JP6716861B2 - 樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、雑巾やティシュ等で拭いた場合に発生する擦れ傷の発生が少ない耐擦傷性に優れる、植物由来原料であるイソソルビドを用いたポリカーボネート樹脂組成物よりなる成形体およびその製造方法に関するものである。
近年、環境への配慮より植物由来の原料であるイソソルビドに代表されるエーテル含有ジオールを用いたポリカーボネート樹脂が開発されている(例えば、特許文献1〜2)。
また、イソソルビドを用いたポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐候性や耐衝撃性に優れることが知られており、自動車内外装部品等への適用も知られている。(特許文献3)
一方、特許文献4には、熱可塑性樹脂の溶融組成物を射出成形するに際し、加熱時の金型温度が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型に射出する無塗装自動車外板用成形品の成形方法が開示されている。
国際公開第2004/111106号公報 国際公開第2007/063823号公報 特開2013−209585号公報 特開2006−205571号公報
ところで、イソソルビドを用いたポリカーボネート樹脂を用いた原着樹脂による自動車内装部品が知られているが、耐傷つき性が充分でないという課題があった。
さらに、本発明者の検討によれば、上述した特許文献4に記載の成形方法を用いても、十分な表面硬度や耐傷つき性を有するポリカーボネート樹脂成形体を得ることはできなかった。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、耐擦傷性に優れ、光沢と漆黒性に優れた成形体を提供するとともにその成形体を得るための成形方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を含むポリカーボネート樹脂と特定の成形条件を組み合わせることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記[1]〜[10]に存する。
[1]ポリカーボネート樹脂を用いた樹脂成形体であって、下記の要件(1)及び(2)を共に満たすことを特徴とする樹脂成形体。
(1)ポリカーボネート樹脂が下記一般式(1):
Figure 0006716861
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含む樹脂である。
(2)該成形体の少なくとも一面を以下の条件で測定した表面粗さ(Ra)が4〜13nmである。
<成形品の表面粗さ(Ra)>
・測定装置:VertScan((株)菱化システム製、形式:R3300H)
・測定範囲:468×351μm
・解像度:640×480ピクセル
・対物レンズ(倍率):×10
[2]さらに、下記の要件(3)を満たすことを特徴とする[1]に記載の樹脂成形体。
(3)該成形体の少なくとも一面について以下の摩耗試験を行い、その前後における表面粗さの変化((ΔRa))が7.0nm以下である。
<摩耗試験>
・測定装置:平面摩耗試験機(大栄科学精器製作所(株)製、形式:PA−300A)
・摩耗子:先端面の投影図が20mm×20mmの方形の形状を有し、その先端面の周縁部に曲率半径(R)が45mmのアールがつけられたものである。
・試験方法:摩耗子の先端部にティシュ(日本製紙クレシア(株)製、メーカー型番:528896)を3回織って取り付け、荷重9.8Nでストローク100mmを、30往復/分の速度で100往復させる。
[3]前記ポリカーボネート樹脂が、更にその他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである[1]又は[2]に記載の樹脂成形体。
[4]前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とその他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である[3]に記載の樹脂成形体。
[5]射出成形で成形された成形体であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の樹脂成形体を用いた自動車用部品。
[7]ポリカーボネート樹脂を用いて、射出成形により樹脂成形体を製造する方法であって、下記の要件(1)及び(2)を共に満たすことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
(1)ポリカーボネート樹脂が下記一般式(1):
Figure 0006716861
で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含む樹脂である。
(2)前記射出成形に用いられる金型の少なくとも一面が、#5000〜13000の研磨材で研磨された金型である。
[8]前記ポリカーボネート樹脂が、更にその他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである[7]に記載の樹脂成形体の製造方法。
[9]前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とその他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である[8]に記載の樹脂成形体の製造方法。
[10]前記射出成形に用いられる金型が樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型である[7]〜[9]のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。
