JP3577165B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不用の基板が芳香族ポリカーボネート樹脂である光学ディスクを使用した光沢度が高く、剛性、流動性、外観の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品に関するものである。光学ディスクは多くのユーザーに使用されており、生産される量も年々増え続けている。従って、使用されなくなった不用の光学ディスクや販売店から返却されてくる光学ディスクあるいは生産時発生する不良品等いわゆる再生すべき光学ディスクが増えており、それらの再生方法について種々の検討が行われている。
本発明は、資源の有効利用ならびに環境保護の見地から、これら不用の光学ディスクの再生利用を目的とするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、基板が芳香族ポリカーボネート樹脂で成形された光学ディスクを再生利用する方法としては、例えばコンパクトディスクにおいて、その表面に付着しているアルミ膜、インク、UVコート膜等を取り除き基板の樹脂を再利用する方法が考えられている。しかしながら、これらアルミ膜、インク、UVコート膜等を取り除く方法としてコンパクトディスクの表面を切削研磨する方法、振動圧縮する方法等の物理的方法あるいは酸、アルカリ等を用いた化学的方法等が考えられるが、いずれも操作が煩雑でコストが高く一般的ではなかった。一方光学ディスクに付着している金属膜、インク、UVコート膜等を取り除かずにそのまま粉砕し再溶融成形すると、成形品の機械的特性が十分でなくその使用が難しかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、不用の基板が芳香族ポリカーボネート樹脂である光学ディスクをそのまま粉砕、使用する光沢度が高く、剛性、流動性、外観の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、(A)(A−1)基板が芳香族ポリカーボネート樹脂である光学ディスク粉砕化物(a−1成分)および(A−2)粘度平均分子量が14,000〜60,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(a−2成分)よりなり、a−1成分とa−2成分との割合が重量比で10:90〜100:0である樹脂混合物10〜90重量%(a成分)、
(B)無機充填剤5〜60重量%(b成分)および
(C)ジエンゴム成分に芳香族ビニル化合物成分およびシアン化ビニル化合物成分をグラフトした、220℃、10kgfの条件下JIS K7210に従って測定したメルトフローレートが10〜70g/10分である熱可塑性グラフト共重合体5〜85重量%(c成分)より実質的になる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品が提供される。
【0005】
かかる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において使用されるa成分は、基板が芳香族ポリカーボネート樹脂である光学ディスク粉砕化物(a−1成分)および特定分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂(a−2成分)よりなる樹脂混合物である。
a−1成分の基板が芳香族ポリカーボネート樹脂である光学ディスク粉砕化物は、光学ディスクの生産から販売後迄のあらゆる経路から発生するいわゆる不良品、返却品、回収品等の不用になった光学ディスクを粉砕化したものである。
【0006】
光学ディスクとしては、具体的には、例えば再生専用方式のものではコンパクトディスク、ミニディスク、レーザーディスク等のROMディスクがあり、記録および再生方式のものではCD−R、ライトワンスディスク等のDRAMディスクがあり、書き換え可能方式のものでは光磁気ディスク、相変化光ディスク等のE−DRAWの光ディスクが挙げられる。これらの光学ディスクには、片面記憶型および最近開発されているDVD用の2枚貼り合せ型がある。かかる光学ディスクの中で、コンパクトディスクが好ましく使用され、また光学ディスク(100重量%)中の芳香族ポリカーボネートの量は90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましい。
【0007】
光学ディスクの基板に使用されている芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法または溶融法で反応させて得られるものである。ここで使用する二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAという)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。好ましい二価フェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系であり、ビスフェノールAが特に好ましい。
【0008】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0009】
芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当り、前記二価フェノールは単独または2種以上を使用することができ、必要に応じて分子量調節剤、酸化防止剤、触媒等を使用してもよい。またこの芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の混合物であってもよい。
かかる光学ディスクの基板に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量(M)で14,000〜16,000のものが好ましく使用される。ここでいう粘度平均分子量とは、塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度[ηsp]を次式に挿入して求める。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
