JP2015199348A - 樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】外観品質に優れ、表面硬度や耐傷つき性に優れた成形体を得る。【解決手段】ポリカーボネート樹脂を用いて、樹脂射出成形体を製造する方法であって、下記の要件1及び2を共に満たすことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。要件1:ポリカーボネート樹脂が所定のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含む樹脂である。要件2:キャビティ面の温度を60℃以上とした射出成形用金型にポリカーボネート樹脂を射出し、前記射出成形用金型のキャビティ面温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ面の温度より10℃以上低い状態で樹脂成形体の排出を行い、該樹脂の射出から排出までの時間が2時間以内とする。【選択図】なし

Description

本発明はポリカーボネート樹脂射出成形体の製造方法に関する。更に詳しくは耐傷付き性に優れたポリカーボネート樹脂成形体を製造する方法に関する。
近年、例えば自動車業界において、自動車外装部品であるバンパ−や自動車内装部品であるフロントパネル等多くの樹脂成形品が用いられている。このような樹脂成形品の中でも、意匠部に当たる加飾部品は塗装により加飾されることが多い。しかしながら、塗装工程における塗料中の揮発性有機化合物(以下、VOC(volatile organic compounds))の大気への放出や、車室内の塗装部品に起因したVOCの発生により、環境や人体に影響を与えることが懸念される。
そこで、昨今では、予め顔料や染料等の着色剤や金属調外観を出すために鱗片状のアルミニウム粉末やマイカ等の付与剤を混練した着色樹脂材料を成形することで、成形後の塗装工程を省くことがなされている。このような加飾部品の無塗装化は、塗料の使用量を削減し、VOCの放出あるいは発生を低減させることができる。更には、塗膜除去が不必要であるために樹脂加飾部品のリサイクル性を向上させることができると共に塗装工程廃止による省エネルギーに有効である。例えば、バンパ−では、このような着色樹脂材料を用いた無塗装着色バンパ−が採用され始めている(特許文献1、2参照)。
しかし、上記の様な顔料や染料等の着色剤や付与剤を混練した着色樹脂材料は、射出成形方法を用いて成形品を製造する場合、金型内で溶融樹脂の流れが合流して融着した部分に細い線、すなわちウエルドラインが発生する場合がある。このウエルドラインが発生すると、得られる製品の外観や物性に悪影響を及ぼし、製品価値が低下する。
また、着色樹脂を原料にした成形体は、表面の傷が目立ちやすいことに加え、表面付近に存在する着色剤や付与剤が、衝撃によって剥落しやすく、剥落した着色剤や付与剤によって傷がつきやすいといった問題点があった。
特許文献3には、熱可塑性樹脂の溶融組成物を射出成形するに際し、加熱時の金型温度が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型に射出する無塗装自動車外板用成形品の成形方法が開示されている
特許文献4には、非晶性熱可塑性樹脂に特定のアスペクト比のフィラーを含有させたフィラー含有非晶性熱可塑性樹脂を、金型温度が樹脂のガラス転移温度(Tg)〜(Tg+50)℃に設定された金型に樹脂を射出した後、金型温度を(Tg−20)℃以下に冷却した後、成形品を取り出す成形方法が開示されている。
特開2009−120729号公報 特開2013−209448号公報 特開2004−291274号公報 特開2006−205571号公報
しかし、本発明者の検討によれば、上述した特許文献3及び4に記載の成形方法を用いても、十分な表面硬度や耐傷つき性を有するポリカーボネート樹脂成形体を得ることはできなかった。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、外観品質に優れ、表面硬度や耐傷つき性に優れた成形体を得るための成形方法を提供することにある。
本発明者は鋭意検討した結果、特定の構造を含むポリカーボネート樹脂と特定の成形条件を組み合わせることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記[1]〜[7]に存する。
[1]ポリカーボネート樹脂を用いて、樹脂射出成形体を製造する方法であって、下記の要件1及び2を共に満たすことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
要件1:ポリカーボネート樹脂が下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含む樹脂である。
Figure 2015199348
要件2:キャビティ面の温度を60℃以上とした射出成形用金型にポリカーボネート樹脂を射出し、前記射出成形用金型のキャビティ面温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ面の温度より10℃以上低い状態で樹脂成形体の排出を行い、該樹脂の射出から排出までの時間が2時間以内である。
[2]前記ポリカーボネート樹脂が、更に脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである[1]に記載の樹脂成形体の製造方法。
[3]前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である[2]に記載の樹脂成形体の製造方法。
[4]前記射出成形用金型が電磁誘導加熱式金型である[1]〜[3]の何れか一項に記載の樹脂成形体の製造方法。