本発明にかかる成形体は、表面硬度や耐傷つき性に優れることに加え、ウエルドの発生が抑制された優れた外観の成形体を得ることができる。このことから、複雑な形状をもつ成形品、例えば自動車用内装材、オーディオ、カーナビゲーション機器、携帯電話の筐体等に、有用に使用することができる。
この発明で用いる樹脂射出成形用金型で、電磁誘導加熱式金型の例であり、固定型をキャビティ面12aから見た正面図 この発明で用いる樹脂射出成形用金型で、電磁誘導加熱式金型の例であり、可動型をキャビティ面12bから見た正面図 この発明で用いる樹脂射出成形用金型で、電磁誘導加熱式金型の例を示す縦断断面図 実施例において使用する樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置の固定型をキャビティ面12aから見た正面図 (a)摩耗試験で用いられる摩耗子の正面図、(b)(a)の側面図
<樹脂成形体>
本発明の樹脂成形体は、特定のポリカーボネート樹脂を用い、特定の要件を備えた樹脂成形体である。
[ジヒドロキシ化合物を含むポリカーボネート樹脂]
<原料>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位と、ホスゲン又は炭酸ジエステル由来の構造単位を含む樹脂である必要がある。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位として、下記の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(以下、「ジヒドロキシ化合物(1)」と称する場合がある、)由来の構造単位を少なくとも含む。
Figure 0006716861
本発明に用いるポリカーボネート樹脂を構成する全てのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合は、好ましくは20〜90mol%、更に好ましくは30〜85mol%、特に好ましくは40〜80mol%である。
ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合が多過ぎると、本発明に用いるポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品にサンシャインカーボンアークを用いた照射処理を施した際、割れが生じる場合があり、また透明性が悪化しヘイズが大きくなる場合がある。ただし、後述する耐光安定剤を含有させることによりこの割れを防止することも可能である。一方、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合が少な過ぎると、得られる成形品の耐熱性が低下する場合がある。
上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネート樹脂の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
前記その他のジヒドロキシ化合物としては、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物及びエーテル含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上のジヒドロキシ化合物を採用することが好ましい。即ち、前記ポリカーボネート樹脂は、前記構造単位(a)と、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物及びエーテル含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを含む共重合体であることが好ましい。
これらのジヒドロキシ化合物は柔軟な分子構造を有しているため、前記構造単位(b)を含むポリカーボネート樹脂は優れた靭性を有する。これらのジヒドロキシ化合物の中でも、靭性を向上させる効果の大きい脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物を用いることが好ましく、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物を用いることが最も好ましい。脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物及びエーテル含有ジヒドロキシ化合物の具体例としては、以下の通りである。
脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば以下のジヒドロキシ化合物を採用することができる。エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物;1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐鎖を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物。
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば以下のジヒドロキシ化合物を採用することができる。1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、リモネン等の、テルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール又は3級アルコールであるジヒドロキシ化合物。
エーテル含有ジヒドロキシ化合物としては、オキシアルキレングリコール類やアセタール環を含有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。
オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等を採用することができる。
アセタール環を含有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記構造式(2−1)で表されるスピログリコールや、下記構造式(2−2)で表されるジオキサングリコール等を採用することができる。