【0010】
一方、a−2成分の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記a−1成分で説明した基板に使用されている芳香族ポリカーボネート樹脂と同様のものが用いられる。その粘度平均分子量は14,000〜60,000であり、17,000〜50,000のものが好ましい。粘度平均分子量が14,000より低くなると衝撃強度が低く、60,000を越えると流動性が低下するため好ましくない。
【0011】
a成分において、a−1成分とa−2成分の混合割合は、a−1成分10〜100重量%に対してa−2成分90〜0重量%であり、a−1成分30〜100重量%に対してa−2成分70〜0重量%が好ましい。a−1成分が10重量%より少なくなると(a−2成分が90重量%より多くなると)多量の不用な光学ディスクを再生利用するという目的に適さなくなり、また流動性が低下し、満足な光沢度が得られないため好ましくない。
【0012】
本発明において、b成分として使用される無機充填剤は、例えばガラス繊維、炭素繊維、ワラストナイト、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等の繊維状無機充填剤、ガラスフレーク、マイカ、タルク等の板状無機充填剤、炭酸カルシウム、アルミナ、ガラスビース等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。また、これらの無機充填剤はシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されているものが好ましい。
【0013】
かかる無機充填剤は、その少なくとも30重量%が繊維状無機充填剤であることが好ましく、該繊維状無機充填剤は、通常平均繊維径が0.1〜50μmで且つ平均繊維長が10μm〜10mmで、好ましくはアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が3〜1,000のものであり、かかる繊維状無機充填剤の中で、ガラス繊維、炭素繊維およびワラストナイトより選ばれる1種以上の繊維状無機充填剤が好ましく使用され、特にガラス繊維が好ましい。
さらに、該無機充填剤は、(B−1)ガラス繊維、炭素繊維およびワラストナイトより選ばれる1種以上の繊維状無機充填剤30〜100重量%(b−1成分)および(B−2)ガラスフレーク、マイカおよびタルクより選ばれる1種以上の板状無機充填剤70〜0重量%(b−2成分)よりなる無機充填剤であることが好ましく、より好ましくはb−1成分がガラス繊維で、b−2成分がガラスフレークまたはタルクであり、特に好ましくは該無機充填剤が実質的にガラス繊維単独のものである。
【0014】
本発明においてc成分として使用されるジエンゴム成分に芳香族ビニル化合物成分およびシアン化ビニル化合物成分をグラフトした、220℃、10kgfの条件下JIS K7210に従って測定したメルトフローレートが10〜70g/10分である熱可塑性グラフト共重合体は、ジエンゴム成分を幹とし、それにグラフト共重合可能な芳香族ビニル化合物成分およびシアン化ビニル化合物成分をグラフト重合させた共重合体である。ジエンゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレンおよびスチレン−ブタジエン共重合体などが挙げられ、なかでもポリブタジエンが好ましく使用される。これらのジエンゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物成分としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アルコキシスチレンおよびハロゲン化スチレンなどが挙げられ、なかでもスチレンが好ましく用いられる。また、シアン化ビニル化合物成分としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびクロロアクリロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。さらに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸オクチルなどを使用することができる。これらの熱可塑性グラフト共重合体の中で、ABS樹脂が好ましく用いられる。
【0015】
これらの熱可塑性グラフト共重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれかの重合法で製造してもよく、グラフトの方式としては一段グラフトでも多段グラフトでもよい。また、かかる製造方法により得られた熱可塑性グラフト共重合体に、該芳香族ビニル化合物成分と該シアン化ビニル化合物成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。さらに熱可塑性グラフト共重合体は1種のみならず2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
また、該熱可塑性グラフト共重合体は、220℃、10kgfの条件下JISK7210に従って測定したメルトフローレートが10〜70g/10分であり、12〜60g/10分が好ましい。かかるメルトフローレートが10g/10分未満では、流動性が低下し、満足な光沢度が得られず、70g/10分を越えると、衝撃強度が低下するため好ましくない。
【0017】
本発明でa成分として使用される樹脂混合物、b成分として使用される無機充填剤およびc成分として使用される熱可塑性グラフト共重合体の配合割合は、重合比で、a成分10〜90重量%、b成分5〜60重量%およびc成分5〜85重量%であり、a成分20〜80重量%、b成分10〜50重量%およびc成分10〜70重量%が好ましい。a成分が10重量%未満では、多量の不用な光学ディスクを再生利用するという目的に適さなくなり、90重量%を越えると、剛性を満足せず、また良好な成形品外観が得られない。b成分が5重量%未満では、剛性が低下し、また良好な成形品外観が得られず、60重量%を越えると、流動性が低下し、満足な光沢度が得られない。c成分が5重量%未満では、流動性が低く、満足な光沢度が得られず、85重量%を越えると、多量の不用な光学ディスクを再生利用するという目的に適さなくなり、また衝撃強度が低下するため好ましくない。
