JP2010241856A - 樹脂組成物 - Google Patents

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貴章 三好
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Abstract

【課題】成形品の部位の違いにおける光反射性のブレを抑制し、均一な光反射性を有する樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂、リン系難燃剤、2種以上の有機染料及び、光反射性を付与する光沢顔料を含む樹脂組成物とすること。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物に関する。
変性ポリフェニレンエーテルは、従来より、家電製品や電気電子部品用途をはじめ多種多様な用途に使用されている。
近年の家電製品を中心に、高品位な外観を有する材料の一つとして、漆黒調を有する樹脂材料の採用が増加してきている。
これに対応する為、変性ポリフェニレンエーテル材料の着色剤として、従来のカーボンブラックではなく、有機染料を用いた着色処方で黒に染色し、深みのある黒を得る技術が例えば特許文献1に開示されている。
現在、家電製品外装材料には、更なる付加価値として、ラメ模様を付与した加飾型でかつ、深みのある色合いの外装材が増えつつある。
熱可塑性樹脂にラメ模様を付与する技術としては、微薄片状雲母の表面に酸化チタンを被覆したパール顔料を分散させた熱可塑性樹脂からなる表面が鏡面仕上げされた意匠性シートに関する技術が特許文献2に開示されているほか、光沢顔料を含む樹脂フィルム、または該樹脂フィルムと着色樹脂フィルムとの積層されたフィルムの開示が特許文献3になされている。
米国公開特許2008/245270号公報 特開平3−173626号公報 特開2001−226500号公報
ところが、加飾されたフィルム積層する手法では、生産にかかる工数が多くなり、結果的に費用が多大となり、量産性の妨げとなっている。こういった背景より、射出成形のみで光反射性を有する材料の得る技術が待望されているのが現実である。
しかしながら、単に背景技術にあるような顔料を変性ポリフェニレンエーテル系樹脂に混入したのでは、顔料の偏在現象が発生し、均一なラメ模様を得る事が困難であるのが実情である。これら課題は、上述した特許文献の開示技術だけでは解決し得ない。
すなわち、本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、高い表面光沢性と、深みのある色合いを有しつつ、高い光反射性を成形体全面に渡って均一に有する樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂、リン系難燃剤、2種以上の有機染料及び、光反射性を付与する光沢顔料を含む樹脂組成物を用いることにより、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
[1]
ポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂、23℃で液体状態であるリン系難燃剤、2種以上の有機染料及び、光反射性を付与する光沢顔料を含む樹脂組成物。
[2]
光反射性を付与する光沢顔料が、アルミ粉、真鍮粉、二酸化チタン被覆雲母及び、メタリック顔料からなる群より選ばれる1種以上の光沢顔料である上記1に記載の樹脂組成物。
[3]
メタリック顔料が、金属及び/又は金属酸化物の層で表面が被覆されたフレーク状フィラーである上記2に記載の樹脂組成物。
[4]
メタリック顔料の被覆層の厚みが10〜200nmの範囲内である上記3に記載の樹脂組成物。
[5]
フレーク状フィラーがガラスフレークである上記3に記載の樹脂組成物。
[6]
メタリック顔料が、ガラスの屈折率よりも高い屈折率を有する物質で被覆されたガラスフレークである上記5に記載の樹脂組成物。
[7]
メタリック顔料が、金、銀、真鍮、チタン、ニッケル、またはそれらの合金、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄からなる群より選ばれる1種以上の層で表面が被覆されたフレーク状フィラーである上記2〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[8]
光反射性を付与する光沢顔料の厚みが100nm〜30μmの範囲内である上記1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[9]
光反射性を付与する光沢顔料のアスペクト比が10〜40である上記1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[10]
23℃で液体状態であるリン系難燃剤が、下式で表される上記1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
Figure 2010241856
又は、
Figure 2010241856