Figure 0006716861
Figure 0006716861
その他のジヒドロキシ化合物として、脂環式ジヒドロキシ化合物を用いる場合には、ポリカーボネート樹脂中の前記ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構成単位とその他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲であることが好ましく、90:10〜40:60であることが機械的物性や耐熱性の観点からさらに好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂の合成に供されるジヒドロキシ化合物(1)は、公知で通常用いられる還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよく、特に酸性下でジヒドロキシ化合物(1)は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
前記の塩基性安定剤としては、ナトリウム又はカリウムの水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、既知の塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などが好ましい。塩基性安定剤のジヒドロキシ化合物(1)中の含有量に特に制限はないが、ジヒドロキシ化合物(1)に対して、通常0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上述したジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸ジエステルとを原料として重縮合させて得ることができる。
(炭酸ジエステル)
炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(3)で表されるものが挙げられ、1種又は2種以上の混合で用いてもよい。
Figure 0006716861
一般式(3)において、A及びAは、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜炭素数18の脂肪族基又は置換もしくは無置換の芳香族基であり、AとAとは同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(3)で表される炭酸ジエステル(以下「炭酸ジエステル(3)」と称す場合がある。)としては、例えば、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられ、好ましくはジフェニルカーボネートである。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg(PC))は、通常145℃未満、好ましくは130℃未満である。一方下限は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上である。ガラス転移温度(Tg(PC))は、用いるジヒロドキシ化合物や、炭酸ジエステルを適宜選択することによって調整可能である。
<重縮合反応触媒>
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述のジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(3)とをエステル交換反応により重縮合させて製造することができる。このエステル交換反応で使用されるエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、「重合触媒」と言うことがある)は、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム又はマグネシウム等の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩等、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物の1種又は2種以上が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolである。
<製造方法>
原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの混合の温度は通常80〜250℃、好ましくは90〜200℃、更に好ましくは100〜120℃である。
炭酸ジエステル(3)は、ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のモル比率、好ましくは、0.95〜1.10のモル比率である。
ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(3)とを重縮合させる方法は、上述の触媒の存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応形式は、バッチ式、連続式、またはそれらの組み合わせのいずれの方法でもよい。
重合反応の温度は、具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、140℃〜270℃、好ましくは200℃〜230℃で、110kPa〜1kPa、好ましくは30kPa〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、0.1時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を200Pa以下にして、内温の最高温度210℃〜270℃、通常0.1時間〜10時間行う。
