JP2022150359A - 共重合ポリカーボネート樹脂組成物、成形品、及び共重合ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

共重合ポリカーボネート樹脂組成物、成形品、及び共重合ポリカーボネート樹脂の製造方法 Download PDF

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JP2022150359A JP2021052930A JP2021052930A JP2022150359A JP 2022150359 A JP2022150359 A JP 2022150359A JP 2021052930 A JP2021052930 A JP 2021052930A JP 2021052930 A JP2021052930 A JP 2021052930A JP 2022150359 A JP2022150359 A JP 2022150359A
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昂志 中村
Koji Nakamura
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Abstract

【課題】耐薬品性と耐候性が共に優れるポリカーボネート樹脂を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される構造単位(A) と反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンに由来する構造単位 (B)を含有する、共重合ポリカーボネート樹脂。TIFF2022150359000022.tif2697(式(1)において、Wは炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数6~20のシクロアルキレン基;R1~R2は炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~20のシクロアルキル基;mは0~10の整数)【選択図】なし

Description

本発明は、共重合ポリカーボネート樹脂に関するものであり、詳しくは、耐薬品性、耐
候性に優れたポリカーボネートに関する。
ポリカーボネート樹脂は、一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐
熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、医療用部品、建
材、フィルム、シート、ボトル、光学記録媒体、レンズ等の分野でいわゆるエンジニアリ
ングプラスチックスとして広く利用されている。近年、これらの用途分野においては、成
形加工品のさらなる性能向上が要求されている。しかしながら、ビスフェノールAを原料
とする従来の一般的なポリカーボネート樹脂は、これらの要求特性に対して耐薬品性や耐
候性が不十分である。そのため、耐薬品性や耐候性を向上したポリカーボネート樹脂の開
発が望まれるようになり、いくつかの提案がされている。
例えば、ビスフェノール類を原料モノマーとして使用したポリカーボネートの耐薬品性
を向上させる手段として、特定のポリオルガノシロキサンを特定量共重合する方法が開示
されている(特許文献1)。
従来のポリカーボネート樹脂に使用されるビスフェノール化合物は、ベンゼン環構造を
有するために紫外線吸収が大きく、このことがポリカーボネート樹脂の耐光性悪化を招く
要因となる。
そこで、分子骨格中にベンゼン環構造を持たない脂肪族ジヒドロキシ化合物や脂環式ジ
ヒドロキシ化合物、イソソルビドのように分子内にエーテル結合を持つ環状ジヒドロキシ
化合物といった原料モノマーを使用したポリカーボネート樹脂が開発されている(特許文
献2~5)。例えば、バイオマス資源から得られるイソソルビドを原料モノマーとしたポ
リカーボネート樹脂は、高い耐候性を有することが開示されている(特許文献6)。
国際公開第2015/029841号パンフレット 国際公開第2004/111106号パンフレット 国際公開第2007/063823号パンフレット 国際公開第2008/108492号パンフレット 特開2011-241277号公報 特開2013-209585号公報
しかしながら、従来法では、耐薬品性、耐候性が共に優れたポリカーボネート樹脂を得
ることはできなかった。
特許文献1に記載されているような芳香族-ポリオルガノシロキサン共重合ポリカーボ
ネート樹脂は、耐候性に関する記述が無く、本発明者らが検討した結果、耐候性に劣るこ
とが見いだされた。
また、特許文献4に記載の分子骨格中にベンゼン環構造を持たないイソソルビドを原料
モノマーとして使用した末端ポリオルガノシロキサン変性ポリカーボネート樹脂や、特許
文献5に記載のイソソルビドを原料モノマーとしてポリオルガノシロキサンと共重合した
ポリカーボネート樹脂は、耐薬品性に関する記述が無く、本発明者らが検討した結果、耐
薬品性に劣ることが見いだされた。加えて、いずれのポリカーボネート樹脂も透明性が低
いものであった。
かかる状況下、本発明の目的は、耐薬品性と耐候性が共に優れるポリカーボネート樹脂
を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を持つジヒ
ドロキシ化合物に由来する構造単位とポリオルガノシロキサンに由来する構造単位とを有
する共重合ポリカーボネートが、高い耐薬品性、耐候性を有し、また驚くべきことに透明
性、耐吸湿性にも優れる可能性があることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は下記[1]~[9]に存する。
[1] 下記式(1)で表される構造単位(A) と反応性官能基を2つ以上有するポリオル
ガノシロキサンに由来する構造単位 (B)を含有する、共重合ポリカーボネート樹脂。
Figure 2022150359000001
(式(1)において、Wは炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数6~20のシクロアル
キレン基;R~Rは炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基、又は置換基を有し
てもよい炭素数6~20のシクロアルキル基;mは0~10の整数)
[2] 樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とし
た際に、構造単位(A)の含有量が40重量%以上、90重量%以下、構造単位(B)の
含有量が1.0重量%以上、20重量%以下である、[1]に記載の共重合ポリカーボネ
ート樹脂。
[3] 構造単位(A)と構造単位(B)の含有量の比が96/4~70/30である、
[1]又は[2]に記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
[4] 反応性官能基が、それぞれ独立に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルケ
ニル基、エステル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、及び環状エーテル基、からな
る群より選ばれる1種以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合ポリカーボ
ネート樹脂。
[5] 構造単位(B)が下記式(2)で表される[1]~[4]のいずれかに記載の共重
合ポリカーボネート樹脂。
Figure 2022150359000002
(式(2)において、nは5~30を示す。R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロ
ゲン原子、炭素数1~6 のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~1
2のアリール基を示す。XおよびX’はそれぞれ独立に、酸素原子、又は-C(=O)-
、エーテル構造、アミン構造、芳香族構造若しくは脂肪族構造を有する有機残基を示す。
nはポリオルガノシロキサン部の平均繰り返し数を示す。)
[6] 樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とし
た際に、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリ
コール、及びアセタール環を含有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1つ以
上の化合物に由来する構造単位(C)を合計5重量%以上、30重量%以下含有する[1
]~[5]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
[7] ポリカーボネート樹脂の吸水率が1.1%以下であることを特徴とする[1]~
[6]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
[8] 共重合ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が50℃以上160℃以下である
ことを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂を含む、成形品

[10] 下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、反
応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンポリオルガノシロキサンを混合し、
