JP2023143142A - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂 Download PDF

Info

Publication number
JP2023143142A
JP2023143142A JP2022050365A JP2022050365A JP2023143142A JP 2023143142 A JP2023143142 A JP 2023143142A JP 2022050365 A JP2022050365 A JP 2022050365A JP 2022050365 A JP2022050365 A JP 2022050365A JP 2023143142 A JP2023143142 A JP 2023143142A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mol
polycarbonate resin
structural unit
resin
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022050365A
Other languages
English (en)
Inventor
昂志 中村
Koji Nakamura
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2022050365A priority Critical patent/JP2023143142A/ja
Publication of JP2023143142A publication Critical patent/JP2023143142A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)

Abstract

【課題】耐熱性及び耐衝撃性に優れた成形品を得ることができるポリカーボネート樹脂を提供する。【解決手段】構造単位(A)と構造単位(B)と構造単位(C)とを含むポリカーボネート樹脂である。構造単位(A)は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する。構造単位(B)は、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する。構造単位(C)は、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する。TIFF2023143142000014.tif20170TIFF2023143142000015.tif31170【選択図】なし

Description

本発明は、特定のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート樹脂に関する。
近年、環境への配慮より植物由来の原料であるイソソルビドに代表されるエーテル基含有ジオールを用いたポリカーボネート樹脂が開発されている(特許文献1及び2参照)。イソソルビドを用いたポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐候性や耐衝撃性に優れることが知られており、自動車内外装部品等への適用も知られている(特許文献3参照)。
一方、イソソルビドに由来する構造単位と4,4’-ジヒドロキシ-ジ-フェニルに由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が知られている(特許文献4及び5参照)。特許文献4には、イソソルビドと4,4’-ジヒドロキシ-ジ-フェニルに由来する構造単位を有するポリカーボネート樹脂の製造方法が記載されている。特許文献5には、イソソルビドに由来する構造単位をキラル基とし、4,4’-ジヒドロキシ-ジ-フェニル構造単位をメソゲン基としたキラルネマチックポリカーボネート樹脂が記載されている。
国際公開WO2004/111106号 国際公開WO2007/063823号 特開2013-209585号公報 特開昭56-110723号公報 特表2000-515574号公報
近年、イソソルビド由来の構造単位を有するポリカーボネート樹脂の成形品を、例えば、自動車等の車両用の内外装部品として使用することが検討されている。そして、ポリカーボネート樹脂の成形品には、使用環境下で変形しないという要求や、物体が衝突した際に成形品が破壊されないという要求がある。つまり、ポリカーボネート樹脂、その成形品には、優れた耐熱性、耐衝撃性が望まれている。
しかしながら、特許文献1~特許文献3等に記載の従来のポリカーボネート樹脂組成物の成形品には、耐熱性を維持したまま耐衝撃性を高めるという点において未だ改良の余地があった。また、特許文献4に記載のポリカーボネート樹脂は、構成単位の比率によっては成形性が悪く、また、成形体の耐衝撃性及び透明性が不十分であった。特許文献5に記載のポリカーボネート樹脂は、表面被覆材料、光学的構造素子、キラルネマチック着色剤としての用途を想定したものであり、耐衝撃性や透明性は一切明らかにされていない。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、耐熱性及び耐衝撃性に優れた成形品を得ることができるポリカーボネート樹脂を提供しようとするものである。
即ち、本発明の要旨は下記[1]~[8]に存する。
[1] 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(A)と、
脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する構造単位(B)と、
下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(C)とを含む、ポリカーボネート樹脂。
Figure 2023143142000001
Figure 2023143142000002
[2] 上記ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の上記構造単位(A)の含有量が5mol%以上50mol%以下である、[1]に記載のポリカーボネート樹脂。
[3] 上記ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の上記構造単位(B)の含有量が1mol%以上55mol%以下である、[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂。
[4] 上記ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の上記構造単位(C)の含有量が20mol%以上90mol%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[5] 上記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が80℃以上170℃以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[6] 上記ポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.2以上0.7以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[7] 上記構造単位(A)と上記構造単位(C)との合計100mol%に対する上記構造単位(A)の存在割合が50mol%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[8] 上記構造単位(A)、上記構造単位(B)及び上記構造単位(C)の合計100mol%に対する上記構造単位(A)及び上記構造単位(B)の合計存在割合が65mol%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
