JP5704936B2 - 耐熱難燃樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

耐熱難燃樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物およびその製造方法に関する。
ポリフェニレンエーテル(以下、「PPE」ともいう)系樹脂をベースとする混合樹脂であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物(以下、「m−PPE樹脂」ともいう)は、成形加工性が改善され、所定の耐熱性を有し、さらには電気特性、寸法安定性、耐衝撃性、耐酸性および耐アルカリ性などにも優れ、吸水性が低く、低比重である。また、m−PPE樹脂は、有害なハロゲン系化合物やアンチモン化合物を用いずに難燃化を図ることができるため、環境面や安全衛生面にも優れる。そのため、このようなm−PPE樹脂は、各種の電気・電子部品、事務機器部品、自動車部品、建材、その他各種外装材や工業用品などの用途に広範囲に利用されている。
しかしながら、m−PPE樹脂は、耐熱エージング特性(高温の使用環境下に長時間暴露された時に性能を維持する特性)、高度の耐熱性や難燃性等を必要としている電気・電子関係の内部部品用途、自動車部品用途、近年開発が進んでいる太陽電池のコネクターおよびジャンクションボックス等の材料としては充分な性能を得られていない。
また、近年、東南アジア地域において、上述した各種用途における機器や部品の製造および使用、さらには太陽電池部品等の屋外機器の製造および使用が増えてきている。
かかる地域においては高温・高湿の環境下における製品樹脂の耐性が重要となるが、m−PPE樹脂は、未だ充分な耐湿性を有していないことから、m−PPE樹脂から得られる製品の物性劣化が問題となることも多いのが現状である。
m−PPE樹脂において、特に耐熱性の高い材料を得るためにはポリフェニレンエーテルの配合量を多くする必要がある。しかしながら、押出機を用いてm−PPE樹脂組成物を溶融混練りする際、ガラス転移点が高くまた溶融粘度も高いポリフェニレンエーテルは高い溶融温度が必要であるため、ポリフェニレンエーテルの配合量を多くすると高い設定温度および高い剪断力が必要である。また、押出機を用いてm−PPE樹脂組成物を溶融混練りする際、溶融粘度の高いポリフェニレンエーテルを多く配合すると、高いせん断発熱が発生して溶融温度が高くなるために、得られる成形品は、m−PPE樹脂組成物の熱劣化に基因すると考えられる特性の低下が大きい。特に、耐衝撃性、耐熱エージング特性、耐湿性、金型汚染などの加工時の不具合は、ポリフェニレンエーテル以外の副成分や溶融押出条件の影響を受けやすいといわれている。
ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の耐衝撃性を改善するために、過去に色々な技術が開発されている。一般的には、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に、ハイインパクトポリスチレン、ゴム成分を添加する技術などがある。このような添加剤として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が代表的であるが、これらは分子内に二重結合を有し、耐熱性,耐薬品性、耐候性が低いという欠点を有する。
特許文献1には、水素添加タイプのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を用いて、ポリスチレンを使用しないことにより、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の耐熱エージング特性を改良する技術が開示されている。
特許文献2には、耐衝撃性および難燃性を改良するために、水素添加タイプのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を用いた組成物および製造技術は開示されている。
特許文献3には、更に高分子量の水素添加タイプのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を用いた難燃組成物が開示されている。
特許文献4には、高分子量の水素添加タイプのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を用いた難燃組成物の製造方法が開示されている。
特開平9−227774号公報 特許第3735966号 特表2010−519389号公報 特開2008−274035号公報
しかしながら、特許文献1には、耐熱性の高いポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得るために非常に重要である製造方法に関する詳細な検討がなされていないため、特許文献1に記載の技術から、耐熱性等の充分な性能を有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得ることはできない。
特許文献2には、組成物の製造方法に関する詳細な検討がなされていないため、特許文献2に記載の技術から、耐熱エージング特性が充分な組成物を必ずしも得ることはできず、また、溶融混練り時のせん断発熱を抑える技術、量産性および生産安定性の技術を見出すことはできない。
特許文献3に記載の組成物の製造方法は、全成分を一括供給した方法であり、水素添加タイプのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の分散粒径を大きくすることが難しく、その結果、得られる組成物は、耐衝撃性や耐熱エージング特性を改善するには至っていない。
特許文献4に記載の製造方法は、押出機混練ゾーンを特定の範囲とすることにより、得られる組成物の耐衝撃性や耐熱エージング特性を改善させているが、充分でない場合がある。
そこで、本発明は、難燃性および長期の耐熱エージング性に優れ、耐熱性、耐衝撃性さらには耐湿性に優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテル、特定の水添ブロック共重合体および特定の難燃剤を特定の組成で含有する樹脂組成物により、さらには特定の製造方法で得られる樹脂組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
以下の成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部において、
(A)ポリフェニレンエーテル 57〜95質量部、
(B)水添ブロック共重合体 2〜30質量部、
(C)有機リン化合物 3〜30質量部、および
(D)スチレン系樹脂 0〜20質量部を含み、
(B)が、ポリスチレンブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であり、
(B)の数平均分子量が10万〜50万であり、
(B)が、樹脂組成物中に粒子状に分散し、その重量平均粒子径が0.3〜1μmであることを特徴とする樹脂組成物。
[2]
曲げ弾性率が1800〜3000MPaであり、
120℃環境下で500時間静置後の23℃におけるシャルピー衝撃強度が、当該静置前の23℃におけるシャルピー衝撃強度に対して、少なくとも60%の保持率であることを特徴とする[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
曲げ弾性率が2000〜3000MPaであり、
120℃環境下で500時間静置後の23℃におけるシャルピー衝撃強度が少なくとも7kJ/m2であることを特徴とする[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
(C)有機リン化合物が、下記一般式(I)で示されるリン酸エステル化合物であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
(一般式(I)中、
Q1、Q2、Q3およびQ4は、各々置換基であって各々独立に炭素数1から6のアルキル基を表し、
R1およびR2は各々置換基であってメチル基を表し、
nは1以上の整数であり、
n1およびn2は各々独立に0から2の整数を示し、
m1、m2、m3およびm4は各々独立に0から3の整数を示す。)
[5]
さらに、(E)熱安定剤を含み、
