールの添加は反応系内に滴下するなど徐々に加える方法が好適である。一価フェノールが過剰に過ぎると上記中間体の反応でわずかに生成した分解副生物がハーフエステルに転換しやすくなり好ましくない。また不要の一価フェノールを除去するための工数が増加する。
【0097】
粗リン酸エステルを得る反応の反応温度は80〜120℃、好ましくは100〜120℃の温度で一価フェノールの滴下を行い、その後120℃以上、好ましくは130〜160℃の温度で反応させることが好ましい。120℃以下での反応時間は1〜6時間、好ましくは1.5〜4時間であり、滴下後120℃以上の温度に昇温するまでの時間は1〜6時間、好ましくは1.5〜4時間である。更に昇温後一定時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。更に上記中間体を得る反応の場合と同様、系内の雰囲気は窒素ガス雰囲気が好ましい。更に反応後期においては、脱ハロゲン化水素反応の促進のため、および系内に残存したハロゲン化水素を除去するため、系内を減圧下におくことが好ましい。かかる減圧は5kPa以下が好ましく、より好ましくは0.1〜2kPaの範囲である。
【0098】
上記反応終了後は更に以下の処理により粗リン酸エステルを精製することができ、精製することがより好ましい。すなわち、まず得られた粗リン酸エステルは塩酸、リン酸などの酸性水溶液やシュウ酸などの有機酸を用いて洗浄し、触媒を除去する。かかる洗浄は更に水を用いて数回繰り返して行うことが好ましい。更に水洗、湯洗、またはアルカリ中和によって不純物を除去する。またはエポキシ化合物の添加により不純物を除去可能な状態とし、その後水洗などを行うことで不純物を除去する。かかる操作によって酸価を低減する。特にプロピレンオキシドなどのエポキシ化合物で処理した後に水洗を行う方法が酸価低減のため有効である。かかるエポキシ化合物の使用は、酸価の低減と金属類の低減を効率よく行うことができ好ましい。かかる方法については、特開平8−67685号にその詳細が記載されている。
【0099】
このようにして触媒の除去により系全体の反応活性を低下させ、また不純物も除去した後に、反応系内を減圧して水、溶媒、未反応の一価フェノールなどを除去する。かかる方法は副生物を低減できるので好ましい方法である。かかる点は特開2001−151787号に開示されている。
【0100】
かくして得られたリン酸エステルを更に精製することができる。例えば、更にイソプロパノールなどの溶媒を用いて上記リン酸エステルを再結晶化処理に準じて処理する方法が挙げられる。通常上記リン酸エステルは粘性液状体として得られるが、かかる液状体とイソプロパノールなど各種溶媒を高温下で均一に混合し、その後冷却して分離したリン酸エステルを採取する。かかる処理の溶媒は適宜選択できるがアルコールが好ましく、特にイソプロパノールが好ましい。
【0101】
上記方法以外にもリン酸エステルを製造する方法として、(ii)一価フェノールとオキシハロゲン化リンとを反応させて、ジアリールホスホロハリデートを生成した後、更に二価フェノールとを反応させる方法がある。しかしながらかかる方法は、2,6−ジアルキル置換フェノールなどの特定の一価フェノールにおいては有効であるが、フェノールにおいてはジフェニルホスホロハリデートの純度が低くなるため有効とは言い難い。したがって本発明においてB成分の好ましい態様であるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステルの製造においては上記(i)の製法がより有利である。
【0102】
更に本発明においては、B成分のリン酸エステルはアルカリ(土類)金属含有量が500ppm未満のものが好適に使用される。該含有量は、好ましくは300ppm未満であり、さらに好ましくは100ppm未満である。リン酸エステル系難燃剤中のアルカリ(土類)金属は、上記各種の方法、特にエポキシ化合物で処理した後に水洗を行う方法によって、低減することが可能である。リン酸エステル系難燃剤に残存するアルカリ(土類)金属としては、主に触媒に由来するマグネシウム、あるいは洗浄に使用されるナトリウム、カリウム、カルシウムなどイオンを含む水溶液のアルカリ、アルカリ土類金属が挙げられる。
【0103】
<C成分について>
本発明のC成分であるハロゲン原子を含まないキノリン染料とは、ハロゲン原子を含まないキノリン化合物からなる染料であり、該キノリン化合物は、より具体的には、下記一般式(II)または(III)で表される化合物である。以下C成分を単に“キノリン染料”と称する場合がある。
【0104】
【化4】
Figure 0004836391
【0105】
【化5】
Figure 0004836391
【0106】
(上記式中、R9、R10、およびR11は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、eおよびfは0または1を示し、並びにgおよびhは0または1〜4の整数を示す。)
【0107】