原料溶液を得る工程と、該原料溶液と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを、重縮合反応さ
せる工程を有する、共重合ポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2022150359000003
(式(3)において、Wは炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数6~20のシクロアル
キレン基;R~Rは炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基、又は置換基を有し
てもよい炭素数6~20のシクロアルキル基;mは0~10の整数)
[本発明が効果を奏する理由]
本発明が効果を奏する理由は未だ明らかではないが、以下のように推察される。
ポリオルガノシロキサンはそのシロキサン構造の極性の低さから、各種ジヒドロキシ化
合物との相溶性が低い。そのため、溶融重合法でのポリカーボネート樹脂重合時にポリオ
ルガノシロキサンと各種ジヒドロキシ化合物を溶融させた時点で反応溶液が二層分離し不
均一系での反応となる。反応液が不均一であるとポリオルガノシロキサン単独での反応が
多くなりポリマー中のポリオルガノシロキサンに由来する構造単位ドメインの分散が悪く
なると同時にドメインが大きくなる。結果として、得られるポリマーの耐薬品性が悪くな
り、透明性が低下すると考えられる。
その中、本発明者らが検討したところ、驚くべきことに環状アセタールのスピロ環構造
を有するジヒドロキシ化合物はポリオルガノシロキサンとの親和性が高い事が分かった。
つまり、ポリオルガノシロキサンとスピロ環構造を有するジヒドロキシ化合物は溶融重合
時に反応溶液が均一となるため、ポリオルガノシロキサン単独での反応が低減されポリマ
ー中のポリオルガノシロキサンに由来する構造単位ドメインの分散が良くなると同時にド
メインが小さくなる。結果として、得られるポリマーは高い耐薬品性を発現し、一部態様
では透明性が向上すると考えられる。一方、同様に複素環構造を有するジヒドロキシ化合
物であるイソソルビドとポリオルガノシロキサンのみの組合せの場合、イソソルビドが環
状アセタールのスピロ環構造を有しないため、イソソルビドとポリオルガノシロキサンと
の親和性が相対的に悪く、ポリマー中のポリオルガノシロキサンに由来する構造単位ドメ
インの分散が悪くなり、結果として得られるポリマーの耐薬品性が劣る。
本発明のポリカーボネート共重合体は、高い耐薬品性、耐候性を有している。また、発
明の態様の一部は、高い耐薬品性と耐候性に加えて、透明性、耐吸湿性に優れる。本発明
のポリカーボネート共重合体は、このような優れた特性を有することから、自動車内外装
部材、電装部材、電子電気材料、屋外建築部材、化粧品容器用途といった幅広い分野にて
利用することができる。
耐薬品性試験に用いる1/4楕円治具の横断面図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本
発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、
その前後の値を含むものとして用いることとする。
本明細書において「繰り返し構造単位」とは、樹脂中で同じ構造が繰り返し現れる構造
単位であって、それぞれが連結することで当該樹脂を構成するような構造単位を意味する
。例えば、ポリカーボネート樹脂の場合、カルボニル基も含めて繰り返し構造単位と呼称
する。また、「構造単位」とは、樹脂を構成する部分構造であって、繰り返し構造単位に
含まれる特定の部分構造のことを意味する。例えば、樹脂中で隣り合う連結基に挟まれた
部分構造や、重合体の末端部分に存在する重合反応性基と、該重合性反応基に隣り合う連
結基とに挟まれた部分構造を言う。より具体的には、ポリカーボネート樹脂の場合、カル
ボニル基が連結基であって、隣り合うカルボニル基に挟まれた部分構造のことを構造単位
と呼称する。尚、本明細書において、ポリカーボネート樹脂中の各構造単位の重量比率は
、全ての構造単位及び連結基の合計重量を100重量%として計算する。
[共重合ポリカーボネート樹脂の構造と原料]
本発明の第一の態様の共重合ポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される構造単
位(A)と反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンに由来する構造単位(B
)を含有する、共重合ポリカーボネート樹脂である。
Figure 2022150359000004
(式(1)において、Wは炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数6~20のシクロアル
キレン基;R~Rは炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基、又は置換基を有し
てもよい炭素数6~20のシクロアルキル基;mは0~10の整数)
炭素数1~20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基
、イソプロピレン基、n-ブチレン基、1-メチルエチレン基、1-エチルエチレン基、
n-ペンチレン基、n-ヘキサレン基、等が挙げられる。
炭素数6~20のシクロアルキレン基としては、シクロヘキサレン基、シクロヘプタレ
ン基、等が挙げられる。
炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロ
ピル基、磯プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、等が挙げら
れる。
置換基を有していてもよい炭素数6~20のシクロアルキル基としては、シクロヘキサ
ン基、シクロヘプタン基、等が挙げられる。
これらのうち、Wは炭素数1~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~
10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~5のアルキレン基が特に好ま
しく、エチレン基であることが最も好ましい。R及びRは、それぞれ独立に、炭素数
1~20の分岐又は直鎖のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~10の分岐又は
直鎖のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~5の分岐又は直鎖のアルキル基
であることが特に好ましく、メチル基であることが最も好ましい。mは0~10の整数を
示し、mは0~6の整数が好ましく、mは0~4の整数がさらに好ましい。
上記式(1)で表される構造単位(A)としては、下記式(Y)で表される構造である
ことが特に好ましい。この場合には、重合時の反応性や入手の容易性に優れる。
Figure 2022150359000005
上記式(1)で表される構造単位(A)は、スピロ環構造を有するジオールから誘導さ
れるものである。かかるスピロ環構造を有するジオール化合物として、3,9-ビス(2
-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、
3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラ
オキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジエチル
エチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス
(2-ヒドロキシ-1,1-ジプロピルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピ
ロ(5.5)ウンデカンなどの脂環式ジオール化合物が挙げられる。特に好ましくは、下
記式(X)で表される3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,
4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(スピログリコールと称する場
合がある。)が用いられる。
Figure 2022150359000006
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基
の重量の合計量を100重量%とした際に、上記式(1)で表される構造単位(A)を4
0重量%以上含むことが好ましく、45重量%以上含むことがより好ましく、50重量%
以上含むことがさらに好ましく、55質量%以上がさらにより好ましく、60質量%以上
が特に好ましく、70質量%以上が最も好ましい。また、90重量%以下含むことが好ま
しく、85重量%以下含むことがより好ましく、80重量%以下含まれることがさらに好
ましい。構造単位(A)が上記下限以上であると、ポリカーボネート樹脂の耐熱性を高め
ることができる。また、構造単位(A)が上記下限以下であると、ポリカーボネート樹脂
が重合時に結晶化することなく、重合が容易であり好ましい。
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基
の重量の合計量を100重量%とした際に、反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノ
シロキサンに由来する構造単位(B)を1.0重量%以上含有することが好ましく、2.
