JP5870515B2 - ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来のポリカーボネート樹脂に使用されるビスフェノール化合物は、芳香族環構造を有するために紫外線吸収が大きい。このため、ポリカーボネート樹脂の耐光性悪化を招き、長時間紫外線または可視光に曝露される場所で使用すると、色相、透明性または機械的強度が悪化するため、屋外または照明装置の近傍での使用に制限があった。
また、ポリカーボネート樹脂として、分子骨格中に芳香族環構造を持たない脂肪族ジヒドロキシ化合物のモノマーユニット若しくは脂環式ジヒドロキシ化合物のモノマーユニット、またはイソソルビドのように分子内にエーテル結合を持つ環状ジヒドロキシ化合物のモノマーユニットを有するポリカーボネート樹脂を使用すれば、原理的には耐光性が改良されることが期待される。
また、前記の脂肪族ジヒドロキシ化合物若しくは脂環式ジヒドロキシ化合物、またはイソソルビドのように分子内にエーテル結合を持つ環状ジヒドロキシ化合物は、フェノール
性水酸基を有しないため、ビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂の製法として広く知られている界面法で重合させることは困難であり、通常、エステル交換法または溶融法と呼ばれる方法で製造される。この方法では、前記ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルとを塩基性触媒の存在下、200℃以上の高温でエステル交換させ、副生するフェノール等を系外に取り除くことにより重合を進行させ、ポリカーボネート樹脂を得る。
ところで、ポリカーボネート樹脂は色相を改善するためにブルーイング剤を用いる方法が知られている。しかしながら、一般的にブルーイング剤を混合する前のポリカーボネート樹脂の色相が悪い場合は、ブルーイング剤を混合し色相を改善したとしても、明度が悪化してしまうという問題があった。
本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性および機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
1.構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)100重量部と、ブルーイング剤0.1×10−4重量部以上10.0×10−4重量部以下とを含むポリカーボネート樹脂組成物であって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された成形体(厚さ3mm)を、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に、透過光で測
定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値が12以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2.前記ポリカーボネート樹脂(A)の含む構造単位の由来となる、前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であって、該式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、ポリカーボネート樹脂(A)中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して15モル%以上90モル%未満である、前項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5.前記ブルーイング剤が、下記式(3)で表される化合物である、前項1から前項4のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
6.ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、ヒンダードアミン系安定剤を0.0001重量部以上1重量部以下含有する、前項1から前項5のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
7.ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、酸化防止剤を0.0001重量部以上1重量部以下含有する前項1から前項6のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
8.前項1から前項7のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるポリカーボネート樹脂成形品。
1.ポリカーボネート樹脂組成物
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物(I)およびポリカーボネート樹脂組成物(II)(以下、それぞれ本発明のポリカーボネート樹脂組成物ともいう)を提供する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(I)は、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂を含有するものであって、ポリカーボネート樹脂組成物(I)から成形された成形体(厚さ3mmの平板)を、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドラ
ンプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70(1988年)に準拠したイエローインデックス(YI)値が12以下、好ましくは10以下、特に好ましくは8以下であることを特徴とする。
前記メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に測定したASTM D1925−70(1988年)に準拠したイエローインデックス(YI)値が12を超えると、ポリカーボネート樹脂組成物(I)の成形直後には着色がなくても、紫外光を含む光線に成形体が曝露されると着色する場合がある。この問題は、意外にもエステル交換反応(重縮合反応)で受ける熱履歴、使用する触媒、含まれる金属成分または特定の分子構造を持つ物質の含有量等を制御することにより解決できる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物(I)は、該樹脂組成物から成形された成形体(厚さ3mmの平板)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上であることが好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。該波長における光線透過率を30%以上とすることにより、耐光性を向上することができる。
1−2.ポリカーボネート樹脂組成物(II)
構造の一部に下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂(A)と、ブルーイング剤とを含有するポリカーボネート樹脂組成物
であって、そのポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ2mmの成形体のb*値が−1以上1以下、かつ、L*値が96.15以上であることを特徴とする。