前記キノリン染料においてより好ましい態様は、上記式(II)においては、eが0、fが1、およびgが0であり、また上記式(III)においては、eが0、fが1、およびhが0である。または式(III)の化合物がより好ましく、よって上記式(III)においては、eが0、fが1、およびhが0である化合物が最も好ましい。これら好ましい態様のキノリン染料は良好な着色と熱安定性を樹脂組成物に与え、大型の成形品に好適な難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。更に好ましい態様のキノリン染料は、ハロゲン原子を含有するキノリン化合物に比較して着色力および発色力が良好であり、少量で着色剤としての効果を発揮する。したがって好ましい態様のC成分により与えられる本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に対する有効性は、その構造の効果並びに少量添加によりもたらされる不純物量の低下の効果との相乗効果により発揮されると予想される。
【0108】
またキノリン染料は、トルエン不溶分の含有量が1%未満であることが好ましい。より好ましくはトルエン不溶分の含有量が0.5%未満であり、更に好ましくはトルエンの不溶分の含有量が0.1%未満である。このトルエン不溶分の含有量が1%以上になると、キノリン染料の熱安定性が劣り、樹脂の熱安定性、発色性が低下するようになる。
【0109】
このトルエン不溶分は、キノリン染料を製造する際に触媒として使用する金属類や、着色剤製造原料などが酸化された物である場合が多い。
【0110】
トルエン不溶分の少ない着色剤を得る方法は着色剤の製造方法によっても違いがあるため特に限定しないが、塩酸や酢酸、硫酸等で酸洗浄する方法が挙げられる。更にトルエン不溶分の少ない着色剤は、着色剤を溶媒に溶解したのち再結晶することで得られる。これら着色剤は、酸洗浄した後に前述した水洗浄処理を行うことも可能である。
【0111】
<A成分〜C成分の組成割合について>
前記A成分〜C成分の組成割合について説明する。かかる三者の割合は、A成分の熱可塑性樹脂75〜99重量部およびB成分のリン酸エステル1〜25重量部の合計100重量部当たり、C成分のキノリン染料が0.00001〜1重量部である。より好適には、A成分とB成分の合計100重量部中、A成分80〜95重量部およびB成分5〜20重量部であり、更に好適にはA成分82〜92重量部およびB成分8〜18重量部である。またC成分は、A成分とB成分の合計100重量部あたり、好ましくは0.0001〜0.7重量部であり、より好ましくは0.0005〜0.3重量部である。かかる範囲ではより良好な着色と熱安定性が樹脂組成物に与えられる。
【0112】
<D成分について>
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、更に二酸化チタンを含むことが好ましい。かかる二酸化チタンは良好な着色を成形品に与える一方、成形品の熱安定性についてはより不利となりやすく、逆に本発明の効果が発揮されやすい。D成分の二酸化チタンはアナターゼ型、ルチル型の何れのものでもよく、それらは必要に応じて混合して使用することもできる。初期の機械特性や、乾熱性や耐光性などの長期耐久性の点でより好ましいのはルチル型である。尚、ルチル型結晶中にアナターゼ型結晶を含有するものでもよい。更に二酸化チタンの製法は硫酸法、塩素法、その他種々の方法によって製造された物を使用できるが、塩素法がより好ましい。また本発明の二酸化チタンは、特にその形状を限定するものではないが粒子状のものがより好適である。平均粒径は0.01〜0.4μmが好ましく、0.1〜0.3μmがより好ましく、0.15〜0.25μmが更に好ましい。尚、かかる平均粒子径は電子顕微鏡観察から、画像処理装置により測定される面積から算出される円相当径を個々の粒子径として算出し、該粒子径の重量平均より算出される(比重は一定と仮定する)。
【0113】
D成分である二酸化チタンは、表面をアルミナなど無機物で処理されているものが使用でき、その処理には、格別の方法を採用する必要はなく、任意の方法によって行われる。処理によって付与される量については、少なすぎると組成物の熱安定性が不良となり、多すぎても熱安定性が不良となったり色調に劣るようになるので、表面処理された二酸化チタン微粉末中1〜15重量%の範囲になる量が好ましい。
【0114】
二酸化チタンの表面処理はアルミニウムの酸化物以外にも、シリコーン、チタン、ジルコニウム、アンチモン、スズ、亜鉛などの各種金属の酸化物も使用可能である。中でもシリコーン、すなわちSiO2による表面処理が好適である。またかかる表面処理は高密度な処理および低密度(多孔質)な処理の何れも選択できる。
【0115】
更にD成分の二酸化チタンは有機化合物で表面処理されていると望ましい。有機化合物の適度な表面処理は、分散性を良好にし耐熱性を向上させることにより、より良好な着色および熱安定性を樹脂組成物に与える。
【0116】
かかる表面処理剤としては、アミン類化合物を主成分とする表面処理剤、シリコーン化合物を主成分とする表面処理剤、ポリオール化合物を主成分とする表面処理剤などの各種処理剤を使用することができる。アミン類化合物を主成分とする表面処理剤としては、例えばトリエタノールアミンおよびトリメチロールアミンなどのアルカノールアミン、および該アミンと有機酸との塩などが挙げられる。シリコーン化合物を主成分とする表面処理剤としては、例えばアルキルクロロシラン(トリメチルクロロシランなど)、アルキルアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなど)、およびアルキルハイドロジェンポリシロキサン(メチルハイドロジェンポリシロキサンなど)などが挙げられる。ポリオール化合物を主成分とする表面処理剤としては、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、およびトリメチロールプロパンなどが挙げられる。なかでも、アミン類化合物を主成分とする表面処理剤で被覆したものが、キノリン染料との相性の点で好ましい。
