JP2015004838A - 固体撮像装置用近赤外線カットフィルターならびに前記フィルターを用いた固体撮像装置およびカメラモジュール - Google Patents

固体撮像装置用近赤外線カットフィルターならびに前記フィルターを用いた固体撮像装置およびカメラモジュール Download PDF

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Abstract

【課題】固体撮像装置用途においても画質の低下を抑えることが可能な近赤外線カットフィルターを提供する。
【解決手段】厚さ100μmにおける面内位相差(R0)が100nm以下である樹脂製基板と、前記樹脂製基板の少なくとも片方の面に形成された誘電体多層膜とを有することを特徴とする固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体撮像装置用近赤外線カットフィルターおよび前記フィルターを用いた装置に関する。詳しくは、面内位相差(R0)が小さい樹脂製基板を有する近赤外線カットフィルター、ならびに前記フィルターを用いた固体撮像装置およびカメラモジュールに関する。
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などの固体撮像装置には、カラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されている。これらの固体撮像素子では、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが使用されている。これらの固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域の光線を選択的に透過またはカットする光学フィルター(例えば近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、特開平6−200113号公報(特許文献1)には、基材として透明樹脂を用い、透明樹脂中に近赤外線吸収色素を含有させた近赤外線カットフィルターが記載されている。
特許文献1に記載のような近赤外線吸収色素を含有した近赤外線カットフィルターは広く知られている。例えば、特開2002−303720号公報(特許文献2)には、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂に分散した組成物からなるコート層を、基材であるポリエステルフィルム上へ積層させた近赤外線吸収フィルターが記載されている。
特開平6−200113号公報 特開2002−303720号公報
特許文献2に記載のような近赤外線カットフィルターは、その汎用性の高さからプラズマディスプレイパネル(PDP)等の様々な用途で使用されている。しかしながら、その基板の位相差が大きいことから、固体撮像装置用途で使用するには画像解像度が不十分となる等、画質を低下させる場合が有り、固体撮像装置用途への転用が困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、固体撮像装置用途においても画質の低下を抑えることが可能な近赤外線カットフィルターおよび当該フィルターを用いた装置を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討した。その結果、例えば樹脂製基板を溶融成形またはキャスト成形にて形成し、かつ、得られた基板に対して延伸を行わないなどの方法により、位相差の小さい樹脂製基板を有する近赤外線カットフィルターが得られ、当該フィルターが固体撮像装置用途でも画質の低下を抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[9]に関する。
[1]厚さ100μmにおける面内位相差(R0)が100nm以下である樹脂製基板と、前記樹脂製基板の少なくとも片方の面に形成された誘電体多層膜とを有することを特徴とする固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
[2]前記樹脂製基板の、厚さ100μmにおける厚さ方向の位相差(Rth)が500nm以下であることを特徴とする前記[1]に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
[3]前記樹脂製基板が、溶融成形またはキャスト成形で得られる基板であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
[4]前記樹脂製基板が、波長600〜800nmに吸収極大を有する近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
[5]前記近赤外線吸収色素が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする前記[4]に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
[6]前記近赤外線吸収色素全体の含有量が、前記樹脂製基板を形成する樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部であることを特徴とする前記[4]または[5]に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
[7]前記樹脂製基板を形成する樹脂が、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
[8]前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とする固体撮像装置。
[9]前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とするカメラモジュール。
本発明によれば、位相差の小さい樹脂製基板を有する近赤外線カットフィルターおよび当該フィルターを用いた装置を提供することができる。前記フィルターは位相差が小さいことにより、固体撮像素子用途として用いた場合、より解像度が高く鮮明な画像を与えることができる。
図1は、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率を測定する方法を示す概略図である。 図2は、実施例で用いたISO準拠解像度評価用チャートである。
以下、本発明について具体的に説明する。
〔近赤外線カットフィルター〕
本発明の近赤外線カットフィルター(以下「本発明のフィルター」ともいう。)は、厚さ100μmにおける面内位相差(R0)が小さい樹脂製基板と、前記樹脂製基板の少なくとも片方の面に形成された誘電体多層膜とを有する。本発明のフィルターは、固体撮像装置用として好適に用いることができる。
[樹脂製基板]
本発明で用いる樹脂製基板は、単層であっても多層であってもよい。
前記樹脂製基板は、厚さ100μmにおける面内位相差(R0)が、100nm以下であり、好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。R0が前記範囲にあれば、固体撮像素子用途として用いた場合、より解像度が高く鮮明な画像を与えることが可能な、近赤外線カットフィルターを提供することができる。
前記樹脂製基板は、厚さ100μmにおける厚さ方向の位相差(Rth)が、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、特に好ましくは100nm以下である。Rthが前記範囲にあれば、固体撮像素子用途として用いた場合、より解像度が高く鮮明な画像を与えることが可能な、近赤外線カットフィルターを提供することができる。
前記樹脂製基板の厚さは、100μmに限定されるわけではなく、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、好ましくは30〜250μm、さらに好ましくは40〜200μm、特に好ましくは50〜150μmである。
樹脂製基板の厚さが前記範囲にあると、前記基板を用いた近赤外線カットフィルターを小型化および軽量化することができ、固体撮像装置等の様々な用途に好適に用いることができる。特に、前記樹脂製基板をカメラモジュール等のレンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。
<樹脂>
本発明で用いる樹脂製基板は、樹脂を含有していれば特に制限されないが、当該樹脂としては透明樹脂が好ましい。このような樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110〜380℃、より好ましくは110〜370℃、さらに好ましくは120〜360℃である樹脂が挙げられる。また、樹脂のガラス転移温度が140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得るフィルムが得られるため、特に好ましい。
前記樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板を形成した場合に、この樹脂板の全光線透過率(JIS K7105)が、好ましくは75〜95%であり、さらに好ましくは78〜95%であり、特に好ましくは80〜95%である樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲となる樹脂を用いれば、得られる基板は光学フィルムとして良好な透明性を示す。
前記樹脂としては、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
