JP2014071416A - 光選択透過フィルター、樹脂シート及び固体撮像素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂シートと、その少なくとも一方の表面に形成されてなる反射膜とを含む光選択透過フィルターであって、該樹脂シートは、色素及び樹脂成分を含み、かつ塗布法により形成された1層以上の吸収層を有し、該色素は、分子内にπ電子結合を有し、かつジメチルアセトアミド又はトルエンに対する溶解度が0.1質量%以上となる色素である光選択透過フィルター。
【選択図】なし
Description
本発明はまた、上記光選択透過フィルターに用いられる樹脂シートである光選択透過フィルター用樹脂シートでもある。
本発明は更に、上記光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。
上記光選択透過フィルターにおける樹脂シートは、色素及び樹脂成分を含有する吸収層(樹脂層とも称す)を少なくとも有し、該色素として、分子内にπ電子結合を有し、かつ特定の溶解度を示す色素を必須とするものである。これにより、充分な薄膜化及び吸収層の安定化が可能であり、この樹脂シートを反射膜と組み合わせることで、入射角依存性が充分に低減され、可視領域から近赤外領域にかけてシャープな透過吸収特性を有する光選択透過フィルターを与えることができる。また、反射膜として好適な光学多層膜と組み合わせると、光学多層膜の層数を減らすことができ、該多層膜における応力を緩和できるため、多層膜のクラックや割れを充分に防止することもできる。このような本発明の光選択透過フィルターに用いられる光選択透過フィルター用樹脂シートも、本発明の1つである。
上記樹脂シートにおいて、吸収層は、色素及び樹脂成分を含有するものであるが、色素が吸収層中に高度に分散されてなることが好ましい。すなわち、吸収層に色素が単分子又は会合状態で分散してなることが好ましい。光学的には、吸収層の可視光に対するヘイズが10%以下となるようなレベルで分散してなることが好ましい。このような分散状態の吸収層は、樹脂成分と色素とを含む組成物中に色素が溶解された形態の組成物により、形成されることが好適である。このような形態の組成物では、樹脂成分として、後述する溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び/又は液状樹脂原料を用いることが好適である。
なお、色素及び樹脂成分としては、各々、1種又は2種以上を使用することができる。
色素とは、特定波長の光を吸収する物質を意味するが、本発明では、分子内にπ電子結合を有し、かつDMAc又はトルエンに対する溶解度が0.1質量%以上となる色素(以下、特定色素とも称す)を用いる。このような色素を用いることによって、塗布法により形成された吸収層は、充分な薄膜化とヘイズ低減に加え、様々な製造工程、使用環境で安定した吸収特性を維持でき、それゆえ、入射角依存性が低く、かつ安定性及び光選択透過性に優れた光選択透過フィルターを実現することが可能になる。DMAc又はトルエンに対する溶解度として好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。
DMAc又はトルエンに対する溶解度は、DMAc又はトルエン100質量%に対し、色素がどの程度溶解するのか(質量%)によって求めることができる。
上記ポルフィリン系色素としては、ポルフィリン骨格を有する金属錯体(金属ポルフィリン錯体)が好適であり、例えば、テトラアザポルフィリン等が挙げられる。
これらの中でも、上記特定色素としてより好ましくは、金属フタロシアニン錯体及び/又は金属ポルフィリン錯体である。
上記他の色素の含有量は、上述した特定色素による効果を充分に発揮させるため、色素の全量100質量%に対し、30質量%以下であることが好適である。より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは、他の色素を実質的に含まないことである。
上記吸収層において、樹脂成分は、上述した色素を充分に溶解又は高度に分散できるものであることが好ましく、溶解できるものがより好ましい。このような樹脂成分を適切に選択することにより、透過させたい波長域(例えば、可視領域)における高透過率と、遮断したい波長域(例えば、赤外領域)における高吸収性とを両立することが可能となる。
上記樹脂成分としては、例えば、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。このような樹脂成分は、色素の分散性が高いため、光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができるとともに、色素を高濃度で分散できるため、光選択透過フィルターの薄膜化も可能である。また、上記樹脂成分を用いると、後述する溶媒キャスト法によって吸収層を形成(成膜)することができるため、吸収層中に色素を高濃度で均一に分散できるとともに、比較的低温で吸収層を形成することができる。
なお、上記吸収層自体は、溶剤可溶性であっても不溶性であってもよい。
なお、「樹脂原料」には、樹脂の前駆体や該前駆体の原料、更に、樹脂を形成するための単量体(硬化性モノマー等)が含まれるものとする。
上記樹脂成分として溶剤可溶性樹脂を用いる場合、該溶剤可溶性樹脂がそのまま、上記吸収層を構成する樹脂成分となっていてもよいし、該溶剤可溶性樹脂が架橋反応等により変化したものが、上記吸収層を構成する樹脂成分となっていてもよい。
なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
上記一般式(1−2)中、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。R3は、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。n1は、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
なお、ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である。)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応による形成される。
ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが好適である。より好ましくは、全重量100%中の芳香環の重量が65%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは30%以下である。
上記一般式(5)におけるR4としては、2価の有機基が好ましく、中でも、炭素数2〜39の2価の有機基が好ましい。また、当該有機基は1種又は2種以上の炭化水素骨格を含むものが好ましい。炭化水素骨格としては、脂肪族鎖状炭化水素、脂肪族環状炭化水素又は芳香族炭化水素であることが好ましい。当該有機基はまた、複素環骨格を有するものであってもよい。
なお、上記一般式(5)で表される繰り返し単位におけるそれぞれのR4としては、同一であっても異なるものであってもよい。
なお、一般式(5)におけるシクロヘキシル環における水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいが、無置換(全て水素原子である形態)であるものが好ましい。
上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