(ここで、Q1、Q2、Q3、Q4は、独立に炭素数1から6のアルキル基を表す。R1、R2、R3、R4は独立に水素、またはメチル基を表す。nは1以上の整数を表す。n1、n2は独立に0から2の整数を表す。m1、m2、m3、m4は、独立に0から3の整数を示す。)
[11]
スチレン系樹脂が、ポリスチレン中のゴム粒子の80個数%以上が、コア−シェル型構造(実質的にサラミ構造を有さない、ポリスチレンコアを内包するゴムシェル構造)を有し、該ゴムシェルの平均粒子径が0.1〜0.45μmであるゴム補強ポリスチレンを含む上記1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[12]
上記1記載の樹脂組成物からなる家電製品外装材
本発明によれば、高い表面光沢性と、深みのある色合いを有しつつ、高い光反射性を成形体全面に渡って均一に有する樹脂組成物とすることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。本実施形態の樹脂組成物を構成する各成分について以下に詳しく述べる。
本発明で用いる事が可能なポリフェニレンエーテルは、下記式(III)及び/又は(IV)で表される単位の
繰り返しである単独重合体、又は共重合体である。
Figure 2010241856
Figure 2010241856
(前記式(III)、式(IV)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基のいずれかを表す。但し、R5とR6とは、同時に水素ではない。)
ポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−14−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテルポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられる。
上記ポリフェニレンエーテルの単独重合体の中では、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましく、特開昭63−301222号公報等に記載されている2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含んでいるポリフェニレンエーテルも、より好ましく使用可能である。
一方、ポリフェニレンエーテル共重合体とは、フェニレンエーテル構造を主単量単位とする共重合体である。具体的には、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。
実用上の観点からは、30℃のクロロホルム溶液で測定した還元粘度(ηsp/c)の下限は、0.3dl/gであることが好ましく、0.4dl/gであることがより好ましい。また上限としては、0.7dl/gであることが好ましく、0.6dl/gであることがより好ましい。
耐薬品性の悪化を抑制するため、下限は0.3dl/g以上とする事が好ましく、成形流動性の悪化を抑制する為に、上限は0.7dl/gとする事が好ましい。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の分子量を基準とした分散比(重量平均分子量/数平均分子量)は、その下限として2.2以上であることが好ましい。より好ましくは、2.3である。また上限としては5.0であることが好ましく、3.5であることが更に好ましい。
機械的特性をより高くするために、ポリフェニレンエーテルの分散比は、上述の範囲内である事が好ましい。
本実施形態においては、(A)ポリフェニレンエーテルとして、ポリフェニレンエーテルの一部又は全部を不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリフェニレンエーテルを用いることができる。
このような変性ポリフェニレンエーテルは、特開平2−276823号公報、特開昭63−108059号公報、特開昭59−59724号公報等に記載されており、例えばラジカル開始剤の存在下又は非存在下で、ポリフェニレンエーテルに不飽和カルボン酸やその誘導体を溶融混練し、これらを反応させることによって得られる。また、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸やその誘導体とを、ラジカル開始剤存在下又は非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって得られる。
ポリフェニレンエーテルを変性する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハロゲン化マレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等や、これらジカルボン酸の酸無水物、エステル、アミド、イミド等、さらにはアクリル酸、メタクリル酸等や、これらモノカルボン酸のエステル、アミド等が挙げられる。
