JP5383755B2 - 光選択透過フィルター、樹脂シート及び固体撮像素子 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の光選択透過フィルターは、基材上に反射型のIRカット膜(誘電体多層膜)を蒸着したものであるが、このような反射型フィルターは、光の遮断性能には優れるものの、光の入射角によって反射特性が変化する入射角依存性を有しており、その低減が課題であった。入射角依存性のないフィルターとしては、例えば、光吸収剤を含有する透明材料から構成される吸収型フィルターが挙げられるが、充分な吸収特性を実現するためにはかなりの厚みが必要であった。
例えば、特許文献2には、ガラス基板上に、近赤外吸収剤を含む顔料インクを塗布・乾燥して得られる光吸収膜と、該光吸収膜より高屈折率の膜とを交互に多層積層した光吸収フィルターが開示されている。特許文献2の光吸収フィルターは、角度依存性を低減しつつ薄型化をも実現しようとするものである。
また、特許文献3には、ガラス基板上に光学多層膜からなる熱線反射膜及び熱線吸収膜とが形成された熱線カットフィルターが開示されている。特許文献3に開示された熱線カットフィルターは、ランプから発生する、近赤外線領域から遠赤外線領域に亙って広帯域に熱線をシャープに且つほぼ完全にカットできる広帯域の熱線カットフィルターを提供することを目的とし、短波長領域(例えば波長2μm以下)の赤外線を熱線反射膜で遮断し、長波長領域(例えば波長2μm以上)の赤外線を熱線吸収膜で遮断しようとするものである。
本発明はまた、上記光選択透過フィルターに用いられる光選択透過フィルター用樹脂シートでもある。
本発明は更に、上記光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。
上記色素としては、600〜800nmの波長域に吸収極大を有するものであれば特に限定されず、樹脂と混合、混練可能な色素を用いることができる。上記吸収極大は、620〜780nmの波長域に存在することが好ましい。より好ましくは、650〜750nmの波長域に存在することである。
上記色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないことが好ましい。
上記シアニン系色素としては、I−塩シアニン、ClO4 −塩シアニン、Br−塩シアニン、−OAc塩シアニン、BF4 −塩シアニン等が挙げられる。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等が挙げられる。
上記銅イオン系色素としては、アクリル酸、カルボン酸、リン酸等の酸やケトン基、エステル基等の極性基が配位及び/又は結合した銅イオンを含む化合物等が挙げられる。
上記形態においては更に、上記色素を含有する樹脂層を含む光選択透過フィルターについても、可視光領域におけるヘイズ及び可視光500nmにおける透過率が、夫々上述した範囲にあることが好ましい。
上記樹脂層における色素の濃度(含有量)としては、樹脂層の総量100質量%に対して、0.0001質量%以上、15質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、0.001質量%以上、10質量%未満である。更に好ましくは樹脂層の総量100質量%に対して、0.1質量%以上、10質量%未満であり、特に好ましくは、0.5質量%以上、10質量%未満である。
上記樹脂シートが、後述するような、上記色素を含有する樹脂層と支持フィルムとからなる場合には、上記樹脂層における色素の濃度(含有量)としては、樹脂層の総量100質量%に対して、1質量%以上、15質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、3質量%以上、15質量%未満である。
また、色素が分散された溶剤可溶性樹脂とは、少なくとも溶剤可溶性樹脂と色素とを含む組成物であって、該組成物中に色素が分散されてなるものを意味する。同様に、色素が分散された溶剤可溶性樹脂原料とは、少なくとも溶剤可溶性の樹脂原料と色素とを含む組成物であって、該組成物中に色素が分散されてなるものを意味し、色素が分散された液状樹脂原料とは、少なくとも液状の樹脂原料と色素とを含む組成物であって、該組成物中に色素が分散されてなるものを意味する。
なお、上記樹脂原料には、樹脂の前駆体や該前駆体の原料、更に、樹脂を形成するための単量体(硬化性モノマー等)が含まれるものとする。
上述したように、上記樹脂層は、色素が分散された、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料のうちの少なくとも1種より形成された樹脂層であることが好ましいが、該樹脂層自体は溶剤可溶性であっても不溶性であってもよい。
これらの溶剤可溶性樹脂は、架橋反応(硬化反応)することが可能な反応性基(例えば、エポキシ基やオキセタン環、エチレンスルフィド基等の開環重合性基や、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基及び/又は付加硬化性基)を有するものであってもよい。
上記樹脂層を形成するための樹脂形成成分として上記溶剤可溶性樹脂を用いる場合、該樹脂形成成分がそのまま、得られた樹脂層を構成する樹脂成分となってもよく、該樹脂形成成分が架橋反応等により変化したものが、上記樹脂層を構成する樹脂成分となってもよい。
なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
上記一般式(1−2)中、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。R3は、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。n1は、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記R1及びR3のより好ましい具体例としては、下記の構造式群(3)で表される有機鎖が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記R2としては、これらのうち、置換基を有していてもよい、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアミノ基が好ましい。ただし、R2には、二重結合又は三重結合が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
なお、ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である。)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応による形成される。
ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。
本発明で用いる溶剤可溶性樹脂としては、ポリイミド樹脂におけるイミド結合含有率(イミド化反応によりイミド化し得るアミド結合数とイミド結合数の合計量100モル%に対するイミド結合数の割合)が80モル%以上であるポリイミド樹脂が好ましい。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが更に好ましい。より好ましくは、全重量100%中の芳香環の重量が65%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは30%以下である。