(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、(E)の含有量が0.01〜3質量部であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
さらに、(F)紫外線吸収剤および/または光安定剤を含み、
(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、(F)の含有量が0.01〜3質量部であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
[1]に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
二軸押出機を用いて前記樹脂組成物の原料成分を溶融混練する工程を含み、
前記二軸押出機の最も上流側の原料供給口(第1原料供給口)における酸素濃度を3容量%以下とすることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
[8]
前記二軸押出機のダイ出口から押出される際の溶融樹脂組成物の温度が350℃以下であることを特徴とする[7]に記載の製造方法。
[9]
前記原料成分が(A)ポリフェニレンエーテルを含み、
前記二軸押出機の構成が、上流側から順に、前段および後段とした構成であり、
前記二軸押出機のバレル全長を100%としたときに、前段の範囲が40%以上であり、後段の範囲が60%以下であり、
前段のバレル温度を(A)ポリフェニレンエーテルのガラス転移点(Tg)以下とし、
後段のバレル温度を240℃以上320℃以下とすることを特徴とする[7]または[8]に記載の製造方法。
[10]
前記二軸押出機の構成が、上流側から順に、前段および後段とした構成であり、
前記二軸押出機のバレル全長を100%としたときに、前段の範囲が40%以上であり、後段の範囲が60%以下であり、
前段のスクリュー構成が、順送り(正ネジ)スクリューエレメントおよび順送り(位相45度以下)ニーディングディスクエレメントから構成され、
後段のスクリュー構成が、直交(位相90度)ニーディングディスクエレメント、逆送り(負位相45度以下)ニーディングディスクエレメント、および逆送り(逆ネジ)スクリューエレメントからなる群より選択される少なくとも2種以上のエレメントを含むスクリュー構成であることを特徴とする[7]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]
前記原料成分が(D)スチレン系樹脂を含み、
前記二軸押出機の構成が、上流側から順に、前段および後段を設けた構成であり、
前記二軸押出機のバレル全長を100%としたときに、前段の範囲が40%以上であり、後段の範囲が60%以下であり、
(D)スチレン系樹脂を、後段のバレルから供給することを特徴とする[7]〜[10]のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
[12]
[7]〜[11]のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とする樹脂組成物。
本発明により難燃性と長期の耐熱エージング性に優れ、耐熱性、耐衝撃性さらには耐湿性に優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物およびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、樹脂組成物の製造の際、黒点異物の発生を抑制でき、表面外観に優れた樹脂組成物が得られ、さらに、離型性に優れた樹脂組成物が得られる。
本発明の耐熱難燃樹脂組成物の製造方法に関する押出プロセス概略図の一例である。 本発明の耐熱難燃樹脂組成物の透過型電子顕微鏡写真の一例である。当該写真において、樹脂組成物中のそれぞれの分散粒子について相当の円を想定記入し、その直径を読み取り、粒子径として代用した一例を示している。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施の形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、図面の寸法比率は図示の比率に限定されるものではない。
本実施の形態の樹脂組成物は、以下の成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部において、(A)ポリフェニレンエーテル 57〜95質量部、(B)水添ブロック共重合体 2〜30質量部、(C)有機リン化合物 3〜30質量部、および(D)スチレン系樹脂 0〜20質量部を含み、(B)が、ポリスチレンブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であり、(B)の数平均分子量が10万〜50万であり、(B)が、樹脂組成物中に粒子状に分散し、その平均粒子径が0.3〜1μmである。
以下、本実施の形態の樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
[(A)ポリフェニレンエーテル]
本実施の形態で用いられる(A)ポリフェニレンエーテルは、下記一般式(II)および/または一般式(III)で表される繰り返し単位を有する単独重合体、あるいは共重合体を含む。
(一般式(II)および(III)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜9のアリール基またはハロゲン原子を表す。但し、R5およびR6は同時に水素原子ではない。)
ポリフェニレンエーテルの単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−14−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテルポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル共重合体とは、一般式(II)および/または一般式(III)で表される繰り返し単位を主たる繰返し単位とする共重合体である。その例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールおよびo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。ポリフェニレンエーテルの中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。日本国特許昭63−301222号公開公報等に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含んでいるポリフェニレンエーテルは特に好ましい。ポリフェニレンエーテルの還元粘度(単位dl/g、クロロホルム溶液、30℃測定)は、好ましくは0.25〜0.6の範囲、より好ましくは0.35〜0.55の範囲である。
本実施の形態においては、ポリフェニレンエーテルの一部または全部が不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリフェニレンエーテルを用いることができる。この変性ポリフェニレンエーテルは、日本国特許平2−276823号公開公報(米国特許5159027号、35695号)、日本国特許昭63−108059号公開公報(米国特許5214109号、5216089号)、日本国特許昭59−59724号公開公報等に記載されている。変性ポリフェニレンエーテルは、例えばラジカル開始剤の存在下または非存在下において、ポリフェニレンエーテルに不飽和カルボン酸やその誘導体を溶融混練して反応させることによって製造される。あるいは、ポリフェニレンエーテルと、不飽和カルボン酸やその誘導体とをラジカル開始剤存在下または非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって製造される。