0重量%以上含有することがより好ましく、3.0重量%以上含有することがさらに好ま
しく、4.0重量%以上含有することが特に好ましい。また、20重量%以下含有するこ
とが好ましく、15重量%以下含有することがより好ましく、10重量%以下含有するこ
とが更に好ましい。本発明の共重合ポリカーボネート樹脂において、構造単位(B)は主
に耐薬品性向上の機能を担っているので、構造単位(B)の含有量が上記下限以上である
と、耐薬品性を十分に得ることが出来る。また、構造単位(B)が上記上限以下であると
、ポリカーボネート樹脂の透明性が向上する。また、ポリカーボネート樹脂の重合時の反
応性が良好となり、十分な分子量まで重合反応を進行させやすくなる。
また、本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、構造単位(A)と構造単位(B)の含有
量の比が重量比として96/4~70/30であることが好ましい。上記範囲内に含有量
の比が含まれていると、耐薬品性を十分に得ることが出来る。また、ポリカーボネート樹
脂の透明性が向上する。更に、ポリカーボネート樹脂の重合時の反応性が良好となり、十
分な分子量まで重合反応を進行させやすくなる。同様の観点から、構造単位(A)と構造
単位(B)の含有量の比は、より好ましくは96/4~80/20であり、さらに好まし
くは95/5~85/15である。
(ポリオルガノシロキサン)
オルガノポリシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とした重合体であり、シロキサン結
合に有機基が結合したものをいう。具体的には、ポリシロキサン骨格と、ポリシロキサン
骨格のシロキサン結合に置換基(つまり、有機基)が結合した重合体である。本発明に用
いられるオルガノポリシロキサンは、共重合ポリカーボネート樹脂の構造単位として重合
反応により含有されるにあたり、反応性官能基を二つ以上有する。ポリオルガノシロキサ
ンが反応性官能基を二つ以上有することで、共重合ポリカーボネート樹脂のポリマー鎖中
にポリオルガノシロキサンに由来する構造単位が導入することができる。一方、ポリオル
ガノシロキサンが反応性官能基を一つのみ有する場合には、ポリオルガノシロキサンに由
来する構造単位はポリマー鎖の末端にのみ導入されることになり、結果として得られるポ
リカーボネート樹脂が十分な耐薬品性を奏しない。
反応性官能基とは、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、
ケイ素原子、ハロゲンの中から選択される1種又は複数種の原子で構成され、大気中又は
溶媒中で、通常使用する温度範囲内(例えば、100~300℃)で、別種の官能基との
接触又は加熱により、その化学構造に変化を生じ得る基のことをいう。具体的には、反応
性官能基は、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン
、又は炭素-炭素間の多重結合(つまり、二重結合、三重結合等の不飽和結合)を有する
官能基である。
反応性官能基は特段限定されないが、反応性が高いという観点から、炭素-炭素間の多
重結合を有する官能基、及び/又は酸素原子を含む官能基であることが好ましく、アルケ
ニル基、エステル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、環状エーテル基、アルコール
性水酸基、フェノール性水酸基、シラノール基、カルボキシル基からなる群より選択され
る少なくとも1種の官能基であることがより好ましい。より反応性が高いという観点から
、反応性官能基は、アルコール性水酸基、シラノール基であることがさらに好ましく、ア
ルコール性水酸基が特に好ましい。
反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンに由来する構造単位(B)は、好
ましくは下記式(2)で表される。
Figure 2022150359000007
(式(2)において、nは5~30を示す。R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロ
ゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12
のアリール基を示す。XおよびX’はポリオルガノシロキサンの有する反応性官能基の残基
であり、具体的には、それぞれ独立に、酸素原子、又は-C(=O)- 、エーテル構造
、アミン構造、芳香族構造若しくは脂肪族構造を有する有機残基を示す。nはポリオルガ
ノシロキサン部の平均繰り返し数を示す。)
nは上述したとおりで、ポリオルガノシロキサンの平均繰り返し数を示す。平均繰り返
し数は5以上が好ましく、6以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。また、30以
下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好
ましい。平均繰り返し数が上記下限以上であると、耐薬品性が十分に得られる。また、平
均繰り返し数が上記上限以下であると、透明性が顕著に向上する。これは、ポリオルガノ
シロキサンの平均繰り返し数が比較的小さい場合には、ポリマー鎖中においてポリオルガ
ノシロキサンに由来する構造単位が適度に分散することにより局所的な屈折率の不均一さ
による白濁が抑制されるためと推測される。
~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、
炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基である。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる

炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基
、イソブチル基等が挙げられる。
炭素数1~6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
~Rとしては、それぞれ独立に、好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキ
ル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基であり、メチル基あ
るいはフェニル基であることがより好ましい。R~Rはそれぞれ異なっていても同一
であってもよいが、耐薬品性向上の効果に優れるという観点からは、R~Rがいずれ
も同一であることが好ましく、R~Rがいずれもメチル基、又はいずれもフェニル基
であることがより好ましく、R~Rがいずれもメチル基であることが最も好ましい。
XおよびX’としては、それぞれ独立に、シラノールの残基やアルコール性水酸基の残基
が好ましく、ポリオルガノシロキサンの反応性の観点からアルコール性水酸基の残基がよ
り好ましく、カルビノール残基であることが特に好ましい。
XおよびX’としては、それぞれ独立に、下記式(W)で表される構造であることが特に
好ましい。この場合には、反応性や透明性の点でより優れる。
Figure 2022150359000008
(式(W)中、*は式(2)においてX、X’と隣接したケイ素原子との結合部位を表す。
※は式(2)におけるケイ素原子とは反対側の結合部位を表す。)
上記式(2)で表される構造としては、下記式(Z)で表される構造であることが特に
好ましい。この場合には、反応性や透明性の点でより優れる。
Figure 2022150359000009
(その他の構造単位)
本発明の共重合ポリマーボネート樹脂は、上記式(1)で表される構造単位(A) と反応
性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンに由来する構造単位(B)以外に、脂肪
族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、及び
複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1つ以上の化合物に由来
する構造単位(以下、構造単位(C)と称することがある。)を含有しても良い。これら
のうち、機械物性により優れるという観点からは、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジ
ヒドロキシ化合物、及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる
1つ以上の化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパン
ジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオー
ル、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、
1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1
,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,
6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9
-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,1
2-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物、ネオペンチルグリコール、2
-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオ
ール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等の分岐鎖脂肪族ジ
ヒドロキシ化合物が例として挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,3
-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘ
キサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナ
ンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ド
デカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物が入手のしやすさ、取り扱いのしやす
さという観点から好ましい。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物が挙げられる
。1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4
-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデ
カンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2
,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナ
ンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等のテルペン化合物から
誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールである
ジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオー
ル、1,3-アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4-テトラメ
チル-1,3-シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール
、又は3級アルコールであるジヒドロキシ化合物。
オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレ
ングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。
複素環構造を有するジヒドロキシ化合物としては、下記式(4)で表されるジヒドロキ
シ化合物、上記式(1)で表される構造以外のアセタール環を含有するジヒドロキシ化合
物が例として挙げられる。
Figure 2022150359000010
上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソ
ソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物(4
)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能であり、種々のデンプンから製造さ
れるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、成形
性の面から最も好ましい。これらのジヒドロキシ化合物(4)は、1種を単独で用いても
良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記式(1)で表される構造以外のアセタール環を含有するジヒドロキシ化合物として
は、例えば、下記式(5)で表されるジオキサングリコール等を用いることができる。
Figure 2022150359000011
複素環構造を有するジヒドロキシ化合物としては、上記以外に、下記式(4)で表され
るジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを重縮合反応させてな