また、飽和カルボン酸であるが変性ポリフェニレンエーテルを製造する際の反応温度でそれ自身が熱分解し、不飽和カルボン酸やその誘導体となり得る化合物も用いることができる。例えば、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における、ポリフェニレンエーテルの好ましい含有量は、当該ポリフェニレンエーテルと、下記スチレン系樹脂の合計量を100質量%とした時、10〜90質量%の範囲内である。当該ポリフェニレンエーテルと、スチレン系樹脂との比率は、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性及びに大きく影響する。耐熱性ととを確保するためには、ポリフェニレンエーテルの含有量が多いことが好ましく、良好な成形流動性を得るためには、スチレン系樹脂が多いことが好ましい。最終的に目的とする樹脂組成物の要求特性に応じ、任意にこれらの比率は選択可能である。
本実施形態において用いるスチレン系樹脂について説明する。
本実施形態でいうスチレン系樹脂とは、スチレン単量体成分を70質量%以上含む非結晶性の樹脂である。より好ましくは、80質量%、更に好ましくは85質量%がスチレン単量体で構成されるスチレン系樹脂が好ましい。スチレンと共重合可能な他のモノマーの例としてはα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられる。
また、本実施形態のスチレン系樹脂には、ハイインパクトスチレンと称されているゴム補強ポリスチレンも包含される。
ゴム補強ポリスチレンは、スチレン単独、又はスチレン及びスチレンと共重合可能な化合物とを、ゴム質重合体存在下で重合して得られる重合体である。
さらに、ゴム質重合体としては、例えば、共役ジエン系ゴム、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びそれらを部分的あるいはほとんど全てを水素添加したゴム成分も挙げられる。これらの中では、特に、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が好適である。
本実施形態においては、ゴム補強ポリスチレンとしての制限は特にないが、好ましいゴム補強ポリスチレンとしては、ポリスチレン中のゴム粒子の80個数%以上が、コア−シェル型構造(実質的にサラミ構造を有さない、ポリスチレンコアを内包するゴムシェル構造)を有しているゴム補強ポリスチレンである。より好ましくは、90個数%以上、更に好ましくは95個数%以上である。
得られる成形体の表面光沢性を悪化させない為には、ポリスチレン中のゴム粒子の80個数%以上が、コア−シェル型構造を有する事が好ましい。
また、該ゴム粒子の好ましい粒子径は、円相当直径として、0.05〜0.5μmである。ここでいう円相当直径とは、ゴム粒子の短径と長径をの加算平均をもって表す。より好ましい平均粒子径は0.1〜0.45μmの範囲内であり、更に好ましくは0.2〜0.4μmの範囲内である。
得られる成形体の表面光沢性を悪化させない為には、ポリスチレン中のゴム粒子径を上述の範囲内とすることが好ましい。
上述のゴム粒子の平均粒子径(重量平均粒子径)は、当該業者に周知の方法で測定可能である。具体的には、樹脂ペレットまたは成形体を超薄切片とし、四酸化オスミウムで染色して作製した試料を、透過型電子顕微鏡で撮影した写真を元に、下記式により求めることができる。
Figure 2010241856
上記式中、niはゴム粒子個数、Riはゴム粒子直径である。
なお、測定するゴムの個数は、その測定誤差をより小さくする観点より、1000個以上の粒子について測定することが好ましい。これらは市販の画像解析ソフトで容易に計算可能である。
また、ゴム補強ポリスチレン中のゴム成分の好ましい下限量は、ゴム補強ポリスチレンを100質量%とするとき、3質量%である。より好ましい下限量は、5質量%であり、更に好ましくは、7質量%である。また、好ましい上限量は25質量%である。より好ましい上限量は20質量%であり、更に好ましい上限量は15質量%である。
本実施形態においては、上述のゴム補強ポリスチレンと、ゴム補強していないスチレン系樹脂を混合する形態も含まれる。その際のすべてのスチレン系樹脂中のゴム成分の好ましい下限量は、3質量%である。より好ましくは4質量%である。また、好ましい上限量は、15質量%であり、より好ましくは、10質量%である。
成形体の落下衝撃性を損ねない為には、スチレン系樹脂中のゴム成分量は、3質量%以上であることが望ましく、表面光沢性を悪化させない為には、20質量%以下であることが好ましい。
本実施形態においては、本願発明の効果を損なわない範囲内であれば、コア−シェル構造ではないサラミ構造を有するゴム補強ポリスチレンも使用可能である。
本実施形態において、スチレン系樹脂の量は、上記ポリフェニレンエーテルと、スチレン系樹脂の合計量を100質量%とした時、10〜90質量%の範囲内であることが望ましい。
上述したように、ポリフェニレンエーテルと、スチレン系樹脂との比率は、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性及びに大きく影響する。耐熱性ととを確保するためには、ポリフェニレンエーテルの含有量が多いことが好ましく、良好な成形流動性を得るためには、スチレン系樹脂が多いことが好ましい。最終的に目的とする樹脂組成物の要求特性に応じ、任意にこれらの比率は選択可能である。
