JP2015187204A - ポリカーボネート樹脂からなる押出成形品 - Google Patents

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康二 飯村
小田 康裕
Yasuhiro Oda
康裕 小田
剛一 永尾
Takehito NAGAO
剛一 永尾
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Abstract

【課題】特定のポリカーボネートを用い、色相に優れ、フィルムでの気泡がなく、製造時にロールを汚染することもなく、ベントを閉塞しづらく、かつ残存低分子成分の少ない押出成形品に関する。【解決手段】特定構造で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を成形してなる押し出し成型品であり、特定構造表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が75%以上98%未満の範囲であり、特定化合物の含有量が10重量ppm以上700重量ppm以下であり、炭酸ジエステルに由来するモノヒドロキシ化合物の含有量が700重量ppm以下であるポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする押出成形品。【選択図】なし

Description

本発明は、特定のポリカーボネートを用い、色相に優れ、フィルムでの気泡がなく、製造時にロールを汚染することもなく、ベントを閉塞しづらく、かつ残存低分子成分の少ない押出成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、光学記録媒体、レンズ等の光学分野等でいわゆるエンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。
従来のポリカーボネート樹脂は、石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後に廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな植物由来モノマーを原料としたポリカーボネート樹脂の開発が求められている。
かかる状況下、バイオマス資源から得られるジヒドロキシ化合物であるイソソルビド(ISB)をモノマー成分とし、炭酸ジエステルとのエステル交換により、副生するモノヒドロキシ化合物を減圧下で留去しながら、ポリカーボネート樹脂を得る方法が提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。ISBから得られるポリカーボネート樹脂は、耐熱性を活かした成形材料としての利用の他にも、優れた光学特性を活かし、光学用途やガラス代替用途への利用も検討されている。
ところが、ISBのようなジヒドロキシ化合物は、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂に使用されているビスフェノール類に比べると熱安定性が低く、高温下で行う重縮合反応や成形、加工の際に熱分解により樹脂が着色する問題があった。この問題を解決するために、重合の反応条件や重合触媒の改善や、ポリカーボネート樹脂への熱安定剤などの添加による改良が検討されている(例えば特許文献5〜8参照)。
また、特許文献9には、ジヒドロキシ化合物としてISBを用いた場合、末端基に対する末端フェニル基の割合をある一定以上に保つことで、押出練り込みや滞留成形後での色調悪化を防ぐことが記載されている。
さらに、特許文献10では、押出やフィルターの条件をある範囲の製造条件にすることにより、良品のポリカーボネート樹脂を得られることが記載されている。
特許文献11では、ISBを原料としたジヒドロキシ化合物ポリカーボネート樹脂の末端OHをある範囲以下にすることにより、樹脂の吸水を抑制できることが開示されている。
国際公開第2004/111106号パンフレット 特開2006−232897号公報 特開2006−28441号公報 特開2008−24919号公報 特開2009−161745号公報 国際公開第2011/065505号パンフレット 特開2009−91405号公報 特開2009−144020号公報 特開2011−21172号公報 特開2012−214728号公報 国際公開第2011/096089号パンフレット
しかし、特許文献9に記載の発明においては、これらは押出練り込みや滞留成形後での色調悪化を防ぐ目的であり、押出練り込みや滞留成形を実施しない場合の色調については言及されておらず、本来の重合段階での色調を抑える手段は記載されておらず、不十分なものであった。
また、特許文献10に記載の発明においては、実際の成形体としての評価はされておらず、実際にこれらの方法で得られた樹脂を使用した射出成形品は、いわゆるシルバーのような外観不良が発生しやすく、押出成形品では、微細な気泡が発生したりして、満足できるものではなかった。
さらに、特許文献11に記載の発明においては、末端OHを低くするために過酷な重合条件が必要であり、結果的に色調が悪化し、外観が悪いものしか得られなかった。また、末端OHを極端に低減した場合に、ある特定のオリゴマー成分が発生しやすくなり、ポリカーボネート樹脂中に残存しやすくなる傾向がある。これらのオリゴマー成分は成形の際に外観不良を発生しやすくなる。しかし、これらについては課題も解決法も開示されておらず、問題解決が必要であった。
したがって、ISBなどのジヒドロキシ化合物を用いたポリカーボネート樹脂は、熱安定性が比較的低いことと、色調の改善のために、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂と比べて低い温度で重合が行われる。そのため、重縮合反応で副生する脱離成分の残存量が増加し、押出成形の際に装置の汚染、具体的には押出機ベントの閉塞やロールへの汚染、ダイスの汚染などの問題が生じたり、成形品の表面外観が損なわれ、成形歩留まりを悪化させることがある。これらは生産量が多くなるとより顕在化してくる問題である。また、本発明者らの検討によると、ポリカーボネート樹脂の末端基割合をある一定に制御しなければ、押出成形で微細な気泡が発生する課題が見出された。さらに、特定のオリゴマー成分をある一定量以下にしなければ、押出機のベント閉塞やロールの汚染など連続生産性が困難になるという課題も見出された。
加えて、光学用途やガラス代替用途など、特に高い透明性や色相、良好な外観が求められる分野においては、さらなる色調の改善や品質の向上が要求されており、従来の方法では要求される性能を満足できていない。
本発明の目的は、上記の問題点を解消し、特定のポリカーボネートを用い、色相に優れ、フィルムでの気泡がなく、製造時にロールを汚染することもなく、ベントを閉塞しづらく、かつ残存低分子成分の少ない押出成形品を提供することにある。
[1]下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物を成形してなる押し出し成型品であり、
下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が75%以上98%未満の範囲であり、
下記式(3)で表される化合物の含有量が10重量ppm以上700重量ppm以下であり、
炭酸ジエステルに由来するモノヒドロキシ化合物の含有量が700重量ppm以下である
ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする押出成形品。
Figure 2015187204
[2]ポリカーボネート樹脂のペレットのYIが15以下であることを特徴とする[1]に記載の押出成形品。
[3]ポリカーボネート樹脂組成物がリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物をリン原子の量として0.7重量ppm以下含有する
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の押出成形品。
[4]成形された成形体(厚さ0.1mm)を23℃、相対湿度50%の環境下にて、蛍光灯下2mに240時間静置した後に、該成形体を透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値が処理前のYIに対して、−1以上0以下の変化であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の押出成形品。
[5]押出成形品がシートまたはフィルムであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の押出成形品。
[6]積層体シートまたはフィルムであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の押出成形品。
[7]射出成形用加飾シートであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の押出成形品。
[8]導光板基材フィルムであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の押出成形品。
本発明によれば、色相、透明性、耐熱性、耐候性、外観、及び機械的強度に優れ、フィルム、シート分野、加飾用シート、ボトル、容器分野、さらには、液晶や有機ELディスプレイなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルムなどのフィルム、シート、光ディスク、光学材料、光学部品、導光板、色素及び電荷移動剤等を固定化するバインダー用途といった幅広い分野へ適用可能なポリカーボネート樹脂を提供することができる。さらに成形においての外観不良品を大幅に削減できることから生産性や作業性、ならびに製品の品質を向上させることが可能になる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容
に限定されない。
[ポリカーボネート樹脂]
下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。
Figure 2015187204
[ポリカーボネート樹脂ペレット]
重縮合により得られたポリカーボネート樹脂は、通常、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされる。ここで、本発明において「ペレット」とは、粒状体に切断された樹脂を意味するものである。また、後述するとおり、ポリカーボネート樹脂に各種の添加剤を添加して溶融混練した後に、ペレット状、チップ状等の粒状体とされるものも本発明におけるペレットに含まれる。
ポリカーボネート樹脂ペレットの色相は、ASTM D1925に準拠して、コニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、反射光で測定を行った。測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。ペレットのYIの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定した。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いる。
本願発明に用いるポリカーボネート樹脂は、ペレットのYIが15以下であることが好ましく、13以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、9以下が特に好ましく、8以下が最も好ましい。ペレットのYIが10より大きいと得られる射出成形品や押出成形品の色目が悪くなる傾向がたかい。
