JP6913438B2 - ポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物からなるフィルムの製造方法に関する。
バイオマス資源から得られるジヒドロキシ化合物であるイソソルビド(以下、ISBと略記することがある)をモノマー成分とし、炭酸ジエステルとのエステル交換により、副生するモノヒドロキシ化合物を減圧下で留去しながら、ポリカーボネート樹脂を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。ISBから得られるポリカーボネート樹脂は、耐熱性を活かした成形材料としての利用の他にも、優れた光学特性を活かし、光学フィルムへの利用も検討されている(例えば、特許文献5参照)。
一般的な偏光子保護フィルムは偏光子を紫外線から守るため、紫外線吸収剤が添加されている。しかしながら、紫外線吸収剤の量が多く必要であり、ブリードアウト等の問題があった。それらを解消すべく、樹脂との相溶性が高い紫外線吸収剤や紫外線吸収機能を持つポリマーを添加させる方法が知られている(例えば、特許文献6参照)。
但し、一般的に偏光子保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムは吸水性が高く、大型テレビに用いた場合に耐久性が不足するという問題がある。また、アクリル系樹脂を用いた偏光板保護フィルムも提案されているが(例えば、特許文献7参照)、脆さがあるため取扱い時に破断したりすることがあり、薄膜化が困難であった。
また、一般的な偏光板を用いたディスプレイの場合、偏光板越しの光は直線偏光のため、偏光サングラス越しにディスプレイを見ると角度によりブラックアウトすることがある。これを解消するために、偏光子用保護フィルムの表層を位相差フィルムにする場合がある(例えば、特許文献8参照)。これらの位相差フィルムにおいても、偏光子を紫外線から守るために、紫外線吸収剤を含有する。
例えば、シクロオレフィンポリマー(以下、COPと略記することがある)を用いた場合、ブリードアウトやロール汚れを防止するために、2種3層にし、コア層のみに紫外線吸収剤を含有する技術がある(例えば、特許文献9参照)。
国際公開第2004/111106号パンフレット 特開2006−232897号公報 特開2006−28441号公報 特開2008−24919号公報 特開2011−021171号公報 特開2002−047357号公報 特開2013−83956号公報 特開2011−137954号公報 特開2015−31753号公報
しかし、ISBから得られるポリカーボネート樹脂は紫外線吸収がほとんどないため、該樹脂を偏光板保護フィルムに用いるには、該樹脂に大量の紫外線吸収剤の添加が必要である一方で、大量の紫外線吸収剤を添加すると、該樹脂のフィルムを製膜する際の紫外線
吸収剤のブリードアウトによるフィルム外観の劣化、該ブリードアウトによる製膜機のロール汚れ、フィルム異物の増加、ギアマークなどの外観の不良の課題がある。また、製膜時の劣化による機械的強度の低下の課題もある。
本発明の目的は、これらの課題を解消し、特定のポリカーボネート樹脂を用い、該樹脂のフィルムを製膜する際の紫外線吸収剤のブリードアウトによるフィルム外観の劣化、該ブリードアウトによる製膜機のロール汚れ、フィルム異物の増加、ギアマークなどの外観の不良等の問題が無く、特定波長の紫外線を吸収する高品質なポリカーボネート樹脂フィルムを製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を用い、特定の製膜条件下で前記樹脂を製膜することで、該樹脂のフィルムを製膜する際の紫外線吸収剤のブリードアウトによるフィルム外観の劣化、該ブリードアウトによる製膜機のロール汚れ、フィルム異物の増加、ギアマークなどの外観の不良等の問題の無い、特定波長の紫外線を吸収するフィルムを提供することを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の要旨は、下記[1]〜[5]に存する。
[1]下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂組成物からなる、波長380nmの光線透過率が1.0%以下、589nmでの厚み位相差(Rth(589))が20nm以下、589nmでの面内位相差(R0(589))が20nm以下、および厚みが50μm〜120μmであるフィルムを、押出機および押し出されたフィルムを搬送するロールを用いて製造する方法であって、該押出機の有するバレルの設定温度が230℃以上270℃未満、ロールの温度が90℃以上140℃未満である、ポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
Figure 0006913438
[2]前記ポリカーボネート樹脂組成物が、融点300℃以下の紫外線吸収剤を含有する、[1]に記載のポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
[3]前記紫外線吸収剤がトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、キノリノン系、およびインドール系から選ばれる少なくとも1種である、[2]に記載のポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
[4]前記バレルの設定温度が240℃以上である、[1]乃至[3]の何れか1つに記載のポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
[5]前記ロールの温度が135℃未満である、[1]乃至[4]の何れか1つに記載のポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
本発明によれば、特定波長の紫外線を吸収するフィルムを製膜する際の紫外線吸収剤のブリードアウトによるフィルム外観の劣化、該ブリードアウトによる製膜機のロール汚れ、フィルム異物の増加、ギアマークなどの外観の不良等の問題がなく、使用に耐えうる十分な強度を有する、低位相差の高品質なフィルムを製造することが出来る。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容
に限定されない。
[ポリカーボネート樹脂]
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、以下の通り、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、以下に示す通り、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料にして得られる。
<原料>
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。
Figure 0006913438
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に加え、必要に応じて、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物、(5)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが、より好ましい。
Figure 0006913438
HO−R−OH (5)
(上記式(5)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を示す。)
HO−CH−R−CH−OH (6)
(上記式(6)中、Rは炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を示す。)
H−(O−R−OH (7)
(上記式(7)中、Rは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を示し、pは2〜100の整数である。)
HO−R−OH (8)
(上記式(8)中、Rは炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基を示す。)
なお、以下において、各種の基の炭素数は、当該基が置換基を有する場合、その置換基の炭素数をも含めた合計の炭素数を意味する。
[式(1)で表されるジヒドロキシ化合物]
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むものである。
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にあるイソソルビド、イソマンニド、イソイデット等の無水糖アルコールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのジヒドロキシ化合物のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂が、上記(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を同時に含む場合、その比率は特に限定されず、ポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、適宜設定すればよい。
[式(4)〜(8)で表されるジヒドロキシ化合物]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて、上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことができる。
上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物は、分子内に環状エーテル構造を有するものであって、スピログリコールと呼ばれる化合物である。
<式(5)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜18の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を有する脂環式ジヒドロキシ化合物である。ここで、Rが置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられる。該アルキル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
