JP4547100B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは高剛性、高耐衝撃性、良好な表面外観、および良好なリサイクル性を備えた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は優れた衝撃強度等の機械特性を有する熱可塑性樹脂として、また、芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステルやABS樹脂との樹脂組成物は芳香族ポリカーボネート樹脂の優れる特性を維持しかつ芳香族ポリカーボネート樹脂の欠点である耐薬品性や成形加工性等がそれぞれ改良された材料として、自動車分野、OA分野などの種々の用途に幅広く使用されている。
かかる芳香族ポリカーボネート樹脂や芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物の剛性等を改良する手段としてガラス繊維等の繊維状充填材を配合する方法(特開昭54−94556号、特開平6−49344号)また、タルク、マイカ等の鱗片状、板状の無機充填材を配合する方法(特開昭55−129444号、USP4280949号、特開平5−222283号)が開示されている。
【0003】
ガラス繊維およびカーボン繊維などの繊維状充填材で強化した芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物は剛性等の機械的強度に優れるものの、通常の成形方法ではその成形品外観にはガラス繊維、カーボン繊維等の繊維状充填材の浮きが目立ち、例えば、良好な塗装外観を得るためにはその塗装膜厚を非常に厚くしなければならない欠点や、成形収縮率等に異方性が大きく、成形品に反りなどが発生しやすい等寸法安定性の面に欠点を有していた。
一方、タルク、マイカ等の鱗片状、板状の無機充填材を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物は、ガラス繊維およびカーボン繊維などの繊維状充填材で強化した芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物と比較すると成形品外観、寸法安定性に優れるが、その補強効果が小さいために適用範囲が限られていた。
【0004】
これらの両者の優れた点を併せ持つ無機充填剤として、ワラストナイト粒子がある。ワラストナイト粒子はその結晶構造から微粉砕した場合にも繊維状の形態を有する。したがって上記の繊維状充填材や板状充填材とは異なる特性を樹脂組成物に与えることが可能となる。
例えば、特開平7−90118号公報には、微量成分(Fe2O3、Al2O3)が特定の組成範囲であるワラストナイトと熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物が記載されている。該公報にはかかるワラストナイトが繊維形状を形成しやすく折れにくいことが記載されている。さらに得られた樹脂組成物は、高強度、高弾性率を備え、表面平滑性、寸法精度に優れることが記載されている。
【0005】
特開平7−149948号公報、EP639613A1、およびUSP5965655には、数平均繊維長1〜50μm、数平均繊維径0.1〜10μmのワラストナイト針状粒子と芳香族ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂との樹脂組成物が記載されている。特にかかるワラストナイト針状粒子として、繊維長5〜25μmの粒子が少なくとも50%であるものが好適であることが記載されている。該公報に記載された樹脂組成物は、鮮映性の高い塗装外観や低い線膨張係数などの特性を満足すると記載されている。
特開平9−12846号公報には、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、およびアスペクト比3〜50であるワラストナイトの特定割合からなる樹脂組成物が記載されている。かかる樹脂組成物は高剛性と良好な耐衝撃性を共に満足し、さらに塗装された成形品表面の平滑性に優れることが記載されている。
【0006】
特開平10−60251号公報には、特定分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アスペクト比3〜50であるワラストナイト、およびカルボキシル基変性オレフィンワックスからなるブロー成形性に優れた樹脂組成物が記載されている。該樹脂組成物はブロー成形に必要なドローダウン性や耐薬品性に優れると共に、塗装された成形品表面の平滑性に優れることが記載されている。
特開平10−324789号公報には、特定分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性グラフト共重合体、アスペクト比3〜50であるワラストナイト、およびカルボキシル基変性オレフィンワックスからなるブロー成形性に優れた樹脂組成物が記載されている。該樹脂組成物はブロー成形に必要なドローダウン性や耐衝撃性に優れると共に、塗装された成形品表面の平滑性に優れることが記載されている。
【0007】
特開2000−256505号公報には、微量成分(Fe2O3、Al2O3)が特定の組成範囲であるワラストナイトと熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物が記載されている。また該ワラストナイトは、平均繊維長が20〜50μm、平均繊維径が0.5〜5μm、平均アスペクト比が7〜100の形状が好適であることが記載されている。かかる樹脂組成物は、高剛性、高耐熱性、表面平滑性に優れ、着色性のよい外観のきれいな成形品が得られることが記載されている。
上記のごとく、ワラストナイトは高剛性かつ表面外観に優れた樹脂組成物を達成する。殊に芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする熱可塑性樹脂の無機充填材として好適である。芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする熱可塑性樹脂の場合、ベース樹脂の耐衝撃性が高いため、高剛性と高耐衝撃性を高いレベルで両立する樹脂組成物が達成可能なためである。さらに芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする熱可塑性樹脂の場合、無機充填材を含んだ樹脂組成物における成形品の外観が比較的悪化しやすいためである。
【0008】
しかしながら、上記の従来技術では未だ不十分な点もある。第1の点は塗装された成形品の外観不良が少なからず発生することである。かかる外観不良の発生は製品の歩留まりおよび生産効率に影響を与える。上記のごとくワラストナイト粒子を含んだ樹脂組成物は、その良好な表面平滑性に基づき高度な塗装外観の要求される成形品に使用される。ところが表面にわずかな凸状異物が生ずる場合がある。かかる凸状異物は塗装により表面全体が平滑であると極めて目立つようになる。したがって、芳香族ポリカーボネート樹脂およびワラストナイト粒子を含有する樹脂組成物において、かかる凸状異物の発生の低減を求められる場合があった。
【0009】
第2の点は成形品のリサイクルの問題である。ワラストナイト粒子は比較的折れやすい充填材であるため、リサイクル処理のため溶融混練を重ねると剛性等の機械的特性が低下しやすい。かかる特性の低下は溶融粘度の高い芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする樹脂組成物の場合に顕著であった。したがって、芳香族ポリカーボネート樹脂およびワラストナイト粒子を含有する樹脂組成物において、リサイクルを重ねた場合の特性変化の低減を求められる場合があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は高剛性、高耐衝撃性、良好な表面外観(特に塗装外観不良の原因となる凸状異物の発生を低減)、および良好なリサイクル性を備えた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、特定条件を満足する比較的微細なワラストナイト粒子を含有した、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が上記目的を達成できることを見出した。さらに好適にはその強熱減量が特定値以下であるものが、かかる課題に対してより好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)50〜100重量%、および(2)熱可塑性ポリエステル樹脂(B−1成分)およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂(B−2成分)よりなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B成分)0〜50重量%よりなる樹脂成分100重量部、並びに(3)数平均繊維長が10μm以下、数平均繊維径が4μm以下、および繊維長5〜25μmの個数の割合が50%未満の粒子形状特性を有するワラストナイト粒子(C成分)1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれから溶融成形されてなる成形品に係るものである。
【0012】
さらに本発明について詳細に説明する。
本発明で使用するA成分の芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては例えば界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0013】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0014】
中でもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0015】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0016】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0017】
かかる分岐ポリカーボネート樹脂を生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。なお、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0018】
界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0019】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0022】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も示すことができる。これらの中では、下記一般式(2)および(3)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、Xは、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
かかる一般式(2)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0025】
また、一般式(3)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0026】
末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましい。より好ましくは全末端に対して末端停止剤が80モル%以上導入されること、すなわち二価フェノールに由来する末端の水酸基(OH基)が20モル%以下であることがより好ましく、特に好ましくは全末端に対して末端停止剤が90モル%以上導入されること、すなわちOH基が10モル%以下の場合である。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0027】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0028】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0029】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0030】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることが好ましい。中でも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0031】