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂は、重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、後述するその他の成分を添加、混練して、ポリカーボネート樹脂組成物とすることも出来る。
このようにして得られた本発明に用いるポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、通常1.20dL/g以下であり、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。なお、当該還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート溶液の濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
[無機充填材]
本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、フィラーが含まれるポリカーボネート樹脂組成物であってもよい。フィラーを含有させることにより、樹脂組成物の耐衝撃性、剛性や各種機械的強度を向上させるという特徴を発揮することができる。
前記フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ベントナイト、ドロマイト、バーライト、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、ドーソナイト、シラスバルーン、クレー、セリサイト、長石粉、カオリナイト、ゼオライト(合成ゼオライトも含む)、タルク、マイカ(合成マイカも含む)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、チタン酸カリウム、石膏、ノバキュライト、白土、ハイドロタルサイトおよびシリカ等を用いることができる。成形体の機械的物性からポリエチレンテレフタレート繊維、ガラス繊維、炭素繊維を用いることが好ましい。これら、フィラーは1種又は2種以上を使用してもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂にフィラーを添加する場合、フィラーの添加量は、目的とする成形体の機械的強度等の各種物性に応じて公知の範囲で添加すればよいが、例えばポリカーボネート樹脂(100重量%)に対して、通常0.01重量%以上300重量%以下であり、好ましくは0.05重量%以上100重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上50重量%以下、特に好ましくは1重量%以上40重量%以下である。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、着色剤、熱安定剤、中和剤、耐光安定剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、衝撃改良剤、加水分解抑制剤、発泡剤等のその他の成分が含まれるポリカーボネート樹脂組成物であってもよい。これら、その他の成分は1種又は2種以上を使用してもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂に、その他の成分を添加する場合、その他の成分の添加量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、通常0.01重量部〜100重量部であり、好ましくは0.05重量部〜50重量部、より好ましくは0.1重量部〜30重量部、特に好ましくは0.2重量部〜10重量部である。
ポリカーボネート樹脂に対するその他の成分の添加量が多すぎると、本発明の効果が得られない可能性がある。
ポリカーボネート樹脂にその他の成分を加え、ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法は公知の方法であれば限定されないが、その他の成分を任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機に加え、混合して製造することができる。また、その他の成分が含まれるマスターバッチを用いることもできる。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、着色剤を含有することが好ましい。着色剤は、成形体を着色する作用があれば特に限定されないが、例えば染料や顔料が挙げられ、成形品の発色や耐久性の点から顔料が好ましく用いられる。顔料としては例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、カーボンブラック等が挙げられる。また、成形体にメタリック調、パール調の表面光沢を持たせる時は、着色剤を付着させたアルミ粒子やマイカを含有させることが好ましい。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、耐光安定剤を含有することが好ましい。耐光安定剤とは、主に紫外線等の光による樹脂の劣化を防止し、光に対する安定性を向上させる作用を有するものであり、市販品を始め、公知のものを用いてよい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂組成物は成形時の金型装置からの離型性を向上させるために、離型剤を含有していることが好ましい。離型剤としては、炭素数12以上の高級脂肪酸、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、蜜蝋等の天然動物系ワックス、カルナバワックス等の天然植物系ワックス、パラフィンワックス等の天然石油系ワックス、モンタンワックス等の天然石炭系ワックス、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等の公知のものが用いられる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂組成物は、通常用いられるホスファイト系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形機内の滞留時間が長くなった場合における焼けや変色を抑制するために、公知の通常用いられる熱安定剤として酸性化合物又はその誘導体を含有していてもよい。