前記樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの樹脂の中でも、位相差の小さい樹脂製基板を製造する観点から、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂が好ましく、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂がより好ましい。
前記樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000〜350,000、好ましくは30,000〜250,000であり;数平均分子量(Mn)は、通常10,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000である。
《環状ポリオレフィン系樹脂》
環状ポリオレフィン系樹脂としては、下記式(X)で表される単量体および下記式(Y)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体から得られる樹脂、および当該樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
式(X)中、Rx1〜Rx4は、それぞれ独立に下記(i’)〜(ix’)より選ばれる原子または基を表し、k、mおよびpは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。
(i’)水素原子
(ii’)ハロゲン原子
(iii’)トリアルキルシリル基
(iv’)酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、
置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(v’)置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(vi’)極性基(但し、(iv’)を除く。)
(vii’)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基(但し、前記結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i’)〜(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
(viii’)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i’)〜(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
(ix’)Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1とRx4は、それぞれ独立に前記(i’)〜(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
式(Y)中、Ry1およびRy2は、それぞれ独立に前記(i’)〜(vi’)より選ばれる原子または基を表すか、Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表し、kおよびpは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。
《芳香族ポリエーテル系樹脂》
芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。
式(2)中、R〜Rおよびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR〜Rおよびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO−または>C=Oを示し、RおよびRは、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0のとき、Rはシアノ基ではない。
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。
式(4)中、R、R、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(2)中のR、R、Y、m、gおよびhと同義であり、R、R、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(3)中のR、R、Z、n、eおよびfと同義である。
《ポリイミド系樹脂》
ポリイミド系樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよく、例えば特開2006−199945号公報や特開2008−163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
《フルオレンポリカーボネート系樹脂》
フルオレンポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリカーボネート樹脂であればよく、例えば特開2008−163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
《フルオレンポリエステル系樹脂》
フルオレンポリエステル系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリエステル樹脂であればよく、例えば特開2010−285505号公報や特開2011−197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
《フッ素化芳香族ポリマー系樹脂》
フッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては、特に制限されないが、少なくとも1つのフッ素を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーであればよく、例えば特開2008−181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
《市販品》
透明樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、JSR株式会社製アートン、日本ゼオン株式会社製ゼオノア、三井化学株式会社製APEL、ポリプラスチックス株式会社製TOPASなどを挙げることができる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、住友化学株式会社製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学株式会社製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人株式会社製ピュアエースなどを挙げることができる。フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学株式会社製ユピゼータEP−5000などを挙げることができる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、大阪ガスケミカル株式会社製OKP4HTなどを挙げることができる。アクリル系樹脂の市販品としては、株式会社日本触媒製アクリビュアなどを挙げることができる。シルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂の市販品としては、新日鐵化学株式会社製シルプラスなどを挙げることができる。
<添加剤>
本発明で用いる樹脂製基板は、本発明の効果を損なわない範囲において、近赤外線を吸収する色素(以下「近赤外線吸収色素」ともいう。)、近紫外線吸収剤、酸化防止剤および金属錯体系化合物等の添加剤を含有してもよい。また、後述するキャスト成形により樹脂製基板を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することで樹脂製基板の製造を容易にすることができる。これらの成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、これらの添加剤は、樹脂製基板を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を製造する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部である。
《近赤外線吸収色素》
樹脂製基板は、近赤外線吸収色素を含有することが好ましい。
近赤外線吸収色素としては、例えば、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物、ポルフィリン系化合物、クロコニウム系化合物が挙げられる。これらの色素の構造は特に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわないものであれば一般的に知られているものを使用することができる。
近赤外線吸収色素の吸収極大波長は、好ましくは600nm以上、さらに好ましくは620nm以上、特に好ましくは650nm以上であり、かつ、好ましくは800nm以下、さらに好ましくは760nm以下、特に好ましくは740nm以下である。吸収極大波長がこのような波長範囲にあると、充分な近赤外線吸収特性と可視光透過率とを両立することができる。このような吸収特性を満たす近赤外線吸収色素としては、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物が特に好ましい。
近赤外線吸収色素は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。近赤外線吸収色素として2種以上を併用する場合は、スクアリリウム系化合物とその他の近赤外線吸収色素とを用いることがさらに好ましい。
