JP6054649B2 - 光選択透過フィルター形成用樹脂組成物及びその用途 - Google Patents

光選択透過フィルター形成用樹脂組成物及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、光選択透過フィルター形成用樹脂組成物及びその用途に関する。より詳しくは、光学部材やオプトデバイス部材の他、表示デバイス部品、機械部品、電気・電子部品等の用途に有用な光選択透過フィルターの形成に用いられる樹脂組成物、それを用いた光選択透過フィルター及び吸収シート、並びに、光選択透過フィルターを有する固体撮像素子に関する。
光選択透過フィルターは、特定波長の光の透過率を選択的に低減するフィルターであり、低減させる光の波長に応じて、赤外線(IR)カットフィルター、紫外線カットフィルター、赤外・紫外線カットフィルター等が挙げられる。このような光選択透過フィルターは、例えば、光学部材やオプトデバイス部材の他、表示デバイス部品、機械部品、電気・電子部品等に用いられる光学フィルターとして有用なものである。例えば、代表的な光学部材の1つとして、携帯電話用カメラやデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の光学撮像装置に搭載される固体撮像素子(カメラモジュールとも称す)があるが、固体撮像素子においては、画像処理等の妨げとなる光学ノイズの低減を、光学ノイズとなる赤外線(特に波長>780nmの近赤外線領域)を遮断する赤外線(IR)カットフィルターを備えることで行うことが一般的である。
このような固体撮像素子に代表される光学部材等の分野では、近年、デジタルカメラモジュールが携帯電話に搭載される等、小型化が進みつつあり、これに伴って、光選択透過フィルターの薄膜化への要望が高まっている。光選択透過フィルターは、主に、基材に金属等を蒸着させ無機多層膜とし、各波長の屈折率を制御したものが用いられており、その基材として、従来はガラス板が用いられてきたが、薄膜化の要望の高まりを受けて樹脂を基材とする技術が検討されている。近年ではまた、携帯電話、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等の屋外でも使用できる用途への適用も検討されているが、これらの屋外使用用途では、直射日光暴露等の外部環境への耐性、すなわち高いレベルの耐光性が要求されることになる。
基材に樹脂を用いた光選択透過フィルターとしては、主に、光を反射する機能を有する反射型フィルターと、吸収する機能を有する吸収型フィルターとがあるが、反射型フィルターは、光の遮断性能には優れるものの、光の入射角によって反射特性が変化する入射角依存性(視野角依存性とも称す)を有しており、その低減が課題であった。一方、吸収型フィルターは、入射角依存性はないものの、充分な吸収特性を実現するためには相当な厚みが必要であり、薄膜化の観点から工夫の余地があった。
そこで、反射機能と吸収機能とを併用したフィルターが提案されており、例えば、特許文献1には、ガラス基板上に、近赤外吸収剤を含む顔料インクを塗布・乾燥して得られる光吸収膜と、該光吸収膜よりも高屈折率の膜とを、交互に多層積層した光吸収フィルターが開示されている。この光吸収フィルターは、角度依存性を低減しつつ薄膜化をも実現しようとするものである。また、特許文献2には、視野角が広く、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない近赤外線カットフィルターを得ることを目的として、特定のスクワリリウム系化合物を含有した樹脂製基板を有する近赤外線カットフィルターが開示されている。更に、特許文献3には、薄型化が可能になり、かつ可視光線領域で高い透明性を有するとともに、近赤外線領域で優れた阻止能を有する近赤外線カットフィルターを提供することを目的として、透明な基材1と、基材1の片面又は両面に形成された光学多層膜2、3と、基材1の少なくとも片面に形成された少なくとも一層の樹脂吸収膜4とからなる近赤外線カットフィルターが開示されている。この特許文献3では、光学多層膜2、3は、屈折率の異なる2種以上の薄膜を交互に積層してなり、可視光線領域で高透過特性を示すとともに近赤外線領域で低透過特性を示す膜であり、樹脂吸収膜4は、染料又は顔料を添加した樹脂材料を膜状に塗工してなり、染料又は顔料は近赤外線領域に吸収を有する膜であると記載されている。
特開2006−106570号公報 特開2012−008532号公報 特開2006−301489号公報
上述したように種々の光選択透過フィルターが検討されており、遮断したい波長域(例えば、赤外領域)をシャープに遮断でき、かつ透過させたい波長域(例えば、可視領域)では高い透過率を示すといった光選択透過性に優れるとともに、遮断性能の入射角依存性のより一層の低減及び薄膜化を達成することできる光選択透過フィルターが望まれている。しかしながら、従来の樹脂組成物には、これらの要求をすべて充分に満足できるものは未だない。例えば、特許文献1〜3に記載の光選択透過フィルターでは、入射角依存性をより一層低減し、よりシャープな光選択透過性を発揮させるための工夫の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、優れた光選択透過性を有し、入射角依存性が充分に低減され、かつ薄膜化への要請に充分に対応できる光選択透過フィルターを形成することができる樹脂組成物、それを用いた光選択透過フィルター、該光選択透過フィルターに用いられる吸収シート及び該光選択透過フィルターを有する固体撮像素子を提供することを目的とする。
本発明者等は、光選択透過フィルターの形成に有用な樹脂組成物について種々検討したところ、各種用途に適用可能な光選択透過フィルターを得るためには、耐光性、耐熱性の観点からフタロシアニン系色素を用いた樹脂組成物が有用であることに着目した。そして、色素と樹脂成分とを含む樹脂組成物において、色素としてフタロシアニン系色素を用いた場合、フタロシアニン系色素の存在形態によって可視光の長波長側(600nm以上)の吸収領域における吸収特性に違いが生じることを見いだした。具体的には、フタロシアニン系色素は平面性に優れる分子構造からなるため、単一分子として存在する場合と、会合した状態(会合分子)で存在する場合とで吸収極大ピークの位置が異なり、長波長側に単一分子由来のピーク(吸収極大)が、短波長側に会合分子由来のピーク(吸収極大)が各々表れることを見いだした。そして、樹脂組成物中のフタロシアニン系色素の会合状態を、分子の電子状態によってコントロールできることを見いだし、フタロシアニン環構造のα位(1,4,8,11,15,18,22,25位)の炭素原子にフッ素原子が結合し、かつβ位(2,3,9,10,16,17,23,24位の位置)の炭素原子のうち特定数以上の炭素原子に電子求引性基を有するフェノキシ基が結合した構造とすると、該色素が会合分子構造をとりやすくなることに起因して、600nmに近い短波長域での吸収ピークが高くなり、例えば反射膜と組み合わせた場合に入射角依存性を充分に低減できる光選択透過フィルターが得られることを見いだした。
このような樹脂組成物の特異な光学特性は、光選択透過フィルターに適用する場合に、中でも撮像レンズ等のレンズ用光選択透過フィルターに適用する場合に特に有効である。また、光選択透過フィルターが有する吸収シートとして、このような樹脂組成物により形成される樹脂層を含む構成の吸収シートを用いると、反射膜(反射層)を更に含む場合に、入射角依存性を長期にわたり安定して低減できる光選択透過フィルターとなることも見いだし、更に、基材にガラスを用いる場合と比較して光選択透過フィルター全体を大幅に薄膜化できることも見いだした。そして、このような光選択透過フィルターが、固体撮像素子等の光学用途やオプトデバイス用途等、中でも特にレンズ用途に極めて有効な光選択透過フィルターであることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、色素及び樹脂成分を含み、光選択透過フィルターの形成に用いられる樹脂組成物であって、該色素は、下記一般式(I):
Figure 0006054649
(式中、Mは、金属原子を表す。X〜X及びY〜Yは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいOR基を表す。OR基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。但し、X〜X及びY〜Yのうち少なくとも4個は、同一又は異なって、電子求引性基を有するフェノキシ基を表す。)で表されるフタロシアニン系色素である光選択透過フィルター形成用樹脂組成物である。
本発明はまた、吸収シートを含む光選択透過フィルターであって、該吸収シートは、上記光選択透過フィルター形成用樹脂組成物から形成される樹脂層を含む光選択透過フィルターである。
本発明は更に、上記光選択透過フィルターに用いられる吸収シートでもある。
本発明はそして、上記記載の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。
〔光選択透過フィルター形成用樹脂組成物〕
本発明の光選択透過フィルター形成用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物とも称す)は、光選択透過フィルターの形成に用いられる樹脂組成物であり、色素及び樹脂成分を含むものであるが、色素と樹脂成分とを含む樹脂組成物中に色素が分散又は溶解された形態であることが好適である。
なお、色素及び樹脂成分としては、各々、1種又は2種以上を使用することができ、また、上記樹脂組成物は、必要に応じて更にその他の成分を1種又は2種以上含むものであってもよい。
−色素−
上記色素は、上述した一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素(以下、特定色素とも称す)である。上記樹脂組成物がこのような特定色素を含むことにより、光選択透過フィルターに求められる分光特性を充分に満足することが可能になるとともに、得られる光選択透過フィルターが、耐光性、耐熱性にも優れるものとなる。
上記一般式(I)において、X〜X及びY〜Yは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいOR基を表し、OR基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表すが、X〜X及びY〜Yのうち少なくとも4個は、同一又は異なって、置換基として電子求引性基を有するフェノキシ基を表す。ここで、OR基がアルコキシ基である場合、Rは、例えば、炭素数1〜20のアルキル基であることが好適である。より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基である。
上記OR基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルコキシカルボニル基(−COOR)、ハロゲン基(ハロゲン原子)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO)等の電子求引性基;アルキル基(−R)等の電子供与性基;等が挙げられ、これらの1又は2以上を含んでいてもよい。
なお、アルコキシカルボニル基(−COOR)及びアルキル基(−R)を構成するRは、炭素数1〜8のアルキル基であることが好適である。アルコキシカルボニル基として好ましくは、メトキシカルボニル基又はメトキシエトキシカルボニル基であり、アルキル基として好ましくは、メチル基又はジメチル基である。
上記電子求引性基として好ましくは、アルコキシカルボニル基、クロル基(塩素原子)、ニトロ基又はシアノ基であり、より好ましくは、メトキシカルボニル基、クロル基、ニトロ基又はシアノ基である。
上記X〜X及びY〜Yは、上述したようにこれらのうちの少なくとも4個が電子求引性基を有するフェノキシ基を表すが、当該電子求引性基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、各フェノキシ基中の電子求引性基の数は特に限定されないが、例えば、1〜4個であることが好ましく、より好ましくは1又は2個である。なお、1個のフェノキシ基が2個以上の電子求引性基を有する場合、当該電子求引性基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、各フェノキシ基における電子求引性基の位置は特に限定されるものではない。
また上記X〜X及びY〜Yの一部が、電子求引性基を有するフェノキシ基以外の基である場合、当該基は、水素原子(H)、フッ素原子(F)、又は、置換基を有していてもよいOR基(但し、電子求引性基を有するフェノキシ基を除く)であればよい。中でも、フェノキシ基、電子供与性基を有するフェノキシ基、又は、フッ素原子(F)であることが好ましく、より好ましくはフッ素原子(F)である。なお、電子供与性基としてはアルキル基が好適である。
上記X〜X及びY〜Yとして好ましくは、X〜X及びY〜Yの全てが、同一又は異なって、電子求引性基を有するフェノキシ基を表すことである。これにより、上記特定色素の会合性がより高くなることに起因して、遮断したい波長域をシャープに遮断でき、かつ透過させたい波長域では高い透過率を示すという光選択透過性(遮断透過特性)をより一層発揮できる光選択透過フィルターを与えることができ、また、反射膜による入射角依存性をより大幅に低減することが可能になるため好適である。このように、上記一般式(I)におけるX〜X及びY〜Yの全てが、同一又は異なって、電子求引性基を有するフェノキシ基を表す形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記一般式(I)において、Mは、金属原子を表す。金属原子としては特に限定されず、例えば、銅、亜鉛、インジウム、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、溶解性、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。より好ましくは銅又は亜鉛である。銅を中心金属とするフタロシアニン系色素は、どのような樹脂成分(バインダー樹脂)に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。一方、亜鉛を中心金属とするフタロシアニン錯体(フタロシアニン系色素)は、樹脂成分に対する溶解性に優れ、400〜600nmの波長領域での高い光透過性と、600〜800nmの波長領域での高い光吸収性とを有する光選択透過フィルターが得られ易いため、特に好ましい。
上記特定色素はまた、600〜800nmの波長域に2つの吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜730nmに存在するものであることが好適である。つまり、吸収極大波長が600〜800nmの波長域に2つあり、そのうち少なくとも1つが600〜730nmに存在することが好ましい。このような吸収特性を有することで、遮断したい波長域をよりシャープに遮断でき、かつ透過させたい波長域では高い透過率を示すという光選択透過性により一層優れるものとなり、また、このような色素を用いた吸収シートを反射膜と組み合わせた際に、反射膜による入射角依存性をより大幅に軽減することが可能になる。
上記2つの吸収極大波長のうち、短波長側の波長をλA1、長波長側の波長をλA2とすると、λA1が、好ましくは730nm以下の波長域に存在することであり、より好ましくは700nm以下の波長域に存在することである。また、吸収極大波長λA1の下限は650nm以上であることが好ましい。なお、波長500nmにおける透過率が90%以上であり、かつ、最大吸収波長λA1における透過率が60%以下である色素を用いることが好ましい。最大吸収波長λA1における透過率は、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下、特に10%以下である。
色素の吸収極大波長は、通常の手法で吸収スペクトルを測定することで求めることができるが、別法として、色素の透過率スペクトルから求めることもできる。いずれの場合も溶媒分散法を用いることが好ましい。
溶媒分散法とは、色素を溶媒(例えば、クロロホルム、ジメチルアセトアミド)に溶解又は分散させて得た溶液(分散液を含む)を、1cm厚の透明石英セルに充填し、分光光度計(例えば、Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。測定モードを吸光度とすれば色素の吸収スペクトルが、測定モードを透過率とすれば色素の透過率スペクトルが得られる。測定時の色素の濃度は特に限定されないが、例えば、溶媒と色素との総量100質量%に対し、色素を0.000001〜0.01質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.00001〜0.001質量%とすることである。
上記特定色素はまた、樹脂膜評価法による吸光度特性を評価したときに、上記2つの吸収極大波長(λA1、λA2)において、これらのうち吸収率が最も大きいピークの波長(すなわち透過率が最も低いピークの波長)が、λA1であることが好適である。これにより、600nmに近い短波長側でシャープな透過吸収特性を示すことが可能になるため、光選択透過性に更に優れるものとなる。
また上記2つの吸収極大波長(λA1、λA2)での吸光度の比(AA2/AA1)は、小さければ小さいほど、λA1より短波長側の吸収波形がシャープになるため好適である。具体的には、0.6以下であることが好適である。(AA2/AA1)が0.6より大きいと、最大吸収波長より短波長側の吸収の立ち上がりがなだらかになるおそれがある。吸光度の比(AA2/AA1)として好ましくは0.6以下、より好ましくは、0.45以下である。また、(AA2/AA1)の下限値は0以上であることが好適である。
上記「樹脂膜評価法」とは、樹脂成分に分散又は溶解含有させた膜の状態で吸光度特性を評価する方法である。
「樹脂成分に分散又は溶解含有させた膜」とは、特定色素と樹脂成分とからなる膜であって、2つの吸収極大波長(λA1、λA2)での吸光度が評価できる条件(λA1、λA2における吸光度が分光光度計の測定限界を超えずに、吸光度を測定できる条件)を満足するよう、特定色素の含有割合及び膜の厚みが選択された膜であればよい。
上記樹脂膜評価法において、評価用の膜は、特定色素の含有割合が0.01〜15質量%の範囲、膜の厚みが0.1〜10μmの範囲から選択されることが好ましく、膜における特定色素の含有割合が3質量%、膜の厚みが3μmであることがより好ましい。
評価用の膜は、特定色素と樹脂成分とを含み(必要に応じて溶媒を含んでもよい)、透明な基材(ガラス、透明樹脂フィルム)に成膜(塗布、必要に応じて乾燥)することにより得ることができる。このようにして得られた膜付き基材の吸光度を測定することにより、当該色素の吸光度AA1、AA2、AA2/AA1を求めることができる。
ここで、特定色素と樹脂成分の組合せによっては、特定色素の含有割合及び膜の厚みを変えても、λA2の位置に吸収極大が観測されない場合もある。このような場合はλA1における吸光度が飽和せず吸光度を測定できる膜において、λA1における吸光度(極大値)AA1、及び、溶媒分散法で確認したλA2に対応する波長における吸光度をAA2とみなし、その比(AA2/AA1)を求めればよい。
なお、評価用の樹脂成分としては特に限定されないが、後述する本発明の樹脂成分として使用し得る樹脂成分の少なくとも1種を用いた膜において、上述した(AA2/AA1)比を満足する特定色素であれば、本発明の樹脂組成物に好適に用いることができる。評価用の樹脂成分としては、後述する溶剤可溶性樹脂であることが好ましい。評価用の樹脂成分として好ましい樹脂成分はまた、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂からなる群から選択される1種であることが好ましい。中でも、フッ素化芳香族ポリマー又はポリ(アミド)イミド樹脂がより好ましく、さらに好ましくは、ポリ(アミド)イミド樹脂であり、特に好ましくはポリイミド樹脂である。