本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、射出成形機内の滞留時間が長くなった場合における着色を抑制するために、通常用いられる熱安定剤として公知の酸性化合物又はその誘導体を含有していてもよい。
[ポリカーボネート樹脂の成形]
次に、前記の方法で製造されたポリカーボネート樹脂を射出成形する方法について説明する。なお、本発明の成形品の製造方法は、特に限定されないが、押出成形または射出成形が成形加工性や汎用性の点から好ましく、射出成形が特に好ましい。
<射出成形方法>
本発明にかかる樹脂成形体の製造方法の好ましい態様の一つは、射出成形用金型(以下、単に「金型」と称する。)を用いた製造方法である。本発明を実施するにあたっては、既存の射出成形技術と組み合わせて使用することもできる。例えば、化学発泡成形法、物理発泡成形法、コアバック発泡成形法、ショートショット法、射出圧縮成形法、インサート成形法、ガスインジェクション法等が挙げられる。
まず、射出成形用金型を昇温する。
射出成形用金型に樹脂を射出する際のキャビティ面の温度は60℃以上であり、65℃以上が好ましい。一方、温度の上限は特に限定されないが、通常250℃以下、好ましくは200℃以下である。射出時のキャビティ面の温度が上記範囲にあると成形体の表面硬度や耐擦傷性を向上させることができる。
樹脂を射出成形用金型に射出する際の射出速度は通常20cm/秒以上、好ましくは35cm/秒以上である。上限は特に限定されないが、通常200cm/秒以下、好ましくは150cm/秒以下である。射出速度を上記範囲とすることで、成形体のウエルドを抑制することができる傾向にある。この射出速度とは、射出器に充填された溶融樹脂が金型のキャビティ内に排出される単位時間あたりの量(体積)をいう。
次いで、キャビティ内に樹脂を射出して充填すると共に、圧力を保持する。所定時間経過した後、金型を冷却し、得られた樹脂成形体を取り出す。前記保持する時間としては、通常30秒以内、好ましくは15秒以内である。30秒より長いと、過充填状態となり金型が開かなくなる、バリが発生しやすいという問題点を生じる場合がある。一方、保持時間の下限は、通常2秒以上、好ましくは5秒以上である。2秒より短いと、充填不足になり、転写ムラやヒケが目立つという問題点を生じる場合がある。
また、前記の冷却開始から冷却終了までの時間を冷却時間とし、樹脂射出量が1kg未満の成形体を製造する場合の冷却時間は、通常180秒以内、好ましくは90秒以内、より好ましくは60秒以内である。一方、冷却時間の下限は、10秒以上がよく、15秒以上が好ましい。また、樹脂射出量が1kg以上の成形体を製造する場合、冷却時間は、通常10分以内、好ましくは5分以内、より好ましくは2分以内であり、下限は通常10秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。
冷却時間が長すぎると、成形サイクルが長くなり、十分な生産性が得られないという問題が生じる場合があり、冷却時間が短すぎると、成形体内部の冷却が不十分となり、製品取出し時に変形を引き起こしたり、製品取出し後の収縮が大きくなるという問題点を生じる場合がある。
さらに、前記の射出用金型を開いて樹脂成形体を排出する際は、その射出成形用金型のキャビティ面温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ面の温度より10℃以上低い状態で行う必要があり、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。上記範囲にあることで、ウエルドの少ない成形体を製造することができる傾向にある。なお、(該樹脂射出時の金型キャビティ面の温度)−(射出成形用金型のキャビティ面温度)(以下、「ΔT」と略することがある。)の上限は、特に限定されないが、150℃以下である。
また、前記の射出用金型からの樹脂成形体の取り出し時の温度は、使用する樹脂の結晶化温度、融点又はガラス転移温度(以下、「ガラス転移温度等」と称する。)より50℃低い温度が好ましく、30℃低い温度が好ましい。上限としては、ガラス転移温度等より50℃高い温度が好ましく、30℃高い温度が好ましい。これらの範囲をみたすことにより、得られる成形体のウエルドの発生を抑制するとともに、成形体の表面硬度や耐傷付き性を向上させることができる。
さらにまた、前記のポリカーボネート樹脂の射出から樹脂成形体を取り出すまでの成形時間は2時間以内であり、好ましくは1時間以内、より好ましくは10分以内、更に好ましくは5分以内、最も好ましくは3分以内である。成形時間が長すぎると目的の寸法が得られにくいという問題点を生じる場合がある。下限は特に限定されないが、保圧時間と冷却時間の合計以上である。
なお、本発明における成形時間とは、樹脂を金型に充填してから金型を開き、樹脂成形体の排出を行うまでの時間を意味し、上記保圧時間と冷却時間の和を意味する。
特に、前記金型の温度、樹脂の射出から樹脂成形体を取り出すまでの成形時間、樹脂充填後の保持時間、及び冷却時間の全ての条件をみたすことにより、得られる成形体の表面の外観を良好にし、ウエルドの発生を抑制するとともに、成形体の表面硬度や耐傷付き性を向上させることができる。
特定の構造を含むポリカーボネート樹脂と特定の射出成形条件を組み合わせることで得られる成形品の耐傷付き性が向上したのか作用は明らかではないが、以下の様に推測する。
本願が規定する射出成形時の加熱・冷却工程によって、ポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物(1)に由来する環状構造が成形体表面で配向が生じることによって、表面硬度が向上し、耐傷付き性に優れた成形体を得ることが出来たと考える。