るポリカーボネートジオールが挙げられる。
前記した脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレング
リコール、及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1つ以上
の化合物としては、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3
-シクロブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメ
タノール、ジオキサングリコール、イソソルルビド、イソソルビドに由来する構造単位を
含むポリカーボネートジオールを用いることが特に好ましい。これらのモノマーに由来す
る構造単位を含むポリカーボネート樹脂は、光学特性や耐熱性、機械特性等のバランスに
一層優れている。
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロ
キシ化合物、オキシアルキレングリコール、及びアセタール環を含有するジヒドロキシ化
合物からなる群より選ばれる1つ以上の化合物に由来する構造単位(C)を含有する場合
は、樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際
に、前記構造単位(C)を5重量%以上含有することが好ましく、6重量%以上含有する
ことがより好ましく、7重量%以上含有することが更に好ましい。また、30重量%以下
含有することが好ましく、25重量%以下含有することがより好ましく、20重量%以下
含有することが更に好ましい。構造単位(C)が上記範囲内にあると、共重合ポリカーボ
ネート樹脂の優れた特性を大きく損なわずに、耐熱性や溶融加工性等の他の物性のバラン
スを調整することができる。
また、本発明の共重合ポリマーボネート樹脂は、前述の脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂
環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、及び複素環構造を有するジオー
ルに由来する構造単位の他に芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでよい

芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル
)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル
フェニル)プロパン、2,2-ビス( 4 - ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)
プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル) フェニル) プロパ
ン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビ
ス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)
メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル) エタン、3,3-ビス(4-ヒドロ
キシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビ
ス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
ビス(4 -ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエー
テル、4,4’-ジヒドロキシ-3 ,3’-ジクロロジフェニルエーテル、9,9-ビ
ス(4-(2-ヒドロキシエトキシ-2-メチル) フェニル)フルオレン、9,9-ビ
ス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2-メチル
フェニル)フルオレン等の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基
の重量の合計量を100重量%とした際に、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単
位を含有する場合は、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重
量%以下が更に好ましく、0重量%が特に好ましい。芳香族ビスフェノール類に由来する
構造単位が上記範囲内にあると、ベンゼン環構造の紫外線吸収に由来する耐候性の悪化を
抑制できる。
(炭酸ジエステル)
本発明のポリカーボネート樹脂に含有される上記の構造単位の連結基は、下記式(6)
で表される炭酸ジエステルを重合することで導入される。
Figure 2022150359000012
(式(6)中、RおよびRは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1~18の
脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、RとR
とは同一であっても異なっていてもよい。)
およびRは、置換又は無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、無置換
の芳香族炭化水素基がより好ましい。尚、脂肪族炭化水素基の置換基としては、エステル
基、エーテル基、アミド基、ハロゲン原子が挙げられ、芳香族炭化水素基の置換基として
は、メチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
前記式(6)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(
以下、DPCと略記することがある。)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカー
ボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ-tert-ブチルカー
ボネート等のジアルキルカーボネートが例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネー
ト、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである

炭酸ジエステルは、塩化物イオン等の不純物を含む場合があり、これらの不純物が重合
反応を阻害したり、得られる樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じ
て、蒸留等により精製したものを使用することが好ましい。
[共重合ポリカーボネート樹脂の物性]
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、以下に記載する物性を有することが好ましい
(全光線透過率)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、全光線透過率が88%以上であることが好ま
しく、より好ましくは89%以上であって、90%以上がさらに好ましく、91%以上が
特に好ましい。全光線透過率が前記下限以上であると、透明材料として好適に用いること
が出来る。共重合ポリカーボネート樹脂の全光線透過率は、実施例記載の方法により測定
することができる。
(吸水率)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂の吸水率は、好ましくは1.1%以下、より好ま
しくは1.05%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。吸水率が上記上限以下で
あると、耐吸湿性、低寸法変化率という点で好ましい。共重合ポリカーボネート樹脂の吸
水率は、後述の方法により測定することができる。共重合ポリカーボネート樹脂の吸水率
は、例えば樹脂を構成する構造単位の種類及び比率を変えることにより適宜調整すること
ができる。
(ガラス転移温度)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、40℃以上が好ましく、4
5℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。ガラス転移温度が上記下限以上で
あると、共重合ポリカーボネート樹脂、あるいはその成形品が常温で癒着・変形する危険
性が低くなる。また、共重合ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は145℃以下が好
ましく、135℃以下がより好ましく、125℃以下が更に好ましい。ガラス転移温度が
上記上限以下であると、成形時の流動性を高め、複雑な形状の成形品であっても成形時に
、ポリカーボネート樹脂が成形型の末端まで行き届き易くなり、所望の成形品を得ること
ができる。また、ウエルド部での強度の低下を抑制できる。共重合ポリカーボネート樹脂
のガラス転移温度は、実施例記載の方法により測定することができる。共重合ポリカーボ
ネート樹脂のガラス転移温度は、例えば樹脂を構成する構造単位の種類及び比率を変える
ことにより適宜調整することができる。
(耐薬品性)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、1/4楕円治具を利用したノニオン系界面活
性剤における耐薬品性試験において、臨界歪が0.5以上であることが好ましく、0.6
以上であることがより好ましく、0.7以上であることが更に好ましい。共重合ポリカー
ボネート樹脂の臨界歪が上記下限以上であると、自動車内外装部材、電装部材、電子電気
材料、屋外建築部材、化粧品容器用途に好適に用いることが出来る。共重合ポリカーボネ
ート樹脂のガラス転移温度は、実施例記載の方法により測定することができる。
(耐候性)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、照射強度60W/mの条件で100時間処
理する耐候性試験において、試験前後のΔYIの値が1.0以下であることが好ましく、
0.6以下が更に好ましく、0.2以下が更に好ましい。共重合ポリカーボネート樹脂の
ΔYIが上記上限以下であると、自動車内外装部材、建築部材などの屋外用途に好適に用
いることが出来る。共重合ポリカーボネート樹脂の耐候性は、実施例記載の方法により測
定することができる。
[本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造することができる
。例えば、ホスゲンやカルボン酸ハロゲン化物を用いた溶液重合法又は界面重合法や、溶
媒を用いずに反応を行う溶融重合法を用いて製造することができる。これらの製造方法の
うち、溶媒や毒性の高い化合物を使用しないことから環境負荷を低減することができ、ま
た、生産性にも優れる溶融重合法によって製造することが好ましい。
また、重合に溶媒を使用すると樹脂中に溶媒が残存する場合があり、その可塑化効果に
よって樹脂のガラス転移温度が低下することにより、後述する成形や延伸などの加工工程
での品質変動要因となり得る。また、溶媒としては塩化メチレン等のハロゲン系の有機溶
媒が用いられることが多いが、ハロゲン系溶媒が樹脂中に残存する場合、この樹脂を用い
た成形体が電子機器等に組み込まれると金属部の腐食の原因ともなり得る。溶融重合法に
よって得られる樹脂は溶媒を含有しないため、加工工程や製品品質の安定化にとっても有
利である。
溶融重合法によりポリカーボネート樹脂を製造する際は、前述した構造単位を有するモ
ノマーと、炭酸ジエステルと、重合触媒とを混合し、溶融下でエステル交換反応(又は重
縮合反応とも称する。)を行い、脱離成分を系外に除去しながら反応率を上げていく。重
合の終盤では高温、高真空の条件で目的の分子量まで反応を進める。反応が完了したら、
反応器から溶融状態の樹脂を抜き出し、本発明のポリカーボネート樹脂が得られる。
重縮合反応は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物と全ジエステル化合物のモル比率を
厳密に調整することで、反応速度や得られる樹脂の分子量を制御できる。ポリカーボネー
ト樹脂の場合、全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルのモル比率を、0.90~
1.10に調整することが好ましく、0.96~1.05に調整することがより好ましく
、0.98~1.03に調整することが特に好ましい。
前記のモル比率が上下に大きく外れると、所望とする分子量の樹脂が製造できなくなる
。また、前記のモル比率が小さくなりすぎると、製造された樹脂のヒドロキシ基末端が増
加して、樹脂の熱安定性が悪化する場合がある。また、未反応のジヒドロキシ化合物が樹
脂中に多く残存し、その後の成形加工工程で成形機の汚れや成形品の外観不良の原因とな
り得る。一方、前記のモル比率が大きくなりすぎると、同一条件下ではエステル交換反応
の速度が低下したり、製造された樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が増加し、この残存低
分子成分が同様に成形加工工程での問題を招く可能性がある。
溶融重合法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。重縮合反応は、1つの重合
反応器を用い、順次条件を変えて2段階以上の工程で実施してもよいし、2つ以上の反応
器を用いて、それぞれの条件を変えて2段階以上の工程で実施してもよいが、生産効率の
