以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
≪ポリフェニレンエーテル/ポリカーボネート難燃性樹脂組成物≫
本実施形態のポリフェニレンエーテル/ポリカーボネート難燃性樹脂組成物は、
ポリフェニレンエーテル(A)69〜95質量%と、ポリカーボネート(B)5〜31質量%とを含有するポリフェニレンエーテル/ポリカーボネート樹脂100質量部と、
リン酸エステル系難燃剤(C)3〜10質量部と、
スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を導入した、ポリスチレン及び/又はアクリロニトリル−スチレン共重合体である、難燃剤(D)0.05〜1.0質量部とを含む。
上記の難燃性樹脂組成物を使用することにより、優れた難燃性と良好な耐熱性と流動性と耐衝撃性とのバランスを有して、さらには、アルミ蒸着後の成形体の外観(アルミ蒸着後成形体表面の白斑の低減)に優れ、成形体光沢面の輝度感にも優れた自動車ランプエクステンション成形体や各種照明器具のエクステンションやリフレクター部品が得られる。以下、上記の樹脂組成物の各構成成分について詳細に説明する。
<ポリフェニレンエーテル(A)>
ポリフェニレンエーテル(A)は、特に限定されないが、具体的には、下記式(1)の〔a〕及び/又は〔b〕を繰り返し単位とする単独重合体(ホモポリマー)、又は共重合体(コポリマー)であることが好ましい。
上記式(1)の〔a〕及び〔b〕中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又はハロゲン及び水素などの一価の残基であることが好ましい。但し、R5及びR6が同時に水素である場合を除く。また、前記アルキル基のより好ましい炭素数は1〜3であり、前記アリール基のより好ましい炭素数は6〜8であり、前記一価の残基の中でもより好ましくは水素である。なお、上記(1)の〔a〕及び〔b〕における繰り返し単位数については、ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布により様々であるため、特に制限されることはない。
単独重合体のポリフェニレンエーテル(A)としては、特に限定されないが、具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル及びポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中でも原料入手の容易性や加工性の観点からポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。
また、共重合体のポリフェニレンエーテル(A)としては、特に限定されないが、具体的には、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、及び2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体といった、ポリフェニレンエーテル構造を主体とするものが挙げられる。この中でも、原料入手の容易性と加工性の観点から2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、物性改良の観点から2,6−ジメチルフェノール90〜70質量%と2,3,6−トリメチルフェノール10〜30質量%との共重合体がより好ましい。ポリフェニレンエーテル(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
また、ポリフェニレンエーテル(A)は、必要に応じて、他の種々のフェニレンエーテル単位を部分構造として含んでいてもよい。かかるフェニレンエーテル単位としては、特に限定されないが、具体的には、特開平01−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位や、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテル(A)は、その主鎖中にジフェノキノン等が少量結合していてもよい。さらに、ポリフェニレンエーテル(A)は、その一部又は全部を、アシル官能基とカルボン酸、酸無水物、酸アミド、イミド、アミン、オルトエステル、ヒドロキシ及びカルボン酸アンモニウム塩よりなる群から選択される1種又は2種以上を含む官能化剤と反応(変性)させることにより官能化ポリフェニレンエーテルとしてもよい。
ポリフェニレンエーテル(A)の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn値)は、好ましくは2.0〜5.5であり、より好ましくは2.5〜4.5、さらに好ましくは3.0〜4.5である。該Mw/Mn値は、樹脂組成物の成形加工性の観点から2.0以上が好ましく、樹脂組成物の機械物性の観点から5.5以下が好ましい。重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算分子量から得られる。
クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定したときのポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度は、樹脂組成物の十分な機械物性の観点から、0.25dl/g以上が好ましく、成形加工性と成形体の輝度感との観点から、0.55dl/g以下が好ましい。より好ましくは0.25〜0.40dl/gであり、さらに好ましくは0.25〜0.38dl/gであり、よりさらに好ましくは0.25〜0.35dL/gの範囲である。なお、本実施形態において、還元粘度は、クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定し、得られた値である。なお、還元粘度の制御は、重合時の酸素または酸素含有ガスの導入量の制御により行なうことができる。
ポリフェニレンエーテル(A)の残留揮発分は、成形体の表面外観改良の観点から0.3質量%(3000ppm)以下が好ましい。より好ましくは0.1質量%(1000ppm)以下である。ここで、残留揮発分が0.3質量%以下であるポリフェニレンエーテルは、特に限定されないが、具体的には、ポリフェニレンエーテル重合後の乾燥温度や乾燥時間を調節することによって、好適に製造できる。前記乾燥温度として、好ましくは40〜200℃が挙げられ、より好ましくは80〜180℃が挙げられ、さらに好ましくは120〜170℃が挙げられる。乾燥効率の観点から40℃以上が望ましく、溶融による焼け付きや劣化防止の観点から200℃以下での乾燥が望ましい。乾燥時間は特に限定されず、0.5〜72時間に設定することができる。好ましくは2〜48時間、より好ましくは6〜24時間である。ポリフェニレンエーテル(A)の残留揮発分を比較的短時間で除去しようとする場合は、高温でポリフェニレンエーテル(A)を乾燥させることが好ましい。かかる場合には、熱による劣化を防止するため、窒素雰囲気中での乾燥や真空乾燥機による乾燥が好適である。
重合後の乾燥によって、ポリフェニレンエーテル(A)の残留揮発分を低減させ、残留揮発分を0.3質量%にするためには、重合に悪影響を及ぼさず、環境にも殆ど悪影響を及ぼさず、且つ比較的沸点が低くて揮発させやすい重合溶剤を予め用いて重合させることが好ましい。このような重合溶剤としては、特に限定されないが、具体的には、トルエンが挙げられる。より具体的に説明すると、公知の重合方法により、還元粘度が0.25〜0.55dl/gであるポリフェニレンエーテルを重合した後、得られたポリマーを、真空乾燥機などを用いて十分に乾燥することによって、残留揮発分が0.3質量%であるポリフェニレンエーテルを製造できる。なお、上記した好ましい重合溶剤以外のものを使用しても、乾燥を十分に行なうことにより、残留揮発分が上記の範囲内であるポリフェニレンエーテルを製造することができる。
<ポリカーボネート(B)>
ポリカーボネート(B)としては、特に限定されないが、具体的には、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートが挙げられる。この中でも、本実施形態においては、芳香族ポリカーボネートが好ましい。ポリカーボネート(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
芳香族ポリカーボネートは、特に限定されないが、具体的には、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させることにより得られる。反応の方法としては、界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、及び環状カーボネート化合物の開環重合法等が挙げられる。
二価フェノールとしては、特に限定されないが、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