スクアリリウム系化合物とその他の近赤外線吸収色素とを組み合わせて使用する場合、スクアリリウム系化合物の吸収極大波長は、好ましくは600nm以上、さらに好ましくは620nm以上、特に好ましくは650nm以上であり、かつ、好ましくは800nm未満、さらに好ましくは760nm以下、特に好ましくは740nm以下である。その他の近赤外線吸収色素の少なくとも1種の吸収極大波長は、好ましくは600nm超、さらに好ましくは640nm以上、特に好ましくは670nm以上であり、かつ、好ましくは800nm以下、さらに好ましくは780nm以下、特に好ましくは760nm以下である。その他の近赤外線吸収色素の吸収極大波長がこのような波長範囲にあると、充分な近赤外線吸収特性と可視光透過率とを両立することができるとともに、スクアリリウム系化合物とその他の近赤外線吸収色素とを併用した場合、スクアリリウム系化合物から発生した蛍光をその他の近赤外線吸収色素が効果的に吸収することができ、近赤外線カットフィルターの散乱光強度を抑制することができる。
その他の近赤外線吸収色素は、具体的には、フタロシアニン系化合物およびシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、フタロシアニン系化合物を含むことが特に好ましい。スクアリリウム系化合物と前記化合物とを併用することで、散乱光が少なくカメラ画質がより良好な近赤外線カットフィルターを得ることができる。
近赤外線吸収色素全体を100重量%とした場合、スクアリリウム系化合物の含有割合は、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは25〜85重量%、特に好ましくは30〜80重量%である。スクアリリウム系化合物の含有割合が前記範囲内にあると、良好な可視光透過率および入射角依存改良性と散乱光低減効果とを両立させることができる。また、スクアリリウム系化合物とその他の近赤外線吸収色素は、それぞれの化合物について2種以上を使用してもよい。
樹脂製基板において、近赤外線吸収色素の含有量は、樹脂製基板製造時に用いる樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜5.0重量部、より好ましくは0.02〜3.5重量部、特に好ましくは0.03〜2.5重量部である。近赤外線吸収色素の含有量が前記範囲内にあると、良好な近赤外線吸収特性と高い可視光透過率を両立させることができる。
以下では、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物およびシアニン系化合物を、それぞれスクアリリウム系化合物(A)、フタロシアニン系化合物(B)およびシアニン系化合物(C)とも記載する。
〈スクアリリウム系化合物(A)〉
スクアリリウム系化合物(A)は、下記式(I)で表される化合物および下記式(II)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種(以下、それぞれ「化合物(I)」、「化合物(II)」ともいう。)であることが好ましい。
式(I)中、R、RおよびYは、下記(i)または(ii)の条件を満たす。
条件(i)
複数あるRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、−Lまたは−NR基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、−L、−L、−L、−Lまたは−Lを表す。
複数あるRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、−Lまたは−NR基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、−L、−L、−L、−L、−Lまたは−C(O)R基(Rは、−L、−L、−L、−Lまたは−Lを表す。)を表す。
複数あるYは、それぞれ独立に−NR基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、−L、−L、−L、−Lまたは−Lを表す。
は、L、L、L、L、L、L、LまたはLである。
前記L〜Lは、
(L)置換基Lを有してもよい炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基、
(L)置換基Lを有してもよい炭素数1〜9のハロゲン置換アルキル基、
(L)置換基Lを有してもよい炭素数3〜14の脂環式炭化水素基、
(L)置換基Lを有してもよい炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、
(L)置換基Lを有してもよい炭素数3〜14の複素環基、
(L)置換基Lを有してもよい炭素数1〜9のアルコキシ基、
(L)置換基Lを有してもよい炭素数1〜9のアシル基、または
(L)置換基Lを有してもよい炭素数1〜9のアルコキシカルボニル基
を表す。
置換基Lは、炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜9のハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜14の脂環式炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基および炭素数3〜14の複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
前記L〜Lは、さらにハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を有していてもよい。
前記L〜Lは、置換基を含めた炭素数の合計が、それぞれ50以下であることが好ましく、炭素数40以下であることが更に好ましく、炭素数30以下であることが特に好ましい。炭素数がこの範囲よりも多いと、色素の合成が困難となる場合があるとともに、単位重量あたりの吸収強度が小さくなってしまう傾向がある。
条件(ii)
1つのベンゼン環上の2つのRのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5または6の複素環を形成し、前記複素環は置換基を有していてもよく、Rおよび前記複素環の形成に関与しないRは、それぞれ独立に前記(i)のRおよびRと同義である。
各基の具体例
前記LおよびLにおける炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基としては、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n−プロピル基(n−Pr)、イソプロピル基(i−Pr)、n−ブチル基(n−Bu)、sec−ブチル基(s−Bu)、tert−ブチル基(t−Bu)、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基およびノニル基等のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−ペンテニル基、ヘキセニル基およびオクテニル基等のアルケニル基;ならびに、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、ヘキシニル基およびオクチニル基等のアルキニル基などを挙げることができる。
前記LおよびLにおける炭素数1〜9のハロゲン置換アルキル基としては、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタクロロプロピル基およびヘプタフルオロプロピル基などを挙げることができる。
前記LおよびLにおける炭素数3〜14の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルナン基およびアダマンタン基等の多環脂環式基などを挙げることができる。
前記LおよびLにおける炭素数6〜14の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、アセナフチル基、フェナレニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基およびビフェニリル基などを挙げることができる。
前記LおよびLにおける炭素数3〜14の複素環基としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、アクリジンおよびフェナジン等の複素環からなる基などを挙げることができる。
前記Lにおける炭素数1〜9のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、2−メトキシエトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などを挙げることができる。
前記Lにおける炭素数1〜9のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基およびベンゾイル基などを挙げることができる。
前記Lにおける炭素数1〜9のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基およびオクチルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
前記Lとしては、上述した「炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基」、および当該脂肪族炭化水素基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、4−フェニルブチル基、2−シクロヘキシルエチルであり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