上記ポリカーボネート樹脂によれば、耐熱性及び耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。また、上記ポリカーボネート樹脂の成形品は、透明性及び耐吸湿性にも優れている。このような優れた特性を有することから、上記ポリカーボネート樹脂は、例えば自動車内外装部材、電装部材、電子電気材料、有機ガラスといった幅広い分野にて利用することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成の説明は、本発明の実施態様の一例(つまり、代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。本明細書において、「構造単位」とは、樹脂を構成する部分構造であって、繰り返し構造単位に含まれる特定の部分構造のことを意味する。具体的には、「構造単位」とは、樹脂を構成する重合体において隣り合う連結基に挟まれた部分構造、及び、重合体の末端部分に存在する重合反応性基と該重合反応性基に隣り合う連結基とに挟まれた部分構造をいう。より具体的には、ポリカーボネート樹脂の場合、カルボニル基が連結基であって、隣り合うカルボニル基に挟まれた部分構造のことを構造単位と呼称する。また、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あるいは物理値を含む意味で用いることとする。また、上限、下限として記載した数値あるいは物理値は、その値を含む意味で用いることとする。また、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」は、それぞれ実質的に同義である。
上記ポリカーボネート樹脂は、少なくとも、構造単位(A)と構造単位(B)と構造単位(C)とを有する。構造単位(A)は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物由来の構造単位であって、具体的には、下記式(3)で表される。構造単位(B)は、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する構造単位である。構造単位(C)は、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位であって、具体的には下記式(4)で表される。
Figure 2023143142000003
Figure 2023143142000004
[ポリカーボネート樹脂の構造と原料]
(構造単位(A)))
ポリカーボネート樹脂の耐熱性や耐衝撃性、耐吸湿性がより良好になるという観点から、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の上記構造単位(A)の含有量は、5mol%以上であることが好ましく、8mol%以上であることがより好ましく、11mol%以上であることが更に好ましく、14mol%以上が更により好ましく、17mol%以上が最も好ましい。また、ポリカーボネート樹脂の結晶化が抑制され、樹脂の透明性が向上するという観点から、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の上記構造単位(A)の含有量は、50mol%以下であることが好ましく、45mol%以下であることがより好ましく、40mol%以下であることが更に好ましく、35mol%以下であることが更により好ましく、29mol%以下であることが最も好ましい。
構造単位(A)は、芳香族ジヒドロキシ化合物である4,4’-ジヒドロキシ-ジ-フェニルから誘導される。構造単位(A)を含むポリカーボネート樹脂は、少なくとも4,4’-ジヒドロキシ-ジ-フェニルをポリカーボネート樹脂の原料モノマーとして用いることにより得られる。
(構造単位(B))
ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性、溶融加工性、耐吸湿性が向上するという観点から、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の構造単位(B)の含有量は、1mol%以上であることが好ましく、2mol%以上であることがより好ましく、3mol%以上であることが更に好ましく、4mol%以上が更により好ましく、5mol%以上が最も好ましい。また、ポリカーボネート樹脂の耐熱性がより良好になるという観点から、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の構造単位(B)の含有量は、55mol%以下であることが好ましく、50mol%以下であることがより好ましく、45mol%以下であることが更に好ましく、40mol%以下であることが更により好ましく、35mol%以下であることが最も好ましい。
構造単位(B)は、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物から誘導される。構造単位(B)を含むポリカーボネート樹脂は、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物をポリカーボネート樹脂の原料モノマーとして用いることにより得られる。
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物;ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等の分岐鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。原料の入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物が好ましい。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等のテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール;1,3-アダマンタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の3級アルコールが挙げられる。
オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
複素環構造を含有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるジオキサングリコール、下記式(6)で表されるスピログリコール等が挙げられる。
Figure 2023143142000005
Figure 2023143142000006
構造単位(B)を構成する化合物としては、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ジオキサングリコール、及びスピログリコールから選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールから選択される少なくとも1種の化合物がより好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂の耐熱性、機械物性等の特性がバランス良く優れる。
なお、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの化合物には、例えばアセタール化合物に由来する多官能成分(具体的には二量体や三量体)からなる不純物が含まれることがある。そのため、構造単位(B)を構成する化合物として、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを用いる場合には、予め化合物を精製して、不純物の量を低減することが好ましい。不純物の量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、耐衝撃性向上の観点からは、0.4質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。一方、不純物にはブロー成型性や延伸性の向上効果があり、この向上効果の観点からは、不純物の含有量は0.01質量%以上であることが好ましい。
(構造単位(C))
ポリカーボネート樹脂の透明性、耐熱性がより向上するという観点から、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の構造単位(C)の含有量は、20mol%以上であることが好ましく、25mol%以上であることがより好ましく、30mol%以上であることが更に好ましく、35mol%以上であることが更により好ましく、40mol%以上であることが最も好ましい。また、ポリカーボネート樹脂の吸水率を低減することができ、さらに樹脂の溶融加工性が良好となるという観点から、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の構造単位(C)の含有量は、90mol%以下であることが好ましく、85mol%以下であることがより好ましく、80mol%以下であることが更に好ましく、75mol%以下であることが更により好ましく、70mol%以下であることが最も好ましい。
