JP5123480B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、熱安定性が著しく改善された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは本発明は、黒鉛で強化された機械的強度、低異方性、帯電防止性能に優れ、さらに良好な外観を併せ持つ芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂は、その製造、成形の容易さのため、あらゆる産業において広く用いられている。特に芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般に優れた電気絶縁性、耐熱性や耐衝撃性を示すことから、半導体および電子回路基板等の電子部品、各種エレクトロニクス機器、並びに精密機器等の収納や搬送に用いられる容器等に用いられることも多い。近年電子部品の小型化および高機能化により、熱可塑性樹脂成形品の帯電により生ずる機器への電気的障害あるいは塵埃の付着による機器の誤作動を防止する為、熱可塑性樹脂に帯電防止性能が求められている。
このような、電気的障害および塵埃の吸着を防止する為に、熱可塑性樹脂に何等かの手段を用いて若干の導電性を付与し、その体積固有抵抗値をいわゆる帯電防止領域とされる1010〜1012Ω・m程度にする必要がある。かかる抵抗値の樹脂組成物を得るために、有機系の帯電防止剤あるいは導電性を有する樹脂を添加する方法、樹脂組成物にカーボンブラック、炭素繊維あるいは鱗状黒鉛、金属繊維あるいは金属フレーク、導電性酸化チタン等の金属コート繊維あるいは導電性マイカ等の金属コートフレークを添加する方法等が用いられてきた。
例えば芳香族ポリカーボネート樹脂にスルホン酸ホスホニウム塩を配合してなる帯電防止性の樹脂組成物は公知である(特許文献1参照)。しかしながら、有機系の帯電防止剤や導電性樹脂を用いた場合は、所望の抵抗値を得るために多量の添加が必要となるため実用的でない。特に芳香族ポリカーボネート樹脂に代表される芳香族ポリエステル系樹脂はイオン性の物質により分解されやすく、かつ高温の加工温度が必要とされるため、更にかかる分解が促進されやすいため好ましくない。
カーボンブラックの添加は熱可塑性樹脂に対する導電性付与の一つの代表的な方法であり、例えば芳香族ポリカーボネート、ポリアルキレンテレフタレート、および特定DBP吸油量のカーボンブラックの特定割合からなり、該カーボンブラックの分散性を改良した樹脂組成物は公知である(非特許文献1、特許文献2参照)。確かにカーボンブラックの添加によっても容易に導電性を付与することはできるが、実際にはそれが強力な導電性を有することと粉体であることから、分散性を高くすると電気の導通状態を段階的に高くすることが難しく、添加量がある程度を超えると急激に導電性が上昇する。そのため、カーボンブラックを用いることによっては、1010〜1012Ω・m程度の微弱な導電性を有する樹脂組成物またはその成形体を安定して製造しにくい。更にカーボンブラック自体、燃え易い為に難燃化は困難である。
また熱可塑性樹脂に主として繊維径の異なる2種の炭素繊維を配合し、異方性の改善された樹脂組成物は公知である(特許文献3参照)。かかる炭素繊維、金属繊維あるいは金属フレーク、導電性酸化チタンの如き金属コート繊維あるいは導電性マイカの如き金属コートフレーク等の導電性フィラーは、従来から機械的物性向上を考慮して使用されてきた。しかしこれらのフィラーも電気抵抗が低く、所望の抵抗値を得るために配合量を少ない範囲としなければならない。したがってわずかな配合量の変動が抵抗値に大きく作用し、ロット間の抵抗値のバラツキが大きくなりやすい。
黒鉛の添加もまた、熱可塑性樹脂に対する剛性及び帯電防止性能付与の手法として知られており、例えば芳香族ポリカーボネート、特定粒径の鱗片状黒鉛およびトリメチルホスフェートの特定割合からなる樹脂組成物は公知である(特許文献4参照)。しかしながら該文献は、その熱安定性に関して十分な知見を開示しているとはいい難く優れた熱安定性を得るための有効な知見を開示するものではなかった。
日本接着協会誌Vol.23,No.3,103〜111ページ(1987) 特開2002−20608号公報 特開2001−323150号公報 特開2000−119405号公報 特開2001−200153号公報
上述の如く、優れた帯電防止性能、機械的強度、熱安定性及び外観を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が求められているものの、かかる樹脂組成物を得るための手法は何ら開示されていないのが現状である。したがって、本発明は、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の従来技術の問題点に鑑み、鋭意検討した結果、特定粒径の黒鉛を使用し、同時にアミノ基および/またはエポキシ基をもつ、シラン化合物および/またはシリコーン化合物を含むと、良好な熱安定性を達成し得ることを見出し、更に検討を重ねた結果本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、熱可塑性樹脂に、特定粒径の黒鉛とアミノ基および/またはエポキシ基をもつ、シラン化合物および/またはシリコーン化合物とを特定割合で配合することにより、良好な熱安定性を達成するものである。
本発明によれば上記課題は、(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)60〜90重量部、(B)黒鉛(B成分)10〜40重量部の合計100重量部に対し、(C)アミノ基および/またはエポキシ基をもつ、シラン化合物および/またはシリコーン化合物(C成分)0.001〜5重量部を含んでなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(構成1)により達成される。
本発明の好適な態様の1つは、(2)80重量%以上が鱗片状黒鉛である黒鉛を使用することによって製造することを特徴とする上記構成(1)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(構成2)である。本発明の効果は、鱗片状黒鉛(即ちFlake Graphite)においてより有効に発揮される。
本発明の好適な態様の1つは、(3)B成分の黒鉛が、平均粒径が5〜300μmの黒鉛である上記構成(1)あるいは(2)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(構成3)である。
本発明の好適な態様の1つは、(4)C成分が、下記式(1)で表されるシラン化合物である上記構成(1)〜(3)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(構成4)である。
Figure 0005123480
(ここで式中、Xは炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、Yはアミノ基またはエポキシ基を含む基を表す。)
本発明の好適な態様の1つは、(5)C成分が、下記式(2)で表されるシリコーン化合物である上記構成(1)〜(3)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(構成5)である。
Figure 0005123480
(ここで式中、R、R、およびRは、それぞれアミノ基またはエポキシ基を含む、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のエーテル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基及びメチル基からなる群より選ばれる基を表す。ただし、R、R、およびRのすべてがメチル基である場合は除く。また、m、nは0≦m≦100、0≦n≦100の整数を表す。ただし、m、n共に0の場合およびRのみがアミノ基またはエポキシ基を含む基でありかつnが0の場合は除く。)