前記Lとしては、上述した「炭素数1〜9のハロゲン置換アルキル基」、および当該ハロゲン置換アルキル基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはトリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、5−シクロヘキシル−2,2,3,3−テトラフルオロペンチル基であり、より好ましくはトリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
前記Lとしては、上述した「炭素数3〜14の脂環式炭化水素基」、および当該脂環式炭化水素基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、4−フェニルシクロヘプチル基であり、より好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基である。
前記Lとしては、上述した「炭素数6〜14の芳香族炭化水素基」、および当該芳香族炭化水素基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、2,3,6−トリフェニルフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフェニルフェニル基であり、より好ましくはフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,3,4,5,6−ペンタフェニルフェニル基である。
前記Lとしては、上述した「炭素数3〜14の複素環基」、および当該複素環基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはフラン、チオフェン、ピロール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンからなる基であり、より好ましくはフラン、チオフェン、ピロールからなる基である。
前記Lとしては、上述した「炭素数1〜9のアルコキシ基」、および当該アルコキシ基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、2−メトキシエトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、2−フェニルエトキシ基、3−シクロヘキシルプロポキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基である。
前記Lとしては、上述した「炭素数1〜9のアシル基」、および当該アシル基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、4−プロピルベンゾイル基であり、より好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基である。
前記Lとしては、上述した「炭素数1〜9のアルコキシカルボニル基」、および当該アルコキシカルボニル基が前記置換基Lをさらに有するものが挙げられ、好ましくはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2−トリフルオロメチルエトキシカルボニル基、2−フェニルエトキシカルボニル基であり、より好ましくはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基である。
前記L〜Lは、さらに、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を有していてもよい。このような例としては、4−スルホブチル基、4−シアノブチル基、5−カルボキシペンチル基、5−アミノペンチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ホスホリルエチル基、6−アミノ−2,2−ジクロロヘキシル基、2−クロロ−4−ヒドロキシブチル基、2−シアノシクロブチル基、3−ヒドロキシシクロペンチル基、3−カルボキシシクロペンチル基、4−アミノシクロヘキシル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基、4−ヒドロキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−ヒドロキシナフチル基、4−アミノフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−ニトロフェニル基、3−メチルピロールからなる基、2−ヒドロキシエトキシ基、3−シアノプロポキシ基、4−フルオロベンゾイル基、2−ヒドロキシエトキシカルボニル基、4−シアノブトキシカルボニル基などを挙げることができる。
前記条件(i)におけるRとしては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、水酸基である。
前記条件(i)におけるRとしては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N−メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、t−ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、水酸基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、t−ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基である。
前記Yとしては、好ましくはアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、N−エチル−N−メチルアミノ基、N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ基であり、より好ましくはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基である。
前記式(I)の条件(ii)における、1つのベンゼン環上の2つのRのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して形成される、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5または6の複素環としては、例えば、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジンおよびピラジン等を挙げることができる。これらの複素環のうち、当該複素環を構成し、かつ、前記ベンゼン環を構成する炭素原子の隣の1つの原子が窒素原子である複素環が好ましく、ピロリジンがさらに好ましい。
式(II)中、Xは、O、S、Se、N−RまたはC−Rを表し;複数あるRは、それぞれ独立に水素原子、−L、−L、−L、−Lまたは−Lを表し;複数あるRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、−Lまたは−NR基を表し、隣り合うR同士は連結して置換基を有していてもよい環を形成してもよく;L〜L、L、RおよびRは、前記式(I)において定義したL〜L、L、RおよびRと同義である。
前記式(II)中のRとしては、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トルフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基である。
前記式(II)中のRとしては、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、4−アミノシクロヘキシル基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
前記Xとしては、好ましくはO、S、Se、N−Me、N−Et、CH、C−Me、C−Etであり、より好ましくはS、C−Me、C−Etである。
前記式(II)において、隣り合うR同士は連結して環を形成してもよい。このような環としては、例えば、ベンゾインドレニン環、α−ナフトイミダゾール環、β−ナフトイミダゾール環、α−ナフトオキサゾール環、β−ナフトオキサゾール環、α−ナフトチアゾール環、β−ナフトチアダゾール環、α−ナフトセレナゾール環、β−ナフトセレナゾール環などを挙げることができる。
化合物(I)および化合物(II)は、下記式(I−1)および下記式(II−1)のような記載方法に加え、下記式(I−2)および下記式(II−2)のように共鳴構造を取るような記載方法でも構造を表すことができる。つまり、下記式(I−1)と下記式(I−2)の違い、および下記式(II−1)と下記式(II−2)の違いは構造の記載方法のみであり、化合物としてはどちらも同一のものを表す。本発明中では特に断りのない限り、下記式(I−1)および下記式(II−1)のような記載方法にてスクアリリウム系化合物の構造を表すものとする。
化合物(I)および化合物(II)は、それぞれ上記式(I)および上記式(II)の要件を満たせば特に構造は限定されないが、例えば上記式(I−1)および上記式(II−1)のように構造を表した場合、中央の四員環に結合している左右の置換基は同一であっても異なっていてもよいが、同一であった方が合成上容易であるため好ましい。なお、例えば、下記式(I−3)で表される化合物と下記式(I−4)で表される化合物は、同一の化合物であると見なすことができる。
化合物(I)および化合物(II)の具体例としては、下記(I−A)〜(I−H)で表される基本骨格を有する、下記表1〜3に記載の化合物(a−1)〜(a−36)などを挙げることができる。
化合物(I)および化合物(II)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特開平1−228960号公報、特開2001−40234号公報、特許第3196383号公報等に記載されている方法などを参照して合成することができる。