観点からは、2つ以上、好ましくは3つ以上の反応器を用いて実施する。重縮合反応はバ
ッチ式、連続式、或いはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれでも構わないが、生産効
率と品質の安定性の観点から、連続式が好ましい。
重縮合反応においては、反応系内の温度と圧力のバランスを適切に制御することが重要
である。温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが反応
系外に留出してしまうおそれがある。その結果、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化
合物のモル比率が変化し、所望の分子量の樹脂が得られない場合がある。
また、重縮合反応の重合速度は、ヒドロキシ基末端と、カーボネート基末端とのバラン
スによって制御される。そのため、特に連続式で重合を行う場合は、未反応モノマーの留
出によって末端基のバランスが変動すると、重合速度を一定に制御することが難しくなり
、得られる樹脂の分子量の変動が大きくなるおそれがある。樹脂の分子量は溶融粘度と相
関するため、得られた樹脂を成形加工する際に、溶融粘度が変動し、均一な寸法の成形品
が得られない等の問題を招くおそれがある。
さらに、未反応モノマーが留出すると、末端基のバランスだけでなく、樹脂の共重合組
成が所望の組成から外れ、機械物性や光学特性にも影響するおそれがある。本発明のポリ
カーボネート樹脂から得られる位相差フィルムでは、位相差の波長分散性は樹脂中のフル
オレン系モノマーとその他の共重合成分との比率によって制御されるため、重合中に比率
が崩れると、所定の特性が得られなくなるおそれがある。
以下、溶融重縮合反応の工程を、モノマーを消費させてオリゴマーを生成させる段階(
第1段目の反応)と、所望の分子量まで重合を進行させてポリマーを生成させる段階(第
2段目の反応)に分けて述べる。
具体的に、第1段目の反応における反応条件としては、以下の条件を採用することがで
きる。即ち、重合反応器の内温は、通常130℃以上、好ましくは150℃以上、より好
ましくは170℃以上、かつ、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好まし
くは230℃以下の範囲で設定する。また、重合反応器の圧力(以下、圧力とは絶対圧力
を表す。)は、通常70kPa以下、好ましくは50kPa以下、より好ましくは30k
Pa以下、かつ、通常1kPa以上、好ましくは3kPa以上、より好ましくは5kPa
以上の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間
以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範
囲で設定する。
第1段目の反応は、発生するジエステル化合物由来のモノヒドロキシ化合物を反応系外
へ留去しながら実施される。例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用
いる場合には、第1段目の反応において反応系外へ留去されるモノヒドロキシ化合物はフ
ェノールである。
第1段目の反応においては、反応圧力を低くするほど重合反応を促進することができる
が、一方で未反応モノマーの留出が多くなってしまう。未反応モノマーの留出の抑制と、
減圧による反応の促進を両立させるためには、還流冷却器を具備した反応器を用いること
が有効である。特に未反応モノマーの多い反応初期に還流冷却器を用いるのがよい。
第2段目の反応は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生する
モノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力を5kPa以下
、好ましくは3kPa以下、より好ましくは1kPa以下にする。また、内温は、通常2
10℃以上、好ましくは220℃以上、かつ、通常260℃以下、好ましくは255℃以
下の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以
上、より好ましくは1時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より
好ましくは3時間以下の範囲で設定する。着色や熱劣化、架橋などの副反応を抑制し、色
相や耐候性、熱安定性の良好な樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度を2
60℃以下、好ましくは255℃以下、さらに好ましくは250℃以下にするとよい。特
に本発明で用いる構造単位(A)の原料となるジヒドロキシ化合物は、過度に高温で重合
反応を行うと、分解して分岐成分を発生させ、生成するポリマーが架橋、ゲル化する懸念
がある。ゲルが発生すると、得られる樹脂の機械物性が低下するおそれがある。
重合時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、又は「重合触媒」と
言うことがある。)は、反応速度や重縮合して得られる樹脂の色調や熱安定性に非常に大
きな影響を与え得る。触媒としては、製造された樹脂の透明性、色相、耐熱性、熱安定性
、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されないが、長周期型周期表における
1族又は2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ
素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化
合物が挙げられる。好ましくは長周期型周期表第2族の金属およびリチウムからなる群よ
り選ばれる少なくとも1種の金属化合物が使用される。
前記の1族金属化合物としては、例えば以下の化合物を採用することができるが、これ
ら以外の1族金属化合物を採用することも可能である。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナト
リウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭
酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウ
ム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチ
ウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化
ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェ
ニルホウ酸カリウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸セシウム、
安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸
水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウ
ム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウ
ム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレ
ート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩
、2セシウム塩。これらのうち、重合活性と得られる樹脂の色相の観点から、リチウム化
合物を用いることが好ましい。
前記の2族金属化合物としては、例えば以下の化合物を採用することができるが、これ
ら以外の2族金属化合物を採用することも可能である。
水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭
酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム
、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシ
ウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム
、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム。
これらのうち、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物を用いること
が好ましく、重合活性と得られる樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又は
カルシウム化合物を用いることが更に好ましく、カルシウム化合物を用いることが最も好
ましい。
尚、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素
化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合
物を併用することも可能であるが、長周期型周期表第2族の金属およびリチウムからなる
群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を使用することが特に好ましい。
前記重合触媒の使用量は、金属量として、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物
1mol当たり0.1μmol~300μmol、好ましくは0.5μmol~100μ
molである。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため、所望の分子量の樹脂を得ようとする
にはその分だけ重合温度を高くせざるを得なくなる。そのため、重合反応時の熱履歴が増
大し、得られる樹脂の色相や耐候性が悪化する可能性が高くなる。また、未反応の原料が
重合途中で揮発して、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物のモル比率が崩れ、所
望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、好ましく
ない副反応を併発し、得られる樹脂の色相の悪化や成形加工時の樹脂の着色や分解を招く
可能性がある。
前記1族金属の中でもナトリウム、カリウム、セシウムは、樹脂中に多く含まれると色
相に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、これらの金属は使用する触媒からのみではな
く、原料や反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、樹脂中のこれらの金属
の化合物の合計量は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、2μm
ol以下がよく、好ましくは1μmol以下、より好ましくは0.5μmol以下である
本発明のポリカーボネート樹脂は、前述のとおり重合させた後、通常、冷却固化させ、
回転式カッター等でペレット化することができる。ペレット化の方法は限定されるもので
はないが、最終段の重合反応器からポリカーボネート樹脂を溶融状態で抜き出し、ストラ
ンドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終段の重合反応器から溶融状態で
一軸又は二軸の押出機にポリカーボネート樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化さ
せてペレット化させる方法、又は、最終段の重合反応器から溶融状態でポリカーボネート
樹脂を抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一
軸又は二軸の押出機にポリカーボネート樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させ
てペレット化させる方法等が挙げられる。
本発明の第二の態様は、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキ
シ化合物と、反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンポリオルガノシロキ
サンを混合し、原料溶解液を得る工程と、該原料溶解液と、炭酸ジエステルと、重合触媒
とを、反応器において重縮合反応させる工程を有する、ポリカーボネート樹脂の製造方法
に関する。
Figure 2022150359000013
(式(3)において、Wは炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数6~20のシクロアル
キレン基;R~Rは炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基、又は置換基を有し
てもよい炭素数6~20のシクロアルキル基;mは0~10の整数)
上記式(3)において、W、R、R、mの詳細は、前述の式(1)におけるものと
同様である。
本発明の方法において、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキ
シ化合物は、下記式(X)で表されるスピログリコールであることが特に好ましい。この
場合には、反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンとの相溶性に特に優れ
るため、耐薬品性に優れた共重合ポリカーボネート樹脂を製造することが可能となる。
Figure 2022150359000014