この中でも、好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、中でも耐衝撃性の観点からビスフェノールAがより好ましく、成形体の耐熱性、熱安定性及び耐薬品性の観点から1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)がさらに好ましい。
BPTMCはビスフェノールAと共重合して用いることが好ましく、二価フェノール全量を100モル%とした場合、好ましいBPTMCとビスフェノールAの合計含有量は90モル%以上であり、より好ましくは93モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
さらにBPTMCとビスフェノールAの比率の好ましい範囲は、耐熱性と流動性の観点から、BPTMC/ビスフェノールA=10/90〜50/50(モル比)の範囲である。
カーボネート前駆体としては、特に限定されないが、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステル又は、ハロホルメート等が挙げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート又は二価フェノールのジハロホルメートが挙げられる。
二価フェノールと前記カーボネート前駆体とを用い、界面重合法によって、芳香族ポリカーボネートを製造する際、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。
また、芳香族ポリカーボネートは、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐芳香族ポリカーボネート、芳香族若しくは脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート、前記二官能性カルボン酸及び前記二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネートを含んでいてもよい。また、得られたポリカーボネートの2種以上を混合した混合物であってもよい。
なお、三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、特に限定されないが、具体的には、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが使用できる。
芳香族ポリカーボネートが、分岐芳香族ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.9モル%、さらに好ましくは0.01〜0.8モル%である。
また、芳香族ポリカーボネートを溶融エステル交換法により製造する場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.9モル%、さらに好ましくは0.01〜0.8モル%である。なお、多官能性化合物の含有量、分岐構造量は、1H−NMR測定により算出することが可能である。
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α、ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては、特に限定されないが、具体的には、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
二官能性アルコールとしては脂環族ジオールが好ましく、特に限定されないが、具体的には、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、及びトリシクロデカンジメタノールが挙げられる。
また、芳香族ポリカーボネートとしては、特に限定されないが、具体的には、ポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
芳香族ポリカーボネートは、上述した各種二価フェノールの異なる芳香族ポリカーボネート、分岐成分を含有する芳香族ポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体などの、各種の芳香族ポリカーボネートを2種以上混合したものであってもよい。
さらに、下記に示す製造法の異なる芳香族ポリカーボネート、末端停止剤の異なる芳香族ポリカーボネートなど、各種についても1種又は2種以上を混合したものが使用できる。
芳香族ポリカーボネートの重合反応において、界面重縮合法による反応は、通常、二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤及び有機溶媒の存在下で反応させることが好ましい。
酸結合剤としては、特に限定されないが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。
有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。
また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。
芳香族ポリカーボネートの重合反応を界面重縮合法により行なう場合、反応温度は0〜40℃であることが好ましく、反応時間は10分〜5時間程度であることが好ましく、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。界面重縮合法による重合反応においては、末端停止剤を使用することが好ましい。末端停止剤としては、特に限定されないが、具体的には、単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類としては、特に限定されないが、具体的には、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。単官能フェノール類の別の例としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノールが挙げられる。また、末端停止剤は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
芳香族ポリカーボネートの重合反応における、前記溶融エステル交換法による反応は、通常、二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコール又はフェノールを留出させる方法により行なわれることが好ましい。
溶融エステル交換法における反応温度は、生成するアルコール又はフェノールの沸点等により異なるが、120〜350℃の範囲であることが好ましい。反応後期には反応系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコール又はフェノールの留出を容易にさせることが好ましい。反応時間は1〜4時間程度であることが好ましい。
カーボネートエステルとしては、特に限定されないが、具体的には、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
また、溶融エステル交換法における重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。該重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。さらに、アルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。
該重合触媒は一種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3等量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4等量の範囲で選ばれる。
芳香族ポリカーボネートの重合反応における、前記溶融エステル交換法による反応においては、フェノール性の末端基を減少させるために、重縮合反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート及び2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えてもよい。フェノール性の末端基を減少させることにより、ポリマーの安定性の改良を図ることができる。
さらに、溶融エステル交換法では、触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また、失活剤の量は、重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合で使用することが好ましく、より好ましくは0.01〜300ppm、さらに好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。
