JP5112580B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、実質的にハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤を配合することなく環境負荷が小さく、薄肉での難燃性、剛性、および熱安定性に優れる難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリアリレート樹脂等は、機械的特性、寸法精度、電気特性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして電気、電子機器分野、自動車分野、OA分野などさまざまな分野において幅広く使用されている。そして、これらの用途のなかでもOA分野、電子電気分野については、OA機器、家電製品の難燃化の要望が強い。
【0003】
これらの要望に応えるためにハロゲン系化合物やリン酸エステル系化合物など、各種の難燃剤を配合した難燃性樹脂組成物が一般的に提案されている。しかしながら、ハロゲン系化合物を使用した場合には燃焼時にダイオキシン等の有毒なガス発生の可能性があり、及びリン酸エステル系化合物を使用した場合には廃棄埋め立て時にリン分が土壌へ溶出することが一部で懸念されている。特に最近では環境問題への関心の高まりから、より環境負荷の小さい難燃剤を使用した難燃性樹脂材料が望まれている。
【0004】
これに対して、環境負荷の小さい難燃剤としてシリコーン化合物や金属塩化合物を使用した難燃芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
【0005】
特開昭51−45160号公報には、芳香族ポリカーボネート樹脂に有機アルカリ(土類)金属塩およびメチル水素シロキサンからなる樹脂組成物が記載されている。特開平11−263903号公報には、ポリカーボネート樹脂に特定の粘度を有するシリコーンワニスと有機スルホン酸金属塩を配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。特開平11−217494号公報には、ポリカーボネート樹脂に主鎖が分岐構造でかつ芳香族基を有するシリコーン化合物、および芳香族硫黄化合物の金属塩、更に繊維形成型の含フッ素ポリマーを配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
【0006】
しかしながらこれらの公報において具体的に開示された組成物は金属塩化合物を多量に配合した場合に熱安定性が低下し、ひいては機械的特性、耐衝撃性の低下に繋がるという問題があり、添加量が限定される為難燃効果にも限界があった。また難燃化できる樹脂も芳香族ポリカーボネート樹脂に限定されたものであった。
【0007】
一方、タルク、ガラス繊維などの無機充填材を含むことにより難燃性を向上させ得ることも従来から知られるところである。
【0008】
例えば特開平2−199162号公報には、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂やMBS樹脂などに代表されるゴム含有熱可塑性樹脂、任意にAS樹脂などの樹脂、ハロゲン系難燃剤、難燃助剤、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン、並びにタルク、ガラスパウダーなどの無機充填材からなる、UL規格94−5Vを満足する優れた難燃性を有する樹脂組成物が開示されている。更に無機充填材にはシランカップリング剤処理を施すことが好ましい旨の記載もある。しかしながらかかる公報は実質的にハロゲン系難燃剤を含まない組成物に、良好な難燃性を付与するための処方を十分に開示したものとはいえなかった。
【0009】
特開平7−126510号公報には、芳香族ポリカーボネート樹脂、ABSなどの共重合体、リン酸エステル、ポリテトラフルオロエチレン、タルクなどの鱗片状の無機充填剤、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレート成分が相互侵入構造を有している複合ゴムからなり、難燃性、剛性、流動性、および耐衝撃性のすべてに優れる樹脂組成物が開示されている。しかしながらかかる公報は、実質的にリン酸エステルを含まない組成物に、良好な難燃性を付与するための処方を十分に開示したものとはいえなかった。
【0010】
特開平11−256022号公報には、ポリカーボネート系樹脂、特定の環状構造のリン酸エステル、フッ素樹脂、および少量のタルクからなり、該リン酸エステル中のリン原子の量とタルクが特定の重量比であることを満足する難燃性の良好な樹脂組成物が開示されている。かかる公報においては、少量のタルクが難燃性を大幅に向上させることが開示されている。しかしながらかかる公報もリン酸エステルを実質的に含まない組成物に良好な難燃性を付与するための処方を十分に開示したものとはいえなかった。
【0011】
一方、各種官能基を有するアルコキシシラン化合物は、シランカップリング剤として無機充填材と樹脂との密着性向上などに有用なことは広く知られるところである。更にポリメチル水素シロキサンに代表されるSi−H結合を有するシリコーン化合物も同様の無機充填材の表面処理剤として効果があることが従来から知られている。例えば特開平5−179126号公報には、ポリカーボネート樹脂にマイカなどの無機充填材とSi−H結合を有するオルガノポリシロキサン系ポリマーを含む樹脂組成物が開示され、かかる樹脂組成物は無機充填材による分解が少ないことが記載されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤を配合することなく環境負荷が小さく、薄肉での難燃性、剛性、および熱安定性に優れる難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、驚くべきことに芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、およびポリアリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂に、無機充填材(殊に珪酸金属塩)、アルコキシシラン化合物およびSi−H結合を含むシリコーン化合物から選ばれる1種または2種以上の含ケイ素化合物、並びにフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを特定割合で組合わせて得られた樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
かかる効果は従来シリコーン系の難燃剤として知られた化合物のみでは達成されるものではなく、一方でアルコキシシラン化合物などは単独では十分に難燃性を達成しえない。更にタルク等の充填材がある程度難燃性を向上させることは上記のとおり明らかではあるが、他に難燃剤として知られた成分を使用することなく、本発明の如き良好な難燃性を達成することは従来知られるところではなかった。かかる点から本発明における発見は驚くべきものであった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、およびポリアリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、無機充填材(B成分)1.5〜50重量部、下記式(1)で表わされるアルコキシシラン化合物およびSi−H結合を含むシリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種の含ケイ素化合物(C成分)0.05〜5重量部、並びにフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマー(D成分)0.01〜1重量部を含んでなる難燃性熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R1は炭素原子数1〜8の一価の有機基であり、互いに同一または異なるいずれの場合も選択でき、R2は炭素原子数1〜10の一価の有機基であり、互いに同一または異なるいずれの場合も選択でき、nは2、3または4である。)
本発明のA成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、およびポリアリレート樹脂から選ばれる1種または2種以上の混合樹脂からなる熱可塑性樹脂である。
【0018】