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハロゲン化マレイン酸、シス−4−シクロヘキセン1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸などや、これらジカルボン酸の酸無水物、エステル、アミド、イミドなど、さらにはアクリル酸、メタクリル酸などや、これらモノカルボン酸のエステル、アミドなどが挙げられる。また、飽和カルボン酸であるが、変性ポリフェニレンエーテルを製造する際の反応温度でそれ自身が熱分解し、本実施の形態で用いる誘導体となり得る化合物も用いることができる。具体的にはリンゴ酸、クエン酸などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)ポリフェニレンエーテルは一般に粉体として入手でき、その好ましい粒子サイズは平均粒子径1〜1000μmであり、より好ましくは10〜700μm、特に好ましくは100〜500μmである。加工時の取り扱い性の観点から1μm以上が好ましく、溶融混練り未溶融物の発生を抑制するためには1000μm以下が好ましい。当該平均粒子径は、例えば100μm以下の場合はレーザー粒度計、それ以上の場合は振動篩により測定される。
本実施の形態の樹脂組成物において、(A)ポリフェニレンエーテルの含有量は他の成分によって任意に変動するが、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、57〜95質量部の範囲が好ましい。より好ましくは、65〜90質量部である。ポリフェニレンエーテルの含有量が57質量部未満では、樹脂組成物は耐熱温度が低く、耐熱エージング特性が劣る。また、ポリフェニレンエーテルの含有量が95質量部を超えると、必然的に(B)および(C)成分の含有量が少なくなるため、樹脂組成物は耐衝撃性や難燃性が充分でない。
[(B)水添ブロック共重合体]
本実施の形態で用いられる(B)水添ブロック共重合体は、スチレンと共役ジエン化合物とのブロック共重合体すなわちポリスチレンブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。また、(B)水添ブロック共重合体の数平均分子量は、10万〜50万である。本実施の形態において、(B)水添ブロック共重合体は少なくとも1種を選択して用いられる。
水素添加による共役ジエン化合物由来の不飽和結合の水添率は60%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上である。水素添加前のブロック共重合体の構造は、スチレンブロック鎖をS、ジエン化合物ブロック鎖をBと表すと、S−B−S、S−B−S−B、(S−B−)4−Si、S−B−S−B−S等を有する。また、ジエン化合物重合体ブロックのミクロ構造は任意に選ぶことができる。通常、ビニル結合量(1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合との合計)は、ジエン化合物重合体の結合全体に対し2〜60%、好ましくは8〜40%の範囲である。
(B)水添ブロック共重合体の数平均分子量は10万〜50万であり、好ましくは15万〜40万であり、より好ましくは20万〜35万である。(B)水添ブロック共重合体の数平均分子量が10万以上であると、樹脂組成物の耐衝撃性が優れ、15万以上であると、樹脂組成物中に分散した(B)水添ブロック共重合体の粒子径が0.3μm以上となり、より樹脂組成物の耐衝撃性が優れる。(B)水添ブロック共重合体の数平均分子量に比例して、樹脂組成物の耐衝撃性は向上し、(B)水添ブロック共重合体の数平均分子量が、40万以下であると、樹脂組成物の耐衝撃性は充分であり、50万以下であると、樹脂組成物の溶融押出し時の負荷が低く加工流動性に優れ、(B)水添ブロック共重合体の樹脂組成物中への分散性にも優れる。
本実施の形態で用いられる(B)水添ブロック共重合体は、少なくとも1個のスチレン重合体ブロック鎖が数平均分子量15,000以上であることが好ましい。より好ましくは20,000以上、50,000以下である。さらに好ましくは全てのスチレン重合体ブロック鎖の数平均分子量が15,000以上である。
なお、本実施の形態において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の分子量を基準として算出された値である。
(B)水添ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックが全共重合体に占める範囲は、スチレン重合体ブロック鎖の数平均分子量が上記の範囲であれば特に制限されないが、一般には10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲である。
(B)水添ブロック共重合体は、組成や構造の異なる2種以上を併用することもできる。例えば、結合スチレン重合体ブロック含有量50%以上の水添ブロック共重合体と結合スチレン重合体ブロック含有量30%以下の水添ブロック共重合体との併用や分子量の異なる水添ブロック共重合体の併用、あるいはスチレンと共役ジエンとのランダム共重合体ブロックを含有するブロック共重合体を水添して得られる水添ランダムブロック共重合体を併用することも可能である。
(B)水添ブロック共重合体は、樹脂組成物中に粒子状に分散し、その重量平均粒子径が0.3〜1μmであり、0.31〜0.8μmであることが好ましく、0.32〜0.7μmであることがさらに好ましい。当該重量平均粒子径が前記範囲内であると、樹脂組成物の長期の耐熱エージング性、耐熱性、耐衝撃性および難燃性が優れる傾向にある。
なお、本実施の形態において、重量平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定した値である。
本実施の形態の樹脂組成物において、(B)水添ブロック共重合体の含有量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、2〜30質量部の範囲である。好ましくは4〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部、特に好ましくは10〜20質量部である。(B)水添ブロック共重合体の含有量が3質量部以上であると、樹脂組成物の衝撃強度が優れ、30質量部以下であると、樹脂組成物の耐衝撃性が高く、且つ曲げ弾性率や曲げ強度などの剛性が優れる。
本実施の形態の樹脂組成物において、(B)水添ブロック共重合体の一部を後述する(G)ポリオレフィンで代替できる。(G)ポリオレフィンを併用添加することにより、樹脂組成物の成形時の離型性が改良され、耐衝撃性も向上する。(G)ポリオレフィンについての詳細は、後述する。
[(C)有機リン化合物]
本実施の形態で用いられる(C)有機リン化合物は、難燃性を向上するのに添加される難燃剤として用いられる。(C)有機リン化合物は、ポリフェニレンエーテルの難燃剤として一般的に用いられる有機リン化合物であればいずれも用いることができる。(C)有機リン化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物などが挙げられる。
リン酸エステル化合物の具体例としては、トリフェニルフォスフェート、トリスノニルフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−[ビス(メチルフェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン等を主成分とする化合物およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに制限されることはない。さらに上記以外のリン酸エステル化合物としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェートなどのリン酸エステル化合物、ジフェニル−4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラブロモベンジルホスフォネート、ジメチル−4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンジルホスフォネート、ジフェニル−4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンジルホスフォネート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2、3−ジブロモプロピル)−2、3−ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、およびビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェートハイドロキノニルジフェニルホスフェート、フェニルノニルフェニルハイドロキノニルホスフェート、フェニルジノニルフェニルホスフェートなどのモノリン酸エステル化合物、および芳香族縮合リン酸エステル化合物などが挙げられる。