このジヒドロキシ化合物は、環構造を有することにより、得られるポリカーボネート樹脂を成形したときの成形品の靭性を高めることが可能となり、なかでもフィルムに成形したときの靭性を高めることができる。
のシクロアルキレン基としては、環構造を有する炭化水素基であれば特に制限は無く、橋頭炭素原子を有するような橋かけ構造であっても構わない。ジヒドロキシ化合物の製造が容易で不純物量を少なくすることができるという観点から、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、5員環構造又は6員環構造を含む化合物、即ち、Rが置換若しくは無置換のシクロペンチレン基又は置換若しくは無置換のシクロへキシレン基であるジヒドロキシ化合物が好ましい。このようなジヒドロキシ化合物であれば、5員環構造又は6員環構造を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。該6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。
なかでも、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rが下記式(9)で示される種々の異性体であることが好ましい。ここで、式(9)中、R11は水素原子、又は、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基を示す。R11が置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基である場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
Figure 0006913438
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物として、より具体的には、テトラメチルシクロブタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール類、ペンタシクロジオール類等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<式(6)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数4〜20、好ましくは炭素数3〜18の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を有する脂環式ジヒドロキシ化合物である。ここで、Rが置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、該アルキル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
このジヒドロキシ化合物は、環構造を有することにより、得られるポリカーボネート樹脂を成形したときの成形品の靭性を高めることが可能となり、なかでもフィルムに成形したときの靭性を高めることができる。
のシクロアルキレン基としては、環構造を有する炭化水素基であれば特に制限は無く、橋頭炭素原子を有するような橋かけ構造であっても構わない。ジヒドロキシ化合物の製造が容易で不純物量を少なくすることができるという観点から、前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物は、5員環構造又は6員環構造を含む化合物、即ち、Rが置換若しくは無置換のシクロペンチレン基又は置換若しくは無置換のシクロへキシレン基であるジヒドロキシ化合物が好ましい。このようなジヒドロキシ化合物であれば、5員環構造又は6員環構造を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。該6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物は、なかでも、Rが前記式(9)で示される種々の異性体であることが好ましい。
前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物として、より具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、これらのジヒドロキシ化合物は、製造上の理由から異性体の混合物として得られる場合があるが、その際にはそのまま異性体混合物として使用することもできる。例えば、3,8−ビス(ヒド
ロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、及び4,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンの混合物を使用することができる。
前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
<式(7)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5の置換若しくは無置換のアルキレン基を有する化合物である。pは2〜100、好ましくは6〜50、より好ましくは12〜40の整数である。
前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物としては、具体的にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量150〜4000)などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物としては、分子量300〜2000のポリエチレングリコールが好ましく、中でも分子数600〜1500のポリエチレングリコールが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<式(8)で表されるジヒドロキシ化合物>
前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基である。Rのアルキレン基が置換基を有する場合、当該置換基としては炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物のうち、Rが炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基であるジヒドロキシ化合物としては、具体的にはエチレングルコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられるが何らこれらに限定されるものではない。
これらのジヒドロキシ化合物のなかでも、入手のし易さ、取扱いの容易さ、重合時の反応性の高さ、得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点からは、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。また耐熱性の観点からは、アセタール環を有するスピログリコールが好ましい。これらは得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び/又は前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいることが好ましく、反応性や耐熱性、さらに熱滞留における分解が少ないことから前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいることがより好ましい。
[その他のジヒドロキシ化合物]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(4)〜(8)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を必要に応じて、その他のジヒドロキシ化合物に由来する
構造単位に置き変えてもよい。
その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類やビスフェノール類のエチレンオキサイド(EO)付加類、フルオレン化合物等が挙げられる。
ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
ビスフェノール類のエチレンオキサイド(EO)付加類としては、前述のビスフェノール類の化合物にエチレンオキサイド(EO)付加したものが挙げられる。
<フルオレン化合物>
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、前記式(1)で表されるもの以外の、構造内に芳香族環を有するジヒドロキシ化合物は光学特性に悪影響を及ぼす虞があるため、このようなジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、ポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して50モル%以下で用いることが好ましく、より好ましくは20モル%以下であって、更には5モル%以下で用いることが好ましく、特にポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表されるもの以外の、構造内に芳香族環を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まないことが好ましい。
[ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合]
本発明において、ポリカーボネート樹脂に含まれる前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合は、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下である。該構造単位の含有割合が過度に少ないと、耐熱性が小さく、表面硬度が劣る可能性がある。また、該構造単位の含有割合が過度に多いと、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が過度に高くなって成形が困難になったり、吸水率が悪化する場合がある。