構造単位(C)を導入可能なジヒドロキシ化合物としては、相互に立体異性体の関係にある、イソソルビド(即ち、ISB)、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらの中でもISBが、入手及び製造のし易さ、耐候性、光学特性、成形性、耐熱性及びカーボンニュートラルの面から最も好ましい。ISBは、植物由来の資源として豊富に存在すると共に容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られる。なお、構造単位(C)は、具体的には上記式(4)で表される。式(4)で表される構造を「イソソルビド骨格」というが、イソソルビド骨格は、ISBだけでなく、イソマンニド、イソイデットに由来の構造単位を含む概念である。
上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすい。従って、保管中又は製造時の取扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。例えば、イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂の着色を招く虞がある。更に、物性を著しく劣化させる虞があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もある。
(その他構造単位)
また、ポリカーボネート樹脂は、上記構造単位(A)、上記構造単位(B)、上記構造単位(C)の他に、さらに芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3-フェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)メタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’-(シクロドデカン-1,1-ジイル)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロシキフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-(シクロドデカン-1,1-ジイル)ジフェノール、4,4’-(α-メチルベンジリデン)ビスフェノール等の芳香族ビスフェノール化合物;2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル等の芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物;9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等のフルオレン環を有するジヒドロキシ化合物などが挙げられる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、1種を用いても、2種以上を用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中のその他の構造単位の含有量は、好ましくは30mol%以下、より好ましくは20mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下、最も好ましくは0である。
(炭酸ジエステル)
上記ポリカーボネート樹脂に含有される上記の構造単位の連結基は、下記式(7)で表される炭酸ジエステルを重合することで導入される。
Figure 2023143142000007
式(7)中、RおよびRは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1~18の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数6~10の芳香族炭化水素基であり、RとRとは同一であっても異なっていてもよい。
およびRは、置換又は非置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、非置換の芳香族炭化水素基がより好ましい。尚、脂肪族炭化水素基の置換基としては、エステル基、エーテル基、アミド基、ハロゲン原子が挙げられ、芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
上記式(7)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(以下、適宜「DPC」と呼ぶ)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-tert-ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、より好ましくはジフェニルカーボネートである。
炭酸ジエステルは、塩化物イオン等の不純物を含む場合がある。これらの不純物は、重合反応を阻害したり、樹脂の色相を悪化させたりする場合がある。そのため、炭酸ジエステルとしては、必要に応じて蒸留等により精製したものを使用することが好ましい。
ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性、透明性がより向上するという観点から、ポリカーボネート樹脂中の構造単位(A)と構造単位(C)との合計100mol%に対する構造単位(A)の存在割合は、50mol%以下であることが好ましく、45mol%以下であることがより好ましく、40mol%以下であることが更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性、耐湿性がより向上するという観点から、ポリカーボネート樹脂中の構造単位(A)と構造単位(B)と構造単位(C)との合計100mol%に対する構造単位(A)と構造単位(B)との合計割合は、10mol%以上が好ましく、30mol%以上がより好ましく、40mol%を超えることがさらに好ましく、45mol%以上がさらにより好ましい。一方、ポリカーボネート樹脂の耐熱性、透明性がより向上するという観点から、ポリカーボネート樹脂中の構造単位(A)と構造単位(B)と構造単位(C)との合計100mol%に対する構造単位(A)と構造単位(B)との合計割合は、65mol%以下であることが好ましく、60mol%以下であることがより好ましく、56mol%以下であることが更に好ましい。
[ポリカーボネート樹脂の物性]
上記ポリカーボネート樹脂は、以下に記載する物性を有することが好ましい。
(全光線透過率)
ポリカーボネート樹脂は、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、86%以上であることがより好ましく、87%以上であることがさらに好ましく、88%以上が特に好ましい。全光線透過率が上記下限以上であると、透明材料として好適に用いることができる。ポリカーボネート樹脂の全光線透過率は、実施例記載の方法により測定することができる。ポリカーボネート樹脂の全光線透過率は、例えば樹脂を構成する構造単位の種類及び比率を変えることにより適宜調整することができる。具体的には、構造単位(A)の比率を減らすとポリカーボネート樹脂の全光線透過率は高くなる傾向にある。
(吸水率)
ポリカーボネート樹脂の吸水率は、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.3%以下、さらに好ましくは2.1%以下である。吸水率が上記上限以下であると、耐吸湿性が向上したり、寸法変化率が低くなる。ポリカーボネート樹脂の吸水率は、後述の方法により測定することができる。ポリカーボネート樹脂の吸水率は、例えば樹脂を構成する構造単位の種類及び比率を変えることにより適宜調整することができる。具体的には、構造単位(C)の比率を減らすとポリカーボネート樹脂の吸水率は低下する傾向にある。
(還元粘度)
上記ポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、好ましくは0.2dL/g以上、より好ましくは0.3dL/g以上である。還元粘度の上限は、好ましくは0.7dL/g以下、より好ましくは0.6dL/g以下である。還元粘度が上記範囲内にあるとポリカーボネート樹脂の機械物性や成形性が良好となる。ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、実施例記載の方法により測定することができる。