好ましい失活剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩が挙げられる。
芳香族ポリカーボネートは、配合された樹脂組成物が適当な成形流動性と機械物性を示すようにする観点で粘度平均分子量が10,000以上であることが好ましく、より好ましくは15,000〜50,000である。粘度平均分子量の下限は、さらに好ましくは16,000であり、さらにより好ましくは17,000であり、よりさらに好ましくは18,000である。一方、粘度平均分子量の上限は、成形流動性の観点でより好ましくは26,000であり、さらに好ましくは25,000であり、さらにより好ましくは23,000である。
芳香族ポリカーボネートは、上記のように2種以上の異なる芳香族ポリカーボネートが混合されたものであってもよい。この場合、粘度平均分子量が好ましい範囲外である芳香族ポリカーボネートを混合して、好ましい粘度平均分子量になるように調整することも当然に可能である。
特に粘度平均分子量が50,000を超える芳香族ポリカーボネートとの混合物はエントロピー弾性が高く、ジェッティングなどに代表されるレオロジー挙動による成形体の外観不良が生じにくい特徴がある。したがって、成形体の外観不良が生ずる場合には、粘度平均分子量が50,000を超える芳香族ポリカーボネートとの混合物を用いることにより外観不良を抑制することは、適切な態様である。さらに、ガスインジェクション成形などにおいても、ガス注入量が安定し、また発泡成形においては発泡セルが安定し、微細かつ均質なセルが形成されやすいことから有利である。
より好ましくは粘度平均分子量が80,000以上の芳香族ポリカーボネートとの混合物であり、さらに好ましくは100,000以上の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネートとの混合物である。すなわちゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などの測定法において2ピーク以上の分子量分布を観察できる芳香族ポリカーボネートが好ましく使用できる。
また、芳香族ポリカーボネートにおいて、そのフェノール性水酸基量は30eq/ton以下が好ましく、25eq/ton以下がより好ましく、20eq/ton以下がさらに好ましい。尚、フェノール性水酸基量の値は十分に末端停止剤を反応させることで実質的に0eq/tonとすることも可能である。
フェノール性水酸基量は、1H−NMR測定を行い、カーボネート結合を有する2価フェノールユニット、フェノール性水酸基を有する2価フェノールユニット、及び末端停止剤のユニットのモル比を算出し、それに基づきポリマー重量当たりのフェノール性水酸基量に換算することで求められる。
芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、以下のようにして求めることができる。まず下記数式(I)により比粘度を算出する。下記数式(I)中、塩化メチレンの落下秒数(t0)及び試料溶液の落下秒数(t)は、塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを20℃で溶解した溶液を用いて、オストワルド粘度計により求めることができる。該比粘度を下記数式(II)に挿入して粘度平均分子量Mを求めることができる。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0 ・・・・数式(I)
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を下記数式(II)に代入して極限粘度[η]を求め、求められた極限粘度を下記数式(III)に代入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度、c=0.7)・・・・数式(II)
[η]=1.23×10−4M0.83 ・・・・数式(III)
芳香族ポリカーボネートとしては、上述したように、二価フェノールの異なるもの、末端停止剤を使用したものと使用していないもの、直鎖状のものと分岐状のもの、製法の異なるもの、末端停止剤の異なるもの、芳香族ポリカーボネートとポリエステルカーボネート、粘度平均分子量の異なるものなど、2種以上の芳香族ポリカーボネートを混合して使用することができる。
本実施形態に使用するポリカーボネート(B)は、成形体の成形性と、外観(白斑)改良との観点から、溶融エステル交換法(非ホスゲン法)によって製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。さらには、ポリカーボネート(B)は、成形体の耐熱性、熱安定性及び耐薬品性の観点から、分子骨格にイソフタル酸及び/又はテレフタル酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂が、より好ましい。
なお、脂肪族ポリカーボネートとしては、特に限定されない。また、芳香族−脂肪族ポリカーボネートとしては、特に限定されないが、具体的には、上記芳香族ポリカーボネートと上記脂肪族ポリカーボネートの共重合体が挙げられる。
ポリカーボネート(B)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1〜100の範囲から選ばれ、より好ましくは5〜65、さらに好ましくは8〜40、よりさらに好ましくは8〜30の範囲である。該MFRは、十分な流動性付与の観点から1以上が望ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂との十分な混和性、押出成形加工時の加水分解抑制の観点から100以下が望ましい。該MFRは、試験方法ISO1133に準拠し、測定温度300℃、1.2kg荷重で測定した値である。
ポリカーボネート(B)が、二価フェノールとして95モル%以上のビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂の場合、ポリフェニレンエーテルをマトリックスとして、ポリカーボネートを分散相として形成する観点より、ISO1133に準拠し、測定温度300℃、1.2kg荷重で測定したMFRの値が、10〜50g/10minの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは10〜30g/10minである。
ポリカーボネート(B)が、二価フェノールとしてビスフェノールAとビスフェノールTMC(BPTMC)のモノマーを90モル%以上含んでなるポリカーボネート樹脂の場合、ポリフェニレンエーテルをマトリックスとして、ポリカーボネートを分散相として形成する観点より、ISO1133に準拠し、測定温度330℃、2.16kg荷重で測定したMFRの値が、10〜50g/10minの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは10〜30g/10minである。
ポリカーボネート(B)の水分量は、1500ppm以下であることが好ましい。より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、よりさらに好ましくは200ppm以下である。押出時のストランド引取り安定性及び成形時の加水分解による成形体表面シルバー発生抑制の観点から、1500ppm以下であることが好ましい。該水分量は、カールフィッシャー水分計等により測定することができる。
また、本実施形態に使用するポリカーボネート(B)は、成形体外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは1,500〜9,500、より好ましくは2,000〜9,000である。該粘度平均分子量(Mv)の測定方法は、上述の芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量の測定方法と同様である。ポリカーボネートオリゴマーの含有量は、ポリカーボネート(B)において、好ましくは30質量%以下である。
さらに、本実施形態においては、ポリカーボネート(B)として、バージン樹脂だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、所謂マテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂を使用してもよい。使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体、導光板、自動車窓ガラス・自動車ヘッドランプレンズ・風防などの車両透明部材、水ボトル等の容器、メガネレンズ、防音壁・ガラス窓・波板などの建築部材が挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品又はそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。再生されたポリカーボネート樹脂の使用割合は、バージン樹脂に対し、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