[5]前記ポリカーボネート樹脂に着色剤が含まれる[1]〜[4]の何れか一項に記載の樹脂成形体の製造方法。
[6]前記ポリカーボネート樹脂にアルミニウム粒子又はマイカ粒子が含まれる[1]〜[5]の何れか一項に記載の樹脂成形体の製造方法。
[7]上記[1]〜[6]の何れか一項に記載の方法で製造された自動車用部品。
本発明の製造方法で得られた成形体は、表面硬度や耐傷つき性に優れることに加え、ウエルドの発生が抑制された優れた外観の成形体を得ることができる。このことから、複雑な形状をもつ成形品、例えば自動車用内装材、オーディオ、カーナビゲーション機器、携帯電話の筐体等に、有用に使用することができる。
この発明で用いる樹脂射出成形用金型で、電磁誘導加熱式金型の例であり、固定型をキャビティ面12aから見た正面図 この発明で用いる樹脂射出成形用金型で、電磁誘導加熱式金型の例であり、可動型をキャビティ面12bから見た正面図 この発明で用いる樹脂射出成形用金型で、電磁誘導加熱式金型の例を示す縦断断面図 ウエルドの状態を示す模式図 実施例において使用する電磁誘導加熱式金型の固定型をキャビティ面12aから見た正面図
この発明にかかる樹脂成形体の製造方法は、特定の構造単位を含むポリカーボネート樹脂を特定の射出成形条件で成形する樹脂成形体の製造方法である。
[ジヒドロキシ化合物を含むポリカーボネート樹脂]
<原料>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位と、ホスゲン又は炭酸ジエステル由来の構造単位を含む樹脂である必要がある。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位として、下記の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(以下、「ジヒドロキシ化合物(1)」と称する場合がある、)由来の構造単位を少なくとも含む。
Figure 2015199348
本発明に用いるポリカーボネート樹脂を構成する全てのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合は、好ましくは20〜90mol%、更に好ましくは30〜85mol%、特に好ましくは40〜80mol%である。
ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合が多過ぎると、本発明に用いるポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品にサンシャインカーボンアークを用いた照射処理を施した際、割れが生じる場合があり、また透明性が悪化しヘイズが大きくなる場合がある。ただし、後述する耐光安定剤を含有させることによりこの割れを防止することも可能である。一方、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合が少な過ぎると、得られる成形品の耐熱性が低下する場合がある。
上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネート樹脂の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
その他のジヒドロキシ化合物の具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール;9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン等のフェニル置換フルオレン等;側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記一般式(2)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物(環状エーテル)等が挙げられる。
これらの中でも、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、下記一般式(2)で表される環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2015199348
その他のジヒドロキシ化合物の更に別の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールの等の脂肪族ジヒドロキシ化合物;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール等の脂環式ジヒドロキシ化合物等が耐光性の観点から好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他のジヒドロキシ化合物として、脂環式ジヒドロキシ化合物を用いる場合には、ポリカーボネート樹脂中の前記ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲であることが好ましく、90:10〜40:60であることが機械的物性や耐熱性の観点からさらに好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂の合成に供されるジヒドロキシ化合物(1)は、公知で通常用いられる還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよく、特に酸性下でジヒドロキシ化合物(1)は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