前記b*値またはL*値は、国際照明委員会(CIE)が策定した、人間の目で見える全ての色を3つの座標[CIE L*a*b*(CIELAB)]で表現したときの、2つの座標である。
上記のようなポリカーボネート樹脂組成物(I)または(II)であれば、本発明の効果を奏する。上記のようなポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、触媒の種類と量を適宜選択する、重合時の温度および時間を適宜選択する、樹脂中の紫外線吸収能を有する化合物、例えば、残存フェノールまたは残存ジフェニルカーボネートを減らす、原料モノマーとして紫外領域に吸収を持つ物質の使用量を減らす、および原料中の不純物として含まれる紫外領域に吸収を持つ物質の使用量を減らす等して製造することができる。特に、触媒の種類および量、並びに重合時の温度および時間が重要である。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂(A)を製造するための方法について詳述する。本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、以下に詳述する本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られる。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(以下、「本発明のジヒドロキシ化合物」と称することがある。)に由来する構造単位を少なくとも含む。即ち、本発明のジヒドロキシ化合物は、2つのヒドロキシル基と、更に下記一般式(1)の構造単位を少なくとも含むものを言う。
本発明のジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に上記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物であれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、並びに下記一般式(4)または(5)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。これらは得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リマーの耐熱性が劣り成形材料として使用が困難な場合がある。そのため、その他のジヒドロキシ化合物を用いることにより、ポリカーボネート樹脂の柔軟性の改善または成形性の改善などの効果を得ることも可能となる。しかし、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下または耐熱性の低下を招くことがある。
ないジヒドロキシ化合物、即ち脂肪族ジヒドロキシ化合物および脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましく、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩または脂肪酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、並びに4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよびアミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
酸素によって徐々に酸化されやすい。そのため、保管または製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱うことが好ましい。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。例えば、これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂の着色を招く可能性があり、又、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もあり、好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述した本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(6)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記一般式(6)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述のように本発明のジヒドロキシ化合物を
含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応させてポリカーボネート樹脂を製造する。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。
用いられる触媒としては、耐光性を満足させ得る、即ち上記した波長350nmにおける光線透過率またはイエローインデックスを所定の値にし得るものであれば、限定されない。例えば、長周期型周期表における第1族または第2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物およびアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、好ましくは1族金属化合物および/又は2族金属化合物を使用する。
また、1族金属化合物および/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩および酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
リカーボネート樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物およびカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂中の金属量は、湿式灰化などの方法でポリカーボネート樹脂中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光またはInductively Coupled
Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
更には、本発明のジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られるポリカーボネート樹脂(A)中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収してポリカーボネート樹脂(A)の耐光性を悪化させる場合があり、好ましくない。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが色相または耐光性の観点から重要である。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下または製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂の分解または着色を助長する可能性がある。