【0018】
本発明において、前記a成分、b成分およびc成分よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、(D)カーボンブラック(d成分)を0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部配合することが好ましい。カーボンブラックは光学ディスクに付着している金属膜、例えばAl、Te、Fe、Co、Gd、ZnS、GeSbTe、ZnS−SiO2およびAl合金等の輝きを隠蔽する作用があり、カーボンブラックを使用することにより金属膜の輝きの消えた外観の良い成形品を得ることができる。
【0019】
かかるカーボンブラックは炭化水素や天然ガス等の不完全燃焼または熱分解によって得られる黒色微粉末であり、通常1〜1,000mμの平均粒子径を有する。具体的にはファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上併用して使用することができる。
カーボンブラックの量が0.05重量部未満では、成形品の外観を改良する効果が小さく、5重量部を越えると流動性が低下するため好ましくはない。
【0020】
本発明において、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、(E)ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤およびスルホン酸有機金属塩系難燃剤の中から選ばれる1種以上の難燃剤(e成分)を0.05〜30重量部配合することが好ましい。
【0021】
かかるハロゲン系難燃剤としては、例えばテトラブロモビスフェノールA[2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン]からのポリカーボネート、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとのコポリカーボネート、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、テトラブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、エチレンビステトラブロモフタルミド、トリス(ペンタブロモベンジル)イソシアヌレート、ブロム化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールA−エポキシ樹脂等を挙げることができる。特にテトラブロモビスフェノールAからのポリカーボネートおよびテトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとのコポリカーボネート等のテトラブロモビスフェノールA系のポリカーボネート型難燃剤がポリカーボネート樹脂との相溶性が優れている点から好ましく、なかでもテトラブロモビスフェノールAからのポリカーボネートでその繰返し単位が2〜20のものが好ましい。かかるテトラブロモビスフェノールA系のポリカーボネート型難燃剤を用いる場合、あまりに多量に用いると組成物の熱安定性が悪化する傾向があるので、添加量は該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して1〜30重量部が好ましい。
【0022】
かかるリン酸エステル系難燃剤としては、アルコールまたはフェノール化合物とリン酸化合物との反応により得られる反応生成物であり、フェノール化合物からのリン酸エステルが好ましい。本発明において用いられるリン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、TPPとTCPの混合物、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等が挙げられるが、トリフェニルホスフェートが特に好ましい。かかるリン酸エステル系難燃剤を用いる場合、あまりに多量に用いると組成物の耐熱性が悪化する傾向があるので、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して3〜10重量部が好ましい。
【0023】
かかるスルホン酸有機金属塩系難燃剤としては、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が好ましく、具体的には、例えばジフェニルサルファイド−4−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−4,4’−ジスルホン酸ジカリウム、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム等を挙げることができる。かかるスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を用いる場合は、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.05〜2.0重量部で用いるのが好ましい。2.0重量部を越えると、樹脂組成物の熱安定性が悪くなり、好ましくない。
【0024】
本発明において、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に難燃性能をさらに向上させるために難燃助剤を配合することができ、好ましい難燃助剤としてはアンチモン化合物が挙げられ、なかでも三酸化アンチモンまたは五酸化アンチモンが特に好ましい。