また、ポリカーボネート樹脂が、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(7)で表されるジヒドロキシ化合物及び前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有する場合、その含有割合は、ポリカーボネート樹脂に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して、0.1重量%以上20重量%未満、好ましくは0.1重量%以上18重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以上15重量%以下が適当である。前記式(4)から(8)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を、ポリカーボネート樹脂中に上記下限値以上含むことにより、該ポリカーボネート樹脂を溶融し成形する際に、熱による異物や気泡の発生を防止したり、ポリカーボネート樹脂の着色を防止したりすることができる。ただし、該構造単位が過度に多いと、成形品にした際に耐光性が低下する傾向がある。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造に使用される全てのジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤または熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよい。特に酸性下で本発明の特定ジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩および脂肪酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよびアミノキノリン等のアミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。これらの安定剤の中でも安定化の効果からはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、イミダゾールまたはヒンダードアミン系化合物が好ましい。
これら塩基性安定剤の、本発明で用いる全てのジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、本発明で用いる前記の特定ジヒドロキシ化合物は酸性状態では不安定であるので、上記の安定剤を含む特定ジヒドロキシ化合物の水溶液のpHが7付近となるように安定剤を添加することが好ましい。
安定剤の量が少なすぎると特定ジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると特定ジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、本発明で用いるそれぞれのジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
これら塩基性安定剤を本発明で用いるジヒドロキシ化合物に含めたままポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度または品質の制御が困難になるだけでなく、樹脂色相の悪化を招いてしまう。
このため、特定ジヒドロキシ化合物または前記その他のジヒドロキシ化合物のうち塩基性安定剤を含有するものについては、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂または蒸留等で除去することが好ましい。
また、本発明で用いられる特定ジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管または製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。
(炭酸ジエステル)
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述した特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(10)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 0006913438
上記式(10)において、AおよびAは、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、AとAとは同一であっても異なっていてもよい。AおよびAの好ましいものは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、より好ましいのは無置換の芳香族炭化水素基である。
前記式(10)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(DPC)およびジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート並びにジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。中でも好ましくはジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、不純物が重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
(エステル交換反応触媒)
本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、上述したジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造される。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。
前記エステル交換反応の際には、エステル交換反応触媒存在下で重縮合を行うが、本発明のポリカーボネート樹脂の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に触媒、重合触媒と言うことがある)は、反応速度または重縮合して得られるポリカーボネート樹脂の品質に非常に大きな影響を与え得る。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネート樹脂の透明性、色相、耐熱性、耐候性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されない。例えば、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物およびアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
前記の1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩および2セシウム塩等が挙げられる。中でも重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、リチウム化合物が好ましい。
前記の2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物またはバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
なお、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
前記の塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンおよび四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
前記の塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロ
キシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
前記のアミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリンおよびグアニジン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmolが好ましく、より好ましくは0.5μmol〜100μmolであり、特に1μmol〜50μmolが好ましい。
中でも長周期型周期表における2族からなる群及びリチウムより選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/またはカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上が好ましく、より好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上とする。また上限としては、20μmol以下が好ましく、より好ましくは10μmol以下であり、さらに好ましくは5μmol以下で、特に好ましくは3μmol以下である。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ようとするにはその分だけ重合温度を高くせざるを得なくなる。そのために、得られたポリカーボネート樹脂の色相が悪化する可能性が高くなり、また、未反応の原料が重合途中で揮発してジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、好ましくない副反応を併発し、得られるポリカーボネート樹脂の色相の悪化または成形加工時の樹脂の着色を招く可能性がある。
ただし、1族金属の中でもナトリウム、カリウムまたはセシウムは、ポリカーボネート樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料または反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、ポリカーボネート樹脂中のこれらの金属の化合物の合計量は、金属量として、1重量ppm以下であることが好ましく、さらには0.5重量ppm以下であることが好ましい。
<ガラス転移温度>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、下限値として90℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上である。一方で、上限値として、200℃以下であることが好ましく、より好ましくは160℃以下、特に好ましくは145℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性があり、また、位相差フィルムとして、偏光板と張り合わせた場合にも画像品質を下げる場合がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の溶融成形安定性が悪くなる場合があり、冷却が困難に