本発明のA成分である芳香族ポリカーボネート樹脂(A▲1▼成分)は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0019】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等があげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0020】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましい。
【0021】
特にビスフェノールAの単独重合体が好ましく使用される。かかる芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性が優れる点で好ましい。
【0022】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0023】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリステルカーボネート樹脂であってもよく、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0024】
脂肪族の二官能性カルボン酸としては、例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜12の脂肪族の二官能性カルボン酸が挙げられる。かかる脂肪族の二官能性のカルボン酸は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。脂肪族の二官能性カルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。
【0025】
芳香族ポリカーボネート樹脂の重合反応において界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0026】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(2)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0027】
【化3】
【0028】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0029】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類も示すことができる。これらのなかでは、下記一般式(3)および(4)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
【0032】
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
かかる一般式(3)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0033】
また、一般式(4)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0034】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0035】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0036】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0037】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0038】
さらにかかる重合反応において触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。この失活剤の具体例としては、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル;さらに、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル−スルホン化スチレン共重合体、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルアンモニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデシルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシルトリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの化合物を二種以上併用することもできる。
【0039】
失活剤の中でもホスホニウム塩もしくはアンモニウム塩型のものが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましく、また重合後のポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。
【0040】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特定されないが、分子量が10,000未満であると強度などが低下し、50,000を超えると成形加工性が低下するようになるので、粘度平均分子量で表して10,000〜50,000のものが好ましく、14,000〜30,000のものがより好ましく、更に好ましくは16,000〜25,000である。
【0041】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
【0042】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールの異なるもの、末端停止剤を使用したものと使用していないもの、直鎖状のものと分岐状のもの、製法の異なるもの、末端停止剤の異なるもの、ポリカーボネートとポリエステルなど、その異なる構造や特性を有する2種以上を混合しても差し支えない。この場合粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂とを混合することも当然に可能である。
【0043】
本発明では、A成分の一つとして、A成分がその繰返し単位100モル%中、分岐構造を有する繰り返し単位を0.05〜0.3モル%含んでなる芳香族ポリカーボネート樹脂(A▲1▼2成分)も使用できる(以下、“分岐芳香族ポリカーボネート樹脂”と称することがある)。かかる分岐芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することで、樹脂が燃焼する際の溶融滴下(いわゆるドリップ)を抑制し、更に高度な難燃性を達成することができる。かかる分岐芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するためには通常三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合する方法が用いられる。
【0044】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0045】
A成分として好適な分岐芳香族ポリカーボネート樹脂において、その多官能性化合物の割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂における繰返し単位100モル%中、分岐構造を有する繰り返し単位を0.05〜0.3モル%、より好ましくは0.05〜0.2モル%、更に好ましくは0.05〜0.15モル%である。
【0046】
また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合がある。すなわち上記多官能性芳香族化合物を含有しない場合であっても、重合反応中のモノマー成分の異性化反応などにより分岐構造が生ずる。本発明のA成分はかかる分岐芳香族ポリカーボネート樹脂も含むものである。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0047】
更に上記分岐構造を有する繰返し単位をA成分の繰返し単位100モル%中、0.05〜0.3モル%含んでなる芳香族ポリカーボネート樹脂(A−2成分)は、より高い濃度の分岐成分を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂と、分岐成分の含有量が少ないかまたは分岐成分を実質的に含有しない芳香族ポリカーボネート樹脂とを混合したものを使用することも可能である。
【0048】
