JP5448436B2 - 樹脂組成物及びこれを用いた成形体 - Google Patents
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Description
さらに、無機充填剤、無機補強剤を添加することにより、高強度、高剛性、高耐熱の材料が得られ、電気・電子関係部品、事務機器部品、各種外装材、工業用品等、多岐に亘って利用できる。
また、小粒子径ゴム粒子を含有するHIPS(ハイインパクトポリスチレン)を配合し、透明性と耐衝撃性とに優れた変性PPE樹脂組成物や、着色性に優れたポリスチレン樹脂組成物についての開示もなされている(例えば、特許文献1乃至5参照。)。
上記難燃化剤の中でも、縮合リン酸エステル系難燃剤を用いた樹脂組成物は、モノリン酸エステル系難燃剤を用いた樹脂組成物に比較して、耐熱性に優れ、射出成形時の発煙や金型への難燃剤の付着等の問題点が少ないという利点を有しており、さらにはモノリン酸エステル難燃性に比べて、引張り強度、曲げ強度及び弾性率等の剛性の向上が図られる反面、樹脂本来の耐衝撃性を低下させるという欠点を有している。また、モノリン酸エステルに比較して難燃効果が劣るため、より多量に添加する必要がある。
一方、着色性及び表面特性に優れている樹脂としては、例えば、AS樹脂、MMA樹脂、ABS樹脂、MAS樹脂やそれらのポリマーアロイが知られているが、これらの樹脂やポリマーアロイは、難燃化を図るためにはリン化合物は不向きであり、ハロゲンや三酸化アンチモンによる難燃化を行う必要があるため、環境上の観点からは好ましくなく、用途が限定されてしまうという欠点を有している。
前記(B)ゴム変性ポリスチレンは、ゴム粒子を含有しており、当該ゴム粒子の形態は主として複数細胞構造からなり、当該ゴム粒子の平均粒子径は0.3〜1.0μmであり、(B)ゴム変性ポリスチレン100質量%中、ゴム含量が3〜20質量%である。
但し、上記「主として複数細胞構造からなり」とは、全ゴム粒子中の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が、複数細胞構造であることを意味する。
上記式(I)、(II)中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基、R1、R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。
前記「主成分」の意義については、n=1の縮合リン酸エステルの含有率が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、n=2〜4の縮合リン酸エステルの合計含有率が数質量%〜10数質量%であるものとする。
上記式(I)中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。
前記「主成分」については、n=1の縮合リン酸エステルの含有率が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、n=2〜4の縮合リン酸エステルの合計含有率が数質量%〜10数質量%であるものとする。
本実施形態の樹脂組成物は、
下記(A)+(B)+(C)を100質量%として、(A)ポリフェニレンエーテル10〜95質量%と、(B)ゴム変性ポリスチレン90〜5質量%と、(C)難燃剤としてのリン化合物0〜40質量%とを含有し、さらに、(D)着色剤としての染料を含有する樹脂組成物である。
前記(B)ゴム変性ポリスチレンは、ゴム粒子を含有しており、当該ゴム粒子の形態は主として複数細胞構造からなり、当該ゴム粒子の平均粒子径は0.3〜1.0μmであり、(B)ゴム変性ポリスチレン100質量%中、ゴム含量が3〜20質量%である。
但し、上記「主として複数細胞構造からなり」とは、全ゴム粒子中の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が、複数細胞構造であることを意味する。
(A)ポリフェニレンエーテルは、下記式(III)及び/又は(IV)で表される単位の繰り返しである単独重合体、又は共重合体である。
但し、R5とR6とは、同時に水素ではないものとする。
このような物性を有するポリフェニレンエーテルは、成形流動性の観点から好適である。
このような変性ポリフェニレンエーテルは、特開平2−276823号公報、特開昭63−108059号公報、特開昭59−59724号公報等に記載されており、例えばラジカル開始剤の存在下又は非存在下で、ポリフェニレンエーテルに不飽和カルボン酸やその誘導体を溶融混練し、これらを反応させることによって得られる。また、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸やその誘導体とを、ラジカル開始剤存在下又は非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって得られる。
また、飽和カルボン酸であるが変性ポリフェニレンエーテルを製造する際の反応温度でそれ自身が熱分解し、不飽和カルボン酸やその誘導体となり得る化合物も用いることができる。例えば、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該(A)ポリフェニレンエーテルと、後述する(B)ゴム変性ポリスチレンとの比率は、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性及び難燃性に影響する。
耐熱性と難燃性とを確保するためには、(A)ポリフェニレンエーテルの含有量が多いことが好ましく、良好な成形流動性を得るためには、(B)ゴム変性ポリスチレンが多いことが好ましい。最終的に目的とする樹脂組成物の要求特性に応じて任意にこれらの比率を選択する。