0〜270℃、より好ましくは180〜240℃、更に好ましくは200〜230℃で、好ましくは110〜1kPa、より好ましくは70〜5kPa、更に好ましくは30〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施する。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルまたはビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化する。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度または分子量に依存するが、通常150〜300℃であることが好ましく、より好ましくは200〜270℃、更に好ましくは230〜260℃である。溶融混練温度を150℃以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を低くし、押出機への負荷が小さくなり、生産性が向上する。300℃以下とすることにより、ポリカーボネートの熱劣化を抑え、分子量の低下による機械的強度の低下、着色またはガスの発生を防ぐことができる。
ラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが好ましい。
また、押出されたポリカーボネート樹脂(A)を冷却しチップ化する際は、空冷または水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが好ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが好ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上が好ましく、0.35dL/g以上がより好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
尚、還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
下記一般式(7)で表される末端基の濃度を制御するには、原料である本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類若しくは量、重合圧力または重合温度を制御する方法等が挙げられる。
用いて、好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特には300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、工業的に完全に除去することは困難であり、芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限値は、通常1重量ppmである。
また、本発明のポリカーボネート樹脂(A)の芳香環に結合したHのモル数を(A)、芳香環以外に結合したHのモル数を(B)とした場合、芳香環に結合したHのモル数の全Hのモル数に対する比率は、A/(A+B)で表されるが、耐光性には上述のように、紫外線吸収能を有する芳香族環が影響を及ぼす可能性があるため、A/(A+B)は0.1以下であることが好ましく、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.02以下、特に好ましくは0.01以下である。A/(A+B)は、1H−NMRで定量することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリカーボネート樹脂を含有していても構わない。ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリカーボネート樹脂としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類に由来する繰り返し単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類に由来する繰り返し単位を有するポリカーボート樹脂、並びに9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等の側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物に由来する繰り返し単位を有する、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(I)においては、ブルーイング剤は、重合体または紫外線吸収剤に基づく黄色味を打ち消すために配合する。本発明のポリカーボネート樹脂組成物(I)において、ブルーイング剤の添加量は、通常、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.1×10−4〜10.0×10−4重量部の割合で配合されることが好ましい。配合割合が少な過ぎると黄色味の打ち消し効果が少なく、多すぎると明度が低下する傾向となり好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(II)から成形された厚さ2mmの成形体のb*値が−1以上1以下、且つ、L*値が96.15以上になるように調整可能なものであれば、通常ポリカーボネート樹脂組成物に使用されるブルーイング剤から適宜選択し調整して使用すればよく、複数種のブルーイング剤を使用してもよい。
ールメタン系染料、一般名Solvent Blue 25[CA.No74350]に代表されるフタロシアニン系染料および一般名Solvent Violet13[CA.No60725]に代表されるアンスラキノン系染料が挙げられる。これらの中でもアンスラキノン系染料が、入手容易であり好ましい。
ここでアミノ基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基又はアリール基が挙げられる。アミノ基が置換基として有していてもよいアルキル基としては、炭素数が1から6のアルキル基が挙げられ、アミノ基が置換基として有していてもよいアリール基としては、環構造が3以下のアリール基が挙げられる。
本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)に配合する上記のブルーイング剤の配合時期、配合方法は特に限定されない。配合時期としては、例えば、重合反応前に原料とともに添加しそのまま重合を行う方法、重合反応終了時に配管や押出機で配合・混合する方法、ポリカーボネート樹脂と他の配合剤との混練途中等のポリカーボネート樹脂が溶融した状態のときに押出機等を用い配合・混合する方法、ペレット又は粉末等の固体状態のポリカーボネート樹脂とブレンド・混練する方法等が挙げられるが、重合反応終了後に押出機を使って配合・混合することが、ブルーイング剤の分散を良くし、b*値とL*の両立を図りやすいため好ましい。特に重縮合反応終了後に溶融状態のまま押出機に導入し、ブルーイング剤を配合すると熱履歴や酸素混入の影響を最小限に抑えられるため好ましい。
4.その他の添加剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は更に酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤の含有により、本願発明のb*値とL*の両立を図ることが容易になる。ここで、酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、通常0.0001重量部以上1重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.0001重量部以上0.1重量部以下、さらに好ましくは0.0002重量部以上0.01重量部以下である。