なり、外観不良や位相差のバラツキが発生したりする。本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
<溶融粘度>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂における溶融粘度は特に制限されないが、温度240℃、せん断速度91.2sec−1での溶融粘度が500Pa・sec−1以上2500Pa・sec−1以下であることが好ましく、800Pa・sec−1以上2300Pa・sec−1以下であることがより好ましく、900Pa・sec−1以上2000Pa・sec−1以下であることがさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が上記下限値より小さいと成形品の機械的強度が小さくなるという問題が生じる可能性がある。一方、溶融粘度が上記上限値より大きいと、成形する際の流動性が低下し、生産性が低下するという問題が生じたり、成形の際に成形品に気泡が混入して成形品の外観が低下したり、ポリカーボネート樹脂中の異物を濾過などにより除去することが困難になったりするという問題が生じる可能性がある。ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
上述の通り、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られる。
原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足したりする可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色相や熱安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の原料である特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと混合する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001vol%〜10vol%、中でも0.0001vol%〜5vol%、特には0.0001vol%〜1vol%の雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂を得るためには、反応に用いる特定ジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルを0.94〜1.04のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.98〜1.02、より好ましくは1.00〜1.01のモル比率である。このモル比率が小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂の末端フェニル基が減少して、成形の際の外観不良が発生しやすくなる。
また、このモル比率が大きくなると、エステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネート樹脂の製造が困難となったりする場合がある。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂の色相や耐候性を悪化させる可能性がある。さらには、特定ジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られるポリカーボネート樹脂中の残存炭酸ジエステル量が増加し、成形時の汚れや臭気、外観不良の問題を招く場合がある。
本発明において、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述
の触媒存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよいが、より少ない熱履歴でポリカーボネート樹脂が得られ、生産性にも優れている連続式が好ましい。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重合速度の制御や得られるポリカーボネート樹脂の品質の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることが有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、逆に低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的なポリカーボネート樹脂の色相を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。本発明のポリカーボネート樹脂は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制することが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造に使用される反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは4つである。本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
本発明において、重合触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、重合槽に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、重合槽に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の温度としては、130〜210℃、好ましくは150〜205℃、更に好ましくは170〜200℃である。
また、反応系の圧力としては、1〜110kPa、好ましくは5〜70kPa、さらに好ましくは7〜30kPa(絶対圧力)の圧力下、反応時間を0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモ
ノヒドロキシ化合物を反応系外へ除く。
所定の分子量のポリカーボネート樹脂を得るために、重合温度を高く、重合時間を長くし過ぎると色調が悪化する傾向にある。特にポリカーボネート樹脂の着色や熱劣化を抑制し、色相の良好なポリカーボネート樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度が240℃未満、特に210〜235℃であることが好ましい。
また、全反応段階における内温が210℃以上240℃以下である時の反応時間が3時間未満であることが、ポリカーボネート樹脂の着色や熱劣化を抑制でき色相の良好なポリカーボネート樹脂を得ることができるため好ましく、2.5時間以内であることが特に好ましい。
また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
押出機を使用した場合、押出機において、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練を行うこともできる。
押出機中の溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは220〜270℃である。溶融混練温度が200℃より低いと、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネート樹脂の熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、フィルム成形時のガスの発生による気泡の発生を招く。
このようにして得られた本発明で用いるポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。還元粘度の測定方法の詳細は実施例の項で記載する。
[ポリカーボネート樹脂の添加剤]
<リン系化合物>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂には、重合触媒を失活させ、さらに高温下でのポリカーボネート樹脂の着色を抑制するために添加された、リン系化合物を含有することが
好ましい。このリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、及び脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。上記の中でも触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているのは、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステルであり、特にホスホン酸エステルが好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル、(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p−メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert−ブチル、(4−クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、またはジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
脂肪族環状亜リン酸エステルは、リン原子を含む環状構造中に芳香族基を含まない亜リン酸エステル化合物と定義する。例えば、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマーなどジヒドロキシ化合物とペンタエリスリトールジホスファイトからなるポリマー型の化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
前記リン系化合物の含有量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえってポリカーボネート樹脂が着色したり、湿熱条件での着色が発生したりするので、リン系化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂中のリン原子の含有量として0.02重量ppm以上、0.7重量ppm以下とすることが好ましく、さらには0.05重量ppm以上、0.65重量ppm以下が好ましく、特には0.07重量ppm以上、0.60重量ppm以下が好ましい。
