JP6411882B2 - ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリ乳酸は、工業材料として使用するに当っては、その耐熱性が不足し、また生産性の高い射出成形によって成形品を得ようとすると、結晶性ポリマーとしてはその結晶性が低いため成形性が劣るという問題がある。
すなわち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
(1)樹脂温度が120℃以上190℃未満、真空度が10kPa以下1kPa以上の条件で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.01以上0.03未満の範囲までエステル交換反応させる工程(A工程)、
(2)樹脂温度が170℃以上190℃未満、真空度が2kPa以下0.1kPa以上の条件で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.1未満の範囲までエステル交換反応させる工程(B工程)、
(3)樹脂温度が190℃以上250℃未満、真空度が0.5kPa以下の条件で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.1以上0.6以下の範囲までエステル交換反応させる工程(C工程)
2.A工程において、反応副生成物であるモノヒドロキシ化合物を凝集するために使用されるコンデンサーの熱媒温度が35〜50℃である前項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
3.式(A)で表される単位(A)が全繰り返し単位を基準として30モル%以上である前項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
4.ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が70℃〜150℃である前項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、下記式(A)で表されるカーボネート単位(A)を含む。単位(A)が全繰り返し単位を基準として好ましくは15モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上であり、特に好ましくは60モル%以上である。
本発明にかかる単位(A)は前記式(A)に示したように、エーテル基を有する脂肪族ジオールから誘導されるものである。
前記式(A)は、バイオマス資源の中でエーテル結合を有するジオールから誘導され、耐熱性及び鉛筆硬度が高い材料である。
前記式(A)は、立体異性体の関係にある下記式で表される繰り返し単位(A1)、(A2)および(A3)が例示される。
イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドのなかでも特に、イソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドローDーソルビトール)から誘導される繰り返し単位は、製造の容易さ、耐熱性に優れることから好ましい。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の好ましい一態様として、上記単位(A)と下記式で示される単位(B−1)を含み、単位(A)と単位(B−1)との合計が全繰り返し単位中好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である共重合ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
脂肪族ジオール化合物は、直鎖脂肪族ジオール化合物が好ましい。好ましくは炭素原子数4〜24、より好ましくは炭素原子数6〜20、さらに好ましくは炭素原子数8〜12の直鎖脂肪族ジオール化合物が使用される。
脂環式ジオール化合物として、好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは炭素原子数6〜20の脂環式ジオール化合物が使用される。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、単位(A)を含み、さらに単位(B−1)を含むことが好ましい。それら単位(A)と単位(B−1)とのモル比(A/B−1)は好ましくは15/85〜99/1である。モル比(A/B−1)が15/85〜99/1の範囲では、耐熱性が高く、さらに溶融粘度が適当で成形性も良好となり、それに伴い、衝撃性に優れる。単位(A)と単位(B−1)とのモル比(A/B−1)は、好ましくは30/70〜98/2、より好ましくは40/60〜96/4、さらに好ましくは50/50〜95/5、特に好ましくは60/40〜90/10である。各繰り返し単位のモル比は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
B工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.1未満になるようにエステル交換させる工程であり、その際の樹脂温度が170℃以上190℃未満、真空度が2kPa以下0.1kPa以上の範囲の条件でエステル交換反応を行う。
C工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.1以上0.6以下になるようにエステル交換させる工程であり、その際の樹脂温度が190℃以上250℃未満、真空度が0.5kPa以下の範囲の条件でエステル交換反応を行う。
A工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.01以上0.03未満にエステル交換させる際の樹脂温度が140℃以上180℃未満で、真空度が5kPa以下2kPa以上の範囲が好ましい。
B工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.1未満にエステル交換させる際の樹脂温度が175℃以上190℃未満で、真空度が1.5kPa以下0.5kPa以上の範囲が好ましい。
C工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.1以上0.6以下にエステル交換させる際の樹脂温度が196℃以上240℃未満で、真空度が0.3kPa以下の範囲が好ましい。
また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2モル当量、好ましくは1×10−8〜1×10−5モル当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3モル当量の範囲で選ばれる。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の好ましい一態様として、上記単位(A)と脂肪族ジオール化合物及び脂環式ジオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から誘導されるカーボネート単位(B−2)を含み、ブロック性を有し、全繰り返し単位中、単位(A)と単位(B−2)との合計が好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である共重合ポリカーボネート樹脂が挙げられる。単位(A)および単位(B−2)以外のその他の単位を誘導する化合物(例えばオキシアルキレングリコール類や芳香族ジヒドロキシ化合物)を使用することもできる。