さらにかかる重合反応において触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。この失活剤の具体例としては、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル;さらに、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル‐スルホン化スチレン共重合体、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルアンモニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデシルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシルトリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどの化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの化合物を二種以上併用することもできる。
【0032】
失活剤の中でもホスホニウム塩もしくはアンモニウム塩型のものが好ましい。
かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましく、また重合後の芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。
ポリカーボネート樹脂の分子量は特定されないが、分子量が10,000未満であると高温特性等が低下し、40,000を超えると成形加工性が低下するようになるので、粘度平均分子量で表して10,000〜40,000のものが好ましく、14,000〜30,000のものがより好ましく、さらに好ましくは16,000〜25,000のものである。
芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合しても差し支えない。この場合粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂とを混合することも当然に可能である。
【0033】
特に粘度平均分子量が50,000を超える芳香族ポリカーボネート樹脂との混合物はその高いエントロピー弾性に由来する特性(ドリップ防止特性、ドローダウン特性、およびジェッティング改良などの溶融特性を改良する特性)を発揮するものであるため、これらの特性が要求される場合には好ましいものである。
より好ましくは粘度平均分子量が80,000以上の芳香族ポリカーボネート樹脂との混合物であり、さらに好ましくは100,000以上の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂との混合物である。すなわちGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などの測定方法により2ピーク以上の分子量分布を観察できるものが好ましく使用できる。
本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求める。
【0034】
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(ただし[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
本発明のB成分しては、熱可塑性ポリエステル樹脂(B−1成分)およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂(B−2成分)よりなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含んでいることが好ましい。
【0035】
その理由としては以下の点が挙げられる。(i)芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を低下させることができ、ワラストナイト粒子の折れをさらに抑制可能である。結果として良好なリサイクル特性を達成できる。(ii)上記(i)と同様の理由から成形温度やリサイクル処理時の再溶融の温度を下げることが可能となる。これによりワラストナイトとの反応による芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量低下を抑制できる。結果として良好なリサイクル特性を達成できる。(iii)上記B−1成分およびB−2成分は芳香族ポリカーボネート樹脂に期待され
る耐熱性、耐衝撃性を大きく損うことがない。(iv)B−1成分およびB−2成分はその芳香族ポリカーボネート樹脂とのポリマーブレンドの熱安定性が良好でありリサイクル処理時の熱負荷に十分耐え得る。
【0036】
本発明のB−1成分として使用する熱可塑性ポリエステル樹脂とは芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘動体と、ジオール、またはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸が好適に用いられ、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく使用できる。
【0037】
芳香族ジカルボン酸は二種以上を混合して使用してもよい。なお少量であれば、該ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を一種以上混合使用することも可能である。
【0038】
また本発明の芳香族ポリエステルの成分であるジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等、2,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香環を含有するジオール等およびそれらの混合物等が挙げられる。さらに少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
また本発明の芳香族ポリエステルは少量の分岐剤を導入することにより分岐させることができる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0039】
具体的な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、等の他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、等のような共重合ポリエステルが挙げられる。これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびこれらの混合物が好ましく使用できる。
また得られた芳香族ポリエステル樹脂の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0040】
かかる芳香族ポリエステル樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、さらに具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。
【0041】
有機チタン化合物の重合触媒としては、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物などを挙げることができる。有機チタン化合物の使用量は、そのチタン原子がポリブチレンテレフタレートを構成する酸成分に対し、3〜12mg原子%となる割合が好ましい。
また本発明では、従来公知の重縮合の前段回であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。
【0042】
芳香族ポリエステル樹脂の製造方法は、バッチ式、連続重合式のいずれの方法をとることも可能である。
また芳香族ポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、o−クロロフェノールを溶媒として35℃で測定した固有粘度が0.6〜1.5、好ましくは0.65〜1.2、さらに好ましくは0.7〜1.15である。
本発明でB−2成分として使用するゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂とは、スチレン系単量体と必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体およびゴム成分より選ばれる1種以上を重合して得られる、ゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂である。
【0043】
前記スチレン単位成分含有樹脂成分に用いられるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。特にスチレンが好ましい。さらにこれらは単独または2種以上用いることができる。
【0044】
前記スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物が挙げられる。
【0045】
前記スチレン系単量体と共重合可能なゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル酸アルキルエステルまたは/およびメタクリル酸アルキルエステルとブタジエンの共重合体、ブタジエン・イソプレン共重合体等のジエン系共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレンと脂肪族ビニルとの共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体等のエチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム(以下IPN型ゴム)等が挙げられる。
【0046】
かかるB−2成分のスチレン単位成分含有樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS樹脂)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(水添SBS樹脂)、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(水添SIS樹脂)、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン・メチルメタクリレート共重合体(MS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・スチレン共重合体(MAS樹脂)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)およびスチレン・IPN型ゴム共重合体等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。なおかかるスチレン系熱可塑性樹脂はその製造時にメタロセン触媒等の触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレン等の高い立体規則性を有するものであってもよい。さらに場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られる、分子量分布の狭い重合体および共重合体、ブロック共重合体、および立体規則性の高い重合体、共重合体を使用することも可能である。これらは1種または2種以上を混合して使用することも可能である。
【0047】
これらの中でもポリスチレン(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)からなる群より選択される1種または2種以上を混合して使用することが好ましく、中でもABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂が最も好ましい。
【0048】