〈フタロシアニン系化合物(B)〉
フタロシアニン系化合物(B)は、下記式(III)で表される化合物(以下「化合物(III)」ともいう。)であることが好ましい。
式(III)中、Mは、2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、または3価もしくは4価の金属原子を含む置換金属原子を表し、
複数あるR、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L、−S−L、−SS−L、−SO−L、−N=N−L、または、RとR、RとRおよびRとRのうち少なくとも1つの組み合わせが結合した、下記式(A)〜(H)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、同じ芳香環に結合したR、R、RおよびRのうち少なくとも1つが水素原子ではない。
前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記式(I)において定義した置換基Lを有してもよく、
は前記式(I)において定義したLと同義であり、
は、水素原子または前記式(I)において定義したL〜Lのいずれかを表し、
は、水酸基または前記L〜Lのいずれかを表し、
は、前記L〜Lのいずれかを表す。
式(A)〜(H)中、RとRの組み合わせは、RとR、RとRまたはRとRの組み合わせであり、
複数あるR〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L、−S−L、−SS−L、−SO−L、−N=N−Lを表し、
前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記置換基Lを有してもよく、L〜Lは前記式(III)において定義したL〜Lと同義である。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、置換基Lを有してもよいアミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、置換基Lを有してもよいアミド基としては、アミド基、メチルアミド基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジプロピルアミド基、ジイソプロピルアミド基、ジブチルアミド基、α−ラクタム基、β−ラクタム基、γ−ラクタム基、δ−ラクタム基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、置換基Lを有してもよいイミド基としては、イミド基、メチルイミド基、エチルイミド基、ジエチルイミド基、ジプロピルイミド基、ジイソプロピルイミド基、ジブチルイミド基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、置換基Lを有してもよいシリル基としては、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
前記R〜R及びR〜Rにおいて、−S−Lとしては、チオール基、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基、イソブチルスルフィド基、sec-ブチルスルフィド基、tert-ブチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルスルフィド基、2,6−ジフェニルフェニルスルフィド基、4−クミルフェニルフルフィド基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、−SS−Lとしては、ジスルフィド基、メチルジスルフィド基、エチルジスルフィド基、プロピルジスルフィド基、ブチルジスルフィド基、イソブチルジスルフィド基、sec-ブチルジスルフィド基、tert-ブチルジスルフィド基、フェニルジスルフィド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルジスルフィド基、2,6−ジフェニルフェニルジスルフィド基、4−クミルフェニルジスルフィド基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、−SO−Lとしては、スルホキシル基、メシル基、エチルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、−N=N−Lとしては、メチルアゾ基、フェニルアゾ基、p−メチルフェニルアゾ基、p−ジメチルアミノフェニルアゾ基などが挙げられる。
前記Mにおいて、1価の金属原子としては、Li、Na、K、Rb、Csなどが挙げられる。
前記Mにおいて、2価の金属原子としては、Be、Mg、Ca、Ba、Ti、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Zn、Cd、Hg、Sn、Pbなどが挙げられる。
前記Mにおいて、3価の金属原子を含む置換金属原子としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Ga−F、Ga−Cl、Ga−Br、Ga−I、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Fe−Cl、Ru−Cl、Mn−OHなどが挙げられる。
前記Mにおいて、4価の金属原子を含む置換金属原子としては、TiF、TiCl、TiBr、TiI、ZrCl、HfCl、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、SnI、Zr(OH)、Hf(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Ge(OH)、Sn(OH)、TiR、CrR、SiR、GeR、SnR、Ti(OR)、Cr(OR)、Si(OR)、Ge(OR)、Sn(OR)(Rは脂肪族基または芳香族基を表す。)、TiO、VO、MnOなどが挙げられる
前記Mとしては、周期表5族〜11族、且つ、第4周期〜第5周期に属する、2価の遷移金属、3価もしくは4価の金属ハロゲン化物または4価の金属酸化物であることが好ましく、その中でも、高い可視光透過率や安定性を達成することができることから、Cu、Ni、CoおよびVOが特に好ましい。
フタロシアニン系化合物(B)は、下記式(V)のようなフタロニトリル誘導体の環化反応により合成する方法が一般的に知られているが、得られるフタロシアニン系化合物は下記式(VI−1)〜(VI−4)のような4種の異性体の混合物となっている。本発明では、特に断りのない限り、1種のフタロシアニン系化合物につき1種の異性体のみを例示しているが、他の3種の異性体についても同様に用いることができる。なお、これらの異性体は必要に応じて分離して用いることも可能であるが、本発明では異性体混合物を一括して取り扱っている。
化合物(III)の具体例としては、下記式(III−A)〜(III−J)で表わされる基本骨格を有する、下記表4〜7に記載の(b−1)〜(b−56)などを挙げることができる。
化合物(III)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特許第4081149号公報や「フタロシアニン −化学と機能―」(アイピーシー、1997年)に記載されている方法を参照して合成することができる。
〈シアニン系化合物(C)〉
シアニン系化合物(C)は、下記式(IV−1)〜(IV−3)のいずれかで表される化合物(以下「化合物(IV−1)〜(IV−3)」ともいう。)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
式(IV−1)〜(IV−3)中、X は1価の陰イオンを表し、
複数あるDは、独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、
複数あるR、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L、−S−L、−SS−L、−SO−L、−N=N−L、または、RとR、RとR、RとR、RとR、RとRおよびRとRのうち少なくとも1つの組み合わせが結合した、下記式(A)〜(H)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、
前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記式(I)において定義した置換基Lを有してもよく、
は、前記式(I)において定義したLと同義であり、
は、水素原子または前記式(I)において定義したL〜Lのいずれかを表し、
は、水素原子または前記L〜Lのいずれかを表し、
は、前記L〜Lのいずれかを表し、
〜ZおよびY〜Yは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L、−S−L、−SS−L、−SO−L、−N=N−L(L〜Lは、前記R〜RにおけるL〜Lと同義である。)、あるいは、
隣接した二つから選ばれるZ同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含んでもよい5乃至6員環の脂環式炭化水素基、
隣接した二つから選ばれるZ同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、または、
隣接した二つから選ばれるZ同士もしくはY同士が相互に結合して形成され、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含む、炭素数3〜14の複素芳香族炭化水素基を表し、これらの脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基および複素芳香族炭化水素基は、炭素数1〜9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよい。