成形体が、薄型テレビジョン筐体等のと成形流動性とが重要である大型成形用途の場合は、ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂の好ましい比率は、20/80〜50/50の範囲である。
本実施形態により得られる樹脂組成物は、光沢度が80%以上であることが好ましい。より好ましくは、90%以上であり、更に好ましくは95%以上である。光沢度は高いほど、装飾性用途としてきわめて有用となり、加飾性も高まる為好ましい。
本実施形態でいう光沢度は、JIS−Z−8741に基づき、本実施形態の樹脂組成物を用いて成形品を作製し、この成形品に対して、入射角60度の条件下で測定を行うことにより求められる。
本実施形態における樹脂組成物を構成する23℃で液体状態であるリン系難燃剤としては、有機リン酸エステル化合物が特に好ましい。
23℃で液体ではないリン系難燃剤を使用すると、加飾語のラミの均一性が大きく劣り、場所による光反射度が変化し、成形体としての外観が悪化する要因となる。
好ましい有機リン酸エステル化合物としては、下記式(I)又は式(II)に示す芳香族縮合リン酸エステル化合物が挙げられる。
Figure 2010241856
Figure 2010241856
(ここで、Q1、Q2、Q3、Q4は、独立に炭素数1から6のアルキル基を表す。R1、R2、R3、R4は独立に水素、またはメチル基を表す。nは1以上の整数を表す。n1、n2は独立に0から2の整数を表す。m1、m2、m3、m4は、独立に0から3の整数を示す。)
上記難燃剤としては、大八化学(株)製 商品名CR−741、CR−747、CR733S等として入手可能である。
上記式(I)で示される縮合リン酸エステルは、上記式(II)で示される縮合リン酸エステルに比較すると、樹脂組成物の製造工程における溶融混練において、分解や脱水反応による黒色異物が発生し難く、また最終的に得られる樹脂組成物の吸水性が小さくなるため、より好ましい。
さらに、上記式(I)で示される縮合リン酸エステルは、他のリン酸エステルを使用した場合に比べて、最終的に得られる樹脂組成物の表面硬度が優れたものとなる。
さらに好ましくは、酸価が0.1未満のものである。
ここで、酸価とは、JIS K2501に準拠し、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される値である。
縮合リン酸エステル酸価が大きい場合には、樹脂組成物の成形時に金型が腐食され易く、該化合物が分解しやすいために加工時のガスの発生が多くなり、更には樹脂組成物の電気特性が悪化する等の問題が起こる。
本実施形態における23℃で液体状態であるリン系難燃剤の好ましい量は、ポリフェニレンエーテルとスチレン系化合物の合計量を100質量部とした際に、10〜40質量部の範囲内である。より好ましくは、15〜30質量部の範囲内である。
充分なを確保する観点及び、均一な加飾性を達成する為には、23℃で液体状態であるリン系難燃剤の下限量は10質量部以上であることが望ましく、生産容易性を確保する観点から、40質量部以下とすることが望ましい。
本実施形態においては、効果を損なわない範囲内であれば、23℃で液体状態ではないリン系難燃剤も使用可能である。
本実施形態で使用する有機染料について詳述する。
本実施形態の組成物には、少なくとも2種以上の有機染料が含まれる。ここでいう有機染料としては特に制限はなく、プラスチックの着色剤として一般的に用いられる染料は、すべて適用可能であり、各種組み合わせにより所望の着色が可能である。また、本実施形態の組成物の効果を損なわない範囲であれば、無機顔料も使用可能である。
本実施形態の樹脂組成物は、着色性、特に深みのある着色性を有する。三原色及び補色染料の組み合わせにより深みのある着色が可能となるが、その場合の好ましい添加量は、ポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂、23℃で液体状態であるリン系難燃剤を100質量部とした際に、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることがさらにより好ましい。 染料の含有量を0.1質量部以上とすることにより良好な着色性が得られる。上限は、3質量部であり、より好ましくは2質量部であり、更に好ましくは1質量部である。経済性及び金型への染料汚染を未然に防ぐ観点より、上限は3質量部とすることがより好ましい。
また、黒着色剤として一般的に用いられるカーボンブラックは、染料と併用可能であるが、カーボンブラックは有機染料に比べ隠蔽性が高く、加飾性の均一性を阻害する要因となりえるので、本願組成物の効果の損なわれない範囲での添加量とする事が望ましい。その具体的な量はポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂、23℃で液体状態であるリン系難燃剤を100質量部とした際に、0.1質量部以下である。