の着色や明度の悪化を招くことがある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、さらにヒンダードアミン系安定剤を含有することが好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物におけるヒンダードアミン系安定剤の含有量が過度に少ないと、耐光性の向上効果を十分に得ることができず、また、ヒンダードアミン系安定剤の含有量が過度に多いと、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観が損なわれるおそれがあるだけでなく、ポリカーボネート樹脂の着色や明度の悪化を招くことがある。
ミンの重縮合物等が挙げられる。
本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)に配合する上記のヒンダードアミン系安定剤の配合時期、配合方法は特に限定されない。配合時期としては、例えば、エステル交換法でポリカーボネート樹脂を製造した場合は重合反応終了時;さらに、重合法に関わらず、ポリカーボネート樹脂と他の配合剤との混練途中等のポリカーボネート樹脂が溶融した状態のとき;押出機等を用い、ペレット又は粉末等の固体状態のポリカーボネート樹脂とブレンド・混練する際;等が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には更に酸性化合物を含有していてもよい。酸性化合物の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、少なくとも1種の酸性化合物0.00001重量部以上0.1重量部以下であることが好ましく、より好ましくは、0.0001重量部以上0.01重量部以下、さらに好ましくは0.0002重量部以上0.001重量部以下である。
酸性化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸およびマレイン酸等のブレンステッド酸並びにそのエステル類が挙げられる。
これらの酸性化合物は、上述したポリカーボネート樹脂の重縮合反応において使用される塩基性エステル交換触媒を中和する化合物として、ポリカーボネート樹脂組成物の製造工程において添加することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤を含有することができる。かかる安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.01重量部〜2質量部が好ましい。
100重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以上50重量部以下である。無機充填材の配合量が過度に少ないと補強効果が少なく、また、過度に多いと外観が悪くなる傾向がある。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABSおよびASなどの合成樹脂、ポリ乳酸およびポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、並びにゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。更に、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料等が含まれても差し支えない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐加水分解性に優れる樹脂組成物である。この耐加水分解性は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の初期の還元粘度と、所定の飽和蒸気圧下で所定時間保持する試験を行った後の還元粘度とを、本発明のポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度を測定するのと同様にして測定し、当該還元粘度の変化により評価することができる。
還元粘度保持率(%)={(ηsp/c)2/(ηsp/c)1}×100
(なお、”(ηsp/c)2”は、ポリカーボネート樹脂組成物からなる平板を120℃、0.12MPaの飽和水蒸気下、48時間保持した後の還元粘度を示し、”(ηsp/c)1”は、試験前の還元粘度を示す。)
7.ポリカーボネート樹脂組成物のヘイズ
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、特にサングラス、スポーツ用ゴーグル、眼鏡レンズおよび液体容器などの用途において、ヘイズが製造直後において、10%以下であ
ることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、4%以下であることが特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物のヘイズは、ポリカーボネート樹脂(A)の製造に用いるジヒドロキシ化合物の種類またはポリカーボネート樹脂(A)の分子量等を適宜調節することによって、これら好ましい範囲とすることが可能である。
本実施の形態では、上述したポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品が得られる。ポリカーボネート樹脂成形品の成形方法は特に限定されないが、射出成形法が好ましい。
本発明によれば、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性および機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
(1)酸素濃度の測定
重合反応装置内の酸素濃度を、酸素計(AMI社製:1000RS)を使用し、測定した。
(2)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のサンプルを、溶媒として塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(3)ポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比および末端フェニル基濃度の測定
ポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物構造単位比は、ポリカーボネート樹脂30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、溶液とし、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で1H NMRスペクトルを測定した。各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求め
た。
(4)ポリカーボネート樹脂中の金属濃度の測定
