JP5786556B2 - 樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来のポリカーボネート樹脂は、長時間紫外線や可視光に曝露される場所で使用すると、色相や透明性、機械的強度が悪化するため、屋外や照明装置の近傍での使用に制限があった。
ところが、このような紫外線吸収剤を添加した場合、紫外線照射後の色相などは改良されるものの、そもそもの樹脂の色相や耐熱性、透明性の悪化を招いたり、また成型時に添加剤が揮発して金型を汚染したりする等の問題があった。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[16]に存する。
[1] 構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位とを含むポリカーボネート樹脂を射出成形することによる成形品の製造方法であって、射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差が50℃〜110℃であることを特徴とする成形品の製造方法。
[2] 前記シリンダー温度が210℃〜270℃であることを特徴とする1に記載の成形品の製造方法。
[3] 前記金型温度が90℃〜200℃であることを特徴とする1又は2に記載の成形品の製造方法。
[4] 前記ポリカーボネート樹脂における全構造単位に対する下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が30モル%〜95モル%であることを特徴とする1乃至3のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[5] 構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする1乃至4のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[7] 前記長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物がマグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であることを特徴とする6に記載の成形品の製造方法。
[8] 前記ポリカーボネート樹脂の下記一般式(3)で表される炭酸ジエステル含有量が60重量ppm以下であることを特徴とする1乃至7のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[9] 前記ポリカーボネート樹脂の、芳香族モノヒドロキシ化合物含有量が700重量ppm以下であることを特徴とする1乃至8のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[10] 前記ポリカーボネート樹脂中の下記一般式(4)で表される末端基の濃度が、20μeq/g以上160μeq/g以下の範囲であることを特徴とする1乃至9のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[12] 前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であるものであることを特徴とする1乃至11のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[13] 前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上であるものであることを特徴とする1乃至12のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[14] 前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス(YI)値と、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nm、放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値との差の絶対値が6以下であるものであることを特徴とする1乃至13のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[15] 射出成形が、射出プレス成形法であることを特徴とする1乃至14のいずれかに記載の成形品の製造方法。
[16] 成形品の最大投影面積が100〜50,000cm2であることを特徴とする1乃至15のいずれかに記載の樹脂成形品の製造方法。
(1)ポリカーボネート樹脂及びそれに基づく樹脂組成物
以下、本発明の樹脂成形品の製造方法に用いるポリカーボネート樹脂及びそれに基づく樹脂組成物について詳述する。
[ポリカーボネート樹脂]
<原料>
(ジヒドロキシ化合物)
本発明で使用する樹脂(以下、「本発明に用いる樹脂」と称することがある。)は、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(以下、「本発明に用いるジヒドロキシ化合物」と称することがある。)に由来する構造単位(a)を少なくとも含む。 即ち、本発明に用いるジヒドロキシ化合物は、2つのヒドロキシル基と、更に構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を少なくとも含むものである。
本発明に用いるジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に上記一般式(1)で表される部位を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記一般式(5)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられるが、中でも、入手のし易さ、ハンドリング、重合時の反応性、得られる樹脂の色相の観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、耐熱性の観点からは、無水糖アルコール、環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。
本発明に用いる樹脂は、上述した本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記一般式(3)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られる樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
本発明の成形方法に用いるポリカーボネート樹脂は、上述のように本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、通常、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応させて製造される。この時、エステル交換により副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去しつつ重縮合を進めることが一般的である。
用いられる触媒としては、耐光性を満足させ得る、即ち上記した波長350nmにおける光線透過率や、イエローインデックスを所定の値にし得るものであれば、限定されないが、長周期型周期表における第1族または第2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、具体的には塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
樹脂中の金属量は、湿式灰化などの方法で樹脂中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明の成形方法に用いるポリカーボネート樹脂は、本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に原料調製槽等において、均一に混合することが好ましい。又、原料調製槽等において均一に混合された原料は、原料貯槽等に貯め置いた後に、エステル交換反応に供してもよい。
このモル比率が小さくなると、製造された樹脂の末端水酸基量が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、成型時に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望する高分子量体が得られない可能性がある。