本発明の好適な態様の1つは、(6)C成分が、R 、R、およびRのいずれかがアミノ基またはエポキシ基を含む、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のエーテル基である上記式(2)で表わされるシリコーン化合物である上記構成(1)〜(3)の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(構成6)である。
本発明の好適な態様の1つは、(7)上記構成(1)〜(6)の難燃性樹脂組成物から形成された電子機器用成形品である。殊にその使用時において帯電による電子部品への悪影響の恐れが高い携帯用電子機器の成形品に好適である。かかる電子機器としては、例えば携帯電話、デジタルカメラ、携帯端末、およびノートパソコンなどが例示される。更に本発明の難燃性樹脂組成物は、殊に好適なポリカーボネート樹脂を主体する成形品が、寸法安定性に優れており、また黒鉛の配合によって比較的摺動特性にも優れることから、カメラの鏡筒の如き使用時に摺動する部材に好適に利用される。
以下、更に本発明の詳細について説明する。
(A成分:芳香族ポリカーボネート樹脂)
本発明でA成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ−トをA成分として使用することが可能である。
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ−ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)〜(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%であるポリカーボネート。
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JISK7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によって芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の強化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に、ドリップ防止性能などを付与できる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネートにおける多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、2価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.9モル%、特に好ましくは0.05〜0.8モル%である。
また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造単位が生ずる場合があるが、かかる分岐構造単位量についても、2価フェノールから誘導される構成単位との合計100モル%中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で選ばれる。
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
前記以外の反応形式の詳細についても、各種の文献および特許公報などで良く知られている。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するにあたり、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、特に限定されないが、好ましくは10,000〜50,000であり、より好ましくは14,000〜30,000であり、さらに好ましくは14,000〜24,000である。
粘度平均分子量が10,000未満の芳香族ポリカーボネート樹脂では、良好な機械的特性が得られない。一方、粘度平均分子量が50,000を超える芳香族ポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る。
なお、前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が前記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。殊に、前記範囲(50,000)を超える粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、樹脂のエントロピー弾性が向上する。その結果、強化樹脂材料を構造部材に成形する際に使用されることのあるガスアシスト成形、および発泡成形において、良好な成形加工性を発現する。かかる成形加工性の改善は前記分岐ポリカーボネートよりもさらに良好である。より好適な態様としては、A成分が粘度平均分子量70,000〜300,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1−1成分)、および粘度平均分子量10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1−2成分)からなり、その粘度平均分子量が16,000〜35,000である芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1成分)(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂”と称することがある)も使用できる。
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1成分)において、A−1−1成分の分子量は70,000〜200,000が好ましく、より好ましくは80,000〜200,000、さらに好ましくは100,000〜200,000、特に好ましくは100,000〜160,000である。またA−1−2成分の分子量は10,000〜25,000が好ましく、より好ましくは11,000〜24,000、さらに好ましくは12,000〜24,000、特に好ましくは12,000〜23,000である。
高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1成分)は前記A−1−1成分とA−1−2成分を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、A−1成分100重量%中、A−1−1成分が2〜40重量%の場合であり、より好ましくはA−1−1成分が3〜30重量%であり、さらに好ましくはA−1−1成分が4〜20重量%であり、特に好ましくはA−1−1成分が5〜20重量%である。
また、A−1成分の調製方法としては、(1)A−1−1成分とA−1−2成分とを、それぞれ独立に重合しこれらを混合する方法、(2)特開平5−306336号公報に示される方法に代表される、GPC法による分子量分布チャートにおいて複数のポリマーピークを示す芳香族ポリカーボネート樹脂を同一系内において製造する方法を用い、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を本発明のA−1成分の条件を満足するよう製造する方法、および(3)かかる製造方法((2)の製造法)により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂と、別途製造されたA−1−1成分および/またはA−1−2成分とを混合する方法などを挙げることができる。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