本発明で使用するABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体の混合物である。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレンおよびスチレン−ブタジエン共重合体等のガラス転移点が10℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5〜39.9重量%であるのが好ましく、より好ましくは10〜35重量%、さらに好ましくは10〜25重量%である。
【0049】
ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、前記のものを挙げることができ、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、同様に前記のものを使用できるが、特にスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく使用できる。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、ABS樹脂成分100重量%中60.1〜95重量%が好ましく、より好ましくは65〜90重量%、さらに好ましくは75〜90重量%である。さらにかかるシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%およびより好ましくは10〜30重量%、並びに芳香族ビニル化合物が95〜50重量%およびより好ましくは90〜70重量%であることが好ましい。さらに上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部についてメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。さらに反応で使用する開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0050】
本発明のABS樹脂においては、ゴム粒子径は0.1〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好ましくは0.4〜1.5μm、特に好ましくは0.4〜0.9μmである。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるものおよび2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、さらにそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
【0051】
またABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物を含有することは従来からよく知られているところであり、本発明のABS樹脂においてもかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有するものであってもよい。かかるフリーのシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物からなる共重合体の分子量は、好ましくは還元粘度で0.2〜1.0、より好ましくは0.25〜0.5であるものである。
またグラフトされたシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物のジエン系ゴム成分に対する重量割合(グラフト率)は20〜200重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%のグラフト率のものである。
【0052】
このABS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよく、また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。またABS樹脂に、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。
さらに重合法としては一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また懸濁重合法において、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法や、連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数〜数十μm径の細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法などを行ってもよい。
【0053】
本発明で使用するASA樹脂とは、アクリルゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体、または該熱可塑性グラフト共重合体と、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体との混合物をいう。本発明でいうアクリルゴムとは、炭素数が2〜10のアルキルアクリレート単位を含有するものであり、さらに必要に応じてその他の共重合可能な成分として、スチレン、メチルメタクリレート、ブタジエンを含有してもよい。炭素数が2〜10のアルキルアクリレートとして好ましくは2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレートが挙げられ、かかるアルキルアクリレートはアクリレートゴム100重量%中50重量%以上含まれるものが好ましい。さらにかかるアクリレートゴムは少なくとも部分的に架橋されており、かかる架橋剤としては、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等を挙げることができ、かかる架橋剤はアクリレートゴムに対して0.01〜3重量%使用されることが好ましい。アクリルゴム成分の割合は、ASA樹脂100重量%中、5〜39.9重量%が好ましく、より好ましくは10〜35重量%、さらに好ましくは10〜25重量%である。
【0054】
またシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物の割合はかかる合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%であり、特にシアン化ビニル化合物が15〜35重量%、芳香族ビニル化合物が85〜65重量%のものが好ましい。製造法としては上記ABS樹脂と同様のものを使用することが可能である。
本発明で使用するAES樹脂とは、エチレン−プロピレンゴム成分またはエチレン−プロピレン−ジエンゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体、または該熱可塑性グラフト共重合体と、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体との混合物である。製造法としては上記ABS樹脂と同様のものを使用することが可能である。
【0055】
かかるA成分とB成分からなる熱可塑性樹脂は、260℃におけるキャピラリーレオメータで測定した溶融粘度がシェアレート300sec-1で0.1×103〜5×103Pa・sの範囲にあることが好ましく、0.3×103〜2×103Pa・sの範囲にあることがさらに好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、特定のワラストナイト粒子を使用することで、かかる条件範囲の樹脂に対しても良好な表面外観およびリサイクル性を達成できる。
本発明のC成分であるワラストナイト粒子は、以下の測定法により得られた数平均繊維長が10μm以下、数平均繊維径が4μm以下、および繊維長5〜25μmの個数の割合が50%未満の粒子形状特性を有するものである。
【0056】
上記繊維長および繊維径の測定方法は次のとおりである。繊維長の測定は、原料であるワラストナイト粒子を光学顕微鏡で観察し、個々のワラストナイトの長さを求め、その測定値から数平均繊維長、および繊維長5〜25μmの個数の割合を算出する。なお、ワラストナイト粒子はその結晶構造に由来する特性から微粉砕した場合においてもほとんどの粒子がある程度繊維状の形態を有している。
光学顕微鏡の観察は、まずワラストナイト粒子同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを用意して行う。かかる観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データを、画像解析装置を使用して、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して、繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当する。測定本数は5000本以上として行う。
【0057】
一方繊維径の測定は組成物の原料となるワラストナイト粒子を電子顕微鏡で観察し、個々のワラストナイト粒子の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。
繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のワラストナイトをランダムに抽出し、中央部に近いところで繊維径を測定する。得られた測定値から数平均繊維径を算出する。近年の電子顕微鏡はその観察画面上の長さを算出する機能が備えられているため、かかる繊維径も比較的容易に算出可能である。観察の倍率は約1,000倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。
【0058】
C成分のワラストナイトを上記の粒子形状特性の条件を満足すべく粉砕するための粉砕機としては、各種のものが使用でき、例えば、高速回転ミル、ボールミル、媒体攪拌ミル、およびジェットミルなどを挙げることができる。中でもジェットミルが好ましい。さらにかかるジェットミルの方式としては、気流吸い込み式、ノズル中吸い込み式、衝突体衝突式、対向ジェット衝突式、および複合型などを挙げることができ、中でも対向ジェット衝突式の粉砕機が好ましい。
【0059】
さらに粉砕されたワラストナイト粒子を分級することにより、繊維長の長い成分を取り除き、目的のワラストナイト粒子を得ることが好ましい。かかる分級の方法には、網型の篩を通す方法の他、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、スパイラル気流型の遠心場分級機(多段サイクロンなど)、ヘリカル気流型の遠心場分級機のうち自由渦型で案内羽根付きのもの(ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーターなど)、ヘリカル気流型の遠心場分級機のうち強制渦型で分級室回転型のもの(アキュカット、ターボクラシファイアなど)、およびヘリカル気流型の遠心場分級機のうち強制渦型で回転羽根型のもの(ミクロンセパレーター、スーパーセパレーターなど)などを挙げることができ、またこれらの複合型などの使用も好ましいものである(なお、かっこ内の名称は商品名または俗称である)。これらのうちより微細な粒子の分級を可能にするものとして、遠心場分級機が好ましい。
【0060】
ワラストナイト粒子は珪酸カルシウムが主成分である針状結晶をもつ天然白色鉱物から、これを粉砕・分級することにより得ることができる。かかる結晶構造により鉱物の粉砕物も繊維状の形態を有する。本発明においては合成したワラストナイトも勿論使用することができる。これらのワラストナイトは実質的に化学式CaO・SiO2で表され、SiO2約50重量%、CaO約47重量%、その他不純物としてFe2O3、Al2O3、CaCO3などを含有しており、その比重は約2.9であることが知られている。
【0061】
本発明は上記の特定形状を有するワラストナイト粒子を使用することにより、特に塗装外観不良の原因となる凸状異物の発生を低減した良好な表面外観を備え、および良好なリサイクル性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品が提供される。
上記の数平均繊維長は3〜10μmが好ましく、3.5〜8μmがより好ましく、4〜8μmがさらに好ましい。上記の数平均繊維径は、0.5〜4μmが好ましく、0.5〜2.5μmがより好ましく、1〜2μmがさらに好ましい。数平均繊維長は3μm以上であると剛性や強度の点で有利である。数平均繊維径は細いほど外観の平滑性には有効であるが、0.5μm以上であると繊維状の粒子が折れにくく、リサイクル性の向上に有利である。
【0062】