更には、本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、前記一般式(3)で表される炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られる樹脂中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収して樹脂の耐光性を悪化させる場合があり、好ましくない。 本発明に用いる樹脂に残存する前記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの濃度は、好ましくは60重量ppm以下、更に好ましくは50重量ppm以下、特に好ましくは40重量ppm以下が好適である。現実的に樹脂は未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、濃度の下限値は通常1重量ppmである。
重縮合反応の初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、反応の後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を高くすることが好ましいが、各反応段階での加熱温度と内温、及び反応系内の圧力を適切に選択することが色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重縮合反応率が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが系外に留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が変化して、反応速度が低下したり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本願発明の目的を達成することができなくなる可能性がある。
本発明に用いる樹脂の製造方法においては、複数の反応器を用い、多段階で重縮合を行うことが好ましい。これは、重縮合反応の初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いので、必要な反応速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制することが重要であり、反応後期においては、平衡をポリマー側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去することが重要になるためである。このように、異なった反応条件を設定するためには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが生産効率の観点から好ましい。
また複数の反応器において、個々の反応器内で更に条件の異なる反応段階を複数設定したり、連続的に温度・圧力を変えたりしてもよい。
重縮合反応の温度は、低すぎると反応速度が低下したり、反応時間が長くなったりして生産性が低下し、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、生成した樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。
また、反応後半の重縮合速度の低下を防止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、反応の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
副生したモノヒドロキシ化合物は、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂は、重縮合反応終了後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
押出機における溶融混練温度は、樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150℃〜300℃、好ましくは200℃〜270℃、更に好ましくは230℃〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、樹脂の溶融粘度が高くなって押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、樹脂の熱劣化が激しくなり、分子量が低下して、ガスが発生したり、樹脂の着色や機械的強度が低下したりすることがある。
また、押し出された溶融樹脂を固化してチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で予め異物を取り除いた空気を使用し、異物の再付着を防ぐことが望ましい。水冷法を用いる場合は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除いた上で、フィルターで異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さくなる可能性があり、大きすぎると、成形時の流動性が低下し、生産性や成形性(成形金型への追従性)を低下させる傾向となる。
更に本発明方法に用いるポリカーボネート樹脂の下記一般式(4)で表される末端基の濃度(「末端フェニル基濃度」という)の下限量は、好ましくは20μeq/g、更に好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、一方、上限は好ましくは160μeq/g、更に好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
末端フェニル基濃度を制御するためには、原料である本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類や量、重縮合反応時の圧力や温度を調整する方法等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂中には、通常の重縮合反応後は1000重量ppm以上の副生フェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物が含まれているが、耐光性や臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器や真空ベント付の押出機を用いて、好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特には300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、工業的には、これらのフェノール類を完全に除去することは困難であり、芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限値は、通常1重量ppm程度である。
本発明において用いる樹脂、即ち特定の構造単位を有するポリカーボネート樹脂には、その要旨を損なわない範囲で、用途・目的に応じた添加剤を加えてポリカーボネート樹脂組成物として使用されることが一般的である。
このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、酸性化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填剤などが挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤及び/またはホスファイト系酸化防止剤が更に好ましい。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは、0.001重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.05重量部以上、一方、好ましくは1重量部以下、更に好ましくは、0.7重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。酸化防止剤の含有量が過度に少ないと、成形時の着色抑制効果が不十分になることがある。また、酸化防止剤の含有量が過度に多いと、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観が損なわれるおそれがある。
これらの酸性化合物は、上述した樹脂の重縮合反応において使用される塩基性エステル交換触媒を中和する化合物として、樹脂組成物の製造工程において添加することができる。
紫外線吸収剤、光安定剤を含有する場合の含有量は、樹脂100重量部に対して0.01重量部〜2重量部が好ましい。
また、本発明で用いる樹脂組成物は例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混合・混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