上記一般式(5)におけるR4としては、炭素数2〜39の2価の脂肪族、脂環族、芳香族、又は、それらの組合せからなる有機基であることが好ましい。上記R4で表される有機基は窒素原子に直接結合していてもよいし、結合基として、−O−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−C(CH3)2−、−Si(CH3)2−、−C2H4O−、−S−等を有していてもよい。
上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
上記エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)を含む硬化性組成物の硬化物である。硬化物の形態としてはエポキシ化合物をカチオン硬化触媒の存在下で光及び/又は熱硬化してなる形態、エポキシ化合物を付加的硬化剤と反応させることにより得られる硬化物の形態等が挙げられる。後者において硬化反応促進のため従来公知の硬化促進剤を併用することもできる。上記付加的硬化剤としては、例えば、酸無水物、多価フェノール化合物、多価アミン等が例示されるが、中でも酸無水物が好ましい。
なお、本明細書中、エポキシ基とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む)を含むものを意味する。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
上記アクリル樹脂として具体的には、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、(メタ)アクリレートモノマーの(共)重合体等が挙げられる。フィルム化を容易にできる点で、上記樹脂(オリゴマー、ポリマー)と(メタ)アクリレートモノマーからなる組成物を硬化させることが好ましい。
また上述した溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料の中でも、樹脂形成成分(バインダー樹脂)として溶剤可溶性樹脂を用いると、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料を用いた場合に比べて、耐光性に優れる。これは、溶剤可溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料よりも、分散した色素の吸収性能の劣化を引き起こしにくいためである。理由として、溶剤可溶性樹脂は、そのモノマーや前駆体から調整し、重合や反応を完結させている。更に精製を行う場合もある。こうして得られた溶剤可溶性樹脂には、色素の劣化、分解を促進させる未反応物、反応性末端、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等がほとんどないと考えられる。一方、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料は、このような色素の劣化、分解を促進させる因子が多く残っている。そのため、同じ色素を分散させても、樹脂形成成分(バインダー樹脂)の違いにより、樹脂層の耐光性が異なる。耐光性の観点からは、少なくとも溶剤可溶性樹脂を用いることが好適である。中でも、FPEK及びポリ(アミド)イミド樹脂が、耐光性により優れる観点から好ましい。より好ましくは、ポリ(アミド)イミド樹脂であり、特に好ましくはポリイミド樹脂である。
一方、練込法においては、樹脂を高温(例えば、200℃以上)で溶融して用いることになるため、耐熱性の低い色素は分解してしまい、充分な光吸収性が得られないおそれがある。また、色素の分散性も充分に高くならないおそれがある。
(i)の形態の場合、色素の分散困難な支持体フィルムであっても、表面に樹脂層をコートすることにより本発明の効果を付与できる。樹脂層の色素濃度や樹脂層のコート厚さを変えることにより、吸収特性の制御が可能であるため、例えば樹脂層を極薄コートすることにより支持体フィルムの膜厚をほとんど変えずに本発明の効果を付与したり、支持体フィルムの厚み調整に利用したり、樹脂層を支持体フィルムの表面傷削減等の表面改質に利用することもできる。
また、樹脂層を支持体フィルムで挟み込んだ樹脂シートとすることも好ましい。
上記(i)の形態において、樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、支持体フィルムの表面(片面又は両面)に、上述した溶剤キャスト法によって樹脂層を形成する方法が好ましい。
上記(ii)の形態において、樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、任意の基材(樹脂フィルムやガラス板)の表面に、上述した溶剤キャスト法によって樹脂層を形成し、剥離することにより製造する方法が好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
また、樹脂シートが、色素を含有する樹脂層と支持体フィルムとからなる形態においては、上記樹脂層の厚みが10μm以下、支持体フィルムの厚みが100μm以下であることが好ましい。
〈誘電体層A〉
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。
上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択される。
上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長をλ(nm)とすると0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等により、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。
また樹脂シートが有機材料、具体的には、樹脂組成物により形成される場合には、未硬化、半硬化状態の樹脂シート(樹脂組成物)に、上記誘電体層等を蒸着した後、樹脂シートを硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に、基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、光選択透過フィルターの変形(カール)を抑制することができる。
上記線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムとして具体的には、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等が好適であり、上記樹脂層又は支持体フィルムが、これらからなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、樹脂を延伸する;無機微粒子等を分散させる;ガラスクロスを用いる;架橋密度を上げる;コンポジット化する;結晶化させる;等によっても線膨張係数を低下させることができる。