本発明では、更にA成分の1つとして、A成分が粘度平均分子量70,000〜300,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A▲1▼3−1成分)、および粘度平均分子量10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A▲1▼3−2成分)からなり、その粘度平均分子量が16,000〜35,000である芳香族ポリカーボネート樹脂(A▲1▼3成分)(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂”と称することがある)も使用できる。
【0049】
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A▲1▼3成分)は、A▲1▼3−1成分の存在により、樹脂のエントロピー弾性を大きくし、ブロー成形などにおけるドローダウン性、燃焼時におけるドリップ防止性、および射出成形におけるジェッティング防止性などの機能を発揮する。一方でA▲1▼3−2成分の低い分子量成分を含有することにより、全体の溶融粘度を大幅に低下し、射出成形などの各種成形法における実用性を十分に満足するものである。すなわち、上記分岐芳香族ポリカーボネート樹脂と同様に更に高度な難燃性を達成する一方、同時に上記各種の機能を有するものとなる。
【0050】
高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A▲1▼3成分)において、A▲1▼3−1成分の分子量は70,000〜200,000が好ましく、より好ましくは80,000〜200,000、更に好ましくは100,000〜200,000、特に好ましくは100,000〜160,000である。またA▲1▼3−2成分の分子量は10,000〜25,000が好ましく、より好ましくは11,000〜24,000、更に好ましくは12,000〜24,000、特に好ましくは12,000〜23,000である。
【0051】
高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A▲1▼3成分)は上記A▲1▼3−1成分とA▲1▼3−2成分を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、A▲1▼3成分100重量%中、A▲1▼3−1成分が2〜40重量%の場合であり、より好ましくはA▲1▼3−1成分が3〜30重量%であり、更に好ましくはA▲1▼3−1成分が4〜20重量%であり、特に好ましくはA▲1▼3−1成分が5〜20重量%である。
【0052】
また、A▲1▼3成分の調整方法としては、(1)A▲1▼3−1成分とA▲1▼3−2成分とを、それぞれ独立に重合しこれらを混合する方法、(2)特開平5−306336号公報に示される方法に代表される、GPC法による分子量分布チャートにおいて複数のポリマーピークを示す芳香族ポリカーボネート樹脂を同一系内において製造する方法を用い、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を本発明のA−1成分の条件を満足するよう製造する方法、および(3)かかる製造方法((2)の製造法)により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂と、別途製造されたA▲1▼3−1成分および/またはA▲1▼3−2成分とを混合する方法などを挙げることができる。
【0053】
本発明で使用するポリフェニレンエーテル系樹脂(A▲2▼成分)とは、フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体または共重合体(以下単にPPE重合体と称する場合がある)、および必要に応じてスチレン系重合体、ゴム変性スチレン系重合体を含んだものである。
【0054】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。
【0055】
フェニレンエーテル構造を有する核置換フェノールの共重合体の代表例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等がある。
【0056】
上記のPPE重合体の製造方法は特に限定されるものではないが例えば米国特許4,788,277号明細書(特願昭62−77570号)に記載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合して製造することができる。
【0057】
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂の分子量および分子量分布も種々のものが使用可能であるが、分子量としては、0.5g/dlクロロフォルム溶液、30℃における還元粘度が0.20〜0.70dl/gの範囲が好ましく、0.30〜0.55dl/gの範囲がより好ましい。
【0058】
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル系樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることが提案されているものの例としては、特願昭63−12698号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0059】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂には、スチレン系重合体、ゴム変性スチレン系重合体を含んだものを使用することもできる。かかるスチレン系重合体および/またはゴム変性スチレン系重合体(以下単にPS系重合体と称する場合がある)とPPE重合体との割合は、これらの合計100重量%中、PPE重合体が少なくとも20重量%以上であることが必要である。PPE重合体は30重量%以上であることがより好ましい。難燃性についてはPPE重合体の割合が増加するほど好ましいものであるが成形加工性に劣る場合があるので、より好ましくはPPE重合体が30〜80重量%の範囲である。
【0060】
ビニル芳香族化合物重合体としては、スチレンのほか、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン等の重合体、及びこれら1種以上と他のビニル化合物の少なくとも1種以上との共重合体、これら2種以上の共重合体が挙げられる。
【0061】
ビニル芳香族化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物類、無水マレイン酸等の酸無水物などが挙げられる。これらの重合体の中で特に好ましい重合体は、ポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレンを含む。)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)である。
【0062】
また、ゴム変性ビニル芳香族化合物重合体に用いるゴムとしては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、天然ゴム、エチレン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。特に、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましく、ゴム変性芳香族化合物重合体としては、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、ゴム変性スチレン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)が好ましい。
【0063】
さらに(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂には、下記のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物等のエチレン性不飽和化合物により変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂も含むことができる。これらを用いて変性したポリフェニレンエーテル系樹脂を用いた場合には、ビニル化合物系重合体との混合性に優れ、相剥離等のない成形体を提供できる。α,β−不飽和カルボン酸またはその無水物の例として、特公昭49−2343号公報、特公平3−52486号公報等に記載される無水マレイン酸、フタル酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、無水ハイミツク酸、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸、あるいはマレイン酸、フマル酸等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0064】