(ポリカーボネート樹脂の末端基構造)
前述したように、ポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用することが好ましい。この場合、製造されるポリカーボネート樹脂の、下記構造式(2)で表される末端基(以下、「フェニル基末端」と記すことがある。)の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が、75%以上98%未満の範囲であることを特徴としている。
Figure 2015187204
また、ポリカーボネート樹脂のフェニル基末端の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)は、76%以上の範囲であることが好ましく、77%以上の範囲である
ことが特に好ましい。また、96%以下の範囲であることが好ましく、95%以下の範囲であることが特に好ましい。
フェニル基末端の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が、75%より少ないと、射出成形の際に成形品にシルバーと呼ばれる外観不良、押出成形での気泡が発生しやすくなる。また、フェニル基末端の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が98%より多いと、射出成形や押出成形での外観不良は減る傾向にある。また、98%より多いポリカーボネート樹脂を得ようとすると、重合条件を過酷にしたり、長時間の反応が必要となり結果的に、ポリカーボネート樹脂の劣化に繋がり、色調が悪いものしか得られない可能性が非常に高い。
ポリカーボネート樹脂のフェニル基末端の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)を上述した範囲に調整する方法は特に限定されないが、例えば、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステル量比を、所望の高分子量体が得られる範囲で調整したり、重合反応後段で脱気により残存モノマーを反応系外に除去したり、重合反応後段での反応機の撹拌効率を上げるなどして反応速度を上げたりすることにより、フェニル基末端の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)を上述した範囲に調整することができる。
ポリカーボネート樹脂中のフェニル基末端の割合は、NMR分光計にて、測定溶媒としてTMSを添加した重クロロホルムを使用し、H−NMRスペクトルの測定により算出することができる。
尚、構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と、脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物との使用割合は、本発明で使用するポリカーボネート樹脂を構成する各ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合に応じ、適宜調整する。
(式(3)で表される化合物の量と低減方法)
本発明のポリカーボネート樹脂中には、下記構造式(3)で表される特殊なオリゴマー成分が含まれる。これらは、少なすぎると精製段階において、過剰な熱をかけたり、反応滞留時間を長くする必要があり、ポリマーの色調悪化を引き起こす可能性があり、上述の範囲が好ましい。多すぎると成形時において装置の汚染の問題を生じたり、成形品の外観不良を発生させる問題がある。
本発明のポリカーボネート樹脂中の下記構造式(3)で表される化合物の残存量は10重量ppm以上700重量ppm以下であり、好ましくは15重量ppm以上、特に好ましくは20重量ppm以上であることが好ましい。
また、好ましくは650重量ppm以下、特に好ましくは600重量ppm以下であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂中の下記構造式(3)で表される化合物の残存量が上記の範囲であれば、成形時の汚れや臭気がなく、成形外観が良好であり、プレートYIも良好であるので、好ましい。下記構造式(3)で表される化合物の含有量を調整するためには、ポリカーボネート樹脂製造中に、フェニル基末端の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)を98%以下にすることにより、下記構造式(3)で表される化合物の発生を抑制させることができる。さらに、最終重合槽での圧力を1KPa以下にしたり、220℃より高い温度での重合時間を2時間未満にすることで発生を抑制できる。特に、最終重合槽は横型反応槽にすることにより、脱揮効率を飛躍的に向上させることが可能である。また、押出機で真空ベントより脱揮を行ったり、脱揮の際に注水を実施することで、構造式(3)で表される化合物を低減することができる。
Figure 2015187204
本発明のポリカーボネート樹脂は、通常、後述するとおり、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと触媒とを溶融下に重縮合させて得られる。この重縮合反応において、炭酸ジエステルから脱離成分としてモノヒドロキシ化合物が生成する。例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、生成するモノヒドロキシ化合物はフェノールである。この時、得られたポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量が多いと、成形時の装置の汚染や臭気の問題を生じることがある。本発明のポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量の上限値としては、700重量ppm以下であり、さらに500重量ppm以下であることが好ましく、特には300重量ppm以下であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂の製造時に、後述するような触媒失活剤となる特定のリン系化合物を適量用い、さらに十分に脱揮処理を行うことで、ポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量を低減し、かつ加熱下での発生を抑制することができる。ポリカーボネート樹脂中のモノヒドロキシ化合物量の測定方法の詳細は実施例の項で記載する。また、下限値としては、通常、制限されないが0.01重量ppm以下であり、さらに0.1重量ppm以下であることが好ましく、特には1重量ppm以下であることが好ましい。これらは、少なすぎると精製段階において、過剰な熱をかけたり、反応滞留時間を長くする必要があり、ポリマーの色調悪化を引き起こす可能性があり、上述の範囲が好ましい。
[ポリカーボネート樹脂の製造方法]
以下、本発明のポリカーボネート樹脂を製造する方法について詳述する。
<原料>
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。
Figure 2015187204
(但し、上記式(1)で表される部位が−CH−OHの一部を構成する部位である場合を除く。)
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に加え、必要に応じて、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物、(5)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことができる。
Figure 2015187204
HO−R−OH (5)
(上記式(5)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を示す。)
HO−CH−R−CH−OH (6)
(上記式(6)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を示す。)
H−(O−R−OH (7)
(上記式(7)中、Rは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を示し、pは2〜100の整数である。)
HO−R−OH (8)
(上記式(8)中、Rは炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基を示す。)
なお、以下において、各種の基の炭素数は、当該基が置換基を有する場合、その置換基の炭素数をも含めた合計の炭素数を意味する。
[式(1)で表されるジヒドロキシ化合物]
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むものである。
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にあるイソソルビド、イソマンニド、イソイデット等の無水糖アルコールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのジヒドロキシ化合物のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂が、上記(1)および(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を同時に含む場合、その比率は特に限定されず、ポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、適宜設定すればよい。
[式(4)〜(8)で表されるジヒドロキシ化合物]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて、上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことができる。
上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物は、分子内に環状エーテル構造を有するものであって、スピログリコールと呼ばれる化合物である。
<式(5)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜18の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を有する脂環式ジヒドロキシ化合物である。ここで、Rが置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられる。該アルキル基が置換基を有する場合、
当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
このジヒドロキシ化合物は、環構造を有することにより、得られるポリカーボネート樹脂を成形したときの成形品の靭性を高めることが可能となり、なかでもフィルムに成形したときの靭性を高めることができる。
のシクロアルキレン基としては、環構造を有する炭化水素基であれば特に制限は無く、橋頭炭素原子を有するような橋かけ構造であっても構わない。ジヒドロキシ化合物の製造が容易で不純物量を少なくすることができるという観点から、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、5員環構造又は6員環構造を含む化合物、即ち、Rが置換若しくは無置換のシクロペンチレン基又は置換若しくは無置換のシクロへキシレン基であるジヒドロキシ化合物が好ましい。このようなジヒドロキシ化合物であれば、5員環構造又は6員環構造を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。該6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。