かかる難燃助剤の配合量は、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましい。0.5重量部未満では効果が十分でなく、10重量部を越えると成形時の熱安定性の低下や耐衝撃性の低下が起こり好ましくない。
【0025】
また、本発明において、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に難燃性能をさらに向上させるためにフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを配合することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格においてタイプIIIに分類されているものである。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、UL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しているため、これらのフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、一層の難燃効果を与えるものである。かかるポリテトラフルオロエチレンは、平均粒子径50〜1,000μm、密度100〜1,000g/リットル、融点250〜350℃、比重1.8〜2.5を有するものが好ましい。
【0026】
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの配合量は、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、0.05〜1重量部が好ましく、0.08〜0.8重量部がより好ましい。0.05重量部未満では、溶融滴下防止性能が十分でなく、また1重量部を越えると成形品の表面状態が悪くなり、耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0027】
また、本発明において、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に、亜リン酸エステルまたはリン酸エステルを配合することが好ましい。これらを配合することにより該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性がさらに向上し、粘度平均分子量の低下が抑制される。
【0028】
かかる亜リン酸エステルは、例えばトリフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシル−モノフェニルホスファイト、ジオクチル−モノフェニルホスファイト、ジイソプロピル−モノフェニルホスファイト、モノブチル−ジフェニルホスファイト、モノデシル−ジフェニルホスファイト、モノオクチル−ジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイト等の亜リン酸のトリエステルまたはエステル部をアルキル基、フェニル基、アルキルアリール基等で置換したジエステル、モノエステルであり、これらは単独で使用してもまた2種以上併用してもよい。なかでもトリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトリールジホスファイトが好ましい。
【0029】
かかるリン酸エステルは、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートおよびジイソプロピルホスフェート等が挙げられ、これらは単独で使用してもまた2種以上併用してもよい。なかでもトリメチルホスフェートが好ましい。また、上記亜リン酸エステルとリン酸エステルを併用して使用してもよい。
【0030】
上記亜リン酸エステルまたはリン酸エステルの配合量は、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、0.005〜2.0重量部が好ましく、0.008〜1.8重量部がより好ましく、0.01〜1.5重量部がさらに好ましい。
【0031】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には目的および効果を損なわない範囲で有効発現量の添加剤を配合しても良く、例えば他の安定剤や衝撃改質剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤および滑剤等を配合しても良い。
【0032】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば使用する全ての成分を溶融混練する方法が好ましく採用され、単軸押出機、2軸押出機、加圧ニーダー等一般に使用されているものが使用できる。特に好ましくは、ベント付きの2軸押出機であり、ベントから真空排気ができるものが好ましい。この場合、a−1成分の光学ディスクは粉砕機等で粉砕化されており、特に粒径30mm以下に粉砕されていることが好ましい。粉砕されていないと他成分と均一に混合することが困難であり、また溶融混練する時に使用する押出機等への供給が難しくなり、満足な成形品が得られない。但し、ここでいう粒径とは、粉砕されたものの長径をいう。使用する原料は、タンブラー、ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール等であらかじめ混合していても計量機を用いて独立に供給されても良い。
【0033】
本発明は、資源の有効利用ならびに環境保護の見地から、不用の光学ディスクの再生利用を目的とするものであり、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、不用の光学ディスクに付着している金属膜、インク、UVコート膜等を取り除かずにそのまま粉砕し、再溶融成形して得られる光沢度の高い、剛性、流動性、成形品外観の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、例えばOAハウジング、シャーシ用途に有用である。
【0034】
実施例1〜9および比較例1〜6