【0117】
アミン類化合物におけるアルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、およびトリス(ヒドロキシジメチル)−アミンメタンなどが例示される。中でもトリアルカノールアミン化合物が好ましく、トリエタノールアミンが特に好ましい。上記アミン類化合物におけるアミンと塩を形成する有機酸としては、酢酸、プロピオン酸および吉草酸などのモノカルボン酸化合物、シュウ酸、マロン酸、コハク酸およびグルタル酸などのジカルボン酸化合物、並びに乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸などのオキシカルボン酸化合物が例示される。
【0118】
表面処理される有機化合物の量は、D成分100重量%当り1重量%以下が好ましく、0.6重量%以下が更に好ましく、0.4重量%以下が更に好ましい。一方下限としては0.05重量%以上が挙げられる。表面処理は、使用される有機化合物を二酸化チタンをマイクロナイザーやジェットミルなどの流体エネルギー粉砕機で粉砕する際に有機化合物またはその溶解液や分散液を添加して行うことができる。更にかかる粉砕において、有機化合物を予め気化させ気流式粉砕機の気流に混合して行うことができる。更に粉砕後の二酸化チタンをスーパーミキサーなどの高せん断力攪拌型混合機を用いて均一に混合して行うこともできる。尚、有機化合物の表面処理は、本発明の樹脂組成物を原料を溶融混練などして混合し組成物を製造する際に別途添加し、結果として二酸化チタン表面に処理がなされる態様であってもよい。
【0119】
二酸化チタンの組成割合は、A成分とB成分との合計100重量部あたり、好ましくは0.1〜3重量部であり、より好ましくは0.15〜2重量部であり、更に好ましくは0.2〜1.5重量部である。
【0120】
<E成分について>
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、更に各種の無機フィラーを含むことができる。無機フィラーは樹脂組成物の剛性を向上させ、成形品の薄肉化を達成し、その結果として製品の軽量化に寄与する。また大型成形品に要求される寸法安定性を達成するためにも有効である。更に本発明のおいて好ましい無機フィラーは、珪酸塩鉱物フィラー(E成分)である。珪酸塩鉱物フィラーは樹脂組成物の耐加水分解性の向上、および難燃性の向上などに寄与する。微細なフィラーは樹脂組成物に良好な外観を与え、該成形品から塗装を省略させる。
【0121】
前記無機フィラーとしては、例えば、タルク、ワラストナイト、マイカ、クレー、モンモンリロナイト、スメクタイト、カオリン、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊維、セラミックバルーン、グラファイト、並びに各種ウイスカー(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、および塩基性硫酸マグネシウムなど)などが挙げられる。これらの無機フィラーは1種もしくは2種以上を併用して含むものであってもよい。
【0122】
本発明の珪酸塩鉱物フィラー(E成分)としては、タルク、ワラストナイト、マイカ、クレー、モンモンリロナイト、スメクタイト、およびカオリンなどが好適に例示され、タルク、ワラストナイト、およびマイカがより好適に例示され、更にタルク、およびワラストナイトが更に好適に例示される。特にワラストナイトは成形品表面の耐擦傷性の低下を抑制できるフィラーとして好適に使用することができる。かかる特性は大型かつ無塗装の成形品においてより好適に必要とされる特性であり、したがってかかるワラストナイトを含む本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、好適な大型かつ無塗装の成形品を提供する。
【0123】
前記E成分の割合は、A成分とB成分の合計100重量部あたり、好ましくは0.1〜100重量部であり、より好ましくは1〜30重量部であり、更に好ましくは3〜20重量部である。
【0124】
<その他の成分について>
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、更に含フッ素滴下防止剤に代表される各種滴下防止剤を含むことができる。かかる滴下防止剤は燃焼時の溶融滴下を防止し難燃性を更に向上させる。滴下防止剤としては含フッ素滴下防止剤がより好適である。
【0125】
滴下防止剤として好適な含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることかできる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0126】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0127】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン30Jなどを代表として挙げることができる。