吸光度は、例えば、島津製作所製:UV−1800(測定機械)を用いて測定することができる。
上記一般式(I)で表される化合物を得るには、例えば、特公平6−31239号公報等の従来公知方法により合成できる。具体的には、金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種と、下記一般式(II):
Figure 0006054649
(式中、X及びYは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいOR基を表し、OR基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。)で表されるフタロニトリル誘導体とを、無溶媒又は有機溶媒の存在下で、加熱して反応させることにより得ることが好適であり、中でも、有機溶媒中で反応させることが好ましい。フタロニトリル誘導体の環化反応は、特に制限されるものではなく、特公平6−31239号公報、特許第3721298号公報、特許第3226504号公報、特開2010−77408号公報等に記載された従来公知の方法を単独で又は適宜修飾して適用することができる。置換基及びOR基の具体的な形態は、上記一般式(I)に関して上述したとおりである。
上記一般式(II)において、X及びYとして好ましくは、これらのうち少なくとも1個が、電子求引性基を有するフェノキシ基を表すことである。より好ましくは、X及びYのいずれもが、同一又は異なって、電子求引性基を有するフェノキシ基を表すことである。
上記反応では、上記一般式(II)で表されるフタロニトリル誘導体として、X及びYのうち少なくとも1個が電子求引性基を有するフェノキシ基を表す形態の化合物を少なくとも使用することが好適である。なお、上記X及びYのいずれもが、電子求引性基を有するフェノキシ基以外の基を表す形態の化合物と、X及びYのうち少なくとも1個が電子求引性基を有するフェノキシ基を表す形態の化合物とを併用してもよい。
上記金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属(以下、金属化合物とも称する)としては、上記フタロニトリル誘導体と反応して上記一般式(I)で表される化合物が得られるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物;当該金属の、酸化バナジウム、酸化チタニル及び酸化銅等の金属酸化物;当該金属の、酢酸塩等の有機酸金属;当該金属の、アセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル等が挙げられる。具体的には、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、マグネシウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物(例えば、塩化バナジウム、塩化チタン、塩化銅、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化鉄、塩化インジウム、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化ガリウム、塩化ゲルマニウム、塩化マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛、ヨウ化コバルト、ヨウ化インジウム、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化ガリウム、臭化銅、臭化亜鉛、臭化コバルト、臭化アルミニウム、臭化ガリウム);一酸化バナジウム、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、一酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化マンガン、一酸化ニッケル、一酸化コバルト、三二酸化コバルト、二酸化コバルト、酸化第一銅、酸化第二銅、三二酸化銅、酸化バラジウム、酸化亜鉛、一酸化ゲルマニウム、及び二酸化ゲルマニウム等の金属酸化物;酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸亜鉛等の有機酸金属;アセチルアセトナート等の錯体化合物及びコバルトカルボニル、鉄カルボニル、ニッケルカルボニル等の金属カルボニル等が挙げられる。これらのうち、好ましくは金属、金属酸化物及び金属ハロゲン化物であり、より好ましくは金属ハロゲン化物であり、更に好ましくは、ヨウ化バナジウム、塩化バナジウム、ヨウ化銅及びヨウ化亜鉛であり、特に好ましくは、ヨウ化バナジウム、塩化バナジウム及びヨウ化亜鉛である。ヨウ化亜鉛を用いる場合、上記一般式(I)における中心金属は、亜鉛ということになる。
上記金属化合物と、上記一般式(II)で表されるフタロニトリル誘導体との反応を有機溶媒中で行う場合、有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、ベンゾニトリル等の不活性溶媒;ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも好ましくは1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、トリメチルベンゼン、ベンゾニトリルが、より好ましくはトリメチルベンゼン、ベンゾニトリルが使用される。溶媒を使用する際の有機溶媒の使用量は、式(II)で示されるフタロニトリル化合物の濃度が、通常、1〜50質量%、好ましくは10〜40質量%となるような量である。
上記反応に関し、反応温度は、原料の種類、溶媒の種類、その他の条件により必ずしも一定しないが、通常、100〜240℃、好ましくは130〜200℃である。反応時間も特に制限はないが、通常2〜24時間、好ましくは5〜20時間である。また、金属化合物を該フタロニトリル化合物4モルに対して、好ましくは0.8〜2.0モル、より好ましくは1.0〜1.5モルの範囲で仕込む。また、上記反応は、大気雰囲気中で行っても良いが、金属化合物の種類により、不活性ガス又は、酸素含有ガス雰囲気(例えば窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、又は酸素/窒素混合ガス等の流通下)で行われることが好ましい。
上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、濾過、洗浄、乾燥を行ってもよい。
上記樹脂組成物において、上記特定色素の濃度(含有量)としては、光選択透過フィルターの吸収シートの構成や樹脂層の厚み等によっても異なるが、例えば、樹脂成分及び色素の総量100質量%に対して、特定色素の濃度が0.001質量%以上であることが好適である。上記特定色素を用いることで、当該樹脂組成物から形成される樹脂層における色素濃度が高濃度であっても優れた耐光性を有する樹脂層を形成することが可能になる。より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。ただし、色素濃度が高すぎると透過させたい可視光領域における透過率を充分とするためには樹脂層をかなり薄くすることとなり、均一な膜厚で成膜が困難となる場合がある。このような観点から、20質量%以下であることが好適である。より好ましくは15質量%以下である。
本発明においては、必要に応じて、上述した特定色素とともに他の色素を併用することもできる。他の色素とは、上記特定色素(すなわち、上記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素)以外の色素であればよいが、600〜800nmの波長域に吸収極大を有するものが好適である。より好ましくは、650〜730nmの波長域に吸収極大を有するものである。上記他の色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。
上記他の色素はまた、上述した樹脂膜評価法により評価した場合に、上述した特定色素の最大吸収波長よりも長波長側に最大吸収波長を有する色素であることが好適である。これによって、反射膜(反射層)を更に含む光選択透過フィルターに用いた場合に、入射角依存性をより一層低減することが可能になる。より好ましくは、最大吸収波長が、上記特定色素の最大吸収波長よりも長波長側にあって、かつ650〜800nmの波長域にある色素であり、更に好ましくは、最大吸収波長が、上記特定色素の最大吸収波長よりも長波長側にあって、かつ680〜730nmの波長域にある色素である。
なお、上記他の色素の最大吸収波長における透過率は、60%以下であることが好ましい、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。
上記他の色素として具体的には、例えば、上述した特定色素以外のフタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、クロリン系色素、コリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、耐光性、耐熱性の観点からフタロシアニン系色素が好適である。
ここで、一般に色素の骨格によって吸光係数が異なり、様々な骨格の色素に対して質量比を規定することは不可能なため、上記他の色素と特定色素との含有量の比を規定することは困難であるが、例えば、上記他の色素として、特定色素の最大吸収波長よりも長波長側に最大吸収波長を有する色素(色素Bとも称す)を使用する場合であって、かつ色素Bが低会合のフタロシアニン系色素である場合、当該色素Bと上記特定色素との含有量の質量比(色素B/特定色素)は、例えば、80/20〜40/60とすることが好適である。この範囲内にあることで、より充分な吸収帯幅を有し、かつシャープな透過吸収特性を示し、しかも反射膜と組み合わせた場合に入射角依存性を充分に低減できるという本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。質量比(色素B/特定色素)としてより好ましくは、70/30〜50/50である。
なお、本発明では、上記特定色素及び色素Bのいずれにも該当しない色素を含んでいてもよいが、このような他の色素の含有量は、本発明による効果を充分に発揮させるため、色素の総量100質量%に対し、30質量%以下であることが好適である。より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは、当該他の色素を実質的に含まないことである。
上記樹脂組成物はまた、350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を含んでもよい。これにより、350〜400nm波長域の光(ほぼ紫光)に起因する光選択透過フィルター(及び吸収シート)の劣化を充分に抑制することができる。
上記350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を含む形態としては、上記特定色素が、更に350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物である形態であってもよいし、また、別途、350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を併用する形態であってもよい。後者の350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、TINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 326(BASF社製)等の紫外線吸収化合物の1種又は2種以上を使用することができる。
−樹脂成分−
上記樹脂組成物において、樹脂成分としては、色素を充分に溶解又は分散できる樹脂成分であることが好ましい。すなわち、上記色素は、樹脂組成物中に均一に分散又は溶解されてなることが好ましい。このような樹脂成分を適切に選択することにより、透過させたい波長域(例えば、可視領域)における高透過率と、遮断したい波長域(例えば、赤外領域)における高吸収性とを両立することが可能となる。
上記樹脂成分としては、例えば、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。このような樹脂成分は、色素の分散性が高いため、光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができるとともに、色素を高濃度で分散できるため、光選択透過フィルターの薄膜化も可能である。また、上記樹脂成分を用いると、後述する溶媒キャスト法によって光選択透過フィルターにおける樹脂層を形成(成膜)することができるため、樹脂層中に色素を高濃度で均一に分散できるとともに、比較的低温で樹脂層を形成することができる。
なお、光選択透過フィルターが有する、上記樹脂組成物により形成される樹脂層自体は、溶剤可溶性であっても不溶性であってもよい。
ここで、「溶剤可溶性樹脂」とは、有機溶剤に可溶な樹脂を意味し、例えば、ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドン100質量部に対し、1質量部以上溶解する樹脂であることが好適である。また、「溶剤可溶性樹脂原料」とは、溶剤可溶性の樹脂原料、すなわち樹脂原料であって溶剤可溶性であるものを意味し、例えば、ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドン100質量部に対し、1質量部以上溶解するものが好適である。また、「液状樹脂原料」とは、液状の樹脂原料、すなわち樹脂原料であって液状であるものを意味する。物が「液状である」とは、その物自体の粘度が、常温(25℃)において100Pa・s以下であることを意味する。粘度は、B型粘度計により測定することができる。
なお、「樹脂原料」には、樹脂の前駆体や該前駆体の原料、更に、樹脂を形成するための単量体(硬化性モノマー等)が含まれるものとする。
上記樹脂成分としては、上述したように、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料からなる群より選択される少なくとも1種が好ましいが、これらの中でも、溶剤可溶性樹脂を用いることが好適である。溶剤可溶性樹脂を用いると、溶剤可溶性樹脂原料や液状樹脂原料を用いた場合に比べて、耐光性に優れる。これは、溶剤可溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料よりも、分散した色素の吸収性能の劣化を引き起こしにくいためである。理由として、溶剤可溶性樹脂は、そのモノマーや前駆体から調整し、重合や反応を完結させている。更に精製を行う場合もある。こうして得られた溶剤可溶性樹脂には、色素の劣化、分解を促進させる未反応物、反応性末端、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等がほとんどないと考えられる。一方、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料は、このような色素の劣化、分解を促進させる因子が多く残っている。また、色素を分散させた状態で、色素の吸収性能や吸収スペクトルを保持したまま、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料の重合や反応を完結させることが難しい(未反応部位が多くなり、所望の物性も充分に得られない。)。そのため、同じ色素を分散させても、樹脂成分の違いにより、樹脂層の耐光性が異なる。したがって、耐光性の観点からは、少なくとも溶剤可溶性樹脂を用いることが好適である。
上記溶剤可溶性樹脂として具体的には、例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等が挙げられる。中でも、耐光性により優れる観点から、フッ素化芳香族ポリマー及び/又はポリ(アミド)イミド樹脂が好ましい。より好ましくは、ポリ(アミド)イミド樹脂であり、更に好ましくはポリイミド樹脂である。
上記溶剤可溶性樹脂はまた、架橋反応(硬化反応)することが可能な反応性基(例えば、エポキシ基やオキセタン環、エチレンスルフィド基等の開環重合性基や、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基及び/又は付加硬化性基)を有するものであってもよい。
上記樹脂成分として溶剤可溶性樹脂を用いる場合、該溶剤可溶性樹脂がそのまま、上記樹脂層を構成する樹脂成分となっていてもよいし、該溶剤可溶性樹脂が架橋反応等により変化したものが、上記樹脂層を構成する樹脂成分となっていてもよい。
なお、架橋可能な反応性基の量や成膜時の架橋反応をどの程度進めるかは特に限定されるものではないが、樹脂の溶剤可溶性が維持できる程度であることが好ましい。
上記フッ素化芳香族ポリマーとしては、少なくとも1以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合の群より選ばれた少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位により構成された重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子を有するポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドエーテル、ポリアミド、ポリエーテルニトリル、ポリエステル等が挙げられる。これらの中でも、少なくとも1つ以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合とを含む繰り返し単位を必須部位として有する重合体であることが好ましく、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位を含む、フッ素原子を有するポリエーテルケトンがより好ましい。中でも特に、フッ素化ポリエーテルケトン(FPEK)が好適である。
なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
Figure 0006054649
上記一般式(1−1)中、Rは炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。Zは2価の鎖又は直接結合を表す。x及びyは0以上の整数であり、x+y=1〜8を満たし、同一又は異なって、芳香族環に結合しているフッ素原子の数を表す。nは、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記一般式(1−2)中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。Rは、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。nは、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記一般式(1−1)において、x+yは2〜8の範囲内が好ましく、4〜8の範囲内がより好ましい。また、エーテル構造部分(−O−R−O−)が芳香族環に結合する位置としては、Zに対してパラ位であることが好ましい。
上記一般式(1−1)及び(1−2)において、R及びRは2価の有機鎖であるが、例えば、下記の構造式群(2)で表されるいずれか一つ、又は、その組み合わせの有機鎖であることが好ましい。
Figure 0006054649
上記構造式群(2)中、Y〜Yは、同一若しくは異なって、水素基又は置換基を表し、該置換基は、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアミノ基若しくはアリールチオ基を表す。