また上記の繊維長5〜25μmの個数の割合は、30%以上50%未満が好ましく、35%以上49%未満がより好ましく、40%以上48%未満がさらに好ましい。繊維長5〜25μmの個数の割合が30%以上であると、剛性や強度の点で有利である。
さらに本発明の好適な態様としては、上記測定に基づく繊維長25μmを超える粒子の個数の割合が5%以下のものが挙げられる。繊維長25μmを超えるワラストナイト粒子が凸状異物の発生の要因となりやすいためである。また長い粒子は溶融混練時の折れなども発生しやすい。繊維長25μmを超える粒子の個数の割合は、4%以下がより好ましく、3.5%以下がさらに好ましい。下限としては0.5%が挙げられる。
【0063】
さらに本発明のワラストナイト粒子の好適な態様としては、以下に示す湿式篩法により算出される325メッシュパス(ASTM規格による)の割合が99.95重量%以上好ましくは99.96重量%以上のものが挙げられる。かかる条件を満足することでさらに凸状異物を低減し、結果として塗装外観不良を低減することが可能となる。かかる325メッシュパスの割合は99.97重量%以上がより好ましい。かかる条件を満足するワラストナイト粒子を得るために、粉砕後上記に挙げた網状篩の他、遠心場分級機などを使用して分級処理をして製造することが好ましい。
【0064】
ここで上記の湿式篩法による325メッシュパス量の算出について説明する。
約20gのワラストナイト粒子を電子天秤で秤量する(かかる重量をαgとする)。そのワラストナイト粒子を325メッシュ(ASTM規格による)の篩上にのせ、その篩に3分間流水し、その後5分間加熱灯で篩上のワラストナイト粒子を乾燥させる。篩上に残ったサンプルをブラシで注意深く取り去り、電子天秤で秤量する(かかる重量をβgとする)。このα(g)およびβ(g)の値から325メッシュパスの割合を、(α−β)×100/α(重量%)として算出する。
【0065】
さらに本発明のワラストナイト粒子に好適な態様としては、以下に示す強熱減量が1.7重量%以下のものが挙げられる。かかる強熱減量は1.5重量%以下がより好ましく、1.2重量%以下がさらに好ましい。
本発明者らは、強熱減量が1.7重量%以下であるワラストナイト粒子が、補強性能に優れ、特に芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする溶融粘度の高い樹脂と溶融混練を繰り返しても、剛性、強度などの低下が少ないこと、すなわちリサイクル性に優れることを見出した。
【0066】
本発明においてワラストナイト粒子の強熱減量は、水分を除去するために110℃で6時間処理した後、デシケータ中(乾燥剤入り)で室温まで放冷したワラストナイト粒子、繊維を用意する。かかるワラストナイト粒子、繊維をTGA(Thermogravimetric Analysis:熱重量解析)測定機により、10℃/minで1,300℃まで連続的に昇温し、1,300℃に到達した時点での重量減少値を算出し、強熱減量とする。
なお、この強熱処理による減量はワラストナイト中に不純物として微量含有されるCaCO3に由来するCO2が主成分であると考えられる。すなわち、ワラストナイト中の不純物として微量含有されるCaCO3が少ない方が補強効果やリサイクル性に優れるものであると推定される。
【0067】
また、ワラストナイト粒子には通常の表面処理剤、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤などで表面処理を施したものを使用しても差し支えない。かかるシラン系カップリング剤としてはエポキシシランカップリング剤を好ましく挙げることができる。またポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との混合物および/またはポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との反応物も好ましく使用することができる。これらシランカップリング剤で表面処理されたワラストナイト粒子の使用が可能である。
【0068】
上記A成分、B成分、およびC成分の組成割合は、次のとおりである。樹脂成分であるA成分とB成分の合計100重量%中、A成分は50〜100重量%、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは60〜90重量%である。B成分は0〜50重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。A成分がA成分とB成分の合計100重量%中50重量%未満では耐熱性、衝撃強度などが低下するようになり好ましくない。
【0069】
C成分は上記樹脂組成分100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは1〜70重量部、より好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは1〜30重量部である。C成分のワラストナイト粒子の割合が1重量部未満では剛性などの機械特性が低下するようになり、100重量部を超えると衝撃強度、外観などが低下するようになり好ましくない。
本発明において得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の衝撃強度等をさらに向上させるためにD成分として弾性重合体を使用することができる。本発明において使用可能なD成分の弾性重合体の例としては、ガラス転移温度が10℃以下のゴム成分に、芳香族ビニル、シアン化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらと共重合可能なビニル化合物から選択されたモノマーの1種または2種以上が共重合されたグラフト共重合体を挙げることができる。
【0070】
またかかるゴム成分と上記モノマーのブロック共重合体も挙げられる。かかるブロック共重合体としては具体的にはスチレン・エチレンプロピレン・スチレンエラストマー(水添スチレン・イソプレン・スチレンエラストマー)、および水添スチレン・ブタジエン・スチレンエラストマーなどの熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
さらに他の熱可塑性エラストマーして知られている各種の弾性重合体、例えばポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー等を使用することも可能である。弾性重合体は、ゴム成分を40%以上含有するものであり、この点で本発明のB成分のABS樹脂等とは明確に区別されるものである。
【0071】
ここでいうガラス転移温度が10℃以下のゴム成分としては、ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、アクリルゴム、アクリル-シリコン複合ゴム、イソブチレン−シリコン複合ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−アクリルゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴムおよびこれらの不飽和結合部分に水素が添加されたものを挙げることができる。
中でもガラス転移温度が−10℃以下、より好ましくは−30℃以下のゴム成分を含有する弾性重合体が好ましく、特にブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、アクリルゴム、アクリル-シリコン複合ゴムを使用した弾性重合体が好ましい。複合ゴムとは、2種のゴム成分を共重合したゴムまたは分離できないよう相互に絡み合ったIPN構造をとるように重合したゴムをいう。
【0072】
芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アルコキシスチレン、ハロゲン化スチレン等を挙げることができ、特にスチレンが好ましい。またアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル等を挙げることができ、メタアクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル等を挙げることができ、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0073】
ガラス転移温度が10℃以下のゴム成分を含有する弾性重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの重合法で製造したものであってもよく、共重合の方式は一段グラフトであっても多段グラフトであっても差し支えない。また製造の際に副生するグラフト成分のみのコポリマーとの混合物であってもよい。さらに重合法としては一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また懸濁重合法において、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法、および連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数〜数十μm径の細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法などを行ってもよい。
【0074】
かかる弾性重合体は市販されており容易に入手することが可能である。例えばガラス転移温度が10℃以下のゴム成分として、ブタジエンゴム、アクリルゴムまたはブタジエン−アクリル複合ゴムを主体とするものとしては、鐘淵化学工業(株)のカネエースBシリーズ、三菱レイヨン(株)のメタブレンCシリーズ、呉羽化学工業(株)のEXLシリーズ、HIAシリーズ、BTAシリーズ、KCAシリーズ、宇部サイコン(株)のUCLモディファイヤーレジンシリーズが挙げられ、ガラス転移温度が10℃以下のゴム成分としてアクリル−シリコン複合ゴムを主体とするものとしては三菱レイヨン(株)よりメタブレンS−2001あるいはSRK−200という商品名で市販されているものが挙げられる。
【0075】
D成分の組成割合は、A成分および任意にB成分の合計100重量部に対し0.5〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。D成分の弾性重合体の割合が50重量部を超えると、耐熱性、外観が低下するようになり好ましくない。
本発明においては、さらにワラストナイト粒子の折れを抑制するための折れ抑制剤(E成分)を含むものであってもよく、特に本発明のワラストナイトと組合わせた場合により良好な効果を生ずるため、含むものであることが好ましい。
【0076】
かかるワラストナイト粒子の折れ抑制剤としては、A成分の芳香族ポリカーボネート樹脂に対して滑り性のある成分に、折れ抑制剤がワラストナイト粒子の周囲を被覆するためのワラストナイト粒子との間に反応性または親和性を有する官能基を含むものが挙げられる。このような構造を有することで、本発明の樹脂組成物の構成成分を溶融混合する間に、かかる折れ抑制剤は樹脂成分には結合または密着せず、一方ワラストナイト粒子とは結合または密着して、結果的にワラストナイト粒子の表面を滑剤が被覆するようになる。
【0077】
かかる芳香族ポリカーボネート樹脂に滑り性のある成分としては、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、ポリオレフィン成分、ポリオルガノシロキサン成分、フッ素置換ポリオレフィン成分、アルキルエーテル成分、フッ素置換ポリアルキルエーテル成分等を挙げることができ、かかるものの中でも、ポリオレフィンワックス成分、シリコーンオイル、フッ素オイル成分が好ましい。
一方ワラストナイト粒子との間に反応性または親和性を有する官能基としては、カルボキシル基、エステル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、チオエステル基、2−オキサゾリン基などの環状イミノエーテル基、無水コハク酸−2−イル基、無水コハク酸−2,3−ジイル基などのカルボン酸無水物基などを挙げることができる。特に芳香族ポリカーボネート樹脂に対する分解作用がなく好ましいのは、カルボキシル基、エポキシ基、カルボン酸無水物基であり、特に無水マレイン酸を共重合したものが好ましい。
【0078】
滑剤と各種の官能基を結合する方法としては、(1)滑剤に上記の官能基および滑剤と反応性のある官能基を有する化合物を反応させる方法、(2)滑剤の合成時に上記の官能基を有する化合物を共重合する方法、(3)滑剤、官能基を有する化合物およびラジカル発生剤を加熱下で混合して反応する方法、および(4)熱酸化により修飾する方法などを挙げることができ、いずれの方法も使用可能である。