尚、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mを算出する。
<B成分:黒鉛>
本発明でB成分として使用される黒鉛は、鉱物名で石墨とされる天然黒鉛、または各種の人造黒鉛のいずれも利用することができる。天然黒鉛としては、土状黒鉛、鱗状黒鉛(塊状黒鉛とも称されるVein Graphite)および鱗片状黒鉛(Flake Graphite)のいずれを利用することもできる。また人造黒鉛は、無定形炭素を熱処理し不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般炭素材料に使用される人造黒鉛の他、キッシュ黒鉛、分解黒鉛、および熱分解黒鉛などを含む。一般炭素材料に使用される人造黒鉛は、通常石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として黒鉛化処理により製造される。
これらの中でも、本発明の好適な黒鉛は、鱗片状黒鉛である。かかる鱗片状黒鉛を配合した樹脂組成物は良好な導電性を有すると共に、良好な熱安定性に起因して良好な難燃性を有する。熱安定性が不良であると、燃焼時に樹脂の分解が顕著となり良好な難燃性が得られにくい。鱗片状黒鉛の割合はB成分中好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは実質的にB成分の全量が鱗片状黒鉛である。
本発明の黒鉛は、鱗片状黒鉛を酸処理に代表される処理をすることで、熱膨張可能とした膨張黒鉛、または該膨張処理済みの黒鉛を含んでもよい。しかしながら、かかる膨張黒鉛は熱安定性の点で不十分な場合があり、膨張済みの黒鉛は良好な難燃性が得られない場合が多いことから、膨張黒鉛および膨張処理済みの黒鉛は、B成分100重量%中、20重量%以下、より好ましくは10重量%以下とすることが好ましい。
本発明の組成物中の黒鉛の平均粒径は、5〜300μmの範囲である。かかる粒径は好ましくは5〜70μm、より好ましくは7〜40μm、更に好ましくは7〜35μmである。かかる範囲を満足することにより、良好な難燃性が達成される。一方、平均粒径が5μm未満であると寸法精度の改良効果が低下しやすく、平均粒径が300μmを超えると、耐衝撃性も若干低下すると共に、成形品表面にいわゆる黒鉛の浮きが目立つようになり好ましくない。かかる表面の浮きは成形品表面から黒鉛が脱落し、電子部品と導通して部品を損傷する可能性を有するため問題である。また上記の好ましい平均粒径では、成形品の外観が良好になると共に、良好な摺動性も得られやすい利点がある。なお、この粒径は以下の方法により測定されたものである。
すなわち、得られた樹脂組成物を例えば、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフランなどの溶剤に溶解したのち、ガラスフィルター等のろ過器でろ過し、残査を得る。この得られた残査を石鹸水に入れ超音波振動により凝集状態となっている黒鉛を解塊する。その後、粒子に光を照射し、各粒子径により散乱される散乱光量とパターンから粒子径の大きさを測定するマイクロトラックレーザー回折法によって粒子径を測定することができる。
本発明の黒鉛の固定炭素量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは98重量%以上である。また本発明の黒鉛の揮発分は、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
また黒鉛の表面は、本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいて熱可塑性樹脂との親和性を増すために、表面処理、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、シランカップリング処理、および酸化処理等が施されていてもよい。B成分の配合量は、A成分とB成分の合計100重量部を基準として10〜40重量部、好ましくは10〜35量部、更に好ましくは10〜30重量部である。10重量部未満では良好な帯電防止性や剛性が得られにくく、40重量部を超えると熱安定性が低下するようになる。
<C成分:シラン化合物またはシリコーン化合物>
本発明のC成分としてのシラン化合物は、好ましくは下記式(1)で示されるシラン化合物である。
Figure 0005123480
(ここで式中、Xは炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、Yはアミノ基またはエポキシ基を含む基を表す。)
上記シラン化合物の具体例としては、KBM603(信越化学工業製)が好ましく、下記式(3)で示されるシラン化合物である。
Figure 0005123480
本発明のC成分としてのシリコーン化合物は、好ましくは下記式(2)で表される化合物である。
Figure 0005123480
(ここで式中、R、R、およびRは、それぞれアミノ基またはエポキシ基を含む、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のエーテル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基及びメチル基からなる群より選ばれる基を表す。ただし、R、R、およびRのすべてがメチル基である場合は除く。また、m、nは0≦m≦100、0≦n≦100の整数を表す。ただし、m、n共に0の場合およびRのみがアミノ基またはエポキシ基を含む基でありかつnが0の場合は除く。)
この中でも、R、R、およびRがアミノ基またはエポキシ基を含む、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のエーテル基である上記式(2)で表わされるシリコーン化合物が好ましい。
上記のシリコーン化合物の具体例としては、SF8417(東レ・ダウコーニング製)、BY16-855D(東レ・ダウコーニング製)が好ましく、下記式(4)、(5)で示される。
Figure 0005123480
( ここで式中、Rは NH2-C2H4-NH-C3H6である。また、m、nは0≦m≦100、1≦n≦100の整数を表す。)
Figure 0005123480
また、上記式(3)、(4)、(5)の中では、(3)で表される化合物が最も好ましい。
C成分の配合量は、A成分とB成分の合計100重量部を基準として0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜3重量部、より好ましくは0.01〜3重量部である。
<その他の添加剤>
(i)離型剤
本発明の難燃性樹脂組成物は離型剤を含有することができる。離型剤としては、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などが例示される。かかる離型剤の配合量は100重量部のA成分を基準として好ましくは0.005〜2重量部、より好ましくは0.01〜0.8重量部である。
かかる離型剤の中でも、飽和脂肪酸エステル、特に高級脂肪酸と多価アルコールとの部分エステルおよび/またはフルエステルが好ましい。特にフルエステルが好適である。ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10〜32の脂肪族カルボン酸を指し、その具体例としては、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、ヘキサコサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、並びに、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、セトレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。これらのなかでも脂肪族カルボン酸としては炭素数10〜22のものが好ましく、炭素数14〜20であるものがより好ましい。特に炭素数14〜20の飽和脂肪族カルボン酸、特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。ステアリン酸の如き脂肪族カルボン酸は、通常、炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物であることが多い。前記飽和脂肪酸エステルにおいても、かかる天然油脂類から製造され他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなるステアリン酸やパルミチン酸から得られたエステル化合物が好ましく使用される。