上記R及びRのより好ましい具体例としては、下記の構造式群(3)で表される有機鎖が挙げられる。
Figure 0006054649
上記一般式(1−1)において、Zは、2価の鎖又は直接結合していることを表す。当該2価の鎖としては、例えば、下記構造式群(4)(構造式(4−1)〜(4−13))で表される鎖であることが好ましい。
Figure 0006054649
上記構造式群(4)中、Xは、炭素数1〜50の2価の有機鎖であるが、例えば、上述した構造式群(3)で表される有機鎖が挙げられ、その中でもジフェニルエーテル鎖、ビスフェノールA鎖、ビスフェノールF鎖、フルオレン鎖が好ましい。
上記一般式(1−2)中のRにおいて、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基等が好適である。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
上記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−、m−又はp−トリル基、2,3−又は2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ピレニル基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記Rとしては、これらのうち、置換基を有していてもよい、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアミノ基が好ましい。但し、Rには、二重結合又は三重結合が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
上記一般式(1−2)中のRにおける置換基としては、上述のような炭素数1〜12のアルキル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;シアノ基、ニトロ基、カルボキシエステル基等が好適である。また、これら置換基の水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよい。これらの中でも、好ましくは、ハロゲン原子、水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びカルボキシエステル基である。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂とは、狭義のポリイミド樹脂(イミド結合を含み、アミド結合を含まない樹脂を意味し、ここでいうアミド結合とは、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合を意味する。)、及び、ポリアミドイミド樹脂(アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合とイミド結合とを含む樹脂を意味する。)のいずれをも包含する。
なお、ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である。)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応による形成される。
ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。
上記溶剤可溶性樹脂としては、ポリイミド樹脂におけるイミド結合含有率(イミド化反応によりイミド化し得るアミド結合数とイミド結合数の合計量100モル%に対するイミド結合数の割合)が80モル%以上であるポリイミド樹脂が好ましい。より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上である。
ここで、ポリアミドイミド樹脂とは、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合とイミド結合とを含むが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合を含む場合、アミド結合数(脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合数と脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合数との和)とイミド結合数との合計量100モル%に対する、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合の含有率は、20モル%未満が好ましい。より好ましくは10モル%未満、更に好ましくは5モル%未満、特に好ましくは2モル%未満である。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂は、多価カルボン酸化合物と、多価アミン化合物及び/又は多価イソシアネート化合物との反応により得られるポリ(アミド)イミド樹脂の原料(ポリ(アミド)イミド前駆体とも称す。)を、イミド化反応して得ることができる。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが好適である。より好ましくは、全重量100%中の芳香環の重量が65%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは30%以下である。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂としては、イミド結合を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(5):
Figure 0006054649
(式中、Rは、同一又は異なって、有機基を表す。)で表される繰り返し単位を有する化合物が好適である。
上記一般式(5)におけるRとしては、2価の有機基が好ましく、中でも、炭素数2〜39の2価の有機基が好ましい。また、当該有機基は1種又は2種以上の炭化水素骨格を含むものが好ましい。炭化水素骨格としては、脂肪族鎖状炭化水素、脂肪族環状炭化水素又は芳香族炭化水素であることが好ましい。当該有機基はまた、複素環骨格を有するものであってもよい。
上記一般式(5)におけるRとしてはまた、上記の炭化水素骨格及び/又は複素環骨格から選ばれる、同一又は異なる2種以上を有し、それらが炭素―炭素結合を介して、又は、炭素―炭素結合とは異なる結合基を介して、結合した骨格を含むものが好ましい。結合基としては、例えば、−O−、−SO−、−CO−、−Si(CH−、−CO−、−S−等が挙げられる。
なお、上記一般式(5)で表される繰り返し単位におけるそれぞれのRとしては、同一であっても異なるものであってもよい。
上記Rで表される有機基は窒素原子に直接結合していてもよいし、結合基として、−O−、−SO−、−CO−、−CH−、−C(CH−、−Si(CH−、−CO−、−S−等を有していてもよい。
なお、一般式(5)におけるシクロヘキシル環における水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいが、無置換(全て水素原子である形態)であるものが好ましい。
上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂の好ましい具体例としては、例えば、三菱ガス化学社製のネオプリムL−3430(厚さ50μm、100μm、200μm等)等が挙げられる。なお、この製品はフィルム形状であるが、有機溶剤に可溶であるので、上記溶剤可溶性樹脂として好ましく使用される。
上記溶剤可溶性樹脂原料又は液状樹脂原料としては、例えば、エポキシ樹脂の原料となるエポキシ化合物、ビニル重合体樹脂の原料であるビニル系化合物((メタ)アクリル系化合物、スチレン系化合物等)、ポリ(アミド)イミド前駆体等が挙げられる。好ましくは、エポキシ化合物、ビニル系化合物である。
上記エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)を含む硬化性組成物の硬化物である。硬化物の形態としてはエポキシ化合物をカチオン硬化触媒の存在下で光及び/又は熱硬化してなる形態、エポキシ化合物を付加的硬化剤と反応させることにより得られる硬化物の形態等が挙げられる。後者において硬化反応促進のため従来公知の硬化促進剤を併用することもできる。付加的硬化剤としては、例えば、酸無水物、多価フェノール化合物、多価アミン等が例示されるが、中でも酸無水物が好ましい。
上記エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物等が好適であり、例えば、大阪ガスケミカル社製のフルオレンエポキシ(オンコートEX−1);ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エポキシ化合物(エピコート828EL);ジャパンエポキシレジン社製の水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(エピコートYX8000);ダイセル工業社製の脂環式液状エポキシ化合物(セロキサイド2021)等が好ましく使用できる。
なお、本明細書中、エポキシ基とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む)を含むものを意味する。
上記エポキシ化合物を含む硬化性組成物は、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むことが好適である。可撓性成分を含むことにより、成形時や基板、型等からはずすときに割れない、形が崩れない、剥がれやすい、柔軟性がある等の一体感のある樹脂組成物とすることができる。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
上記ビニル重合体樹脂とは、重合原料としてビニル系化合物を(共)重合して得られる重合体であり、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン樹脂等が例示される。
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物((メタ)アクリロイル基含有化合物又は(メタ)アクリル系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、スチレン樹脂とは、スチレンやジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー(スチレン系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、アクリル−スチレン樹脂とは、(メタ)アクリロイル基含有化合物及びスチレン系モノマーを含む硬化性組成物の硬化物である。上記ビニル重合体樹脂の中でも、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂が好ましい。
上記(メタ)アクリロイル基含有化合物として好ましくは、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が例示される。(メタ)アクリレートモノマーを(共)重合した(メタ)アクリレート(共)重合体(ただし(メタ)アクリロイル基を有する)も好適に使用できる。フィルム化を容易にできる点で、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート(共)重合体等の重合性オリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーとを含む組成物をアクリル樹脂原料として用いることが好ましい。
上記アクリル−スチレン樹脂原料としては、上記アクリル樹脂原料の好適な形態において更にスチレン系モノマーを用いた組成物が好ましい。
上記ポリ(アミド)イミド前駆体とは、ポリ(アミド)イミド樹脂を形成するための原料、すなわちイミド化反応に供される化合物であり、例えば、ポリアミック酸等が好適である。具体的には、例えば、日立化成工業社製のHPC−7000−30等が好ましく使用される。
−その他の成分−
上記樹脂組成物は、上述したように色素及び樹脂成分を含むものであるが、更に必要に応じて、その他の成分を含むものであってもよい。その他の成分としては、上述した他の色素等が挙げられるが、その他の成分として、金属酸化物等の無機成分を含む場合、その含有量は、可視光に対する透明性に優れる観点から、樹脂組成物100質量%中に50質量%未満であることが好適である。より好ましくは20質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、特に好ましくは1質量%未満である。最も好ましくは、上記樹脂層を形成する樹脂組成物が、無機成分を実質的に含まないことである。
−樹脂組成物の製造方法−
上記樹脂組成物は、上述したフタロシアニン系色素及び樹脂成分を必須とし、必要に応じてその他の成分を含んでもよいが、その調製方法は特に限定されるものではない。これらの成分を通常の手法で混合することにより得ることができる。例えば、色素に、樹脂成分及び必要に応じて溶媒成分を添加し、混合・溶解することにより得ることができる。
〔光選択透過フィルター〕
本発明はまた、吸収シートを含む光選択透過フィルターであって、該吸収シートは、上述した本発明の光選択透過フィルター形成用樹脂組成物から形成される樹脂層を含む光選択透過フィルターでもある。
なお、吸収シート及び樹脂層は、それぞれ1又は2以上含んでいてもよい。
−吸収シート−
上記光選択透過フィルターにおける吸収シートは、上記光選択透過フィルター形成用樹脂組成物から形成される樹脂層を有する吸収シート(フィルム形状を含む)である。このような吸収シートは、シャープな透過吸収特性を有し、例えば反射膜と組み合わせることで、視野角依存性(入射角依存性とも称す)が充分に低減される光選択透過フィルターを与えることができるうえ、耐光性や耐熱性にも優れるものである。また、吸収シートを反射膜として好適な光学多層膜と組み合わせると、光学多層膜の層数を減らすことができ、該多層膜における応力を緩和できるため、多層膜のクラックや割れを充分に防止することもできる。このような本発明の光選択透過フィルターに用いられる吸収シートもまた、本発明の1つである。
上記吸収シートの構成(形態)は、樹脂層(吸収層)を含む限り特に限定されず、必要に応じて更に他の層を含むものであってもよい。中でも、支持体を更に有することが好ましい。吸収シートを支持体と樹脂層(吸収層)とを含む構成とすることで、色素の分散が困難な支持体であっても、この表面に樹脂層をコートすることによって本発明の吸収シートとしての効果を付与することができる。また、樹脂層の厚みを変更することで吸収特性をより制御することもでき、また、樹脂層を極薄コートすることによって吸収シートの膜厚を支持体の膜厚とほとんど変えずに本発明の効果を付与することもできるし、樹脂層を支持体の厚み調整に利用することもできる。
上記吸収シートの形態としてより好ましくは、支持体の一方又は両面に樹脂層が形成された形態であり、更に好ましくは、支持体の両面に樹脂層が形成された形態である。また、樹脂層を支持体で挟み込んだ吸収シートとしてもよい。
なお、吸収シートを構成する樹脂層や、支持体等の他の層は、各々、一層又は二層以上であってもよい。
上記吸収シートの厚みは、1mm以下であることが好ましい。これにより、本発明の光選択透過フィルターを充分に薄膜化することができ、光学部材等の低背化要求により応えることができる。より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下、特に好ましくは200μm以下、最も好ましくは150μm以下である。また、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは40μm以上である。
なお、上記吸収シートが支持体を含む場合、該支持体の厚みは120μm以下であることが好ましい。
上記吸収シートにおいて、樹脂層は、上述した本発明の光選択透過フィルター形成用樹脂組成物から形成されるものであるが、当該樹脂組成物中に色素が分散又は溶解された形態の樹脂組成物により、樹脂層が形成されることが好適である。これにより、色素が樹脂層中により均一に分散又は溶解されてなる樹脂層を得ることができる。
上記樹脂層の膜厚(厚み)に関し、本発明では、上述した光選択透過フィルター形成用樹脂組成物を用いることで薄膜化が可能となる。厚み方向からの水分等の浸入、拡散が抑制され易い点からも薄膜化できることは耐光性において有利となる。上記樹脂層の膜厚(厚み)は、5μm以下であることが好適である。これにより、光選択透過フィルターを充分に薄膜化することができ、光学部材等の低背化要求に応えることができる。より好ましくは3μm以下である。また、0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは1μm以上である。
上記樹脂層は、可視光の短波長域から紫外線領域において透過性に優れるものであってもよいが、吸収シートと紫外線領域を反射する反射膜とを組み合わせた紫外線カットフィルターとする場合においては、反射膜による入射角依存性を軽減し易い点から、350〜400nm波長域における樹脂層の透過率の最小値が20〜80%であることが好ましい。同様の理由から吸収シートにおいて350〜400nm波長域における透過率の最小値が20〜80%であることが好ましい。
上記樹脂層はまた、600〜800nmの波長域に吸収極大波長を少なくとも1つ有し、該吸収極大波長が600〜730nmに存在することが好ましく、該吸収極大波長が650〜730nmに存在することがより好ましい。また、最も透過率が低いピークの波長(すなわち、最大吸収波長)が、600〜730nmであることが好ましい。最大吸収波長は、より好ましくは、730nm以下の波長域に存在することであり、更に好ましくは、700nm以下の波長域に存在することである。最大吸収波長はまた、650nm以上の波長域に存在することがより好ましい。
上記樹脂層として具体的には、例えば、600〜800nmにおける吸収極大波長が1つであり、該吸収極大波長が600〜730nmに存在する態様(i);600〜800nmの波長域に2つ又はそれ以上の吸収極大波長を有し、その少なくとも1つの吸収極大波長が600〜730nmに存在する態様(ii);が好ましく挙げられる。
上記態様(i)及び態様(ii)において、600〜730nm(好ましくは650〜730nm)に現れる吸収極大(最大吸収)は、上記特定色素の吸収率が最も大きいピーク(吸収極大波長λA1)に由来する吸収であることが好ましい。また、態様(ii)において、他の吸収極大のうちの一つは、上記特定色素の波長λA2を吸収極大波長とする吸収ピークに由来するものであることが好ましい。
上記樹脂層において、特定色素の波長λA1を吸収極大波長とする吸収ピークに由来する吸収極大における吸光度をAbs(Q1)、特定色素の波長λA2を吸収極大波長とする吸収ピークに由来する吸収極大における吸光度をAbs(Q2)としたとき、これらの吸光度の比(Abs(Q2)/Abs(Q1))は、0.61以下であることが好ましい。より好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.50以下、特に好ましくは0.45以下である。
なお、上記態様(i)においては、特定色素の波長λA2を吸収極大波長とする吸収ピークに由来する吸収が、樹脂層の吸収スペクトル上では実質、観測されないわけであるが、波長λA2に対応する波長(通常は、λA2にほぼ一致)における吸光度Abs(Q2)’を用いて、吸光度Abs(Q1)に対する比(Abs(Q2)’/Abs(Q1))が、上記比(Abs(Q2)/Abs(Q1))と同様の範囲であることが好ましい。