なかでも、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rが下記式(9)で示される種々の異性体であることが好ましい。ここで、式(9)中、R11は水素原子、又は、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基を示す。R11が置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基である場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
Figure 2015187204
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物として、より具体的には、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール類、ペンタシクロジオール類等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<式(6)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数4〜20、好ましくは炭素数3〜18の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を有する脂環式ジヒドロキシ化合物である。ここで、Rが置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、該アルキル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
このジヒドロキシ化合物は、環構造を有することにより、得られるポリカーボネート樹
脂を成形したときの成形品の靭性を高めることが可能となり、なかでもフィルムに成形したときの靭性を高めることができる。
のシクロアルキレン基としては、環構造を有する炭化水素基であれば特に制限は無く、橋頭炭素原子を有するような橋かけ構造であっても構わない。ジヒドロキシ化合物の製造が容易で不純物量を少なくすることができるという観点から、前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物は、5員環構造又は6員環構造を含む化合物、即ち、Rが置換若しくは無置換のシクロペンチレン基又は置換若しくは無置換のシクロへキシレン基であるジヒドロキシ化合物が好ましい。このようなジヒドロキシ化合物であれば、5員環構造又は6員環構造を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。該6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物は、なかでも、Rが前記式(9)で示される種々の異性体であることが好ましい。
前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物として、より具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、これらのジヒドロキシ化合物は、製造上の理由から異性体の混合物として得られる場合があるが、その際にはそのまま異性体混合物として使用することもできる。例えば、3,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、及び4,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンの混合物を使用することができる。
前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
<式(7)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5の置換若しくは無置換のアルキレン基を有する化合物である。pは2〜100、好ましくは6〜50、より好ましくは12〜40の整数である。
前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物としては、具体的にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量150〜4000)などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物としては、分子量300〜2000のポリエチレングリコールが好ましく、中でも分子数600〜1500のポリエチレングリコールが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<式(8)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基である。Rのアルキレン基が置換基
を有する場合、当該置換基としては炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物のうち、Rが炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基であるジヒドロキシ化合物としては、具体的にはエチレングルコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられるが何らこれらに限定されるものではない。
これらのジヒドロキシ化合物のなかでも、入手のし易さ、取扱いの容易さ、重合時の反応性の高さ、得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点からは、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。また耐熱性の観点からは、アセタール環を有するスピログリコールが好ましい。これらは得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び/又は前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいることが好ましく、反応性や耐熱性、さらに熱滞留における分解が少ないことから前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいることがより好ましい。
[その他のジヒドロキシ化合物]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(4)〜(8)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を必要に応じて、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に置き変えてもよい。
その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類やビスフェノール類のエチレンオキサイド(EO)付加類、フルオレン化合物等が挙げられる。
ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
ビスフェノール類のエチレンオキサイド(EO)付加類としては、前述のビスフェノール類の化合物にエチレンオキサイド(EO)付加したものが挙げられる。
<フルオレン化合物>
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−
ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、前記式(1)で表されるもの以外の、構造内に芳香族環を有するジヒドロキシ化合物は光学特性に悪影響を及ぼす虞があるため、このようなジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、ポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して50モル%以下で用いることが好ましく、より好ましくは20モル%以下であって、更には5モル%以下で用いることが好ましく、特にポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表されるもの以外の、構造内に芳香族環を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まないことが好ましい。
[ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合]
本発明において、ポリカーボネート樹脂に含まれる前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合は、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下である。該構造単位の含有割合が過度に少ないと、耐熱性が小さく、表面硬度が劣る可能性がある。また、該構造単位の含有割合が過度に多いと、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が過度に高くなって成形が困難になったり、吸水率が悪化する場合がある。
また、ポリカーボネート樹脂が、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物及び前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有する場合、その含有割合は、ポリカーボネート樹脂に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して、0.1重量%以上20重量%未満、好ましくは0.1重量%以上18重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以上15重量%以下が適当である。前記式(4)から(8)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を、ポリカーボネート樹脂中に上記下限値以上含むことにより、該ポリカーボネート樹脂を溶融し成形する際に、熱による異物や気泡の発生を防止したり、ポリカーボネート樹脂の着色を防止したりすることができる。ただし、該構造単位が過度に多いと、成形品にした際に耐光性が低下する傾向がある。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造に使用される全てのジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤または熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよい。特に酸性下で本発明の特定ジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから
、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩および脂肪酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよびアミノキノリン等のアミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。これらの安定剤の中でも安定化の効果からはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、イミダゾールまたはヒンダードアミン系化合物が好ましい。