【0128】
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0129】
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。
【0130】
含フッ素滴下防止剤の組成割合は、A成分とB成分の合計100重量部あたり、0.01〜5重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましく、0.1〜1.5重量部が更に好ましい。
【0131】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、キノリン染料および好適には二酸化チタンを必須成分として含むが、更にその他の染料や顔料などの着色剤を含むことができる。かかる着色剤としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料等の有機系色剤やカーボンブラックが挙げられる。
【0132】
ここでカーボンブラックは、特に製造方法、原料種等に制限はなく、例えばオイルファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ランプブラック、ローラーブラック、ディスクブラック等のいずれも使用できる。また、カーボンブラックのストラクチャー、粒径、比表面積、着色力、DBP吸油量、揮発分、pH等の特性についても特に制限はないが、ストラクチャーが顕著に発達したものは成形加工性や成形品の表面外観に不利となる場合があるため、好ましいのはオイルファーネスブラックやチャンネルブラックである。またかかる好ましいカーボンブラックにおいてもHCC、HCF、MCF、LFF、RCFなどいずれのタイプも使用可能であるが、より好ましいのはHCF、MCF、LFFなどである。またpH値は7以下であるものがより好適であり、2〜6の範囲が更に好ましい。カーボンブラックは単独でまたは2種以上併用して使用することができる。
【0133】
更に本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、各種の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤などが含まれていてもよい。
【0134】
熱安定剤としてはリン系熱安定剤が好ましく挙げられ、ホスファイト化合物およびホスフェート化合物が好ましく使用される。ホスファイト化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のホスファイト化合物が挙げられる。これらのうち、難燃性および耐湿熱特性の観点からトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく使用される。
【0135】
一方、熱安定剤として使用されるホスフェート化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等が挙げられ、なかでもトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートが好ましい。
【0136】
更にその他のリン系熱安定剤としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンジホスホナイト等のホスホナイト化合物も、難燃性および耐湿熱特性の観点から好ましく使用することができる。
【0137】
前記リン系熱安定剤は、1種もしくは2種以上を併用してよい。リン系熱安定剤は、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量%中、0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.005〜0.3重量%の範囲で配合することが好ましい。
【0138】
また必要に応じて通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としてはフェノール系酸化防止剤を示すことができ、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。酸化防止剤の好ましい添加量の範囲は、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量%中、好ましくは0.0001〜0.5重量%であり、より好ましくは0.001〜0.3重量%である。
【0139】
紫外線吸収剤としては、例えば2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、および例えば2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示される。更に2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、並びにビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系の光安定剤も使用することが可能である。これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。これら紫外線吸収剤、光安定剤の好ましい添加量の範囲は、難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量%中、0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%である。