(ガラス転移温度)
上記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、110℃以上が特に好ましい。また、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、140℃以下が特に好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると十分な耐熱性を得られることから幅広い用途に適用が可能であり、溶融加工もしやすく、耐衝撃性などの機械的特性が良好となる。ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、実施例記載の方法により測定することができる。ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、例えば樹脂を構成する構造単位の種類及び比率を変えることにより適宜調整することができる。具体的には、構造単位(B)の比率を上記好ましい範囲に調整することにより、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を上記範囲に調整することができる。
(耐衝撃性)
ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性は、例えば、実施例記載の方法で測定されるノッチ付きアイゾッドの衝撃値にて評価される。ポリカーボネート樹脂のアイゾット衝撃値は、好ましくは12kJ/m以上であり、より好ましくは15kJ/m以上である。ポリカーボネート樹脂のアイゾット衝撃値は、例えば樹脂を構成する構造単位の種類及び比率を変えることにより適宜調整することができる。具体的には、構造単位(A)、構造単位(B)の比率を増やすとポリカーボネート樹脂のアイゾット衝撃値は高くなる傾向にある。
[ポリカーボネート樹脂の製造方法条件]
ポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造することができる。ポリカーボネート樹脂は、例えば、ホスゲンやカルボン酸ハロゲン化物を用いた溶液重合法又は界面重合法や、溶媒を用いずに反応を行う溶融重合法により製造される。これらの製造方法のうち、溶媒や毒性の高い化合物を使用しないことから環境負荷を低減することができ、また、生産性にも優れる溶融重合法によって製造することが好ましい。
また、重合に溶媒を使用すると樹脂中に溶媒が残存する場合があり、その可塑化効果によって樹脂のガラス転移温度が低下することにより、後述する成形や延伸などの加工工程での品質変動要因となり得る。また、溶媒としては塩化メチレン等のハロゲン系の有機溶媒が用いられることが多いが、ハロゲン系溶媒が樹脂中に残存する場合、この樹脂を用いた成形体が電子機器等に組み込まれると金属部の腐食の原因ともなり得る。溶融重合法によって得られる樹脂は溶媒を含有しないため、加工工程や製品品質の安定化にとっても有利である。
溶融重合法によりポリカーボネート樹脂を製造する際は、前述した構造単位を構成するモノマーと、炭酸ジエステルと、重合触媒とを混合し、溶融下でエステル交換反応(又は重縮合反応とも称する。)を行い、脱離成分を系外に除去しながら反応率を上げていく。重合の終盤では高温、高真空の条件で目的の分子量まで反応を進める。反応が完了したら、反応器から溶融状態の樹脂を抜き出し、上記ポリカーボネート樹脂が得られる。
重縮合反応は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物と全ジエステル化合物のモル比率を厳密に調整することで、反応速度や得られる樹脂の分子量を制御できる。ポリカーボネート樹脂の場合、全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルのモル比率を、0.90~1.10に調整することが好ましく、0.96~1.05に調整することがより好ましく、0.98~1.03に調整することが特に好ましい。
上記のモル比率を上記範囲に調整することにより、所望とする分子量の樹脂を製造することができる。また、上記のモル比率を上記下限以上にすることにより、樹脂のヒドロキシ基末端の増加を抑制することができ、樹脂の熱安定性を向上させることができる。さらに、樹脂中の未反応のジヒドロキシ化合物の残存量が少なくなり、成形加工工程で成形機の汚れを抑制し、成形品の外観不良の発生を抑制することができる。一方、上記のモル比率を上記上限以下にすることにより、同一条件下ではエステル交換反応の速度が向上したり、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量の増加を抑制し、残存低分子成分による成形加工工程での問題が発生することを防止できる。
溶融重合法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。重縮合反応は、1つの重合反応器を用い、順次条件を変えて2段階以上の工程で実施してもよいし、2つ以上の反応器を用いて、それぞれの条件を変えて2段階以上の工程で実施してもよいが、生産効率の観点からは、2つ以上、好ましくは3つ以上の反応器を用いて実施する。重縮合反応はバッチ式、連続式、或いはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれでも構わないが、生産効率と品質の安定性の観点から、連続式が好ましい。
重縮合反応においては、反応系内の温度と圧力のバランスを適切に制御することが好ましい。この場合には、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物のモル比率の変化を抑制し、所望の分子量の樹脂を容易に得ることができる。なお、温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが反応系外に留出してしまうおそれがある。
また、重縮合反応の重合速度は、ヒドロキシ基末端と、カーボネート基末端とのバランスによって制御される。そのため、特に連続式で重合を行う場合は、未反応モノマーの留出によって末端基のバランスが変動すると、重合速度を一定に制御することが難しくなり、樹脂の分子量の変動が大きくなるおそれがある。樹脂の分子量は、溶融粘度と相関するため、樹脂を成形加工する際に、溶融粘度が変動し、均一な寸法の成形品が得られない等の問題を招くおそれがある。
さらに、未反応モノマーが留出すると、末端基のバランスだけでなく、樹脂の共重合組成が所望の組成から外れ、機械物性や光学特性に影響する場合がある。例えばポリカーボネート樹脂を位相差フィルムに用いる場合において、位相差フィルムでは、位相差の波長分散性は樹脂中のフルオレン系モノマーとその他の共重合成分との比率によって制御されるため、重合中に比率が崩れると、所定の特性が得られなくなるおそれがある。
以下、溶融重縮合反応の工程を、モノマーを消費させてオリゴマーを生成させる段階(第1段目の反応)と、所望の分子量まで重合を進行させてポリマーを生成させる段階(第2段目の反応)に分けて述べる。
具体的に、第1段目の反応における反応条件としては、以下の条件を採用することができる。即ち、重合反応器の内温は、通常130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、かつ、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下の範囲で設定する。また、重合反応器の圧力(以下、圧力とは絶対圧力を表す。)は、通常70kPa以下、好ましくは50kPa以下、より好ましくは30kPa以下、かつ、通常1kPa以上、好ましくは3kPa以上、より好ましくは5kPa
以上の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲で設定する。
第1段目の反応は、ジエステル化合物由来のモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合には、第1段目の反応において反応系外へ留去されるモノヒドロキシ化合物はフェノールである。
第1段目の反応においては、反応圧力を低くするほど重合反応を促進することができるが、一方で未反応モノマーの留出が多くなってしまう。未反応モノマーの留出の抑制と、減圧による反応の促進とを両立させるためには、還流冷却器を具備した反応器を用いることが有効である。特に未反応モノマーの多い反応初期に還流冷却器を用いるのがよい。