無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物とポリフェニレンエーテル系樹脂との反応は、有機過酸化物の存在下、または非存在下で両者を混合しPPE重合体のガラス転移温度以上の温度まで加熱することによって製造できる。本発明の難燃性樹脂組成物を製造する際には、あらかじめ無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物を結合したポリフェニレンエーテル系樹脂を用いてもよい。また、難燃性樹脂組成物を製造する際に同時に、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物を添加することによりポリフェニレンエーテル重合体と反応させる方法でもよい。
【0065】
本発明のポリアリレート樹脂(A▲3▼成分)は、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と二価フェノールまたはその誘導体とから得られるものである。ポリアリレートの調製に用いられる芳香族ジカルボン酸としては、二価フェノールと反応し満足な重合体を与えるものであればいかなるものでもよく、1種または2種以上を混合して用いられる。
【0066】
好ましい芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。またこれらの混合物であってもよい。
【0067】
二価フェノール成分の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ビス(4ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノンなどが挙げられる。これら二価フェノール成分はパラ置換体であるが、他の異性体を使用してもよく、さらに二価フェノール成分にエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを併用してもよい。
【0068】
上記の中でも好ましいポリアリレート樹脂としては、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸からなり、二価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)からなるものが挙げられる。テレフタル酸とイソフタル酸との割合は、テレフタル酸/イソフタル酸=9/1〜9/1(モル比)が好ましく、特に溶融加工性、性能バランスの点で7/3〜3/7が望ましい。
【0069】
他の代表的なポリアリレート樹脂としては、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸からなり、二価フェノール成分がビスフェノールAおよびハイドロキノンからなるものが挙げられる。かかるビスフェノールAとハイドロキノンとの割合は、ビスフェノールA/ハイドロキノン=50/50〜70/30(モル比)が好ましく、55/45〜70/30がより好ましく、60/40〜70/30が更に好ましい。
【0070】
本発明におけるポリアリレート樹脂の粘度平均分子量は約7,000〜100,000の範囲が物性および押出加工性から好ましい。またポリアリレート樹脂は界面重縮合法およびエステル交換反応法のいずれの重合方法も選択できる。
【0071】
また本発明に使用するA成分は、上記の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、およびポリアリレート樹脂から選ばれる2種以上の混合樹脂であってもよい。尚、混合割合は任意に選択されるものである。また、A成分として好ましくは、難燃効果が顕著である芳香族ポリカーボネート樹脂単体、または芳香族ポリカーボネート樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂および/またはポリアリレート樹脂からなる樹脂である。後者においては芳香族ポリカーボネート樹脂がA成分100重量%当たり50重量%以上が好ましく、60重量%以上が更に好ましい。
【0072】
本発明に使用する無機充填材(B成分)は、板状、粒状、針状、繊維状のいずれの形態でもよく一般的に樹脂用充填材として使用されるものである。特に剛性および強度の点から、板状、針状、繊維状の充填材が好ましい。
【0073】
無機充填材としては、例えばアルミナ、マグネシアなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;硫酸マグネシウム、石膏繊維などの硫酸塩;珪酸カルシウム(ワラストナイト、ゾノトライトなど)、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、パリゴルスカイト(アタパルジャイト)、セリサイト、カオリン、バーミキュライト、スメクタイト、ポルトランドセメントなどの結晶性の珪酸金属塩;ガラス繊維、ミルドガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーンなどのガラス系充填剤(ガラス成分としては例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラスなどが挙げられる);シリカ(ホワイトカーボンなど)、ケイ砂などのケイ酸化合物;およびフェライト類などが挙げられる。またその他の無機充填材としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ランプブラックなど)、グラファイト、黒鉛ウイスカー、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボン繊維、金属繊維、各種金属被覆繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、なども使用できる。
【0074】
なかでも特性面から好ましく使用されるのは、結晶性の珪酸金属塩、およびガラス系充填剤である。例えばタルク、ワラストナイト、およびガラス繊維などが好ましい。更に好ましくは結晶性の珪酸金属塩である。かかる結晶性の珪酸金属塩の場合より良好な難燃性が達成される。中でもタルクおよびワラストナイトが更に好ましい。
【0075】
更にかかる充填剤の粒径は小さいものほど好ましく、マイクロトラックレーザー法での平均粒径が10μm以下であるものがより好ましく、0.1〜7μmのものが更に好ましい。
【0076】
また、上記の無機充填材は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
本発明で使用されるC成分は、アルコキシシラン化合物(c−1成分)、およびSi−H結合を含むシリコーン化合物(c−2成分)から選ばれる1種または2種以上の含ケイ素化合物である。
【0078】
本発明のC成分として使用するアルコキシシラン化合物(c−1成分)は、下記式(1)で表されるものである。
【0079】
【化6】
【0080】
(式中、R1は炭素原子数1〜8の一価の有機基であり、互いに同一または異なるいずれの場合も選択でき、R2は炭素原子数1〜10の一価の有機基であり、互いに同一または異なるいずれの場合も選択でき、nは2、3または4である。
)
C成分のアルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラアセトシランなどのシラン類(式(1)においてn=4)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどのトリアルコキシ、トリアシルオキシまたはトリフェノキシシラン類(式(1)においてn=3)、およびジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシランなどのアルコキシシランまたはジアシルオキシシラン類(式(1)においてn=2)などが挙げられる。これらの有機シロキサンは、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0081】