本実施形態の樹脂組成物は、耐熱性、成形加工性の他、特に成形品表面の白斑を解消させる観点から、ポリカーボネート(B)を含有する。ポリカーボネート(B)の含有量は、ポリフェニレンエーテル(A)100質量部に対して、5〜45質量部である。好ましくは10〜40質量部であり、より好ましくは15〜30質量部である。
ポリフェニレンエーテル(A)にポリスチレンを添加しても、白斑の発生量に殆ど変化は無いが、ポリフェニレンエーテル(A)とポリカーボネート(B)の合計100質量%中5質量%以上のポリカーボネート(B)を用いることで、劇的に白斑の発生が抑制される。ポリカーボネート(B)の添加量が多いほど白斑の発生を抑制できるが、ポリカーボネート(B)の添加量が、ポリフェニレンエーテル(A)とポリカーボネート(B)の合計100質量%中、31質量%以下であれば、ポリフェニレンエーテルとポリカーボネートの混練が上手く行き、押出し時のダイスウェル等を生じにくく連続生産が容易となるため好ましい。上記観点から、本実施形態のポリフェニレンエーテル/ポリカーボネート樹脂は、ポリフェニレンエーテル(A)70〜95質量%と、ポリカーボネート(B)5〜30質量%とを含有することが好ましく、ポリフェニレンエーテル(A)75〜90質量%と、ポリカーボネート(B)10〜25質量%とを含有することがより好ましい。
<リン酸エステル系難燃剤(C)>
リン酸エステル系難燃剤(C)は、ポリフェニレンエーテル/ポリカーボネート樹脂組成物に対する難燃性の付与に大きな効果を奏する。(C)成分として用いることのできるリン酸エステル系難燃剤としては、特に限定されないが、具体的には、リン酸エステル化合物、及びホスファゼン化合物などが挙げられる。
リン酸エステル化合物は、難燃性を向上するのに添加されるものであり、難燃剤として一般的に用いられる有機リン酸エステルであればいずれも用いることができる。リン酸エステル化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリスノニルフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−[ビス(メチルフェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン等が挙げられるがこれらに制限されることはない。さらに上記以外にリン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェートなどのリン酸エステル化合物、ジフェニル−4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラブロモベンジルホスフォネート、ジメチル−4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンジルホスフォネート、ジフェニル−4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンジルホスフォネート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2、3−ジブロモプロピル)−2、3−ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェートハイドロキノニルジフェニルホスフェート、フェニルノニルフェニルハイドロキノニルホスフェート、及びフェニルジノニルフェニルホスフェートなどのモノリン酸エステル化合物、後述する芳香族縮合リン酸エステル化合物などが挙げられる。リン酸エステル系難燃剤(C)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、加工時のガス発生が少なく、熱安定性などに優れることから芳香族縮合リン酸エステル化合物が好適に用いられる。
これらの芳香族縮合リン酸エステル化合物は、一般に市販されており、例えば、大八化学工業(株)のCR741、CR733S、PX200、(株)ADEKAのFP600、FP700、FP800などが知られている。
本実施の形態に用いるリン酸エステル系難燃剤(C)として、好ましいのは、下記式(I)又は下記式(II)で示されるリン酸エステル系化合物(芳香族縮合リン酸エステル化合物)である。より好ましいのは、下記式(I)で示されるリン酸エステル系化合物(芳香族縮合リン酸エステル化合物)である。
(式(I)及び(II)中、Q1、Q2、Q3、及びQ4は、各々置換基であって各々独立に炭素数1から6のアルキル基を表し、R1及びR2は各々メチル基を表し、R3及びR4は各々独立に水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数であり、n1及びn2は各々独立に0から2の整数を示し、m1、m2、m3、及びm4は各々独立に0から3の整数を示す。)
上記式(I)及び(II)で示される芳香族縮合リン酸エステル化合物は、それぞれの分子において、nは1以上の整数であり、好ましくは1から3の整数である。
上記式(I)及び(II)で示される芳香族縮合リン酸エステル化合物において、好ましい芳香族縮合リン酸エステル化合物は、式(I)におけるm1、m2、m3、m4、n1、及びn2が0であって、R3及びR4がメチル基である芳香族縮合リン酸エステル化合物;又は式(I)におけるQ1、Q2、Q3、Q4、R3、及びR4がメチル基であり、n1及びn2が0であり、m1、m2、m3、及びm4が1から3の整数であって、nの範囲が1から3の整数、特にnが1である芳香族縮合リン酸エステル化合物である。特に、上記好ましいリン酸エステル化合物を50質量%以上含有するリン酸エステル系難燃剤(C)が好ましい。
これらの芳香族縮合リン酸エステル化合物でより好ましいのは、酸価が0.1以下(JIS K2501に準拠して得られた値)の芳香族縮合リン酸エステル化合物である。
また、ホスファゼン化合物としては、フェノキシホスファゼン及びその架橋体が好ましく、より好ましいのは、酸価が0.1以下(JIS K2501に準拠して得られた値)のフェノキシホスファゼン化合物である。
(C)成分の配合量は難燃性、耐熱性、機械的物性の観点から、(A)、(B)成分の合計100質量部に対して、3〜10質量部であり、3〜9質量部が好ましく、4〜8質量部がより好ましい。リン酸エステル系難燃剤は、その使用量の増加に伴い、難燃性樹脂組成物の耐熱性と白斑等の成形品外観を大きく低下させるため、所望の難燃性を得るために必要な最低限の使用量を選択する。この観点から、3〜10質量部であれば、白斑が生じる等の成形品外観が良好となり好ましい。
<スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を導入した、ポリスチレン及び/又はアクリロニトリル−スチレン共重合体である、難燃剤(D)>
難燃剤(D)に用いられるポリスチレン又はアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)としては、特に限定されないが、具体的には、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、(HIPS:スチレン−ブタジエン共重合体)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン樹脂(AEPDMS樹脂)等を挙げることができ、これらのうち何れか1種若しくは複数種を混合して用いることができる。
これら樹脂の好ましい重量平均分子量は、ランプのリフレクターやエクステンションとして使用するのに十分な難燃性を示す観点から25,000〜10,000,000の範囲であり、より好ましくは30,000〜1,000,000の範囲であり、さらに好ましくは50,000〜500,000の範囲である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算分子量から得られる。
上述した樹脂にスルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を導入する方法としては、所定量のスルホン化剤でスルホン化処理する方法がある。スルホン化剤としては、特に限定されないが、具体的には、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、ポリアルキルベンゼンスルホン酸類を挙げることができ、これらのうち何れか1種若しくは複数種を混合して用いることができる。また、スルホン化剤の別の例として、アルキルリン酸エステルやジオキサン等のルイス塩基との錯体物も用いることができる。
