JP5848654B2 - 光選択透過フィルター、樹脂シート及び固体撮像素子 - Google Patents
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Description
本発明はまた、上記光選択透過フィルターに用いられる樹脂シートである光選択透過フィルター用樹脂シートでもある。
本発明は更に、上記光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。
上記光選択透過フィルターにおける樹脂シートは、色素及び樹脂成分を含有する吸収層(樹脂層とも称す)を有し、分子内にπ電子結合を有する色素を特定割合で含有するものである。これにより、特異な透過吸収特性を示すことができるうえ、この樹脂シートを反射膜と組み合わせることで、視野角依存性(入射角依存性とも称す)が充分に低減され、可視領域から近赤外領域にかけてシャープな透過吸収特性を有する光選択透過フィルターを与えることができる。また、反射膜として好適な光学多層膜と組み合わせると、光学多層膜の層数を減らすことができ、該多層膜における応力を緩和できるため、多層膜のクラックや割れを充分に防止することもできる。このような本発明の光選択透過フィルターに用いられる光選択透過フィルター用樹脂シートもまた、本発明の1つである。
なお、樹脂シートを構成する吸収層や、支持体等の他の層は、各々、一層又は二層以上であってもよい。
上記樹脂シートは、上述したように支持体を更に有することが好ましいが、支持体としては、フィルム形状のもの(支持体フィルム)が好適である。支持体フィルムとしては、透明性に優れる樹脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂(シクロオレフィン樹脂ともいう)等を用いることができる。これらの中でも、反射膜を蒸着形成する際の耐熱性に優れる点で、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が好ましい。このように上記支持体が、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂により形成されるものである形態は、本発明の好適な実施形態の1つである。特に、ポリ(アミド)イミド樹脂を少なくとも用いることが好ましい。
上記樹脂シートにおいて、吸収層は、色素及び樹脂成分を含有するものであるが、色素が吸収層中に分散又は溶解されてなることが好ましい。すなわち、樹脂成分と色素とを含む組成物中に色素が分散又は溶解された形態の組成物により、吸収層が形成されることが好適である。このような形態の組成物では、樹脂成分として、後述する溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び/又は液状樹脂原料を用いることが好適である。
なお、色素及び樹脂成分としては、各々、1種又は2種以上を使用することができる。
上記色素とは、特定波長の光を吸収する物質を意味し、樹脂成分と混合又は混練可能な色素を用いることができる。例えば、600〜800nmの波長域に吸収極大を有するものが好適である。これにより、光選択透過フィルターを、特に780nm〜10μmの赤外光を低減させる赤外線カットフィルターに好適に適用することが可能になる。より好ましくは、650〜750nmの波長域に吸収極大を有するものである。上記色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。
なお、上記分子内にπ電子結合を有する色素が、上述した好適な波長域に吸収極大を有するものであることが特に好ましい。
なお、双性イオン構造とは、1つの分子内に正電荷と負電荷の両方を持つ分子構造のことである。双性イオンは、分子内塩と呼ばれることもある。また、カチオン性構造とは、正の電荷を帯びた分子構造である。カチオン性とは、陽イオン性とも呼ばれる。
上記フタロシアニン系色素としては、金属フタロシアニン錯体が好適であり、例えば、銅、亜鉛、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等の金属元素を中心金属とする金属フタロシアニン錯体が挙げられる。これらの金属元素の中でも、溶解性、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。中心金属としてより好ましくは銅及び亜鉛であり、更に好ましくは銅である。銅を用いたフタロシアニンは、どのようなバインダー樹脂に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等の金属ポルフィリン錯体が好適である。
上記他の色素の含有量は、上述した双性イオン構造及びカチオン性構造のいずれも有さない色素による効果を充分に発揮させるため、色素の全量100質量%に対し、30質量%以下であることが好適である。より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは、他の色素を実質的に含まないことである。
上記吸収層において、樹脂成分は、上述した色素を充分に溶解又は分散できるものであることが好ましい。このような樹脂成分を適切に選択することにより、透過させたい波長域(例えば、可視領域)における高透過率と、遮断したい波長域(例えば、赤外領域)における高吸収性とを両立することが可能となる。
上記樹脂成分としては、例えば、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。このような樹脂成分は、色素の分散性が高いため、光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができるとともに、色素を高濃度で分散できるため、光選択透過フィルターの薄膜化も可能である。また、上記樹脂成分を用いると、後述する溶媒キャスト法によって吸収層を形成(成膜)することができるため、吸収層中に色素を高濃度で均一に分散できるとともに、比較的低温で吸収層を形成することができる。
なお、上記吸収層自体は、溶剤可溶性であっても不溶性であってもよい。
なお、「樹脂原料」には、樹脂の前駆体や該前駆体の原料、更に、樹脂を形成するための単量体(硬化性モノマー等)が含まれるものとする。
上記樹脂成分として溶剤可溶性樹脂を用いる場合、該溶剤可溶性樹脂がそのまま、上記吸収層を構成する樹脂成分となっていてもよいし、該溶剤可溶性樹脂が架橋反応等により変化したものが、上記吸収層を構成する樹脂成分となっていてもよい。
なお、架橋可能な反応性基の量や成膜時の架橋反応をどの程度進めるかは特に限定されるものではないが、樹脂の溶剤可溶性が維持できる程度であることが好ましい。
なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
上記一般式(1−2)中、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。R3は、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。n1は、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