本実施形態の組成物の黒色度は、CIE(国際照明委員会)基準表色系によって定めることができる。本実施形態の樹脂組成物は、光沢顔料を含まない樹脂組成での測定において、CIE基準表色系のL*が29以下であることが好ましく、L*が28以下であり、a*が−1.0以上0.5以下、b*が−3.0以上0.5以下であることがより好ましく、L*が28以下、a*が−0.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.5以下であることがさらに好ましく、L*が27.4以下、a*が−0.3以上0.2以下、b*が−2.0以上−0.3以下であることがさらにより好ましい。
本実施形態において使用できる光反射性を付与する光沢顔料としては、アルミ粉、真鍮粉、二酸化チタン被覆雲母及び、メタリック顔料からなる群より選ばれる1種以上の光沢顔料が好ましく使用可能である。これらの中では、メタリック顔料がより好ましい。
本実施形態における光反射性を付与する光沢顔料の厚みとしては、0.1〜30μmの範囲内であることが望ましい。より好ましくは、0.5〜20μmの範囲内である。きめ細やかな光反射性を発現させるためには、厚みは30μm以下であることが望ましく、均一な光反射性の有する組成物とする為には、0.1μm以上とする事が望ましい。
本実施形態でいうメタリック顔料とは、金属及び/又は金属酸化物の層で表面が被覆されたフレーク状フィラーの事を指す。
この際のメタリック顔料被覆層の厚みは、10〜200nmの範囲内であることが望ましい。より好ましくは、20〜100nmであり、更に好ましくは30〜80nmである。被覆金属がニッケル系金属の場合は、そのより好ましい範囲は100〜200nmであり、より好ましい範囲は120〜180mnである。
光反射性を付与する光沢顔料のベースとなるフィラーはフレーク状であればいずれのフィラーでも構わないが、より好ましいものとしては、ガラスフレークが挙げられる。
特に、金属酸化物で被覆した場合には、ガラスと被覆金属酸化物の屈折率が異なる為、光路長差による干渉色を生じさせる事ができるため、ガラスフレークがより好ましい。この際、干渉色を生じさせるためには、メタリック顔料が、ガラスの屈折率よりも高い屈折率を有する物質で被覆されたガラスフレークである事が好ましい。
メタリック顔料を被覆する金属としては、金、銀、真鍮、チタン、ニッケル、またはそれらの合金が、例示できる。また、被覆する金属酸化物としては、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄からなる群より選ばれる1種以上を挙げる事ができる。
本実施形態における光反射性を付与する光沢顔料のアスペクト比は、10〜40である事が望ましい。より好ましくは15〜30である。
光反射性を発現させるためには、そのアスペクト比は、10以上であることが好ましく、光反射性の均一性を悪化させない為には、40以下であることが好ましい。
光反射性を付与する光沢顔料の好ましい量は、樹脂組成物すべてを100質量%としたとき、0.01〜5重量%の範囲内である。より好ましくは、0.02〜2質量%の範囲内であり、更に好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲内である。光反射性を得る為にはその添加量は0.01質量%以上であることが望ましく、経済性の観点から、その添加量は5質量%以下とする事が好ましい。
本実施形態の樹脂組成には、水添ブロック共重合体を、含有させても構わない。
ここでいう水添ブロック共重合体とは、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体とのブロック共重合体を水素添加して得られる共重合体である。
例えば、ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロックと共役ジエン単量体単位の重合体ブロックとを水素添加して得られる、基本的にランダム共重合体部分を含有しないかほとんど含有しないブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体が挙げられる。市販品としては、クレイトンポリマー社のクレイトンG(商品名)、旭化成社のタフテック(商品名)、クラレ社のセプトン(商品名)が知られている。
その他の非ランダム水添ブロック共重合体としては、例えば、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水添して得られる水添共重合体が挙げられ、市販品としては、旭化成社のSOE(商品名)が知られている。
本実施形態においては、水添ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位成分をブロック共重合体の40質量%以上含有しているものとし、好ましくは50〜85質量%、より好ましくは55〜80質量%含有しているものとする。
すなわち本実施形態においては、水添ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックを50質量%以上と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックを50質量%未満と、を有する水添ブロック共重合体であることが好ましい。