アミド基やカルボキシル基の副生による樹脂の変色や機械的強度の低下を防止する観点で、スルホン化剤の水分含有量は3質量%未満が好ましい。
導入されたスルホン化剤の状態としては、例えばスルホン酸基(−SO3H)の状態、スルホン酸塩基の状態、アンモニアやアミン化合物で中和された状態が挙げられる。スルホン酸塩基としては、特に限定されないが、具体的には、スルホン酸Na塩基、スルホン酸K塩基、スルホン酸Li塩基、スルホン酸Ca塩基、スルホン酸Mg塩基、スルホン酸Al塩基、スルホン酸Zn塩基、スルホン酸Sb塩基、スルホン酸Sn塩基を挙げることができる。
なお、より高い難燃性を付与する観点で、スルホン酸基よりもスルホン酸塩基が導入されたポリスチレン又はAS樹脂が好ましい。スルホン酸塩基の中でもスルホン酸Na塩基、スルホン酸K塩基、スルホン酸Ca塩基等が好適である。
スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基の導入率は、スルホン化剤の添加量や、スルホン化剤を反応させる時間や、反応温度や、ルイス塩基の種類や量等で調整することができる。これらの方法の中でもスルホン化剤の添加量、スルホン化剤と反応させる時間、反応温度等で調整することがより好ましい。
難燃性を十分に付与する観点で、ポリスチレン及び/又はAS樹脂に対するスルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基の導入率は、硫黄成分として0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。難燃性樹脂組成物が経時変化(吸水)を受け難くし、燃焼時のブルーミング時間が長くならないようにする観点でスルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基の導入率は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。難燃剤中の硫黄成分は、酸素フラスコ燃焼法により定量することができる。JIS K 6233−1に準拠して硫黄成分を定量すれば、計算によりスルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基の導入率を求めることができる。
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、難燃剤(D)を0.05〜1.0質量部含み、0.05〜0.8質量部含むことが好ましく、0.05〜0.5質量部含むことがより好ましい。本難燃剤は極僅かな使用量で効果を発揮する特徴があり、上記含有量を超えて添加しても顕著な課題は生じないが、上記含有量で充分である。
<ゴム補強されていないスチレン系樹脂(E)>
本実施形態の難燃性樹脂組成物では、ゴム補強されていないスチレン系樹脂(E)を、前記(A)成分〜前記(D)成分の合計100質量部に対して、0〜30質量部さらに含むことができる。成形体の輝度感を改良して、成形時の溶融流動性を改良させるという観点から、(E)成分の含有量は0〜30質量部であることが好ましく、3〜25質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることがさらに好ましい。
ゴム補強されていないスチレン系樹脂(E)を含有するようにすることで、成形体の輝度感を改良して、成形時の溶融流動性を改良させることが可能である。溶融流動性の改良剤としてゴム補強されていないスチレン系樹脂(E)を選択するメリットの一つには、添加しても本実施形態の難燃性樹脂組成物の耐熱性をほとんど損なわせないことも挙げられる。ゴム補強されていないスチレン系樹脂(E)とは、スチレン系化合物単独で、又はスチレン系化合物と、該スチレン系化合物と共重合可能な化合物と、をゴム質重合体の非存在下で重合して得られる合成樹脂である。スチレン系化合物は、特に限定されないが、具体的には、下記式(3)で表される化合物を意味する。
式(3)中、Rは水素、低級アルキル又はハロゲンであり、Zはビニル基、水素、ハロゲン及び低級アルキル基よりなる群から選択される1種又は2種以上であり、pは0〜5の整数である。式(3)で表されるスチレン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレンが挙げられる。また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、特に限定されないが、具体的には、メチルメタクリレートやエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリルやメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物;無水マレイン酸等の酸無水物などが挙げられ、スチレン系化合物と共に使用される。
この中でも、ゴム補強されていないスチレン系樹脂(E)は、アクリロニトリル(AN)単位含有量5〜15質量%のアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、スチレン単位からなるゼネラルパーパスポリスチレンから選ばれる1種又は2種以上のスチレン系樹脂であることが好ましい。アクリロニトリル−スチレン樹脂に占めるアクリロニトリル単位の含有量としては、得られる成形体の表面外観を改良し、且つポリフェニレンエーテルとの十分な混和性を確保するという観点から、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは5〜12質量%、さらにより好ましくは7〜10質量%である。
(E)成分が、上述のアクリロニトリル(AN)単位含有量5〜15質量%のアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂である場合、ポリフェニレンエーテルをマトリックスとして、ポリカーボネート(B)の分散相を形成する上で、よりポリカーボネートの含有量が高い範囲までポリカーボネートを微分散させることが可能である。
<スチレン系ブロック共重合体(F)>
本実施形態の難燃性樹脂組成物では、スチレン系ブロック共重合体(F)を、前記(A)成分〜前記(D)成分の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部さらに含むことが好ましい。スチレン系ブロック共重合体(F)の含有量は、1〜10質量部であることがより好ましく、2〜10質量部であることがさらに好ましい。このような範囲の含有量であればより耐衝撃性が高いものとなる。また、含有量が10質量部以下であれば、成形体の表面外観に優れ好ましく、0.5質量部以上であれば耐衝撃性が高くなる傾向がある。
スチレン系ブロック共重合体(F)としては、特に限定されないが、具体的には、スチレンブロックと共役ジエン化合物ブロックとを有するブロック共重合体(以下「スチレンブロック−共役ジエン化合物ブロック共重合体」とも記す。)の水素添加物である。共役ジエン化合物ブロックは、熱安定性の観点から、少なくとも水素添加率50%以上で水素添加されたものが好ましい。より好ましくは80%以上、さらに好ましくは95%以上である。
スチレン系ブロック共重合体(F)を含有するPPE/PC難燃性樹脂組成物は、耐衝撃性が高い傾向がある。スチレン系ブロック共重合体(F)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
共役ジエン化合物ブロックとしては、特に限定されないが、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン・ブチレン)、ポリ(エチレン・プロピレン)及びビニル−ポリイソプレンが挙げられる。共役ジエン化合物ブロックは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ブロック共重合体を構成する繰り返し単位の配列の様式は、リニアタイプでもラジアルタイプでもよい。また、ポリスチレンブロック及びゴム中間ブロックにより構成されるブロック構造は二型、三型及び四型のいずれであってもよい。中でも、本実施形態に所望の効果を十分に発揮し得る観点から、好ましくは、ポリスチレン−ポリ(エチレン・ブチレン)−ポリスチレン構造で構成される三型のリニアタイプのブロック共重合体である。なお、共役ジエン化合物ブロック中に30質量%を超えない範囲でブタジエン単位が含まれてもよい。
本実施形態の樹脂組成物において、スチレン系ブロック共重合体(F)として、カルボニル基やアミノ基などの官能基を導入したスチレン系ブロック共重合体を用いることも可能である。