なお、ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である。)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応による形成される。
ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが好適である。より好ましくは、全重量100%中の芳香環の重量が65%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは30%以下である。
上記一般式(5)におけるR4としては、2価の有機基が好ましく、中でも、炭素数2〜39の2価の有機基が好ましい。また、当該有機基は1種又は2種以上の炭化水素骨格を含むものが好ましい。炭化水素骨格としては、脂肪族鎖状炭化水素、脂肪族環状炭化水素又は芳香族炭化水素であることが好ましい。当該有機基はまた、複素環骨格を有するものであってもよい。
なお、上記一般式(5)で表される繰り返し単位におけるそれぞれのR4としては、同一であっても異なるものであってもよい。
なお、一般式(5)におけるシクロヘキシル環における水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいが、無置換(全て水素原子である形態)であるものが好ましい。
上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
なお、本明細書中、エポキシ基とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む)を含むものを意味する。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物((メタ)アクリロイル基含有化合物又は(メタ)アクリル系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、スチレン樹脂とは、スチレンやジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー(スチレン系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、アクリル−スチレン樹脂とは、(メタ)アクリロイル基含有化合物及びスチレン系モノマーを含む硬化性組成物の硬化物である。上記ビニル重合体樹脂の中でも、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂が好ましい。
上記アクリル−スチレン樹脂原料としては、上記アクリル樹脂原料の好適な形態において更にスチレン系モノマーを用いた組成物が好ましい。
上記吸収層はまた、上記色素の吸収極大波長における透過率が60%以下であることが好ましい。これにより、吸収極大波長付近の光を効果的に遮断することができる。透過率としてより好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
なお、上記吸収層を含む樹脂シート又は光選択透過フィルターについても、可視光領域におけるヘイズ、可視光500nmにおける透過率、及び、色素の吸収極大波長における透過率が、夫々、吸収層のついての上述した範囲と同様の範囲にあることが好ましい。
なお、樹脂シートの厚みとしては、1mm以下であることが好ましい。より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、より更に好ましくは80μm以下、より一層好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下、最も好ましくは30μm以下である。また、支持体の厚みは100μm以下であることが好ましい。
上記光選択透過フィルターにおいて、反射膜(反射層とも称す)としては、多層からなる膜であることが好適である。すなわち、上記反射膜は、光学多層膜であることが好ましい。また、光学多層膜としては、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜等が、耐熱性に優れる点で好適である。無機多層膜としては、基材やその他の機能性材料層の上に、真空蒸着法、スパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜が好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜であることも好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好ましい。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
また、樹脂シートが有機材料、具体的には樹脂組成物により形成される場合には、未硬化又は半硬化状態の樹脂シート(樹脂組成物)に、上記誘電体層等を蒸着した後、樹脂シートを硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に、基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、光選択透過フィルターの変形(カール)を抑制することができる。
上記線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムとして具体的には、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等が好適であり、上記樹脂層又は支持体フィルムが、これらからなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、樹脂を延伸する;無機微粒子等を分散させる;ガラスクロスを用いる;架橋密度を上げる;コンポジット化する;結晶化させる;等によっても線膨張係数を低下させることができる。
また、上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、2〜8μmである。反射膜が上記樹脂シートの両面に形成される形態においては、両面の反射膜の合計の厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターは、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の1つである赤外カットフィルターの場合、紫外線を遮蔽する機能等の赤外カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。このような、本発明の光選択透過フィルターが上記他の機能を有する形態においては、樹脂シートの一方の表面に上記反射膜を形成し、他方の表面に上記他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。
上記機能性材料層は、例えば、上述のCVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記樹脂シート上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を樹脂シート上に接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を樹脂シートに塗布、乾燥して製膜することによっても得ることができる。