また、上記光学多層膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、2〜8μmである。光学多層膜が上記樹脂シートの両面に形成される形態においては、両面の光学多層膜の合計の厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
このような、本発明の光選択透過フィルターが上記他の機能を有する形態においては、樹脂シートの一方の表面に上記光学多層膜を形成し、他方の表面に上記他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。
上記機能性材料層は、例えば、上述のCVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記樹脂シート上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を樹脂シート上に接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を樹脂シートに塗布、乾燥して製膜することによっても得ることができる。
図19に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図20に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは、110%以下であり、更に好ましくは、105%以下である。
赤外線カットフィルターは、赤外線領域である650nm〜10μmの波長を有する光のうち、いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては、650nm〜2.5μm、650〜1000nm又は800nm〜1μmであることが好適である。これらの範囲の波長の少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた、上記赤外線カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては、近赤外線領域である650nm〜1μmであることがより好ましい。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、上述と同様であることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
本発明の光選択透過フィルターが赤外・紫外線カットフィルターである形態においては、650nm〜10μmの赤外光と200〜350nmの紫外光とを選択的に5%以下に低減するものが好ましく、その他の波長域の透過率は、75%以上であることが好ましい。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、樹脂シートの吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないことあるいはその変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
なお、レンズユニット部については、WO2008/081892に記載の形態が好ましく採用できる。
合成例1
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル)16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン)10.5部、炭酸カリウム4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド)90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマー(FPEK)を得た。上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は242℃、数平均分子量(Mn)が70770、表面抵抗値は1.0×1018Ω/cm2以上であった。
<数平均分子量>
ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 4.6*150を2本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定した。
調製例1
上記合成例1で得たFPEK10部にSDA3039(商品名、吸収極大波長670nm、H.W.SANDS社製)を0.3部、MIBK(メチルイソブチルケトン)を70部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(1)を得た。
FPEK10部に1H−Benzindolium,3−butyl−2−[5−(3−butyl−1,3−dihydro−1,1−dimethyl−2H−benzindol−2−ylidene)−1,3−pentadien−1−yl]−1,1−dimethyl−tetrafluoroborate(1−)(HBFB、シアニン系色素、吸収極大波長680nm)を0.08部、MIBKを70部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(2)を得た。
FPEK10部にHBFBを0.004部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(3)を得た。
FPEK10部にTX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.3部、MIBKを70部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(4)を得た。
FPEK10部にTX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.01部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(5)を得た。
FPEK10部にTX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.0065部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(6)を得た。
FPEK10部にTX−EX−708K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長750nm、日本触媒社製)を0.01部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(7)を得た。
デナコールEX−121(商品名、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エポキシ当量187、ナガセケムテックス社製)7.5部、セロキサイド2021P(商品名、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ダイセル化学工業社製)2.5部、サンエイドSI100L(商品名、重合開始剤、三新化学工業社製)0.1部にHBFBを0.1部、MIBKを6部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(8)を得た。