カルボニル基は、不飽和カルボン酸又はその官能的誘導体で変性することにより導入される。不飽和カルボン酸又はその官能的誘導体の例としては、特に限定されないが、具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハロゲン化マレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、及びエンド−シス−ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のジカルボン酸、並びにこれらジカルボン酸の無水物、エステル化合物、アミド化合物及びイミド化合物;アクリル酸及びメタクリル酸等のモノカルボン酸、並びにこれらモノカルボン酸類のエステル化合物及びアミド化合物が挙げられる。中でも、成形体の表面外観を保持し、且つ耐衝撃性を付与する観点から、好ましくは無水マレイン酸である。アミノ基は、特に限定されないが、具体的には、イミダゾリジノン化合物やピロリドン化合物などをスチレン系ブロック共重合体と反応させることにより導入させる。
(F)成分は、成形体光沢改良と、成形体の層剥離防止との観点から、結合スチレン量が45〜80質量%のスチレン−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物を含むことが好ましい。
本実施形態に用いる樹脂組成物において、成形体光沢改良及び一層の耐衝撃性付与と、成形体の層剥離防止との観点から、結合スチレン量が45〜80質量%のスチレン−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(F−1)と、結合スチレン量が20〜40質量%のスチレン−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(F−2)とを、(F−1)/(F−2)=4/1〜1/4の比率で併用したものを用いることが好ましい。より好ましくは(F−1)/(F−2)=3/2〜1/3であり、さらに好ましくは1/1〜1/2の比率である。十分な耐衝撃性付与の観点から、(F−1)/(F−2)=4/1の比率以下で、(F−2)成分が配合されることが好ましい。また、十分な成形体光沢の改良と、層剥離防止の観点から、(F−1)/(F−2)=1/4の比率以上で、(F−2)成分が配合されることが好ましい。
(F−1)成分の結合スチレン量は45〜80質量%の範囲から選ばれ、好ましくは50〜75質量%、より好ましくは55〜70質量%の範囲である。(F−1)成分の結合スチレン量は、(F−2)成分との混和による層剥離抑制の観点から45質量%以上が好ましく、耐衝撃性保持の観点から80質量%以下が好ましい。
(F−2)成分の結合スチレン量は20〜40質量%の範囲から選ばれ、好ましくは25〜40質量%、より好ましくは25〜35質量%の範囲である。(F−2)成分の結合スチレン量は、前記(A)成分との混和性の観点から20質量%以上が好ましく、十分な耐衝撃性付与の観点から40質量%以下が好ましい。
(F−1)成分の数平均分子量は5,000〜150,000が好ましく、より好ましくは10,000〜120,000、さらに好ましくは30,000〜100,000の範囲である。ポリフェニレンエーテル(A)との混和性の観点から、5,000〜150,000の範囲が好ましい。
(F−2)成分の数平均分子量は50,000〜500,000が好ましく、より好ましくは100,000〜400,000、さらに好ましくは150,000〜300,000の範囲である。十分な耐衝撃性付与の観点から、50,000〜500,000の範囲が好ましい。
(F)成分の、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn値)は、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.0〜2.0、さらに好ましくは1.0〜1.5の範囲内である。機械特性の観点から、1.0〜3.0の範囲内が好ましい。重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ポリスチレン換算分子量から得られる。
<その他>
本実施形態の樹脂組成物は、成形体の輝度感保持の観点から、強化剤としての無機フィラーを含まないことが好ましい。強化剤としての無機フィラーとしては、特に限定されないが、具体的には、熱可塑性樹脂の補強に用いられるものであり、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、マイカが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、成形体の輝度感保持の観点から、結晶性ポリマーを含まないことが好ましい。結晶性ポリマーとしては、特に限定されないが、具体的には、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマーが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、その他、必要に応じて、無機並びに有機着色剤及び離型剤などを含有してもよい。
樹脂組成物の熱安定性、並びに成形品の表面外観及び輝度感を向上させる観点から、安定剤を用いてもよい。安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、ヒンダードフェノール系、リン系の熱安定剤や、ヒドロキシルアミン系、ビタミンE系の熱安定剤等が挙げられ、その他、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ベンゾフェノン系、桂皮酸エステル系等の通常、紫外線吸収剤として用いられるような化合物も挙げられる。
≪樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、各成分を溶融混錬することにより製造することができる。前記難燃性樹脂組成物を製造するための、溶融混錬の条件については、特に制限されないが、表面外観に優れ、耐熱性と難燃性の性能を十分に発揮し得る樹脂組成物を大量且つ安定的に得るという観点から、二軸押出機を用いることが好適である。一例として、ZSK25二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mm、L/D=44);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)を用いた場合に、シリンダー温度270〜340℃、スクリュー回転数150〜450rpm、及びベント真空度11.0〜1.0kPaの条件で溶融混練する方法が挙げられる。なお、Lは二軸押出機の原料供給口から排出口までの距離(m)、Dは二軸押出機のスクリュー直径(m)をいう。
より大型(スクリュー径40〜90mm)の二軸押出機を用いて難燃性樹脂組成物を製造する際に注意すべきは、押出樹脂ペレット中に押出時に生じた、前記(A)成分から生じるゲルや炭化物が混入することであり、これは成形体の表面外観や輝度感を低下させる原因となる場合もある。そこで、前記(A)成分を最上流(トップフィード)の原料投入口から投入して、最上流投入口におけるシューター内部の酸素濃度を3容量%以下に設定しておくことが好ましい。該酸素濃度はより好ましくは1容量%以下である。
酸素濃度の調節は、原料貯蔵ホッパー内を十分に窒素置換して、原料貯蔵ホッパーから押出機原料投入口までの、フィードラインの途中を空気の出入りがないようにテープを貼って塞ぐなどして密閉性を向上させた上で、窒素フィード量の調節、ガス抜き口の開度を調節することで可能である。押出中における、ゲルや炭化物発生低減の観点から、シューター内部の酸素濃度は3容量%以下が好ましい。
≪成形体、自動車ランプエクステンション部品、各種照明器具のエクステンション部品、及び各種照明器具のリフレクター部品、並びにそれらの製造方法≫
本実施形態の難燃性樹脂組成物を含む、成形体、自動車ランプエクステンション部品、各種照明器具のエクステンション部品、リフレクター部品は、上述の難燃性樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
PPE/PC難燃性樹脂組成物を用いて、成形体、自動車ランプエクステンション部品又は各種照明器具のエクステンションやリフレクター部品を製造する場合の成形方法としては、特に制限されないが、例えば、射出成形、押出成形、真空成形及び圧空成形が好適に挙げられ、特に成形外観及び輝度感の観点から、射出成形がより好適に用いられる。
自動車ランプエクステンション部品とは、自動車の前照灯の光源ビームの後方にある光反射部品であるリフレクターと、ランプ前面カバーとの間に存在する比較的大型の光反射部品を意味する。自動車ランプエクステンション部品には、リフレクターほどの高い耐熱性は必要とされないが、成形体光沢面の良好な輝度感やアルミ蒸着後の表面外観、耐熱性と成形流動性との十分なバランス特性、軽量性(低比重の材料であること)、難燃性等がよりいっそう高いレベルで要求される。