直鎖脂肪族ジオール化合物として、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール,水素化ジオレイルグリコールなどが挙げられる。なかでも1,9−ノナンジオールが好ましい。
ポリカーボネートオリゴマーは、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール化合物に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法やポリカーボネートジオールを製造する公知の方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
使用できる触媒としては、上述した触媒(エステル交換触媒)と同様のものが使用できる。
ポリカーボネートオリゴマーの製造方法は、触媒の存在下又は不存在下で行うことができるが、反応効率の観点から、触媒の存在下で行うことが好ましい。
ポリカーボネートオリゴマーの製造方法における反応温度は好ましくは90〜230℃であり、より好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは120〜210℃である。反応温度が230℃を超えると、得られるポリカーボネートオリゴマーが着色したり、エーテル構造が生成する場合がある。
ポリカーボネートオリゴマーの製造はポリカーボネート共重合体の製造と同じ反応釜で行っても良いし、別々の反応釜を使用しても良い。また、反応容器から一度取り出して、保管した後に使用しても良い。また、ポリカーボネートオリゴマーはフィルターでの精製や再沈などの精製を行っても良い。
単位(A)と単位(B−2)を含み単位(B−2)のブロック性を有するポリカーボネート共重合体は、上述の方法により得られたポリカーボネートオリゴマー、単位(A)を誘導するモノマー(例えばイソソルビド)およびカーボネート前駆物質を、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段により反応させて製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合のジオール成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応は3つの工程に分類できる。
B工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.1未満になるようにエステル交換させる工程であり、その際の樹脂温度が170℃以上190℃未満、真空度が2kPa以下0.1kPa以上の範囲の条件でエステル交換反応を行う。
C工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.1以上0.6以下になるようにエステル交換させる工程であり、その際の樹脂温度が190℃以上250℃未満、真空度が0.5kPa以下の範囲の条件でエステル交換反応を行う。
A工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.01以上0.03未満にエステル交換させる際の樹脂温度が140℃以上180℃未満で、真空度が5kPa以下2kPa以上の範囲が好ましい。
B工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.1未満にエステル交換させる際の樹脂温度が175℃以上190℃未満で、真空度が1.5kPa以下0.5kPa以上の範囲が好ましい。
C工程は、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.1以上0.6以下にエステル交換させる際の樹脂温度が196℃以上240℃未満で、真空度が0.3kPa以下の範囲が好ましい。
本発明にかかる製造方法の反応方式は、バッチ式または連続式であることが好ましい。反応器は、複数器の竪型攪拌反応器、及びこれに続く少なくとも1器の横型攪拌反応器が用いられる。これらの反応器は直列に設置され、バッチ毎もしくは連続的に処理が行われる。
また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、上述した触媒(エステル交換触媒)と同様のものが使用できる。
重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2モル当量、好ましくは1×10−8〜1×10−5モル当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3モル当量の範囲で選ばれる。
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の好ましい一態様として、上記単位(A)と下記式(B−3)で表される単位(B−3)を含み、全繰り返し単位中、単位(A)と単位(B−3)との合計が好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である共重合ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
単位(B−3)は、炭素数の合計が4〜12の範囲であることが好ましく、5〜10の範囲であることがより好ましい。かかる範囲であると、ポリカーボネート樹脂のHDT(荷重たわみ温度)が高く保持される。
0.3 ≦ (主鎖炭素数)/(側鎖炭素数) ≦ 8 (i)
0.4 ≦ (主鎖炭素数)/(側鎖炭素数) ≦ 5 (i−a)
0.5 ≦ (主鎖炭素数)/(側鎖炭素数) ≦ 2 (i−b)
前記式(B−3)において、Xは炭素数3〜20のアルキレン基または炭素数3〜20のシクロアルキレン基を表す。
Xは、好ましくは炭素数3〜12のアルキレン基、より好ましくは炭素数3〜8のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。アルキレン基としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基などが挙げられる。
Xは、好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキレン基、より好ましくは炭素数3〜8のシクロアルキレン基、さらに好ましくは炭素数3〜6のシクロアルキレン基である。シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基などが挙げられる。
式(B−3)において、Rは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数3〜20のシクロアルキル基を表す。
Rは、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
Rは、好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3〜8のシクロアルキル基である。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