本実施形態において用いる(B)ゴム変性ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン(HIPS))は、ゴム粒子を含有している。
すなわち、例えば顕微鏡等により観察すると、海島構造となっていて、この「島」の部分が、上記「ゴム粒子」に該当する。
「複数細胞構造」とは、薄肉の外郭層を有する該ゴム粒子相の中に複数のポリスチレン粒子が蜂の巣状に内蔵された構造である。
ゴム粒子の平均粒子径は、0.4〜1.0μmが好ましく、0.5〜1.0μmがより好ましく、0.7μmを超えて0.9μm未満がさらに好ましい。
前記複数細胞構造は、4個以上の複数細胞構造であることが好ましく、10個以上の複数細胞構造であることがさらに好ましい。
なお、ゴム個数は1000個以上測定することが好ましく、写真でのゴム粒子形状が円とみなせない場合には、円相当にみなして測定する。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。
また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、上記スチレン系化合物とともに使用される。これらスチレン系化合物と共重合可能な化合物の使用量は、スチレン系化合物との合計量に対して20質量%以下が好ましく、さらに好ましくは15質量%以下である。
さらに、ゴム質重合体としては、例えば、共役ジエン系ゴム、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びそれらを部分的に水素添加された不飽和度80〜20%のポリブタジエン、又は1,4−シス結合を90%以上含有するポリブタジエンが挙げられる。
上記特性を有するゴム変性ポリスチレン(B)成分を用いることにより、本実施の形態における樹脂組成物は、光沢度が80以上であり、色むらやフローマークの少ない優れた着色性、表面特性が得られ、セルフタッピング性や表面硬度にも優れたものとなる。
さらには、光沢度90以上、特に光沢度95以上の場合には、色むらやフローマークが極めて少なく、装飾性用途としてきわめて有用である。
上記光沢度は、JIS−Z−8741に基づき、本実施形態の樹脂組成物を用いて成形品を作製し、この成形品に対して、入射角60度の条件下で測定を行うことにより求められる。
ゴム含量は,(B)ゴム変性ポリスチレンのゴム含量を調節すること、及びホモポリスチレンを併用することによって調節できる。
(B)ゴム変性ポリスチレンの成分組成量は、併用されるホモポリスチレンをも包含する。
なお、樹脂組成物中におけるゴム含量は、1〜7質量%の範囲が好ましく、2〜5質量%の範囲がより好ましいが、(B)ゴム変性ポリスチレンの他のゴム変性ポリスチレンを併用する場合には、この他のゴム変性ポリスチレンも含めて上記範囲が好ましい。
上述したように、(A)ポリフェニレンエーテルと(B)ゴム変性ポリスチレンとの比率は、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性及び難燃性に影響するため、最終的に目的とする樹脂組成物の要求特性に応じて任意に含有比率を選択する。
本実施形態における樹脂組成物を構成する(C)難燃剤としてのリン化合物としては、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸塩類、ホスフォン酸塩類、ホスホルアミド化合物等が挙げられる。
(有機リン酸エステル化合物)
有機リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5’−トリ−メチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチル−ヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル−(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルフォスフェート、1−ナフチルジフェニルフォスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルホスフェート等が挙げられる。
さらに、上記式(I)で示される縮合リン酸エステルは、他のリン酸エステルを使用した場合に比べて、最終的に得られる樹脂組成物の表面硬度、セルフタッピング特性が優れたものとなるため好ましい。
より好ましくは、上記式(I)におけるQ1、Q2、Q3、Q4が、水素又はメチル基であり、R1、R2が水素、R3、R4がメチル基であり、nの範囲が1〜3、特にnが1であるリン酸エステルを50%以上含有するものである。
さらに好ましくは、酸価が0.1未満のものである。
ここで、酸価とは、JIS K2501に準拠し、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される値である。
縮合リン酸エステル酸価が大きい場合には、樹脂組成物の成形時に金型が腐食され易く、該化合物が分解しやすいために加工時のガスの発生が多くなり、更には樹脂組成物の電気特性が悪化する等の問題が起こる。
ホスファゼン化合物としては、下記式(IV)に示す環状及び直鎖状の構造を有するものが挙げられるが、環状構造化合物が好ましく、n=3及び4の6員環及び8員環のフェノキシホスファゼン化合物が特に好ましい。
これらホスファゼン化合物を得るための合成例は、例えば、特公平3−73590号公報、特開平9−71708号公報、特開平9−183864号公報及び特開平11−181429号公報等に開示されている。