紫光UV−6630B(商品名、UV硬化型ウレタンアクリレートリゴマー、日本合成化学社製)10部、パーへキシルD(商品名、重合開始剤、日油社製)0.1部にHBFBを0.1部、MIBKを6部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(9)を得た。
ポリ(アミト゛)イミド前駆体溶液(溶媒:DMAc、固形分濃度30%日立化成工業社製HPC−7000−30)50部にHBFBを0.0125部を40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(10)を得た。
ネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)10部にDMAc90部を加え、120℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にTX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.3部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(11)を得た。
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸(アルドリッチ製、純度95%)5部と無水酢酸(和光純薬製)44部とを、フラスコに仕込み、攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶剤の還流温度まで昇温し、10分間溶剤を還流させた。攪拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して目的物(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)の結晶を得た。温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えたフラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和光純薬製) 0.89部と、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン 7.6部を仕込んで溶解させた後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物 1部を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。共沸脱水剤としてキシレンを2.6部添加して180℃で3時間反応を行い、ディーンスタークで還流して共沸する生成水を分離した。190℃に昇温しながらキシレンを留去した後、冷却しポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。この溶液にTX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.045部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(12)を得た。
調製例12において、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 0.89gの代わりに、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(東京化成製)1.08g及び4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(和光純薬製)0.49gを用いること以外は、同様にして、N−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。この溶液にTX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.0068部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(13)を得た。
製造例1
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例1で得られた色素含有樹脂組成物(1)を20μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、樹脂シート(1)52μmを得た。樹脂シート(1)の透過率スペクトルを図1に示した。
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例2で得られた色素含有樹脂組成物(2)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、樹脂シート(2)53μmを得た。樹脂シート(2)の透過率スペクトルを図2に示した。
調製例3で得られた色素含有樹脂組成物(3)を380μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、樹脂シート(3)60μmを得た。樹脂シート(3)の透過率スペクトルを図3に示した。
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例4で得られた色素含有樹脂組成物(4)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、樹脂シート(4)53μmを得た。樹脂シート(4)の透過率スペクトルを図4に示した。
調製例5で得られた色素含有樹脂組成物(5)を420μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、樹脂シート(5)65μmを得た。樹脂シート(5)の透過率スペクトルを図5に示した。
調製例6で得られた色素含有樹脂組成物(6)を650μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、樹脂シート(6)100μmを得た。樹脂シート(6)の透過率スペクトルを図6に示した。
調製例7で得られた色素含有樹脂組成物(7)を320μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、樹脂シート(7)50μmを得た。樹脂シート(7)の透過率スペクトルを図7に示した。
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例8で得られた色素含有樹脂組成物(8)を12μm厚で塗布し、140℃で30分間硬化、乾燥して、樹脂シート(8)57μmを得た。樹脂シート(8)の透過率スペクトルを図8に示した。
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、調製例9で得られた色素含有樹脂組成物(9)を8μm厚で塗布し、窒素雰囲気下、150℃で60分間硬化、乾燥して、樹脂シート(9)54μmを得た。樹脂シート(9)の透過率スペクトルを図9に示した。