第2段目の反応は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力を5kPa以下、好ましくは3kPa以下、より好ましくは1kPa以下にする。また、内温は、通常210℃以上、好ましくは220℃以上、かつ、通常260℃以下、好ましくは255℃以下の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲で設定する。着色、熱劣化、架橋などの副反応を抑制し、色相、耐候性、熱安定性のより良好な樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度を260℃以下、好ましくは255℃以下、さらに好ましくは250℃以下にするとよい。
重合時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、又は「重合触媒」と言うことがある。)を選択することにより、反応速度や重縮合して得られる樹脂の色調や熱安定性をより適切なものに調整することができる。触媒としては、樹脂の透明性、色相、耐熱性、熱安定性、機械的強度を満足させ得るものであれば限定されないが、長周期型周期表における1族又は2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは長周期型周期表第2族の金属およびリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物が使用される。
上記の1族金属化合物としては、例えば以下の化合物を採用することができるが、これら以外の1族金属化合物を採用することも可能である。1族金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩などが挙げられる。これらのうち、重合活性と得られる樹脂の色相の観点から、リチウム化合物を用いることが好ましい。
上記の2族金属化合物としては、例えば以下の化合物を採用することができるが、これら以外の2族金属化合物を採用することも可能である。2族金属化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどが挙げられる。これらのうち、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物を用いることが好ましく、重合活性と樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いることがより好ましく、カルシウム化合物を用いることが最も好ましい。
尚、上記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、長周期型周期表第2族の金属およびリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物を使用することが特に好ましい。
上記重合触媒の使用量は、金属量として、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol~300μmol、好ましくは0.5μmol~100μmolである。触媒量を上記範囲に調整することにより、重合速度を高めることができるため、重合温度を必要以上に高くすることを回避できる。そのため、重合反応時の熱履歴が減少し、樹脂の色相や耐候性に悪影響を及ぼすことをより防止できる。また、未反応の原料が重合途中で揮発することを防止し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物のモル比率が崩れることを防止できる。これにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂をより容易に得ることができる。また、触媒量を上記範囲に調整することにより、好ましくない副反応の併発を防止し、樹脂の色相の悪化や成形加工時の樹脂の着色や分解をより防止することができる。
上記1族金属の中でもナトリウム、カリウム、セシウムは、樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、樹脂中のこれらの金属の化合物の合計量は、金属量として、上記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、2μmol以下がよく、好ましくは1μmol以下、より好ましくは0.5μmol以下である。
上記ポリカーボネート樹脂は、上述のとおり重合させた後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化することができる。ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終段の重合反応器からポリカーボネート樹脂を溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終段の重合反応器から溶融状態で一軸又は二軸の押出機にポリカーボネート樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終段の重合反応器から溶融状態でポリカーボネート樹脂を抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸又は二軸の押出機にポリカーボネート樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
(成形物(成形品))
上記ポリカーボネート樹脂は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物(成形品)とすることができる。
また、ポリカーボネート樹脂には、成形前に、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤、充填剤等の添加剤を必要に応じて混合することができる。混合は、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで行われる。
(熱安定剤)
上記ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、溶融加工時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、通常知られるヒンダードフェノール系熱安定剤および/又はリン系熱安定剤が挙げられる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、以下の化合物を採用することができる。2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(6-シクロヘキシル-4-メチルフェノール)、2,2’-エチリデン-ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]-メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等。
これらの中でも、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]-メタン、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンを用いることが好ましい。
リン系化合物としては、例えば、以下に示す亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等を採用することができるが、これらの化合物以外のリン系化合物を採用することも可能である。
トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェー
ト、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル。
これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
かかる熱安定剤は、溶融重合時に反応液に添加してもよく、押出機を用いて樹脂に添加し、混練してもよい。溶融押出法によりフィルムを製膜する場合、押出機に上記熱安定剤等を添加して製膜してもよいし、予め押出機を用いて、樹脂中に上記熱安定剤等を添加して、ペレット等の形状にしたものを用いてもよい。
これらの熱安定剤の配合量は、樹脂を100重量部とした場合、0.0001重量部以上が好ましく、0.0005重量部以上がより好ましく、0.001重量部以上がさらに好ましく、また、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、0.2重量部以下がさらに好ましい。