照明器具のエクステンション部品やリフレクター部品とは、家電や産業用、農業用等の各種照明器具の反射材、反射意匠部材を意味する。自動車ランプエクステンション部品同様に、成形体光沢面の良好な輝度感やアルミ蒸着後の表面外観、軽量性、さらには優れた難燃性が要求される。要求される耐熱性は、自動車ランプエクステンション部品に比べれば高くない一方で、部品としては自動車ランプエクステンション部品よりも大型の物もあるため、高い成形流動性を有する難燃性樹脂組成物からなるのが好ましい。
本実施形態の自動車ランプエクステンション部品又は各種照明器具のエクステンション部品やリフレクター部品の成形温度は、例えば、シリンダー設定温度(最高温部)270〜340℃の範囲から選ばれる。280〜330℃が好ましく、290〜320℃がより好ましく、300〜320℃がさらに好ましい。十分な成形流動性の観点から270℃以上が好ましく、樹脂組成物の熱安定性の観点から340℃以下が好ましい。
本実施形態の自動車ランプエクステンション部品又は各種照明器具のエクステンション部品やリフレクター部品の平均厚みは、0.8〜3.2mmの範囲から選ばれることが好ましい。該平均厚みは、1.0〜3.0mmがより好ましく、1.2〜2.5mmがさらに好ましく、1.4〜2.2mmがよりさらに好ましい。該平均厚みは、軽量性の観点から3.2mm以下が好ましく、十分な成形性と強度保持の観点から0.8mm以上が好ましい。
自動車ランプエクステンション部品又は各種照明器具のエクステンション部品やリフレクター部品は、金型表面の表面粗さを極めて小さいレベル(平均表面粗度0.2μm以下)までダイヤモンドペースト等で磨き上げた鏡面成形金型を用いて成形されることが好ましい。鏡面成形金型の磨き番手は、#1000以上が好ましく、#2000以上がより好ましく、#5000以上がさらに好ましい。十分な鏡面外観発現の観点から、磨き番手は、#1000以上が好ましい。
自動車ランプエクステンション部品又は各種照明器具のエクステンション部品やリフレクター部品は、成形後に、その成形体表面の一部又は全部にアルミ蒸着処理が施されることが好ましい。本実施形態の自動車ランプエクステンション部品又は各種照明器具のエクステンション部品やリフレクター部品には、アルミ蒸着前に、成形体表面を活性化させることによって、アルミ膜の密着性を高められることから、予めプラズマ処理を行なうことが好ましい。また、アルミ蒸着後の成形体表面には、酸化等による外観や輝度感の低下を防止するため、プラズマ重合処理によって、二酸化珪素重合膜のコーティングを施すことが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。実施例及び比較例に用いた物性の測定方法及び原材料を以下に示す。
[物性の測定方法]
物性測定に用いたテストピースは、いずれも以下のように作製した成形片とした。実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを120℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物ペレットを、射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度300℃、金型温度120℃、射出速度(パネル設定値)85%で成形し、厚み0.64cmのタンザク形状の成形片を得た。また実施する試験に必要なものについては、厚み0.32cmのダンベル形状の成形片、0.16cmのタンザク形状の成形片を得た。
尚、各サンプルにおける、厚み0.32cmダンベル成形片は、成形片のSSP(ショートショットプレッシャー)+5kg/cm2のゲージ圧、成形サイクル:射出時間/冷却時間=10sec/10secで成形し、厚み0.64cmタンザク成形片は、前記ダンベル成形片の場合と同様のSSPのゲージ圧で、成形サイクル:射出時間/冷却時間=15sec/15secで成形し、厚み0.16cmタンザク成形片は、成形片のSSP+5kg/cm2のゲージ圧、成形サイクル:射出時間/冷却時間=10sec/10secで成形した。
1.荷重たわみ温度(HDT)
ASTM D648に従い、下記の実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を用いて、上記の成形方法で作製した厚み0.64cmのタンザク成形片を用いて、荷重1.8MPaで測定した。
自動車ランプエクステンション部品又は各種照明器具のエクステンションやリフレクター部品は、最低でも120℃のHDTが必要である。
2.流動性(MFR)
実施例6,10〜12で得られた樹脂組成物のペレットを120℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した。乾燥後、メルトインデクサー(P−111、東洋精機社製)を用いて、シリンダー設定温度250℃、10kg荷重にて、実施例7〜11で得られた樹脂組成物については、シリンダー設定温度280℃、10kg荷重にて、MFR(メルトフローレート)を測定した。
評価基準としては、MFRが高い値である程、本用途の材料設計面において有利であると判定した。
3.IZOD衝撃値
ASTM D256に従い、下記の実施例6,10〜12で得られた樹脂組成物を用いて、上記の成形方法で作製した厚み0.64cmのタンザク成形片を用いて、23℃で測定した。
評価基準としては、IZOD衝撃値が高い値である程、本用途の材料設計面において有利であると判定した。
4.光沢値(グロス:測定角20°)
実施例6,10〜12で得られた樹脂組成物を用いて、上記の成形方法で作製した厚み0.32cmのダンベル成形片の中央部を、グロスメーター(VG7000、日本電色工業社製)により、測定角20°における光沢値(グロス)を測定した。
評価基準としては、光沢値が高い値である程、見た目にも成形片の艶が高く、輝度感に優れる。
5.白斑(直径30μm以上のクレーター)の個数
下記の実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを、120℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物を、金型表面を#5000で磨き上げた寸法100mm×100mm×2mm厚みのフィルムゲート鏡面金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度320℃、金型温度100℃、射出圧力(ゲージ圧70MPa)、射出速度(パネル設定値)85%で成形して成形平板を得た。さらにこの得られた成形平板を真空状態下の蒸着装置内に設置し、該装置内に不活性ガス及び酸素を導入し、チャンバー内をプラズマ状態にして、成形平板表面を活性化させるプラズマ処理を行ない、真空下の蒸着装置内で成形平板のアルミニウム蒸着を行なった。さらに、アルミニウム蒸着面の保護膜として、プラズマ重合処理を行ない、二酸化珪素重合膜を形成させた。アルミニウム膜厚は80nm、二酸化珪素膜厚は50nmであった。このアルミニウム蒸着を行った成形平板(以下「アルミ蒸着平板」とも記す。)のアルミニウム蒸着面中央部をデジタルマイクロスコープ(型式:VHX1000、キーエンス社製)により、40倍の拡大写真を撮影した。1撮影視野(面積:52.4mm2)内に存在する直径30μm以上のクレーター状の窪みを有する突起物(成形時にガスが抜けた跡)の個数を鏡面成形平板5枚分すべてにおいてカウントした合計を5で除して、1撮影視野当たりの平均個数を算出した。該平均個数を白斑の個数とした。
1視野当たりの平均個数により以下の通り○〜×で評価した。
○:1視野当たり0〜15個
△:1視野当たり16〜25個
×:1視野当たり26個以上
6.成形平板のアルミニウム蒸着面の外観(目視)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を用いて、上記の方法で作製したアルミ蒸着平板のアルミニウム蒸着面を、目視で観察し、以下のランクに応じて○〜×で評価した。○又は△のものがランプ部品用途においてより好適に使用可能であると判定した。
○:目視にて白斑やシルバーストリークス、曇りなどの欠陥が認められないもの
△:僅かに欠陥が認められるもの
×:欠陥が多数認められて外観不良が明らかであるもの
7.難燃性
UL−94 5thEd.に従い、厚み1.6mm成形片を用いてVB試験を行った。
5本の成形片(厚み0.16cm)の第1接炎後と第2接炎後の燃焼秒数を測定し、合計10回の接炎による燃焼時間によりランク付けを行った。ランクが小さい数字である程、難燃性に優れる。
V−0:総燃焼時間≦50秒、1回あたりの最大燃焼秒数≦10秒、燃焼時の滴下による綿の着火なし。
V−1:総燃焼時間≦250秒、1回あたりの最大燃焼時間≦30秒、燃焼時の滴下による綿の着火なし。
V−2:総燃焼時間≦250秒、1回あたりの最大燃焼時間≦30秒、燃焼時の滴下による綿の着火あり。
8.押出し量産性
押出し機による溶融混練時の安定性の一指標として、ダイヘッドから流出する樹脂ストランドのダイスウェルの有無を評価した。