【0140】
また離型剤としては、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、パラフィンワックス、蜜蝋等が挙げられる。これらの中でも一価または多価アルコール高級脂肪酸エステルが難燃性、成形品外観の点で好ましく、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の炭素数10〜40の脂肪族飽和一価カルボン酸とエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとから誘導される部分エステルおよびフルエステルが好ましい。特に好ましくは、ステアリン酸とグリセリンの部分エステルまたはフルエステル、ペンタエリスリトールとステアリン酸の部分エステルまたはフルエステルである。離型剤は本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0141】
また帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、アルキルスルホン酸ナトリウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライドなどが挙げられる。
【0142】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分〜C成分、および任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要な場合には押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
【0143】
他に、各成分をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドして、パウダーで希釈した添加剤のマスターバッチとする方法が挙げられる。特にC成分およびD成分は、A成分のパウダーとスーパーミキサーなどを用いて均一にされたブレンド品(いわゆるドライブレンド品)をマスターバッチとして作成した後、かかるマスターバッチと他の成分とを混合することが好ましい。更にかかるブレンド品を製造する際に、C成分やD成分のパウダー中での分散を効率化し、より均一な分散状態とするために、流動パラフィンなどの分散剤を少量配合することができる。また別の方法としては、C成分とD成分を前記分散剤中に分散させた剤を、独立して溶融押出機に供給する方法なども挙げられる。これら溶融混練に際しての加熱温度は、好ましいA成分の熱可塑性樹脂においては通常240〜340℃の範囲で選ばれる。
【0144】
尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。かかる液注装置、または液添装置は加温装置が設置されているものが好ましく使用される。特に本発明のB成分は縮合度nの分布によっては固体状でなく液状となる。したがって押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用する方法が採用される。そのため、本発明で使用される押出機は、押出方向に対して、上流側と下流側に2つ以上の原料供給口を持つものが好ましく使用できる。その場合リン酸エステルの添加は、押出方向に対して最も下流側の原料供給口から投入することが好ましい。上流側の原料供給口を使用した場合、リン酸エステルの熱履歴が長くなる。
【0145】
また、かかるリン酸エステルの添加は、通常の押出機のバレルに設けたフィード口から、ギアポンプ等の公知の液体運搬装置で押出機内の吐出圧以上の圧力で供給する。なお、かかる供給時のリン酸エステルは50℃〜100℃、好ましくは60℃〜90℃、更に好ましくは70℃〜80℃の温度に加熱されたものを用いる。50℃以下ではリン酸エステルの粘度が高すぎて定量精度の高い添加が難しく、100℃以上では、長期の製造においてリン酸エステルの揮発、分解、または劣化を引き起こす場合がある。
【0146】
本発明で使用される押出機は、押出方向に対して、上流側と下流側に2つ以上の原料供給口を有することが好ましく、なかでも上流側に設けられた第1原料供給口、下流側のベント手前に設けられた第3原料供給口、そして第1と第3の中間付近に設けられた第2原料供給口の3つの供給口を有することがより好ましい。
【0147】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、通常かかるペレットを射出成形して成形品を得ることにより各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形法だけでなく、ホットランナー方式の成形法も可能である。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。