前記リン系化合物は通常、三塩化リンを出発原料に用いられるため、未反応物や脱離した塩酸由来の含塩素成分が残存する場合があるが、前記リン系化合物に含有される塩素原子の量は5重量%以下であることが好ましい。塩素原子の残存量が多いと、前記リン系化合物を添加する製造設備の金属部を腐食させたり、ポリカーボネート樹脂の熱安定性を低下させ、着色や熱劣化による分子量低下を促進させたりする懸念がある。
前記リン系化合物は前述のとおり、押出機を用いてポリカーボネート樹脂に添加、混練されることが好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂を重合後に溶融状態のまま押出機に供給し、ただちに前記リン系化合物を樹脂に添加することが最も効果的である。さらに、触媒を失活させた状態で、押出機で真空ベントにより脱揮処理を行うと、効率的に低分子成分を脱揮除去することができる。
<ヒンダードフェノール化合物>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂には、前記リン系化合物に加えて、ヒンダードフェノール化合物も含有することで、ポリカーボネート樹脂のさらなる色調向上が期待できる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−t
ert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3
,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の上記のヒンダードフェノール化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.001重量部〜1重量部が好ましく、0.005重量部〜0.5重量部がより好ましく、0.01重量部〜0.3重量部がさらに好ましい。
なお、ヒンダードフェノール化合物や以下の酸化防止剤についても、リン系化合物と同様に、押出機を用いてポリカーボネート樹脂に添加、混練されることが好ましい。
<酸化防止剤>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂には、酸化防止の目的で、通常知られている酸化防止剤を添加することもできる。
酸化防止剤としては、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニ
ル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
これらの酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.0001重量部〜0.1重量部が好ましく、0.0005重量部〜0.08重量部がより好ましく、0.001重量部〜0.05重量部がさらに好ましい。
<ブルーイング剤>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂においては、ブルーイング剤を含有することもできる。
本発明で用いるブルーイング剤は、通常ポリカーボネート樹脂組成物に使用されるブルーイング剤等から適宜選択し、その配合量を調整して使用すればよく、複数種のブルーイング剤を使用してもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂におけるブルーイング剤の含有量は、通常、ポリカーボネート樹脂(A)を100重量部とした場合、好ましくは0.1×10−4〜10.0×10−4重量部、より好ましくは0.3×10−4〜5.0×10−4重量部、特に好ましくは0.3×10−4〜2.0×10−4重量部である。
ブルーイング剤の含有量が0.1×10−4重量部以上であれば、本発明のポリカーボネート樹脂プレートの促進耐光性試験前後のYI値を特定の範囲とすることや、b値を3以下にすることが容易となるため好ましい。一方で、ブルーイング剤の含有量が10.0×10−4重量部以下であれば明度が低下することがないため、L値を90以上とすることが容易となるため好ましい。
本発明で用いるブルーイング剤としては、ポリカーボネート樹脂組成物に使用されるものを好適に使用することができるが、吸収波長の観点からは、極大吸収波長が好ましくは520〜600nm、より好ましくは540〜580nmの染料が用いられる。
本発明で用いるのに好ましいアンスラキノン系ブルーイング剤の具体例としては、例えば、一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 ランクセス社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]、Solvent Violet14、一般名Solvent Violet31[C
A.No68210;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]、Solvent Violet33[CA.No60725;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、Solvent Violet36[CA.No68210;商標名 ランクセス社製「マクロレックスバイオレット3R」]、Solvent Blue45[CA.No61110;商標名 サンド社製「テトラゾールブルーRLS」]、一般名Solvent Blue94[CA.No61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]、一般名Solvent Blue97[ランクセス社製「マクロレックスブルーRR」]、一般名Solvent Blue45、一般名Solvent Blue87および一般名Disperse Violet28が挙げられる。
これらの中でも、一般名Solvent Violet13[ランクセス社製「マクロレックスバイオレットB」]、一般名Solvent Violet36[ランクセス社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名Solvent Blue97[ランクセス社製「マクロレックスブルーRR」]が好ましく、一般名Solvent Violet13[ランクセス社製「マクロレックスバイオレットB」]がより好ましい。中でも特に、下記式(7)で表される構造の染料、すなわち一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 ランクセス社製「マクロレックスバイオレットB」および三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]が好ましい。
Figure 0006913438
本発明においてはまた、ブルーイング剤として、極大吸収波長が好ましくは520〜600nm、より好ましくは540〜580nmの顔料を用いることもでき、上記の染料と顔料を併用することもできる。
本発明において、ブルーイング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、ブルーイング剤の使用量は少ない方が好ましく、使用するブルーイング剤の種類も少ない方が好ましい。
本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)に配合する上記のブルーイング剤の配合時期、配合方法は特に限定されない。配合時期としては、例えば、重合反応前に原料とともに添加しそのまま重合を行う方法、重合反応終了時に配管や押出機で配合する方法、ポリカーボネート樹脂と他の配合剤と溶融混練する際に配合する方法等が挙げられるが、重合反応終了後に溶融混練して配合することが、ブルーイング剤の分散を良くし、b値とL値の調節の両立を図りやすいため好ましい。特に重縮合反応終了後に溶融状態のまま押出機に導入し、ブルーイング剤を配合して溶融混練する方法が、熱履歴や酸素混入の影響を最小限に抑えられるため好ましい。
上記の添加剤以外に、本発明のポリカーボネート樹脂は、これらのその他の樹脂成分と共に樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、衝撃改良剤、加水分解抑制剤、発泡剤、染顔料等を添加してポリカーボネート樹脂組成物とすることがで
きる。
更に、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
[透明フィルム]
本発明の透明フィルムは、前記ポリカーボネート樹脂または前記ポリカーボネート樹脂を含有する組成物をフィルム状に成形してなるものである。
<透明フィルムの製膜方法>
本発明において、前記ポリカーボネート樹脂または前記ポリカーボネート樹脂を含有する組成物を用いて透明フィルムを作製する方法は押出機および押し出されたフィルムを搬送するロールを備えた製膜機で製膜する方法あれば特に限定されることはなく、Tダイ成形法、インフレーション成形法等の溶融押出製膜法、共押出し法、共溶融法、多層押出し法、等、様々な製膜方法を用いることができる。これらの製膜方法のうち、生産性及び残留溶媒低減の観点から溶融押出製膜法を用いることが好ましく、溶融押出製膜法の中でもTダイ成形法、インフレーション成形法を用いることがより好ましい。その中でもTダイ成形法が特に好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂フィルムを画像表示装置の前面または背面に使用する場合に、表示される画像が該フィルムの欠陥や歪み等で損なわれて視認されてはいけない。このため、本発明で用いるポリカーボネート樹脂を溶融押出成形法によってフィルム化するにあたり、ゲル、気泡、焼け等の樹脂由来の異物欠点が極めて少なく、また幅方向に均一な厚さであって局所的な位相差等の光学歪が無いことが求められる。