式(A)〜(H)中、RとRの組み合わせは、RとR、RとR、RとR、RとR、RとRおよびRとRの組み合わせであり、
複数あるR〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、−L、−S−L、−SS−L、−SO−Lまたは−N=N−L(L〜Lは、前記式(IV−1)〜(IV−3)において定義したL〜Lと同義である。)を表し、前記アミノ基、アミド基、イミド基およびシリル基は、前記置換基Lを有してもよい。
前記Z〜ZおよびY〜Yにおける、Z同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含んでもよい5乃至6員環の脂環式炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける脂環式炭化水素基および複素環で例示した化合物(複素芳香族炭化水素基を除く。)が挙げられる。
前記Z〜ZおよびY〜Yにおける、Z同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける芳香族炭化水素基で例示した化合物が挙げられる。
前記Z〜ZおよびY〜Yにおける、Z同士もしくはY同士が相互に結合して形成される、炭素数3〜14の複素芳香族炭化水素基としては、例えば、前記置換基Lにおける複素環基として例示した化合物(窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも1つ含む脂環式炭化水素基を除く。)が挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、置換基Lを有してもよいアミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、置換基Lを有してもよいアミド基としては、アミド基、メチルアミド基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジプロピルアミド基、ジイソプロピルアミド基、ジブチルアミド基、α−ラクタム基、β−ラクタム基、γ−ラクタム基、δ−ラクタム基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、置換基Lを有してもよいイミド基としては、イミド基、メチルイミド基、エチルイミド基、ジエチルイミド基、ジプロピルイミド基、ジイソプロピルイミド基、ジブチルイミド基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、置換基Lを有してもよいシリル基としては、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、−S−Lとしては、チオール基、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基、イソブチルスルフィド基、sec-ブチルスルフィド基、tert-ブチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルスルフィド基、2,6−ジフェニルフェニルスルフィド基、4−クミルフェニルフルフィド基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、−SS−Lとしては、ジスルフィド基、メチルジスルフィド基、エチルジスルフィド基、プロピルジスルフィド基、ブチルジスルフィド基、イソブチルジスルフィド基、sec-ブチルジスルフィド基、tert-ブチルジスルフィド基、フェニルジスルフィド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルジスルフィド基、2,6−ジフェニルフェニルジスルフィド基、4−クミルフェニルジスルフィド基などが挙げられる。
前記R〜RおよびR〜Rにおいて、−SO2−Lとしては、スルホキシル基、メシル基、エチルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基などが挙げられる。
前記Ra〜Ri及びRA〜RLにおいて、−N=N−Lとしては、メチルアゾ基、フェニルアゾ基、p−メチルフェニルアゾ基、p−ジメチルアミノフェニルアゾ基などが挙げられる。
前記化合物(IV−1)〜(IV−3)の具体例としては、下記表8に記載の(c−1)〜(c−19)などを挙げることができる。
化合物(IV−1)〜(IV−3)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば特開2009−108267号公報に記載されている方法で合成することができる。
《近紫外線吸収剤》
本発明で用いる樹脂製基板は、必要に応じて近紫外線吸収剤を含有してもよい。
近紫外線吸収剤は、アゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、波長300〜420nmに少なくとも一つの吸収極大を持つことが好ましい。このような近紫外線吸収剤を含有することにより、近紫外線波長領域においても入射角依存性が小さい近赤外線カットフィルターを得ることができる。近紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
《酸化防止剤》
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<樹脂製基板の製造方法>
本発明で用いる樹脂製基板は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することが好ましい。必要により、前記形成後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤を前記基板上にコーティングすることもできる。
《溶融成形》
前記樹脂製基板は、樹脂、必要に応じて添加剤(例えば近赤外線吸収色素)を溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;樹脂と添加剤(例えば近赤外線吸収色素)とを含む樹脂組成物を溶融成形する方法;または、樹脂、溶媒、必要に応じて添加剤(例えば近赤外線吸収色素)を含む樹脂組成物から溶媒を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などにより製造することができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
《キャスト成形》
前記樹脂製基板は、樹脂、溶媒、必要に応じて添加剤(例えば近赤外線吸収色素)を含む樹脂組成物を適当な基材の上にキャスティングして溶媒を除去する方法;反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤と、樹脂と、添加剤(例えば近赤外線吸収色素)とを含む樹脂組成物を適当な基材の上にキャスティングする方法;または、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤と、樹脂と、必要に応じて添加剤(例えば色素化合物)とを含む硬化性組成物を適当な基材の上にキャスティングして硬化および乾燥させる方法などにより製造することもできる。
前記基材としては、例えば、ガラス板、スチールベルト、スチールドラムおよび透明樹脂フィルム(例えば、ポリエステル系樹脂フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム)が挙げられる。
前記樹脂製基板は、基材から剥離することにより得ることができ、また、本発明の効果を損なわない限り、基材から剥離せずに基材と塗膜との積層体を前記樹脂製基板としてもよい。
さらに、ガラス板、石英または透明プラスチック製等の光学部品に、前記樹脂組成物をコーティングして溶媒を乾燥させる方法、または、前記硬化性組成物をコーティングして硬化および乾燥させる方法などにより、光学部品上に直接樹脂製基板を形成することもできる。
前記樹脂製基板の製造においては、製造工程内に延伸工程を含まないことが望ましい。延伸工程を行わずに樹脂製基板を形成することにより、位相差R0、Rthの小さい樹脂製基板を容易に得ることができる。ここで、延伸工程とは、前記樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下で、延伸倍率が1.05倍以上となるように樹脂製基板を延伸する工程を指す。延伸工程は、樹脂製基板面内方向の縦・横のいずれの方向であっても、延伸倍率が1.05倍以上である工程を含む。
前記溶媒としては通常有機合成などに用いられる溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記方法で得られた樹脂製基板中の残留溶媒量は可能な限り少ない方がよい。具体的には、前記残留溶媒量は、樹脂製基板の重さに対して、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。残留溶媒量が前記範囲にあると、変形や特性が変化しにくい、所望の機能を容易に発揮できる樹脂製基板が得られる。
[誘電体多層膜]
本発明に用いることができる誘電体多層膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜であることが好ましい。本発明では、誘電体多層膜は樹脂製基板の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、ソリの生じにくい近赤外線カットフィルターを得ることができる。
誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した膜などが挙げられる。