本発明に方法に用いる反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンは、本発
明の第一の態様の共重合ポリカーボネート樹脂の有する前記構造単位(B)を導入するた
めの反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンと同様のものを用いることが
できる。
本発明の第二の態様のポリカーボネート樹脂の製法方法は、前述の通り、上記式(3)
で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、反応性官能基を2つ以上有
するポリオルガノシロキサンを混合し、原料溶液を得る工程(以下、原料溶解工程と称す
る場合がある。)を有する。
・原料溶解工程
本発明の方法において、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキ
シ化合物と、反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンポリオルガノシロキ
サンを混合し、原料溶液を得る方法は特に限定されない。例えば、上記式(3)で表され
るジヒドロキシ化合物をあらかじめ溶融させ、その溶融液を有する原料溶解槽に、液状の
反応性官能基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンポリオルガノシロキサンを供給し
て溶解させる方法や、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と液体の反応性官能基
を2つ以上有するポリオルガノシロキサンポリオルガノシロキサンを同時に溶解させる方
法を好ましく用いることができる。
原料溶液を調製する際の温度は、特に限定されないが、160℃以下が好ましく、15
0℃以下がさらに好ましい。一方、80℃以上が好ましく、90℃以上がさらに好ましい
。溶解槽の内温を上記範囲とすることで、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を
含むジヒドロキシ化合物の分解反応や着色を抑制することができ、また、移送中に結晶化
して配管などを閉塞させるリスクも回避できる。
原料溶液を調整する際に、原料溶解槽を用いることもできる。原料溶解槽を用いる場合
は、原料溶解槽は1槽でもよいが、2槽以上を直列に連結して用いてもよい。1槽目の溶
解槽に供給されるジヒドロキシ化合物(A)は通常、室温程度の温度のものが供給される
ために、溶解に必要な温度は、液体状態を維持する温度よりも高い温度が必要となる。そ
の場合、溶解が完了した部分も高い温度にさらされ続けるため、熱劣化が起きやすくなる
。1層目で溶解させた液を2槽目に移送することで、2層目は1槽目よりも低温で維持す
ることができる。
本発明の第二の態様のポリカーボネート樹脂の製法方法は、前述の通り、工程(以下、
重合反応工程と称する場合がある。)を有する、
・重合反応工程
本発明の方法において、該原料溶解液と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを、反応器に
おいて重縮合反応させる方法は、特に限定されない。例えば、本発明の第一の態様の共重
合ポリカーボネート樹脂の製造方法として前述した溶融重縮合反応の方法を好適に採用す
ることができる。
上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、反応性官能
基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンポリオルガノシロキサンとは相溶性が高いた
め、重合反応に用いる反応溶液としての原料溶液が均一となる。このため、重合反応工程
において、ポリオルガノシロキサン単独での反応が低減されポリマー中のポリオルガノシ
ロキサンに由来する構造単位ドメインの分散が良くなると同時にドメインが小さくなる。
結果として、得られるポリマーは高い耐薬品性を発現し、一部態様では透明性が向上する
と考えられる。
(成形物(成形品))
本発明の共重合ポリカーボネートは、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知
られている方法で成形物(成形品)とすることができる。
また、本発明の共重合ポリカーボネートは、種々の成形を行う前に、必要に応じて、酸
化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、
滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤、充填剤等の添加剤を、タンブラー、スーパー
ミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出
機などで混合することもできる。
(熱安定剤)
本発明のポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、溶融加工時等における分子量の低
下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤とし
ては、通常知られるヒンダードフェノール系熱安定剤および/又はリン系熱安定剤が挙げ
られる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、以下の化合物を採用することができ
る。
2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール
、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジ
メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ
-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノ
ン、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフ
ェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’
-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,2’-
メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレ
ン-ビス-(6-シクロヘキシル-4-メチルフェノール)、2,2’-エチリデン-ビ
ス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)、テトラキス-[メチレン-3-(3
’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]-メタ
ン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-
4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等。中でも、テトラキス-[メチレン-3-(3’,
5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]-メタン、
n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-t
ert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンを用いることが好ましい。
リン系化合物としては、例えば、以下に示す亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホ
ン酸及びこれらのエステル等を採用することができるが、これらの化合物以外のリン系化
合物を採用することも可能である。
トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4
-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチ
ルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、
ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノ
ブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフ
ェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペン
タエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチ
ルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホ
スファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホ
スファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェー
ト、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジ
フェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェ
ート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス
(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホ
スホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル。
これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
かかる熱安定剤は、溶融重合時に反応液に添加してもよく、押出機を用いて樹脂に添加
し、混練してもよい。溶融押出法によりフィルムを製膜する場合、押出機に前記熱安定剤
等を添加して製膜してもよいし、予め押出機を用いて、樹脂中に前記熱安定剤等を添加し
て、ペレット等の形状にしたものを用いてもよい。
これらの熱安定剤の配合量は、樹脂を100重量部とした場合、0.0001重量部以
上が好ましく、0.0005重量部以上がより好ましく、0.001重量部以上がさらに
好ましく、また、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、0.2重
量部以下がさらに好ましい。
(触媒失活剤)
本発明のポリカーボネート樹脂に、重合反応で用いた触媒を中和し、失活させるために
酸性化合物を添加することで、色調や熱安定性を向上することができる。触媒失活剤とし
て用いられる酸性化合物としては、カルボン酸基やリン酸基、スルホン酸基を有する化合
物、又はそれらのエステル体などを用いることができるが、特に下記式(7)又は(8)
で表される部分構造を含有するリン系化合物を用いることが好ましい。
Figure 2022150359000015
前記式(7)又は(8)で表されるリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホ
ン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル等が挙げられ
る。上記の中でも触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているのは、亜リン酸、ホスホ
ン酸、ホスホン酸エステルであり、特に亜リン酸が好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸
、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、ア
ミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホス
ホン酸、4-メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プ
ロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸
ビス(2-エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン
酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジ
フェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン
酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシ
メチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸
ジエチル、(2-ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p-メチルベンジルホスホン
酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢
酸tert-ブチル、(4-クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジ
エチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロ
キシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセター
ル、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リ