図9に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図10に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは110%以下、更に好ましくは105%以下である。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は、上述と同様であることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
光遮断特性の入射角依存性は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて、入射角を変えた透過率(例えば0°、20°、25°、30°等。入射角0°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される透過率であり、入射角20°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される透過率である。)を測定し、そのスペクトル変化量により評価できる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、樹脂シートの吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
なお、レンズユニット部については、WO2008/081892に記載の形態が好ましく採用できる。
なお、下記合成例における数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 4.6*150を2本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定した。
<FPEK(フッ素化ポリエーテルケトン)の合成>
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル)16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン)10.5部、炭酸カリウム4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド)90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマー(FPEK)を得た。
上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は242℃、数平均分子量(Mn)が70770、表面抵抗値は1.0×1018Ω/cm2以上であった。
合成例1で得たFPEK10部に、TX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.3部、MIBK(メチルイソブチルケトン)を70部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(1)を得た。
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、色素含有樹脂組成物(1)を30μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、樹脂シート(1)52.3μmを得た。
樹脂シート(1)の透過率スペクトルを図1に示した。
支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、実施例1で得られた色素含有樹脂組成物(1)を15μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥後、裏面にも同様に15μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥した。樹脂シート(2)52.2μmを得た。
樹脂シート(2)の透過率スペクトルを図2に示した。
合成例1で得たFPEK10部に、TX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.01部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(2)を得た。
色素含有樹脂組成物(2)をガラス板上に420μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、硬化物を剥離することにより樹脂シート(3)65μmを得た。
樹脂シート(3)の透過率スペクトルを図3に示した。
合成例1で得たFPEK10部に、TX−EX−609K(開発品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.0065部、MIBKを40部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(3)を得た。
色素含有樹脂組成物(3)をガラス板上に650μm厚で塗布し、150℃で180分間乾燥して、硬化物を剥離することにより樹脂シート(4)100μmを得た。
樹脂シート(4)の透過率スペクトルを図4に示した。
ネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)10部にDMAc90部を加え、120℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にTX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.3部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(4)を得た。
色素含有樹脂組成物(4)を支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、15μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥後、支持体フィルムの裏面に同様にして色素含有樹脂組成物(4)を15μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥させることにより、樹脂シート(5)54μmを得た。
樹脂シート(5)の透過率スペクトルを図5に示した。