式(B−3)において、mは1〜10の整数、好ましくは2〜8の整数、より好ましくは2〜5の整数を示す。
単位(B−3)中の、Xが炭素数3〜20のアルキレン基で、Rが炭素数1〜4のアルキル基で、mが2〜8の整数であることが好ましい。単位(B)中のXが炭素数3〜5のアルキレン基で、Rが炭素数1〜4のアルキル基で、mが1〜2の整数であることが好ましい。
単位(B−3)中の−X{−(R)m}−が、下記式で表される単位(Ba)であることが好ましい。
単位(B−3)中の、−X{−(R)m}−は、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジイル基、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジイル基、3−メチル−1,5−ペンタンジイル基であることが好ましい。
前記式(B−3)において、Xは炭素数4〜5のシクロアルキレン基で、Rは炭素数1〜10のアルキル基で、mは3〜12の整数であることが好ましい。
単位(B−3)が、下記式で表される単位(Bb)であることが好ましい。
単位(B−3)が、下記式で表される単位(Bb−i)であることが好ましい。
単位(A)と単位(B−3)とを含む共重合ポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。これらの製造方法について基本的な手段は、上述した単位(A)と単位(B−1)とを含む共重合ポリカーボネート樹脂の手段と同様である。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の他の一態様として、上記単位(A)とポリエステルジオールから誘導されるカーボネート単位(B−4)を含み、全繰り返し単位中、単位(A)と単位(B−4)との合計が80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上である共重合ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
単位(B−4)は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを構成成分として含むポリエステルジオール(B4)から誘導されるカーボネート単位である。
直鎖脂肪族ジオール化合物として、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール,水素化ジオレイルグリコールなどが挙げられる。なかでも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
これらのジオール化合物は、1種もしくは2種類以上併用して用いても良い。
Wは炭素原子数1〜12の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、具体的には、上述した脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸または芳香族脂肪族カルボン酸の脂肪族、芳香族または芳香族脂肪族部分である。
nは平均繰り返し単位数を示す。後述するように、ポリエステルジオール(B1)の重量平均分子量は100〜3000の範囲が好ましく、この重量平均分子量となるように平均繰り返し単位数nを設定することが好ましい。
ポリエステルジオールの製造法で用いられる金属系触媒としては、ルイス酸やアルカリ金属およびアルカリ土類金属のカルボン酸塩、プロトン酸、活性白土、酸性白土、イオン交換樹脂などを挙げることができる。より具体的には、テトラブトキシチタネート、ジブチル錫オキシド、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酸価アンチモン、酸価ゲルマニウム、燐酸、ホウ酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタスルホン酸、アンバーリストE15などが挙げられる。これらの触媒の使用量は、原料ポリアルキレンテレフタレート1gに対して10〜5000μg、好ましくは50〜1000μgである。
ポリエステルジオールの酸価は好ましくは1mgKOH/g以下であり、より好ましくは0.3mgKOH/g以下である。1mgKOH/gを超えると、重合反応に影響を与え、生産性が悪化することがある。
本発明の製造方法で得られたポリカーボネート樹脂を用いて溶融成形してなる成形品は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、など任意の方法により溶融成形される。ポリカーボネート樹脂を溶融成形する際の溶融温度は210℃〜260℃の範囲が好ましく、210℃〜250℃の範囲がより好ましく、220℃〜240℃の範囲がさらに好ましい。210℃より低いと溶融粘度が非常に高くなり、成形時に充填不足となり好ましくない。また、260℃より高いと熱分解により分子量低下が起こり好ましくない。
かかるポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、延伸により所望の波長分散性を実現することができるため光学フィルムとして有利に使用することができる。
フィルムの製造方法としては、例えば、溶融押し出し法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。光学フィルムの製造法としては、溶融押し出し法が生産性の点から好ましい。
溶融押し出し法においては、Tダイを用いて樹脂を押し出し冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの溶融温度はポリカーボネート樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、210℃〜260℃の範囲が好ましく、210℃〜250℃の範囲がより好ましく、220℃〜240℃の範囲がさらに好ましい。210℃より低いと粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすくなる。また、260℃より高いと熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)等の問題が起きやすくなる。
フィルムの厚みとしては、30〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜400μm、さらに好ましくは50〜200μmの範囲である。
ポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)は、0.1〜0.6の範囲であり、0.2〜0.5の範囲が好ましく、0.25〜0.45の範囲がより好ましく、0.3〜0.4の範囲がさらに好ましく、0.31〜0.35の範囲がもっとも好ましい。ポリカーボネート樹脂の比粘度が、0.1より小さいと強度が低下し、他方0.6より大きいと成形性が悪化する。
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