なお、本明細書中、エポキシ基とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む)を含むものを意味する。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物((メタ)アクリロイル基含有化合物又は(メタ)アクリル系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、スチレン樹脂とは、スチレンやジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー(スチレン系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、アクリル−スチレン樹脂とは、(メタ)アクリロイル基含有化合物及びスチレン系モノマーを含む硬化性組成物の硬化物である。上記ビニル重合体樹脂の中でも、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂が好ましい。
上記アクリル−スチレン樹脂原料としては、上記アクリル樹脂原料の好適な形態において更にスチレン系モノマーを用いた組成物が好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
なお、上記吸収層を含む樹脂シート又は光選択透過フィルターについても、可視光領域におけるヘイズ、可視光500nmにおける透過率、及び、色素の吸収極大波長における透過率が、夫々、吸収層のついての上述した範囲と同様の範囲にあることが好ましい。
上記吸収層は、上述したように1層以上あればよく、多層有していてもよい。より好ましくは2層以上であり、更に好ましくは、支持体の両面に2層有する形態である。また、樹脂シートが支持体を含む場合、支持体の厚みは200μm以下であることが好ましく、より好ましくは110μm以下、更に好ましくは、100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。
なお、樹脂シートの厚みとしては、200μm以下であることが好ましい。より好ましくは110μm以下、更に好ましくは100μm以下、一層好ましくは80μm以下、より更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下、最も好ましくは30μm以下である。
上述したように上記樹脂シートは、支持体を更に有するものであってもよい。このように上記樹脂シートが支持体と吸収層とを少なくとも含む場合には、色素の分散困難な支持体であっても、この表面に樹脂層をコートすることによって本発明の効果を付与することができるため好適である。この場合にはまた、樹脂層の厚みを変更することで、吸収特性を更に制御することができるため、例えば、樹脂層を極薄コートすることにより支持体(好ましくは支持体フィルム)の膜厚をほとんど変えずに本発明の効果を付与したり、支持体の厚み調整に利用したりすることもできる。
本発明の光選択透過フィルターにおいて、反射膜(反射層とも称す)としては、多層からなる膜であることが好適である。すなわち反射膜は、光学多層膜であることが好ましい。また、光学多層膜としては、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜等が、耐熱性に優れる点で好適である。無機多層膜としては、基材やその他の機能性材料層の上に、真空蒸着法、スパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜が好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜であることも好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好ましい。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
また、樹脂シートが有機材料、具体的には樹脂組成物により形成される場合には、未硬化又は半硬化状態の樹脂シート(樹脂組成物)に、上記誘電体層等を蒸着した後、樹脂シートを硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に、基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、光選択透過フィルターの変形(カール)を抑制することができる。
上記線膨張係数が低い樹脂層又は支持体フィルムとして具体的には、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等が好適であり、上記樹脂層又は支持体フィルムが、これらからなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、樹脂を延伸する;無機微粒子等を分散させる;ガラスクロスを用いる;架橋密度を上げる;コンポジット化する;結晶化させる;等によっても線膨張係数を低下させることができる。
また、上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、2〜8μmである。反射膜が上記樹脂シートの両面に形成される形態においては、両面の反射膜の合計の厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターは、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の1つである赤外カットフィルターの場合、紫外線を遮蔽する機能等の赤外カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。このような、本発明の光選択透過フィルターが上記他の機能を有する形態においては、樹脂シートの一方の表面に上記反射膜を形成し、他方の表面に上記他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。
上記機能性材料層は、例えば、上述のCVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記樹脂シート上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を樹脂シート上に接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を樹脂シートに塗布、乾燥して製膜することによっても得ることができる。
図5に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図6に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは110%以下、更に好ましくは105%以下である。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は、上述と同様であることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、樹脂シートの吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率50%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率30%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないこと、更に好ましくは、透過率15%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないこと、更に好ましくは、透過率10%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
なお、レンズユニット部については、国際公開第2008/081892号パンフレットに記載の形態が好ましく採用できる。
なお、下記合成例における数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 4.6*150を2本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定した。