例えば、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物の合成については、H.R.Allcock著、“Phosphorus−NitrogenCompounds“,Academic Press,(1972)に記載の方法に準じて行うことができ、具体的には、ジクロルホスファゼンオリゴマー(3量体62%、4量体38%の混合物)1.0ユニットモル(115.9g)を含む20%クロルベンゼン溶液580gに、ナトリウムフェノラートのトルエン溶液を撹拌下で添加し、その後、110℃で4時間反応させ、精製することにより、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物が得られる。
さらに、酸価が0.5以下のホスファゼン化合物は、難燃性、耐水性及び電気特性面からより好ましい。
ホスフィン酸塩類としては、下記式(VI)で表されるホスフィン酸塩及び/又は下記式(VII)で表されるジホスフィン酸塩及び/又はこれらの縮合物(本明細書中では、ホスフィン酸塩類と略記)が挙げられる。
R3は、直鎖状又は分岐状の、C1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレン、又はC6〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは2又は3であり、nは1〜3であり、xは1又は2である。
例えば、ホスフィン酸塩は、水溶液中にホスフィン酸を金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物と反応させることにより製造できるが、この方法に限定されるものではなく、ゾル−ゲル法等によって製造してもよい。
ホスフィン酸塩類は、一般にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3の縮合物であるポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。
前記ホスフィン酸塩類を構成するホスフィン酸としては好適なものとしては、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
前記ホスフィン酸塩類を構成する金属成分としては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及び/又はプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上が挙げられ、特に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンから選ばれる1種以上が好ましい。
上記範囲の粒子径を得るための手法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記粒子径以上のホスフィン酸塩類の塊を溶剤中に分散して湿式粉砕し、分級する方法が挙げられる。
特に、平均粒子径が0.5μmを超え20μm以下の微粉末を用いることにより、本実施形態における樹脂組成物において、高い難燃性が発揮され、成形品の耐衝撃性の向上効果が得られ、良好な流動性、成形加工性が確保でき、さらには外観特性が改善する。
d75%/d25%の値が1.0を超え5.0以下であるホスフィン酸塩類を使用することにより、本実施形態における樹脂組成物の面衝撃強度の著しい向上が図られる。
具体的には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所(株)製)を用いて、3%イソプロパノール水溶液の分散媒でブランク測定を行った後、測定試料を規定の透過率(95%〜70%)になるように入れて測定することにより求められる。
なお、分散媒中への試料の分散は、超音波を1分間照射することにより行う。
また、(C)難燃剤としてのリン化合物は、必要な難燃性レベルに応じて添加され、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計量に対して0〜40質量%の範囲で用いられ、好ましくは1〜35質量%の範囲、より好ましくは3〜30質量%の範囲である。1質量%以上添加することにより難燃効果が得られ、40質量%以下とすることにより、樹脂組成物の機械的強度や耐熱性の低下を実用上十分な程度に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物には、(D)着色剤として染料が含有されている。
(D)着色剤としては、プラスチックの着色剤として一般的に用いられる染料を適用でき、各種組み合わせにより所望の着色が可能である。無機顔料、有機顔料を併用してもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、着色性、特に黒着色性に優れている。
三原色及び補色染料の組み合わせにより黒着色にできるが、その場合の添加量は、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、(D)着色剤としての染料を0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることがさらにより好ましい。
染料の含有量を0.1質量部以上とすることにより良好な着色性が得られ、経済性及び組成物特性に対する影響の観点から、添加量の上限は3質量部とすることが好ましく、2質量部とすることがより好ましく、1質量部程度とすることがさらにより好ましい。