これらの中、加工時のガス発生が少なく、熱安定性などに優れることから芳香族縮合リン酸エステル化合物が好適に用いられる。
これらの芳香族縮合リン酸エステル化合物は、一般に市販されており、例えば、大八化学工業(株)のCR741、CR733S、PX200、(株)ADEKAのFP600、FP700、FP800などが知られている。尚、これらの芳香族縮合リン酸エステル化合物は、一般に縮合度の異なる化合物の混合物である。
特に好ましいのは、下記一般式(I)で示されるリン酸エステル化合物(縮合リン酸エステル)である。
(一般式(I)中、Q1、Q2、Q3およびQ4は、各々置換基であって各々独立に炭素数1から6のアルキル基を表し、R1およびR2は各々メチル基を表し、nは1以上の整数であり、n1およびn2は各々独立に0から2の整数を示し、m1、m2、m3およびm4は各々独立に0から3の整数を示す。)
上記式(I)で示される縮合リン酸エステルは、それぞれの分子において、nが1以上の整数、好ましくは1から3の整数である。
この中で、好ましい縮合リン酸エステルは、式(I)におけるm1、m2、m3、m4、n1およびn2がゼロである縮合リン酸エステル、式(I)におけるQ1、Q2、Q3およびQ4がメチル基であり、n1およびn2がゼロであり、m1、m2、m3およびm4が1から3の整数の縮合リン酸エステルであって、nの範囲が1から10、好ましくは1から3、特にnが1であるリン酸エステルを50質量%以上含有するものが好ましい。また、本縮合リン酸エステルは縮合度nの異なる化合物の混合物であり、n=0の化合物も混合物として含まれる。縮合度の平均値は1〜2の範囲、好ましくは1〜1.5、更に好ましくは1〜1.3の範囲である。このような(C)有機リン化合物としては、(株)ADEKAのFP800などが知られている。
これらの芳香族縮合リン酸エステル化合物で特に好ましいのは、酸価が0.1以下(JIS K2501に準拠して得られた値)の芳香族縮合リン酸エステル化合物である。
特に、上記式(I)の縮合リン酸エステル化合物は、吸水し難く耐湿性に優れるため、実用時において耐湿後の電気特性や機械特性に優れることが期待される。
また、ホスファゼン化合物としては、フェノキシホスファゼンおよびその架橋体が好ましく、特に好ましいのは、酸価が0.1以下(JIS K2501に準拠して得られた値)のフェノキシホスファゼン化合物である。
(C)難燃剤としての有機リン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)有機リン化合物の含有量は、必要な難燃性レベルにより異なるが、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、3〜30質量部の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5〜25質量部の範囲である。(C)有機リン化合物の含有量が、3質量部以上であると、樹脂組成物の難燃性が優れ、30質量部以下であると、樹脂組成物の難燃性が充分であり、30質量部を超えて(C)を含有すると、樹脂組成物の耐熱性を低下させる。
[(D)スチレン系樹脂]
本実施の形態の樹脂組成物には、必要に応じて(D)スチレン系樹脂を添加可能である。スチレン系樹脂の添加により加工流動性を向上できる。
(D)スチレン系樹脂とは、スチレン系化合物、またはスチレン系化合物とスチレン系化合物に共重合可能な化合物とをゴム質重合体存在下または非存在下に重合して得られる重合体をいう。スチレン系化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、特に好ましいのはスチレンである。また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、スチレン系化合物とともに使用される。共重合可能な化合物の使用量は、スチレン系化合物との合計量に対して20質量%以下が好ましく、さらに好ましくは15質量%以下である。
また、ゴム質重合体としては共役ジエン系ゴムあるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体あるいはエチレン−プロピレン共重合体ゴム等が挙げられる。具体的には、ポリブタジエンおよびスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。また、ゴム質重合体としては、部分的に水素添加された不飽和度80〜20%のポリブタジエン、または1,4−シス結合を90%以上含有するポリブタジエンを用いることが特に好ましい。該スチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレンおよびゴム補強ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、その他のスチレン系共重合体等が挙げられる。特にポリスチレンおよび部分的に水素添加された不飽和度80〜20%のポリブタジエンを用いたゴム補強ポリスチレンの組合せが好ましい。
本実施の形態の樹脂組成物において、好ましい(D)スチレン系樹脂はホモポリスチレンであり、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンのどちらも使用できる。ゴム変性ポリスチレンは、耐熱エージング性が劣るため添加しないことが好ましい。
(D)スチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(D)スチレン系樹脂の添加量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部において、0〜20質量部、好ましくは0〜10質量部、さらに好ましくは0〜5質量部の範囲である。
ここで、(D)スチレン系樹脂は、(A)ポリフェニレンエーテルの一部を置き換える形で用いられ、(D)スチレン系樹脂の含有量分だけ(A)ポリフェニレンエーテルは減じられることになり、(D)の添加量に比例して、樹脂組成物の流動性は向上し、(D)の添加量が20質量部以下であると、樹脂組成物の耐熱性と難燃性とに優れ、(D)が無添加の場合は特に樹脂組成物の耐熱性と耐熱エージング性とに優れる。
二軸押出機を用いて本実施の形態の樹脂組成物を製造するに際して、(D)スチレン系樹脂は、(A)および/または(B)と同じ上流側の供給口から同時供給することも可能であるが、押出機バレルの上流側から少なくとも40%以降のバレル(後段のバレル)から供給することが好ましい。(D)スチレン系樹脂を後段のバレルから供給すると、スチレン系樹脂の分解をより抑制でき、得られる樹脂組成物の耐熱エージング性がより向上する。詳細は後述する製造方法において説明する。
[(E)熱安定剤]
本実施の形態の樹脂組成物には、(E)熱安定剤を添加することが好ましい。(E)熱安定剤の添加により、樹脂組成物の熱劣化を抑制し、樹脂組成物の耐衝撃性だけでなく、樹脂組成物の耐熱エージング性も向上する。
(E)熱安定剤は、樹脂組成物の製造、成形加工および使用時の熱または光暴露により生成したハイドロパーオキシラジカル等の過酸化物ラジカルを安定化したり、生成したハイドロパーオキサイド等の過酸化物を分解するための成分である。その例は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤やホスファイト系過酸化物分解剤である。前者は、ラジカル連鎖禁止剤として、後者は系中に生成した過酸化物をさらに安定なアルコール類に分解して自動酸化を防止する。
(E)熱安定剤としてのヒンダードフェノール系熱安定剤(酸化防止剤)の具体例は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキレイテッドビスフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキシスピロ〔5・5〕ウンデカン等である。
(E)熱安定剤としての過酸化物分解剤の具体例は、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等のホスファイト系熱安定剤(過酸化物分解剤)またはジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3'−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等の有機イオウ系熱安定剤(過酸化物分解剤)である。