○:ダイスウェル無きもの。(量産性良好)
△:軽度のダイスウェルを伴うもの。(押出し可能だが量産性に若干の手当が必要なもの)
×:ダイスウェルが大きいもの。(量産不可、数秒から数分でストランド切れ等を生じるもの)
[原材料]
<ポリフェニレンエーテル(A)>
(A−1)還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.50dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(以下、「A−1」ということもある)を用いた。A−1の残留揮発分は0.24%(2400ppm)であった。なお、180℃に温度設定した真空揮発炉中で、A−1を3時間乾燥させて、乾燥前後のA−1の重量差を残留揮発分として求めた。
(A−2)還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.30dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(以下、「A−2」ということもある)を用いた。A−2の残留揮発分は0.28%(2800ppm)であった。なお、180℃に温度設定した真空揮発炉中で、A−2を3時間乾燥させて、乾燥前後のA−2の重量差を残留揮発分として求めた。
<ポリカーボネート(B)>
(B−1)MFR(試験条件 ISO1133、300℃、1.2kg荷重で測定)10g/10minの、溶融エステル交換法で製造したポリカーボネート樹脂(ワンダーライトPC−110〔登録商標〕、旭美化成社製、以下「B−1」ということもある)を用いた。
<リン酸エステル系難燃剤(C)>
(C−1)芳香族縮合燐酸エステル(CR−741:大八化学工業(株)社製)
<スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を導入した、ポリスチレン及び/又はアクリロニトリル−スチレン共重合体である、難燃剤(D)>
(D−1)ポリスチレンとしてGPCにて測定した重量平均分子量が200,000のゼネラルパーパスポリスチレン3gを、1,2−ジクロロエタン27gを注入した丸底フラスコに投入し、50℃に加熱して溶解させた。次いで無水硫酸3.5gを加えて1時間室温下で撹拌し、スルホン化処理を行った。次にフラスコ内にエアーをバブリングして残留する硫酸ガスを除去した。沸騰した純水に反応液を注入して溶剤分を取り除き、室温に温度を低下させた後、水酸化カリウムでpHを7になるように調整した。次いでガラスフィルターでろ過を行い、さらに純水で3回洗浄した。得られた固形分を60℃で減圧乾燥し、乾燥した固体(ポリスチレンにスルホン酸カリウム塩を導入した難燃剤)を得た。
得られた固体について、酸素フラスコ燃焼法により元素分析を行い、JIS K 6233−1に準拠して定量したところ、得られた難燃剤中の硫黄成分は7質量%であった。
(D−2)D−1のポリスチレンに代えて、アクリロニトリル単位:39モル%、スチレン単位61モル%、重量平均分子量150,000のAS樹脂を用い、同様にスルホン酸塩基を導入した難燃剤を得た。
上記同様にして元素分析を行なったところ、得られた難燃剤中の硫黄成分は7.1質量%であった。
<ゴム補強されていないスチレン系樹脂(E)>
(E−1)ゼネラルパーパスポリスチレン(ポリスチレン680〔登録商標〕、PSジャパン社製、以下「E−1」ということもある)を用いた。なお、ゼネラルパーパスポリスチレンは、ゴム成分を含まないポリスチレン、すなわちゴム補強されていないポリスチレンである。
(E−2)アクリロニトリル−スチレン樹脂
以下のように製造したアクリロニトリル−スチレン樹脂(E−2)を用いた。
アクリロニトリル4.7質量部、スチレン73.3質量部、エチルベンゼン22質量部、重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−イソプロピルカーボネート0.02質量部よりなる混合液を、2.5リットル/時間の流速で、容量5リットルの完全混合型反応機に連続的に供給し、142℃で重合を行って重合液を得た。
得られた重合液を連続してベント付き押出機に導き、260℃、40Torrの条件下で未反応モノマー及び溶剤を除去し、ポリマーを連続して冷却固化し、細断して粒子状のアクリロニトリル−スチレン樹脂(以下「E−2」ということもある)を得た。
このアクリロニトリル−スチレン樹脂について、赤外吸収スペクトル法により組成分析したところ、アクリロニトリル単位9質量%、スチレン単位91質量%であった。また、アクリロニトリル−スチレン樹脂(E−2)のメルトフローレートは、78g/10分(ASTM D 1238準拠、220℃、10kg荷重で測定)であった。
<スチレン系ブロック共重合体(F)>
(F−1)結合スチレン量60質量%、数平均分子量Mn83,800、Mw/Mn=1.20の、スチレンブロック−水素添加されたブタジエンブロック−スチレンブロックの構造を有し、ブタジエンブロック部分の水素添加率が99.9%である、スチレン系ブロック共重合体(以下「F−1」ということもある)を用いた。
(F−2)結合スチレン量33質量%、数平均分子量Mn246,000、Mw/Mn=1.07の、スチレンブロック−水素添加されたブタジエンブロック−スチレンブロックの構造を有し、ブタジエンブロック部分の水素添加率が99.9%である、スチレン系ブロック共重合体(以下、「F−2」ということもある)を用いた。
[実施例1]
ポリフェニレンエーテル(A−2)95質量部と、ポリカーボネート(B−1)5質量部、リン酸エステル系難燃剤(C)3質量部、ポリスチレンにスルホン酸カリウム塩を導入した難燃剤(D)0.3質量部とを予め混合して、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mm、L/D=44のZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数250rpm、ベント真空度7.998kPa(60Torr)で溶融混練して難燃性樹脂組成物を得た。得られた難燃性樹脂組成物の評価結果を下記表1に示す。なお、Lは二軸押出機の原料供給口から排出口までの距離(m)、Dはスクリュー直径(m)をいう。
[実施例2、比較例1〜7]
表1の配合比率で予め混合し、実施例1と同様に溶融混練して難燃性樹脂組成物を得た。得られた難燃性樹脂組成物の評価結果を下記表1に示す。
実施例1,2及び比較例1〜7の評価の結果、ポリフェニレンエーテル(A)、ポリカーボネート(B)、リン酸エステル系難燃剤(C)、及びポリスチレンにスルホン酸塩基を導入した難燃剤(D)を特定の比率にすることにより、120℃以上の耐熱性(HDT)と優れた難燃性(V−0)を達成しかつ、表面外観に優れた難燃性樹脂組成物を得られることが判る。
[実施例3〜9、比較例8〜11]
表2の配合比率で混合し、実施例1と同様に溶融混練して難燃性樹脂組成物を得た。得られた難燃性樹脂組成物の評価結果を下記表2に示す。なお、「平均燃焼時間」とは「7.難燃性」に記載の総燃焼時間を接炎回数10回で除した値をいう。
実施例3〜9及び比較例8〜11において、スルホン酸塩基を導入した難燃剤の添加量について詳細に検討した結果、本発明の所定範囲においてのみ、難燃性と成形外観(白斑)がともに優れることが判る。実施例4及び9ではスルホン酸塩を導入した難燃剤のポリマー成分をポリスチレンからAS樹脂に変更しても、難燃性に大きな相違はないことが判る。なお、平均燃焼時間についてはスルホン酸塩を導入した難燃剤のポリマー成分をポリスチレンからAS樹脂に変更した難燃剤を使用した方が良好な傾向であることが判る。
[実施例10〜19]
表3、及び表4の配合比率で予め混合し、実施例1と同様に溶融混練して難燃性樹脂組成物を得た。得られた難燃性樹脂組成物の評価結果を下記表3及び4に示す。なお、表3には比較のため実施例6も示してある。
実施例10によれば、ゴム成分を含まないスチレン系樹脂として(E−1)ゼネラルパーパスポリスチレンを用いても、樹脂組成物の成形流動性については、(E−2)アクリロニトリル−スチレン樹脂を使用した場合(実施例6)と比較して大きな差は無いことが判る。光沢性については、アクリロニトリル−スチレン樹脂を使用した方が優れることが判る。
実施例11によれば、固有粘度が大きい(A−1)ポリフェニレンエーテルを用いると、流動性と光沢性は若干低下するものの、難燃性や成形外観(白斑)は満足することが判る。
実施例12によれば、(F−1)及び(F−2)スチレンブロック共重合体を用いることにより、光沢性が若干低下するが、難燃性と成形外観(白斑)を維持したまま、耐衝撃性(IZOD)が向上することが判る。
実施例13〜19によれば、(A−2)ポリフェニレンエーテル又は(B−1)ポリカーボネートの一部を、(E−2)AS樹脂に置換えた組成物は、AS樹脂を含まない組成物と同等の難燃性能を維持したまま、ダイスウェルが抑制され、量産性に優れることが判る。