【0079】
かかるE成分の好ましい例としては、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィンワックスを挙げることができる。かかるカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィンワックスとは、オレフィンワックスを後処理により、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有させた化合物、好ましくはマレイン酸および/または無水マレイン酸で後処理により変性したものが挙げられる。さらにエチレンおよび/または1−アルケンを重合または共重合する際にかかるモノマー類と共重合可能なカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有する化合物、好ましくはマレイン酸および/または無水マレイン酸を共重合したものも挙げられ、かかる共重合をしたものはカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基が高濃度かつ安定して含まれるので好ましい。
【0080】
かかるカルボキシル基やカルボン酸無水物基は、このオレフィンワックスのどの部分に結合してもよく、またその濃度は特に限定されないが、オレフィンワックス1g当り0.1〜6meq/gの範囲がワラストナイト粒子の折れを効率よく改良できるため好ましく、さらに好ましくは0.5〜4meq/gの範囲である。なお、ここで1eq(1当量)とは、カルボキシル基の場合は、カルボキシル基が1モル分存在することをいい、カルボン無水物基の場合には、カルボン無水物基が0.5モル分存在することをいう。他の官能基もカルボキシル基の場合と同程度含まれていることが好ましい。
【0081】
またカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィンワックスの分子量は重量平均分子量で1,000〜〜20,000であり、好ましくは3,000〜15,000である。かかる分子量はGPC測定において標準ポリスチレンから得られた較正直線を用いたポリスチレン換算の値である。
さらに本発明において好適なE成分としては、α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体を挙げることができる。かかる共重合体は、常法に従いラジカル触媒の存在下に、溶融重合あるいはバルク重合法で製造することができる。ここでα−オレフィンとしてはその炭素数が平均値として10〜60のものを好ましく挙げることができる。α−オレフィンとしてより好ましくはその炭素数が平均値として16〜60、さらに好ましくは25〜55のものを挙げることができる。
【0082】
かかるオレフィンワックスは、市販品としては例えばダイヤカルナPA30、PA30M[三菱化学(株)の商品名]、ハイワックス酸処理タイプの2203A、1105A[三井石油化学(株)の商品名]等が挙げられる。特にダイヤカルナPA30、PA30Mが好ましい。これら単独でまたは二種以上の混合物として用いられる。
【0083】
その他のE成分としてはカルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびエポキシ基から選択される1種以上の官能基を含有するポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらはかかる基を有するシラン系カップリング剤とアルコキシ基含有ポリオルガノシロキサンとの反応により得ることができる。またE成分のうち好ましいシリコーンオイルとしてポリアルキルハイドロジェンシリコーンを挙げることができる。中でもポリメチルハイドロジェンシリコーンオイルは容易に入手できより好ましい具体例として挙げることができる。
【0084】
一方、ワラストナイト粒子を滑剤であらかじめ表面処理して同様の効果を達成することもできる。この場合はワラストナイト粒子と反応性を有する官能基を有していない滑剤の使用も可能である。滑剤としては上記のものが使用できる。滑剤であらかじめ表面処理されたワラストナイト粒子は、例えば溶液の状態で、または水性分散液の状態でワラストナイト粒子とミキサーなどで混合し、その後乾燥処理などをすることにより得られる。したがって本発明のワラストナイト粒子の折れ抑制剤(E成分)は、(i)ワラストナイト粒子との間に反応性を有する官能基を含む滑剤、および(ii)ワラストナイト粒子にあらかじめ表面被覆された滑剤から選択される成分が使用できる。
【0085】
かかるE成分を使用する場合には、A成分、および任意にB成分からなる樹脂組成物100重量部に対し、0.02〜5重量部添加することにより、ワラストナイト粒子の折れをより抑制し、良好なリサイクル性等を得ることができる。5重量部を超えると層剥離等を起こし好ましくない。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、A成分およびB成分以外の他の熱可塑性樹脂(F成分)を含むことができる。かかる熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、アクリル樹脂、並びにポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂等を例示することができる。さらに、ポリフェニルエーテルおよびポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、およびポリフェニレンサルファイド等のいわゆるスーパーエンプラと呼ばれるものが挙げられる。
【0086】
F成分の組成割合は、A成分および任意にB成分よりなる樹脂成分100重量部当り、0.5〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記A成分およびC成分、ならびに任意にB成分、D成分およびE成分からなるものであるが、さらに必要に応じ、本発明の目的が損われない量の難燃剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0087】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に使用可能な難燃剤(G成分)としては、特に制限されるものではないが、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、有機塩系難燃剤、芳香族リン酸エステル系難燃剤、あるいは、ハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤等が挙げられ、それらを一種以上配合することができる。
具体的にハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤は、テトラクロロビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラクロロビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤等である。
【0088】
具体的に有機塩系難燃剤は、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ビス(2,6−ジブロモ−4−クミルフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−クミルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(p−トルエンスルホン)イミドカリウム、ビス(ジフェニルリン酸)イミドカリウム、ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(2,4−ジブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−ブロモフェニル)リン酸カリウム、ジフェニルリン酸カリウム、ジフェニルリン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウムあるいはカリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウムあるいはカリウム等である。
具体的にハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤は、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェート等である。
【0089】
具体的に芳香族リン酸エステル系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、トリス(2,6−キシリル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジキシレニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、同様のフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、(以下に示す「芳香族ポリホスフェート」は、フェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェートと含まない芳香族ポリホスフェートの両方を意味するものとする)芳香環ソースがビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート等である。
【0090】
これらの難燃剤の中で、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤として、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネートが好ましく、さらにテトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤が好ましい。有機塩系難燃剤としてはパーフルオロブタンスルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。芳香族リン酸エステル系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0091】
またその他の難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤として、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ポリスチレン、ブロム化架橋ポリスチレン、ブロム化ポリフェニレンエーテル、ポリジブロムフェニレンエーテル、赤リンまたは赤リン表面を公知の熱硬化樹脂および/または無機材料を用いてマイクロカプセル化されている安定化赤リンに代表される赤リン系難燃剤、フェニル基、ビニル基およびメチル基を含有する(ポリ)オルガノシロキサン化合物や(ポリ)オルガノシロキサンとポリカーボネート樹脂の共重合体に代表されるシリコーン型難燃剤、およびフェノキシホスファゼンオリゴマーや環状フェノキシホスファゼンオリゴマーに代表されるホスファゼンポリマー型難燃剤などを挙げることができる。
【0092】
上記の難燃剤の中でもTGA(Thermogravimetric Analysis:熱重量解析)によるチッ素雰囲気中における23℃から20℃/minの昇温速度で600℃まで昇温した時の5%重量減少温度が300℃以上の芳香族リン酸エステル系難燃剤を好適な態様として挙げることができる。
【0093】
これらの難燃剤は芳香族ポリカーボネート樹脂に対して可塑化効果を有する。
したがって溶融混練時のワラストナイト粒子の折れがさらに抑制される。また成形時の転写性が向上するため、凸状異物の発生の低減に対しても効果的である。
さらに上記重量減少温度の条件を満足するものは熱安定性も良好である。したがって繰り返し溶融混練された際も樹脂組成物からの揮発およびそれ自体の熱分解が少ない。さらに芳香族リン酸エステル系難燃剤の加水分解に起因する芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解性(耐湿熱性)も、ワラストナイト粒子との併用効果により大幅に向上する。上記の効果により結果としてリサイクル性の良好な樹脂組成物が達成される。
【0094】