本実施の形態においては、酸化防止剤としてのヒンダードフェノール系熱安定剤と過酸化物分解剤としてのホスファイト系や有機イオウ系熱安定剤とを併用することが効果的である。
(E)熱安定剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、他の熱安定剤として、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫化亜鉛などの金属酸化物または硫化物を上記熱安定剤と併用して用いることも可能である。
(E)熱安定剤の合計添加量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、0.01〜3質量部が好ましく、0.1〜3質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜2質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部の範囲である。(E)熱安定剤の合計添加量が、0.01質量部以上であると、熱安定性効果を発揮し、3質量部を超えた場合、熱安定性効果は飽和するため経済的にも好ましくない。
[(F)紫外線吸収剤、光安定剤]
本実施の形態の樹脂組成物には、(F)紫外線吸収剤および/または光安定剤を添加することが好ましい。これらの添加剤により、樹脂組成物の耐光性を向上できるだけでなく、樹脂組成物の耐熱エージング性も向上する。
本実施の形態で用いられる(F)紫外線吸収剤は、一般に市販されているものを使用でき、好ましいのはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−t−オクチル−6’−t−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール等が挙げられる。
本実施の形態で用いられる(F)光安定剤は、一般に市販されているものを使用でき、好ましいのはヒンダードアミン系光安定剤である。具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ペピリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ペピリジル)セバケート、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルペピリジンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ペピリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ペピリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ペピリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合物、1,2,3,4−テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ペピリジル)−ブタンテトラカルボキシレート、1,4−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ペピリジル)−2,3−ブタンジオン、トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ペピリジル)トリメリテート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ペピリジル―n−オクトエート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ペピリジルステアレート、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルペピリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ペピリジニル)セバケート、2−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ペピリジル)等が挙げられる。
これらの(F)紫外線吸収剤、光安定剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施の形態おいては、(F)光安定剤と紫外線吸収剤とを併用することにより、樹脂組成物の耐光変色性が一段と向上し、更にまた樹脂組成物の耐熱エージング性が改善される。
光安定剤と紫外線吸収剤との質量比率(光安定剤/紫外線吸収剤)は、好ましくは1/99〜99/1の範囲、より好ましくは95/5〜95/5、さらに好ましくは50/50〜90/10である。また、(F)成分の合計添加量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.01〜3質量部であることがより好ましく、0.05〜3質量部であることがさらに好ましく、特に好ましくは0.1〜3質量部である。(F)成分の合計添加量が、0.01質量部以上であると、耐光性効果を発揮し、5質量部を超えた場合、耐光性効果は飽和するため、経済的にも好ましくない。
本実施の形態では、更にエポキシ化合物を併用添加できる。それによって、樹脂組成物の耐光変色性が一段と向上し、更にまた樹脂組成物の耐熱エージング性が改善される。エポキシ化合物としてはエポキシ基を有する化合物であればよいが、好ましいのはオキシラン酸素を3%以上有するエポキシ化油脂やエポキシ化脂肪酸エステルなどの一般に熱可塑性合成樹脂の可塑剤として用いられる脂肪族エポキシ化合物であり、より好ましくはエポキシ化油脂であり、特に好ましいエポキシ化合物はオキシラン酸素を6%以上有するエポキシ化大豆油である。エポキシ化合物の添加量は、樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.1〜2質量部の範囲である。
[(G)ポリオレフィン]
本実施の形態の樹脂組成部は、更に(G)ポリオレフィンを含有することが好ましい。(G)ポリオレフィンを添加することにより、樹脂組成物の成形時の離型性が改良され、樹脂組成物の耐衝撃性も向上する。
本実施の形態に用いられる(G)ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体あるいはエチレン−アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。中でも好ましいのは、低密度ポリエチレンおよびエチレン−プロピレン共重合体である。エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体あるいはエチレン−アクリル酸エステル共重合体は、一般に非晶性もしくは低結晶性の共重合体である。これらの共重合体には、さらに性能に影響を与えない範囲でその他のモノマーが共重合されていてもよい。エチレンとプロピレン、ブテンあるいはオクテンの成分比率は、特に規定するものではないが、プロピレン、ブテンあるいはオクテンの成分は5〜50モル%の範囲が一般的である。これらのポリオレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(G)ポリオレフィンのMFRは、ASTM D−1238準じ、シリンダー温度230℃で測定した値が0.1〜50g/10分が好ましく、より好ましくは0.2〜20g/10分である。
(G)ポリオレフィンの添加量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量部、さらに好ましくは0.5〜2質量部の範囲である。(G)ポリオレフィンの添加量が、0.05質量部以上であると、離型効果を発揮し、5質量部以下であると、剥離の問題もなく機械特性に優れる。
[その他の添加剤]
本実施の形態の樹脂組成物には、更に他の特性を付与するため、あるいは本発明の効果を損なわない範囲で一般的に使用される他のプラスチック添加剤、例えばポリテトラフロロエチレンなどの燃焼時の滴下防止剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染顔料、プラスチック用各種無機充填剤、あるいはその他の樹脂を添加することができる。
本実施の形態の樹脂組成物には、更に他のポリマーやオリゴマーを添加できる。例えば、流動性改良剤としての石油樹脂、テルペン樹脂およびその水添樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、あるいは難燃性を改善するためのシリコーン樹脂やフェノール樹脂などが挙げられる。