一方、飽和脂肪酸エステルの構成単位たる多価アルコールとしては、炭素原子数3〜32のものがより好ましい。かかる多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(例えばデカグリセリン等)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明の飽和脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましく、より好ましくは2〜15、更に好ましくは4〜15である。水酸基価は20〜500(より好ましくは50〜400)の範囲がより好ましい。更にヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K0070に規定された方法により求めることができる。
離型剤の含有量は、100重量部のA成分を基準として、0.005〜3重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
(ii)紫外線吸収剤
本発明の難燃性樹脂組成物は、良好な耐光性を要求される場合があり、かかる場合に紫外線吸収剤の配合が効果的である。
紫外線吸収剤としては、具体的にはベンゾフェノン系では、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
紫外線吸収剤としては、具体的に、ベンゾトリアゾール系では、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、並びに2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
紫外線吸収剤は、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4−ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
紫外線吸収剤は、具体的に環状イミノエステル系では、例えば2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、例えば1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。前記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
さらにビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等に代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も使用することが可能である。かかる紫外線吸収剤、光安定剤の配合量は、100重量部のA成分を基準として0.01〜2重量部、より好ましくは0.02〜1重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
(iii)難燃剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、難燃剤として知られる各種の化合物が配合されてよい。尚、難燃剤として使用される化合物の配合は難燃性の向上のみならず、各化合物の性質に基づき、例えば帯電防止性、流動性、剛性、および熱安定性の向上などがもたらされる。
かかる難燃剤としては、(i)有機金属塩系難燃剤(例えば有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、ホウ酸金属塩系難燃剤、および錫酸金属塩系難燃剤など)、(ii)有機リン系難燃剤(例えば、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、およびホスホン酸アミド化合物など)、(iii)シリコーン化合物からなるシリコーン系難燃剤、並びに(iv)ハロゲン系難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート(オリゴマーを含む)、臭素化ポリアクリレート、および塩素化ポリエチレンなど)等が挙げられる。
(iii−1)有機金属塩系難燃剤
有機金属塩系難燃剤は、耐熱性がほぼ維持されると共に少なからず帯電防止性を付与できる点で有利である。本発明において最も有利に使用される有機金属塩系難燃剤は、含フッ素有機金属塩化合物である。本発明の含フッ素有機金属塩化合物とは、フッ素置換された炭化水素基を有する有機酸からなるアニオン成分と金属イオンからなるカチオン成分からなる金属塩化合物をいう。より好適な具体例としては、フッ素置換有機スルホン酸の金属塩、フッ素置換有機硫酸エステルの金属塩、およびフッ素置換有機リン酸エステルの金属塩が例示される。含フッ素有機金属塩化合物は1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。その中でも好ましいのはフッ素置換有機スルホン酸の金属塩であり、とくに好ましいのはパーフルオロアルキル基を有するスルホン酸の金属塩である。ここでパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜18の範囲が好ましく、1〜10の範囲がより好ましく、更に好ましくは1〜8の範囲である。
有機金属塩系難燃剤の金属イオンを構成する金属は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。より好適にはアルカリ金属である。したがって好適な有機金属塩系難燃剤は、パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩である。かかるアルカリ金属の中でも、透明性の要求がより高い場合にはルビジウムおよびセシウムが好適である一方、これらは汎用的でなくまた精製もし難いことから、結果的にコストの点で不利となる場合がある。一方、コストや難燃性の点で有利であるがリチウムおよびナトリウムは逆に透明性の点で不利な場合がある。これらを勘案してパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属を使い分けることができるが、いずれの点においても特性のバランスに優れたパーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩が最も好適である。かかるカリウム塩と他のアルカリ金属からなるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
かかるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロオクタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム、およびパーフルオロヘキサンスルホン酸ルビジウム等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。これらの中で特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