なお、具体的な比粘度の測定としては、例えば次の要領で行うことができる。まず、ポリカーボネート樹脂をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求める。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは70〜150℃、より好ましくは90〜140℃、さらに好ましくは100〜135℃、特に好ましくは110〜130℃である。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が70℃以上であると、光学成形体として使用した際に耐熱性が十分となり好ましい。また、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が150℃以下であると、射出成形の際の成形加工性が良好となり好ましい。
ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
ポリカーボネート樹脂の光弾性係数は、好ましくは30×10−12Pa−1以下、より好ましくは28×10−12Pa−1以下、特に好ましくは20×10−12Pa−1以下である。30×10−12Pa−1以下であると、応力による光学ひずみが発生し難いため好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、鉛筆硬度が好ましくはHB以上である。耐傷性に優れるという点で、F以上がより好ましく、H以上がさらに好ましい。鉛筆硬度は全繰り返し単位を基準として繰り返し単位(B−1)〜(B−3)の組成を増加させることで硬くすることができる。本発明において、鉛筆硬度とは、本発明の樹脂を特定の鉛筆硬度を有する鉛筆で樹脂を擦過した場合に擦過しても擦過痕が残らない硬さのことであり、JIS K−5600に従って測定できる塗膜の表面硬度試験に用いる鉛筆硬度を指標とする。鉛筆硬度は、9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bの順で柔らかくなり、最も硬いものが9H、最も軟らかいものが6Bである。
ポリカーボネート樹脂は、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
また、ポリカーボネート樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂と併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂は、押出・成形時の分子量低下や色相の悪化を抑制するために、熱安定剤を含有することが好ましい。単位(A)のエーテルジオール残基が熱と酸素により劣化し、着色しやすいため、熱安定剤としてはリン系安定剤を含有することが好ましい。さらにリン系安定剤として、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、または、二価フェノール類と反応し環状構造を有するホスファイト化合物を配合することがより好ましい。
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、およびトリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
上記のリン系安定剤は、単独でまたは2種以上を併用して使用することができ、少なくともペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、または、環状構造を有するホスファイト化合物を有効量配合することが好ましい。リン系安定剤はポリカーボネート樹脂100重量部当たり、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.01〜0.3重量部配合される。
ポリカーボネート樹脂は、押出・成形時の分子量低下や色相の悪化を抑制することを目的に、熱安定剤として、ヒンダードフェノール系熱安定剤を添加することもできる。
これらのヒンダードフェノール系安定剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても用いても良い。
ヒンダードフェノール系安定剤はポリカーボネート樹脂100重量部当たり、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.01〜0.3重量部配合される。
ポリカーボネート樹脂は、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。
かかる離型剤としては、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。かかる離型剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、紫外線吸収剤を含むことができる。紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられ、なかでもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
かかる紫外線吸収剤の割合は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.01〜2.5重量部、より好ましくは0.03〜2.0重量部、さらに好ましくは0.05〜1.0重量部である。
ポリカーボネート樹脂は、光安定剤を含むことができる。光安定剤を含むと、耐候性の面で良好であり、成形品にクラックが入り難くなるという利点がある。
光安定剤としては、例えば1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ジデカン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−2−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネ−ト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ジフェニルメタン−p,p′−ジカ−バメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3−ジスルホネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)フェニルホスファイト等のヒンダードアミン類、ニッケルビス(オクチルフェニルサルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカ−バメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらの光安定剤は単独もしくは2種以上を併用してもよい。光安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.02〜0.5重量部、さらに好ましくは0.03〜0.2重量部、特に好ましくは0.03〜0.1重量部である。
ポリカーボネート樹脂は、重合体や紫外線吸収剤に基づくレンズの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、ポリカーボネートに使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