前記の塩基性安定剤としては、ナトリウム又はカリウムの水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、既知の塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などが好ましい。塩基性安定剤のジヒドロキシ化合物(1)中の含有量に特に制限はないが、ジヒドロキシ化合物(1)に対して、通常0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上述したジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸ジエステルとを原料として重縮合させて得ることができる。
(炭酸ジエステル)
炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(3)で表されるものが挙げられ、1種又は2種以上の混合で用いてもよい。
Figure 2015199348
一般式(3)において、A及びAは、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜炭素数18の脂肪族基又は置換もしくは無置換の芳香族基であり、AとAとは同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(3)で表される炭酸ジエステル(以下「炭酸ジエステル(3)」と称す場合がある。)としては、例えば、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられ、好ましくはジフェニルカーボネートである。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg(PC))は、通常145℃未満、好ましくは130℃未満である。一方下限は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上である。ガラス転移温度(Tg(PC))は、用いるジヒロドキシ化合物や、炭酸ジエステルを適宜選択することによって調整可能である。
<重縮合反応触媒>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上述のジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(3)とをエステル交換反応により重縮合させて製造することができる。このエステル交換反応で使用されるエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、「重合触媒」と言うことがある)は、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム又はマグネシウム等の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩等、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物の1種又は2種以上が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolである。
<製造方法>
原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの混合の温度は通常80〜250℃、好ましくは90〜200℃、更に好ましくは100〜120℃である。
炭酸ジエステル(3)は、ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のモル比率、好ましくは、0.95〜1.10のモル比率である。
ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(3)とを重縮合させる方法は、上述の触媒の存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応形式は、バッチ式、連続式、またはそれらの組み合わせのいずれの方法でもよい。
重合反応の温度は、具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、140℃〜270℃、好ましくは200℃〜230℃で、110kPa〜1kPa、好ましくは30kPa〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、0.1時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を200Pa以下にして、内温の最高温度210℃〜270℃、通常0.1時間〜10時間行う。
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂は、重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、後述するその他の成分を添加、混練して、ポリカーボネート樹脂組成物とすることも出来る。
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、通常1.20dL/g以下であり、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。なお、当該還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート溶液の濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
[フィラー]
本発明で用いるポリカーボーネート樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、フィラーが含まれるポリカーボーネート樹脂組成物であってもよい。フィラーを含有させることにより、樹脂成形体の耐衝撃性、剛性等の機械的強度を向上させるという特徴を発揮することができる。