上記の含フッ素有機金属塩はイオンクロマトグラフィー法により測定した弗化物イオンの含有量が好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。弗化物イオンの含有量が低いほど、難燃性や耐光性が良好となる。弗化物イオンの含有量の下限は実質的に0とすることも可能であるが、精製工数と効果との兼ね合いから実用的には0.2ppm程度が好ましい。かかる弗化物イオンの含有量のパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩は例えば次のように精製される。パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩を、該金属塩の2〜10重量倍のイオン交換水に、40〜90℃(より好適には60〜85℃)の範囲において溶解させる。該パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩は、パーフルオロアルキルスルホン酸をアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物で中和する方法、もしくはパーフルオロアルキルスルホニルフルオライドをアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物で中和する方法により(より好適には後者の方法により)生成される。また該イオン交換水は、特に好適には電気抵抗値が18MΩ・cm以上である水である。金属塩を溶解した液を上記温度下で0.1〜3時間、より好適には0.5〜2.5時間撹拌する。その後該液を0〜40℃、より好適に10〜35℃の範囲に冷却する。冷却により結晶が析出する。析出した結晶をろ過によって取り出す。これにより好適な精製されたパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩が製造される。
含フッ素有機金属塩化合物の配合量は、A成分とB成分の合計100重量部を基準として好ましくは0.005〜0.6重量部、より好ましくは0.005〜0.2重量部、更に好ましくは0.008〜0.13重量部である。かかる好ましい範囲であるほど含フッ素有機金属塩の配合により期待される効果(例えば難燃性や帯電防止性など)が発揮されると共に、ポリカーボネート樹脂組成物の耐光性に与える悪影響も少なくなる。
その他上記含フッ素有機金属塩化合物以外の有機金属塩系難燃剤としては、フッ素原子を含有しない有機スルホン酸の金属塩が好適である。該金属塩としては、例えば脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、および芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩等(いずれもフッ素原子を含有しない)が挙げられる。
脂肪族スルホン酸金属塩の好ましい例としては、アルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる(ここで、アルカリ(土類)金属塩の表記は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する)。かかるアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用するアルカンスルホン酸の好ましい例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、メチルブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、へプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用する芳香族スルホン酸としては、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸、芳香族スルホネートのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、芳香族スルホン酸のメチレン型結合による縮合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の具体例としては、例えばジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウム、5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウム、1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムな、α,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、およびアントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などを挙げることができる。
一方、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩としては、特に一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、およびステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として好ましくはラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
また他のアルカリ(土類)金属塩としては、芳香族スルホンアミドのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、例えばサッカリン、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミド、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN−(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ(土類)金属塩などが挙げられる。
上記の中でも好ましいフッ素原子を含有しない有機スルホン酸の金属塩は、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩であり、特にカリウム塩が好適である。かかる芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩を配合する場合その含有量は、A成分とB成分の合計100重量部を基準として0.001〜1重量部であり、より好ましくは0.005〜0.5重量部、更に好ましくは0.01〜0.1重量部である。
(iii−2)シリコーン系難燃剤
本発明のシリコーン系難燃剤として使用されるシリコーン化合物は、燃焼時の化学反応によって難燃性を向上させるものである。該化合物としては従来芳香族ポリカーボネート樹脂の難燃剤として提案された各種の化合物を使用することができる。シリコーン化合物はその燃焼時にそれ自体が結合してまたは樹脂に由来する成分と結合してストラクチャーを形成することにより、または該ストラクチャー形成時の還元反応により、ポリカーボネート樹脂に難燃効果を付与するものと考えられている。したがってかかる反応における活性の高い基を含んでいることが好ましく、より具体的にはアルコキシ基およびハイドロジェン(即ちSi−H基)から選択された少なくとも1種の基を所定量含んでいることが好ましい。かかる基(アルコキシ基、Si−H基)の含有割合としては、0.1〜1.2mol/100gの範囲が好ましく、0.12〜1mol/100gの範囲がより好ましく、0.15〜0.6mol/100gの範囲が更に好ましい。かかる割合はアルカリ分解法より、シリコーン化合物の単位重量当たりに発生した水素またはアルコールの量を測定することにより求められる。尚、アルコキシ基は炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好適である。