上記樹脂層において、600〜730nmにおける最大吸収波長での透過率は60%以下であることが好ましい。より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。
これらの吸収極大波長は、通常の手法で吸収スペクトルを測定することで求めることができるが、別法として、透過率スペクトルから求めることもできる。
上記樹脂層はまた、500nmにおける透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。
上記樹脂層の吸収透過特性として特に好ましくは、波長630nmにおける透過率(T630)が50%以上で、かつ波長700nmにおける透過率(T700)が50%以下を満たすことである。これにより、より一層シャープな遮断特性を示すことができるため、好適である。T630としてより好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上であり、またT700としてより好ましくは45%以下、更に好ましくは40%以下である。
上記樹脂層は更に、600〜800nmにおける吸収帯の50%透過幅(50%透過率を示す短波長側の波長と、長波長側の波長との差の絶対値)が10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上である。
上記樹脂層が上述した吸収特性を有することで、光選択透過性により一層優れるものとなり、また、このような樹脂層を含む吸収シートを反射膜と組み合わせた際に、反射膜による入射角依存性をより大幅に軽減することが可能になる。
なお、上記樹脂層を含む吸収シート、及び/又は、該吸収シートを含む光選択透過フィルターもまた、上述したような樹脂層と同様の吸収透過特性(吸収極大波長や上記各波長での透過率等)を示すことが好適である。
上記樹脂層はまた、該樹脂層の可視光領域におけるヘイズが10%以下であることが好ましい。より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。また、この形態において、該樹脂層の可視光500nmにおける透過率は60%以上であることが好適である。より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。
なお、上記吸収シート及び光選択透過フィルターについても、可視光領域におけるヘイズ及び可視光500nmにおける透過率が、夫々上述した範囲にあることが好ましい。
透過率は、分光光度計(例えば、Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。透過率の測定に供する樹脂層及び吸収シートの厚みは、1〜200μmとすることが好ましい。
上記吸収シートは、上述したように支持体を更に有することが好適であるが、支持体としては、フィルム形状のもの(支持体フィルム)が好ましい。
上記支持体としては、透明性に優れる樹脂又はガラスを用いることが好適である。機械的強度に優れる、特に薄膜化しても機械的強度に優れる吸収シートとなり易い点から、好ましい支持体は樹脂である。具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、シクロオレフィン樹脂等を用いることができる。これらの中でも、反射層を蒸着形成する際の耐熱性に優れる点で、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂及び/又はアクリル樹脂が好ましい。より好ましくは、ポリ(アミド)イミド樹脂を少なくとも用いることである。
上記支持体(好ましくは支持体フィルム)の材質と、樹脂層に含まれる樹脂成分との好適な組み合わせとしては、例えば、支持体フィルム/樹脂成分として、ポリ(アミド)イミド樹脂/ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリ(アミド)イミド樹脂/アクリル樹脂、ポリ(アミド)イミド樹脂/フッ素化芳香族ポリマー、ポリアミド樹脂/アクリル樹脂、アラミド樹脂/アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂/アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリ(アミド)イミド樹脂/ポリ(アミド)イミド樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリイミド樹脂/ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂/ポリアミドイミド樹脂、又は、ポリアミドイミド樹脂/ポリアミドイミド樹脂であり、更に好ましくは、ポリイミド樹脂/ポリイミド樹脂である。
上記吸収シートの形成方法としては特に限定されず、例えば、樹脂層を形成する樹脂組成物を、支持体表面(又は、支持体と樹脂層との間に他の層を有する場合は、当該他の層の表面)に塗布し、乾燥又は硬化することにより形成する方法(塗布法又はコーティング法と称す)や、支持体に対して、樹脂組成物から形成された樹脂フィルムを熱圧着することにより形成する方法の他、練込法等も挙げられる。これらの中でも、支持体と樹脂層とを有する吸収シートを得る場合には、塗布法を採用することが好ましい。すなわち上記樹脂層は、塗布法によって形成された層であることが好ましく、これによって上記樹脂層と支持体等との密着性がより充分なものとなる。なお、支持体を有しない吸収シートを得る場合にも、塗布法を用いることが好ましく、例えば、仮の基材に、樹脂層を形成する樹脂組成物を塗布した後、該基材から剥離することにより当該吸収シートを得ることができる。
上記塗布法の中でも好ましくは、溶媒キャスト法であり、このように上記樹脂層が溶媒キャスト法によって形成された層である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。溶媒キャスト法を用いると色素をより均一に分散できるため、光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができ、好適である。また、色素を高濃度で分散可能であるため薄膜化が可能であり、固体撮像素子等の部材の低背化要求により応えることもできる。更に、比較的低温で樹脂層を形成することができるため、比較的耐熱性の低い色素も使用することができる。一方、練込法においては、樹脂を高温(例えば、200℃以上)で溶融して用いることになるため、耐熱性の低い色素は分解してしまい、充分な光吸収性が得られないおそれがある。また、色素の分散性も充分に高くならないおそれがある。
上記溶媒キャスト法においては、溶媒に、樹脂層を形成するための樹脂組成物を溶解して得られる溶液を、支持体上に塗布・乾燥(硬化)することにより、樹脂層を製膜(成膜)することが好ましい。また、樹脂成分として液状樹脂原料を用いる場合には、該樹脂原料に直接、色素を分散させてもよいし、該樹脂原料を溶媒で希釈したうえで色素を分散させてもよい。
上記溶媒(有機溶剤)としては、上記樹脂層を形成するための樹脂組成物を溶解できるものであれば特に限定されず、樹脂成分等の種類に応じて適宜選択可能であるが、例えば、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(より具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプチルエーテル等のエーテル類;等が好適である。より好ましくは、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミドである。
上記溶媒の使用量としては、上記樹脂組成物の総量100質量部に対して、150質量部以上であることが好ましく、また、1900質量部以下が好ましい。より好ましくは、200質量部以上であり、また、1400質量部以下である。上記範囲とすることにより、例えば、色素濃度の高い樹脂層が得られ易い。
−反射膜−
上記光選択透過フィルターはまた、反射膜(反射層とも称す)を含むことが好適である。これにより、光選択透過性により優れ、光遮断特性の入射角依存性が充分に低減され、かつ充分な薄膜化を実現することが可能な光選択透過フィルターとなり得る。このように、上記光選択透過フィルターが更に反射膜を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記反射膜としては、多層からなる膜であることが好適である。すなわち上記反射膜は、光学多層膜であることが好ましい。また、光学多層膜としては、耐熱性に優れる点で、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜等が好適である。無機多層膜としては、樹脂層や支持体、その他の機能性材料層の上に、真空蒸着法やスパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜であることが好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜であることも好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。これらの中でも、無機多層膜が好適である。
上記無機多層膜としては、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜が好適である。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
上記誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みがこの範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等によって、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより、誘電体多層膜を形成することができる。
上記無機多層膜等の反射膜は、上記方法等により好適に形成することができるが、蒸着によって光選択透過フィルターが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性をより一層小さくするために、次の方法を用いることができる。すなわち具体的には、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、光選択透過フィルターの基材となる吸収シートに該蒸着層を転写して反射膜を形成する反射膜の転写方法が好適である。この場合、吸収シートには、接着層を形成しておくことが好ましい。
また上記吸収シートが有機材料、具体的には樹脂組成物により形成される場合には、未硬化又は半硬化状態の吸収シート(樹脂組成物)に誘電体層等を蒸着した後、吸収シートを硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、光選択透過フィルターの変形(カール)をより充分に抑制することができる。
このように上記吸収シートへの反射膜(好ましくは光学多層膜、より好ましくは無機多層膜)の形成には、蒸着法を用いることが好適であるが、蒸着温度は、100℃以上とすることが好適である。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このような高温で蒸着すると、無機膜(無機多層膜を構成する無機膜)が緻密で硬くなり、種々の耐性が向上し、歩留りが向上する等の利点がある。そのため、このような蒸着温度に耐える吸収シートや色素を用いることは、非常に意味がある。また、このような高温での蒸着には、吸収シートを構成する樹脂層又は支持体フィルムとして、線膨張係数の低い樹脂層又は支持体フィルムを用いることが好適である。これにより、無機・有機の線膨張係数の差による無機層クラックをより抑制することができる。また、線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムを用いると、高温で蒸着できるだけでなく、低温で蒸着したとしても、無機膜との線膨張係数の差が小さいため、光選択透過フィルターを有する固体撮像素子を製造する場合等に採用されるリフロー工程等の製造工程での加熱環境や過酷な使用環境においても、無機・有機の線膨張係数の差による無機層クラックが生じない。
上記線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムとしては、線膨張係数が60ppm以下のものが好ましい。より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。
上記線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムとして具体的には、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等が好適であり、上記樹脂層又は支持体フィルムが、これらからなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、樹脂を延伸する;無機微粒子等を分散させる;ガラスクロスを用いる;架橋密度を上げる;コンポジット化する;結晶化させる;等によっても線膨張係数を低下させることができる。
上記反射膜は、上記吸収シートの少なくとも一方の表面に形成されてなることが好適である。反射膜は、上記吸収シートの一方の表面のみに形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよいが、両面に形成されることが好ましい。これにより、本発明に係る光選択透過フィルターの反りや反射膜の割れを充分に低減することができる。なお、上記吸収シートが樹脂層と支持体とからなる場合、反射膜は、樹脂層の表面に形成されることが好適である。特に吸収シートの両面に無機多層膜からなる反射膜が形成され、かつ樹脂層表面は、支持体又は無機多層膜からなる反射膜と密着している形態が好ましい。このような形態の光選択透過フィルターは耐光性、耐熱性に特に優れたものとなる。
また他の好ましい形態として、上記吸収シートとは異なる樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に反射膜が形成され、更に該反射膜の表面に、上記吸収シートが形成される形態も挙げられる。すなわち、樹脂フィルムの表面に、反射膜、上記吸収シートの順に積層されてなる形態である。反射膜は樹脂フィルムの両面に設けられることが好ましい。その場合、上記吸収シートは、一方の反射膜の表面に積層されていても、2つの反射膜の表面に積層されていてもよい。この場合、樹脂フィルムは、上述した支持体フィルムと同様のものを使用することができ、好適な形態についても支持体フィルムの場合と同様である。
上述したように上記反射膜は光学多層膜であることが好ましいが、その積層数は、上記吸収シートの一方の表面にのみ上記光学多層膜を有する場合は、10〜80層の範囲が好ましく、より好ましくは25〜50層の範囲である。一方、上記吸収シートの両面に上記光学多層膜を有する場合は、上記光学多層膜の積層数は、吸収シート両面の積層数の合計として、10〜80層の範囲が好ましく、より好ましくは25〜50層の範囲である。
また、上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、2〜8μmである。反射膜が上記吸収シートの両面に形成される形態においては、両面の反射膜の合計の厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターは、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の1つである赤外線カットフィルターの場合、紫外線を遮蔽する機能等の赤外線カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外線カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。
このように本発明の光選択透過フィルターが他の機能を有する形態においては、上記吸収シートの一方の表面に反射膜を形成し、他方の表面に他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。機能性材料層は、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記吸収シート上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を上記吸収シートに接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を上記吸収シートに塗布、乾燥して、製膜することによっても得ることができる。
上記光選択透過フィルターはまた、厚み(上記吸収シートと反射膜等の他の層との合計の厚み)が1mm以下であることが好ましい。光選択透過フィルターの厚みとは、該光選択透過フィルターの最大厚みをいう。より好ましくは、薄膜化要求に対応し得る点で、200μm以下であり、更に好ましくは150μm以下、特に好ましくは120μm以下、最も好ましくは60μm以下である。また、耐リフロー性、特に260℃の温度における耐熱性に優れる点で、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上である。また、光選択透過フィルターの厚みの範囲は、1〜150μmであることが好ましく、より好ましくは10〜120μm、更に好ましくは30〜120μm、特に好ましくは30〜60μmである。
上記光選択透過フィルターの厚みを1mm以下とすることにより、光選択透過フィルターをより小型化、軽量化することができ、種々の用途に好適に用いることができる。特に、光学部材等の光学用途において好適に用いることができる。光学用途においては、他の光学部材と同様に光選択透過フィルターも小型化、軽量化が強く求められている。本発明の光選択透過フィルターは、厚みを1mm以下とすることが可能であるため、薄膜化をより達成でき、特に撮像レンズ等のレンズユニットに用いた場合に、レンズユニットの低背化を実現することができる。言い換えると1mm以下の薄い光選択透過フィルターを光学部材として用いた場合に、光路を短縮することができ、該光学部材を小さくすることができる。具体的には、カメラモジュールにおいては、レンズと光選択透過フィルターとシーモスセンサーとを有することとなる。
図1及び図2に、カメラモジュールの一例を、模式的に示す。なお、これらの図は、エレクトロニックジャーナル第81回テクニカルセミナー(Electronic Journal 第81回 Technical Seminar)資料を参照した。
図1に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図2に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは110%以下、更に好ましくは105%以下である。
本発明の光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減するものである。低減させる光としては、10nm〜100μmの間のものであればよく、用いる用途により選択することができる。低減させる光の波長に応じて赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター、赤外・紫外線カットフィルター等とすることができるが、中でも、650nm〜10μmの赤外光と200〜350nmの紫外光とを低減し、それ以外の光を透過するものであることが好ましい。すなわち、上記光選択透過フィルターは赤外・紫外線カットフィルターであることが好ましい。