溶融押出成形する際の押出条件について、本発明において用いられる前記押出機の形態としては、バレルの温度調整を行うため1つ以上のヒーターを連ねて、バレル内部に一軸又は二軸のスクリューを備えた押出機が好ましい。前記押出機中では剪断発熱のため、特に出口に近づくほど、樹脂は高温になりやすい。このため、低温の部分はより出口側にあることが好ましい。すなわち、それぞれのヒーターは、ポリカーボネート樹脂の供給側の隣接するヒーターと同じか、より低い設定温度であるとよい。押出機のバレル設定温度は、通常230〜270℃、好ましくは235℃〜265℃、特に好ましくは240℃〜260℃の範囲である。前記温度範囲より低い場合、紫外線吸収剤を大量に含有する際に、得られるフィルムの異物となったり、本発明で用いるポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高すぎて押出負荷が高くなる傾向がある。一方前記温度範囲より高い場合、樹脂組成物中の少なくとも本発明で用いるポリカーボネート樹脂が熱分解し始め、着色や粘度低下などの劣化現象が生じ、得られたフィルムを延伸する際に、破れの原因となったりする。尚、本発明において、複数のバレルを有する押出機を用いた場合のバレル設定温度とは、該押出機内の複数のバレルのうち最高のバレルの設定温度を指す。
成形に適切な溶融粘度になるよう押出機のバレル設定温度を制御したうえで、原料フィーダーの吐出量、押出機のスクリュー回転数、ギアポンプの送液量等を相互にフィードバック制御させて樹脂押出を整流化させることで、フィルムの厚さ精度を高めることができ、フィルムの厚みを均一に制御することができる。好ましい幅方向の厚さ精度は用途ごとの要求物性によって異なるが、通常±10%以内、好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。
吐出量やギアポンプの精度が同程度の場合は、押出機のバレル設定温度に厚み精度が依存する。押出温度が高い場合、冷却ロールで十分に冷却されずに厚み精度が出にくくなり
、また押出温度が低すぎる場合、均一な溶融が不十分で厚み精度が出にくくなる。
本発明におけるフィルム製膜時のロール温度は、下限として、90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、該温度の上限として、140℃未満が好ましく、135℃未満がより好ましく、130℃未満がさらに好ましい。ロール温度が前記温度より低い場合、フィルム表面にギアマークが生じたり、局所的な光学歪ムラが著しくなったりする。一方、前記温度より高い場合、押し出されたフィルムがロールから剥離しにくくなり、フィルム表面に剥離マークが生じたり、製膜機のロールが汚染されたりする傾向がある。尚、本発明では、ロールが1つのロールからなる場合でも、複数のロールで構成される場合でも、単にロールという。また、ロールの温度とは、前記ロールが複数のロールで構成されている場合、複数のロールのうち最高のロールの温度を指す。
<延伸方法>
本発明で得られるポリカーボネート樹脂フィルムは、延伸フィルムであっても良く、少なくとも一方向に延伸することにより位相差フィルムとすることができる。
その延伸方法は、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮等、様々な延伸方法を、単独または同時もしくは逐次で用いることができる。
また、延伸方向に関しても、水平方向・垂直方向・厚さ方向、対角方向等、様々な方向や次元に行なうことが可能であり、特に限定されないが、好ましくは、横一軸延伸方法、縦横同時二軸延伸方法、縦横逐次二軸延伸方法等が挙げられる。
延伸する手段としては、テンター延伸機、二軸延伸機等、任意の適切な延伸機を用いることができる。
延伸温度は、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。好ましい延伸温度は、原反フィルム(即ち、原反フィルムの製膜材料である本発明で用いるポリカーボネート樹脂又はその樹脂組成物)のガラス転移温度(Tg)に対し、下限として、Tg−20℃、好ましくはTg−10℃、より好ましくはTg−5℃であり、上限としてTg+30℃、好ましくはTg+20℃、より好ましくはTg+10℃である。このような条件を選択することによって、得られるフィルムの位相差値が均一になり易く、かつ、フィルムが白濁しにくくなる。具体的には、上記延伸温度は70℃〜230℃であり、好ましくは90℃〜210℃であり、さらに好ましくは100℃〜200℃であり、特に好ましくは100℃〜180℃である。
本発明で得られるフィルムの延伸倍率は、目的に応じて適宜選択され、未延伸の場合を1倍として、下限として、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは1.8倍以上、特に好ましくは2倍以上であり、上限として好ましくは6倍以下、より好ましくは4倍以下、さらに好ましくは3倍以下、特に好ましくは2.5倍以下である。
延伸倍率が過度に大きいと延伸時のフィルムの破断を招く可能性があるだけでなく、高温条件下での長期使用による光学的特性の変動抑制効果が小さくなる可能性があり、過度に低いとフィルムの所望の厚みにおいて意図した光学的特性が付与できなくなる可能性がある。
本発明のフィルム延伸時における延伸速度も目的に応じて適宜選択されるが、下記式で表される歪み速度を指標として、下限として通常50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、特に好ましくは250%以上であり、上限として2000%以下、好ましくは1500%以下、より好ましくは1000%以下、特に好ましくは500%以下である。延伸速度が過度に大きいと延伸時のフィルムの破断を招いたり、高温条件下での長期使用による光学的特性の変動が大きくなったりする可能性がある。また、
延伸速度が過度に小さいと生産性が低下するだけでなく、所望の位相差を得るのに延伸倍率を過度に大きくしなければならない場合がある。
歪み速度(%/分)={延伸速度(mm/分)/原反フィルムの長さ(mm)}×100
また、延伸後加熱炉で熱固定処理を行っても良いし、テンターの幅を制御したり、ロール周速を調整したりして、緩和工程を行っても良い。
[透明フィルムの厚み]
本発明の製造方法から得られるポリカーボネート樹脂フィルムの厚みは、下限として、50μm以上、好ましくは53μm以上、さらに好ましくは55μm以上である。該フィルムの厚みがこの下限値より薄い場合、このフィルムを延伸する場合に薄すぎるために延伸時に破れが発生する場合がある。また、該フィルムの厚みは、上限として、120μm未満、好ましくは115μm未満、さらに好ましくは110μm未満である。該フィルムの厚みがこの上限値より大きい場合、延伸後の厚みが厚すぎて、偏光子保護フィルムとして用いた場合に、厚すぎるために画像表示装置に取り組む際に適しない。
幅方向の厚さ測定は、連続製膜するライン中にトラバース型の連続厚さ測定機がある場合は、測定各点で評価する。カットフィルムでのオフライン測定をする場合は、幅方向50mm間隔にダイヤルゲージ厚み計等で測定した点で評価する。ここで、押し出されたフィルムの両端はネックイン等で厚くなっているので、スリットして廃棄される部分を除いた部位の幅方向範囲での評価である。
[透明フィルムの物性]
<位相差>
本発明で得られるフィルムの589nmにおける面内位相差(R0)及び厚み位相差(Rth)は、20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。位相差が高すぎる場合、本発明で得られるフィルムを延伸する場合に延伸時の位相差発現性を制御することが困難になり、得られる延伸フィルムの位相差が均一になりにくい。
<光線透過率>
本発明で得られるフィルムの波長380nmの光線透過率は、1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましく、0.1%以下が特に好ましい。前記フィルムの波長380nmの光線透過率が1.0%より高い場合は、得られたフィルムを延伸後、偏光子保護フィルムとして用いた場合に、紫外線透過による偏光子の劣化を招く恐れがある。
また、本発明で得られるフィルムは、可視光領域における光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
本発明で得られるフィルムの波長380nmの光線透過率を、1.0%以下とするためには、使用する樹脂組成物として、フルオレンのような多環芳香族炭化水素、トリアジン、ベンゾトリアゾールのような複素環式化合物などの紫外領域に強い光吸収を有する構造を持つジヒドロキシ化合物を共重合させたポリカーボネート樹脂をもちいたり、ポリカーボネート樹脂に顔料や染料を含有する組成物としたり、紫外線吸収剤を含有する組成物とする方法がある。その中でも、汎用性や製造簡便性から紫外線吸収剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物を用いることが好ましい。本発明で得られるフィルムと紫外線吸収剤を混合する時期は特に限定されるものではなく、また前記添加剤との組み合わせや混合順序にも特に限定されるものでもない。
<紫外線吸収剤>
本発明に用いる紫外線吸収剤は、本発明の特定する物性を有し、紫外線波長領域の光を吸収するものであれば、限定されるものではない。
本発明に用いる紫外線吸収剤の融点としては、下限として135℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、145℃がさらに好ましい。また、上限として300℃以下が好ましく、290℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましい。融点がこの範囲内であることにより、押出製膜の際にロール汚染や、Tダイへの付着物を低減させることができ、フィルムの外観が良好になる。同時に、紫外線吸収剤を押出機混練で混練させた際に、紫外線吸収剤の粒子が完全に溶融し、均一分散するために紫外線吸収剤の粒子に由来するフィルム外観不良を防止することができる。
本発明に用いる紫外線吸収剤の5%重量減少温度としては、240℃より高いことが好ましく、245℃より高いことがより好ましく、250℃より高いことがさらに好ましい。この範囲内であることにより、溶融混練の際に、紫外線吸収剤が分解することを防ぐことができる。これにより、紫外線吸収剤の能力を十分発揮することが出来るだけでなく、分解物が押出のベントに蓄積して連続運転を妨げたり、Tダイ、ロール等に分解物が蓄積してフィルムの外観を損なったりすることを防止できる。
本発明に用いる紫外線吸収剤の添加量としては、ポリカーボネート樹脂組成物100重量%に対して、0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がさらに好ましい。この範囲内であることにより、紫外線領域で目的の透過率を維持でき、所望の効果を得ることができる。また、7重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下がさらに好ましい。この範囲内であることにより、ロール汚染によるフィルムの外観不良を防げるだけでなく、紫外線吸収剤の凝集による異物増加を防ぐことができる。