<樹脂射出成形用金型>
本発明に用いる樹脂射出成形用金型としては、蒸気式、加圧熱水式、オイル式、電磁誘導加熱式等の公知の加熱方法を用いる金型を用いることができるが、キャビティ面を急加熱、急冷却可能な電磁誘導加熱式金型を用いることが好ましい。
電磁誘導加熱式金型としては、図1(a)〜(c)に示すような金型を例として挙げることができる。
次に、図1(a)〜(c)に示す樹脂成形用電磁誘導加熱式金型を用いた樹脂の射出成形方法について説明する。射出成形用金型11は、所定の肉厚、幅、長さ、外周の高さを有する箱型形状であり、固定型11aに角状の凸部a及び丸状の凹部b1’及びb2’を設け、可動型11bに角状の凹部a’及び丸状の凸部b1及びb2を設けた形状を有する。
まず、射出成形用金型11の固定型11a及び可動型11bを開けた状態(製品を取り出した直後)で、上記誘導コイル15aに通電し、固定型11a及び可動型11bの磁性金属部14aの加熱を開始し、2つの型11a及び11bを突き合わせて、金型11を閉じ、所定温度に昇温させる。このときの温度は、前記した温度とする。
次いで、ノズル穴13a、ランナー・ゲート13bを通じて、キャビティ12内に樹脂を充填すると共に、圧力を保持する。所定時間経過した後、冷却機構によって、金型を冷却する。前記の保持する時間や、冷却時間は、前記した通りである。
降温完了後、金型を開いて、樹脂成形体を取り出すことによって、樹脂成形体を得ることができる。
ところで、上記の誘導コイル15aに通電することにより、固定型11a及び可動型11bの磁性金属部14aを加熱して、所定温度に昇温する際、上記においては、金型11を閉じると記載したが、所定範囲内に開けた状態とし、キャビティ12内の圧力を保持するときに、金型11を閉じる操作をすると、得られる樹脂成形体の寸法精度を向上させることができ、ひけが発生するのを抑制することができ、得られる樹脂成形体表面の粗さを減らすことができ、さらに、得られる樹脂成形体の角にまで樹脂を確実に充填させることができる。
上記の金型11を開ける量は、キャビティの最大厚みの5%以上がよく、10%以上が好ましい。5%より少ないとひけやそり変形を低減する効果が少なくなる傾向がある。一方、上限は、30%がよく、20%が好ましい。30%より多いと、キャビティを圧縮するときに大きい力が必要となる。
上記の製造方法で、使用される金型、特に射出成形金型は、そのキャビティ面のうち、一面が、#5000〜13000の研磨材で研磨されることが好ましい。金型を加熱することで金型研磨痕を転写しやすくなり、製品表面に研磨痕が見えやすくなる点から、下限値としては、#6000以上が好ましく、#7000以上が特に好ましい。また、上限値としては、金型の管理が難しくなる点から、#12000以下が好ましく、#11000以下がより好ましく、#10000以下が特に好ましい。
なお、「#」はメッシュ[Mesh]と呼び金網の網目の数を表す単位であり、1インチ(25.4mm間)にある網目の数を言う。一般的に、研磨材がどの程度細かい粒子であるかを示す規定であり、詳細は、JIS規格1998年JIS R6001又は1998年JIS B4130に規定されるものである。
上記の研磨材で研磨することにより、得られる成形体の該当する少なくとも一面は、表面粗さ(Ra)が4nm以上がよく、5nm以上がより好ましく、6nm以上が特に好ましい。Raが4nmより小さいと、擦傷が目立ちやすくなる傾向がある。一方、Raの上限は、13nm以下がよく、12nm以下が好ましく、11nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましく、9nm以下が特に好ましく、8nm以下が最も好ましい。Raを13nm以下とすることにより、耐擦傷性に優れ光沢感を有する美観を維持することが可能となる。
また、上記の研磨材で研磨することにより、得られる成形体の該当する少なくとも一面の表面粗さの変化((ΔRa))の下限は特に制限されないが、上限は、7.0nm以下がよく、5.0nm以下が好ましく、3.0nm以下がより好ましく、2.0nm以下がさらに好ましく、1.0nm以下が特に好ましい。
((ΔRa))を7.0nm以下とすることにより、耐擦傷性に優れ光沢感を有する美観を維持することが可能となる。
ところで、この表面粗さの変化((ΔRa))は、得られる成形体の該当する少なくとも一面について下記の摩耗試験を行って、その前後の表面粗さ(Ra)を測定し、得られた表面粗さ(Ra)の差の2乗として算出することができる。
(ΔRa)=(Ra−Ra
(なお、Raは、摩耗試験前の表面粗さ(Ra)を示し、Raは摩耗試験後の表面粗さ(Ra)を示す。)
前記の表面粗さ(Ra)は、(株)菱化システム製のVertScan(形式:R3300H)において、下記の条件により測定を行うことにより得られる。
・測定範囲:468×351μm、
・解像度:640×480ピクセル、
・対物レンズ(倍率):×10。
また、前記の摩耗試験は、下記の方法で測定することができる。
・測定装置:平面摩耗試験機(大栄科学精器製作所(株)製、形式:PA−300A)
・摩耗子:図3に示すように、先端部にアールが付けられた角柱状の形状を有するものであり、具体的には、先端面の投影図が20mm×20mmの方形の形状を有し、その先端面の周縁部に曲率半径(R)が
45mmのアールがつけられたものである。なお、「アールをつける」とは、角を取って丸く加工することをいう。
・試験方法:摩耗子の先端部にティシュ(日本製紙クレシア(株)製、メーカー型番:528896)を3回織って取り付け、荷重9.8Nでストローク100mmを、30往復/分の速度で100往復させる。
なお、このRa及び(ΔRa)が上述の範囲である樹脂成形体の面としては、どの面であってもよいが、製品としての美観や耐久性の点から、意匠面であることが好ましい。
<用途>
この発明の製造方法で製造される樹脂成形体は、自動車用外装材、複雑な形状を持つ自動車用内装材、オーディオ、カーナビゲーション機器等の自動車用部品、携帯電話、テレビの筐体や枠部材等に、有用に使用することができる。