一方、難燃剤を配合する樹脂成分としては、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)よりなる樹脂成分、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)および芳香族ポリエステル樹脂(B−1成分)よりなる樹脂成分、並びに芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂(B−2成分)よりなる樹脂成分のいずれも好ましく挙げることができる。
中でもより好ましいのはA成分およびB−2成分よりなる樹脂成分である。かかる樹脂成分は高流動性、高耐衝撃強度、低反り性、およびメッキ性を兼ね備えることから薄肉の電子・電気機器類の筐体成形品を得るのに好適なものであるが、一方当該用途は高い難燃性もさらに要求されるためである。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、主として難燃性能をさらに向上させる目的でフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)をH成分として含むことができる。
【0095】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1,000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0096】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン6J、ダイキン工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のポリフロンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン30Jなどを代表として挙げることができる。混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカル社製 「BLENDEX449」(商品名)などを挙げることができる。
【0097】
H成分の配合量は、A成分および任意にB成分の合計100重量部当り、PTFEの量として0.05〜3重量部が好ましく、より好ましくは0.08〜1.5重量部、さらに好ましくは0.1〜1.0重量部である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明のC成分以外に少量の無機充填材や耐熱有機充填材を含むものであってもよい。
【0098】
かかる無機充填剤としては、ガラス繊維(チョップドストランド)、炭素繊維、金属繊維、ゾノトライト、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムウイスカー等の繊維状充填剤、タルク、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトフレーク等の板状充填剤、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、炭素短繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、セラミックバルーン、カーボンビーズ、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の各種粒子状充填剤、および上記各種の無機充填材にメッキ、蒸着、スパッタリング等の方法により、金、銀、ニッケル、銅、クロム、アルミニウム等に代表される各種金属や、酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等に代表される金属酸化物等を被覆した無機充填材を挙げることができる。
【0099】
耐熱有機充填剤とは、本発明のA成分である芳香族ポリカーボネート樹脂の成形加工温度において溶融しないものをいい、かかる充填剤としては、アラミド繊維、ポリアリレート繊維等の繊維状充填剤、アラミド粉末、ポリテトラフルオロエチレン粉末、フェノール樹脂粒子、架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子等の粒子状充填剤を挙げることができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料等を含むものでもよく、かかる目的に対して適宜処方することが可能であるが、特にリン系の熱安定剤を含むことは好ましいものである。
【0100】
リン系の熱安定剤としては亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル化合物、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等のリン酸エステル化合物、さらにその他のリン系熱安定剤として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル化合物等を挙げることができる。
【0101】
これらのうち、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトが好ましい。
【0102】
これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、A成分および任意にB成分の合計100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.002〜0.3重量部がさらに好ましい。
さらに上記の中でも、樹脂成分が芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)および芳香族ポリエステル樹脂(B−1成分)よりなる樹脂成分の場合には、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのペンタエリスリトールジホスファイト化合物が好ましい。
【0103】
好ましい理由は次のとおりである。A成分およびB−1成分よりなる樹脂成分は、溶融混練時にA成分とB−1成分の間のエステル交換反応に伴いA成分の芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量低下が生じやすい。さらにかかるエステル交換反応はワラストナイトなどのケイ酸塩充填剤の存在により促進される。ペンタエリスリトールジホスファイト化合物は他のホスファイト化合物に比較して加水分解が生じやすい。かかる加水分解により生成した酸成分は上記ワラストナイトのエステル交換反応促進効果を抑制し、より分子量低下の少ない良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が達成される。
ペンタエリスリトールジホスファイト化合物の組成割合は、A成分およびB−1成分の合計100重量部当り、0.005〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1重量部である。
【0104】
酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の配合量は、A成分および任意にB成分の合計100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましい。
【0105】
紫外線吸収剤としては、例えば2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、および例えば2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示される。さらにビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等に代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も使用することが可能である。さらに2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物も使用可能である。かかる紫外線吸収剤、光安定剤の配合量は、A成分および任意にB成分の合計100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
【0106】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損わない範囲で離型剤を配合することも可能である。かかる離型剤としては、オレフィンワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、パラフィンワックス、蜜蝋等が挙げられる。かかる離型剤の配合量は、A成分および任意にB成分の合計100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましい。
【0107】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分、C成分、および任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練し、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。
【0108】
他に、A成分、C成分、および任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸ルーダーに代表される溶融混練機に供給する方法も取ることができる。またA成分、C成分、および任意に他の成分のうち一部の成分を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法が挙げられる。例えば、C成分をサイドフィーダーを用いて押出機途中から独立に供給するなどの方法が挙げられる。予備混合の手段や造粒に関しては、上記と同様である。
なお、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融混練機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。また芳香族リン酸エステル系難燃剤などの融点が比較的低い化合物を供給する場合、加温して液状とし液注装置または液添装置により溶融混練機に供給する方法も取ることができる。
【0109】
樹脂成分がA成分およびB−1成分よりなる場合には、溶融混練前のA成分、およびB−1成分に含まれる水分が少ないことが好ましい。したがって各種熱風乾燥、電磁波乾燥、真空乾燥などの方法により、乾燥されたA成分またはB−1成分を溶融混練することが好ましい。一方溶融混練中にベント吸引は、あまり真空度を高くしないで行うことが好ましい。大気圧に近い状態で窒素ガスなどを循環させながら揮発分を系外に排出する方法などもとることができる。
【0110】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は通常かかるペレットを射出成形して成形品を得ることにより各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形法だけでなく、ランナーレスを可能とするホットランナーによって製造することも可能である。また射出成形においても、通常の成形方法だけでなくガスアシスト射出成形、射出圧縮成形、超高速射出成形、射出プレス成形、インサート成形、局所高温金型成形(断熱金型成形を含む)、サンドイッチ成形、2色成形等を使用することができる。
【0111】
以上より本発明によれば、(1)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)50〜100重量%、および(2)熱可塑性ポリエステル樹脂(B−1成分)およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂(B−2成分)よりなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B成分)0〜50重量%よりなる樹脂成分100重量部、並びに(3)本文中に規定する方法により測定された数平均繊維長が10μm以下、数平均繊維径が4μm以下、および繊維長5〜25μmの個数の割合が50%未満の粒子形状特性を有するワラストナイト粒子(C成分)1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された成形品が提供される。
【0112】