水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック含有量が、上記範囲にあることにより、本実施形態の樹脂組成物が、優れた外観特性を有し、機械的強度と成形加工性とのバランスに優れたものとなる。良好な着色性と成形加工性を確保する観点からは、ビニル芳香族単量体単位成分をブロック共重合体の60〜80質量%とすることがさらに好ましい。
水添ブロック共重合体の重量平均分子量は3万〜30万であることが好ましい。これにより、本実施形態の樹脂組成物は機械的強度と成形加工性とのバランスが良好なものとなる。本実施形態の樹脂組成物において、高い機械的強度を確保し、衝撃吸収性と成形加工性とのバランスを良好なものとする観点からは、水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、4万〜25万が好ましく、5万〜25万がより好ましく、7万〜20万がさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物において、良好な着色性や表面特性を確保し、成形時における離型効果と耐衝撃性改良効果とを発揮するために、水添ブロック共重合体の含有量は、ポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂、及びリン系難燃剤の合計100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜4質量部がより好ましく、1〜3質量部がさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、所定の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤、その他の樹脂を添加してもよい。
特に、良好な成形性を確保する観点から、離型剤の添加は効果的である。離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド及びビスアミド、高級脂肪酸の多価アルコールエステル及び高級アルコールエステル、ポリエチレンワックス類等が挙げられる。
また、従来から知られた各種難燃剤及び難燃助剤、例えばポリテトラフロロエチレン重合体及び共重合体、シリコンオイル、シリコンレジンを添加することにより、さらにの向上効果が得られる。
本実施形態の樹脂組成物を製造する方法については、特に限定されるものではないが、一般的には、押出機を用いて溶融混練することにより製造できる。特に、原材料成分を製造工程の途中で添加可能な二軸押出機が、高い生産性を確保し、良質な樹脂組成物を得る観点から好ましい。
混練温度は、ベース樹脂ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂の混合比率により異なるが、好ましい加工温度は、一般的には240〜360℃の範囲、好ましくは260〜320℃の範囲である。
本実施形態の樹脂組成物は、全成分を一括溶融混練してもよいが、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂、又はポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂及びリン系難燃剤を、予め溶融混練したのち、後工程で他の成分を添加する方法をとってもよい。具体的には、予め溶融混練したペレット状の中間組成物を得、次工程で他の混練機器を用いて上記他の成分を添加する二段階で樹脂組成物を製造する方法も包含される。
本実施形態において、均一な光反射性を有する材料を得る為には、リン系難燃剤を含まない樹脂組成物中に予め添加する方法がより好ましい方法である。
本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法等の一般的な成形方法により成形品に加工できる。
特に、金型表面の温度を、射出樹脂の熱変形温度近傍以上に上げておき、樹脂の射出と保圧工程の間は熱変形温度以上に保ち、保圧工程終了後、短時間で金型温度を下げて、樹脂を冷却し、成形品を取り出すヒートサイクル成形法は、ウェルドラインが目立たず、外観特性が良好な成形品が得られる方法として優れている。
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例で使用した材料の詳細を表1に記載した。
Figure 2010241856
〔実施例1,2及び比較例1,2〕
下記表1に示す割合で材料を配合し、押出機スロートと、中流部に樹脂供給口及び下流部に難燃剤の液体添加装置を有するZSK40MC同方向回転二軸押出機(コペリオン社製:スクリュー直径40mm)を用いて、溶融混合を行い、樹脂組成物を作製した。
PPE、PS及び、安定剤としてのトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.2質量部を、押出機の上流投入口からフィードし、HIPS、染料、SEBS及び光沢顔料をドライブレンドして押出機中流投入口からサイドフィードし、難燃剤(BDP又はTPP)を押出機下流から圧入添加した。