(触媒失活剤)
上記ポリカーボネート樹脂に、重合反応で用いた触媒を中和し、失活させるために酸性化合物を添加することで、色調や熱安定性を向上することができる。触媒失活剤として用いられる酸性化合物としては、カルボン酸基やリン酸基、スルホン酸基を有する化合物、又はそれらのエステル体などを用いることができるが、特に下記式(8)又は(9)で表される部分構造を含有するリン系化合物を用いることが好ましい。
Figure 2023143142000008
Figure 2023143142000009
上記式(8)又は(9)で表されるリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル等が挙げられる。上記の中でも触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているのは、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステルであり、特に亜リン酸が好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、4-メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ビス(2-エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル、(2-ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p-メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert-ブチル、(4-クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、又はジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
リン系化合物は、重合反応に用いた触媒量に対応した量で添加される。触媒失活や着色抑制効果を十分に得るという観点、高温高湿度下での樹脂の着色を抑制するという観点から、リン系化合物の添加量は、重合反応に用いた触媒の金属1molに対して、リン原子の量として0.5倍mol以上、5倍mol以下が好ましく、さらに0.7倍mol以上、4倍mol以下が好ましく、特に0.8倍mol以上、3倍mol以下が好ましい。
(ポリマーアロイ)
また、上記ポリカーボネート樹脂には、成形加工性や諸物性のさらなる向上、調整を目的として、上記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂(以下、単に「その他の樹脂」と称することがある。)を添加することもできる。
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(つまり、HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(つまり、AS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(つまり、ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(つまり、AES樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。尚、その他の樹脂としては、1種の樹脂が含有されていてもよく、2種以上の樹脂が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
ポリカーボネート樹脂を成形してなる成形品は、特に透明性、耐衝撃性等に優れることから、自動車内外装部材、電装部材、電子電気材料、プラスチックガラスといった幅広い分野にて利用することができる。
以下にポリカーボネート樹脂の実施例を示すが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)ガラス転移温度(Tg)
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量計DSC6220を用いてポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を測定した。具体的には、まず、約10mgの樹脂試料を同社製のアルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温した。200℃で3分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度とした。
(2)全光線透過率
まず、200Pa以下の減圧下、(ガラス転移温度-10)℃の温度でポリカーボネート樹脂のペレットを12時間以上乾燥した。次に、乾燥したペレットを小型熱プレス機(アズワン株式会社、AH-2003C AH-1TC)を使用してシート状に成形した。具体的には、樹脂ペレット約4gを、縦7cm、横7cm、厚さ0.5mmのスペーサーを用い、試料の上下にポリイミドフィルムを敷いて、温度200~230℃で3分間予熱し、圧力7MPaで5分間加圧した。その後、スペーサーごと成形品を取り出し、冷却してシート成形品を得た。色彩・濁度同時測定器(日本電色工業株式会社、形式:COH-400)を使用し、シート成形品の全光線透過率をJIS K7105:1981に準拠して測定した。
(3)吸水率
まず、縦14cm、横14cm、厚さ0.1mmのスペーサーを使用した点を除き、「(2)全光線透過率」と同様にしてシート成形品を作製した。シート成形品を縦100mm、横100mmの正方形に切り出し、測定試料を得た。200Pa以下の減圧下、(ガラス転移温度-10)℃の温度で試料を24時間以上乾燥した。乾燥後の試料の重量を0.1mgまで量り、この値を乾燥重量とした。次に、乾燥後の試料を23℃に調温された脱塩水に72時間以上浸漬した。試料を水から取り出し、表面の水分を清浄で乾いた布又はフィルター紙で全て拭き取った後、試料の重量を0.1mgまで量り、この値を吸水重量とした。吸水重量は水から取り出して1分以内に測定した。式(I)を用いて吸水率を求めた。
吸水率(%)=(吸水重量-乾燥重量)/乾燥重量×100・・・(I)
(4)衝撃強度(Izod衝撃値)
ASTM D256に準拠して、厚み3.2mmのノッチ付き試験片を用いて、23℃においてIzod衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。試験片の作製は次のとおりに行った。まず、ポリカーボネート樹脂ペレットを90℃で5時間以上、真空乾燥をした。その後、小型射出成型機C,Mobile-0813(新興セルビック社製)を用いて、Izod試験片を作製した。カッターを用いて試験片を切削し、先端半径0.25mmのノッチを形成した。このようにして、ノッチ付試験片を作製した。なお、Izod衝撃強度の数値が大きいほど、耐衝撃性に優れることを表す。
(5)還元粘度
ポリカーボネート樹脂のサンプルを塩化メチレンに溶解させ、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式(II)より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrelから次式(III)より比粘度ηspを求めた。そして、比粘度ηspを濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きいことを意味する。
ηrel=t/t ・・・(II)
ηsp=(η-η)/η=ηrel-1 ・・・(III)
[化合物の略号]
以下の合成例、実施例および比較例で用いた化合物の略号は以下の通りである。
・ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
・CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール(シス、トランス混合物、SKケミカル社製)
・1,6-HD:1, 6-ヘキサンジオール(BASF社製)
・1,10-DD:1,10-デカンジオール (東京化成工業社製)
・4,4’-BP:4,4’-ジヒドロキシ-ジ-フェニル (東京化成工業社製)