これら塩基性安定剤の、本発明で用いる全てのジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、本発明で用いる前記の特定ジヒドロキシ化合物は酸性状態では不安定であるので、上記の安定剤を含む特定ジヒドロキシ化合物の水溶液のpHが7付近となるように安定剤を添加することが好ましい。
安定剤の量が少なすぎると特定ジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると特定ジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、本発明で用いるそれぞれのジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
これら塩基性安定剤を本発明で用いるジヒドロキシ化合物に含めたままポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度または品質の制御が困難になるだけでなく、樹脂色相の悪化を招いてしまう。
このため、特定ジヒドロキシ化合物または前記その他のジヒドロキシ化合物のうち塩基性安定剤を含有するものについては、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂または蒸留等で除去することが好ましい。
また、本発明で用いられる特定ジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管または製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。
(炭酸ジエステル)
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述した特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得るこ
とができる。用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(10)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 2015187204
上記式(10)において、AおよびAは、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、AとAとは同一であっても異なっていてもよい。AおよびAの好ましいものは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、より好ましいのは無置換の芳香族炭化水素基である。
前記式(10)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(DPC)およびジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート並びにジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。中でも好ましくはジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、不純物が重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
<エステル交換反応触媒>
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述したジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造される。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。
前記エステル交換反応の際には、エステル交換反応触媒存在下で重縮合を行うが、本発明のポリカーボネート樹脂の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に触媒、重合触媒と言うことがある)は、反応速度または重縮合して得られるポリカーボネート樹脂の品質に非常に大きな影響を与え得る。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネート樹脂の透明性、色相、耐熱性、耐候性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されない。例えば、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物およびアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
前記の1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安
息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩および2セシウム塩等が挙げられる。中でも重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、リチウム化合物が好ましい。
前記の2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物またはバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
なお、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
前記の塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンおよび四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
前記の塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
前記のアミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリンおよびグアニジン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmolが好ましく、より好ましくは0.5μmol〜100μmolであり、特に1μmol〜50μmolが好ましい。
中でも長周期型周期表における2族からなる群及びリチウムより選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/またはカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上が好ましく、より好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上とする。また上限としては、20μmol以下が好ましく、より好ましくは
10μmol以下であり、さらに好ましくは5μmol以下で、特に好ましくは3μmol以下である。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ようとするにはその分だけ重合温度を高くせざるを得なくなる。そのために、得られたポリカーボネート樹脂の色相が悪化する可能性が高くなり、また、未反応の原料が重合途中で揮発してジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、好ましくない副反応を併発し、得られるポリカーボネート樹脂の色相の悪化または成形加工時の樹脂の着色を招く可能性がある。
ただし、1族金属の中でもナトリウム、カリウムまたはセシウムは、ポリカーボネート樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料または反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、ポリカーボネート樹脂中のこれらの金属の化合物の合計量は、金属量として、1重量ppm以下であることが好ましく、さらには0.5重量ppm以下であることが好ましい。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂は、特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られる。
原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色相や熱安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂の原料である特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと混合する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001vol%〜10vol%、中でも0.0001vol%〜5vol%、特には0.0001vol%〜1vol%の雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂を得るためには、反応に用いる特定ジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルを炭酸ジエステルを0.94〜1.04のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.98〜1.02、より好ましくは1.00〜1.01のモル比率である。このモル比率が小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂の末端フェニル基が減少して、成形の際の外観不良が発生しやすくなる。
また、このモル比率が大きくなると、エステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネート樹脂の製造が困難となる場合がある。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂の色相や耐候性を悪化させる可能性がある。さらには、特定ジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られるポリカーボネート樹脂中の残存炭酸ジエステル量や化合物(3)が増加し、成形時の汚れや臭気、外観不良の問題を招く場合がある。
本発明において、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよいが、より少ない熱履歴でポリカーボネート樹脂が得られ、生産性にも優れている連続式が好ましい。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重合速度の制御や得られるポリカーボネート樹脂の品質の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることが有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、逆に低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的なポリカーボネート樹脂の色相を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。本発明のポリカーボネート樹脂は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制することが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造に使用される反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは4つである。本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