高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、または、酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウムなどを少量(例えば、主成分に対し0〜10%)含有させたものなどが挙げられる。
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、前記樹脂製基板上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、遮断しようとする近赤外線波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚さが好ましい。λ(nm)の値としては、例えば700〜1400nm、好ましくは750〜1300nmである。厚さがこの範囲であると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さとがほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、近赤外線カットフィルター全体として5〜60層であることが好ましく、10〜50層であることがより好ましい。
さらに、誘電体多層膜を形成した際に樹脂製基板にソリが生じてしまう場合には、これを解消するために、樹脂製基板両面に誘電体多層膜を形成したり、樹脂製基板の誘電体多層膜を形成した面に紫外線等の電磁波を照射したりする方法等をとることができる。なお、電磁波を照射する場合、誘電体多層膜の形成中に照射してもよいし、形成後別途照射してもよい。
[その他の機能膜]
本発明のフィルターには、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂製基板と誘電体多層膜との間、樹脂製基板の誘電体多層膜が設けられた面と反対側の面、または誘電体多層膜の樹脂製基板が設けられた面と反対側の面に、樹脂製基板や誘電体多層膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜やハードコート膜、帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
本発明のフィルターは、前記機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明のフィルターが前記機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを樹脂製基板または誘電体多層膜上に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
また、前記コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で樹脂製基板または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
また、前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100重量%とした場合、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性が優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
さらに、前記硬化性組成物には溶媒として有機溶媒を加えてもよく、有機溶媒としては、公知のものを使用することができる。有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1μm〜20μm、さらに好ましくは0.5μm〜10μm、特に好ましくは0.7μm〜5μmである。
また、樹脂製基板と機能膜および/または誘電体多層膜との密着性や、機能膜と誘電体多層膜との密着性を上げる目的で、樹脂製基板や機能膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
[近赤外線カットフィルターの特性等]
本発明の近赤外線カットフィルターは、厚さ100μmにおける位相差の小さい前記樹脂製基板を有する。このため、前記フィルターを固体撮像装置に組み込むことにより、解像度が高くより鮮明な画像を与えることができる。また、本発明の近赤外線カットフィルターは、透過率特性に優れ、使用する際に制約を受けない。
本発明の近赤外線カットフィルターは、下記の要件1,2を満たすことができる。
要件1.波長430〜580nmの領域において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上であること。この平均値は、好ましくは78%以上、さらに好ましくは80%以上である。本発明では、例えば、上述した透明樹脂および前記波長領域に吸収を持たない吸収剤を用いることで、このような波長430〜580nmの領域において、高い透過率を有するフィルターを得ることができる。
要件2.波長800〜1000nmの領域において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下であること。この平均値は、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。本発明では、上述したように、樹脂製基板上に高い近赤外線反射能を有する所定の誘電体多層膜を設けることで、このような波長800〜1000nmの領域において、充分に低い透過率を有する光学フィルターを得ることができる。
[近赤外線カットフィルターの用途]
本発明の近赤外線カットフィルターは、固体撮像装置において解像度が高く鮮明な画像を与えることができ、また優れた近赤外線カット能等を有する。したがって、カメラモジュールのCCDやCMOSイメージセンサーなどの固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ等に有用である。
〔固体撮像装置〕
本発明の固体撮像装置は、本発明の近赤外線カットフィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とは、CCDやCMOSなどといった固体撮像素子を備えたイメージセンサーであり、具体的にはデジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラなどの用途に用いることができる。例えば、本発明のカメラモジュールは、本発明の近赤外線カットフィルターを具備する。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。また、各物性値の測定方法および物性の評価方法は以下のとおりである。
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶媒への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウオターズ(WATERS)社製GPC装置(150C型、カラム:東ソー社製Hタイプカラム、展開溶媒:o−ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー社製GPC装置(HLC−8220型、カラム:TSKgelα−M、展開溶媒:テトラヒドロフラン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
<ガラス転移温度(Tg)>
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
<位相差>
大塚電子株式会社製、RETS−1200VAを用いて、樹脂製基板の波長590nmにおける面内位相差(R0)を測定した。また、R0と、樹脂製基板の垂直方向に対して40°の角度から測定した場合の波長590nmにおける面内位相差(R40)と、Metricon社製、MODEL2010プリズムカプラにて測定し、得られた、波長590nmにおける樹脂製基板の平均屈折率とから、フィルム面内における遅相軸の屈折率(Nx)、フィルム面内における進相軸の屈折率(Ny)、フィルムの厚さ方向の屈折率(Nz)を求め、フィルム厚さをd(nm)として下記式にて厚さ方向の位相差(Rth)を算出した。
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
<分光透過率>
樹脂製基板の吸収極大波長、近赤外線カットフィルターの各波長領域における透過率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U−4100)を用いて測定した。なお、分光透過率は、図1のようにフィルターに対して垂直に透過した光を測定した。この透過率は、光がフィルターに対して垂直に入射する条件で、前記分光光度計を使用して測定したものである。
<カメラ画像 視覚解像度評価>
CMOSイメージセンサーを有する市販のデジタルカメラ(ソニー株式会社製 DSC−RX100)から近赤外線カットフィルターを取り外し、取り外した近赤外線カットフィルターの代わりに以下の実施例等で得られたフィルターを搭載させ、ISO規格12233に準拠して解像度評価用チャートを撮影し、縦方向と横方向について白・黒の細い線をどこまで見分けられるか視覚解像度評価を行った。撮影に用いたISO準拠解像度評価用チャートを図2に示す。線の間隔は「目盛り25」が最も狭く、「目盛り0」が最も広いため、どの目盛りの線まで見分けられるかを評価することにより、カメラ画像の解像度を相対的に評価することが出来る。なお、本実施例においては、撮影画像サイズは18M(4:3)とし、オートフォーカス設定は中央重点のシングルオートフォーカスとした。
[合成例]