パーキンエルマー社製マイクロウェーブ分解容器にポリカーボネート樹脂ペレット約0.5gを精秤し、97%硫酸2mLを加え、密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱した。室温まで冷却後、68%硝酸1.5mLを加えて、密閉状態にして150℃で10分間マイクロウェーブ加熱した後、再度室温まで冷却を行い、68%硝酸2.5mLを加え、再び密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱し、内容物を完全に分解させた。室温まで冷却後、上記で得られた液を純水で希釈し、サーモクエスト社製ICP−MSで定量した。
ポリカーボネート樹脂試料1.25gを塩化メチレン7mlに溶解し溶液とした後、総量が25mlになるようにアセトンを添加して再沈殿処理を行った。次いで、該処理液を0.2μmディスクフィルターでろ過して、液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、窒素雰囲気下、110℃で10時間乾燥した。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度220℃、成形サイクル23秒間の条件で、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形する操作を繰り返し、10ショット目〜20ショット目で得られた射出成形片の厚み方向での透過光におけるイエローインデックス(初期のYI)値とL*値をカラーテスタ(コニカミノルタ社製CM−3700d)を用いて測定し、平均値を算出した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示し、L*値が大きいほど明度が高いことを示す。
前述したポリカーボネート樹脂組成物の初期色相の評価において、射出成形機による射出成形片の成形サイクルを、20ショット目から60秒とし、30ショット目まで成形操作を繰り返す。そして、30ショット目で得られた射出成形品の厚み方向の透過光におけるYI値(熱滞留試験後のYI値)を、上記カラーテスタを用いて測定した。
上記(6)で得られた射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm、10ショット目〜20ショット目)の厚み方向の光線透過率を、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U2900)を用いて測定し、その平均値を算出し評価した。
(9)芳香環に結合したHのモル数(A)の全Hのモル数(A+B)に対する比(ここで(B)は芳香環に結合していないHのモル数である)
内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)をあらかじめ添加混合した重クロロホルムのみのスペクトルを測定し、TMSと重クロロホルム中に含まれる残存Hのシグナル比を求める。次に、ポリカーボネート樹脂30mgを秤取し、前記重クロロホルム約0.7mLに溶解させた。これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で1H NMRスペクトルを測定した。
よび前記で予め求めたTMSと重クロロホルム中に含まれる残存Hとの比から求める)を差し引いた値をaとする。一方、0.5ppm〜6.5ppmに現れるシグナルの積分値をbとすると、a/(a+b)=A/(A+B)となるので、これを求めた。
スガ試験機社製メタリングウェザーメーターM6Tを用いて、63℃、相対湿度50%の条件下、光源として水平式メタリングランプを、インナーフィルターとして石英を、またランプの周囲にアウターフィルターとして#500のフィルターを取り付け、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kw/m2になるように設定し、上記(6)で得られた20ショット目の平板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の正方形の面に対して、100時間照射処理を行った。照射後のYI値を上記(6)と同様に測定した。
JIS K7105(1981年)に準拠し、分光色差計(日本電色工業(株)製SE2000)を使用し、C光源透過法にて射出成形片(幅40mm×長さ65mm×厚さ2mm)のイエローインデックス(YI)値を測定した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示す。
(12)へイズ
JIS K7105に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製:NDH2000)を使用し、D65光源にて射出成形片のヘイズを測定した。
前記平板を120℃、212kPaの飽和水蒸気下、48時間保持した後の還元粘度[
(ηsp/c)2]を測定し、試験前の還元粘度[(ηsp/c)1]からの保持率を次式より求めた
。
還元粘度保持率(%)={(ηsp/c)2/(ηsp/c)1}×100
(14)サンシャインウェザーメーター照射試験
JIS B7753(2007年)に準拠してスガ試験機(株)製サンシャインウェザーメーターS80を用いて、サンシャインカーボンアーク(ウルトラロングライフカーボン4対)光源で放電電圧50V、放電電流60Aに設定し、照射および表面スプレ(降雨)にてブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件下、射出成形片の平板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の正方形の面に対して、500時間照射処理を行った。表面スプレー(降雨)時間は、12分/1時間とした。ガラスフィルターはAタイプを用いた。照射処理後へイズを測定した。
後述する射出成形片(幅40mm×長さ65mm×厚さ2mm)について、23℃の恒温室内で、測定装置として東洋精機(株)製:鉛筆引掻塗膜硬さ試験機を用い、JIS K5600 5.4(1999年)「引っかき硬度(鉛筆法)」に従い、以下の条件で測定した。
・荷重:750g
・測定スピード:30mm/min
・測定距離:7mm
鉛筆として三菱鉛筆製:UNI(硬度:4H,3H,2H,H,F,HB,B,2B,3B,4B)を用い、5回測定し、2回以上、傷がついた鉛筆硬度のひとつ柔らかい硬度
を射出成形片の鉛筆硬度とした。
・ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)を、窒素気流下、内温160℃、圧力133〜266Paで、初溜を除去し、内温160〜170℃、塔頂温度150〜157℃、133Paで蒸留精製をしたものを用いた。(後留は約10%残した)。
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(新日本理化(株)製、商品名:SKY CHDM)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)
・PC2:(2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造のみを有する芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ノバレックス7022J、粘度平均分子量22,000)
・ブルーイング剤1:Solvent Violet13(ランクセス社製、商品名:マクロレックスバイオレットB、吸収極大波長587nm)
・ブルーイング剤2:Solvent Blue97(ランクセス社製、商品名:マクロレックスブルーRR)・ブルーイング剤3:Solvent Violet36(ランクセス社製、商品名:マクロレックスバイオレット3R、吸収極大波長558nm)