本発明において、重合触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、重合槽に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、重合槽に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の温度としては、130〜210℃、好ましくは150〜205℃、更に好ましくは170〜200℃である。
また、反応系の圧力としては、1〜110kPa、好ましくは5〜70kPa、さらに好ましくは7〜30kPa(絶対圧力)の圧力下、反応時間を0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施され
る。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除く。とくに化合物(3)の除去のためには第2段目以降は15KPa以下にし、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を600Pa以下にして、内温の最高温度190〜240℃、好ましくは1950〜235℃で、通常0.1〜5時間、好ましくは1〜4時間、特に好ましくは0.5〜3時間行う。
所定の分子量のポリカーボネート樹脂を得るために、重合温度を高く、重合時間を長くし過ぎると色調が悪化する傾向にある。特にポリカーボネート樹脂の着色や熱劣化を抑制し、色相の良好で化合物(3)の含有量が少ないポリカーボネート樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度が240℃未満、特に210〜235℃であることが好ましい。
また、全反応段階における内温が210℃以上240℃以下である時の反応時間が3時間未満であることが、ポリカーボネート樹脂の着色や熱劣化を抑制でき色相の良好なポリカーボネート樹脂を得、更に化合物(3)の発生量を抑えることができるため好ましく、2.5時間以内であることが特に好ましい。
また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れ、化合物(3)の除去に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
押出機を使用した場合、押出機において、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練を行うこともできる。
押出機中の溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは220〜270℃である。溶融混練温度が200℃より低いと、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネート樹脂の熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生や化合物(3)の発生を招く。
このようにして得られた本発明のポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。還元粘度の測
定方法の詳細は実施例の項で記載する。
[ポリカーボネート樹脂の添加剤]
<リン系化合物>
本発明のポリカーボネート樹脂には、重合触媒を失活させ、さらに高温下でのポリカーボネート樹脂の着色を抑制するために添加された、リン系化合物を含有することが好ましい。このリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。上記の中でも触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているのは、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステルであり、特にホスホン酸エステルが好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル、(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p−メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert−ブチル、(4−クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、またはジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
脂肪族環状亜リン酸エステルは、リン原子を含む環状構造中に芳香族基を含まない亜リン酸エステル化合物と定義する。例えば、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマーなどジヒドロキシ化合物とペンタエリスリトールジホスファイトからなるポリマー型の化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
前記リン系化合物の含有量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえってポリカーボネート樹脂が着色してしたり、湿熱条件での着色が発生したりするので、リン系化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂中のリン原子の含有量として0.02重量ppm以上、0.7重量ppm以下とすることが好ましく、さらには0.05重量ppm以上、0.65重量ppm以下が好ましく、特には0.07重量ppm以上、0.60重量ppm以下が好ましい。
前記リン系化合物は通常、三塩化リンを出発原料に用いられるため、未反応物や脱離した塩酸由来の含塩素成分が残存する場合があるが、前記リン系化合物に含有される塩素原子の量は5重量%以下であることが好ましい。塩素原子の残存量が多いと、前記リン系化合物を添加する製造設備の金属部を腐食させたり、ポリカーボネート樹脂の熱安定性を低下させ、着色や熱劣化による分子量低下を促進させる懸念がある。
前記リン系化合物は前述のとおり、押出機を用いてポリカーボネート樹脂に添加、混練されることが好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂を重合後に溶融状態のまま押出機に供給し、ただちに前記リン系化合物を樹脂に添加することが最も効果的である。さらに、触媒を失活させた状態で、押出機で真空ベントにより脱揮処理を行うと、効率的に低分子成分を脱揮除去することができる。
<ヒンダードフェノール化合物>
本発明のポリカーボネート樹脂には、前記リン系化合物に加えて、ヒンダードフェノール化合物も含有することで、ポリカーボネート樹脂のさらなる色調向上が期待できる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−t
ert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3
,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂の上記のヒンダードフェノール化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.001重量部〜1重量部が好ましく、0.005重量部〜0.5重量部がより好ましく、0.01重量部〜0.3重量部がさらに好ましい。
なお、ヒンダードフェノール化合物や以下の酸化防止剤についても、リン系化合物と同様に、押出機を用いてポリカーボネート樹脂に添加、混練されることが好ましい。
<酸化防止剤>
本発明のポリカーボネート樹脂には、酸化防止の目的で、通常知られている酸化防止剤を添加することもできる。
酸化防止剤としては、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
これらの酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.0001重量部〜0.1重量部が好ましく、0.0005重量部〜0.08重量部がより好ましく、0.001重量部〜0.05重量部がさらに好ましい。
[ブルーイング剤]
本発明のポリカーボネート樹脂においては、ブルーイング剤を含有することもできる。
本発明で用いるブルーイング剤は、通常ポリカーボネート樹脂組成物に使用されるブルーイング剤等から適宜選択し、その配合量を調整して使用すればよく、複数種のブルーイング剤を使用してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂におけるブルーイング剤の含有量は、通常、ポリカーボネート樹脂(A)を100重量部とした場合、好ましくは0.1×10−4〜10.0×10−4重量部、より好ましくは0.3×10−4〜5.0×10−4重量部、特に好ましくは0.3×10−4〜2.0×10−4重量部である。
ブルーイング剤の含有量が0.1×10−4重量部以上であれば、本発明のポリカーボネート樹脂プレートの促進耐光性試験前後のYI値を特定の範囲とすることや、b*値を3以下にすることが容易となるため好ましい。一方で、ブルーイング剤の含有量が10.0×10−4重量部以下であれば明度が低下することがないため、L*値を90以上とすることが容易となるため好ましい。
本発明で用いるブルーイング剤としては、ポリカーボネート樹脂組成物に使用されるものを好適に使用することができるが、吸収波長の観点からは、極大吸収波長が好ましくは520〜600nm、より好ましくは540〜580nmの染料が用いられる。
本発明で用いるのに好ましいアンスラキノン系ブルーイング剤の具体例としては、例えば、一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 ランクセス社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]、Solvent Violet14、一般名Solvent Violet31[CA.No68210;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]、Solvent Violet33[CA.No60725;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、Solvent Violet36[CA.No68210;商標名 ランクセス社製「マクロレックスバイオレット3R」]、Solvent Blue45[CA.No61110;商標名 サンド社製「テトラゾールブルーRLS」]、一般名Solvent Blue94[CA.No61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]、一般名Solvent Blue97[ランクセス社製「マクロレックスブルーRR」]、一般名Solvent Blue45、一般名Solvent Blue87および一般名Disperse Violet28が挙げられる。