より好ましくは、前記式(1)中n=3または4のものである。更にR1は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2が炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはメタクリロキシ基、アミノ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる群から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基の場合がより好ましい。具体的には、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、なかでもメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびN−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。これらは単独もしくは混合して使用できる。
【0082】
本発明のC成分として使用するSi−H結合を含むシリコーン化合物は各種のものが使用可能であるが、より好ましくは下記一般式(5)および(6)で示される25℃における粘度が150mm2/sec以下のシリコーン化合物、並びに下記一般式(8)および(9)で示されるシラン化合物の中から選択される少なくとも一種以上のシリコーン化合物である。
【0083】
【化7】
【0084】
【化8】
【0085】
(式(5)および式(6)中、Z1〜Z6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の有機残基、または下記一般式(7)で示される化合物を示す。α1〜α6はそれぞれ独立に0また1を表わす。またR1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。m1は0以上の整数を表わし、m2は3以上の整数を表わす。更に式(5)および式(6)の化合物はそれぞれ少なくとも1つ以上のSi−H結合を有し、更に式(5)中においてm1が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。また式(6)中の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
【0086】
【化9】
【0087】
(式(7)中、Z7〜Z9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。α7〜α9はそれぞれ独立に0また1を表わす。またR5およびR6はそれぞれ独立に炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。m3は0以上の整数を表わす。更に式(7)中においてm3が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
【0088】
【化10】
【0089】
【化11】
【0090】
(式(8)および式(9)中、Z10〜Z19はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。α10〜α19はそれぞれ独立に0また1を表わす。Yは二価の有機残基を示す。更に式(8)および式(9)の化合物はそれぞれ少なくとも1つ以上のSi−H結合を有する。)
上記一般式(5)、(6)、(8)および(9)のR1〜R6、およびZ1〜Z19における炭素数1〜20の一価の有機残基として好ましくはアルキル基、ビニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を挙げることができ、更にこれらの基はエポキシ基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、アミノ基、およびメルカプト基などの各種官能基を含むものであってもよい。更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、ビニル基またはアリール基であり、特に炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはフェニル基が好ましい。
【0091】
上記一般式(5)〜(7)において、複数のシロキサン結合の繰返し単位を有する場合は、それらはランダム共重合、ブロック共重合、テーパード共重合のいずれの形態を取ることも可能である。尚、繰り返し単位の異なる複数のポリシロキサンの混合物の場合には、上記一般式(5)〜(7)の値はそれらの平均値を表わす。
【0092】
本発明において使用するSi−H結合を含むシリコーン化合物は、反応性の高いものが好ましく、1分子中に2以上のSi−H結合を有する化合物が好ましい。更に好ましくは1分子中に3以上のSi−H結合を有する化合物である。
【0093】
上記理由から、更に本発明において使用するSi−H結合を含むシリコーン化合物として好ましいのは、上記一般式(5)または(6)で示されるシリコーン化合物であり、1分子中に3個以上のSi−H結合を有する場合である。更に、好ましいのは、上記一般式(5)または(6)においてすべての繰返し単位がSi−H結合を有する場合であり、特に好ましいのはすべての繰返し単位がメチル水素シロキサン単位である場合である(すなわち一般式(5)においてZ3が水素原子、α3が0、Z4がメチル基、およびα4が0である。一般式(6)においてZ5が水素原子、α5が0、Z6がメチル基、およびα6が0である。)。
【0094】
一方、本発明において使用するSi−H結合を含むシリコーン化合物が効率的に難燃効果を発揮するためには、その分散状態が重要である。かかる分散状態を決定する重要な因子として分子量が挙げられる。
【0095】
かかる観点より、更に本発明において使用するSi−H結合を含むシリコーン化合物としてより好ましくは、上記一般式(5)または(6)で示される25℃における粘度が150mm2/sec以下のシリコーン化合物を挙げることができる。更に好ましくは25℃における粘度が5〜100mm2/sec、より好ましくは10〜80mm2/secのものである。かかる場合上記式(5)〜(7)における繰返し単位m1、m2およびm3としては、これら繰り返し単位の合計が3〜100であることが好ましく、より好ましくは5〜80、更に好ましくは10〜70である。
【0096】
上記一般式(5)のシリコーン化合物としては、具体的にはメチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン−ジメチルポリシロキサン共重合体等が挙げられる。メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH1107、信越化学工業(株)製KF99、ジーイー東芝シリコーン(株)製TSF484、TSF483等が挙げられ、これらは市場で容易に入手できる。メチルハイドロジェンポリシロキサン−ジメチルポリシロキサン共重合体としては、日本ユニカー(株)製SiH変性シリコーンオイルL−31、FZ−3702、FZ−3797、FZ−3805等が挙げられ、これらは市場で容易に入手できる。一般式(5)で示される構造のシリコーンの粘度としては、25℃における粘度が150mm2/sec以下であることが難燃性の点から好ましい。
【0097】
その他一般式(5)で示されるシリコーン化合物としては、ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサンなどを挙げることができる。
【0098】
上記一般式(6)で示されるシリコーン化合物としては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ペンタメチルシクロテトラシロキサンなどを挙げることができる。
【0099】
一方本発明において使用するSi−H結合を含むシリコーン化合物として、上記一般式(8)で示されるシラン化合物として具体的には以下のものが挙げられる。Si−H結合を1分子中に1個有する化合物としては、ジメトキシメチルシラン、トリメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジアセトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジエチルメチルシラン、トリエチルシラン、ブチルジメチルシラン、トリエトキシシラン、ジメチルフェニルシラン、メチルフェニルビニルシラン、ジフェニルメチルシラン、トリプロピルシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルシラン、およびトリヘキシルシランなどを挙げることができる。Si−H結合を1分子中に2個有する化合物としては、ジエチルシラン、アリルジメチルシラン、メチルフェニルシラン、およびジフェニルシランなどを挙げることができる。更にSi−H結合を1分子中に3個有する化合物としては、フェニルシラン、およびオクチルシランなどを挙げることができる。