・BPA:ビスフェノールA(三菱ケミカル社製)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱ケミカル社製)
[実施例1]
表1記載の構造単位含有量となるように各原料を仕込んだ。具体的には、ISB 58.85質量部(0.403mol)、CHDM 31.67質量部(0.220mol)、4,4’-BP 20.45質量部(0.110mol)、DPC 157.62質量部(0.736mol)、及び触媒としての酢酸カルシウム1水和物1.29×10-3質量部(7.32×10-6mol)を反応容器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、150℃で約10分間攪拌しながら原料を溶解させた。反応1段目の工程として、熱媒体を用いて30分かけて210℃まで反応容器内を昇温させ、常圧にて60分間原料を反応させた。次いで90分かけて常圧から13.3kPaまで減圧し、13.3kPaで30分間保持し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで、反応2段目の工程として熱媒体の温度を15分かけて230℃まで昇温させながら、15分かけて0.10kPa以下まで減圧し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定の撹拌トルクに到達後、窒素で常圧まで復圧して反応を停止させた。反応により生成したポリカーボネート樹脂を水中にストランド状に押し出した。ストランドをカッティングしてペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
ISB 52.90質量部(0.362mol)、CHDM 31.32質量部(0.217mol)、4,4’-BP 26.96質量部(0.145mol)、DPC 155.86質量部(0.728mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.28×10-3質量部(7.24×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
ISB 47.08質量部(0.322mol)、CHDM 30.98質量部(0.215mol)、4,4’-BP 33.33質量部(0.179mol)、DPC 154.14質量部(0.720mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.26×10-3質量部(7.16×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
ISB 41.40質量部(0.283mol)、CHDM 30.64質量部(0.212mol)、4,4’-BP 39.56質量部(0.212mol)、DPC 152.46質量部(0.712mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.25×10-3質量部(7.08×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネートのペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネートのペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
ISB 64.05質量部(0.438mol)、1,6-HD 12.95質量部(0.110mol)、4,4’-BP 34.01質量部(0.183mol)、DPC 157.27質量部(0.734mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.29×10-3質量部(7.31×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例6]
ISB 66.76質量部(0.457mol)、1,10-DD 12.25質量部(0.070mol)、4,4’-BP 37.72質量部(0.176mol)、DPC 151.31質量部(0.706mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.24×10-3質量部(7.03×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例7]
ISB 64.93質量部(0.444mol)、CHDM 32.04質量部(0.222mol)、4,4’-BP 13.79質量部(0.074mol)、DPC 159.42質量部(0.744mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.31×10-3質量部(7.40×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
ISB 110.37質量部(0.755mol)、DPC 163.40質量部(0.763mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.06×10-4質量部(6.04×10-7mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
[比較例2]
ISB 77.52質量部(0.530mol)、CHDM 32.78質量部(0.227mol)、DPC 160.70質量部(0.750mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物4.01×10-4質量部(2.27×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
[比較例3]
ISB 96.16質量部(0.658mol)、1,6-HD 13.72質量部(0.116mol)、DPC 165.82質量部(0.774mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物4.09×10-4質量部(2.32×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
[比較例4]
ISB 97.73質量部(0.669mol)、1,10-DD 12.95質量部(0.074mol)、DPC 159.18質量部(0.743mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.96×10-4質量部(1.11×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
[比較例5]
ISB 77.91質量部(0.533mol)、BPA 34.33質量部(0.074mol)、DPC 150.078質量部(0.701mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物3.61×10-3質量部(2.05×10-5mol)を反応容器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、150℃で約10分間攪拌しながら原料を溶解させた。反応1段目の工程として、熱媒体を用いて30分かけて220℃まで反応容器内を昇温させ、常圧にて60分間原料を反応させた。次いで90分かけて常圧から13.3kPaまで減圧し、13.3kPaで30分間保持し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで、反応2段目の工程として熱媒体の温度を15分かけて250℃まで昇温させながら、30分かけて0.10kPa以下まで減圧し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定の撹拌トルクに到達後、窒素で常圧まで復圧して反応を停止させた。反応により生成したポリカーボネート樹脂を水中にストランド状に押し出した。ストランドをカッティングしてポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
[比較例6]
ISB 46.10質量部(0.315mol)、CHDM 31.64質量部(0.219mol)、BPA 34.44質量部(0.151mol)、DPC 150.56質量部(0.703mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物3.62×10-3質量部(2.06×10-5mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。このようにして得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、上述の各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