これらの中でも、一般名Solvent Violet13[ランクセス社製「マクロレックスバイオレットB」]、一般名Solvent Violet36[ランクセス社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名Solvent Blue97[ランクセス社製「マクロレックスブルーRR」]が好ましく、一般名Solvent Violet13[ランクセス社製「マクロレックスバイオレットB」]がより好ましい。中でも特に、下記式(7)で表される構造の染料、すなわち一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 ランクセス社製「マクロレックスバイオレットB」および三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]が好ましい。
Figure 2015187204
本発明においてはまた、ブルーイング剤として、極大吸収波長が好ましくは520〜600nm、より好ましくは540〜580nmの顔料を用いることもでき、上記の染料と顔料を併用することもできる。
本発明において、ブルーイング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、ブルーイング剤の使用量は少ない方が好ましく、使用するブルーイング剤の種類も少ない方が好ましい。
本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)に配合する上記のブルーイング剤の配合時期、配合方法は特に限定されない。配合時期としては、例えば、重合反応前に原料とともに添加しそのまま重合を行う方法、重合反応終了時に配管や押出機で配合する方法、ポリカーボネート樹脂と他の配合剤と溶融混練する際に配合する方法等が挙げられるが、重合反応終了後に溶融混練して配合することが、ブルーイング剤の分散を良くし、b*値とL*値の調節の両立を図りやすいため好ましい。特に重縮合反応終了後に溶融状態のまま押出機に導入し、ブルーイング剤を配合して溶融混練する方法が、熱履歴や酸素混入の影
響を最小限に抑えられるため好ましい。
[ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明のポリカーボネート樹脂は、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
更に、本発明のポリカーボネート樹脂は、これらのその他の樹脂成分と共に樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、衝撃改良剤、加水分解抑制剤、発泡剤、染顔料等を添加してポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。
[ポリカーボネート樹脂押出成形品の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂押出成形品は、上述のポリカーボネート樹脂組成物を押出成形して得られるものであり、光学歪みが小さく、耐燃性、耐光性等に優れたプレートを製造するためには、各種の押出成形法の中でもTダイ押出成形法を選択することが好適である。
具体的な製造方法としては、上記のポリカーボネート樹脂組成物と、必要に応じて更に添加される添加剤、マスターバッチペレット、他種の樹脂ペレット等とを、フィーダーを通して押出機へ供給し、溶融混練し、Tダイによってフィルムまたはシート状に成形しながら押し出す方法が例示できる。この際、押出機やTダイの設定温度は通常210℃以上、270℃以下であることが好ましく、210℃以上、250℃以下であることがより好ましい。
フィルムまたはシートなど所望の形状に成形しながら溶融押出した樹脂は、キャストロールに接触させて冷却し、さらに後段の少なくとも1つの冷却ロールに接触させて冷却しながら引き取ることで、本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムを得ることができる。この際、タッチロール等を用いて、フィルムの表面を平滑化させたり、挟圧してタッチロールとキャストロールのロール間隙で溶融樹脂のバンクを形成させて引取安定性を更に改善したりすることが好ましい。
特に本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムなどにおいて、厚みが厚いものはタッチロールとキャストロールのロール間隙で溶融樹脂のバンクを形成させる手法を採用することが好ましい。
<冷却ロールの表面粗さ>
本発明のポリカーボネート樹脂シートまたはフィルムなどの押出成形に用いる冷却ロールの表面粗さは、製品に求められる粗度から設計すればよいが、高鏡面外観が必要な場合は、例えばJIS B0601(2001年)に準拠して測定した表面の最大高さRzが0.3μm以下である金属製鏡面ロールを用いることが好ましい。
<冷却ロールの設定温度>
本発明のポリカーボネート樹脂シートやフィルムなどの押出成形に用いる冷却ロールの設定温度は、(タッチロールを設置する場合はこれも含め)最上流側の冷却ロールの設定温度t(℃)が全冷却ロールの設定温度の中で最も低く、最下流側の冷却ロールの設定温度t(℃)との間でt<tの関係を有することが好ましい。
中でも、最下流側の冷却ロールの設定温度t(℃)を全冷却ロールの設定温度の中で
最も高くし、最上流側から最下流側に段階的に冷却ロールの設定温度を上昇させることが、安定的にポリカーボネート樹脂プレートを冷却しながら搬送させることができるため特に好ましい。
通常、薄いフィルムやシートであれば、最上流側の冷却ロールの設定温度t(℃)を最も高くすることが一般的であるが、本発明のポリカーボネート樹脂プレートは厚みDが5mm以上と非常に厚いため、最上流側の冷却ロールの設定温度t(℃)が最も低いことにより、多量に吐出される溶融樹脂を効率的に冷却することが可能となり、前記の通りタッチロールとキャストロールのロール間隙に溶融樹脂のバンクを形成させる場合であっても、溶融樹脂が熱劣化するおそれが少なくなる。
一方、最下流側の冷却ロールの設定温度t(℃)をt(℃)より高くしておくことにより、非常に厚いシートを下流側の冷却ロールに密着させながら搬送し、本発明のポリカーボネート樹脂シートを安定的に引き取ることが可能となるほか、最上流側のロールで冷やされた成形品の残存歪みを解消したり、そりを低減させたりすることができる。
<リップ間隔>
本発明においては、樹脂吐出量も多くなると、押出機からTダイにかけての過剰な剪断発熱や樹脂劣化のおそれがでてくる。この場合、ギアポンプを設置する等により整流化された溶融樹脂がTダイのリップで過剰に圧縮されることは好ましくなく、製品厚みを増すにつれてリップ間隔も広げることが効果的である。すなわち、前記押出成形に用いる冷却ロールとして、最上流側にタッチロールを設け、このタッチロールの下流側にキャストロールを設け、押出成形において用いるTダイのリップ間隔が、該タッチロールと該キャストロールとのロール間隔の1.0倍以上であることが好ましく、特に1.5倍以上とすることが好ましい。なお、この上限は通常3.0倍である。
なお、該タッチロールと該キャストロールとのロール間隔は、通常、成形される本発明のポリカーボネート樹脂プレートの厚みDと同じであることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムやシートでは、後述の如く、厚みの均一性に優れる必要がある。この厚み精度を向上させる手段の一つとして、前記押出機と前記Tダイとの間に、出口側樹脂圧力変動が30分あたり1〜10%となるよう、ギアポンプを設けて、本発明のポリカーボネート樹脂プレートを製造することが好ましい。通常単軸または二軸押出機はスクリュー回転による押出脈動が生じるため、これに同調してフィルムやプレートの厚み変動が生じる。このため2ギア式ポンプまたは3ギア式ポンプ等を設けることで、押出脈動を相殺させることが好ましい。
また、ギアポンプの出口側樹脂圧力変動が30分あたり1〜10%であることにより、シートやフィルムの流れ方向の厚みが急激に変化することがなく、また押出運転中の微調整により厚み制御をしやすくなる利点もある。
<押出機>
押出機中の溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは220〜270℃である。溶融混練温度が200℃より低いと、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネート樹脂の熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招き、シートやフィルムの気泡発生の原因になる。また、上記の通り重縮合させて得られたポリカーボネート樹脂中には、通常、色相または熱安定性、さらにはブリードアウト等により製品に悪影響を与える可能性のある、原料モノマー、エステル交換反応で副生するモノヒドロキシ化合物、またはポリカーボネート樹脂オリゴマー等の低分子量化合物が残存しているが、ベント口を有する押出機を用い、好ましくはベント口から真空ポ
ンプ等を用いて減圧にすることにより、これらを脱揮除去することも可能である。また、押出機内に水等の揮発性液体を導入して、脱揮を促進することもできる。ベント口は1つであっても複数であってもよいが、好ましくは2つ以上である。
<蛍光灯下での色変化>
化合物(1)を含むポリカーボネート樹脂成形体は、触媒種や触媒失活剤を選択すること
により、驚くべきことに蛍光灯や太陽光などに長時間照射されると黄色身が少なくなる場合がある。この場合、成形時の色目と成形体設置後の色目が変化するということであり、変化が小さい場合には問題とならないが、変化が度合いが大きい場合は成形品の色調が変化しているということであり問題となる可能性がある。例えば、フィルム0.1mmの成形体において、蛍光灯の下240時間放置後のYIの変化が0.5以上あると色目が大きく変化したと認識される。そこで、変化幅としては、0.5未満が好ましく、より好ましくは0.4未満である。また、0より大きい変化をする場合は、黄色身が強くなり、設置後の外観が悪くなるということであり、好ましくない。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[評価方法]
以下において、ポリカーボネート樹脂の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のサンプルを塩化メチレンに溶解させ、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式(i)より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrelから次式(ii)より比粘度ηspを求めた。
ηrel=t/t ・・・(i)
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1 ・・・(ii)
比粘度ηspを濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
ポリカーボネート樹脂ペレット約30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解させ溶液とし、1,1,2,2−テトラブロモエタンを内標として既知量添加し、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子(株)製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温でH NMRスペクトルを測定し、内標と末端フェニル基、末端二重結合に基づくシグナル強度比より求めた。