【0100】
本発明において使用するSi−H結合を含むシリコーン化合物として、上記一般式(9)で示されるシラン化合物として具体的には1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、および1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどを挙げることができる。
【0101】
上記のSi−H結合を含むシリコーン化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0102】
本発明のD成分であるフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることかできるが、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0103】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0104】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン30Jなどを代表として挙げることができる。
【0105】
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカル社製
「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0106】
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。
【0107】
本発明のA成分、B成分、C成分およびD成分の組成割合は、A成分100重量部に対し、B成分が1.5〜50重量部、C成分が0.05〜5重量部、D成分が0.01〜1重量部である。好ましい割合としては、A成分100重量部に対し、B成分は2〜35重量部が好ましく、3〜30重量部がより好ましく、4〜25重量部が更に好ましい。C成分は0.1〜4重量部が好ましく、0.5〜3.5重量部がより好ましく、0.8〜3重量部が更に好ましい。D成分は0.03〜0.7重量部が好ましく、0.05〜0.5重量部がより好ましく、0.1〜0.5重量部が更に好ましい。尚、かかるD成分の組成割合は、D成分が水性分散液や他の樹脂との混合物形態である場合においても、その正味のPTFEの量をさす。
【0108】
B成分が、1.5重量部未満では剛性改良効果が小さく、また50重量部を超えると、燃焼性が維持できない場合があり好ましくない。C成分が、0.05重量部未満では燃焼性が不足する場合があり、また5重量部を超えると難燃性が逆に低下してくる。D成分が、0.01重量部未満では、ドリップ防止効果が不足し、1重量部を超えると機械強度が低下し好ましくない。
【0109】
更に、本発明のc−1成分であるアルコキシシラン化合物、およびc−2成分であるSi−H結合を含むシリコーン化合物は、無機充填材との相互作用により高い難燃性を達成していると考えられる。したがってそれら両者の組成割合も重要である。B成分とC成分との間の組成割合は、重量比でB成分100に対してC成分が3〜50の範囲が好ましく、5〜40の範囲がより好ましく、7〜35の範囲が更に好ましい。
【0110】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でA成分以外の熱可塑性樹脂、ゴム状弾性体、および各種の添加剤を含むことができる。各種の添加剤としては熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、摺動剤、着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、染料)、高分子架橋粒子、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などを挙げることができる。樹脂組成物の劣化を防止する為、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤などは樹脂組成物中に含まれることが好ましい。特に熱安定剤は含まれることが好ましい。
【0111】
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、HIPS樹脂、MS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、フェノキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイドなどを挙げることができる(尚、ここでMS樹脂はメチルメタクリートとスチレンから主としてなる共重合体、AES樹脂はアクリロニトリル、エチレン−プロピレンゴム、およびスチレンから主としてなる共重合体、ASA樹脂はアクリロニトリル、スチレン、およびアクリルゴムから主としてなる共重合体、MAS樹脂はメチルメタクリレート、アクリルゴム、およびスチレンから主としてなる共重合体、SMA樹脂はスチレンと無水マレイン酸(MA)から主としてなる共重合体を指す。)。
【0112】
弾性重合体とは、ガラス転移温度が10℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−30℃以下であるゴム成分と共重合してなる重合体をいう。ゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びにアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体など)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリル系ゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)、並びにシリコーン系ゴム(例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム;すなわち2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム、およびポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなど)が挙げられる。
【0113】
かかるゴム成分に共重合される単量体成分としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物などが好適に挙げられる。その他の単量体成分としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物等を挙げることができる。
【0114】
より具体的には、SB(スチレン−ブタジエン)重合体、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)重合体、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)重合体、MB(メチルメタクリレート−ブタジエン)重合体、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム)重合体、AES(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン)重合体、MA(メチルメタクリレート−アクリルゴム)重合体、MAS(メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン)重合体、メチルメタクリレート−(アクリル/シリコーンIPNゴム)重合体などを挙げることができる。
【0115】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の熱安定剤としては、リン系安定剤を含むことが好ましい。かかるリン系安定剤としては、ホスファイト系、ホスホナイト系、およびホスフェート系のいずれも使用可能である。
【0116】
ホスファイト系安定剤としては、アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物が好ましく挙げられる。例えば、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられ、特にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0117】