【0148】
また本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
【0149】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、良好な着色と熱安定性を有し、特に大型の成形品に適したものである。より具体的には、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物より形成された成形品であって、該成形品はその投影面積が2,000〜20,000cm2の範囲であり、その重量が300〜5,000gの範囲であることを特徴とする成形品が好適に提供される。かかる成形品は射出成形品であることが好適であり、射出成形法としては前記のとおり、通常の成形方法だけでなく、各種の射出成形方法を用いることができる。
【0150】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の特に好適な用途としては、例えばOA機器や家電製品の外装材に好適なものである。特にパソコン、ノートパソコン、ゲーム機(家庭用ゲーム機、業務用ゲーム機、パチンコ、およびスロットマシーンなど)、ディスプレー装置(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクタ、および有機ELなど)、並びにプリンター、コピー機、スキャナーおよびファックス(これらの複合機を含む)などの外装材において好適である。殊にA成分がA1成分およびA2成分からなる難燃性熱可塑性樹脂組成物は、これらの外装材に好適であり、特にノートパソコン、ディスプレー装置、ゲーム機およびコピー機やそれらの複合機などの大型製品の外装材に好適である。更にE成分としてワラストナイトを使用した難燃性熱可塑性樹脂組成物は、高剛性かつ表面の耐傷付き性の低下が少ないことから無塗装の大型製品の外装材に好適な特性を有する。したがって本発明によれば、E成分としてワラストナイトを使用した難燃性熱可塑性樹脂組成物からなる無塗装の外装材が提供され、更に好適にはノートパソコン、ディスプレー装置、ゲーム機およびコピー機やそれらの複合機などのかかる外装材が提供される。
【0151】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、その他幅広い用途に有用であり、例えば、携帯情報端末(いわゆるPDA)、携帯電話、携帯書籍(辞書類等)、携帯テレビ、記録媒体(CD、MD、DVD、次世代高密度ディスク、ハードディスクなど)のドライブ、記録媒体(ICカード、スマートメディア、メモリースティックなど)の読取装置、光学カメラ、デジタルカメラ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、およびタイプライターなどを挙げることができ、これらの外装材などの各種部品に本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物から形成された樹脂製品を使用することができる。またその他の樹脂製品としては、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品などの車両用部品を挙げることができる。
【0152】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明する。なお、実施例の表中における重量部は熱可塑性樹脂(A成分)およびリン酸エステル系難燃剤(B成分)の合計100重量部に対する割合である。評価は下記の方法によった。
(1)評価項目
(a)難燃性
UL規格94Vに従い厚み1.6mmの試験片を用い、燃焼試験を実施した。
(b)曲げ弾性率
ISO178に従い、試験速度2mm/minにより、曲げ弾性率を測定した。
(c)シャルピー衝撃強さ
ISO179に従い、ノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。
【0153】
(d)大型成形品の連続成形時の熱安定性
2箇所のピンサイドゲートを有する縦500mm、横600mm、厚み2.5mmの平板を、射出成形機[(株)日本製鋼所製J1300E−C5−15A]にて射出速度50mm/sec、50秒/1サイクルで100ショット連続成形した。図2に成形品の概要を示す。熱安定性の評価は、80から100ショット目までの成形品全体の両面の変色の度合いを下記のように評価した。
(大型成形品の連続成形時の熱安定性の評価)
○:変色の発生がない
△:やや変色の発生がある
×:変色の発生がある
【0154】
(e)大型成形品での滞留試験後の色相変化(色差ΔE)
前記(d)の評価に用いた平板を、上記と同条件で10ショット連続成形し、その後、計量が完了した状態で射出シリンダーを後退させてシリンダー内で溶融樹脂を20分間滞留させた。その後更に同様の条件で成形を行った。熱安定性の評価は、滞留前3ショットと滞留後3ショットの成形品のウエルド部中央部の色相を色差計(東京電色工業(株)製カラーアナライザーTC−1800MK−II)で反射法により測定し、滞留前後のハンター式色座標の色差(ΔE)を求めた。ΔEが大きいほど、変色が大きいことを示す。
【0155】
(f)表面傷付き性の評価