ポリカーボネート30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、H NMRスペクトルを測定した。各末端基と各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナルの強度比より末端フェニル基、末端ヒドロキシ基、および末端二重結合の量を定量した。用いた装置や条件は、次のとおりである。
フェニル基末端割合(%)=〔末端基式(α)存在数/全末端存在数〕×100
・装置:日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)
・測定温度:常温
・緩和時間:6秒
・積算回数:512回
(2)ポリカーボネート樹脂の成形、および色調の測定
ポリカーボネート樹脂のペレットを90℃で5時間以上、真空乾燥した。乾燥したポリカーボネート樹脂のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、最終シリンダーの温度を250℃、成形サイクル23秒間の条件でプレート型の射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形する操作を繰り返した。10ショット目以降、シリンダー内の樹脂の滞留時間は4分となる。10ショット目〜60ショット目で得られた射出成形片の厚み方向での透過光におけるイエローインデックス(YI)値を後述のとおり測定し、平均値を算出した。
得られたプレートの色調はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、ASTM D1925に準拠して測定を行った。前述の射出成形で得られたプレートを測定室に置き、透過光のYI値を測定した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示す。なお、成形直後はプレートの色調が不安定のため、成形後1日以上経過した後に色調測定を行う。また、比較に用いるプレートは同一条件下で保管し、同時に測定した数値を用いる。
(3)ポリカーボネート樹脂ペレットの色調の測定
ポリカーボネート樹脂ペレットの色相は、ASTM D1925に準拠して、コニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、反射光で測定を行った。測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。ペレットのYIの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定した。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
(4)フィルム成形
ポリカーボネート樹脂組成物をベント付きニ軸押出機((株)日本製鋼所 製 TEX30α、シリンダー設定温度:240℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:100〜120℃)及び巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み100μmのフィルムを20時間連続で製造した。
(5)ロール汚染
上記製造後、目視にてチルロールの汚染状況を確認した。
(6)ベント閉塞
運転中に押出機のベントが閉塞していた場合 ×
運転後にベント配管中に閉塞物が確認された場合 △
運転後にベント配管中に閉塞物が無かった場合 ○
(7)フィルム YI
上記製造フィルムをASTM D1925に準拠して、コニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い透過光で測定を行った。
(8)フィルム気泡
上記製造フィルム中を外観で確認し、気泡状の欠点が発生した場合は、「有」と評価した。
(9)蛍光灯下処理
相対湿度50%の環境下にて、三菱オスラム ラビットスター形FLR40SW/Mの2本蛍光灯下2mに240時間静置した。
(10)モノヒドロキシ化合物と下記式(3)で表される化合物の含有量の測定
ポリカーボネート樹脂試料約1gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解して溶液とした後、総量が25mLになるようにアセトンを添加して再沈殿処理を行った。次いで、該処理液を0.2μmディスクフィルターで濾過して、液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
Figure 2015187204
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号、および製造元は次の通りである。
<ジヒドロキシ化合物>
・ ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製]
・ CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール[SKChemical社製]
・ TCDDM:トリシクロデカンジメタノール[OXEA社製]
<炭酸ジエステル>
・ DPC:ジフェニルカーボネート[三菱化学(株)製]
<ヒンダードフェノール化合物>
・ Irganox1010:ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][BASF社製]
<リン系化合物>
・ 亜リン酸[太平化学産業(株)製](分子量82.0)
・ AS2112:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト[(株)ADEKA製](分子量646.9)
・ アデカスタブPEP−36:ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト)(株式会社アデカ製)
塩素原子の含有量が5重量%以下であるものを用いた。
[実施例1]
竪型攪拌反応器3器と横型攪拌反応器1器、並びに二軸押出機からなる連続重合設備を用いて、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。ISBとCHDMとDPCをそれぞれタンクで溶融させ、モル比ISB/CHDM/DPC=0.700/0.300/1.010で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給した。同時に、触媒として酢酸カルシウム1水和物の水溶液を全ジヒドロキシ化合物1molに対して1.5μmolとなるように第1竪型攪拌反応器に供給した。第1竪型攪拌反応器での平均滞留時間が90分となるように、反応器底部の移送配管に設けられたバルブの開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。反応器底部より排出された反応液は、引き続き第2竪型攪拌反応器、第3竪型攪拌反応器、第4横型攪拌反応器[(株)日立プラントテクノロジー社製2軸メガネ翼]に逐次連続供給された。第1竪型攪拌反応器と第2竪型攪拌反応器は還流冷却器を具備しており、還流比を調節することで、未反応のジヒドロキシ化合物とDPCの留出を抑制した。
各反応器の反応温度、内圧、滞留時間はそれぞれ、第1竪型攪拌反応器:190℃、2
5kPa、90分、第2竪型攪拌反応器:195℃、10kPa、45分、第3竪型攪拌反応器:210℃、3kPa、45分、第4横型攪拌反応器:230℃、0.5kPa、90分とした。得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.61dL/gから0.64dL/gとなるように、第4横型攪拌反応器の内圧を微調整しながら運転を行った。
第4横型攪拌反応器より連続的にポリカーボネート樹脂を抜き出し、続いて樹脂を溶融状態のまま二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30α]に供給した。押出機は3つの真空ベント口を有しており、樹脂中の残存低分子成分を脱揮除去した。第2ベントの手前で水を樹脂に対して2000重量ppm加えて、注水脱揮を行った。押出機(全10バレル)はシリンダー温度を220℃、スクリュー回転数を230rpmに設定した。押出機出口での樹脂温度は262℃であった。
押出機を通過したポリカーボネート樹脂は、引き続き溶融状態のままフィルターを通して異物を濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転式カッターでペレット化した。
ポリカーボネート樹脂組成物をベント付きニ軸押出機((株)日本製鋼所 製 TEX30α、シリンダー設定温度:240℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:90〜120℃)及び巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み100μmのフィルムを20時間連続で製造した。結果を表1に示す。運転後にベントの閉塞物は確認されたものの、製膜中は良品を得ることが出来た。また、亜リン酸による触媒失活効果が無いために、蛍光灯下処理前と処理後のフィルムYIは変化なかった。
[実施例2]
第1ベント口の手前から亜リン酸をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対して亜リン酸を0.65ppm(リン原子の量として0.2ppm)添加した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すようにベントの閉塞やフィルムでの気泡発生、ロール汚れなどなく品質の良いフィルムを得ることが出来、また設蛍光灯下処理前と処理後のYI(色調)変化も良好であった。
[実施例3]
第4横型攪拌反応器の温度を225℃とし、第1ベント口の手前から亜リン酸をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対して亜リン酸を0.65ppm(リン原子の量として0.2ppm)添加し、押出機での注水量を4000重量ppmとした以外は実施例1と同様に行った。表1に示すようにベントの閉塞やフィルムでの気泡発生、ロール汚れなどなく品質の良いフィルムを得ることが出来、また蛍光灯下処理前と処理後のYI(色調)変化も良好であった。
[実施例4]
モル比ISB/CHDM/DPC=0.700/0.300/1.012で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すように運転後にベントの閉塞物は確認されたものの、製膜中は良品を得ることが出来た。また、亜リン酸による触媒失活効果が無いために、蛍光灯下処理前と処理後のYIが若干上昇していた。
[実施例5]
モル比ISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.004で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給し、第1ベント口の手前から亜リン酸をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対して亜リン酸を1.50ppm(リン原子の量として0.6ppm)添加した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すようにベントの閉塞やフィルムでの気泡発生、ロール汚れなどなく品質の良いフィルムを得ることが出来
、また蛍光灯下処理前と処理後のYI(色調)変化も良好であった。
[実施例6]