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。まず、以下に測定方法及び原材料について記載する。
<測定方法>
[成形品のRa]
VertScan((株)菱化システム製、形式:R3300H)において、実施例または比較例で得られた樹脂成形体を以下の条件のバードスキャン法により測定を行った。
・測定範囲:468×351μm、
・解像度:640×480ピクセル、
・対物レンズ(倍率):×10。
[耐擦傷性(摩耗試験)]
平面摩耗試験機(大栄科学精器製作所(株)製、形式:PA−300A)において、下記の摩耗子の先端部にティシュ(日本製紙クレシア(株)製、メーカー型番:528896)を3回織り、摩耗子に取り付けて、荷重9.8Nでストローク100mmを、30往復/分の速度で100往復させた後、表面を目視で観察した。
全く傷が見当たらない場合は◎、摩耗子幅に2本以下の傷が見られる場合を〇、3本以上10本以下の傷が見られる場合を△、摩耗子幅全面に白く見える場合を×とした。
・摩耗子:図3に示すように、先端部にアールが付けられた角柱状の形状を有するものであり、具体的には、先端面の投影図が20mm×20mmの方形の形状を有し、その先端面の周縁部に曲率半径(R)が45mmのアールがつけられたものである。
[成形品の(ΔRa)
成形品を前記摩耗試験をかける前と後において、前記成形品のRaを測定し、下記の式で算出した。
(ΔRa)=(Ra−Ra
(なお、Raは、摩耗試験前の表面粗さ(Ra)を示し、Raは摩耗試験後の表面粗さ(Ra)を示す。)
[初期の光沢]
前記の摩耗試験を行う前の成形品の光沢について、下記の基準で評価した。
◎:鏡面性が良好、
○:鏡面性がやや良好、
△:鏡面性がやや劣る。
[漆黒性(明度L値)]
樹脂組成物を射出成形機(東芝機械(株)製EC−75SX)により100mm×100mm×2mmtのシートを成形した。該シートの非擦傷部分を使用し、JIS Z 8729に準拠し、日本電色工業(株)製 ZE−2000)を使用し、D65/10光源で反射測定径φ10mmを使用し反射法にてL値を測定した。この値が小さいほど黒色性が高いと言える。
<原料>
(樹脂1:一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むポリカーボネート樹脂)
イソソルビド(ロケットフルーレ社製、蟻酸含有量5ppm)27.7重量部(0.516モル)に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノール(イーストマン社製)13.0重量部(0.221モル)、ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)59.2重量部(0.752モル)、及び触媒として、炭酸セシウム(和光純薬(株)製)2.21×10−4重量部(1.84×10−6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、マトリックス樹脂のペレットを得た。
得られた樹脂のガラス転移温度Tg(PC)は約122℃であった。
(樹脂2 ビスフェノールA型ポリカーボネート)
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ユービロン S−3000RB(黒色)
[実施例1]
<金型装置>
名機製作所(株)製:200t射出成形機に、に図1(b)〜(c)、図2に示す電磁誘導加熱式金型を取り付けた。
この金型は、肉厚2.5mm、幅250mm×長さ310mmx外周の高さ10mmの箱型形状に、170mm×115mmの角段部、φ20の丸段部2個、φ40の丸段部を有する形状である。
誘導コイル15aとしては、肉厚1mm、外径14mmの銅管を用いた。この誘導コイル15aは、誘導コイル15aとキャビティ面12a、12bとの距離の最大と最小の差が、3mm以内となるように配置した。また、キャビティの対角中心を基準としたとき、最も外側に配される誘導コイルが、キャビティ外周縁から5mm内側までの最外誘導コイル設置範囲Aの範囲内となるように、誘導コイル15aを配置した。
この金型を図示していない電磁誘導加熱装置から銅管に通電し、キャビティ面12a、12bを表1に示す温度に昇温し、次いで、ノズル穴13a、ランナー・ゲート13bを通じて、キャビティ12内に樹脂を充填した。充填完了後圧力を保持し、図示していない冷却装置から貫通孔18、銅管製誘導コイルに通水して、キャビティ面を冷却し、金型を開いて樹脂成形体を排出した。詳細な成形条件は後述する。
<成形条件>
樹脂1:マトリックス樹脂のペレット100重量部に染顔料0.2重量部を加え、溶融混練を行い、黒着色樹脂ペレットを得た。
上記射出成形機のホッパーに投入し、シリンダー温度250℃で溶融させた。
その後キャビティ面温度が132℃となったことを確認した後、キャビティ内に射出速度37cm/secで樹脂を充填し、充填完了後、40MPaの保持圧力で5秒間圧力を保持した。
その後、キャビティ面温度を80℃となるように30秒かけて冷却した後、金型を開いて樹脂成形体を排出した。
樹脂の射出から排出までの時間は45秒であった。
得られた成形体を1日静置した後、図2の(ア)に相当する位置から試験片を切り取り、
耐傷付性評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2、参考例1
研磨、加熱冷却成形、及び加熱時のキャビティ温度を表1に示す条件とした以外は実施例1と同様にして実験を行った。その結果を表1に示す。
[比較例1〜5]
比較例1は、表1に示す金型研磨とした以外は実施例1と同様に行った。比較例2は、金型温度を80℃一定で調整し、表1に示す金型研磨とした以外は実施例1と同様に行った。比較例3は、表1に示す金型研磨とした以外は、実施例1と同様に行った。比較例4は、金型温度を80℃一定で調整し、表1に示す金型研磨とした以外は実施例1と同様に行った。比較例5は、表1に示す樹脂及び成形条件とした以外は、実施例1と同様に行った。