一般的にシリコーン化合物の構造は、以下に示す4種類のシロキサン単位を任意に組み合わせることによって構成される。すなわち、
M単位:(CHSiO1/2、H(CHSiO1/2、H(CH)SiO1/2、(CH(CH=CH)SiO1/2、(CH(C)SiO1/2、(CH)(C)(CH=CH)SiO1/2等の1官能性シロキサン単位、
D単位:(CHSiO、H(CH)SiO、HSiO、H(C)SiO、(CH)(CH=CH)SiO、(CSiO等の2官能性シロキサン単位、
T単位:(CH)SiO3/2、(C)SiO3/2、HSiO3/2、(CH=CH)SiO3/2、(C)SiO3/2等の3官能性シロキサン単位、
Q単位:SiOで示される4官能性シロキサン単位である。
シリコーン系難燃剤に使用されるシリコーン化合物の構造は、具体的には、示性式としてD、T、M、M、M、M、M、M、M、D、D、Dが挙げられる。この中で好ましいシリコーン化合物の構造は、M、M、M、Mであり、さらに好ましい構造は、MまたはMである。
ここで、上記示性式中の係数m、n、p、qは各シロキサン単位の重合度を表す1以上の整数であり、各示性式における係数の合計がシリコーン化合物の平均重合度となる。この平均重合度は好ましくは3〜150の範囲、より好ましくは3〜80の範囲、更に好ましくは3〜60の範囲、特に好ましくは4〜40の範囲である。かかる好適な範囲であるほど難燃性において優れるようになる。更に後述するように芳香族基を所定量含むシリコーン化合物においては透明性や色相にも優れる。
またm、n、p、qのいずれかが2以上の数値である場合、その係数の付いたシロキサン単位は、結合する水素原子や有機残基が異なる2種以上のシロキサン単位とすることができる。
シリコーン化合物は、直鎖状であっても分岐構造を持つものであってもよい。またシリコン原子に結合する有機残基は炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の有機残基であることが好ましい。かかる有機残基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、およびデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基の如きシクロアルキル基、フェニル基の如きアリール基、並びにトリル基の如きアラルキル基を挙げることがでる。さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基またはアリール基である。アルキル基としては、特にはメチル基、エチル基、およびプロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
さらにシリコーン系難燃剤として使用されるシリコーン化合物はアリール基を含有することが好ましい。より好適には下記一般式(6)で示される芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%(より好適には15〜60重量%)である。
Figure 0005123480
(式中、Xはそれぞれ独立にOH基、炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。nは0〜5の整数を表わす。さらに式中においてnが2以上の場合はそれぞれ互いに異なる種類のXを取ることができる。)
シリコーン系難燃剤として使用されるシリコーン化合物は、上記Si−H基およびアルコキシ基以外にも反応基を含有していてもよく、かかる反応基としては例えば、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、およびメタクリロキシ基などが例示される。
Si−H基を有するシリコーン化合物としては、下記一般式(7)および(8)で示される構成単位の少なくとも一種以上を含むシリコーン化合物が好適に例示される。
Figure 0005123480
Figure 0005123480
(式(7)および式(8)中、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の有機残基、または下記一般式(9)で示される化合物を示す。α〜αはそれぞれ独立に0または1を表わす。m1は0もしくは1以上の整数を表わす。さらに式(7)中においてm1が2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
Figure 0005123480
(式中、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の有機残基を示す。α〜αはそれぞれ独立に0または1を表わす。mは0もしくは1以上の整数を表わす。さらに式中においてmが2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
シリコーン系難燃剤に使用されるシリコーン化合物において、アルコキシ基を有するシリコーン化合物としては、例えば一般式(10)および一般式(11)に示される化合物から選択される少なくとも1種の化合物があげられる。
Figure 0005123480
(式中、βはビニル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、並びに炭素数6〜12のアリール基およびアラルキル基を示す。γ、γ、γ、γ、γ、およびγは炭素数1〜6のアルキル基およびシクロアルキル基、並びに炭素数6〜12のアリール基およびアラルキル基を示し、少なくとも1つの基がアリール基またはアラルキル基である。δ、δ、およびδは炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。)
Figure 0005123480
(式中、βおよびβはビニル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、並びに炭素数6〜12のアリール基およびアラルキル基を示す。γ、γ、γ、γ10、γ11、γ12、γ13およびγ14は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、並びに炭素数6〜12のアリール基およびアラルキル基を示し、少なくとも1つの基がアリール基またはアラルキルである。δ、δ、δ、およびδは炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。)
かかるシリコーン系難燃剤を配合する場合その含有量は、A成分とB成分の合計100重量部を基準として0.1〜10重量部であり、より好ましくは0.5〜7重量部、更に好ましくは1.2〜5重量部である。
(iii−3)ハロゲン系難燃剤
本発明のハロゲン系難燃剤としては、臭素化ポリカーボネート(オリゴマーを含む)が特に好適である。臭素化ポリカーボネートは耐熱性に優れ、かつ大幅に難燃性を向上できる。本発明で使用する臭素化ポリカーボネートは、下記一般式(l2)で表される構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも80モル%であり、特に好ましくは実質的に下記一般式(l2)で表される構成単位からなる臭素化ポリカーボネート化合物である。
Figure 0005123480
(式中、Xは臭素原子、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキリデン基または−SO−である。)
また、かかる式(l2)において、好適にはRはメチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、−SO−、特に好ましくはイソプロピリデン基を示す。