優れた黒色度を有し、かつウェルド部の色むらや目立ちが少ない黒着色性レベルについては、CIE(国際照明委員会)基準表色系によって定めることができる。本実施形態の樹脂組成物においては、CIE基準表色系のL*が29以下であることが好ましく、L*が28以下であり、a*が−1.0以上0.5以下、b*が−3.0以上0.5以下であることがより好ましく、L*が28以下、a*が−0.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.5以下であることがさらに好ましく、L*が27.4以下、a*が−0.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.3以下であることがさらにより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(E)ポリオレフィン系樹脂が、含有されているものであってもよい。
(E)ポリオレフィンとは、エチレンの単独共重合体又は共重合体であり、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
上記のうちでも、線状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、及びエチレン−エチルアクリレート共重合体が好ましく、エチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体がより好ましい。
エチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−ブテン共重合体は、一般に非晶性又は低結晶性の共重合体であり望ましい。
これらの共重合体には、さらに性能に影響を与えない範囲でその他の成分が共重合されていてもよい。
エチレンとプロピレン又はブテンとの成分比率は、特に限定するものではないが、プロピレン又はブテン成分は、5〜50モル%の範囲が一般的である。これらは一般に市販されているものを入手でき、例えば三井化学(株)製「タフマー(商品名)」を適用できる。
本実施形態の樹脂組成物は、(F)水添ブロック共重合体が、含有されているものであってもよい。
(F)水添ブロック共重合体とは、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体とのブロック共重合体を水素添加して得られる共重合体である。
例えば、ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロックと共役ジエン単量体単位の重合体ブロックとを水素添加して得られる、基本的にランダム共重合体部分を含有しないかほとんど含有しないブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体が挙げられる。市販品としては、クレイトンポリマー社のクレイトンG(商品名)、旭化成社のタフテック(商品名)、クラレ社のセプトン(商品名)が知られている。
すなわち本実施形態においては、(F)水添ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックを50質量%以上と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックを50質量%未満とを有する水添ブロック共重合体であることが好ましい。
(F)水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック含有量が、上記範囲にあることにより、本実施形態の樹脂組成物が、優れた外観特性を有し、機械的強度と成形加工性とのバランスに優れたものとなる。良好な着色性と成形加工性を確保する観点からは、ビニル芳香族単量体単位成分をブロック共重合体の60〜80質量%とすることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物において、良好な着色性や表面特性を確保し、成形時における離型効果と耐衝撃性改良効果とを発揮するためには、(F)水添ブロック共重合体の含有量は、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜4質量部がより好ましく、1〜3質量部がさらに好ましい。
特に、良好な成形性を確保する観点から、離型剤の添加は効果的である。離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド及びビスアミド、高級脂肪酸の多価アルコールエステル及び高級アルコールエステル、ポリエチレンワックス類等が挙げられる。
また、従来から知られた各種難燃剤及び難燃助剤、例えばポリテトラフロロエチレン重合体及び共重合体、シリコンオイル、シリコンレジンを添加することにより、さらに難燃性の向上効果が得られる。
本実施形態の樹脂組成物を製造する方法については、特に限定されるものではないが、一般的には、押出機を用いて溶融混練することにより製造できる。特に、原材料成分を製造工程の途中で添加可能な二軸押出機が、高い生産性を確保し、良質な樹脂組成物を得る観点から好ましい。
混練温度は、ベース樹脂(A)、(B)の好ましい加工温度に従えばよく、一般的には240〜360℃の範囲、好ましくは260〜320℃の範囲である。
予め溶融混練したペレット状の中間組成物を得、次工程で他の混練機器を用いて上記他の成分を添加する二段階で樹脂組成物を製造してもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法等の一般的な成形方法により成形品に加工できる。
特に、金型表面の温度を、射出樹脂の熱変形温度近傍以上に上げておき、樹脂の射出と保圧工程の間は熱変形温度以上に保ち、保圧工程終了後、短時間で金型温度を下げて、樹脂を冷却し、成形品を取り出すヒートサイクル成形法は、ウェルドラインが目立たず、外観特性が良好な成形品が得られる方法として優れている。
一方、本実施形態の樹脂組成物を用いることにより、ウェルドラインが全く目立たず、ウェルド部における色むらもほとんど無く、商品価値の高い成形品が得られる。