さらに詳細には、以下の成形品が提供される。すなわち(i)上記A成分よりなる樹脂成分および該樹脂成分100重量部当り上記C成分1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された成形品、(ii)上記A成分およびB−1成分よりなる樹脂成分および該樹脂成分100重量部当り上記C成分1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された成形品、並びに(iii)上記A成分およびB−2成分よりなる樹脂成分および
該樹脂成分100重量部当り上記C成分1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された成形品である。
【0113】
さらに好適には、上記ポリカーボネート樹脂組成物より形成された、塗装された成形品が提供される。
かくして得られた本発明の成形品は良好な表面外観、衝撃強度、および剛性に加えて良好なリサイクル性を達成するものである。より詳しくは以下に示す実施例において記載されたリサイクル性の定義に基づいて少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは93%の保持率を達成するものである。
【0114】
上記のごとく、本発明は高剛性、高耐衝撃性、良好な表面外観、および良好なリサイクル性を備えた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。かかる樹脂組成物の特性は幅広い産業分野および用途において有用であるが殊に下記の分野において有用である。
その第1として車輌用内装部品および車輌用外装部品を挙げることができる。
かかる分野は殊に良好な表面外観が求められる分野である。車輌用内装部品としては、センターパネル、インストルメンタルパネル、ダッシュボード、インナードアハンドル、リアボード、カーナビゲーション・カーテレビジョンなどのディスプレーハウジングなどが挙げられる。
【0115】
車輌用外装部品としては、アウタードアハンドル、フェンダーパネル、ドアパネル、スポイラー、ガーニッシュ、ピラーカバー、フロントグリル、リアボディパネル、モーターバイクのカウル、トラックの荷台カバーなどが挙げられる。かかる部品においては、樹脂成分が、芳香族ポリカーボネート樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂よりなる樹脂成分、または芳香族ポリカーボネート樹脂およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂よりなる樹脂成分のいずれかである場合が殊に好適である。芳香族ポリカーボネート樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂よりなる樹脂成分においてはさらに耐薬品性および疲労強度などにも優れるため、これらの特性が要求されるアウタードアハンドルに特に好適である。一方芳香族ポリカーボネート樹脂およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂よりなる樹脂成分は耐衝撃性において有利であり、成形加工性にも優れるため、ドアパネルなどの大型成形品において好適である。
【0116】
その第2として携帯型精密機器のハウジング部品を挙げることができる。携帯型精密機器としては、カメラ、デジタルカメラ、ビデオムービー、望遠鏡、双眼鏡、携帯電話、携帯情報端末、携帯ノート型コンピューター、携帯テープレコーダー、携帯光ディスク再生機、携帯ナビゲーション装置、腕時計などを挙げることができる。かかるハウジング部品は薄肉化が進んでおり高剛性が要求され、また精密部品の位置決めのために寸法精度なども要求される。さらに携帯するため高耐衝撃性が要求され、さらに表面外観に対する要求も高級感を付与するため厳しいものがある。かかるハウジング部品においては樹脂成分として、芳香族ポリカーボネート樹脂およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂よりなる樹脂成分が好適である。かかる樹脂成分は薄肉製品における寸法精度や耐衝撃性の点で有利である。
【0117】
その第3としてOA機器のハウジング部品を挙げることができる。OA機器としてはノートパソコン、パソコン本体、CRTディスプレー、プリンター、複写機、記録媒体(CD、DVDなど)のドライブ装置、スキャナー、ファクシミリなどを挙げることができる。かかる部品においては難燃性能が求められることから、樹脂成分として、芳香族ポリカーボネート樹脂、または芳香族ポリカーボネート樹脂およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂よりなる樹脂成分が殊に好適である。難燃剤としては芳香族リン酸エステル型難燃剤、赤リン、ホスファゼンポリマー型難燃剤などのリン系難燃剤が好適である。また樹脂成分が芳香族ポリカーボネート樹脂の場合は、シリコーン型難燃剤や、有機塩系難燃剤も好適である。中でも樹脂成分として芳香族ポリカーボネート樹脂およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂よりなる樹脂成分、および難燃剤として芳香族リン酸エステル型難燃剤(殊にリン酸エステルオリゴマー)を組合せてなる樹脂組成物が難燃性および成形加工性の観点から有用である。
【0118】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、評価は下記の方法によった。
【0119】
(1)表面外観;図1に示す携帯ノート型コンピューターの表側カバー成形品(鏡面部分とシボ付部分とを有する)を100個成形した。かかる成形品の全数について凸状異物の発生の有無を目視観察により調べ、以下の評価基準にしたがって評価を行った。
◎:凸状異物の発生が認められない
○:凸状異物の発生割合が10%未満である
△:凸状異物の発生割合が10%以上50%未満である
×:凸状異物の発生割合が50%以上である
さらに、各サンプルそれぞれに対して得られた成形品から3個を抜き出し、かかる成形品に日本ビーケミカル(株)製R−230ドーバーホワイトを塗装ブース中でスプレー塗装し、80℃×1時間乾燥して塗装成形品を得た。かかる塗装成形品の鏡面部分の表面粗さを測定し、その平均値を求めた。かかる測定は、万能表面形状測定機(SURFCOM 3B.E−MD−S10A:東京精密(株)製)にて触針径2μm、触針圧0.07gの条件により行い、平均表面粗さ(Ra)を算出した。平均表面粗さ(Ra)の値が小さいほど表面外観は良好であると判断することができる。なお塗装膜厚は30μmであった。
【0120】
(2)衝撃強度;ASTM D256に従い、[1/8”]試験片にて23℃雰囲気下のノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
(3)剛性;ASTM D790に従い曲げ試験を実施し、曲げ弾性率(FM1)を測定した。
(4)リサイクル性;曲げ試験用成形品を粉砕機((株)朋来鉄工所製SB−210)にて70kg/hの処理能力で粉砕し、リペレットした。得られたペレットを再度、射出成形した。この「粉砕→リペレット→成形」の操作を5回繰り返した後、5回目の射出成形により得られた試験片にて、ASTM D790に従い曲げ試験を実施し、曲げ弾性率を測定(FM5)し、(3)で得られた曲げ弾性率(FM1)に対する保持率を下記式により算出した。
保持率(%)=(FM5/FM1)×100
この保持率が高い程、リサイクル性に優れると判断することができる。
(5)難燃性;UL規格94Vに準拠し、厚み1mmおよび1.3mmの試験片について垂直燃焼試験を行い、燃焼性のランクを評価した。
【0121】
実施例1〜59、比較例1〜14
表2〜表10に示す各成分を表記載の配合割合にてV型ブレンダーで混合した後、スクリュー径30mmのベント式二軸押出機[神戸製鋼(株)製KTX−30]によりシリンダー温度270℃、ベント吸引度3kPaでペレット化した。
なお、各成分のうち芳香族ポリカーボネート樹脂および芳香族ポリエステル樹脂は120℃で5時間熱風乾燥処理したものを使用し、また全てのサンプルについてA成分およびB成分の合計100重量部当り0.03重量部のトリメチルホスフェート(大八化学工業(株)製TMP)を添加した。このペレットを100〜110℃で6時間乾燥した後、射出成形機[FANUC(株)製T−150D]によりシリンダー温度270℃、金型温度80℃で試験片を作成し、評価結果を表2〜表10に示した。
【0122】
なお、表中の溶融粘度はキャピラリーレオメータ(キャピログラフ:(株)東洋精機製)を用い、表中のA成分およびB成分からなり上記押出機を使用して得られた樹脂組成物についてキャピラリー長10.0mm、キャピラリー径1.0mm、測定温度260℃にて測定速度を任意に変更し測定した結果得られたShear Rate/Viscosityカーブより300sec-1での溶融粘度を読み取った数値を記載したものである。
【0123】
(A成分)
▲1▼PC−1:ビスフェノールAとホスゲンより製造される粘度平均分子量25,000の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL−1250」)
▲2▼PC−2:ビスフェノールAとホスゲンより製造される粘度平均分子量30,000の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトK−1300」)
▲3▼PC−3:以下の溶融エステル交換法により製造された粘度平均分子量23,300の芳香族ポリカーボネート樹脂
撹拌機及び蒸留塔を備えた反応器に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン228部、ジフェニルカーボネート(バイエル社製)220部(約1.03モル/ビスフェノールA1モル)及び触媒として水酸化ナトリウム0.000024部(約6×10-7モル/ビスフェノールA1モル)とテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.0073部(約8×10-5モル/ビスフェノールA1モル)を仕込み、窒素置換した。この混合物を200℃まで加熱して撹拌しながら溶解させた。次いで、減圧度を4KPaとして加熱しながら1時間で大半のフェノールを留去し、さらに270℃まで温度を上げ、減圧度を1Torrとして2時間重合反応を行った。次に溶融状態のままで、触媒中和剤としてドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を0.0035部(約6×10-6モル/ビスフェノールA1モル)添加して270℃、1.33KPa以下で反応を継続し、粘度平均分子量23,300、末端水酸基濃度34モル%の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。この芳香族ポリカーボネート樹脂をギアポンプでエクストルーダーに送った。エクストルーダー途中でトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.008重量%加え、芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。これをPC−3とした。
【0124】
(B成分)
(B−1成分)
▲1▼PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂(TR−8580;帝人(株)製、固有粘度0.8)
▲2▼PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂(TRB−H;帝人(株)製、固有粘度1.07)
(B−2成分)
▲3▼ABS−1:ABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製「サンタックUT−61」)
▲4▼ABS−2:ABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製「サンタックAT−05」)
▲5▼ABS−3:ABS樹脂(宇部サイコン(株)製「サイコラックY−540A」)
▲6▼AS:(日本エイアンドエル(株)製「ライタック980PC」、重量平均分子量約130,000)
【0125】
(C成分)
下記表1に示される特性を有するW−1〜W−7のワラストナイト粒子を使用した。
【0126】
【表1】
【0127】
(D成分)