前記フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ベントナイト、ドロマイト、バーライト、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、ドーソナイト、シラスバルーン、クレー、セリサイト、長石粉、カオリナイト、ゼオライト(合成ゼオライトも含む)、タルク、マイカ(合成マイカも含む)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、チタン酸カリウム、石膏、ノバキュライト、白土、ハイドロタルサイトおよびシリカ等を用いることができる。成形体の機械的物性を向上させるためには、ポリエチレンテレフタレート繊維、ガラス繊維、炭素繊維をフィラーとして用いることが好ましい。これら、フィラーは1種又は2種以上を使用してもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂にフィラーを添加する場合、フィラーの添加量は、目的とする成形体の機械的強度等の各種物性に応じて公知の範囲で添加すればよいが、例えばポリカーボネート樹脂100重量部に対して、通常0.01重量部以上300重量部以下であり、好ましくは0.05重量部以上100重量部以下、より好ましくは0.1重量部以上50重量部以下、特に好ましくは1重量部以上40重量部以下である。
本発明で用いるポリカーボーネート樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、着色剤、熱安定剤、中和剤、耐光安定剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、衝撃改良剤、加水分解抑制剤、発泡剤等のその他の成分が含まれるポリカーボネート樹脂組成物であってもよい。これら、その他の成分は1種又は2種以上を使用してもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂に、その他の成分を添加する場合、その他の成分の添加量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、通常0.01重量部〜100重量部であり、好ましくは0.05重量部〜50重量部、より好ましくは0.1重量部〜30重量部、特に好ましくは0.2重量部〜10重量部である。
ポリカーボネート樹脂に対するその他の成分の添加量が多すぎると、本発明の効果が得られない可能性がある。
ポリカーボネート樹脂にフィラーやその他の成分を加え、ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法は公知の方法であれば限定されないが、添加物を任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機に加え、混合して製造することができる。また、その他の成分が含まれるマスターバッチを用いることもできる。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、着色剤を含有することが好ましい。着色剤は、成形体を着色する作用があれば特に限定されないが、例えば染料や顔料が挙げられ、成形品の発色や耐久性の点から顔料が好ましく用いられる。顔料としては例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、カーボンブラック等が挙げられる。また、成形体にメタリック調、パール調の表面光沢を持たせる時は、着色剤を付着させたアルミ粒子やマイカを含有させることが好ましい。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、耐光安定剤を含有することが好ましい。耐光安定剤とは、主に紫外線等の光による樹脂の劣化を防止し、光に対する安定性を向上させる作用を有するものであり、市販品を始め、公知のものを用いてよい。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、成形時の金型装置からの離型性を向上させるために、離型剤を含有していることが好ましい。離型剤としては、炭素数12以上の高級脂肪酸、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、蜜蝋等の天然動物系ワックス、カルナバワックス等の天然植物系ワックス、パラフィンワックス等の天然石油系ワックス、モンタンワックス等の天然石炭系ワックス、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等の公知のものが用いられる。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、通常用いられるホスファイト系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、射出成形機内の滞留時間が長くなった場合における焼けや変色を抑制するために、公知の通常用いられる熱安定剤として酸性化合物又はその誘導体を含有していてもよい。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、射出成形機内の滞留時間が長くなった場合における着色を抑制するために、通常用いられる熱安定剤として公知の酸性化合物又はその誘導体を含有していてもよい。
[ポリカーボネート樹脂の成形]
次に、前記の方法で製造されたポリカーボネート樹脂を射出成形する方法について説明する。
<射出成形方法>
本発明にかかる樹脂成形体の製造方法は、射出成形用金型(以下、単に「金型」と称する。)を用いた製造方法である。本発明を実施するにあたっては、既存の射出成形技術と組み合わせて使用することもできる。例えば、化学発泡成形法、物理発泡成形法、コアバック発泡成形法、ショートショット法、射出圧縮成形法、インサート成形法、ガスインジェクション法等が挙げられる。