本実施形態の樹脂組成物を用いることにより、表面特性に優れた光沢度が90%以上の成形品が得られ、例えば美観に優れたテレビ外装用成形体が得られる。
(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)
ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル(旭化成プラスチックス シンガポール社製、ザイロン S201A)。
HIPS−1:ゴム粒子の形態が粒子の90%以上が複数細胞構造からなり、ゴム粒子の平均粒子径が0.8μm、ゴム含量がポリブタジエン10質量%
HIPS−2:ゴム粒子の形態が粒子の95%以上が1個のポリスチレンコア(単細胞構造)からなり、ゴム粒子の平均粒子径が0.3μm、ゴム含量がスチレン−ブタジエンブロック共重合体15質量%
HIPS−3:ゴム粒子の形態が粒子の90%以上が複数細胞構造からなり、ゴム粒子の平均粒子径が1.3μm、ゴム含量がポリブタジエン12質量%
GPPS:スチレン単独重合体(PSジャパン社製、PSJポリスチレン 680)
BDP:ビスフェノールAのビスジフェニルホスフェートを主成分とする酸価=0.05の縮合リン酸エステル(大八化学(株)製、商品名 CR−741)
TPP:トリフェニルホスフェート(大八化学(株)製、商品名 TPP)
赤系染料 ;SOLVENT RED 179
黄色系染料;DISPERSE YELLOW 160
緑色系染料;SOLVENT GREEN 3
紫色系染料;SOLVENT VIOLET 13
黒(青)系染料;SOLVENT BLACK 7
比較着色剤;カーボンブラック
エチレン−プロピレン共重合体(三井化学(株)のタフマー(登録商標)P−0680)
スチレン含有量60質量%、スチレンブロック含有量60質量%のスチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、タフテック(登録商標)H1081)
(1)色調
分光光度計(マクベス社製、MS2020型)を用い、キセノンランプD65光源、d/8受光、SCI(全反射測定)で色調を測定し、国際照明委員会(CIE)表色系に基づいて、L*、a*、b*で表した。
鏡面光沢を有し、90mm×50mm×2.5mmの平板作製用の金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して平板を作製し、平板の中央部を測定した。
鏡面光沢を有する150mm×150mm×2mmの平板の中央部にウェルドラインができる2点ピンゲートの平板金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して平板を作製し、目視によりウェルドラインの色調を判定した。
異方性確認できないものを○(良い)、やや目立つものを△(普通)、明らかに目立つものを×(悪い)の3段階で評価した。
鏡面光沢を有する150mm×150mm×2mmの平板の中央部にウェルドラインができる2点ピンゲートの平板金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して平板を作製し、目視によりゲート近辺部分、その他平板全体のフローマークを評価した。
フローマークがほとんど目立たないものを○(良い)、やや目立つものを△(普通)、明らかに目立つものを×(悪い)の3段階で評価した。
JIS−Z−8741に基づき、下記の成形品に対して、入射角60度の条件下で測定を行った。
成形品1:鏡面光沢を有する90mm×50mm×2.5mmの平板作製用の金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して作製した平板の中央部を測定した。
成形品2:鏡面光沢を有するISO−527の引張試験片金型を用い、加熱シリンダー温度220℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して得られた試験片の半ゲート側中央部を測定した。
ISO−179に基づいて評価した。
(6)曲げ強度、曲げ弾性率
ISO−178に基づいて評価した。
(7)鉛筆硬度
JIS−K−5600に基づいて、上記(1)色調評価に用いた平板と同一の平板を用いて引っ掻き硬度を評価した。
(8)難燃性
UL−94 垂直燃焼試験に基づいて、厚さ1.6mmの射出成形試験片を用いて測定し、10回接炎時の合計燃焼時間と燃焼時の滴下物の有無を評価した。
150mm×150mm×3mmの平板に、肉厚3mm、内径3.6mmφのボスがついた成形品を射出成形し、ボス口に4mmφのタッピングネジを締め付け、トルク15kg・cmより1kg・cm刻みでトルクを上げて繰り返し締め付け、タッピング部が崩れて空回りしたときのトルク(kg・cm)で表した。
射出成形により試験片を成形した際の、試験片及びランナーの金型からの型離れのし易さの程度を目視判定した。
離型性が良いものは○、やや良くないものは△、離型がひどく悪いものは×の3段階で評価した。
下記表1〜表3に示す割合で材料を配合し、スクリュー直径40mmのニーディングディスクを組み合わせた同方向回転二軸押出機を用いて、溶融混合を行い、樹脂組成物を作製した。
ポリフェニレンエーテル(PPE)、ホモポリスチレン(GPPS)又はHIPSの一部及び安定剤としてのトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.2質量部を、押出機の上流投入口からフィードし、HIPS、着色剤(染料)、ポリオレフィン樹脂及び水添ブロック共重合体を予備ブレンドして押出機中流投入口からサイドフィードし、難燃剤を押出機下流から圧入添加した。
着色剤としての染料は、黒色に着色するために、種類及び割合を組み合わせて配合した。