また、紫外線吸収剤の融点が上記範囲や、添加量が上記範囲である場合は、組成物のガラス転移温度が大きく下がることが無く、耐熱性を維持出来る。組成物のガラス転移温度が、紫外線吸収剤が添加されていないポリカーボネート樹脂のガラス転移温度に対して、温度差が7℃以内、好ましくは5℃以内、更に好ましくは3℃以内が良い。
紫外線吸収剤としては、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、インドール系、キノリノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系などが挙げられる。
(トリアジン系紫外線吸収剤)
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,6−ジフェニル−4−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ
−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ―4−N-オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2―
(4,6―ジフェニルー1,3,5−トリアジン―2−イル)−5−(2−(2−エチル
ヘキサノイロキシ)エトキシ)フェノールなどが挙げられる。
その中でも、市販品としては2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ―4−N-オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(ケミプロ化成
(株)製「Kemisorb102」)、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン((株)ADEKA製「アデカスタブLA−F70」)、2―(4,6―ジフェニル−1,3,5−トリアジン―2−イル)−5−(2−(2−エチルヘキサノイロキシ)エトキシ)フェノール((株)
ADEKA製「アデカスタブLA−46」)、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASFジャパン(株)「チヌビン1577」)が挙げられる。
(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤)
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジ
ウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
その中でも、市販品としては、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成(株)製「シーソーブ106」、BASFジャパン(株)「Uvinul3050」)、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン(シプロ化成(株)製「シーソーブ107」、BASFジャパン(株)「Uvinul3049」)
(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ―3,5−ジ―tert−ペンチルフェニル)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられる。
その中でも、市販品としては2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]((株)ADEKA製「アデカスタブLA−31」、ケミプロ化成(株)製「Kemisorb279」)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(シプロ化成(株)製「シーソーブ709」)が挙げられる。
(インドール系紫外線吸収剤)
インドール系紫外線吸収剤としては、下記式(12)で表される化合物を用いることができ、例えば、2−[(1−メチル−2−フェニル−1H−インドール−3−イル)メチ
レン]プロパンジニトリル(オリヱント化学工業(株)製「BONASORB UA−3901」)などが挙げられる。
Figure 0006913438
上記式(12)中、R〜Rは任意の置換基を示す。但し、R及びRは1か所または複数か所を置換していても良く、複数か所を置換する場合、それぞれの置換基は同一または異なっていても良い。
(キノリノン系紫外線吸収剤)
キノリノン系紫外線吸収剤としては、下記式(13)で表されるような化合物を用いることができ、例えば、4−ヒドロキシ−3−[(フェニルイミノ)メチル]−2(1H)−キノリノン(オリヱント化学工業(株)製「BONASORB UA−3701」)など
が挙げられる。
Figure 0006913438
上記式(13)中、R〜Rは任意の置換基を示す。但し、R及びRは1か所または複数か所を置換していても良く、複数か所を置換する場合、それぞれの置換基は同一または異なっていても良い。
(ベンゾエート系紫外線吸収剤)
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。これらベンゾエート系紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤として用いることができる。
(シアノアクリレート系紫外線吸収剤)
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−アクリレート等が挙げられる。これらシアノアクリレート系紫外線吸収剤は紫外線吸収剤として用いることができる。
本発明では、紫外線吸収剤を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
この中でも、熱安定性や樹脂への着色が少ない点から、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、キノリノン系、インドール系が好ましい。
<還元粘度保持率>
本発明で得られるフィルムの還元粘度保持率は、90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。還元粘度保持率が90%より低い場合、フィルムの靱性が低下し、分解に起因する微細なガスが起点となり延伸する場合の破断原因になる可能性がある。
<フィルム異物>
本発明で得られるフィルム中の異物については、後述の方法で評価するが、10個/m以下が好ましく、5個/m以下がより好ましい。この数値を超える異物がある場合、フィルムの外観を損ねるだけでなく、フィルムの光学物性に著しく影響する。
本発明で得られるフィルムは偏光子保護フィルムとして用いることができ、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良く、接着する前に表面処理としてコロナ放電処理、紫外線照射処理などを施したものであってもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[評価方法]
以下において、ポリカーボネート樹脂の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のサンプルを塩化メチレンに溶解させ、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式(i)より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrelから次式(ii)より比粘度ηspを求めた。
ηrel=t/t ・・・(i)
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1 ・・・(ii)
比粘度ηspを濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(2)還元粘度保持率
還元粘度保持率は、使用するポリカーボネート樹脂組成物ペレットの還元粘度(A)と、それから得られたポリカーボネート樹脂組成物フィルムの還元粘度(B)から、次のように求められる。
還元粘度保持率(%)={(A)/(B)}×100
還元粘度保持率の数値が高いほど、フィルム製膜前後における樹脂の還元粘度の変化が小さいことを示す。本実施例では、還元粘度保持率は90%以上を合格とした。
(3)5%重量減少温度
TG−DTA6300(セイコー製)にて窒素下(流量200ml/min)にて、試料約10mgを室温から500℃まで10℃/minにて昇温しながら測定を行い、5%重量減少温度を求めた。
(4)融点
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて測定した。ポリカーボネート樹脂サンプル約10mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度10℃/分で室温から400℃まで昇温し、融解ピークの頂点の温度を求め融点とした。
(5)ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて測定した。ポリカーボネート樹脂サンプル約10mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で室温から250℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、0℃まで20℃/分の速度で冷却した。0℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、補外ガラス転移開始温度を採用した。
[透明フィルムの評価]
(6)380nmの紫外線透過率
波長380nmにおける光線透過率は、JISK0115(吸光光度分析通則)に準拠して、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U2900)を用いて測定した。
(7)ロール汚れ評価
以下の基準に従い、製膜機が有する押出機に対して最寄りのロールにおいて、フィルム製膜時の汚れの発生有無の判定を行った。
フィルム取得開始〜60分までにロール汚れが目視で確認できたもの ×
60分〜120分までにロール汚れが目視で確認できたもの △
120分時点でロール汚れが確認出来なかったもの ○
(8)フィルム異物