<物性・特性>
本発明の成形方法により得られる成形品は、光学用途への使用の観点から板状部を主体とする成形品であって、該成形品の最大投影面積が、好ましくは100〜50,000cm2、より好ましくは500〜50,000cm2、更に好ましくは1,000〜20,000cm2、特に好ましくは1,500〜10,000cm2である。
本発明の成形方法で用いる樹脂組成物中の下記一般式(4)で表される末端基の濃度(「末端フェニル基濃度」という)の下限量は、好ましくは20μeq/g、更に好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、一方、上限は好ましくは160μeq/g、更に好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
本発明により得られる樹脂成形品(以下、「本発明方法による樹脂成形品」と称することがある。)は、成形品(厚さ3mmの平板について測定)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であるのが好ましく、より好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。該波長における光線透過率が60%を下回ると、吸収が大きくなり、耐光性が悪化する場合がある。
本発明の成形方法に用いるポリカーボネート樹脂としては、該樹脂から成形された前記成形品(厚さ3mmの平板)の初期のイエローインデックス値(初期のYI値)と、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値との差の絶対値が6以下であることが好ましく、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
また「初期のイエローインデックス値(初期のYI値)」は、上記の厚さ3mmの平板について、メタルハライドランプでの照射処理等を行わずに、透過光で測定したイエローインデックス値のことを指す。
このような評価方法による照射処理前後のYI値の差が6以下のように小さいポリカーボネート樹脂を用いることで、成形直後には着色がなくても長期間の紫外光曝露によって着色してしまうようなこともなく、安定した色相を保持できる成形品が製造できる。
こうしたポリカーボネート樹脂を得るためには、例えば、エステル交換反応(重縮合反応)で受けた熱履歴や、使用した触媒、含まれる金属成分、特定の分子構造を持つ物質の含有量等を前述のように制御することも重要である。
樹脂成形品の製造は種々の方法で行われており、中でも押出成形は汎用的に使用されるものの、複雑な形状の樹脂成形品の製造に困難を伴うという点で、得られる樹脂成形品の形状に制約がある。
射出成形法を用いることにより、樹脂成形品の形状に応じた金型を使用することで複雑な形状の樹脂成形品を製造することができる。
射出成形は射出成形機を用いて行われ、使用する樹脂組成物および製品形状に応じて適宜好適な成形条件が設定される。成形条件としては、シリンダー温度、金型温度、射出圧、保圧、スクリュー回転数、クッション量、射出速度、射出時間、保圧時間、冷却時間などが挙げられる。
金型温度を一定にした状態で両者の差が110℃を越えるような温度までシリンダー温度を高くすると、樹脂組成物が分解しやすくなり、外観が悪くなる傾向となる。一方シリンダー温度をその差が50℃未満にまで低くすると良好な成形品が得難くなる傾向が現れる。
また、シリンダー温度を一定にして金型温度を同様に過度に高くすると、成形サイクルが長くなって生産性が悪化し、一方金型温度を過度に低くすると成形歪みが大きくなる。
なお本発明において射出成形時の金型温度とは、樹脂充填時の金型温度のことを言う。
金型温度は、好ましくは90℃〜200℃、更に好ましくは95℃〜180℃、特に好ましくは100℃〜150℃である。金型温度が高すぎると成形品の生産性が低下する傾向にあり、一方、低すぎると光学歪みが大きくなる傾向にある。
金型温度の制御方法としては、金型内に電気ヒーターを埋設し加熱する方法、加圧蒸気を金型内の水管に流し込み金型を加熱する方法、樹脂充填時には金型内の水管に加圧蒸気を流して加熱しておき、充填後は該水管に冷却水を通して急速冷却するヒートアンドクール成形法、金型の表面から1〜2cmの位置にコイルを配置して高周波の電圧を印加し金型を加熱して、コイルを金型から抜き出した後に金型を締めて樹脂を充填し水冷する高周波加熱法、金型内に埋設したコイルに高周波の電圧を印加し金型を加熱する方法等が挙げられる。
本発明の成形方法においては、ヒートアンドクール成形法により金型温度を制御することが好ましい。
本発明の成形品の製造方法においては、これらの手段を単独で、あるいは適宜組み合わせることが好ましい。
以下において、樹脂組成物、樹脂成形品の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)酸素濃度の測定
重縮合反応装置内の酸素濃度を、酸素計(AMI社製:1000RS)を使用し、測定した。
ポリカーボネート樹脂のサンプルを塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tとから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
比粘度ηspを濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(3)ポリカーボネート樹脂組成物中の金属濃度の測定
株式会社パーキンエルマー・ジャパン製マイクロウェーブ分解容器にポリカーボネート樹脂組成物ペレット約0.5gを精秤し、97%硫酸2mLを加え、密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱した。室温まで冷却後、68%硝酸1.5mLを加えて、密閉状態にして150℃で10分間マイクロウェーブ加熱した後、再度室温まで冷却を行い、更に68%硝酸2.5mLを加え、再び密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱し、内容物を完全に分解させた。室温まで冷却後、上記で得られた液を純水で希釈し、サーモクエスト社製ICP−MSで定量した。
ポリカーボネート樹脂組成物中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比は、ポリカーボネート樹脂組成物30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、溶液とし、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子株式会社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で1H NMRスペクトルを測定した。各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求めた。
(5)ポリカーボネート樹脂組成物中の芳香族モノヒドロキシ化合物含有量、前記一般
式(3)で表される炭酸ジエステル含有量の測定
ポリカーボネート樹脂組成物試料1.25gを塩化メチレン7mlに溶解し溶液とした後、総量が25mlになるようにアセトンを添加して再沈殿処理を行った。次いで、該処理液を0.2μmディスクフィルターでろ過して、液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)をあらかじめ添加混合した重クロロホルムのみのスペクトルを測定し、TMSと重クロロホルム中に含まれる残存水素原子(H)のシグナル比を求める。次に、ポリカーボネート樹脂30mgを秤取し、前記重クロロホルム約0.7mLに溶解させた。これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で1H NMRスペクトルを測定した。得られたNMRチャートの6.5ppm〜8.0ppmに現れるシグナルの積分値から、重クロロホルム中に含まれる残存水素原子(H)のシグナルの積分値(TMSのシグナルの積分値および前記で予め求めたTMSと重クロロホルム中に含まれる残存水素原子(H)との比から求める)を差し引いた値をaとする。一方、0.5ppm〜6.5ppmに現れるシグナルの積分値をbとすると、a/(a+b)=A/(A+B)となるので、これを求めた。
500mmx500mmx3mmの成形プレートにおいて、目視にて外観観察を行い、外観不良なしのものを「○」、シルバーストリーク等の外観不良が発生したものを「×」と表示する。
(8)成形品の位相差の測定
500mmx500mmx3mmの成形プレートを分割して、王子計測機器製の位相差測定装置「KOBRA WWR/XY」により、波長590nmに対する位相差を測定した。