押出機の運転条件は、加熱シリンダーの上流温度を320℃、下流温度を270℃、スクリュー回転数300rpmとし、ベント口から真空脱揮しながら溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られた樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形により最高設定温度240℃、金型温度60℃の条件下で評価用の物性試験片を成形した。
上述した(1)〜(10)の試験法により評価した。評価結果を下記表1〜表3に示す。
表2に示すように、比較例1、2においては、HIPS−3に含有されているゴム粒子径が大きすぎ、良好な外観特性が得られなかった。
比較例3、4においては、HIPS−2に含有されているゴム粒子の形態が、95%以上において1個のポリスチレンコア(単細胞構造)からなるものであるため、実用上十分な機械的強度を有する樹脂組成物が得られなかった。
比較例5、6においては、染料を用いず、顔料のみで着色したため、色調ムラが目立ち、外観特性が劣ったものとなった。
表3に示すように、実施例10〜12においては、(E)ポリオレフィン系樹脂(エチレン−プロピレン重合体)、(F)水添ブロック共重合体を配合したことにより、良好な外観特性、高い機械的強度及び離型性が極めて良好な優れた成形加工性を有する組成物が得られた。
実施例13〜実施例15は、比較例3との対比において、HIPS−1をさらに含有させたことにより、耐衝撃性の飛躍的な向上効果が得られた。
また、実施例4との対比において、光沢度が向上した。これは、HIPS−1の含有量を減らし、HIPS−2を併用したことが有効に機能したためである。
Claims (11)
- 下記(A)+(B)+(C)を100質量%として、
(A)ポリフェニレンエーテル10〜95質量%と、
(B)ゴム変性ポリスチレン90〜5質量%と、
(C)難燃剤としてのリン化合物0〜40質量%と、
を含有し、さらに、(D)着色剤としての染料を含有する樹脂組成物であって、
前記(B)ゴム変性ポリスチレンは、ゴム粒子を含有しており、当該ゴム粒子の形態は、ゴム粒子の80%以上が外郭層を有する当該ゴム粒子相の中に複数のポリスチレン粒子が内蔵された構造の複数細胞構造からなり、
当該ゴム粒子の平均粒子径は0.3〜1.0μmであり、(B)ゴム変性ポリスチレン100質量%中、ゴム含量が3〜20質量%である、樹脂組成物。 - 前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤
としての染料を、0.1質量部以上含有している請求項1記載の樹脂組成物。 - 前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤
としての染料を、0.2質量部以上含有しており、
CIE基準表色系のL*が29以下である請求項1に記載の樹脂組成物。 - 前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤
としての染料を、0.3質量部以上含有しており、
CIE基準表色系のL*、a*、b*が、それぞれ、L*が28以下、a*が−1.0
以上0.5以下、b*が−3.0以上0.5以下である請求項1に記載の樹脂組成物。 - 前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、前記(D)着色剤
としての染料を、0.5質量部以上含有しており、
CIE基準表色系のL*、a*、b*が、それぞれ、L*が27.6以下、a*が−0
.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.3以下である請求項1に記載の樹脂組成
物。 - 前記(C)難燃剤が、
下記式(I)
下記式(II)
(式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜
2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。) - 前記(C)難燃剤が、下記式(I)
(式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、
R2、R3、R4は、水素又はメチル基を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0〜
2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1〜3の整数を示す。) - (E)ポリオレフィン系樹脂を、前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質
量部に対して、0.1〜3質量部さらに含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の
樹脂組成物。 - (F)ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックを50質量%以上と、共役ジエ
ン単量体単位を含む重合体ブロックを50質量%未満と、を有する水添ブロック共重合体
を、
前記(A)+前記(B)+前記(C)の合計100質量部に対して、0.2〜5質量部
さらに含有する請求項8に記載の樹脂組成物。 - 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂組成物の射出成形した成形体であり、
JIS−Z−8741に基づく光沢度が90%以上である成形体。 - テレビ外装用成形体である請求項10に記載の成形体。
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