まず、射出成形用金型を昇温する。
射出成形用金型に樹脂を射出する際のキャビティ面の温度は60℃以上であり、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上、特に好ましくは。105℃以上、最も好ましくは120℃以上である。一方、温度の上限は特に限定されないが、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下、特に好ましくは150℃以下、最も好ましくは140℃以下である。射出時のキャビティ面の温度が上記範囲にあると成形体の表面硬度や耐傷付き性を向上させることができる。
樹脂を射出成形用金型に射出する際の射出速度は通常20cm/秒以上、好ましくは35cm/秒以上である。上限は特に限定されないが、通常200cm/秒以下、好ましくは150cm/以下である。射出速度を上記範囲とすることで、成形体のウエルドを抑制することができる傾向にある。この射出速度とは、射出器に充填された溶融樹脂が金型のキャビティ内に排出される単位時間あたりの量(体積)をいう。
次いで、キャビティ12内に樹脂を射出して充填すると共に、圧力を保持する。所定時間経過した後、金型を冷却し、得られた樹脂成形体を取り出す。前記保持する時間としては、通常30秒以内、好ましくは15秒以内である。30秒より長いと、過充填状態となり金型が開かなくなる、バリが発生しやすいという問題点を生じる場合がある。一方、保持時間の下限は、通常2秒以上、好ましくは5秒以上である。2秒より短いと、充填不足になり、転写ムラやヒケが目立つという問題点を生じる場合がある。
また、前記の冷却開始から冷却終了までの時間を冷却時間とし、樹脂射出量が1kg未満の成形体を製造する場合の冷却時間は、通常180秒以内、好ましくは50秒以内、より好ましくは30秒以内である。一方、冷却時間の下限は、10秒以上がよく、15秒以上が好ましい。また、樹脂射出量が1kg以上の成形体を製造する場合、冷却時間は、通常10分以内、好ましくは5分以内、より好ましくは2分以内であり、下限は通常10秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。
冷却時間が長すぎると、成形サイクルが長くなり、十分な生産性が得られないという問題が生じる場合があり、冷却時間が短すぎると、成形体内部の冷却が不十分となり、製品取出し時に変形を引き起こしたり、製品取出し後の収縮が大きくなるという問題点を生じる場合がある。
さらに、前記の射出用金型を開いて樹脂成形体を排出する際は、その射出成形用金型のキャビティ面温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ面の温度より10℃以上低い状態で行う必要があり、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。上記範囲にあることで、耐傷付き性に優れた成形体を製造することができる。なお、(該樹脂射出時の金型キャビティ面の温度)−(射出成形用金型のキャビティ面温度)(以下、「ΔT」と略することがある。)の上限は、特に限定されないが、通常180℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下、最も好ましくは70℃以下である。
また、前記の射出用金型からの樹脂成形体の取り出し時の温度は、使用する樹脂の結晶化温度、融点又はガラス転移温度(以下、「ガラス転移温度等」と称する。)より30℃以上低い温度が好ましく、50℃以上低い温度が好ましい。上限としては、特に限定されないが、通常ガラス転移温度等より50℃高い温度以下であり、好ましくは30℃高い温度以下である。これらの範囲をみたすことにより、得られる成形体のウエルドの発生を抑制するとともに、成形体の表面硬度や耐傷付き性を向上させることができる。
さらにまた、前記のポリカーボネート樹脂の射出から樹脂成形体を排出するまでの時間(成形時間)は2時間以内であり、好ましくは1時間以内、より好ましくは10分以内、更に好ましくは5分以内、最も好ましくは3分以内である。成形時間が長すぎると目的の寸法が得られにくいという問題点を生じる場合がある。下限は特に限定されないが、保圧時間と冷却時間の合計以上である。
なお、本発明における成形時間とは、樹脂を金型に充填してから金型を開き、樹脂成形体の排出を行うまでの時間を意味し、上記保圧時間と冷却時間の和を意味する。
特に、樹脂射出時のキャビティ面の温度、成形体排出時のキャビティ面の温度、成形時間の全ての条件をみたすことにより、得られる成形体の表面の外観を良好にし、ウエルドの発生を抑制するとともに、成形体の表面硬度や耐傷付き性を向上させることができる。
特定の構造を含むポリカーボネート樹脂と特定の射出成形条件を組み合わせることで、得られる成形品の耐傷付き性が向上する作用機構は明らかではないが、以下の様に推測する。
ABS樹脂やビスフェノールA型ポリカーボネート/ABS樹脂共重合体は、本発明が規定する射出成形時の加熱・冷却工程を行うことでスクラッチ摩擦係数が上昇する(表面の滑り性が悪化)のに対し、本発明が規定するジヒドロキシ化合物(1)に由来する環状構造を有するポリカーボネート樹脂のみスクラッチ摩擦係数が低下(表面の滑り性が良化)した。
これは、本発明のポリカーボネート樹脂に含まれるジヒドロキシ化合物(1)に由来する環状構造に起因する成形体表面での分子配向または金型の高転写による成形体の表面の平滑性向上が寄与し、その結果、表面の滑り性の向上や硬度が増加し、耐傷付き性が向上したと考えられる。