臭素化ポリカーボネートは、残存するクロロホーメート基末端が少なく、末端塩素量が0.3ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2ppm以下である。かかる末端塩素量は、試料を塩化メチレンに溶解し、4−(p−ニトロベンジル)ピリジンを加えて末端塩素(末端クロロホーメート)と反応させ、これを紫外可視分光光度計(日立製作所製U−3200)により測定して求めることができる。末端塩素量が0.3ppm以下であると、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性がより良好となり、更に高温の成形が可能となり、その結果成形加工性により優れたポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
また臭素化ポリカーボネートは、残存する水酸基末端が少ないことが好ましい。より具体的には臭素化ポリカーボネートの構成単位1モルに対して、末端水酸基量が0.0005モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.0003モル以下である。末端水酸基量は、試料を重クロロホルムに溶解し、H−NMR法により測定して求めることができる。かかる末端水酸基量であると、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性が更に向上し好ましい。
臭素化ポリカーボネートの比粘度は、好ましくは0.015〜0.1の範囲、より好ましくは0.015〜0.08の範囲である。臭素化ポリカーボネートの比粘度は、前述した本発明のA成分であるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を算出するに際し使用した上記比粘度の算出式に従って算出されたものである。
かかるハロゲン系難燃剤を配合する場合その含有量は、A成分とB成分の合計100重量部を基準として0.1〜30重量部であり、より好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは1〜18重量部である。
(iv)充填材
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲において、強化フィラーとしてB成分以外の各種充填材を配合することができる。例えば、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、気相成長法極細炭素繊維(繊維径が0.1μm以上)、カーボンナノチューブ(繊維径が0.1μm未満であり、中空状)、フラーレン、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、金属酸化物粒子、金属酸化物繊維、金属酸化物バルーン、並びに各種ウイスカー(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、および塩基性硫酸マグネシウムなど)などが例示される。これらの強化フィラーは1種もしくは2種以上を併用して含むものであってもよい。
その他、本発明の難燃性樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。
かかる添加剤としては、摺動剤(例えばPTFE粒子)、着色剤(例えばカーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、染料)、蛍光染料、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、ラジカル発生剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、およびフォトクロミック剤などが挙げられる。
(芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分〜C成分、および任意に他の成分をそれぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
(成形品)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品は、通常そのペレットを射出成形して得ることができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また本発明によれば、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を押出成形し、各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形とすることもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
(表面処理)
さらに本発明の成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、親水性コート、帯電防止コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、液剤のコーティングの他、蒸着法、溶射法、およびメッキ法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、アミノ基および/またはエポキシ基をもつ、シラン化合物および/またはシリコーン化合物を使用することにより、良好な熱安定性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、およびその成形品(特に好適にはハウジング成形品)を提供する。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、OA機器分野、電気電子機器分野などの各種工業用途に極めて有用であり、特に電気電子機器の埃等を嫌い成形品に帯電防止性能を要求する用途および機器から発生する熱を効率よく放熱することが要求される用途に対応した良好な特性を満足するものである。
かかる用途としては、例えばパソコン、ノートパソコン、ゲーム機(家庭用ゲーム機、業務用ゲーム機、パチンコ、およびスロットマシーンなど)、ディスプレー装置(LCD、有機EL、電子ペーパー、プラズマディスプレー、およびプロジェクタなど)、送電部品(誘電コイル式送電装置のハウジングに代表される)が例示される。かかる用途としては、例えばプリンター、コピー機、スキャナーおよびファックス(これらの複合機を含む)が例示される。かかる用途としては、VTRカメラ、光学フィルム式カメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ用レンズユニット、防犯装置、および携帯電話などの精密機器が例示される。特に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、カメラ鏡筒、デジタルカメラの如きデジタル画像情報処理装置の筐体、カバー、および枠に好適に利用される。
その他更に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、マッサージ機や高酸素治療器などの医療機器;画像録画機(いわゆるDVDレコーダーなど)、オーディオ機器、および電子楽器などの家庭電器製品;パチンコやスロットマシーンなどの遊技装置;並びに精密なセンサーを搭載する家庭用ロボットなどの部品にも好適なものである。
また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、各種の車両部品、電池、発電装置、回路基板、集積回路のモールド、光学ディスク基板、ディスクカートリッジ、光カード、ICメモリーカード、コネクター、ケーブルカプラー、電子部品の搬送用容器(ICマガジンケース、シリコンウエハー容器、ガラス基板収納容器、およびキャリアテープなど)、帯電防止用または帯電除去部品(電子写真感光装置の帯電ロールなど)、並びに各種機構部品(ギア、ターンテーブル、ローター、およびネジなど。マイクロマシン用機構部品を含む)に利用可能である。