赤外線カットフィルターは、赤外線領域である650nm〜10μmの波長を有する光のうち、いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては、650nm〜2.5μm、650〜1μm又は800nm〜1μmであることが好適である。これらの範囲の波長の少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた、上記赤外線カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては、近赤外線領域である650nm〜1μmであることがより好ましい。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は、上述と同様であることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外線カットフィルターである形態においては、650〜1000nmの赤外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。その他の波長域の透過率は、75%以上であることが好ましいが、フィルターの用途に応じて特定の波長域の透過率のみが高いものであってもよい。例えば、上記赤外線カットフィルターをカメラモジュールとして用いる場合には、赤外光の透過率が5%以下であり、可視光(400〜600nm)の透過率が80%以上であることが好適である。より好ましくは85%以上である。また、可視光の中でも450〜550nmの波長域の光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好適である。なお、上記赤外線カットフィルターにおいては、その他(赤外線領域以外)の波長の透過率としては、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、波長が400〜600nmにおける光の透過率が80%以上であり、かつ800〜1000nmにおける透過率が5%以下の赤外線カットフィルターであることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
本発明の光選択透過フィルターが紫外線カットフィルターである形態においては、200〜350nmの紫外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。その他の波長域の透過率は、75%以上であることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外・紫外線カットフィルターである形態においては、650nm〜10μmの赤外光と200〜350nmの紫外光とを選択的に5%以下に低減するものが好ましく、その他の波長域の透過率は、75%以上であることが好ましい。
上記光選択透過フィルターとして好ましくは、上記色素及び樹脂成分を含む樹脂層を有する吸収シートの少なくとも一方の表面に、反射膜が形成されてなる形態であるが、この構成によって、光遮断特性の入射角依存性をより充分に低減することができる。
ここで、光遮断特性の入射角依存性は、例えば、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて、入射角を変えた透過率(例えば0°、20°、25°、30°等。入射角0°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される透過率であり、入射角20°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される透過率である。)を測定し、そのスペクトル変化量により評価できる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、吸収層の吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
上述したように、本発明の光選択透過フィルターは、耐光性及び光選択透過性に特に優れ、光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができるとともに、充分な薄膜化が可能であるため、自動車や建物等のガラス等に装着される熱線カットフィルター等として有用であるのみならず、カメラモジュール(固体撮像素子ともいう)用途における光ノイズを遮断し視感度補正するためのフィルターとしても有用である。中でも、本発明の光選択透過フィルターは、薄型化・軽量化が進むデジタルスチルカメラや携帯電話用カメラ等のカメラモジュールに用いられるフィルターとして有用である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、固体撮像素子(カメラモジュール)用光選択透過フィルターであることが好適である。
〔固体撮像素子〕
固体撮像素子は、通常、レンズユニット(撮像レンズ)部、光選択透過フィルター、及び、CCDやCMOS等のセンサー部を備えるが、本発明の光選択透過フィルターを用いた固体撮像素子は、通常、レンズユニット(撮像レンズ)部と、CCDやCMOS等のセンサー部との間に配置される。このように本発明の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子もまた、本発明の1つである。通常、反射型の光選択透過フィルターを用いた固体撮像素子では、入射角依存性に起因する影響(入射角による色むらの発生等)を抑制するために、多数のレンズを使用してレンズユニット部を構成するが、本発明の固体撮像素子では、上述した光選択透過フィルターを用いることによって、入射角依存性に起因する影響が充分に排除されるため、レンズユニット部を構成するレンズの枚数を少なくすることができ、薄型化・軽量化がより実現されることになる。
なお、レンズユニット部については、国際公開第2008/081892号パンフレットに記載の形態が好ましく採用できる。
上記固体撮像素子として具体的には、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等が挙げられる。このように本発明の光選択透過フィルターを用いてなる、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、及び、表示素子もまた、本発明の好適な形態に含まれる。
本発明の光選択透過フィルターは、上述の構成よりなり、所望の波長の光を効果的に遮断することができるとともに、光遮断特性の入射角依存性が充分に低減された光選択透過フィルターである。したがって、本発明の光選択透過フィルターを用いた固体撮像素子(カメラモジュール)は、反射型フィルターを用いることにより課題となった入射角による色むらの発生が抑制された画像を取り込むことができる。また、充分な薄膜化も可能であるため、薄型化・軽量化が求められる用途において特に好適に用いることができる。具体的には、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途に好適に用いることができ、特に、撮像レンズ等のレンズ用光選択透過フィルターとして有用であり、中でも、カメラモジュール用IRカットフィルターとして特に有用である。また、高レベルの耐光性を示すことができるため、直射日光下に暴露される可能性がある用途等、厳しい耐光性が要求される用途にも好ましく使用される。
カメラモジュールの構成を示す断面模式図である。 光選択透過フィルターの有無によるバックフォーカスの伸張を示す模式図である。 透過率測定方法を示す概念図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」及び「wt%」は「質量%」を意味するものとする。
なお、参考例10で得た化合物の略称において、Pcはフタロシアニン核を表し、Znは中心金属を表し、Pcのすぐ後にα位に置換する置換基を表し、そのα位に置換する置換基の後にβ位に置換する置換基を表す。例えば、[ZnPc−{α−(2,6−ClPhO)}{β−(2,6−ClPhO)}]は、中心金属がZn、α位のうち2個(2,6位)がジクロロルフェノキシ基(ClPhO)で置換され、β位のうち2個(2,6位)がジクロロルフェノキシ基(ClPhO)で置換され、残りが水素原子であるフタロシアニン化合物を意味する。
合成例1
4,5−ビス(3−クロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル10.0g(0.050mol)、フッ化カリウム6.97g(0.12mol)及びアセトン30gを仕込み、更に滴下ロートに3−クロロフェノール13.04g(0.101mol)及びアセトン13.04gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより3−クロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(3−クロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル 9.64g(収率46.2%)を得た。
合成例2
4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.15mol)、フッ化カリウム20.9g(0.36mol)、及びアセトン90gを仕込み、更に滴下ロートに4−クロロフェノール39.7g(0.31mol)及びアセトン66.2gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−クロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−クロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル 39.60g(収率63.3%)
を得た。
合成例3
4,5−ビス(2,3−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30g(0.150mol)、フッ化カリウム20.91g(0.36mol)、及びアセトン90gを仕込み、更に滴下ロートに2,3−ジクロロフェノール49.62g(0.303mol)及びアセトン49.62gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2,3−ジクロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2,3−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル53.07g(収率72.8%)を得た。
合成例4
4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル50g(0.25mol)、フッ化カリウム34.8g(0.60mol)、及びアセトン50gを仕込み、更に滴下ロートに2,5−ジクロロフェノール82.3g(0.50mol)及びアセトン82.3gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2,5−ジクロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル88.8g(収率72.7%)を得た。
合成例5
4,5−ビス(3−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル12.0g(0.050mol)、フッ化カリウム8.37g(0.144mol)、及びアセトン30gを仕込み、更に滴下ロートに3−シアノフェノール14.5g(0.122mol)及びアセトン14.5gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−シアノフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(3−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル18.81g(収率78.7%)を得た。
合成例6
4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル100.0g(0.50mol)、フッ化カリウム58.7g(1.0mol)、及びアセトン100.0gを仕込み、更に滴下ロートに4−シアノフェノール120.3g(1.0mol)及びアセトン120.3gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−シアノフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル145.7g(収率73.2%)を得た。
合成例7
4,5−ビス(3−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル10.0g(0.050mol)、フッ化カリウム6.97g(0.120mol)、及びアセトン30gを仕込み、更に滴下ロートに3−ヒドロキシ安息香酸メチル15.66g(0.103mol)及びアセトン15.66gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより3−ヒドロキシ安息香酸メチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(3−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル15.56g(収率67.0%)を得た。
合成例8
4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.150mol)、フッ化カリウム19.2g(0.33mol)、及びアセトン50.0gを仕込み、更に滴下ロートに4−ヒドロキシ安息香酸メチル46.53g(0.31mol)及びアセトン74.5gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ヒドロキシ安息香酸メチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル30.7g(収率42.8%)を得た。
合成例9
4,5−ビス(4−ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル15.72g(0.078mol)、フッ化カリウム10.94g(0.188mol)、及びアセトン45.0gを仕込み、更に滴下ロートに4−ニトロフェノール 22.16g(0.159mol)及びアセトン30.0gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ニトロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル28.28g(収率82.2%)を得た。
合成例10
4,5−ビス(4−ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル17.00g(0.03mol)、フッ化カリウム4.92g(0.08mol)、及びアセトン60.0gを仕込み、更に滴下ロートに4−ブロモフェノール 12.23g(0.07mol)及びアセトン30.0gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ブロモフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル9.56g(収率54.0%)を得た。
合成例11
4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル112.80g(0.06mol)、フッ化カリウム8.99g(0.15mol)、及びアセトン60.0gを仕込み、更に滴下ロートに4−フルオロフェノール 22.16g(0.159mol)及びアセトン30.0gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−フルオロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−フルオロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル15.71g(収率63.9%)を得た。
合成例12
4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.150mol)、フッ化カリウム20.91g(0.360mol)、及びアセトン45.0gを仕込み、更に滴下ロートに3−トリフルオロメチルフェノール 49.34g(0.304mol)及びアセトン30.0gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより3−トリフルオロメチルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル38.50g(収率58.6%)を得た。
合成例13
4−(2−メチルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル50g(0.25mol)、フッ化カリウム14.8g(0.255mol)、及びアセトン150gを仕込み、更に滴下ロートに2−メチルフェノール27.3g(0.25mol)及びアセトン63.7gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2−メチルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2−メチルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル48.5g(収率67.1%)を得た。
合成例14
4−(2−メチルフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例13で得られた4−(2−メチルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル36.0g(0.0.125mol)、フッ化カリウム10.87g(0.187mol)、及びアセトン70.2gを仕込み、更に滴下ロートに4−ヒドロキシ安息香酸メチル16.3g(0.132mol)及びアセトン30gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ヒドロキシ安息香酸メチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2−メチルフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル28.5g(収率58.2%)を得た。
合成例15
4−(2−クロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル50g(0.250mol)、フッ化カリウム17.4g(0.30mol)、及びアセトン50gを仕込み、更に滴下ロートに2−クロロフェノール33.2g(0.257mol)及びアセトン33.2gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2−クロロフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2−クロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル50.1g(収率65.0%)を得た。
合成例16