[樹脂組成物の特性]
本実施の形態の樹脂組成物は、以下の特性を有する。
即ち、本実施の形態の樹脂組成物は、以下の成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部において、(A)ポリフェニレンエーテル 57〜94質量部、(B)水添ブロック共重合体 2〜30質量部、(C)有機リン化合物 3〜30質量部、および(D)スチレン系樹脂 0〜20質量部を含み、以下の特性を有するものである。
(1)本実施の形態の樹脂組成物は、樹脂組成物中に粒子状に分散した(B)水添ブロック共重合体の重量平均粒子径が0.3〜1μmである。
(2)本実施の形態の樹脂組成物は、120℃環境下で500時間静置後の23℃におけるシャルピー衝撃強度が、当該静置前の23℃におけるシャルピー衝撃強度に対して、少なくとも50%の保持率であることが好ましい。
(3)本実施の形態の樹脂組成物は、曲げ弾性率が1800〜3000MPaであり、120℃環境下で500時間静置後の23℃におけるシャルピー衝撃強度が、当該静置前の23℃におけるシャルピー衝撃強度に対して、少なくとも60%であることが好ましい。
(4)本実施の形態の樹脂組成物は、曲げ弾性率が2000〜3000MPaであり、120℃環境下で500時間静置後の23℃におけるシャルピー衝撃強度が少なくとも7kJ/m2であることがより好ましい。
なお、本実施の形態において、上記(1)〜(4)の特性(重量平均粒子径、曲げ弾性率、ならびに120℃環境下で500時間静置後の23℃におけるシャルピー衝撃強度およびその保持率)は、後述の実施例に記載の方法により測定した値である。
上記(1)〜(4)の特性は、上記の樹脂組成物の組成と下記に詳述する樹脂組成物の製造方法によって得られるものである。
[樹脂組成物の製造方法]
本実施の形態の樹脂組成物を得るには、各成分を押出機で混合して溶融押出する際の製造方法がきわめて重要である。
本実施の形態の樹脂組成物の製造に用いる押出機としては、異方向回転または同方向回転の二軸押出機が好適である。また、当該押出機は、付帯設備として供給設備(原料供給口)を有している。さらに、原料成分である(A)ポリフェニレンエーテルの粉体を、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気下で押出機に供給、且つ同様に低酸素濃度下で他の成分も供給可能な設備を有し、さらには必要に応じ、押出機バレルの途中から副原材料を供給する設備を有することが好ましい。本実施の形態の樹脂組成物の製造において、各成分を混合・溶融押出するライン全体を、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気下に保つことがより好ましい。
(A)、(B)および(C)成分の押出機への供給位置を以下のようにすることが好ましい。(A)、(B)および(C)成分の押出機への供給位置を以下のようにし、後述するような製造方法の押出条件とすることによって、優れた耐熱エージング特性を有する樹脂組成物が得られる。
(A)ポリフェニレンエーテルは、最上部の第1供給口から、場合によってはその一部を途中の供給口から押出機内に供給する。
(B)水添ブロック共重合体および(C)有機リン化合物は、最上部の第1供給口および/または前段途中の第2または第3供給口から押出機内に供給する。
以下、好ましい製造方法について押出時の条件を詳述する。
(1)本実施の形態の樹脂組成物の製造方法は、二軸押出機を用いて前記樹脂組成物の原料成分を溶融混練する工程を含み、前記二軸押出機の最も上流側の原料供給口(第1原料供給口)における酸素濃度を3容量%以下、好ましくは1容量%以下とする製造方法である。当該酸素濃度を3容量%以下に保持した場合に、得られる樹脂組成物は耐熱エージング性に優れ、1容量%以下に保持した場合には、得られる樹脂組成物は耐熱エージング性に著しく優れる。
(2)本実施の形態の樹脂組成物の製造方法は、二軸押出機を用いて前記樹脂組成物の原料成分を溶融混練する工程を含み、前記二軸押出機のダイ出口から押出される際の溶融樹脂組成物の温度が350℃以下、好ましくは340℃以下である製造方法であることが好ましい。溶融樹脂組成物の温度が350℃以下である場合に、得られる樹脂組成物は、耐衝撃性、耐熱エージング性に優れ、340℃以下に保持した場合には、得られる樹脂組成物は、耐衝撃性、耐熱エージング性に著しく優れる。
(3)本実施の形態の樹脂組成物の製造方法は、二軸押出機を用いて前記樹脂組成物の原料成分を溶融混練する工程を含み、前記二軸押出機の構成が、上流側から順に、前段および後段とした構成であり、前記二軸押出機のバレル全長を100%としたときに、前段の範囲が40%以上であり、後段の範囲が60%以下であり、前段のバレル温度を(A)ポリフェニレンエーテルのガラス転移点(Tg)以下とし、後段のバレル温度を240℃以上320℃以下とする製造方法であることが好ましい。
前記二軸押出機のバレル全長を100%として、押出機の前段の範囲は、好ましくは50〜75%である。また、押出機の前段のバレル温度は、好ましくは150℃〜220℃である。
前記二軸押出機のバレル全長を100%として、押出機の後段の範囲は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは25%以下である。また、押出機の後段のバレル温度は、好ましくは250〜300℃の範囲とする。
本実施の形態の樹脂組成物の製造方法において、バレル設定温度を上記の設定温度とした場合に、充分な溶融混合状態となり、得られる樹脂組成物は耐熱エージング性が優れる。
(4)本実施の形態の樹脂組成物の製造方法は、二軸押出機を用いて前記樹脂組成物の原料成分を溶融混練する工程を含み、前記二軸押出機の構成が、上流側から順に、前段および後段とした構成であり、前記二軸押出機のバレル全長を100%としたときに、前段の範囲が40%以上であり、後段の範囲が60%以下であり、前段のスクリュー構成が、順送り(正ネジ)スクリューエレメントおよび順送り(位相45度以下)ニーディングディスクエレメント(Rと表示)から構成され、後段のスクリュー構成が、直交(位相90度)ニーディングディスクエレメント(Nと表示)、逆送り(負位相45度以下)ニーディングディスクエレメント(Lと表示)、および逆送り(逆ネジ)スクリューエレメント(Lsと表示)からなる群より選択される少なくとも2種以上のエレメントを含むスクリュー構成とする製造方法であることが好ましい。また、後段のスクリュー構成は、さらに順送り(位相45度以下)ニーディングディスクエレメントを含めたニーディングゾーン(溶融混練ゾーンという場合もある)を有するスクリュー構成であってもよい。
なお、上述の各エレメントは1個単独で用いてもよく、2個以上を併用してもよい。
本実施の形態の樹脂組成物の製造方法において、二軸押出機のスクリュー構成を上記のようにした場合に、得られる樹脂組成物は耐熱エージング性が著しく優れる。
溶融混練ゾーンの後には溶融した樹脂から揮発成分や分解物を除去するための真空脱気ゾーンを設けることが好ましい。真空脱気ゾーンのスクリューには二条の正ネジスクリューなどの送りスクリューエレメントを用いてシェアが掛かりにくいスクリュー構成とすることが好ましい。
前記スクリュー構成において、更に、押出機のスクリュー回転数は600〜150rpmにすることが好ましく、より好ましくは500〜200rpm、更に好ましくは450〜300rpmである。スクリュー回転数が600rpmを超えた場合,樹脂温度が上昇して、得られる樹脂組成物の耐熱エージング性能が低下する。また、スクリュー回転数を150rpm未満とした場合、(A)ポリフェニレンエーテル粉体と他の原料成分とを充分に混練することができない。
本実施の形態の製造方法において、二軸押出機のダイ出口から押出される際の樹脂組成物の温度(以下「樹脂温度」とも記す。)は350℃以下であることが好ましい。樹脂温度を350℃以下にすることによって、得られる樹脂組成物の耐衝撃性の低下、耐熱エージング性の低下を抑制できる。当該樹脂温度は、好ましくは340℃〜300℃、より好ましくは330〜310℃である。樹脂温度を300℃未満にすることにより、更に得られる樹脂組成物の耐熱エージング性は向上すると推定されるが現実的には困難である。
樹脂温度を350℃以下に抑制する方法としては、樹脂組成物の原料成分の量比や種類に応じて、未溶融混合ゾーンと溶融ゾーンとの長さ、スクリュー構成、バレル設定温度、スクリュー回転数を適宜調整する方法が挙げられる。