具体的なブルーイング剤としては、例えば、一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名Solvent Violet31[CA.No 68210、一般名Solvent Violet33[CA.No 60725]、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500]、一般名Solvent Violet36[CA.No 68210]、一般名Solvent Blue97[バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]および一般名Solvent Blue45[CA.No61110]が代表例として挙げられる。
これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらブルーイング剤は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.1×10−4〜2×10−4重量部の割合で配合される。
1.ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて各繰り返し単位を測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
2.比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
3.ガラス転移温度(Tg)
ポリカーボネート樹脂8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC−2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
4.ペレットb値
ポリカーボネートペレット(短径×長径×長さ(mm)=2.5×3.3×3.0)の
L,a,b値を日本電色工業製ND−1001DPを用いて反射法で測定した。黄色度の尺度としてb値を示した。
5.色相
成形した2.0mm板を日本電色(株)製色差計Z−1001DP型を用いて透過光を測定したX,YおよびZ値からASTME1925に基づき、下記式を用いて算出した。YI値が大きいほど成形板の黄色味が強いことを示す。
YI=[100(1.28X−1.06Z)]/Y
<ポリカーボネート樹脂の製造>
イソソルビド(以下ISSと略す)426部、1,9−ノナンジオール(以下NDと略す)83部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)750部、および触媒としてステアリン酸バリウム0.0025部を窒素雰囲気下120℃に加熱し溶融させた。その後、反応槽に送液し、コンデンサーの熱媒温度を40℃、加熱媒体温度を183℃に調節して樹脂内温を170℃に調整し、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、20分かけて減圧度を3.4kPaに調整し、10分間その温度で保持した後サンプリングした。さらに30分かけて減圧度を0.9kPaとし、樹脂内温を180℃に調整し、10分間その温度で保持した後サンプリングした。さらに真空度0.2kPaとし、樹脂温度を180℃から225℃へ30分かけて上昇し、規定の粘度に達した後に反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定した。その後、110℃で3時間熱風循環式乾燥機により乾燥し水分率を測定し、射出成形機(日本製鋼所(株)製 JSWJ−75EIII)により、シリンダー温度230℃、金型温度80℃、2mm板の試験片を成形した。評価結果を表1に記載した。
反応条件を表1に記載した部分について変更した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。
1,6−ヘキサンジオール(以下HDと略す)161部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)257部、触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.4×10−2部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、2時間かけて減圧度を13.4kPaに調整し、2時間かけて200℃に昇温し、500Pa以下とし、留出してきたフェノールと未反応のジオールを除いて、分子量530の190部のHDホモポリカーボネートオリゴマー(以下PCHDと略す)を得た。
得られたPCHD74部、イソソルビド(以下ISSと略す)488部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)750部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.8×10−2部と水酸化ナトリウム0.6×10−4部を用いて、反応条件を表1に記載した部分について変更した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。
Claims (4)
- (A)下記式(A)で表される単位(A)と、(B)下記式(B−1)で表される単位(B−1)、脂肪族ジオール化合物及び脂環式ジオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から誘導されるブロック性を有するカーボネート単位(B−2)、下記式(B−3)で表される単位(B−3)、またはポリエステルジオールから誘導されるカーボネート単位(B−4)
とを誘導するジオールを含有するジオール成分とカーボネート前駆物質とを用いるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、下記(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
(1)樹脂温度が120℃以上190℃未満、真空度が5kPa以下1kPa以上の条件で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.01以上0.03未満の範囲までエステル交換反応させる工程(A工程)、
(2)樹脂温度が170℃以上190℃未満、真空度が2kPa以下0.1kPa以上の条件で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.03以上0.1未満の範囲までエステル交換反応させる工程(B工程)、
(3)樹脂温度が190℃以上250℃未満、真空度が0.3kPa以下の条件で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.1以上0.6以下の範囲までエステル交換反応させる工程(C工程) - A工程において、反応副生成物であるモノヒドロキシ化合物を凝集するために使用されるコンデンサーの熱媒温度が35〜50℃である請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 式(A)で表される単位(A)が全繰り返し単位を基準として30モル%以上である請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が70℃〜150℃である請求項1記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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