したがって本発明の樹脂組成物は、OA機器分野、電気電子機器分野などの各種工業用途に極めて有用であり、その奏する工業的効果は極めて大である。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
(i)熱安定性評価
成形機 東芝機械製 IS25EP、シリンダー温度 300℃、金型温度80℃にて 成形機内に10分間滞留後成形した。得られた成形品の粘度平均分子量を測定し、滞留せずに成形した成形品の粘度平均分子量との差(ΔM)により熱安定性評価を行なった。
(ii)剛性(曲げ弾性率)
ISO178に準拠して曲げ弾性率(MPa)を測定した。試験片形状は、長さ80mm×幅10mm×厚み4mmであった。
(iii)外観評価
幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを含む重量約90gの成形品を射出成形した。かかる3段型プレートの表面のいずれの段にもザラツキが無い場合を○、いずれかの段にザラツキが見られる場合を×として評価した。
(iv)帯電防止性能(乾燥処理前の帯電圧半減期)
上記3段型プレートの2mm厚部を用い、該プレートを温度23℃、相対湿度50%の環境にて一週間保管して状態調整を行った後、スタティックオネストメーター(宍戸静電気(株)製H−0110)によりかかる試験片の帯電圧半減期(秒)を求めた。帯電圧半減期の数値が小さいほど帯電防止性能が優れていることを示す。
(v)難燃性
UL規格94に準ずる形状であり、かつ表1に記載の厚みを有する試験片を用いて、UL規格94の垂直燃焼試験に準ずる方法で燃焼試験を行った。5本1組の試験片におけるドリップの有無と最大燃焼秒数を記録した。成形後、試験片は温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で48時間保管された。かかる保管後に燃焼試験を行った。
原料としては、以下のものを用いた。
表1〜表2中の記号表記の各成分は下記の通りである。
(A成分)
PC:粘度平均分子量19700の直鎖状ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WX)
(B成分)
B−1:鱗片状黒鉛(平均粒径3.3μm、固定炭素量80.0%、揮発分3.0%、灰分17.0%)[西村黒鉛(株)製 超微粉黒鉛(商品名)]
B−2)鱗片状黒鉛(平均粒径10μm、固定炭素量99.0%、揮発分0.6%、灰分0.4%)[西村黒鉛(株)製 PB−99(商品名)]
B−3)鱗片状黒鉛(平均粒径25μm、固定炭素量99.0%、揮発分0.6%、灰分0.4%)[西村黒鉛(株)製 PA−99(商品名)]
B−4)鱗片状黒鉛(平均粒径350μm、固定炭素量98.0%、揮発分1.5%、灰分0.5%)[西村黒鉛(株)製 5098(商品名)]
(C成分)
C−1:アミノシラン化合物 [信越化学(株)製 KBM603]
C−2:アミノ変性シリコーン化合物 [東レ・ダウコーニング(株)製 SF8417]
C−3:エポキシ変性シリコーン化合物 [東レ・ダウコーニング(株)製 BY16-855D]
(本発明以外の添加剤)
TMP:トリメチルホスフェート[大八化学工業(株)TMP]
DC:αオレフィン無水マレイン酸共重合ワックス[三菱化学(株)製ダイヤカルナ−30、酸価75mgKOH/g]
AY:シランカップリング剤 [東レ・ダウコーニング(株)製 AY43−408]
(その他の成分)
FR:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ化学(株)製 メガファックF−114P)
PTFE:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製「ポリフロンMPA FA500」(商品名))
SL:ステアリルステアレートおよびグリセリントリステアレートを主成分とする脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製リケマールSL900)
[実施例1〜8、比較例1〜7]
表1および表2に示す組成で芳香族ポリカーボネート樹脂、鱗状黒鉛、アミノ基および/またはエポキシ基をもつ、シラン化合物またはシリコーン化合物、並びに他の成分をタンブラーを用いて均一に混合して予備混合物を作成し、かかる混合物を押出機のスクリュー根元に位置する第1供給口より供給した。得られた予備混合物を径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]の第1供給口(スクリュー根元部)に供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数170rpm、吐出量13kg/h、およびベント減圧度3kPaで溶融押出してペレット化した。
得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃にて評価用の試験片を成形した。各評価結果を表1〜表2に示した。
Figure 0005123480
Figure 0005123480
上記表から明らかなように、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、優れた熱安定性を有していることがわかる。

Claims (6)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)60〜90重量部と、(B)80重量%以上が鱗片状黒鉛である黒鉛(B成分)10〜40重量部の合計100重量部に対し、(C)アミノ基および/またはエポキシ基をもつ、シラン化合物および/またはシリコーン化合物(C成分)0.001〜5重量部を含んでなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 黒鉛(B成分)が、平均粒径が5〜300μmの黒鉛である請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. C成分が、下記式(1)で表されるシラン化合物である請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0005123480
    (ここで式中、Xは炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、Yはアミノ基またはエポキシ基を含む基を表す。)
  4. C成分が、下記式(2)で表されるシリコーン化合物である請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0005123480
    (ここで式中、R、R、およびRは、それぞれアミノ基またはエポキシ基を含む、
    炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のエーテル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基及びメチル基からなる群より選ばれる基を表す。ただし、R、R、およびRのすべてがメチル基である場合は除く。また、m、nは0≦m≦100、0≦n≦100の整数を表す。ただし、m、n共に0の場合およびRのみがアミノ基またはエポキシ基を含む基でありかつnが0の場合は除く。)
  5. C成分が、R、R、およびRのいずれかがアミノ基またはエポキシ基を含む、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のエーテル基である上記式(2)で表わされるシリコーン化合物である請求項4に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。
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