本実施の形態の製造方法において、難燃剤としての(C)有機リン化合物の供給方法は、有機リン化合物が液体の場合には(A)ポリフェニレンエーテルの粉体と予備混合するか、(A)ポリフェニレンエーテルの粉体と(B)水添ブロック共重合体とを押出機の上流側にある第1原料供給口から供給後、第1原料供給口より下流側の液体圧入口より供給することが好ましい。
(C)有機リン化合物、特に液体の有機リン酸エステル化合物を圧入添加でサイドフィードする場合は、ニーディングディスクエレメントR(捻れ角度15〜75度で組み合わせた、L/D=1.0〜1.5正ネジスクリューエレメント)を使用して、(A)ポリフェニレンエーテルの粉体と液体のリン酸エステル化合物を混合することが好ましい。
液体のリン酸エステル系化合物をサイドフィードする方法は、ギアポンプ、プランジャーポンプ等を使って、押出機のサイドに注入ノズルからフィードする方法が挙げられる。
固体のリン酸エステル系化合物は、押出機の上流側にある第1供給口より、他の成分と一緒に供給するか、あるいは第1供給口より下流側に設けた供給口よりサイドフィードする。
(D)スチレン系樹脂および/または(G)ポリオレフィンは、(A)ポリフェニレンエーテルの粉体や(B)水添ブロック共重合体と一緒に押出機の上流側にある第1原料供給口から供給することも可能であるが、熱分解を抑制するために、押出機バレル途中から供給することが好ましい。具体的には、前記二軸押出機の構成が、上流側から順に、前段および後段を設けた構成であり、前記二軸押出機のバレル全長を100%としたときに、前段の範囲が40%以上であり、後段の範囲が60%以下である場合、(D)スチレン系樹脂および/または(G)ポリオレフィンを、好ましくは押出機バレルの後段のバレルからサイドフィードすることが好ましい。
(E)熱安定剤は、(A)ポリフェニレンエーテル粉体や(B)水添ブロック共重合体と一緒に押出機の上流側にある第1原料供給口から供給することが好ましい。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた各成分は以下のものである。
[(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)]
ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル:旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「ザイロン S201A」
[(B)水添ブロック共重合体]
以下のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンの結合構造)を水素添加して得られた水添ブロック共重合体(ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンの結合構造)を用いた。
(SEBS−1)
数平均分子量約250,000、スチレン重合体ブロック約33質量%、ブタジエンユニットの水素添加率98%以上の水添ブロック共重合体:Kraton Polymers社製、商品名「クレイトン G1651」
(SEBS−2)
数平均分子量約80,000、スチレン重合体ブロック約60質量%、ブタジエンユニットの水素添加率98%以上の水添ブロック共重合体:クラレ(株)製、商品名「セプトン 8104」
(SEBS−3)
数平均分子量約80,000、スチレン重合体ブロック約30質量%、ブタジエンユニットの水素添加率98%以上の水添ブロック共重合体:Kraton Polymers 社製、登録商標「クレイトン G1650」
[(C)有機リン化合物]
以下のリン酸エステル難燃剤を用いた。
(FR−1)
主成分が、以下の化学式にてN=1を主成分とするビスフェノールA系縮合リン酸エステル:大八化学(株)製、商品名「CR−741」
(FR−2)
主成分が、以下の化学式にて、N=1を主成分とするビフェノール系縮合リン酸エステル:(株)ADEKA製、商品名「アデカスタブ FP−800」
(FR−3)
主成分が、以下の化学式にて、N=1を主成分とするレゾルシノール系縮合リン酸エステル:大八化学(株)製、商品名「CR−733S」
[(D)スチレン系樹脂]
(PS)
ホモポリスチレン:PSジャパン(株)製、商品名「PSJ−ポリスチレン 685」
[(E)熱安定剤]
(STB−1)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤:豊通ケミプラス(株)製、商品名「IRGANOX 565」
(STB−2)
ホスファイト系酸化防止剤:ADEKA(株)製、商品名「アデカスタブ PEP36」
[(F)紫外線吸収剤、光安定剤]
(BTA)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:城北化学(株)製、商品名「JF−77P」
(HALS)
ヒンダードアミン系光安定剤:城北化学(株)製、商品名「JF−90」
[(G)ポリオレフィン]
(LDPE)
低密度ポリエチレン:旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「サンテックLD M2004」を用いた。
(EP)
エチレン−αオレフィン共重合体:三井化学(株)製、商品名「タフマー P−0680J」
[特性評価方法等]
得られた樹脂組成物の特性評価は、以下の方法および条件で行った。
(試験片の作成)
得られた樹脂組成物ペレットを100℃で2時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物のペレットから、東芝機械(株)製IS−100GN型射出成形機(シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定)を用いて、ISO−15103に準じて試験片を作成した。
(1)シャルピー衝撃強度
ISO−179に準拠し、上記試験片の中央にノッチ(切り欠き)を付けて、ノッチ付きシャルピー衝撃試験片を作成した。該ノッチ付きシャルピー衝撃試験片について、耐衝撃性評価として、ISO−179に準拠し、23℃におけるシャルピー衝撃強度を測定した。
(2)耐熱エージング特性
ISO−179に準拠し、上記試験片の中央にノッチ(切り欠き)を付けて、ノッチ付きシャルピー衝撃試験片を作成した。該ノッチ付きシャルピー試験片について、120℃に設定した空気循環オーブン内で500時間の熱エージングを実施した後、室温23℃、湿度50%の状態に24時間放置後、ISO−179に準拠し、23℃におけるシャルピー衝撃強度を測定して、耐衝撃性の変化の程度(熱エージング前のシャルピー衝撃強度に対する保持率)を算出した。
(3)曲げ弾性率
上記試験片を用い、ISO−178に準拠し、曲げ弾性率を、2mm/分にて測定した。
(4)ビカット軟化温度
上記試験片を用い、耐熱性評価として、ISO−306に準拠し、ビカット軟化温度(以下、「VSP」とも記す。)を10N下にて測定した。
(4)難燃性
東芝機械(株)製IS−100GN型射出成形機(シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定)にて、燃焼試験用試験片を作成した。UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に基づき、1.5mm厚みの射出成形試験片を用いて燃焼試験を行った。試験片5本について、接炎を各2回、合計10回行い、消炎時間の平均秒数および最大秒数を測定し、以下のとおりランク付けした。
(ランク)
5本一組の試験で、合計10回の燃焼時間が測定でき、いずれの燃焼時間も10秒以内であり、10回の燃焼時間の合計が50秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさなかったものが「V−0」、いずれの燃焼時間も30秒以内であり、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさなかったものが「V−1」、いずれの燃焼時間も30秒以内であり、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこしたものが「V−2」、この評価基準以下のものを「notV」とした。
(5)吸水試験
上記試験片の作成にしたがって、ISO−527に準じた引っ張り試験片を作成した。該試験片を、120℃の(加圧:1989hPa)熱水中で150時間浸漬し、質量増加%を測定した。