[比較例7]
ISB 60.58質量部(0.415mol)、4,4‘-BP 51.46質量部(0.276mol)、DPC 151.70質量部(0.708mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物3.56×10-4質量部(2.07×10-6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で重合を行ったが、重合途中でポリマーが結晶化した。そのため、各種評価を行うことができなかった。
Figure 2023143142000010
Figure 2023143142000011
[評価]
表1から理解されるように、構造単位(A)と構造単位(B)及び構造単位(C)を有するポリカーボネート樹脂(実施例1~7参照)は、耐熱性及び耐衝撃性に優れる。また、実施例1~3、5~7は透明性にも優れる。一方、表2から理解されるように、構造単位(A)を含有しない比較例1~6は、耐衝撃性が劣ることが分かる。また、構造単位(B)を含有しない比較例7は重合途中で結晶化してしまい透明な樹脂を得ることができなかった。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(A)と、
    脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール及び複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する構造単位(B)と、
    下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(C)とを含む、ポリカーボネート樹脂。
    Figure 2023143142000012
    Figure 2023143142000013
  2. 上記ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の上記構造単位(A)の含有量が5mol%以上50mol%以下である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
  3. 上記ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の上記構造単位(B)の含有量が1mol%以上55mol%以下である、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂。
  4. 上記ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位100mol%中の上記構造単位(C)の含有量が20mol%以上90mol%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
  5. 上記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が80℃以上170℃以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
  6. 上記ポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.2以上0.7以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
  7. 上記構造単位(A)と上記構造単位(C)との合計100mol%に対する上記構造単位(A)の存在割合が50mol%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
  8. 上記構造単位(A)と上記構造単位(B)と上記構造単位(C)との合計100mol%に対する上記構造単位(A)及び上記構造単位(B)の合計存在割合が65mol%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
JP2022050365A 2022-03-25 2022-03-25 ポリカーボネート樹脂 Pending JP2023143142A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022050365A JP2023143142A (ja) 2022-03-25 2022-03-25 ポリカーボネート樹脂

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022050365A JP2023143142A (ja) 2022-03-25 2022-03-25 ポリカーボネート樹脂

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023143142A true JP2023143142A (ja) 2023-10-06

Family

ID=88219593

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022050365A Pending JP2023143142A (ja) 2022-03-25 2022-03-25 ポリカーボネート樹脂

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023143142A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI481641B (zh) 具重排結構、環狀及線性寡聚物和改良的流動特性之聚碳酸酯
JP5618991B2 (ja) 分子量調整のためのアルキルフェノールおよび改良された特性を有するコポリカーボネート
KR20120117756A (ko) 폴리카보네이트 수지 조성물 그리고 이것을 성형하여 얻어지는 성형체, 필름, 플레이트 및 사출 성형품
KR20130088742A (ko) 폴리카보네이트 수지 조성물 및 성형품
WO2012111718A1 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
WO2011071166A1 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
KR20120115234A (ko) 폴리카보네이트 수지 조성물 및 성형품
CN111171545B (zh) 聚碳酸酯树脂组合物、其制造方法、成型体
WO2012111721A1 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物
KR20120117755A (ko) 폴리카보네이트 수지 조성물 및 성형품
JP4694502B2 (ja) 低含量の揮発性化合物を有するポリカーボネートのトランスエステル化法による製造方法
KR20120120142A (ko) 폴리카보네이트 수지 조성물 및 성형품
JP6507495B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物
JP2014080602A (ja) ポリカーボネート樹脂
JP6264809B2 (ja) ポリカーボネート樹脂の製造方法
JP6671114B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法、成形体、及びその製造方法
JP6349849B2 (ja) ポリカーボネート樹脂
JP6179318B2 (ja) ポリカーボネート樹脂の製造方法
JP6163794B2 (ja) ポリカーボネートの製造方法
JP2023143142A (ja) ポリカーボネート樹脂
JP2015048421A (ja) ポリカーボネート樹脂
JP6287318B2 (ja) 樹脂組成物及び三次元物体の製造方法
JP2022150359A (ja) 共重合ポリカーボネート樹脂組成物、成形品、及び共重合ポリカーボネート樹脂の製造方法
CN107922720B (zh) 聚碳酸酯树脂组合物、其制造方法、成形体
JP2015183086A (ja) ポリカーボネート樹脂の製造方法