ン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2-エ
チルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リ
ン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、又はジエステルとモノエス
テルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して
用いてもよい。
樹脂への前記リン系化合物の添加量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十
分であり、多すぎるとかえって樹脂が着色してしまったり、特に高温高湿度下での耐久試
験において、樹脂が着色しやすくなる。前記リン系化合物の添加量は、重合反応に用いた
触媒量に対応した量を添加する。重合反応に用いた触媒の金属1molに対して、前記リ
ン系化合物はリン原子の量として0.5倍mol以上、5倍mol以下が好ましく、さら
に0.7倍mol以上、4倍mol以下が好ましく、特に0.8倍mol以上、3倍mo
l以下が好ましい。
(ポリマーアロイ)
また、本発明の共重合ポリカーボネートには、成形加工性や諸物性のさらなる向上・調
整を目的として、本発明の共重合ポリカーボネート以外の樹脂(以下、単に「その他の樹
脂」と称することがある。)を添加することも出来る。
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレン
テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリ
スチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重
合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)
、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)等の
スチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリ
アミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニ
レンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリ
レート樹脂等が挙げられる。
尚、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び
比率で含有されていてもよい。
本発明の共重合ポリカーボネートを成形してなる成形品は、特に耐候性、耐薬品性等に
優れることから、自動車内外装部材、電装部材、電子電気材料、屋外建築部材、化粧品容
器用途といった幅広い分野にて利用することができる。
以下にポリカーボネート共重合体の実施例を示すが、本発明は、その要旨を超えない限
り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通り
である。
(1)ガラス転移温度
樹脂のガラス転移温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差走査熱量計DSC
6220を用いて測定した。約10mgの樹脂試料を同社製アルミパンに入れて密封し、
50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温した。3
分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、
再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータよ
り、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲
線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始
温度を求め、それをガラス転移温度とした。
(2)耐候性試験
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、200Pa以下の減圧下、ガラス転移温度
-10℃の温度で12時間以上乾燥した。次に、乾燥したペレット約4gを小型熱プレス
機(アズワン株式会社、AH-2003C AH-1TC)を使用し、縦7cm、横7cm、
厚さ0.5mmのスペーサーを用い、試料の上下にポリイミドフィルムを敷いて、温度2
00~230℃で3分間予熱し、圧力7MPaで5分間加圧後、スペーサーごと取り出し
、冷却してシート成形品を作製した。
得られたシート成形品を使用し、岩崎電気(株)製アイサンキューブキセノンSCX4
00を用いて、照射強度60W/m2の条件で100時間処理した。照射前後のシートの
色調をコニカミノルタ(株)製分光測色計CM-5を用い、ASTM D1925に準拠
して測定した。プレートを測定室に置き、透過光のYI(イエローネスインデックス)値
を測定した。照射処理後のYIと処理前のYIの差(ΔYI)が小さいほどUV照射によ
る着色が少なく、耐候性が優れることを示す。
<評価>
ΔYIが1.0未満の場合:○
ΔYIが1.0以上の場合:×
(3)透明性
上記(2)で得られた耐候性試験前のシート成形品にて、厚み方向と幅方向から目視で
確認して、透明性が比較例1と同程度の透明性のものを〇、透明性が比較例1より劣るも
の、白濁しているものを×とした。
(4)全光線透過率の測定
上記(2)で得られた耐候性試験前のシート成形品にて、色彩・濁度同時測定器(日本
電色工業株式会社、形式:COH-400)を使用し、JIS K7105に準拠して測
定した。
(5)吸水率の測定
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、200Pa以下の減圧下、ガラス転移温度
-10℃の温度で12時間以上乾燥した。次に、乾燥したペレット約4gを小型熱プレス
機(アズワン株式会社、AH-2003C AH-1TC)を使用し、縦14cm、横14c
m、厚さ0.1mmのスペーサーを用い、試料の上下にポリイミドフィルムを敷いて、温
度200~230℃で3分間予熱し、圧力7MPaで5分間加圧後、スペーサーごと取り
出し、冷却してシートを作製した。
得られたフィルムを縦100mm、横100mmの正方形に切り出して試料を作製した
。この試料を200Pa以下の減圧下、ガラス転移温度-10℃の温度で24時間以上乾
燥した。乾燥後の試料の重量を0.1mgまで量り、この値を乾燥重量とした。次に、乾
燥後の試料を23℃に調温された脱塩水に72時間以上浸漬した。浸漬後の試料を水から
取り出し、表面の水分を清浄で乾いた布又はフィルター紙で全て拭き取った後、試料を0
.1mgまで量り、この値を吸水重量とした。吸水重量は水から取り出して1分以内に測
定した。吸水率は式1を用いて求めた。
(吸水重量-乾燥重量)/乾燥重量×100=吸水率(%)・・・・・・・・式1
(6)耐薬品性試験
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、200Pa以下の減圧下、ガラス転移温度
-20℃の温度で12時間以上乾燥した。次に、乾燥したペレット約4gを小型熱プレス
機(アズワン株式会社、AH-2003C AH-1TC)を使用し、縦14cm、横2cm
、厚さ1mmのスペーサーを用い、試料の上下にポリイミドフィルムを敷いて、温度20
0~230℃で3分間予熱し、圧力7MPaで5分間加圧後、スペーサーごと取り出し、
冷却してシートを作製した。得られたシートを縦10cm、横2cmの長方形に切り出し
て試験片を作製した。
試験片の表面に界面活性剤 IGEPAL CA630(株式会社エムピーバイオジャ
パン)を塗布し、長軸100mm、短軸40mmの図1に示す1/4楕円治具に取り付け
、25℃×60%RHの環境下に72時間放置し、試験片の表面から裏面にまで達する亀
裂が発生する位置Xを測定し、式1を用いて臨界ひずみ値を求めた。当該臨界ひずみ値に
基づき、耐薬品性を下記のように評価した。
ε:臨界歪み(%)
a:治具の長軸(=120mm)
b:治具の短軸(=40mm)
t:試験片の厚み(=1.0mm)
X:クラック発生位置からの距離(mm)
<評価>
臨界歪み値(ε)が0.7%以上の場合:○
臨界歪み値(ε)が0.7%未満の場合:×
Figure 2022150359000016
(7)ジメチルシロキサン単位の平均繰り返し数n
H-NMR測定によって、ジメチルシロキサン単位の平均繰り返し数nを算出した。
用いた装置や条件は次のとおりである。
・装置:JNM-ECZ400S(日本電子社製)
・測定温度:30℃
・緩和時間:6秒
・積算回数:64回・サンプル量:5~15mg
・溶媒:重クロロホルム
後述の実施例、比較例で使用したポリオルガノシロキサンを例に、ジメチルシロキサン
単位の平均繰り返し数nの計算方法を説明する。
<下記式(V-1)で表されるポリジメチルシロキサンの場合>
・積分値を算出する範囲
(a):0.04~0.1ppm:ジメチルシロキサン部のメチル基由来(プロトン数:
6)
(b):0.5~0.6ppm:両末端カルビノール変性部のメチレン基由来(プロトン
数:4)
{(a)/((b)/4))/6}-1 = ジメチルシロキサン単位の平均繰り返し数
<下記式(V-2)で表されるポリジメチルシロキサンの場合>
・積分値を算出する範囲
(a):0.04~0.1ppm:ジメチルシロキサン部のメチル基由来(プロトン数:
6)
(b):3.8~3.9ppm:両末端オイゲノール変性部のメチル基由来(プロトン数
:6)
{(a)/((b)/6))/6}-1 = ジメチルシロキサン単位の平均繰り返し数
<下記式(V-3)で表されるポリジメチルシロキサンの場合>
(a):0.04~0.1ppm:ジメチルシロキサン部のメチル基由来(プロトン数:
6)
(b):0.5~0.6ppm:末端カルビノール変性部、末端ブチレン部のメチレン基
由来(プロトン数:4)
{(a)/((b)/4))/6}-1 = ジメチルシロキサン単位の平均繰り返し数
Figure 2022150359000017
[化合物の略号]
以下の合成例、実施例および比較例で用いた化合物の略号は以下の通りである。
・ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
・SPG:スピログリコール(三菱ガス化学社製)
・CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール(シス、トランス混合物、SKケミカ
ル社製)
・1, 6-HD:1, 6-ヘキサンジオール(BASF社製)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱ケミカル社製)
・PCD:ベネビオール(三菱ケミカル社製、グレード名:HS0840H)
・ポリオルガノシロキサン-1:X-22-160AS、式(V-1)で表される両末端カ
ルビノール変性ジメチルシロキサン、数平均分子量:970、ジメチルシロキサン単位の
平均繰り返し数n:10(信越化学社製)
・ポリオルガノシロキサン-2:BY16-201、式(V-1)で表される両末端カルビ
ノール変性ジメチルシロキサン数平均分子量1860、ジメチルシロキサン単位の平均繰
り返し数n:22(東レ・ダウコーニング社製)
・ポリオルガノシロキサン-3:EXL1414T(Sabic社製)含有ポリオルガノ
シロキサン、式(V-2)で表される両末端オイゲノール変性ポリジメチルシロキサン、数
平均分子量3900、ジメチルシロキサン単位の平均繰り返し数n:48
・ポリオルガノシロキサン-4:FM-0411、数平均分子量:1140、式(V-3)
で表される片末端カルビノール変性ジメチルシロキサン、ジメチルシロキサン単位の平均
繰り返し数n:13(JNC社製)
・ポリオルガノシロキサン-5:XP1459、式(V-1)で表される両末端カルビノー
ル変性ジメチルシロキサン、数平均分子量600、ジメチルシロキサン単位の平均繰り返
し数n:5(JNC社製)
[実施例1]
ISB 8.49g(0.058mol)、SPG 73.70g(0.242mol
)、ポリオルガノシロキサン-1 9.74g(0.010mol)、DPC 66.4
7g(0.310mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.09×10
g(6.21×10-5mol)を反応器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。
窒素雰囲気下、反応器内を150℃で30分間、攪拌しながら原料を溶解させた。反応1
段目の工程として220℃まで30分かけて昇温し、30分間常圧にて反応させた。次い
で圧力を常圧から13.3kPaまで90分かけて減圧し、13.3kPaで30分間保
持し発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで反応2段目の工程として熱媒温
度を15分かけて240℃まで昇温しながら、圧力を133Pa以下まで20分かけて減
圧し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定撹拌動力になった時点で窒素に
て復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにした。得ら
れたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表
1に示す。
[実施例2]
ISB 16.98g(0.116mol)、SPG 64.49g(0.212mo
l)、ポリオルガノシロキサン-1 9.74g(0.010mol)、DPC 73.