着色剤としての染料は、黒色に着色するために、種類及び割合を組み合わせて配合した。
押出機の運転条件は、加熱シリンダーの上流温度を320℃、下流温度を270℃、スクリュー回転数300rpmとし、ベント口から真空脱揮しながら溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂組成物のペレットを得た。
得られた樹脂ペレットを、鏡面光沢を有する150mm×150mm×2mmの平板の中央部にウェルドラインができる2点ピンゲートの平板金型を用い、加熱シリンダー温度240℃、金型温度60℃の条件下で射出成形して平板を作製し、目視によりウェルドラインの状況を判定した。
Figure 2010241856
実施例1は、ウェルド部は識別しづらく、顔料分散性は良好で、シルバー色を呈しており、キラキラ感は良好であった。実施例2についても、ウェルド部は識別しづらく、顔料分散性は良好で、強いシルバー色を呈しており、キラキラ感は良好、更に奥行き感のある色調となっていた。実施例3については、ウェルド部が視認可能な状況であったが、顔料分散は比較的良好であり、色の深み、キラキラ感とも特に問題なかった。それに対して、比較例1は、ウェルド部が、顔料の分散不良の影響により明瞭に識別可能であり、キラキラ感もくすみのために不良であった。
以上より、本実施例によれば、本実施形態に係る樹脂組成物は、成形品の部位の違いにおける光反射性のブレを抑制し、均一な光反射性を有することが示された。
本発明の樹脂組成物は、成形品の部位の違いにおける光反射性のブレを抑制し、均一な光反射性を有する樹脂組成物であり、各種家電製品等の外装材として非常に好適である。

Claims (12)

  1. ポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂、23℃で液体状態であるリン系難燃剤、2種以上の有機染料及び、光反射性を付与する光沢顔料を含む樹脂組成物。
  2. 光反射性を付与する光沢顔料が、アルミ粉、真鍮粉、二酸化チタン被覆雲母及び、メタリック顔料からなる群より選ばれる1種以上の光沢顔料である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. メタリック顔料が、金属及び/又は金属酸化物の層で表面が被覆されたフレーク状フィラーである請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. メタリック顔料の被覆層の厚みが10〜200nmの範囲内である請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. フレーク状フィラーがガラスフレークである請求項3に記載の樹脂組成物。
  6. メタリック顔料が、ガラスの屈折率よりも高い屈折率を有する物質で被覆されたガラスフレークである請求項5に記載の樹脂組成物。
  7. メタリック顔料が、金、銀、真鍮、チタン、ニッケル、またはそれらの合金、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄からなる群より選ばれる1種以上の層で表面が被覆されたフレーク状フィラーである請求項2〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 光反射性を付与する光沢顔料の厚みが100nm〜30μmの範囲内である請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  9. 光反射性を付与する光沢顔料のアスペクト比が10〜40である請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  10. 23℃で液体状態であるリン系難燃剤が、下式で表される請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
    Figure 2010241856
    又は、
    Figure 2010241856
    (ここで、Q1、Q2、Q3、Q4は、独立に炭素数1から6のアルキル基を表す。R1、R2、R3、R4は独立に水素、またはメチル基を表す。nは1以上の整数を表す。n1、n2は独立に0から2の整数を表す。m1、m2、m3、m4は、独立に0から3の整数を示す。)
  11. スチレン系樹脂が、ポリスチレン中のゴム粒子の80個数%以上が、コア−シェル型構造(実質的にサラミ構造を有さない、ポリスチレンコアを内包するゴムシェル構造)を有し、該ゴムシェルの平均粒子径が0.1〜0.45μmであるゴム補強ポリスチレンを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  12. 請求項1記載の樹脂組成物からなる家電製品外装材
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