・酸化防止剤1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製、商品名:イルガノックス1010)
・酸化防止剤2:リン系酸化防止剤(BASFジャパン社製、商品名:イルガノックス168)
・安定剤:ヒンダードアミン系安定剤(BASFジャパン社製、商品名:チヌヴィン765)
[製造例1:ポリカーボネート樹脂(A)の製造]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.50/0.50/1.00/6.5×10−7になるように仕込み、十分に窒素置換した。
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および前記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、60分で内温210℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温220℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、重合反応装置出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂をペレタイザーによりペレット化を行い、ペレットを得た。
L/gであった。
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCおよび炭酸セシウムを、モル比率でISB/CHDM/DPC/炭酸セシウム=0.50/0.50/1.00/2.4×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した。
このポリカーボネート樹脂を「PC3」とする。「PC3」の還元粘度は0.630dL/gであった。
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.69/0.31/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005vol%〜0.001vol%)。続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。
重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度として100℃に制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
実施例1−1のブルーイング剤の添加濃度を変えた以外は、実施例1−1と同様に行った。
[比較例1−1]
実施例1−1のブルーイング剤を添加しない以外は、実施例1−1と同様に行った。
酢酸カルシウム1水和物の代わりに炭酸セシウムを用いた以外は、実施例1−1と同様に実施した。
なお、上記実施例および比較例の芳香族モノヒドロキシ化合物含有量については、そのほとんどが実質的にフェノールであった。同様に、炭酸ジエステル含有量については、そのほとんどが実質的にDPCであった。
[実施例2−1]
ベントを供えたバレル設定温度240℃の二軸押出機にPC1のペレットを供給し、表2に示す組成となるようにブルーイング剤として「マクロレックスバイオレットB」、酸化防止剤として「イルガノックス1010」および「イルガフォス168」を表1に示す割合で連続的に添加するとともに、二軸押出機に具備されたベント部にてフェノールなどの低分子量物を減圧脱揮した後、ペレタイザーによりペレット化を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得、110℃で10時間乾燥した。
ブルーイング剤として「マクロレックスバイオレットB」の代わりに「マクロレックスブルーRR」および「マクロレックスバイオレット3R」を表2に示す割合で添加し、酸化防止剤を添加しない以外は実施例2−1と同様に行い、各種物性等を評価した。得られた結果を表2に示す。
ブルーイング剤として「マクロレックスバイオレットB」の代わりに「マクロレックスブルーRR」を表2に示す割合で添加した以外は実施例2−1と同様に行い、各種物性等を評価した。得られた結果を表2に示す。
[実施例2−4]
酸化防止剤の代りにヒンダードアミン系安定剤「チヌヴィン765」を表2に示す割合で添加した以外は実施例2−1と同様に行い、各種物性等を評価した。得られた結果を表2に示す。
「マクロレックスバイオレットB」の使用量を表2の通りとした以外は、実施例1と同様に行い、各種物性等を評価した。得られた結果を表2に示す。
ブルーイング剤「マクロレックスバイオレットB」を添加しない以外は実施例2−1と同様に行い、各種物性等を評価した。得られた結果を表2に示す。
[比較例2−2]
ベントを供えたバレル設定温度280℃の二軸押出機にPC2のペレットを供給し、表2に示す組成となるようにブルーイング剤として「マクロレックスブルーRR」および「マクロレックスバイオレット3R」を表2に示す割合で連続的に添加するとともに、二軸押出機に具備されたベント部にてフェノールなどの低分子量物を減圧脱揮した後、ペレタイザーによりペレット化を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得、120℃で10時間乾燥した。
ヒンダードアミン系安定剤「チヌヴィン765」を添加した以外は比較例2−2と同様に行い、各種物性等を評価した。得られた結果を表2に示す。
PC1の代わりにPC3を使用した以外は2−1と同様に実施した。得られた結果を表
2に示す。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
Claims (11)
- 該式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、ポリカーボネート樹脂(A)中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して15モル%以上90モル%未満である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記ブルーイング剤が、520nm以上600nm以下に極大吸収波長を有する染料である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が、1重量ppm以上、700重量ppm以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、ヒンダードアミン系安定剤を0.0001重量部以上1重量部以下含有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、酸化防止剤を0.0001重量部以上1重量部以下含有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 該樹脂組成物から成形された成形体(厚さ3mmの平板)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 該樹脂組成物から成形された成形体(厚さ3mmの平板)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるポリカーボネート樹脂成形品。
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