(6)黒点異物
得られた樹脂組成物ペレットを100℃で2時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物のペレットから、東芝機械(株)製、IS−100GN型射出成形機(シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定)を用いて、50mm×90mm×厚み2.5mmの平板を成形した。その平板2枚の表裏を肉眼判断で、約0.1mm以上の大きさの黒点異物(組成物が熱劣化した炭化物と推定)を観察した。
(基準)
◎:黒点異物が全く確認できなかった。
○:黒点異物が1〜5個観察された。
△:黒点異物が6〜10個程度観察された。
×:黒点異物が10個以上観察された。
(7)離型性
上記試験片の作成に示したとおり射出成形により試験片を作成した際に、試験片およびランナーの金型からの型離れのし易さの程度を目視で観察し、以下の基準で離型性を判定した。
(基準)
○:離型が良かった。
△:離型がやや良くなかった。
×:離型がひどく悪かった。
(8)重量平均粒子径の算出
組成物中に分散した(B)水添ブロック共重合体の重量平均粒子径を以下のとおり算出した。
上記シャルピー衝撃試験片から超薄切片を作成し、該超薄切片について、四酸化ルテニウムで染色後、透過型電子顕微鏡写真を撮影した。25,000倍の前記写真を用いて、組成物中に分散した各(B)水添ブロック共重合体の粒子径を測定し、以下のとおり重量平均粒子径を算出した。この際、分散粒子の形状は不規則であるため、それぞれの分散粒子径は相当の円を想定記入し、その直径を読み取ることで代用した。
25,000倍の前記写真において、直径1mm以上の分散粒子を数えることとし、読み取りレンジは、1−2mm、2−3mm、3−5mm、5−7mm、7−10mm、10−14mm、14−18mm、18−22mmとした。読み取りレンジ毎の中心径(Di)は、それぞれ0.06μm、0.10μm、0.16μm、0.24μm、0.34μm、0.48μm、0.64μm、0.80μmに相当する。
読み取りレンジの各中心径(Di)および個数(Ni)から、下式により重量平均粒子径を算出した。
重量平均粒子径(μm)=Σ[(Di)4×(Ni)]/Σ[(Di)3×(Ni)]
[実施例1]
表1に示した配合組成を用い、表1に示した製造条件にて樹脂組成物ペレットを以下のとおり作製した。
スクリュー直径58mm、バレル数13、減圧ベント口付二軸押出機(TEM58SS:東芝機械社製)を用いて、各成分を溶融混練し、押出されたストランドを冷却裁断して樹脂組成物ペレットを得た。なお、前記溶融混練する際の各成分の供給方法は以下のとおりとした。まず、(A)成分として、PPEを83質量部、(B)成分として、SEBS−1を4質量部、(D)成分として、PSを2質量部、(E)成分として、STB−1を0.5質量部およびSTB−2を0.5質量部、ならびに(G)成分として、LDPEを2質量部、押出機の流れ方向に対して上流側のバレル1にある第1供給口より供給した後に、(C)成分として、FR−1を11質量部、第1供給口より下流側のバレル7にある圧入(液体)注入口よりギアポンプを使って押出機のサイドに注入ノズルから供給した。
次に、得られた樹脂組成物ペレットについて、上記評価法にて評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、上記二軸押出機のスクリュー構成等は、以下のとおりとした。
上記押出機のスクリュー構成は、上流側から順に、全バレル長の75%を前段(未溶融〜半溶融混合)ゾーン、残りのバレル長25%を後段(溶融混練)ゾーンとした。
後段のスクリュー構成は、上流側から順に、順送り(位相45度以下)ニーディングディスクエレメント(Rと表示:長さ60mm)を2個、直交(位相90度)ニーディングディスクエレメント(Nと表示:長さ60mm)を1個、逆送りスクリューエレメント(Lと表示:長さ30mm)を1個とした。前段のスクリュー構成は、上流側から順に、順送りスクリューエレメントの組み合わせの後に、順送り(位相45度以下)ニーディングディスクエレメント(Rと表示:長さ60mm)を2個とした。
バレル設定温度をバレル1:水冷、バレル2:150℃、バレル3〜8:200℃、バレル9:250℃、バレル10〜13:280℃、ダイス:290℃として、スクリュー回転数350rpm、吐出量300kg/hrの条件で溶融混練、押出しを行った。その際、真空脱気口をバレル11に設け、約100hPaで減圧脱気した。また、窒素を第1供給口下部から約30L/分供給し、第1供給口上部の酸素濃度は約2.4容量%であった。ダイ出口の溶融樹脂温度を実測したところ342℃であった。
[実施例2〜13、比較例1〜3]
表1に示した配合組成および製造条件とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを作製した。但し、実施例5、9および10において、固体(粉体)難燃剤である(C)FR−2の供給位置を、他の成分と一緒の、押出機の流れ方向に対して上流側のバレル1にある第1供給口とした。また、実施例7では、(D)PSおよび(G)ポリオレフィンをバレル9から供給した。実施例2および実施例10では、窒素供給量を約50L/分とし、押出開始までの置換時間を充分にとって酸素濃度を下げた。
次に、得られた樹脂組成物ペレットについて、上記評価法にて評価を行った。評価結果を表1に示す。
本発明の樹脂組成物は、耐熱性、耐熱エージング性に著しく優れた難燃性の樹脂組成物であり、環境上好ましく、テレビジョンおよび、家電OA機器部品などの分野で好適に利用できる。特に高い耐熱性、耐熱エージング特性、難燃性等を必要としている電気・電子関係の内部部品用途、特にテレビ内部部品の偏向ヨーク、太陽電池のジャンクションボックス等に適した材料である。

Claims (3)

  1. 以下の成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計100質量部において、
    (A)ポリフェニレンエーテル 57〜95質量部、
    (B)水添ブロック共重合体 2〜30質量部、
    (C)有機リン化合物 3〜30質量部、および
    (D)スチレン系樹脂 0〜20質量部を含み、
    (B)が、ポリスチレンブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であり、
    (B)の数平均分子量が10万〜50万であり、
    (B)が、樹脂組成物中に粒子状に分散し、その重量平均粒子径が0.3〜1μmである樹脂組成物の製造方法であって、
    二軸押出機を用いて前記樹脂組成物の原料成分を溶融混練する工程を含み、
    前記二軸押出機の最も上流側の原料供給口(第1原料供給口)における酸素濃度を3容量%以下とし、
    前記二軸押出機のダイ出口から押出される際の溶融樹脂組成物の温度が350℃以下であり、
    前記二軸押出機の構成が、上流側から順に、前段および後段とした構成であり、
    前記二軸押出機のバレル全長を100%としたときに、前段の範囲が40%〜75%であり、後段の範囲が60%〜25%であり、
    前段のスクリュー構成が、順送り(正ネジ)スクリューエレメントおよび順送り(位相45度以下)ニーディングディスクエレメントから構成され、
    後段のスクリュー構成が、直交(位相90度)ニーディングディスクエレメント、逆送り(負位相45度以下)ニーディングディスクエレメント、および逆送り(逆ネジ)スクリューエレメントからなる群より選択される少なくとも2種以上のエレメントを含むスクリュー構成であることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記原料成分が(A)ポリフェニレンエーテルを含み、
    前段のバレル温度を(A)ポリフェニレンエーテルのガラス転移点(Tg)以下とし、
    後段のバレル温度を240℃以上320℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記原料成分が(D)スチレン系樹脂を含み、
    (D)スチレン系樹脂を、後段のバレルから供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
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