Figure 0006716861
実施例1〜2、参考例1より、本発明で規定する樹脂は耐擦傷性に優れ、加熱冷却成形をすることで成形品のRaは低下し、さらには摩耗試験前後におけるRaの変化が小さく耐擦傷性が向上することがわかる。比較例1〜4より、加熱冷却を用いた場合でも金型研磨を#5000以下または#14000以上とすることで耐擦傷性は低下することがわかる。比較例5より、ビスフェノールA型ポリカーボネートは、耐擦傷性が本発明で規定する樹脂に比べて劣ることが分かる。
耐擦傷性に優れた樹脂成形体を得るためには、特定の構造を有するポリカーボネート樹脂と特定の金型研磨及び成形条件を組み合わせることが必要であることがわかった。
11 射出成形用金型
11a 固定型
11b 可動型
12 キャビティ
12a、12b キャビティ面
13a ノズル穴
13b ランナー・ゲート
14a 磁性金属部
14b 非磁性金属部
15 誘導コイル保持部
15a 誘導コイル
16a、16b 断熱材
17 母型
18 貫通孔
19 エジェクターピン
a、b1、b2 凸部
a’、b1’、b2’ 凹部
A 最外誘導コイル設置範囲

Claims (7)

  1. ポリカーボネート樹脂を用いて、射出成形により樹脂成形体を製造する方法であって、
    下記の要件(1)、(2)及び(3)を共に満たすことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
    (1)ポリカーボネート樹脂が下記一般式(1):
    Figure 0006716861
    で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物及びエーテル含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを含む共重合体である。
    (2)該成形体の少なくとも一面を以下の条件で測定した表面粗さ(Ra)が4〜13nmである。
    <成形品の表面粗さ(Ra)>
    ・測定装置:VertScan((株)菱化システム製、形式:R3300H)
    ・測定範囲:468×351μm
    ・解像度:640×480ピクセル
    ・対物レンズ(倍率):×10
    (3)射出成形用金型を開いて前記樹脂成形体を排出する際、その射出成型用金型のキャビティ面温度が、樹脂射出時の金型キャビティ面温度より10℃以上低い。
  2. さらに、下記の要件(4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
    (4)該成形体の少なくとも一面について以下の摩耗試験を行い、その前後の表面粗さ(Ra)を測定して得られた表面粗さの変化((ΔRa))が7.0nm以下である。
    <摩耗試験>
    ・測定装置:平面摩耗試験機(大栄科学精器製作所(株)製、形式:PA−300A)
    ・摩耗子:先端面の投影図が20mm×20mmの方形の形状を有し、その先端面の周縁部に曲率半径(R)が45mmのアールがつけられたものである。
    ・試験方法:摩耗子の先端部にティシュ(日本製紙クレシア(株)製、メーカー型番:528896)を3回織って取り付け、荷重9.8Nでストローク100mmを、30往復/分の速度で100往復させる。
  3. 前記構造単位(b)は、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位であり、
    前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)この構造単位(b)との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である請求項1又は2に記載の樹脂成形体の製造方法。
  4. 前記樹脂成形体が自動車用部品である請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。
  5. ポリカーボネート樹脂を用いて、射出成形により樹脂成形体を製造する方法であって、下記の要件(1)、(2)及び(3)を共に満たすことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
    (1)ポリカーボネート樹脂が下記一般式(1):
    Figure 0006716861
    で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物及びエーテル含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを含む共重合体である。
    (2)前記射出成形に用いられる金型の少なくとも一面が、#5000〜13000の研磨材で研磨された金型である。
    (3)射出成形用金型を開いて前記樹脂成形体を排出する際、その射出成型用金型のキャビティ面温度が、樹脂射出時の金型キャビティ面温度より10℃以上低い。
  6. 前記構造単位(b)は、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位であり、
    前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)この構造単位(b)との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である請求項に記載の樹脂成形体の製造方法。
  7. 前記射出成形に用いられる金型が樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型である請求項5又は6に記載の樹脂成形体の製造方法。
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