ところで、前記ウエルドは、キャビティに通じるランナー・ゲート、すなわち、樹脂の流路が複数ある場合、それぞれのランナー・ゲート出口からでた溶融樹脂が衝突する位置で生じる。すなわち、図2(a)(b)に示すように、1つのランナー・ゲート出口からの溶融樹脂流pと、他の1つのランナー・ゲート出口からの溶融樹脂流p’とが衝突したとき、その衝突部における会合角θや、その衝突部における凹み部の深さdによって、ウエルドが発生の有無が影響される。図2(a)に示すように、θが小さかったり、dが大きかったりすると、ウエルドが視認され、ウエルド発生と認識される。一方、図2(b)に示すように、θが大きかったり、dが小さかったりすると、ウエルドが視認できず、ウエルドは発生せずと認識される。具体的には、θが130°以下の場合や、dが1μm以上の場合であると、ウエルドが視認される。
<樹脂射出成形用金型>
本発明に用いる樹脂射出成形用金型としては、蒸気式、加圧熱水式、オイル式、電磁誘導加熱式等の公知の加熱方法を用いる金型を用いることができるが、キャビティ面を急加熱、急冷却可能な電磁誘導加熱式金型を用いることが好ましい。
電磁誘導加熱式金型としては、図1(a)〜(c)に示すような金型を例として挙げることができる。
次に、図1(a)〜(c)に示す樹脂成形用電磁誘導加熱式金型を用いた樹脂の射出成形方法について説明する。射出成形用金型11は、所定の肉厚、幅、長さ、外周の高さを有する箱型形状であり、固定型11aに角状の凸部a及び丸状の凹部b1’及びb2’を設け、可動型11bに角状の凹部a’及び丸状の凸部b1及びb2を設けた形状を有する。
まず、射出成形用金型11の固定型11a及び可動型11bを開けた状態(製品を取り出した直後)で、上記誘導コイル15aに通電し、固定型11a及び可動型11bの磁性金属部14aの加熱を開始し、2つの型11a及び11bを突き合わせて、金型11を閉じ、所定温度に昇温させる。このときの温度は、前記した温度とする。
次いで、ノズル穴13a、ランナー・ゲート13bを通じて、キャビティ12内に樹脂を充填すると共に、圧力を保持する。所定時間経過した後、冷却機構によって、金型を冷却する。前記の保持する時間や、冷却時間は、前記した通りである。
降温完了後、金型を開いて、樹脂成形体を取り出すことによって、樹脂成形体を得ることができる。
ところで、上記の誘導コイル15aに通電することにより、固定型11a及び可動型11bの磁性金属部14aを加熱して、所定温度に昇温する際、上記においては、金型11を閉じると記載したが、所定範囲内に開けた状態とし、キャビティ12内の圧力を保持するときに、金型11を閉じる操作をすると、得られる樹脂成形体の寸法精度を向上させることができ、ひけが発生するのを抑制することができ、得られる樹脂成形体表面の粗さを減らすことができ、さらに、得られる樹脂成形体の角にまで樹脂を確実に充填させることができる。
上記の金型11を開ける量は、キャビティの最大厚みの5%以上がよく、10%以上が好ましい。5%より少ないとひけやそり変形を低減する効果が少なくなる傾向がある。一方、上限は、30%がよく、20%が好ましい。30%より多いと、キャビティを圧縮するときに大きい力が必要となる。
<用途>
この発明の製造方法で製造される樹脂成形体は、自動車用外装材、複雑な形状を持つ自動車用内装材、オーディオ、カーナビゲーション機器、携帯電話、テレビの筐体や枠部材等に、有用に使用することができる。
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
<ガラス転移温度測定>
以下に記載の方法でガラス転移温度の測定を行った。
動的粘弾性測定装置(商品名:EXSTAR DMS6100、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を使用して、窒素雰囲気下、周波数1Hz、温度範囲−50〜150℃、昇温速度2℃/分の測定条件でポリカーボネート樹脂の動的粘弾性を測定し、得られた温度−tanδ曲線の極大値を示す温度をポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)とした。
<耐傷付性評価試験>
成形体の図3(ア)に相当する位置から試験片を切りだし、下記の条件でスクラッチ試験を実施した。試験は2回行いその平均を傷発生荷重とした。また、試験により得られる摩擦係数をスクラッチ摩擦係数とし、下記(1)式より算出した。
・評価試験機:カトーテック(株)製:スクラッチテスターKK−01
・試験条件:
・測定モード:荷重増加モード
・測定速度:100mm/秒
・荷重範囲:1〜100N
・測定長さ:80mm
・先端チップ:Φ1
試験後のサンプル片を観察、分析し、傷発生開始荷重を求めた。
・スクラッチ摩擦係数(SCOF):
SCOF=水平荷重/垂直荷重・・・(1)
<原料>
(樹脂1:ジヒドロ化合物を含むポリカーボネート樹脂)
イソソルビド(ロケットフルーレ社製、蟻酸含有量5ppm)27.7重量部(0.516モル)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(イーストマン社製)13.0重量部(0.221モル)、ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)59.2重量部(0.752モル)、及び触媒として炭酸セシウム(和光純薬(株)製)2.21×10−4重量部(1.84×10−6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、15分間攪拌を行い原料を溶解させた。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、マトリックス樹脂のペレットを得た。得られた樹脂のガラス転移温度Tg(PC)は約122℃であった。
マトリックス樹脂のペレット100重量部にカーボンブラック2重量部を加え、溶融混練を行い着色樹脂ペレットを得た。
(樹脂2 ABS樹脂)
テクノポリマー(株)製:商品名「テクノABS150(黒色)」