得られたフィルムから幅50mm、長さ200mmに切り出したサンプルについて、目視にて該サンプル中の直径(楕円状の場合は長径)150μm以上の異物の存在数をカウントした。フィルム異物の値が小さいほど、得られるフィルムに存在する異物が少ないことを示す。本実施例では、フィルム異物が10個/m以下を合格とした。
(9)ギアマーク
得られたフィルムで幅方向にギアマークが目視にて確認された場合は×、確認できなかった場合は○と評価した。「○」評価の場合、外観上優れたフィルムであることを示す。
(10)フィルムの厚みおよび厚み精度
取得開始から約50m部分にて、フィルムの中心から両幅方向に80mmの範囲を20mm間隔で接触厚み計((株)小野測器製 製品名「ディジタルリニアゲージ DG−933」)を用いて厚みを測定した。ここで、本発明でいう「フィルムの厚み」とは、前記の測定値の総平均を算出したものである。また、下記式より得られる数値を本発明でいう「厚み精度」とした。
厚み精度(%)={(フィルムの厚みからの最大の偏差)/(フィルムの厚み)}×100
(ただし、式中「フィルムの厚みからの最大の偏差」とは上述の各測定値と平均値(フィルムの厚み)との差のうち、最大の値のことをいう。)
この数値が小さいほど、フィルムの厚さがより均一である。
(11)位相差
得られたフィルムから幅4cm、長さ4cmに切り出したサンプルについて、位相差測定装置(王子計測機器社製 製品名「KOBRA WRXY2020」を用いて、波長589nmにおける面内位相差(R0)と厚み位相差(Rth)を測定した。
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号、および製造元は次の通りである。
<ジヒドロキシ化合物>
・ ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製]
・ CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール[SKChemical社製]
<炭酸ジエステル>
・ DPC:ジフェニルカーボネート[三菱化学(株)製]
<ヒンダードフェノール化合物>
・ Irganox1010:ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][BASFジャパン(株
)製]
<リン系化合物>
・ 亜リン酸[関東化学(株)製](分子量82.0)
<紫外線吸収剤>
・UVA−1:LA−31[(株)ADEKA製](構造:ベンゾトリアゾール系、融点
:195℃、5%重量減少温度:390℃)
・UVA−2:LA−F70[(株)ADEKA製](構造:トリアジン系、融点:150℃、5%重量減少温度:385℃)
ポリカーボネート樹脂の製造方法
[製造例1]
竪型攪拌反応器3器(第1竪型攪拌反応器〜第3竪型攪拌反応器)、横型攪拌反応器1器(第4横型攪拌反応器)、並びに二軸押出機からなる連続重合設備を用いて、ポリカーボネート樹脂の重合を行った。ISB、CHDMおよびDPCをそれぞれタンクで溶融させ、モル比ISB/CHDM/DPC=0.700/0.300/1.010で第1竪型攪拌反応器に連続的に供給した。同時に、触媒として酢酸カルシウム1水和物の水溶液を全ジヒドロキシ化合物1molに対して1.5μmolとなるように第1竪型攪拌反応器に供給した。第1竪型攪拌反応器での平均滞留時間が90分となるように、反応器底部の移送配管に設けられたバルブの開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。第1竪型反応器の反応器底部より排出された反応液は、引き続き第2竪型攪拌反応器、第3竪型攪拌反応器、第4横型攪拌反応器[(株)日立プラントテクノロジー社製2軸メガネ翼]に逐次連続供給された。第1竪型攪拌反応器と第2竪型攪拌反応器は還流冷却器を具備しており、還流比を調節することで、未反応のジヒドロキシ化合物とDPCの留出を抑制した。
各反応器の反応温度、内圧、滞留時間はそれぞれ、第1竪型攪拌反応器:190℃、25kPa、90分、第2竪型攪拌反応器:195℃、10kPa、45分、第3竪型攪拌反応器:210℃、3kPa、45分、および第4横型攪拌反応器:230℃、0.5kPa、90分とした。得られるポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.61dL/gから0.64dL/gとなるように、第4横型攪拌反応器の内圧を適宜調整しながら運転を行った。
第4横型攪拌反応器より連続的にポリカーボネート樹脂を抜き出し、続いて樹脂を溶融状態のまま二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30α]に供給した。押出機は3つの真空ベント口を有しており、樹脂中の残存低分子成分を脱揮除去した。第1ベント口の手前から亜リン酸をまぶしたマスターペレットを供給し、ポリカーボネート樹脂に対して亜リン酸を0.65重量ppm(リン原子の量として0.2ppm)添加し、第2ベントの手前で水を樹脂に対して2000重量ppm加えて、注水脱揮を行い、第3ベンチ手前からIrganox1010を1000重量ppm供給した。押出機(全10バレル)はシリンダー温度を220℃、スクリュー回転数を230rpmに設定した。押出機出口での樹脂温度は262℃であった。
押出機を通過したポリカーボネート樹脂組成物は、引き続き溶融状態のままフィルターを通して異物を濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転式カッターでペレット化した。ペレットのガラス転移温度は122℃であった。得られたポリカーボネート樹脂組成物をPC1とする。
[製造例2]
製造例1に記載のポリカーボネート樹脂組成物(PC1)100重量部及びUVA−1
3.0重量部を、定量フィーダーを用いてベント付きニ軸押出機((株)日本製鋼所 製
TEX30α、シリンダー設定温度:240℃)に供給し、フィルターを通して異物を
濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転式カッターでペレット化した。ペレットのガラス転移温度は120℃であった。得られたポリカーボネート樹脂組成物をPC2とする。
[製造例3]
製造例1に記載のポリカーボネート樹脂組成物(PC1)100重量部及びUVA−2
1.2重量部を、定量フィーダーを用いてベント付きニ軸押出機((株)日本製鋼所 製
TEX30α、シリンダー設定温度:240℃)に供給し、フィルターを通して異物を
濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転式カッターでペレット化した。ペレットのガラス転移温度は121℃であった。得られたポリカーボネート樹脂組成物をPC3とする。
[実施例1〜6、比較例1〜5]
PC2をベント付きニ軸押出機((株)日本製鋼所 製 TEX30α)、Tダイ(幅200mm)、チルドロール及び巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、Tダイ法にて2時間連続で製膜し、それぞれの評価を実施した。条件及び結果を表1に示す。表1に示される結果から、実施例のものはフィルムを製膜する際の紫外線吸収剤のブリードアウトによる製膜機のロール汚れや添加剤由来の異物が発生することがなく、使用に耐えうる十分な強度を有する、低位相差の高品質なフィルムを製造できることがわかる。なお、本明細書において、実施例5は、本発明の参考例に相当する。
Figure 0006913438
[実施例7〜8、比較例6〜7]
PC3をベント付きニ軸押出機((株)日本製鋼所 製 TEX30α)、Tダイ(幅200mm)、チルドロール及び巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、Tダイ法にて
2時間連続で製膜し、それぞれの評価を実施した。条件及び結果を表2に示す。表2に示される結果から、実施例のものはフィルムを製膜する際の紫外線吸収剤のブリードアウトによる製膜機のロール汚れや添加剤由来の異物が発生することがなく、使用に耐えうる十分な強度を有する、低位相差の高品質なフィルムを製造できることがわかる。
Figure 0006913438
本発明は、製膜工程での紫外線吸収剤のブリードアウトによるフィルム外観の劣化、該ブリードアウトによる製膜機のロール汚れ、フィルム異物の増加、ギアマークなどの外観の不良等の問題等が無く、使用に耐えうる十分な強度を有するフィルムを得ることができる。よって本発明は、偏光板の製造工程におけるロスの削減、画像表示装置の構造薄型化等に資する。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、紫外線吸収剤を含むポリカーボネート樹脂組成物からなる、波長380nmの光線透過率が1.0%以下、589nmでの厚み位相差(Rth(589))が15nm以下、589nmでの面内位相差(R0(589))が15nm以下、および厚みが50μm〜120μmであるフィルムを、押出機および押し出されたフィルムを搬送するロールを用いて製造する方法であって、
    前記紫外線吸収剤の含有量が前記ポリカーボネート樹脂組成物100重量%に対して0.3重量%以上、5重量%以下であり、
    前記押出機の有するバレルの設定温度が230℃以上270℃未満、ロールの温度が100℃以上140℃未満である、ポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
    Figure 0006913438
  2. 前記紫外線吸収剤の融点が300℃以下である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記紫外線吸収剤がトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、キノリノン系、およびインドール系から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記バレルの設定温度が245℃以上である、請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記ロールの温度が135℃未満である、請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂フィルムの製造方法。
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