調製例10で得られた色素含有樹脂組成物(10)を130μm厚で塗布し、200℃で60分間乾燥して、樹脂シート(10)20μmを得た。樹脂シート(10)の透過率スペクトルを図10に示した。
調製例11で得られた色素含有樹脂組成物(11)を支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥後、支持体フィルムの裏面に同様にして色素含有樹脂組成物(11)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥させることにより、樹脂シート(11)56μmを得た。樹脂シート(11)の透過率スペクトルを図11に示した。
調製例12で得られた色素含有樹脂組成物(12)を支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、30μm厚で塗布し、200℃で60分間乾燥後、支持体フィルムの裏面に同様にして色素含有樹脂組成物(12)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥させることにより、樹脂シート(12)56μmを得た。樹脂シート(12)の透過率スペクトルを図12に示した。
調製例13で得られた色素含有樹脂組成物(13)を400μm厚で塗布し、200℃で60分間乾燥して、樹脂シート(13)45μmを得た。樹脂シート(13)の透過率スペクトルを図13に示した。
実施例1〜9及び比較例1
各製造例で得られた樹脂シート(1)〜(9)を幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした樹脂シートを準備した。
該樹脂シートの両面に、蒸着基板温度150℃で赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。
各実施例で用いた樹脂シートは以下のとおりである。
実施例1:製造例2で得られた樹脂シート(2)
実施例2:製造例3で得られた樹脂シート(3)
実施例3:製造例4で得られた樹脂シート(4)
実施例4:製造例1で得られた樹脂シート(1)
実施例5:製造例5で得られた樹脂シート(5)
実施例6:製造例6で得られた樹脂シート(6)
実施例7:製造例7で得られた樹脂シート(7)
実施例8:製造例8で得られた樹脂シート(8)
実施例9:製造例9で得られた樹脂シート(9)
比較例1:色素を含有しないFPEKフィルム(50μm厚)からなる樹脂シート
得られた各光選択透過フィルターについて、透過率及び入射角依存性を以下に示す方法にて測定・評価した。
Shimadzu UV−3100(島津製作所社製)を用いて200〜1100nmにおける透過率を測定した。透過率は、図14に示すように、入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される。)と、入射光に対して25°光選択透過フィルターを傾けて設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向に対して25°傾いた方向から光が入射するようにして測定される。)の夫々について測定した。
なお、各図において、0°とは、0°スペクトルを、25°とは、25°スペクトルを意味する。
また、グラフの横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(%)を示す。
色素を含有する樹脂層を有しない光選択透過フィルター(比較例1)では近赤外領域での透過率スペクトルの吸収端付近における透過率変化のスロープは急峻であるものの、すべての透過率領域において0°と25°のスペクトルにずれが生じ、光遮断特性の入射角依存性が大きいことがわかった。これに対して、色素を含有する樹脂層を有する光選択透過フィルター(実施例1、2、3)では、近赤外領域での透過率スペクトルのスロープは緩やかになるものの、実施例1では透過率60%以上の領域において、実施例2では透過率80%以上の領域において、実施例3では透過率70%以上の領域において、0°と25°のスペクトルに変化がなく、光遮断特性の入射角依存性は低減されることがわかった。また、図には示していないが、実施例4〜9で得られた光選択透過フィルターの透過率測定、視野角依存性評価を行った結果、実施例1〜3の場合と同様に、比較例1に対して、視野角依存性が改善されていることが確認された。光選択透過フィルターに必要とされる透過率スペクトル、入射角依存性、近赤外領域でのスロープは、使用されるカメラモジュール(構成やセンサー)、用途により異なる。実施例より、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素を含有する樹脂シートを用いると、吸収波長や吸収強度の調節により、透過率スペクトル、入射角依存性、近赤外領域でのスロープを必要に応じて調節できることが分かった。
2:光選択透過フィルター
3:センサー
4:光源
5:光選択透過フィルター
6:受光部
Claims (6)
- 樹脂シートと、その少なくとも一方の表面に形成されてなる、赤外線を反射する無機多層膜である光学多層膜とを含む光選択透過フィルターであって、
該樹脂シートは、支持体フィルムと、その両面に形成された、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素を含有する樹脂層とからなり、該光学多層膜が該樹脂層の片面又は両面に形成されてなり、
該支持体フィルムは、溶剤可溶性樹脂であるポリ(アミド)イミド樹脂により形成されるものであり、
該樹脂層は、溶剤可溶性樹脂を用いて形成されたものであり、
該溶剤可溶性樹脂は、ポリ(アミド)イミド樹脂であって、
該色素は、フタロシアニン系色素であり、
該光選択透過フィルターは、光の入射角度によりシフトする領域の光を該色素が吸収することにより、該光学多層膜による入射角依存性を低減することを特徴とする光選択透過フィルター。 - 前記樹脂層の厚みは、10μm以下であり、
前記支持体フィルムの厚みは、100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光選択透過フィルター。 - 前記支持体フィルム及び樹脂層は、線膨張係数が60ppm以下のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光選択透過フィルター。
- 前記樹脂層は、溶媒キャスト法によって形成されてなり、
該溶媒キャスト法において使用される溶媒は、ケトン類、グリコール誘導体、アミド類、エステル類、ピロリドン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、及び/又は、エーテル類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光選択透過フィルター。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の光選択透過フィルターに用いられることを特徴とする光選択透過フィルター用樹脂シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有することを特徴とする固体撮像素子。
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