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸(アルドリッチ製、純度95%)5部と無水酢酸(和光純薬社製)44部とを、フラスコに仕込み、攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶剤の還流温度まで昇温し、10分間溶剤を還流させた。攪拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して目的物(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)の結晶を得た。温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えたフラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和光純薬社製)0.89部と、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン7.6部を仕込んで溶解させた後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物1部を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。共沸脱水剤としてキシレンを2.6部添加して180℃で3時間反応を行い、ディーンスタークで還流して共沸する生成水を分離した。190℃に昇温しながらキシレンを留去した後、冷却し、ポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、9.33部を得た(この溶液中のポリイミド濃度:18.5%)。この溶液に、TX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.055部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(5)を得た。
色素含有樹脂組成物(5)を、支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に、15μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥後、支持体フィルムの裏面に同様にして色素含有樹脂組成物(5)を15μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥させることにより、樹脂シート(6)54μmを得た。
樹脂シート(6)の透過率スペクトルを図6に示した。
実施例4において、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.89部の代わりに、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(東京化成社製)1.08部及び4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(和光純薬社製)0.49部を用いること以外は、同様にして、ポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、10.1部を得た(この溶液中のポリイミド濃度:23.9%)。この溶液に、TX−EX−609K(商品名、フタロシアニン系色素、吸収極大波長650nm、日本触媒社製)を0.0060部加え均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物(6)を得た。
色素含有樹脂組成物(6)を、ガラス板上に、400μm厚で塗布し、200℃で60分間乾燥して、硬化物を剥離することにより樹脂シート(7)45μmを得た。
樹脂シート(7)の透過率スペクトルを図7に示した。
各実施例及び比較例における、吸収層を構成する色素及び樹脂成分の総量100質量%に対する、分子内にπ電子結合を有する色素の濃度(含有量、質量%)、及び、樹脂シートにおける吸収層の厚み(μm)を、表1に示す。
なお、樹脂成分としてフッ素化芳香族ポリマーを用いた例である、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2は、これらを対比しやすいように、吸収層の透過断面積あたりの色素濃度がほぼ等しくなるように設定している。つまり、実施例1及び実施例2は、吸収層における特定色素濃度を、本発明で規定した1質量%以上の高濃度にする一方で、吸収層の膜厚を薄く設定しているのに対し、比較例1及び比較例2は、吸収層における特定色素濃度を1質量%未満の低濃度にする一方で、吸収層の膜厚を厚く設定している。樹脂成分としてポリ(アミド)イミド樹脂を用いた例である、実施例3、実施例4、比較例3についても同様に、それぞれ対比しやすいように、吸収層の透過断面積あたりの色素濃度がほぼ等しくなるように設定している。
すなわち、実施例においては、吸収層を、特定色素を1質量%以上で含有したものとすることにより、色素分子が本来有する選択透過性よりも優れた選択透過性を発揮できる樹脂シートが得られたのである。
実施例1〜4で得た各樹脂シートを、幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした。この両面に、蒸着基板温度150℃で赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm)層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。
得られた各光選択透過フィルターについて、透過率及び入射角依存性を以下に示す方法にて測定・評価した。
Shimadzu UV−3100(島津製作所社製)を用いて200〜1100nmにおける透過率を測定した。透過率は、図11に示すように、入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される。)と、入射光に対して25°光選択透過フィルターを傾けて設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向に対して25°傾いた方向から光が入射するようにして測定される。)の夫々について測定した。
2:光選択透過フィルター
3:センサー
4:光源
5:光選択透過フィルター
6:受光部
Claims (6)
- 樹脂シートと、その少なくとも一方の表面に形成されてなる反射膜とを含む光選択透過フィルターであって、
該樹脂シートは、色素及び樹脂成分を含む吸収層を有し、
該色素は、分子内にπ電子結合を有する色素を含み、
該分子内にπ電子結合を有する色素は、双性イオン構造及びカチオン性構造のいずれも有さない、フタロシアニン系色素及び/又はポルフィリン系色素であり、
該分子内にπ電子結合を有する色素の含有割合は、吸収層を構成する色素及び樹脂成分の総量100質量%に対し、2質量%以上であって、
該樹脂成分は、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂及びポリシクロオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤可溶性樹脂を含むことを特徴とする光選択透過フィルター。 - 前記溶剤可溶性樹脂は、フッ素化芳香族ポリマー及び/又はポリ(アミド)イミド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光選択透過フィルター。
- 前記吸収層は、厚みが5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光選択透過フィルター。
- 前記吸収層は、可視光領域におけるヘイズが10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光選択透過フィルターに用いられる樹脂シートであることを特徴とする光選択透過フィルター用樹脂シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有することを特徴とする固体撮像素子。
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