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
表1および表2記載の各成分を表1および表2記載の割合でV型ブレンダーで混合後、径30mmφのベント付き2軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]によりシリンダー温度260℃で溶融混練し押し出しペレット化した。このペレットを110℃で5時間乾燥後、射出成形機[FANUC(株)製T−150D]でシリンダー温度260℃、金型温度80℃で試験片を作成し、下記(1)〜(4)の方法で評価を行った。評価結果は表1および表2に記載した。
【0035】
(1)流動性:
シリンダー温度260℃、射出圧力1,500kgf/cm2でアルキメデス型スパイラルフロー(厚さ2mm、幅8mm)により流動性を測定した。
(2)剛性:
ASTM D−790に従って曲げ弾性率を測定した。
(3)光沢度:
JIS K7105に従い、60°鏡面光沢度を測定した。
(4)成形品外観:
【0036】
なお表1および表2記載の各成分を示す記号は下記のとおりである。
(A)a−1成分
コンパクトディスク粉砕化物[製品]
基板が粘度平均分子量15,000のビスフェノールAより得られた芳香族ポリカーボネート樹脂であり、その量がコンパクトディスク中99.6重量%であるアルミ膜付着の直径120mmのコンパクトディスクを粉砕機で粉砕し、平均粒径6mmにしたコンパクトディスク粉砕化物。
a−2成分
ビスフェノールAより得られた芳香族ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成(株)製L−1250SH、粘度平均分子量:25,000)
【0037】
(B)無機充填剤−1:ガラス繊維[日東紡(株)製チョップドストランド3PE−455(平均繊維径13μm、平均繊維長3mm)]
無機充填剤−2:ガラス繊維[日東紡(株)製ミルドファイバーPEE−301S(平均繊維径9μm、平均繊維長50μm)]
無機充填剤−3:タルク[林化成(株)HS−T0.8(平均粒径2.8μm)]
(C)ABS−1:三井東圧化学(株)製サンタックUT−61 MFR=33g/10分
ABS−2:三井東圧化学(株)製サンタックST−50 MFR=9g/10分
(D)カーボンブラック:三菱化成(株)製カーボンブラック970
(E)難燃剤−1:テトラブロモビスフェノールAからのポリカーボネートオリゴマー(帝人化成(株)製FG−7000)
難燃剤−2:トリフェニルホスフェート(大八化学(株)製TPP)
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからの成形品は、基板が芳香族ポリカーボネート樹脂である不用な光学ディスクを、これに付着している金属膜、インク、UVコート膜等を取り除かずにそのまま粉砕し、再溶融成形して得られる光沢度の高い、剛性、流動性、成形品外観の良好なものであり、また資源の有効利用ならびに環境保護の見地から、不用な光学ディスクの再生利用に優れており、本発明の奏する工業的効果は格別なものである。
Claims (8)
- (A)(A−1)基板が芳香族ポリカーボネート樹脂である光学ディスク粉砕化物(a−1成分)および(A−2)粘度平均分子量が14,000〜60,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(a−2成分)よりなり、a−1成分とa−2成分との割合が重量比で10:90〜100:0である樹脂混合物10〜90重量%(a成分)、
(B)無機充填剤5〜60重量%(b成分)および
(C)ジエンゴム成分に芳香族ビニル化合物成分およびシアン化ビニル化合物成分をグラフトした、220℃、10kgfの条件下JIS K7210に従って測定したメルトフローレートが10〜70g/10分である熱可塑性グラフト共重合体5〜85重量%(c成分)より実質的になる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 - 該樹脂混合物(a成分)は、基板が芳香族ポリカーボネート樹脂である光学ディスク粉砕化物30〜100重量%(a−1成分)および芳香族ポリカーボネート樹脂70〜0重量%(a−2成分)よりなる樹脂混合物である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該無機充填剤は、その少なくとも30重量%が繊維状無機充填剤である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該繊維状無機充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維およびワラストナイトより選ばれる1種以上の繊維状無機充填剤である請求項3載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該無機充填剤は、(B−1)ガラス繊維、炭素繊維およびワラストナイトより選ばれる1種以上の繊維状無機充填剤30〜100重量%(b−1成分)および(B−2)ガラスフレーク、マイカおよびタルクより選ばれる1種以上の板状無機充填剤70〜0重量%(b−2成分)よりなる無機充填剤である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、(D)カーボンブラック(d成分)を0.05〜5重量部さらに含有した請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、(E)ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤およびスルホン酸有機金属塩系難燃剤の中から選ばれる1種以上の難燃剤を0.05〜30重量部(e成分)さらに含有した請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された成形品。
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