<FPEK(フッ素化ポリエーテルケトン)の合成>
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル)16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン)10.5部、炭酸カリウム4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド)90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマーに該当する、フッ素化ポリエーテルケトン(FPEK)を得た。
上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は242℃、数平均分子量(Mn)が70770、表面抵抗値は1.0×1018Ω/cm2以上であった。
色素1として、1H−Benzindolium,3−butyl−2−[5−(3−butyl−1,3−dihydro−1,1−dimethyl−2H−benzindol−2−ylidene)−1,3−pentadien−1−yl]−1,1−dimethyl−tetrafluoroborate(1−)(吸収極大波長680nm、以下「HBFB」と略す)を準備した。
色素2として、日本触媒社製の色素TX−EX−720(吸収極大波長718nm)を準備した。
色素3として、2−(8−Hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−1,2,3,5,6,7−hexahydropyrido[3,2,1−ij]quinolin−9−yl)−4−(8−hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−2,3,6,7−tetrahydro−1H−pyrido[3,2,1−ij]quinolinium−9(5H)−ylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate(吸収極大波長668nm、以下「S2084」と略す)を準備した。
色素1、2及び3をそれぞれ、25℃のトルエン、DMAc又はN−メチル−2−ピロリドン(NMPともいう)に加え1時間撹拌した後、溶解したか否かを判定した。結果を表1に示した。表1では、各溶媒100質量%に対する、各色素の溶解度(単位:wt%)を記載した。
合成例1で得たFPEK:5gに、45gのトルエン、0.1gの色素1を加え溶解させた。三菱ガス化学社製ネオプリムL−3430フィルム(100μm厚、Tg:303℃)上に、この溶液を注ぎ、50μmのアプリケーターで塗布後、100℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、105μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの透過率スペクトルを図1に示した。
吸収層の厚みは5μm、吸収層中の色素1の濃度は2%であった。吸収極大波長での透過率は、0.68%であった。
この樹脂シートを60mm角の正方形にカットし、その両面に多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着温度150℃で蒸着し、光選択透過フィルターを得た。この光選択透過フィルターの光学特性及び入射角依存性を評価し、表2に示した。
光学特性及び入射角依存性は、Shimadzu UV−3100(島津製作所社製)を用いて200〜1100nmの透過率スペクトルを測定することにより評価した。
透過率スペクトルは、図7に示すように、入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルという。光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される。)と、入射光に対して20°光選択透過フィルターを傾けて設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを20°スペクトルという。光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される。)の夫々について測定した。
実施例1の色素1の代わりに色素2を用いたこと以外は同様にして、105μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの透過率スペクトルを図2に示した。
吸収層の厚みは5μm、吸収層中の色素2の濃度は2%であった。吸収極大波長での透過率は、1.20%であった。
実施例1と同様にして多層膜を蒸着し、この光選択透過フィルターの光学特性及び入射角依存性を評価し、表2に示した。
合成例1で得たFPEK:5gに、45gのトルエン、0.005gの色素3を加え溶解させた。三菱ガス化学社製ネオプリムL−3430フィルム(100μm厚、Tg:303℃)上に、この溶液を注ぎ、50μmのアプリケーターで塗布後、100℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、105μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの透過率スペクトルを図3に示した。
吸収層の厚みは5μm、吸収層中の色素3の濃度は0.1%であった。吸収極大波長での透過率は、37%であった。
実施例1と同様にして多層膜を蒸着し、この光選択透過フィルターの光学特性及び入射角依存性を評価し、表2に示した。
比較例1の50μmのアプリケーターの代わりに100μmのアプリケーターを用いたこと以外は同様にして、110μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの透過率スペクトルを図4に示した。
吸収層の厚みは10μm、吸収層中の色素3の濃度は0.1%であった。吸収極大波長での透過率は、16%であった。
実施例1と同様にして多層膜を蒸着し、この光選択透過フィルターの光学特性及び入射角依存性を評価し、表2に示した。
実施例1、2の光選択透過フィルターは、優れた光選択透過性を示し、角度依存性(入射角依存性)を充分に低減することが可能となった。また、ヘイズが低く、未溶解色素や製造工程で析出した色素がないため、光選択透過フィルターとして非常に欠陥の少ないものを得ることができた。更に、吸収層が10μm以下と薄いため、端面からの吸湿や光の進入のおそれがなく、吸収スペクトルの経時劣化がないと考えられる。
一方、比較例1、2の光選択透過フィルターは、用いた色素の最大溶解濃度で実施したにも関わらず、角度依存性を低減することができなかった。また、ヘイズ値が高く、光選択透過フィルターの欠陥が多く、製造工程で色素の析出が生じたものと考えられる。
2:光選択透過フィルター
3:センサー
4:光源
5:光選択透過フィルター
6:受光部
Claims (3)
- 樹脂シートと、その少なくとも一方の表面に形成されてなる反射膜とを含む光選択透過フィルターであって、
該樹脂シートは、色素及び樹脂成分を含み、かつ塗布法により形成された1層以上の吸収層を有し、
該色素は、分子内にπ電子結合を有し、かつジメチルアセトアミド又はトルエンに対する溶解度が0.1質量%以上となる色素であることを特徴とする光選択透過フィルター。 - 請求項1に記載の光選択透過フィルターに用いられる樹脂シートであることを特徴とする光選択透過フィルター用樹脂シート。
- 請求項1に記載の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有することを特徴とする固体撮像素子。
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