15g(0.341mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.49×10
-2g(8.45×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様に重合反応を行い、
ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用
いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
ISB 8.49g(0.058mol)、SPG 78.31g(0.257mol
)、ポリオルガノシロキサン-1 4.87g(0.005mol)、DPC 68.6
4g(0.320mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.41×10
g(8.01×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様に重合反応を行い、ポ
リカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用い
て、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
ISB 12.74g(0.087mol)、SPG 73.70g(0.242mo
l)、ポリオルガノシロキサン-1 4.87g(0.005mol)、DPC 71.
62g(0.334mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.47×10
-2g(8.36×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様に重合反応を行い、
ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用
いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
CHDM 16.95g(0.118mol)、SPG 64.49g(0.212m
ol)、ポリオルガノシロキサン-1 9.74g(0.010mol)、DPC 72
.71g(0.339mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.50×1
-2g(8.49×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様に重合反応を行い
、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを
用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例6]
1,6-HD 16.39g(0.139mol)、SPG 64.50g(0.21
2mol)、ポリオルガノシロキサン-1 9.73g(0.010mol)、DPC
72.80g(0.363mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.27
×10-2g(7.21×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様に重合反応を
行い、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレッ
トを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例7]
ISB 9.41g(0.064mol)1,6-HD 11.41g(0.097m
ol)、SPG 59.89g(0.197mol)、ポリオルガノシロキサン-1 9
.74g(0.010mol)、DPC 78.77g(0.368mol)、及び触媒
として酢酸カルシウム1水和物 0.97×10-2g(5.52×10-5mol)を
用いた以外は実施例1と同様に重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た
。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結
果を表1に示す。
[実施例8]
PCD 24.09g(0.035mol)、SPG 59.88g(0.197mo
l)、ポリオルガノシロキサン-1 9.74g(0.010mol)、DPC 51.
82g(0.242mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.07×10
-2g(6.05×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様に重合反応を行い、
ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用
いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例9]
ISB 12.74g(0.087mol)、SPG 73.71g(0.242mo
l)、ポリオルガノシロキサン-2 4.93g(0.002mol)、DPC 71.
43g(0.333mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.46×10
-2g(8.29×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様に重合反応を行い、
ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用
いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例10]
ISB 16.98g(0.116mol)、SPG 64.49g(0.212mo
l)、ポリオルガノシロキサン-2 9.87g(0.005mol)、DPC 71.
70g(0.335mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物 1.47×10
-2g(8.33×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様に重合反応を行い、
ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用
いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
ISB 16.98g(0.116mol)、SPG 73.71g(0.242mo
l)、DPC 76.76g(0.358mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水
和物 0.95×10-2g(5.37×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同
様に重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネー
ト樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
シロキサン共重合ポリカーボネート EXL1414T(Sabic社製)を用いて、
前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
ISB 67.92g(0.465mol)、FM-0411 0.48g(0.00
1mol)、DPC 99.56g(0.465mol)、及び触媒として酢酸カルシウ
ム1水和物 6.55×10-4g(3.72×10-6mol)を用いた以外は実施例
1と同様に重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカー
ボネート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例4]
ISB 63.23g(0.433mol)、XP1459 5.30g(0.009m
ol)、DPC 94.57g(0.441mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1
水和物 6.22×10-4g(3.53×10-6mol)を用いた以外は実施例1と
同様に重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネ
ート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 2022150359000018
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例1~10によれば、構造単位(A)と構造単
位(B)を有するポリカーボネート樹脂は、耐薬品性・耐候性ともに優れる。また、実施
例1~8は透明性にも優れる。構造単位(B)を含有しない比較例1、加えて構造単位(
A)を含有しない比較例3~4は耐薬品性が低いことが分かる。また、構造単位(A)、構
造単位(B)を含有しない比較例2は、耐候性と耐薬品性のいずれも劣ることが分かる。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で表される構造単位(A) と反応性官能基を2つ以上有するポリオルガ
    ノシロキサンに由来する構造単位 (B)を含有する、共重合ポリカーボネート樹脂。
    Figure 2022150359000019
    (式(1)において、Wは炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数6~20のシクロアル
    キレン基;R~Rは炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基、又は置換基を有し
    てもよい炭素数6~20のシクロアルキル基;mは0~10の整数)
  2. 樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に
    、構造単位(A)の含有量が40重量%以上、90重量%以下、構造単位(B)の含有量
    が1.0重量%以上、20重量%以下である、請求項1に記載の共重合ポリカーボネート
    樹脂。
  3. 構造単位(A)と構造単位(B)の含有量の比が96/4~70/30である、請求項
    1又は2に記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
  4. 反応性官能基が、それぞれ独立に、水酸基、カルボキシル基、アミン基、アルケニル基
    、エステル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、及び環状エーテル基からなる群より
    選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂
  5. 構造単位(B)が下記式(2)で表される請求項1~4のいずれかに記載の共重合ポリ
    カーボネート樹脂。
    Figure 2022150359000020
    (式(2)において、nは5~30を示す。R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロ
    ゲン原子、炭素数1~6 のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~1
    2のアリール基を示す。XおよびX’はそれぞれ独立に、酸素原子、又は-C(=O)-
    、エーテル構造、アミン構造、芳香族構造若しくは脂肪族構造を有する有機残基を示す。
    nはポリオルガノシロキサン部の平均繰り返し数を示す。)
  6. 樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に
    、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール
    、及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1つ以上の化合物
    に由来する構造単位(C)を合計5重量%以上、30重量%以下含有する請求項1~5の
    いずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
  7. ポリカーボネート樹脂の吸水率が1.1%以下であることを特徴とする請求項1~6の
    いずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
  8. 共重合ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が50℃以上160℃以下であることを
    特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
  9. 請求項1~8のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂を含む、成形品。
  10. 下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、反応性官能
    基を2つ以上有するポリオルガノシロキサンポリオルガノシロキサンを混合し、原料溶液
    を得る工程と、
    該原料溶液と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを、重縮合反応させる工程を有する、共重
    合ポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2022150359000021
    (式(3)において、Wは炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数6~20のシクロアル
    キレン基;R~Rは炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基、又は置換基を有し
    てもよい炭素数6~20のシクロアルキル基;mは0~10の整数)
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