更に上記アリール基の一部が環状構造を有するアリール基を有するホスファイト化合物も使用できる。例えば2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス (4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0118】
上記以外のリン系熱安定剤として更に以下のものを挙げることができる。ホスファイト化合物としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられ、好ましくはジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジトリデシルホスファイトを挙げることができる。
【0119】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0120】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0121】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は各種の安定剤を含むことができる。酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などを挙げることができる。フェノール系酸化防止剤としては種々のものを使用することができる。
【0122】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを好ましく挙げることができ、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネートをより好ましく挙げることができる。
【0123】
本発明のイオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステル、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを挙げることができる。より好ましくは、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステルを挙げることができる。
【0124】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は紫外線吸収剤を含むことができる。紫外線吸収剤としては、例えば2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0125】
また紫外線吸収剤としては例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0126】
更に紫外線吸収剤としては例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0127】
またビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができ、かかる光安定剤は上記紫外線吸収剤や各種酸化防止剤との併用において、耐候性などの点においてより良好な性能を発揮する。
【0128】
上記に挙げたリン系安定剤、フェノール系酸化防止剤、およびイオウ系酸化防止剤はそれぞれ単独または2種以上併用することができる。
【0129】
これら安定剤の組成物中の割合としては、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量%中、リン系安定剤、フェノール系酸化防止剤、またはイオウ系酸化防止剤はそれぞれ0.0001〜1重量%であることが好ましい。より好ましくは難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量%中0.0005〜0.5重量%である。更に好ましくは0.001〜0.2重量%である。
【0130】
また紫外線吸収剤、光安定剤の割合は、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量%中0.01〜5重量%、より好ましくは0.02〜1重量%である。
【0131】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は離型剤を含有することができる。かかる離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。
【0132】
好ましい離型剤としては飽和脂肪酸エステルが挙げられる。かかる離型剤の場合には良好な透明性を維持することができる。例えばステアリン酸のモノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライドなどのグリセリン脂肪酸エステル類、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリン酸ステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエステル類が使用される。離型剤は難燃性熱可塑性樹脂組成物100重量%中0.01〜2重量%であることが好ましい。
【0133】
また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には紫外線吸収剤などに基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。具体的なブルーイング剤としては、例えばマクロレックスブルーRR、マクロレックスバイオレットBやテラゾールブルーRLSなどを挙げることができる。
【0134】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分〜D成分、および任意に他の添加剤を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
【0135】
他に、各成分をそれぞれ独立にベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機に供給する方法や、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。予備混合する方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドして、パウダーで希釈した添加剤のマスターバッチとする方法が挙げられる。更にB成分を独立に溶融押出機の途中から供給する方法なども挙げられる。尚、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0136】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は通常かかるペレットを射出成形して成形品を得ることにより各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形法だけでなく、また射出成形においても、通常の成形方法だけでなくガスアシスト射出成形、射出圧縮成形、射出プレス成形、インサート成形、インモールド成形、局所高温金型成形(断熱金型成形を含む)、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射出成形などを使用することができる。
【0137】
また本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
【0138】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤を配合する事なく環境負荷が小さく、薄肉での難燃性、および熱安定性に優れるものであるためOA機器や家電製品の内部部品や筐体などに好適なものである。かかる用途としては例えば、パソコン内外装、ノートパソコン外装、CRTディスプレー、プリンター、携帯端末、携帯電話、コピー機、ファックス、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、テレビ、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどを挙げることができる。
【0139】
またカメラ、デジタルカメラ、ビデオムービー、望遠鏡、双眼鏡、携帯電話、携帯情報端末、携帯ノート型コンピューター、携帯テープレコーダー、携帯光ディスク再生機、携帯ナビゲーション装置、腕時計などの携帯型精密機器、並びにランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーステレオ部品などの車両用部品を挙げることができる。その他機械部品や雑貨などの各種用途に有用である。
【0140】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