下記実施例で用いたスクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物は、一般的に知られている方法で合成することができ、例えば、特許第3366697号公報、特許第2846091号公報、特許第2864475号公報、特許第3703869号公報、特開昭60−228448号公報、特開平1−146846号公報、特開平1−228960号公報、特許第4081149号公報、特開昭63−124054号公報、「フタロシアニン −化学と機能―」(アイピーシー、1997年)、特開2007−169315号公報、特開2009−108267号公報、特開2010−241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報などに記載されている方法を参照して合成することができる。
<樹脂合成例1>
下記式(a)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「DNM」ともいう。)100部、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(濃度0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(Cを0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
<樹脂合成例2>
3Lの4つ口フラスコに2,6−ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。
次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。
室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下「樹脂B」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂Bは、数平均分子量(Mn)が75,000、重量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
<樹脂合成例3>
反応器に、9,9−ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル}フルオレン0.8モル、エチレングリコール2.2モルおよびイソフタル酸ジメチル1.0モルを加え、攪拌しながら徐々に加熱溶融してエステル交換反応を行った後、酸化ゲルマニウム20×10−4モルを加え、290℃、1Torr以下に到達するまで徐々に昇温および減圧を行いながらエチレングリコールを除去した。この後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂(以下「樹脂C」ともいう。)のペレットを得た。得られた樹脂Cは、数平均分子量(Mn)が40,000であり、ガラス転移温度(Tg)が145℃であった。
[実施例1]
容器に、合成例1で得られた樹脂Aに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20重量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にフィルムアプリケーターを使用してキャストし、20℃で8時間乾燥した後、形成された塗膜をガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ100μm、縦60mm、横60mmの樹脂製基板を得た。この樹脂製基板の吸収極大波長、R0、Rthを測定した。結果を表9に示す。
続いて、得られた樹脂製基板の片面に、近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO:膜厚83〜199nm)層とチタニア(TiO:膜厚101〜125nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数20〕を蒸着温度100℃で形成し、さらに樹脂製基板のもう一方の面に、近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO:膜厚77〜189nm)層とチタニア(TiO:膜厚84〜118nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数26〕を蒸着温度100℃で形成し、厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを得た。なお、上記多層蒸着膜のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層は、樹脂製基板側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、フィルターの最外層をシリカ層とした。
この近赤外線カットフィルターをデジタルカメラに組み込んで視覚解像度評価を実施し、縦方向と横方向の平均解像度を算出した。また、この近赤外線カットフィルターの透過率を測定し、波長430〜580nmおよび波長800〜1000nmにおける透過率の平均値を得た。
[実施例2]
容器に、合成例1で得られた樹脂A 100部、スクアリリウム系化合物(a−16)0.03部、フタロシアニン系化合物(b−11)0.01部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20重量%の溶液を得た。以降は実施例1と同様にして、厚さ100μm、縦60mm、横60mmの樹脂製基板、および厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを得た。
[実施例3]〜[実施例6]
実施例2において、表9に示す透明樹脂、近赤外線吸収色素、溶媒およびフィルム乾燥条件を採用して樹脂製基板を製造し、さらにそれぞれ多層蒸着膜の各層の厚さと層数についての最適化を行ったこと以外は実施例1と同様にして、厚さ0.106mmの近赤外線カットフィルターを得た。結果を表9に示す。なお、表9において、溶液の樹脂濃度はいずれも20重量%である。
実施例で使用した各種化合物は以下のとおりである。
樹脂A:環状ポリオレフィン系樹脂(樹脂合成例1)
樹脂B:芳香族ポリエーテル系樹脂(樹脂合成例2)
樹脂C:フルオレンポリエステル系樹脂(樹脂合成例3)
樹脂D:環状ポリオレフィン系樹脂「ゼオノア 1420R」(日本ゼオン(株)製)
(Tg:136℃)
溶媒(1):塩化メチレン
溶媒(2):シクロヘキサン/キシレン(重量比:7/3)
a−16:表1に記載された構造のスクアリリウム系化合物(a−16)
b−11:表4に記載された構造のフタロシアニン系化合物(b−11)
c−4:表8に記載された構造のシアニン系化合物(c−4)
また、表9における、実施例および比較例のフィルム乾燥条件は以下の通りである。
条件(1):20℃/8hr→減圧下 100℃/8hr
条件(2):60℃/8hr→80℃/8hr→減圧下 100℃/24hr
なお、減圧乾燥前に、塗膜をガラス板から剥離した。
[比較例1]
延伸処理がなされたR0とRthが大きい樹脂製基板として、東レ株式会社製のポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー(登録商標)T60」(厚さ100μm)を基板として用い、実施例1と同様にして、厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを得た。
以上の実施例および比較例の評価結果を表9に示す。
本発明の近赤外線カットフィルターは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ等に好適に用いることができる。
1:近赤外線カットフィルター
2:分光光度計
3:光

Claims (9)

  1. 厚さ100μmにおける面内位相差(R0)が100nm以下である樹脂製基板と、
    前記樹脂製基板の少なくとも片方の面に形成された誘電体多層膜と
    を有することを特徴とする固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
  2. 前記樹脂製基板の、厚さ100μmにおける厚さ方向の位相差(Rth)が500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
  3. 前記樹脂製基板が、溶融成形またはキャスト成形で得られる基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
  4. 前記樹脂製基板が、波長600〜800nmに吸収極大を有する近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
  5. 前記近赤外線吸収色素が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする請求項4に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
  6. 前記近赤外線吸収色素全体の含有量が、前記樹脂製基板を形成する樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部であることを特徴とする請求項4または5に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
  7. 前記樹脂製基板を形成する樹脂が、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体撮像装置用近赤外線カットフィルター。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とする固体撮像装置。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とするカメラモジュール。
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