往復動摩擦摩耗試験機[東測精密工業(株)製AFT−15−M]を使用し、縦90mm、横50mm、厚み2mmの平板を用い、鋼球3mmφのピンを荷重1.8kgf、移動速度20mm/secでピンを圧着させながら平板上を40mm移動させ、傷を付けた。ピンの移動は片道1回とした。その後、表面の傷の深さを、表面粗さ形状測定機[(株)東京精密製サーフコム1400A]を使用し、傷深さ(SRv、中心面谷深さ)を測定した。SRvの数値が大きいほど、傷が深いことを示す。
【0156】
(A成分:熱可塑性樹脂)
PC:ポリカーボネート樹脂
[帝人化成(株)製:パンライトL−1225WP]
ABS−1:連続塊状重合法(三井東圧法)で製造されたABS樹脂
[日本エイアンドエル(株)製:サンタックUT−61]
ABS−2:連続塊状重合法(東レ法)で製造されたABS樹脂
[東レ(株)製:トヨラック700−314]
PPE:変性ポリフェニレンエーテル樹脂
[GEM社製;変性PPE]
HIPS:ハイインパクトポリスチレン樹脂
[出光石油化学(株)製:HT50]
MBS−1:MBS樹脂である衝撃改質剤
[三菱レイヨン(株)製;C−223A、コアがブタジエン重合体からなるゴム成分からなり、ブタジエン重合体70重量%であり、シェルがメチルメタクリレート−スチレン共重合体30%であるMBS樹脂]
MBS−2:MBS樹脂である衝撃改質剤
[呉羽化学工業(株)製;EXL−2633、コアがブタジエン重合体からなるゴム成分からなり、ブタジエン重合体80重量%であり、シェルがメチルメタクリレート−スチレン共重合体20%であるMBS樹脂]
MBS−3:スチレン系弾性樹脂である衝撃改質剤
[呉羽化学工業(株)製;HIA−15、コアがブタジエン15%および2−エチルヘキシルアクリレート50%の共重合体、シェルがスチレン15%およびメチルメタクリレート20%の共重合体であるスチレン系弾性樹脂
【0157】
(B成分:リン酸エステル)
FR−1:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル[大八化学工業(株)製CR−741]
(B成分以外のリン酸エステル)
FR−2:トリフェニルホスフェート
[大八化学工業(株)製:TPP]
【0158】
(C成分:キノリン染料)
C−1:前記一般式(III)において、e=0、f=1、およびh=0であるキノリン染料
[有本化学工業(株)製:プラストイエローY−8050]
C−2:ハロゲン原子を含有するキノリン染料
[有本化学工業(株)製:プラストイエローY−8010]
(C−1、C−2成分をそれぞれ含有する着色剤混合物C−3、C−4)
C−3:キノリン染料C−1成分[有本化学工業(株)製:プラストイエローY−8050]を含有する下記(C3−1)〜(C3−4)のPC、カーボンブラック、染料の混合物。かかるC−3は、酸化チタンと併用し、アイボリー系着色剤マスターとして使用した。なお、C−3と酸化チタンは、スーパーミキサーで均一に混合したドライカラーマスターとした後、他の原料との混合を行った。カッコ内の重量%は、C−3=100重量%に対する割合を示す。
【0159】
(C3−1)PC(99.78重量%)
(C3−2)CB970(0.17重量%)[三菱化成(株)製:カーボンブラック、カーボンブラック#970]
(C3−3)Y−8050(0.01重量%)[有本化学工業(株)製:プラストイエローY−8050(C−1成分)]
(C3−4)R−9370(0.04重量%)[有本化学工業(株)製:プラストレッドR−9370]
【0160】
(D成分:酸化チタン)
TI−1:トリエタノールアミンを含む表面処理がなされた二酸化チタン
[Tioxide社製:R−TC30]
TI−2:表面処理剤中アミン類を含まない二酸化チタン
[石原産業(株)製:タイペークPC−3]
【0161】
(E成分:珪酸塩鉱物フィラー)
TD:タルク
[勝光山鉱業所(株)製:ビクトリライトTK−RC]
WA:ウオラストナイト
[清水工業(株)製:H−1250F]
【0162】
(その他の成分)
PTFE:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン
[ダイキン工業(株)製:ポリフロン MPA FA−500]
ML:飽和脂肪酸エステル系離型剤
[理研ビタミン(株)製リケマールSL−900]
DC:酸変性ワックス
[三菱化学(株)製ダイヤカルナPA30M、無水マレイン酸とα−オレフィンとの共重合ワックス。無水マレイン酸の割合として約1meq/g、GPC法により測定され標準ポリスチレン換算で算出された重量平均分子量約8,400]
【0163】
[実施例1〜11、比較例1〜8]
表1、表2に示す組成で、熱可塑性樹脂、リン酸エステル、着色剤(染料、二酸化チタン)、珪酸塩鉱物フィラー、並びに各種添加剤をサイドフィーダー付きベント付二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX−30XSST)で溶融混練しペレットを得た。但しハロゲン原子を含有しないキノリン染料C−1とハロゲンを含有するキノリン染料C−2とは着色力が異なるため、ほぼ同等の色相(黄色味)にすべく、C−2の割合はC−1の5倍量(重量比)を基本とした。C−2がC−1と同量の場合には十分な着色力が達成されなかった。
【0164】