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、窒素雰囲気下、110℃で10時間乾燥した。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度220℃、成形サイクル23秒間の条件で、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形する操作を繰り返し、10ショット目〜20ショット目で得られた射出成形片の厚み方向での透過光におけるイエローインデックス(初期のYI)値をカラーテスタ(コニカミノルタ社製CM−3700d)を用いて測定し、平均値を算出した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示す。
スガ試験機社製メタリングウェザーメーターM6Tを用いて、63℃、相対湿度50%の条件下、光源として水平式メタリングランプを、インナーフィルターとして石英を、またランプの周囲にアウターフィルターとして#500のフィルターを取り付け、波長300nm〜400nm、放射照度1.5kw/m2になるように設定し、上記(9)で得られた20ショット目の平板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の正方形の面に対して、100時間照射処理を行った。照射後のYI値を上記(9)と同様に測定した。
ISB:イソソルビド (ロケットフルーレ社製、商品名POLYSORB)
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール (新日本理化株式会社製、SKY CHDM)
DPC:ジフェニルカーボネート (三菱化学株式会社製)
(酸化防止剤)
イルガノックス1010:ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製)
イルガフォス168:トリス(2,4−ジ−tertブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製)
(離型剤)
NAA−180:ステアリン酸(日油株式会社製)
撹拌翼および還流冷却器を具備した重縮合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.69/0.31/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005vol %〜0.001vol %)。続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重縮合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度が100℃になるように制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
上記記載の評価方法により、各種物性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
実施例1の射出プレス成形時のシリンダー温度を220℃とした(射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差は80℃)こと以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例3]
仕込みの原料組成をモル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.5/0.5/1.00/1.3×10−6になるように変更したこと以外は、上記実施例1と同様に、反応(オリゴマー化、重縮合)及び押出機によるペレット化を行い、ペレット状のポリカーボネート樹脂を製造した。
得られたポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様にしてプレートを成形し、各種物性を評価した。結果を併せて表1に示す。
実施例1において、金型温度の制御をヒートアンドクール成形ではなく、充填時も冷却時も80℃に保持する(射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差は160℃)という条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプレート成形を行った。
得られた成形プレートについて実施例1と同様にして物性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例1において、シリンダー温度を240℃から300℃に変更した(射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差は220℃)こと以外は、比較例1と同様にプレート成形を行った。
得られた成形プレートは外観が著しく劣っており、物性の評価ができなかった。結果を表1に示す。
Claims (13)
- 下記一般式(2)で表される化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位とを含むポリカーボネート樹脂を射出成形することによる成形品の製造方法であって、
射出成形時のシリンダー温度と金型温度との差が50℃〜110℃であり、
シリンダー温度が210℃〜270℃であり、
金型温度が90℃〜200℃であることを特徴とする
成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂における全構造単位に対する下記一般式(2)で表される化合物に由来する構造単位の割合が30モル%〜95モル%であることを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂中の、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物の合計量が金属量として20ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の成形品の製造方法。
- 前記長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物がマグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であることを特徴とする請求項3に記載の成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂の下記一般式(3)で表される炭酸ジエステル含有量が60重量ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂の、芳香族モノヒドロキシ化合物含有量が700重量ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂中の下記一般式(4)で表される末端基の濃度が、20μeq/g以上160μeq/g以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂中の芳香環に結合した水素原子(H)の当量数を(A)、芳香環以外に結合した水素原子(H)の当量数を(B)とした場合に、A/(A+B)≦0.05 であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であるものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上であるものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂が、前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス(YI)値と、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nm、放射照度1.5kW/m2で、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値との差の絶対値が6以下であるものであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 射出成形が、射出プレス成形法であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
- 成形品の最大投影面積が100〜50,000cm2であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
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