4−(2−クロロフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6―ジフルオロフタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに合成例15で得られた4−(2−クロロフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル36.0g(0.0.125mol)、フッ化カリウム10.87g(0.187mol)、及びアセトン70.2gを仕込み、更に滴下ロートに4−ヒドロキシ安息香酸メチル16.3g(0.132mol)及びアセトン30gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ヒドロキシ安息香酸メチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2−クロロフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル28.5g(収率58.2%)を得た。
合成例17
4−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル50g(0.25mol)、フッ化カリウム15.9g(0.275mol)、及びアセトン150gを仕込み、更に滴下ロートに4−ヒドロキシ安息香酸メチル39.9g(0.26mol)及びアセトン40gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−ヒドロキシ安息香酸メチルのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル30.0g(収率35.8%)を得た。
合成例18
4,5−ビス(2−メチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.15mol)、フッ化カリウム20.1g(0.347mol)、及びアセトン120.1gを仕込み、更に滴下ロートに2−メチルフェノール34.41g(0.315mol)及びアセトン120.1gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2−メチルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(2−メチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル45.5g(収率80.6%)を得た。
合成例19
4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.15mol)、フッ化カリウム18.3g(0.315mol)、及びアセトン70.0gを仕込み、更に滴下ロートに4−メトキシフェノール37.6g(0.30mol)及びアセトン37.6gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより4−メトキシフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル39.15g(収率63.9%)
を得た。
合成例20
4,5−ビス(フェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30.0g(0.15mol)、フッ化カリウム21.08g(0.36mol)、及びアセトン60.1gを仕込み、更に滴下ロートにフェノール28.50g(0.30mol)及びアセトン28.50gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートよりフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4,5−ビス(フェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル19.69g(収率37.7%)を得た。
合成例21
4−(2,6−ジメチルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル30g(0.150mol)、フッ化カリウム9.58g(0.165mol)、及びアセトン90gを仕込み、更に滴下ロートに2,6−ジメチルフェノール19.24g(0.157mol)及びアセトン20.0gを仕込んだ。−1℃で攪拌しながら、滴下ロートより2,6−ジメチルフェノールのアセトン溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2,6−ジメチルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル34.4g(収率75.9%)を得た。
合成例22
3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル6.9g(0.040mol)、サリチル酸メチル6.8g(0.044mol)、炭酸カリウム11.06g(0.080mol)、及びアセトニトリル27.8gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル10.3g(収率92.8%)を得た。
合成例23
3−(4−メトキシエチルカルボニルフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル13.85g(0.080mol)、4−ヒドロキシ安息香酸メトキシエチル 16.65g(0.084mol)、炭酸カリウム13.27g(0.096mol)、及びアセトニトリル55.4gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(4−メトキシエチルカルボニルフェノキシ)フタロニトリル19.55g(収率75.8%)を得た。
合成例24
3−(2−クロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル17.3g(0.10mol)、2−クロロフェノール13.6g(0.105mol)、炭酸カリウム16.6g(0.12mol)、及びアセトニトリル69.3gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(2−クロロフェノキシ)フタロニトリル27.8/g(収率91.7%)を得た
合成例25
3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル15.0g(0.087mol)、2,6−ジクロロフェノール15.7g(0.095mol)、炭酸カリウム23.9g(0.17mol)、及びアセトニトリル60.0gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル17.5g(収率69.9%)を得た。
合成例26
3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル15.0g(0.087mol)、2,6−ジメチルフェノール11.2g(0.091mol)、炭酸カリウム23.9g(0.17mol)、及びアセトニトリル60.0gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル17.5g(収率69.9%)を得た。
合成例27
3−(4−シアノフェノキシ)フタロニトリルの合成
200mlの四つ口セパラブルフラスコに3−ニトロフタロニトリル13.8g(0.08mol)、4−シアノフェノール10.1g(0.084mol)、炭酸カリウム13.3g(0.096mol)、及びアセトニトリル55.4gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、3−(4−シアノフェノキシ)フタロニトリル19.3g(収率98.2%)を得た。
合成例28
4−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルの合成
500mlの四つ口セパラブルフラスコに4−ニトロフタロニトリル15.0g(0.087mol)、2,6−ジクロロフェノール15.7g(0.095mol)、炭酸カリウム23.9g(0.17mol)、及びアセトニトリル60.0gを仕込み、60℃で一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、4−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル22.8g(収率91.1%)を得た。
実施例1−1
(1)[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(3−クロロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc1と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例1で得られた4,5−ビス(3―クロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.17g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル9.73gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、反応液をフタロシアニン化合物の理論収量の20倍に相当するメタノール(86g)中に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、フタロシアニン化合物の理論収量の10倍量に相当するメタノール(43g)で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを真空乾燥機を用いて、100℃で24時間乾燥後、目的物(Pc1)4.12gを得た(収率95.1%)。
(2)樹脂組成物の調製、吸収シートの製造
ネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)8部にジメチルアセトアミド100部を加え、120℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液6.063gに、上記で得られたフタロシアニン化合物(Pc1)15mgを加え、混合、溶解して樹脂塗料液(樹脂組成物)を調整した。得られた樹脂塗料液をスピンコーターでガラス基板上に塗布し120℃で20分間乾燥させることにより樹脂層(乾燥後の樹脂膜の厚み:3μm)を形成し吸収シートを得た。得られた吸収シートの吸収スペクトルを分光光度計(島津製作所製:UV−1800)で測定した。その結果を以下の表1にまとめた。
実施例1−2
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−クロロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc2と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例2で得られた4,5−ビス(4―クロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル8.34g(0.020mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル19.46gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc2)8.09gを得た(収率93.4%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc2)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−3
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(2,3−ジクロロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc3と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例3で得られた4,5−ビス(2,3−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.86g(0.0100mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル11.34gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc3)4.75gを得た(収率94.6%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc3)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−4
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc4と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例4で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル8.26g(0.0170mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.42g(0.0045mol)、ベンゾニトリル33.05gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc4)7.17gを得た(収率84.0%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc4)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−5
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(2,5−ジクロロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]バナジウムオキサイド(Pc5と称す)の合成
100mlの四ツ口フラスコに合成例4で得られた4,5−ビス(2,5−ジクロロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル15.00g(0.0309mol)、塩化バナジウム(III) 1.58g(0.010モル)、1,2,4−トリメチルベンゼン 21.99g及びベンゾニトリル 2.40gを仕込み、170℃でMガス(窒素と酸素の混合ガス、酸素濃度7体積%)を液相部に吹き込みながら、攪拌下18時間、反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc5)13.61g(収率87.7%)を得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc5)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−6
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(3−シアノフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc6と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例5で得られた4,5−ビス(3―シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.98g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル9.29gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc6)3.47gを得た(収率83.7%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc6)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−7
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−シアノフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc7と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例6で得られた4,5−ビス(4―シアノフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル8.17g(0.0205mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.72g(0.0054mol)、ベンゾニトリル32.66gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc7)7.04gを得た(収率82.9%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc7)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−8
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(3−メトキシカルボニルフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc8と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例7で得られた4,5−ビス(3−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル9.29(0.020mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル21.67gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc8)7.50gを得た(収率78.1%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc8)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−9
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc9と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例8で得られた4,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル9.29(0.0200mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル21.67gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc9)8.82gを得た(収率91.8%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc9)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−10
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−ニトロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc10と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例9で得られた4,5−ビス(4―ニトロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル4.38g(0.0100mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル10.23gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc10)4.39gを得た(収率96.6%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc10)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−11