▲1▼難燃性
UL94規格に従って作成した厚さ1.2mmおよび1.6mmの試験片を用いて試験を行った。試験の結果に基づいてUL−94 V−0、V−1、V−2および規格外Not−Vのいずれかの等級に評価した。
▲2▼剛性
ASTM D−790規格に従って曲げ試験を実施し、曲げ弾性率を算出した。
▲3▼成形時の熱安定性
成形時の熱安定性の評価は、射出成形機による通常の成形において計量終了後にシリンダーを金型部から後退させ、その状態でシリンダー内に樹脂を10分間滞留させた後、150mm×150mm×1.6mm厚の平板を成形し、シルバー発生の状況を目視により観察した。かかる場合に、シルバーが発生しない場合を○、シルバーが発生した場合を×とした。
【0141】
[実施例1〜21、および比較例1〜8]
表1〜表3に記載の原材料を、B成分〜D成分およびその他の成分はそれぞれ別のA成分の一部(それぞれの成分が10重量%となる量)とポリエチレン袋中で均一にブレンドした後、タンブラーに表記載の量投入した後約15分回転させて均一に混合し、スクリュー径30mmのベント付き二軸押出機[(株)日本製鋼所製、TEX−30α]にて、下記のシリンダー温度、ベント吸引度3000Pa、およびスクリュー回転数180rpmでストランドを押出し、そのストランドを水冷した後、ペレタイザーで切断してペレットを得た。得られたペレットを110℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[ファナック(株)T−150D]により下記の温度条件で試験片を成形した。
【0142】
(i) A成分としてPC−1またはPC−2を使用したサンプルについては、押出時のシリンダ温度280℃、並びにシリンダ温度300℃および金型温度70℃
(ii) A成分としてPArを使用したサンプルについては、押出時のシリンダ温度350℃、並びにシリンダ温度380℃および金型温度100℃
(iii) A成分としてPPEを使用したサンプルについては、押出時のシリンダ温度250℃、並びにシリンダ温度270℃および金型温度60℃
(iv) A成分としてPC−1とPArとの50:50の混合物を使用したサンプルについては、押出時のシリンダ温度310℃、並びにシリンダ温度330℃および金型温度90℃
また、表1〜表3に記載の使用した原材料等は以下の通りである。
(A成分)
PC−1:直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAとホスゲンより製造される粘度平均分子量22,500の芳香族ポリカーボネート樹脂)
PC−2:ビスフェノールAとジフェニルカーボネートの溶融エステル交換反応により得られ、分岐結合成分が全繰返し単位中約0.1モル%であるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量22,500、尚、かかる分岐結合成分の割合は、1H−NMRの測定より算出し、同様に測定されたPC−1のポリカーボネート樹脂では0モル%(該当ピークなし)であった)
PAr:ポリアリレート樹脂(ユニチカ(株)製 U−ポリマーU−100)
PPE:ポリフェニレンエーテル系樹脂(旭化成工業(株) ザイロン300H)
【0143】
(B成分)
TALC:タルク(林化成工業(株)製 Upn HS−T0.8)
MICA:マイカ(コープケミカル(株)製 ミクロマイカ MK−100)
WSN:ワラストナイト(NYCO社製 NYGLOS4)
GF:ガラス繊維(日本電気硝子(株)製 ECS 03T−511)
【0144】
(C成分)
C−1:γ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製「KBM−403」)
C−2:メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製「KBM−13」)
C−3:25℃における粘度が20mm2/secのメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製 KF99)
C−4:25℃における粘度が20mm2/secのメチルハイドロジェンポリシロキサン−ジメチルポリシロキサン共重合体(日本ユニカー(株)製 SiH変性シリコーンオイル L−31)
【0145】
(D成分)
PTFE:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製 ポリフロンMPA FA500)
【0146】
(比較例用の成分)
シリコーン:25℃における粘度が16.4mm2/secである、同一シリコン原子上に2個以上のアルコキシ基を含有せず、Si−H結合を含まない有機シリコーン化合物(信越化学工業(株)製 KR−219)
金属塩:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ化学工業(株)製 メガファックF−114P)
(それ以外の成分)
酸化防止剤:リン系酸化防止剤(日本チバガイギー(株)製 Irgafos168)
離型剤:飽和脂肪酸エステル系離型剤(理研ビタミン(株)製リケマールSL900)
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
この表1〜表3より、本発明の組成物は、ハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤を配合することなく、優れた薄肉での難燃性、剛性、および熱安定性を達成するものであることが分かる。
【0151】
【発明の効果】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤を配合する事なく環境負荷が小さく、薄肉での難燃性、剛性、および熱安定性に優れるものであるためOA機器や家電製品の内部部品や筐体などに好適なものである。かかる用途としては例えば、パソコン内外装、ノートパソコン外装、CRTディスプレー、プリンター、携帯端末、携帯電話、コピー機、ファックス、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、テレビ、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどを挙げることができる。またランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーステレオ部品などの車両用部品を挙げることができる。その他機械部品や雑貨などの各種用途に有用であり、その奏する産業上の効果は極めて大である。
Claims (4)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、およびポリアリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、タルク、マイカ、ワラストナイト、およびガラス繊維から選ばれる少なくとも1種の無機充填材(B成分)1.5〜50重量部、下記式(1)で表わされるアルコキシシラン化合物およびSi−H結合を含むシリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種の含ケイ素化合物(C成分)0.05〜5重量部、並びにフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマー(D成分)0.01〜1重量部を含み、かつアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選択される少なくとも1種の金属塩を含有しない難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 上記A成分が芳香族ポリカーボネート樹脂、または芳香族ポリカーボネート樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂および/またはポリアリレート樹脂からなる樹脂である請求項1に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- B成分がタルク、およびワラストナイトから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- C成分の組成割合が、重量比でB成分100に対してC成分が3〜50の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
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