モル比ISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.006で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給し、第1ベント口の手前から亜リン酸をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対して亜リン酸を0.65ppm(リン原子の量として0.2ppm)添加した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すように化合物(3)や残存するフェノールが多いために運転後のベントに閉塞物が確認されたが、フィルムでの気泡発生、ロール汚れなどなく品質の良いフィルムを得ることが出来、また蛍光灯下処理前と処理後のYI(色調)変化も良好であった。
[実施例7]
モル比ISB/CHDM/DPC=0.600/0.400/1.008で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給し、第1ベント口の手前から亜リン酸をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対して亜リン酸を0.65ppm(リン原子の量として0.2ppm)添加した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すようにベントの閉塞やフィルムでの気泡発生、ロール汚れなどなく品質の良いフィルムを得ることが出来、また蛍光灯下処理前と処理後のYI(色調)変化も良好であった。
[実施例8]
モル比ISB/TCDDM/DPC=0.700/0.300/1.004で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給し、第1ベント口の手前から亜リン酸をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対して亜リン酸を0.65ppm(リン原子の量として0.2ppm)添加した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すように化合物(3)や残存するフェノールが多いために運転後のベントに閉塞物が確認されたが、フィルムでの気泡発生、ロール汚れなどなく品質の良いフィルムを得ることが出来、また蛍光灯下処理前と処理後のYI(色調)変化も良好であった。
[比較例1]
モル比ISB/CHDM/DPC=0.700/0.300/1.000で、触媒として酢酸カルシウム1水和物の水溶液を全ジヒドロキシ化合物1molに対して1.25μmolとなるように、第1竪型攪拌反応器に連続的に供給し、各反応器の反応温度、内圧、滞留時間はそれぞれ、第1竪型攪拌反応器:188℃、24.2kPa、90分、第2竪型攪拌反応器:194℃、19.9kPa、60分、第3竪型攪拌反応器:214℃、9.9kPa、60分、第4横型攪拌反応器:225℃、0.1kPa、120分とし、押出機はシリンダー温度を前半4つのバレルは240℃、後半6つのバレルは195℃、スクリュー回転数を225rpmに設定した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すように残存する化合物(3)が多いためにロールの汚染が発生し、良品を連続的に得ることが困難となった。また、初期色調が悪いために、蛍光灯下処理前と処理後のYI変化が大きすぎる結果となった。
[比較例2]
ISB/CHDM/DPCのモル比が0.500/0.500/1.000、触媒として酢酸カルシウム1水和物の水溶液を全ジヒドロキシ化合物1molに対して1.25μmolとなるように第1竪型攪拌反応器に供給し、各反応器の反応温度、内圧、滞留時間はそれぞれ、第1竪型攪拌反応器:190℃、25kPa、90分、第2竪型攪拌反応器:196℃、17.7kPa、60分、第3竪型攪拌反応器:215℃、6.9kPa、60分、第4横型攪拌反応器:225℃、0.9kPa、120分とし、押出機はシリンダー温度を前半4つのバレルは240℃、後半6つのバレルは180℃、スクリュー回転数を225rpmに設定した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すように末端OH
が75%未満であり、成形品での気泡が発生し、ベント閉塞物も確認された。
[比較例3]
モル比ISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.050で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給し、第4横型攪拌反応器の温度を235℃、120分とし、第1ベント口の手前から亜リン酸をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対して亜リン酸を0.65ppm(リン原子の量として0.2ppm)添加した以外は実施例1と同様に行った。表1に示すように、化合物(3)や残存フェノールが多く、ベント閉塞やロール汚染が発生した。
[比較例4]
モル比ISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.000で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給し、第4横型攪拌反応器の温度を220℃、190分とした以外は実施例1と同様に行った。DPCのモル比が少ない設定であったために、式(3)で表される化合物の発生は抑えられたが、フェニル末端も少ないために成形の際に気泡が発生し、さらに滞留時間が長いために初期色調が悪化し、蛍光灯下処理前と処理後のYI(色調)変化が0.5と大きくなった。
[比較例5]
竪型攪拌反応器並びに二軸押出機からなる回分式重合設備を用いて、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。ISBとTCDDMとDPCをそれぞれタンクで溶融させ、ISBをモル比ISB/TCDDM/DPC=0.700/0.300/1.058で第1竪型攪拌反応器に供給した。同時に、触媒として炭酸セシウムの水溶液を全ジヒドロキシ化合物1molに対して炭酸セシウムが1.25μmolとなるように第1竪型攪拌反応器に供給した。反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、撹拌しながら、原料を15分間溶解させ、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。120分後、所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、反応器より連続的にポリカーボネート樹脂を抜き出し、続いて樹脂を溶融状態のまま二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30α]に供給した。第1ベント口の手前からp−トルエンスルホン酸ブチルをまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対してp−トルエンスルホン酸ブチルを6ppm添加し、イルガノックス1010 1000ppm、PEP−36 100ppm
、AS2112 500ppm添加した。押出機は3つの真空ベント口を有しており、樹
脂中の残存低分子成分を脱揮除去した。押出機(全10バレル)はシリンダー温度を220℃、スクリュー回転数を230rpmに設定した。押出機出口での樹脂温度は262℃であった。
押出機を通過したポリカーボネート樹脂は、引き続き溶融状態のままフィルターを通して異物を濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転式カッターでペレット化した。
最終段階で240℃の高温で120分間重合させたために、同じTCDDMを用いた実施例8よりも色調が悪化した。また、触媒に炭酸セシウム、失活剤にトルエンスルホン酸を用いていることから、設置後の色調変化は増加してしまい外観不良が発生する結果となった。さらに、竪型重合槽であるために、フェノールや式(3)で表される化合物が多く残存することとなり、ロール汚染やベントの閉塞が発生した。
Figure 2015187204
本発明によれば、色相、透明性、耐熱性、耐候性、及び機械的強度に優れ、電気・電子部品、自動車用部品、ガラス代替用途等の射出成形分野、フィルム、シート分野、ボトル、容器分野、さらには、カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレンズ用途、液晶や有機ELディスプレイなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルムなどのフィルム、シート、光ディスク、光学材料、光学部品、色素及び電荷移動剤等を固定化するバインダー用途といった幅広い分野へ適用可能なポリカーボネート樹脂を提供することができ、さらに、残存低分子成分が少ないことにより、上記
のような製品を成形する際に、成形機の汚れや臭気などが抑制され、生産性や作業性を向上させることが可能になる。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物を成形してなる押し出し成型品であり、
    下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が75%以上98%未満の範囲であり、
    下記式(3)で表される化合物の含有量が10重量ppm以上700重量ppm以下であり、
    炭酸ジエステルに由来するモノヒドロキシ化合物の含有量が700重量ppm以下であるポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする押出成形品。
    Figure 2015187204
  2. ポリカーボネート樹脂のペレットのYIが15以下であることを特徴とする請求項1に記載の押出成形品。
  3. ポリカーボネート樹脂組成物がリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物をリン原子の量として0.7重量ppm以下含有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の押出成形品。
  4. 成形された成形体(厚さ0.1mm)を23℃、相対湿度50%の環境下にて、蛍光灯下2mに240時間静置した後に、該成形体を透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値が処理前のYIに対して、−1以上0以下の変化であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の押出成形品。
  5. 押出成形品がシートまたはフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の押出成形品。
  6. 積層体シートまたはフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の押出成形品。
  7. 射出成形用加飾シートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の押出成形品。
  8. 導光板基材フィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の押出成形品。
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