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−ブロモフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc11と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例10で得られた4,5−ビス(4―ブロモフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル9.45g(0.008mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.70g(0.0022mol)、ベンゾニトリル12.65gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc11)3.81gを得た(収率91.2%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc11)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−12
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−フルオロフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc12と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例11で得られた4,5−ビス(4―フルオロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.84g(0.0100mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル9.60gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc12)3.52gを得た(収率88.0%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc12)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−13
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc13と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例12で得られた4,5−ビス(3―トリフルオロメチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.84g(0.0100mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル8.97gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc13)3.52gを得た(収率88.0%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc13)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−14
[C,C,C,2―テトラキス(2−メチルフェノキシ)−C,C,C,3−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc14と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例14で得られた4−(2−メチルフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)3,6−ジフルロフタロニトリル8.41g(0.0200mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル12.61gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc14)7.43g(収率85.2%)を得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc14)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−15
[C,C,C,2―テトラキス(2−クロロフェノキシ)−C,C,C,3−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc15と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例16で得られた4−(2−クロロフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル8.82g(0.0200mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル20.57gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc15)8.54g(収率93.5%)を得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc15)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−16
[C,C,C,2―テトラキス(2−クロロフェノキシ)−C,C,C,3−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]バナジウムオキサイド(Pc16と称す)の合成
100mlの四ツ口フラスコに、合成例16で得られた4−(2−クロロフェノキシ)−5−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,6−ジフルオロロフタロニトリル12.00g(0.0272mol)、塩化バナジウム(III)1.39g(0.009モル)、1,2,4−トリメチルベンゼン 17.59g及びベンゾニトリル 1.92gを仕込み、170℃でMガス(窒素と酸素の混合ガス、酸素濃度7体積%)を液相部に吹き込みながら、攪拌下18時間、反応させた。反応終了後、反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc16)11.14g(収率89.4%)を得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc16)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−17
[C,C,C,2−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−C,C,C,1,3,4,8,11,15,18,22,25−ドデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc17と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに上記で得られた合成例17で得られた4−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル3.32g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル7.75gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc17)2.67gを得た(収率76.7%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc17)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
実施例1−18
[C,C,C,2−テトラキス(2―クロロフェノキシ)−C,C,C,1,3,4,8,11,15,18,22,25−ドデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(Pc18と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例15で得られた4−(2−フェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル3.09g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル7.20gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(Pc18)3.01gを得た(収率92.7%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(Pc18)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
比較例1−1
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(2−メチルフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(C−Pc1と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例18で得られた4,5−ビス(2―メチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル11.24g(0.030mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.51g(0.00m79mol)、ベンゾニトリル16.94gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(C−Pc1)7.94gを得た(収率67.5%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(C−Pc1)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
比較例1−2
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−メトキシフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(C−Pc2と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例19で得られた4,5−ビス(4―メトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル10.21g(0.025mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.09g(0.0066mol)、ベンゾニトリル15.31gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(C−Pc2)7.94gを得た(収率90.9%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(C−Pc2)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
比較例1−3
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(4−メトキシフェノキシ)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]バナジウムオキサイド(C−Pc3と称す)
100mlの四ツ口フラスコに合成例19で得られた4,5−ビス(4―メトキシフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル12.00g(0.0294mol)、塩化バナジウム(III) 1.50g(0.010モル)、1,2,4−トリメチルベンゼン 17.59g及びベンゾニトリル 1.92gを仕込み、170℃でMガス(窒素と酸素の混合ガス、酸素濃度7体積%)を液相部に吹き込みながら、攪拌下18時間、反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(C−Pc3)11.54g(収率92.4%)を得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(C−Pc3)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
比較例1−4
[2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキスフェノキシ−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(C−Pc4と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例20で得られた4,5−ビス(フェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.48g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル8.13gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(C−Pc4)3.3gを得た(収率90.1%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(C−Pc4)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
比較例1−5
[C,C,C,2−テトラキス(2−メチルフェノキシ)−C,C,C,1,3,4,8,11,15,18,22,25−ドデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(C−Pc5と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例13で得られた4−(2−メチルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル5.76g(0.020mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.76g(0.0055mol)、ベンゾニトリル8.64gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(C−Pc5)7.94gを得た(収率90.9%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(C−Pc5)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
比較例1−6
[C,C,C,2−テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−C,C,C,1,3,4,8,11,15,18,22,25−ドデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(C−Pc6と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例21で得られた4−(2,6−ジメチルフェノキシ)−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル3.02g(0.010mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.88g(0.0028mol)、ベンゾニトリル7.05gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(C−Pc6)2.83gを得た(収率88.9%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(C−Pc6)について、実施例1−1に記載の方法と同様にして、樹脂組成物の調製、吸収シートの製造を行い、その評価結果を表1にまとめた。
Figure 0006054649
表1及び後述する表2において、Q1、Q2、λQ1、λQ2、Abs(Q2)/Abs(Q1)は、それぞれ下記を意味する。
Q1:フタロシアニンの会合由来の吸収
Q2:フタロシアニンの非会合由来の吸収
λQ1:フタロシアニンの会合由来の吸収の吸収極大波長
λQ2:フタロシアニンの非会合由来の吸収の吸収極大波長
Abs(Q1):λQ1(のMax値)における吸光度
Abs(Q2):λQ2(のMax値)における吸光度
Abs(Q2)/Abs(Q1):Abs(Q1)とAbs(Q2)との比
また、α位置換基とは、フタロシアニン環の1,4,8,11,15,18,22,25位の炭素に結合した置換基を意味し、β位置換基とは、フタロシアニン環の2,3,9,10,16,17,23,24位の炭素に結合した置換基を意味する。
なお、本実施例の吸収シートにおいては、λQ1のみ観測されて、λQ2が観測されない場合がある。このような場合は、含有される色素が非会合状態であれば示す吸収極大波長における吸光度を測定し、該吸光度をAbs(Q2)として用いて、Abs(Q2)/Abs(Q1)を算出した。このように、吸収極大がλQ1のみ観測された場合は、表1のλQ2欄に、*印を付して示した。
Pc1〜Pc18及びC−Pc1〜C−Pc6は、表1中の式(6)で表される構造を有するフタロシアニン系色素である。式(6)中のM、X及びYは、各色素について表1に示すとおりである。例えば、Pc1について、X及びYが「3−クロロフェノキシ 8個」であるとは、式(6)中のX及びYの全て(合計8個)が3−クロロフェノキシ基であることを意味し、Pc14について、Xが「2−メチルフェノキシ 4個」、Yが「4−メトキシカルボニルフェノキシ 4個」であるとは、式(6)中のXの全て(合計4個)が2−メチルフェノキシ基、Yの全て(合計4個)が4−メトキシカルボニルフェノキシ基であることを意味する。
参考例1
[C,C,C,1−テトラキス(2−メトキシカルボニルフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(R−Pc1と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例22で得られた3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル4.17g(0.0150mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.32g(0.0041mol)、ベンゾニトリル16.70gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc1)2.00gを得た(収率45.0%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc1)について、以下の方法により、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2に示した。
<色素の評価>
ネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)8部にジメチルアセトアミド100部を加え、120℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液6.063gに上記で得られたフタロシアニン化合物(R−Pc1)15mgを加え、混合、溶解して樹脂塗料液を調整した。得られた樹脂塗料液をスピンコーターでガラス板上に塗布し120℃で20分間乾燥させることにより(乾燥後の樹脂膜の厚み:3μm)、試料(ガラス板に樹脂層が形成されたコーティングガラス)を得た。得られた試料の吸収スペクトルを分光光度計(島津製作所製:UV−1800)で測定した。
参考例2
[C,C,C,1−テトラキス(2−メトキシカルボニルフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]銅(R−Pc2と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例22で得られた3−(2−メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル4.00g(0.0144mol)、塩化銅(I)0.39g(0.0040mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル9.33gを仕込み、180℃で撹拌しながら10時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc2)2.94gを得た(収率69.5%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc2)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
参考例3
[C,C,C,1−テトラキス(4−メトキシエチルカルボニルフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(R−Pc3と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例23で得られた3−(4−メトキシエチルカルボニルフェノキシ)フタロニトリル8.38g(0.026mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.28g(0.0072mol)、ベンゾニトリル19.55gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc3)4.11gを得た(収率46.7%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc3)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
参考例4
[C,C,C,1−テトラキス(2−クロロフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(R−Pc4と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例24で得られた3−(2−クロロフェノキシ)フタロニトリル10.19g(0.040mol)、ヨウ化亜鉛(II)3.51g(0.011mol)、ベンゾニトリル23.8gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc4)2.74gを得た(収率25.3%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc4)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
参考例5
[C,C,C,1−テトラキス(2,6−ジクロロフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(R−Pc5と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例25で得られた3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル2.3g(0.0080mol)、ヨウ化亜鉛(II)0.70g(0.0022mol)、ベンゾニトリル13.1gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc5)0.80gを得た(収率32.8%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc5)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
参考例6
[C,C,C,1−テトラキス(2,6−ジクロロフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]銅(R−Pc6と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例25で得られた3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル4.00g(0.0144mol)、塩化銅(I)0.38g(0.0038mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル9.33gを仕込み、180℃で撹拌しながら10時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc6)3.22gを得た(収率76.3%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc6)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
参考例7
[C,C,C,1−テトラキス(2,6−ジメチルフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(R−Pc7と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例26で得られた3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル3.72g(0.015mol)、ヨウ化亜鉛(II) 1.32g(0.0041mol)、ベンゾニトリル14.90gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc7)2.59gを得た(収率65.4%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc7)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
参考例8
[C,C,C,1−テトラキス(2,6−メチルフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]銅(R−Pc8と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例26で得られた3−(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル4.00g(0.0161mol)、塩化銅(I)0.44g(0.0044mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル9.33gを仕込み、180℃で撹拌しながら10時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc8)2.87gを得た(収率67.44%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc8)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
参考例9
[C,C,C,1−テトラキス(4−シアノフェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(R−Pc9と称す)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例27で得られた3−(4−シアノフェノキシ)フタロニトリル8.0g(0.0326mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.86g(0.0090mol)、ベンゾニトリル18.6gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc9)3.6gを得た(収率47.3%)
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc9)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
参考例10
[ZnPc−{α−(2,6−ClPhO)}{β−(2,6−ClPhO)}]亜鉛(R−Pc10)の合成
200mlの四つ口フラスコに合成例25で得られた3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル2.5g(0.0086mol)、合成例28で得られた4−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリル2.5g(0.0086mol)、ヨウ化亜鉛(II)1.1g(0.0048mol)、ベンゾニトリル7.5gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、実施例1−1と全く同様の操作を行い、目的物(R−Pc10)4.2gを得た(3−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルと4−(2,6−ジクロロフェノキシ)フタロニトリルに対する収率79.2%)。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(R−Pc10)について、参考例1に記載の方法と同様にして、ポリイミド中の分光特性を測定し、その結果を表2にまとめた。
Figure 0006054649
R−Pc1〜R−Pc10は、表2中の式(7)で表される構造を有するフタロシアニン系色素である。式(7)中のM、X、Y及びRαは、各色素について表2に示すとおりである。例えば、R−Pc1について、Rαが「2−メトキシカルボニルフェノキシ 4個、水素 4個」、X及びYが「水素 8個」であるとは、式(7)中のRα(合計8個)のうち4個が2−メトキシカルボニルフェノキシ基、残りのRαが水素原子であり、X及びYの全て(合計8個)が水素原子であることを意味する。
実施例2−1〜2−10(2種の色素を混合してのポリイミド中での分光特性測定)
ネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)8部にジメチルアセトアミド100部を加え、120℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液6.063gに、表3に示す色素(A)及び色素(B)を、表3に記載の重量比で総量が15mgになるように量り取った色素混合物を、混合、溶解して樹脂塗料液(樹脂組成物)を調製した。得られた樹脂塗料液をスピンコーターでガラス基板上に塗布し120℃で20分間乾燥させることにより、ガラス基板表面に樹脂層の形成された吸収シートを製造した。得られた吸収シートの吸収スペクトルを分光光度計(島津製作所製:UV−1800)で測定した。その結果を以下の表3にまとめた。
なお、各実施例において、色素(A)及び色素(B)の代わりに、各実施例で用いた色素(A)のみを15mg用いた点以外は各実施例と同様に樹脂塗料液(樹脂組成物)を調製し、更に各実施例と同様にして吸収シートを作成し、評価した結果を表3に示した。
Figure 0006054649
表3より、実施例2−1〜2−10で得られた吸収シートの吸収特性を、色素(A)を単独で使用して得られた吸収シートの吸収特性と比較すると、樹脂層に特定色素に加えて他の色素を更に含有させることにより、最大吸収波長における透過率が低減(吸収率が増大)するとともに、600〜800nm波長域における吸収幅が増大していることが分かる。なお、表3に記載の「%T@λmax」や「W(nm)」も、吸光度比(Abs(Q2)/Abs(Q1))の評価対象である吸収シートに由来するものである。
実施例3−1
実施例1−1で得た樹脂塗料液を、支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に40μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、吸収シート(3−1)を得た。得られた吸収シートは53μmであった。
この吸収シート(3−1)を、幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした後、この両面に、蒸着基板温度150℃で赤外線を反射する多層膜{シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm)層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層}を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)(3−1)を製造した。
実施例3−2
実施例2−1で得た樹脂塗料液を、支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に40μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、吸収シート(3−2)を得た。得られた吸収シートは53μmであった。
この吸収シート(3−2)を、幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした後、この両面に、蒸着基板温度150℃で赤外線を反射する多層膜{シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm)層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層}を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)(3−2)を製造した。
比較例3−1
比較例1−1で得た樹脂塗料液を、支持体フィルムとしてのネオプリムL−3430(三菱ガス化学社製、50μm厚)上に40μm厚で塗布し、150℃で60分間乾燥して、吸収シート(C3−1)を得た。得られた吸収シートは53μmであった。
この吸収シート(C3−1)を、幅60mm、長さ100mmの長方形にカッティングした後、この両面に、蒸着基板温度150℃で赤外線を反射する多層膜{シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm)層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層}を蒸着により形成し、光選択透過フィルター(光学フィルター)(C3−1)を製造した。
<入射角依存性の評価>
このようにして得た光選択透過フィルター(3−1、3−2、C3−1)について、入射角依存性を評価した。
具体的には、Shimadzu UV−3100(島津製作所社製)を用いて200〜1100nmにおける透過率を測定した。透過率は、図3に示すように、入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される。)と、入射光に対して25°光選択透過フィルターを傾けて設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向に対して25°傾いた方向から光が入射するようにして測定される。)の夫々について測定した。
その結果、スペクトルは示していないものの、特定色素を含有する樹脂層を有する光選択透過フィルター(3−1)では、透過率60%以上の領域において、0°と25°とのスペクトルに変化がなく、光遮断特性の入射角依存性が低減されることが確認された。更に、特定色素に他の色素を併用した樹脂層を有する光選択透過フィルター(3−2)では、透過率40%以上の領域において、0°と25°とのスペクトルに変化がなく、より入射角依存性が低減されることが確認された。
一方、特定色素ではない色素を単独で用いた樹脂層を有する光選択透過フィルター(C3−1)では、透過率75%の領域でも入射角依存性が発現した。多層膜の膜厚と層数の変更を行い、長波長側の吸収極大波長(λQ2)領域で光遮断したところ、入射角依存性は若干改善されたが、光を透過するべき領域に小さな吸収ピーク(λQ1)が現れ、光選択透過フィルターに適した波形とならなかった。
したがって、本発明の特定色素を含有する樹脂層を有する光選択透過フィルターは、光遮断特性の入射角依存性を低減することができることが分かった。
1:レンズ
2:光選択透過フィルター
3:センサー
4:光源
5:光選択透過フィルター
6:受光部

Claims (6)

  1. 色素及び樹脂成分を含み、光選択透過フィルターの形成に用いられる樹脂組成物であって、該色素は、下記一般式(I):
    Figure 0006054649
    (式中、Mは、金属原子を表す。X〜X及びY〜Yは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいOR基を表す。OR基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。但し、X〜X及びY〜Yのうち少なくとも4個は、同一又は異なって、電子求引性基を有するフェノキシ基を表す。)で表されるフタロシアニン系色素であり、
    該樹脂成分は、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂及びポリシクロオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤可溶性樹脂を含み、
    該溶剤可溶性樹脂は、N−メチルピロリドン100質量部に対し1質量部以上溶解する樹脂であり、
    該フッ素化芳香族ポリマーは、少なくとも1つ以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合とを含む繰り返し単位を有する重合体である
    ことを特徴とする光選択透過フィルター形成用樹脂組成物。
  2. 前記一般式(I)におけるX〜X及びY〜Yは、その全てが、同一又は異なって、電子求引性基を有するフェノキシ基を表す
    ことを特徴とする請求項1に記載の光選択透過フィルター形成用樹脂組成物。
  3. 吸収シートを含む光選択透過フィルターであって、
    該吸収シートは、請求項1又は2に記載の光選択透過フィルター形成用樹脂組成物から形成される樹脂層を含む
    ことを特徴とする光選択透過フィルター。
  4. 前記光選択透過フィルターは、更に、反射膜を含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の光選択透過フィルター。
  5. 請求項3又は4に記載の光選択透過フィルターに用いられる
    ことを特徴とする吸収シート。
  6. 請求項3又は4に記載の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する
    ことを特徴とする固体撮像素子。
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