▲1▼D−1:ポリオルガノシリコンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴムに1種または2種以上ビニル系単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共重合体(三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2001」)
▲2▼D−2:ブタジエンゴムにエチルアクリレート:メチルメタクリレートを約1:4の割合でグラフトした共重合体(クレハ化学工業(株)製「パラロイドEXL−2602」)
▲3▼D−3:ブタジエンゴムにスチレンおよびアクリロニトリルをグラフト重合してなるブタジエン成分の含有量が60重量%であるABS共重合体(宇部サイコン(株)製「UCLモディファイヤーレジンB600N」)
【0128】
(E成分)
▲1▼Wax:α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体成分を含有するオレフィン系ワックス(三菱化学(株)製「ダイヤカルナPA30M」(無水マレイン酸含有量=10重量%))
【0129】
(G成分)
▲1▼FR−1:レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)(旭電化工業(株)製アデカスタブFP−500、TGA5%重量減少温度=351.0℃)
▲2▼FR−2:トリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製TPP、TGA5%重量減少温度=239.4℃)
▲3▼FR−3:ハロゲン系難燃剤(テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、帝人化成(株)製ファイヤガードFG7000)
【0130】
(H成分)
▲1▼PTFE:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製 ポリフロンMPA FA−500)
(その他の添加剤)
▲1▼ST:サイクリック ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルフォスファイト)(旭電化工業(株)製「アデカスタブPEP−8」)
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
【表8】
【0138】
【表9】
【0139】
【表10】
【0140】
これらの表から明らかなように、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂やスチレン単位成分含有樹脂とからなる樹脂組成物と本発明の条件を満足するワラストナイトとからなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は剛性、衝撃性等の機械特性、表面外観、リサイクル特性に優れているといえる。一方、本発明の条件を満足しないワラストナイト粒子を使用した場合、塗装表面の平滑性は比較的良好であっても凸状異物の発生が多かったり、リサイクル性において劣っている。また繊維長25μm超の割合、325メッシュパスの割合、および強熱減量なども凸状異物の発生やリサイクル性に影響を与えることがわかる。
【0141】
【発明の効果】
発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、剛性等の機械特性、表面外観およびリサイクル特性に優れ、自動車アウターハンドルなどの自動車部品、各種OA機器部品等の用途として最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において使用した携帯ノート型コンピューターのハウジング成形品の表側斜視概要図である(縦178mm×横245mm×縁の高さ10mm)。
【符号の説明】
1 ノートパソコンのハウジングを模した成形品本体
2 艶消し表面部
3 鏡面部
4 ゲート(成形品裏面、ピンゲート0.8mmφ、5個所)
Claims (27)
- (1)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)50〜100重量%、および(2)熱可塑性ポリエステル樹脂(B−1成分)およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂(B−2成分)よりなる群から選択された少なくとも1種の樹脂からなる熱可塑性樹脂(B成分)0〜50重量%よりなる樹脂成分100重量部、並びに(3)数平均繊維長が10μm以下、数平均繊維径が4μm以下、および繊維長5〜25μmの粒子個数の割合が50%未満の粒子形状特性を有するワラストナイト粒子(C成分)1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該樹脂成分は、A成分が50〜95重量%およびB成分が5〜50重量%含有される請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該ワラストナイト粒子(C成分)は、数平均繊維長が3〜10μm、数平均繊維径が0.5〜4μm、および繊維長5〜25μmの粒子個数の割合が30%以上50%未満である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該ワラストナイト粒子(C成分)は、繊維長25μmを超えるの粒子個数の割合が5%以下である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該ワラストナイト粒子(C成分)は、強熱減量が1.7重量%以下である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該ワラストナイト粒子(C成分)は、湿式篩法による325メッシュパスの割合が99.96重量%以上である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該樹脂成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)50〜95重量%および熱可塑性ポリエステル樹脂(B−1成分)5〜50重量%よりなる請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該B−1成分は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンナフタレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該樹脂成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)50〜95重量%およびゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂(B−2成分)5〜50重量%よりなる請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該B−2成分はポリスチレン(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム(ASA樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン・スチレン共重合体(AES樹脂)、およびメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該樹脂成分は、260℃におけるキャピラリーレオメータで測定した溶融粘度が、シェアレート300sec-1で0.1×103〜5×103Pa・sの範囲にある請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに衝撃強度改良剤として弾性重合体(D成分)をA成分およびB成分の合計100重量部当り0.5〜50重量部含有する請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらにワラストナイト粒子(C成分)の折れ抑制剤(E成分)を、A成分およびB成分の合計100重量部当り0.02〜5重量部含有する請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらにA成分およびB成分以外の他の熱可塑性樹脂(F成分)を、A成分およびB成分の合計100重量部当り0.5〜20重量部含有する請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに難燃剤(G成分)を、A成分およびB成分の合計100重量部当り0.1〜20重量部含有する請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (1)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部および(2)数平均繊維長が10μm以下、数平均繊維径が4μm以下、および繊維長5〜25μmの個数の割合が50%未満の粒子形状特性を有するワラストナイト粒子(C成分)1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに衝撃強度改良剤として弾性重合体(D成分)をA成分100重量部当り0.5〜50重量部含有する請求項16記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらにワラストナイト粒子(C成分)の折れ抑制剤(E成分)を、A成分100重量部当り0.02〜5重量部含有する請求項16記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (1)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)50〜95重量%および(2)熱可塑性ポリエステル樹脂(B−1成分)5〜50重量%よりなる樹脂成分100重量部、および(3)数平均繊維長が10μm以下、数平均繊維径が4μm以下、および繊維長5〜25μmの個数の割合が50%未満の粒子形状特性を有するワラストナイト粒子(C成分)1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに衝撃強度改良剤として弾性重合体(D成分)をA成分およびB−1成分の合計100重量部当り0.5〜50重量部含有する請求項19記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらにワラストナイト粒子(C成分)の折れ抑制剤(E成分)を、A成分およびB−1成分の合計100重量部当り0.02〜5重量部含有する請求項19記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (1)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)50〜95重量%および(2)ゴム成分の含有量が40重量%未満のスチレン単位成分含有樹脂(B−2成分)5〜50重量%よりなる樹脂成分100重量部、および(3)数平均繊維長が10μm以下、数平均繊維径が4μm以下、および繊維長5〜25μmの粒子個数の割合が50%未満の粒子形状特性を有するワラストナイト粒子(C成分)1〜100重量部よりなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに衝撃強度改良剤として弾性重合体(D成分)をA成分およびB−2成分の合計100重量部当り0.5〜50重量部含有する請求項22記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらにワラストナイト粒子(C成分)の折れ抑制剤(E成分)を、A成分およびB−2成分の合計100重量部当り0.02〜5重量部含有する請求項22記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに難燃剤(G成分)をA成分およびB−2成分の合計100重量部当り、0.1〜20重量部含有する請求項22記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1、16、19、または22のいずれか記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された成形品。
- リサイクル特性が少なくとも85%を有する請求項26記載の成形品。
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