熱可塑性樹脂のうちPCまたはPPEと、着色剤、および各種添加剤は均一に混合したのち、スクリュー根元の第1供給口に供給した。尚、着色剤C−1、C−2はPCまたはPPEのパウダーに約10重量%の濃度を目安に混合し、スーパーミキサーで均一に混合してマスターバッチを作成した後、他の成分との混合を行った。押出条件は、スクリュウ回転数180rpm、ベント吸引度3000Pa、並びに吐出量15kg/hで溶融混練した。
【0165】
リン酸エステルのうち常温で液体のFR−1はサイドフィーダーが接続した第2供給口と、ベント排気口の間のブロックに液注装置(富士テクノ工業(株)製:HYM−JS−08)を用いて80℃に加温し、液体状態で供給した。また強化フィラーおよびスチレン系樹脂類(ABS−1、−2、およびHIPS)はサイドフィーダーから第2供給口へ供給した。押出温度は熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂のみの場合は、280℃、それ以外は240℃とした。得られたペレットは80℃で6時間、熱風乾燥機を用いて乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製;SG−150U)により燃焼試験片を得た。また同様に乾燥させたペレットを用いて(株)日本製鋼所製:J1300E−C5−15A射出成形機では、図1に示す熱安定性試験用成形品を得た。成形条件は、熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂のみの場合は、シリンダー温度290℃、金型温度50℃、それ以外はシリンダー温度260℃、金型温度50℃の条件であった。評価結果を表1および表2に示した。
【0166】
【表1】
Figure 0004836391
【0167】
【表2】
Figure 0004836391
【0168】
【発明の効果】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、過酷な成形条件下においても変色の少ない着色された難燃性熱可塑性樹脂組成物であり、電気・電子機器、OA機器、自動車分野等に幅広く適用でき、その奏する工業的効果は格別なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において使用した成形品の表面斜視概要図である(外形寸法:縦500mm、横600mm、厚み2.5mm)。
【符号の説明】
1 成形品本体
2 ピンサイドゲート(サイドゲート部の幅5mm、ゲート厚み1.2mm、ゲートランド長さ6mm、サイドゲートのタブ:幅8mm×長さ15mm、タブ部へのピンゲートの直径1.8mm)
3 ウエルドライン

Claims (5)

  1. ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂78〜88重量%およびABS樹脂および/またはMBS樹脂12〜22重量%を含有してなる樹脂、並びに変性ポリフェニレン樹脂74重量%およびハイインパクトポリスチレン樹脂26重量%を含有してなる樹脂からなる群より選ばれる1種の樹脂(A成分)75〜99重量部、および難燃剤として下記一般式(I)で表されるリン酸エステル化合物(B成分)1〜25重量部の合計100重量部、並びに下記一般式(III)で表されるハロゲン原子を含まないキノリン染料(C成分)0.00001〜1重量部からなる着色された難燃性熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 0004836391
    (ここでR1、R2、R3およびR4は各々独立した炭素数6〜12のアリール基であり、R5およびR6はメチル基または水素、R7およびR8はメチル基を表し、m1およびm2は0、1または2を示し、a、b、cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり、またnは0または1〜5の整数である。)
    Figure 0004836391
    (上記式中、R9、R11は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、e=0、f=1、h=0である。)
  2. 更に、顔料として二酸化チタン(D成分)をA成分とB成分の合計100重量部あたり0.1〜3重量部含んでなる請求項1に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記D成分は、アミン類化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項2に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 更に珪酸塩鉱物フィラー(E成分)を前記A成分とB成分の合計100重量部当り、0.1〜100重量部含んでなる請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物より形成された成形品であって、該成形品はその投影面積が2,000〜20,000cmの範囲であり、その重量が300〜3,000gの範囲であることを特徴とする成形品。
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