(樹脂3 ビスフェノールA型ポリカーボネート/ABS樹脂)
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製:商品名「ユーピロン MB2212R(黒色)」
[実施例1]
<金型装置>
名機製作所(株)製:200t射出成形機に図1(b)〜(c)、図3に示す電磁誘導加熱式金型を取り付けた。
この金型は、肉厚2.5mm、幅250mm×長さ310mmx外周の高さ10mmの箱型形状に、170mm×115mmの角段部、φ20の丸段部2個、φ40の丸段部を有する形状である。
誘導コイル15aとしては、肉厚1mm、外径14mmの銅管を用いた。この誘導コイル15aは、誘導コイル15aとキャビティ面12a、12bとの距離の最大と最小の差が、3mm以内となるように配置した。また、キャビティの対角中心を基準としたとき、最も外側に配される誘導コイルが、キャビティ外周縁から5mm内側までの最外誘導コイル設置範囲Aの範囲内となるように、誘導コイル15aを配置した。
この金型を図示していない電磁誘導加熱装置から銅管に通電し、キャビティ面12a、12bを表1に示す温度に昇温し、次いで、ノズル13a、ランナー・ゲート13bを通じて、キャビティ12内に樹脂を充填した。充填完了後圧力を保持し、図示していない冷却装置から貫通孔18、銅管製誘導コイルに通水して、キャビティ面を冷却し、金型を開いて樹脂成形体を排出した。
<成形条件>
樹脂1を、上記射出成形機のホッパーに投入し、シリンダー温度250℃で溶融させた。
その後キャビティ面温度が132℃となったことを確認した後、キャビティ内に射出速度38cm/secで樹脂を充填し、充填完了後、50MPaの保持圧力で10秒間圧力を保持した。
その後、キャビティ面温度を66℃となるように60秒かけて冷却した後、金型を開いて樹脂成形体を排出した。
樹脂の射出から排出までの時間は70秒であった。
得られた成形体を1日静置した後、図3の(ア)に相当する位置から試験片を切り取り、耐傷付性評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1、参考例1〜4]
表1に示す樹脂及び成形条件とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に記載した。比較例1、参考例1〜4の何れも樹脂の射出から排出までの時間は120秒以内であった。
Figure 2015199348
実施例、比較例より、キャビティ面の温度を60℃以上とした射出成形用金型に本発明で規定する樹脂を射出し、射出成形用金型の金型キャビティ面温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ面の温度より10℃以上低い状態で樹脂成形体の排出を行った結果、スクラッチ摩擦係数が低下し(表面滑り性が向上)、さらには傷発生開始荷重が高くなったことから、耐傷付き性に優れた成形体が得られたことがわかる。
また、参考例1〜4より、ABS樹脂やビスフェノールA型ポリカーボネート/ABS樹脂共重合体を用いて、本発明と同様の成形条件を行ってもスクラッチ摩擦係数が増加し、傷発生開始荷重に関しても十分な向上効果は見られなかった。
耐傷付き性に優れた樹脂成形体を得るためには、特定の構造を有するポリカーボネート樹脂と特定の成形条件を組み合わせることが必要であることがわかった。
11 射出成形用金型
11a 固定型
11b 可動型
12 キャビティ
12a、12b キャビティ面
13a ノズル穴
13b ランナー・ゲート
14a 磁性金属部
14b 非磁性金属部
15 誘導コイル保持部
15a 誘導コイル
16a、16b 断熱材
17 母型
18 貫通孔
19 エジェクターピン
a、b1、b2 凸部
a’、b1’、b2’ 凹部
p、p’ 溶融樹脂流
A 最外誘導コイル設置範囲

Claims (7)

  1. ポリカーボネート樹脂を用いて、樹脂射出成形体を製造する方法であって、
    下記の要件1及び2を共に満たすことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
    要件1:ポリカーボネート樹脂が下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含む樹脂である。
    Figure 2015199348
    要件2:キャビティ面の温度を60℃以上とした射出成形用金型にポリカーボネート樹脂を射出し、
    前記射出成形用金型のキャビティ面温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ面の温度より10℃以上低い状態で樹脂成形体の排出を行い、
    該樹脂の射出から排出までの時間が2時間以内である。
  2. 前記ポリカーボネート樹脂が、更に脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
  3. 前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である請求項2に記載の樹脂成形体の製造方法。
  4. 前記射出成形用金型が電磁誘導加熱式金型である請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂成形体の製造方法。
  5. 前記ポリカーボネート樹脂に着色剤が含まれる請求項1〜4の何れか一項に記載の樹脂成形体の製造方法。
  6. 前記ポリカーボネート樹脂にアルミニウム粒子又はマイカ粒子が含まれる請求項1〜5の何れか一項に記載の樹脂成形体の製造方法。
  7. 上記請求項1〜6の何れか一項に記載の方法で製造された自動車用部品。
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